7201 日産自 2020-01-16 16:00:00
東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ [pdf]

                                                 2020 年 1 月 16 日

各 位

                              会 社 名 日産自動車株式会社
                              代表者名 代表執行役社長兼最高経営責任者
                                              内 田 誠
                                         (コード番号 7201 東証第 1 部)
                              問合せ先 IR 部 常務執行役員 辰 巳 剛
                                            (TEL 045-523-5523)


          東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ


 当社は、2019 年 6 月 27 日提出の「改善報告書」につきまして、有価証券上場規程第 503 条第 1 項の
規程に基づき、改善措置の実施状況及び運用状況を記載した「改善状況報告書」を本日、添付のとおり提
出いたしましたので、お知らせいたします。

添付書類:改善状況報告書

                                                          以 上
                   改   善   状   況   報   告   書
                                               2020 年 1 月 16 日

株式会社東京証券取引所
代表取締役社長 宮原 幸一郎     殿

                                              日産自動車株式会社
                                   代表執行役社長兼最高経営責任者 内田 誠



 2019 年 6 月 27 日提出の改善報告書について、有価証券上場規程第 503 条第 1 項の規定に基づ
き、改善措置の実施状況及び運用状況を記載した改善状況報告書をここに提出いたします。
I.          経緯.................................................................................................................................... 2

1.          過年度内部統制報告書の訂正の内容 ....................................................................................................... 2

2.          当社による調査の体制及び範囲............................................................................................................... 3
      (1)    調査の目的 .............................................................................................................................................. 3
      (2)    外部アドバイザー .................................................................................................................................. 3
      (3)    実施した調査 .......................................................................................................................................... 4
      (4)    調査の概要 .............................................................................................................................................. 4

3.          ガバナンス改善特別委員会....................................................................................................................... 6

4.          本事案の内容及び関係者の関与状況 ....................................................................................................... 6
      (1)    ゴーン氏に対する取締役報酬及び退職後の金銭支払いの検討....................................................... 6
      (2)    ゴーン氏による会社資金・経費の私的利用 ...................................................................................... 7
      (3)    RNBV 共同調査による主な発見事項 .................................................................................................. 8
      (4)    CEO リザーブを利用した支出 ............................................................................................................. 9
      (5)    ケリー氏の取締役報酬 .......................................................................................................................... 9
      (6)    株価連動型インセンティブ受領権行使日操作に伴う西川氏等への報酬の不正支給 ................... 9


II.         改善措置.......................................................................................................................... 10

1.          発生原因の分析......................................................................................................................................... 10
      (1)    1 人の取締役に権限が集中したこと(特に人事・報酬).............................................................. 10
      (2)    一部の管理部署がブラックボックス化したこと ............................................................................ 11
      (3)    取締役会の監督機能が一部有効に機能しなかったこと ................................................................ 11
      (4)    他の会社機関の監視・監査機能が一部有効に機能しなかったこと............................................. 11
      (5)    社内各部署の牽制機能が一部有効に機能しなかったこと ............................................................ 11

2.       再発防止に向けた改善措置..................................................................................................................... 12
      (1) 不正を行った代表取締役 2 名の解任 ................................................................................................ 12
      (2) 代表取締役への他の取締役の報酬配分を決定する権限の付与の停止......................................... 13
      (3) 当社の取締役会の事前承認を受けない子会社・関連会社からの報酬受取りの禁止 ................. 13
      (4) CEO リザーブの廃止 ........................................................................................................................... 13
      (5) 取締役会での活発な議論のためのプレミーティングの実施 ........................................................ 14
      (6) 取締役及び執行役員への行動規範教育の徹底 ................................................................................ 14
      (7) 会計処理と役員報酬の明細情報の突合等、役員報酬に関する適正な会計処理のための管理体
      制の強化 ......................................................................................................................................................... 16
      (8) 株価連動型インセンティブ受領権の行使による利益を、役員報酬として追加開示することを
      含む適正な役員報酬開示のための管理体制の強化 .................................................................................. 17
      (9) 取締役会・エグゼクティブコミッティから経理部への新規会社設立の提案に関する情報提供
      プロセスの構築 ............................................................................................................................................. 18
      (10)  取締役会の構成・機能の強化 ....................................................................................................... 20
      (11)  指名委員会等設置会社への移行 ................................................................................................... 22
      (12)  内部監査による監督機能の強化 ................................................................................................... 25
      (13)  企業倫理の再構築 ........................................................................................................................... 26
      (14)  社内の部署の機能・権限見直し ................................................................................................... 27
      (15)  内部通報制度の改革 ....................................................................................................................... 28

3.          改善措置の実施スケジュール................................................................................................................. 29

4.          改善措置の実施状況及び運用状況に対する上場会社の評価 ............................................................. 30



                                                                                   1
I.        経緯

1.        過年度内部統制報告書の訂正の内容

 日産自動車株式会社(以下「当社」又は「日産」といいます。)は、2019 年 5 月 14 日付けで、
①2006 年 3 月期から 2018 年 3 月期までの各事業年度に係る有価証券報告書において開示した役
員報酬等の内容を訂正する訂正報告書、及び②2010 年 3 月期から 2018 年 3 月期までの各事業年
度の内部統制報告書に係る訂正報告書を、関東財務局に提出しました。また、同日、本事案
(以下で定義します。)に関連する当社の財務情報の一括修正を反映した 2019 年 3 月期の通期
決算短信を開示しました。

 当社元代表取締役会長であるカルロス・ゴーン氏(以下「ゴーン氏」といいます。)の役員
報酬等について、上場会社が、連結報酬総額が 1 億円以上の場合には開示を義務付けられること
となった 2010 年 3 月 31 日を末日とする事業年度以降に関して提出された当社の有価証券報告書
において、過少に開示されていた額は、下記表の「差額」欄記載のとおりです。

                                                          (単位:百万円)

                              訂正前           訂正後           差額
 事業年度              項目
                              (A)           (B)           (B-A)
     2010 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬          891          1,439            548
     2011 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬          982          1,777            795
     2012 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬          987          1,894            907
     2013 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬          988          2,025           1,037
     2014 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬          995          2,313           1,318
     2015 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬         1,035         2,213           1,178
     2016 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬         1,071         2,894           1,823
     2017 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬         1,098         3,740           2,642
     2018 年 3 月期   ゴーン氏の総報酬          735          2,869           2,134



 当社は、2018 年春ころの当社監査役に対する内部通報を受けて、ゴーン氏主導による以下の
重大な不正行為(以下「不正行為」と総称します。)について、内部調査を行ってまいりまし
た。

 なお、内部調査については、当初は、内部通報を受けた監査役主導で、CEO オフィス長(当
時)の協力を得て、レイサムアンドワトキンス外国法共同事業法律事務所(以下「L&W」とい
います。)等外部アドバイザーに依頼して、予備的調査を行った上、後述のとおり、同年 10 月
にグローバルコンプライアンス室主導で本格的な内部調査を行いました。かかる本格的な内部
調査に関しては、独立性を担保するため、法律事務所・会計事務所等の外部アドバイザーを複
数起用するとともに、社内では当社代表取締役社長(当時)である西川廣人氏(以下「西川氏」
又は「西川 CEO(当時)」といいます。)より直接指示を受け、執行関係者から独立して内部
調査を行う調査チームを指揮するグローバルコンプライアンスオフィサー(当時)が主導・監
督しております。2019 年 4 月まではグローバルコンプライアンスオフィサー(当時)は CEO オ
フィス長(当時)の管理下にありましたが、CEO オフィス長(当時)が調査に関して L&W に対
し指示をしたり、L&W を監督したことはなく、内部調査における役割は、情報提供者(証人)
として情報を提供すること及び調査担当者に対するその他の支援を行うことでした。当社とし
ては、かかる手段を取っているため、内部調査の独立性には問題ないものと考えております。

                               2
      ① 長年にわたり、開示される自らの報酬を少なくするために、実際の報酬額よりも減額し
        た金額を有価証券報告書に記載していたという不正行為
      ② 目的を偽って、私的に当社の投資資金を支出するなどした不正行為
      ③ その他、私的な目的で当社の経費を支出するなどした不正行為


 今回の不正行為の根本原因は、ゴーン氏への人事・報酬を含む権限の集中にありました。ゴ
ーン氏は、一部管理部署の権限を、元代表取締役グレッグ・ケリー氏(以下「ケリー氏」とい
います。)をはじめとする特定少数の者に集中させることで、当該部署をブラックボックス化
し、ゴーン氏の私的利益の追求を探知することが難しい体制を作りあげていました。その結果、
一部の管理部署の牽制機能が、ゴーン氏の私的利益の追求に関する問題点については必ずしも
有効に機能していませんでした。当社は、これを内部統制報告書において開示すべき重要な不
備に該当すると判断し、上記②の訂正報告書を提出しました。

2.     当社による調査の体制及び範囲

 当社は、(a)ゴーン氏、ケリー氏及び両名に協力していた可能性がある者による重大な不正
行為、並びに、(b)その他当社の役員報酬等の開示の正確性に影響し得る事実関係(以下「本
事案」と総称します。)の発覚を受け、徹底的かつ幅広い対応を行ってまいりました。当社の
グローバルコンプライアンス室において把握できた重要なコンプライアンスに関する事項の全
てを調査し、2019 年 9 月をもって全ての内部調査を完了しております。当社の対応及び調査に係
る体制、手続及び範囲の概要は以下のとおりです。

(1)    調査の目的

 当社による調査は、西川 CEO(当時)から任命を受けた当社のグローバルコンプライアンス
オフィサー(当時)の指揮のもと、当社の法務責任者の立場にあるグローバルジェネラルカウ
ンセルの協力を得て、実施しました。調査の目的には、特に以下の項目が含まれています。

       (a)   当社で判明した違法行為について、事実関係及び当社に対する影響を把握するた
             めの調査

       (b)   ゴーン氏、ケリー氏その他の当社取締役及び監査役(現任及び退任役員の双方を
             含みます。)の役員報酬の開示に関わる広範な調査

       (c)   過年度の財務情報の修正に関する事項の調査

       (d)   株価連動型インセンティブ受領権の行使に関して不正の有無の調査(2019 年 6 月
             の週刊誌報道を受けた追加調査)



(2)    外部アドバイザー

        当社は、調査をサポートする外部アドバイザーとして、複数の実績のある法律事務所
       並びに会計及びフォレンジックの専門家を起用しています。
        法律事務所については、L&W を主な調査担当事務所として起用しました。同事務所は
       過去に日産に対して役員報酬を含む日産の法務案件に関するアドバイスを行っていたも
       のの、ゴーン氏の不正事案の調査には極めて高い機密性が要請されたため、全く日産と

                             3
      関係ない事務所に依頼できる状況にはなかったという事情、L&W は既に役員報酬に関す
      る様々な論点について日産から相談を受けており、ある程度の背景情報を有していたと
      いう事情、不正事案には海外での取引及び外国語の文書が関係するものであった及び
      L&W は同種の調査につき豊富な経験を有するという事情に鑑みて起用しました。また、
      調査の独立性を担保するために、グローバルコンプライアンスオフィサー(当時)に
      L&W の調査を監督させ、全ての関係者(取締役会、監査役会、監査法人及びガバナンス
      改善特別委員会(後記Ⅰ.3.参照)を含みます。)に L&W による過去のアドバイスの事
      実について開示を行い、それらの関係者からの納得を得ました。

(3)   実施した調査

       調査範囲はきわめて広範なものです。当社が実施した調査及び関連する作業の範囲は
      以下のとおりです。調査対象とした期間は 2009 年 4 月から 2018 年 11 月です(特定の案
      件についてより早い時期を調査対象に含めています1。)。

        (a) 約 900 万通の書類の収集及び 245,000 通以上の書類の検討

        (b) 70 人超の役員・従業員に対するインタビュー

        (c) 10,000 時間以上をかけての財務分析

       なお、ゴーン氏及びケリー氏に対するインタビューは行っておりません。両氏と当社
      は、役員報酬開示にかかる刑事裁判において共同被告人となっており、当社から両氏に
      接触を試みるのは望ましくない状況であること、当社は起訴事実を争わない予定である
      のに対して両氏は起訴事実を争う予定であるなか、当社の調査に対する両氏の真摯な協
      力は期待できないこと、両氏に対するインタビューを待つまでもなく証拠から両氏の不
      正行為を認定できることから、両氏に対するインタビューは今後予定しておりません。

(4)   調査の概要

(a) 報酬に関する調査

 ゴーン氏、ケリー氏その他の当社取締役及び監査役(現任及び退任役員の双方を含みます。)
に関する役員報酬、並びにゴーン氏による会社資産又は経費の私的利用等、同氏が正当な権限
に基づかずに利益や支払いを受けていた事案について、広範な調査を行いました。調査は、当
社グローバルコンプライアンス室による調査に加えて、外部弁護士による、関係者の保有する
書類の収集、検討及び分析、並びに重要なインタビュー対象者の選定及びインタビューに依拠
し、外部アドバイザーによる会計及びフォレンジックによる分析のサポートを受けています。
当社は、これらの外部アドバイザーから定期的に報告を受け、様々な観点からなされた調査に
基づく発見事項を、総合的に検討してまいりました。当社の取締役会は、外部弁護士による報
酬に関する調査の結果(以下「本報酬調査結果」といいます。)を考慮した上で、前記「1.過年
度内部統制報告書の訂正の内容」のとおり、役員報酬等の開示に係る過年度有価証券報告書の
訂正報告書を承認しました。
 また、その後、2019 年 6 月の週刊誌報道をうけ、株価連動型インセンティブ受領権の行使に関


1
 新生銀行との為替スワップの付け替え(後記Ⅰ.4.(2)参照)は 2008 年、ゴーン氏の姉への
支払い(後記Ⅰ.4.(2)参照)は 2003 年に始まっており、それらについては 2009 年以前も対象
としています。
                              4
する不正の有無についても、追加調査を行いました。その結果、2019 年 9 月に、ゴーン氏、ケリ
ー氏、その他の役員 2 名(西川氏を含みます。)及び執行役員等 5 名への株価連動型インセンテ
ィブ受領権行使により支払われた報酬に不正な加算が確認されました。2019 年 5 月 14 日付けの、
過年度に係る有価証券報告書において開示した役員報酬等の内容を訂正する訂正報告書におけ
る訂正金額は役員に対する支払金額の記録をもとに確認したものであり、当該訂正報告書を提
出した時点では、行使日とされていた日の株価を基に算出される報酬金額と、支払金額の記録
との整合性を確認していなかったため、報酬に不正な加算が行われていたことを把握できてお
りませんでした。今般の追加調査によって、上記訂正報告書で加算額も含めて開示済みである
ことを確認しています。なお、ゴーン氏、ケリー氏、西川氏以外の、不正な加算が確認された
者 6 名については、有価証券報告書において役員報酬の開示の対象になる株価連動型インセンテ
ィブ受領権ではなかったこと、本人の不正の認識のないまま加算されたこと、受取額が極めて
小さい方も含まれること等に照らし、氏名の開示は適切ではないと判断し、人数のみ開示して
おります。

(b) 当社のポリシー(社内規則)及び法令違反に関する調査

 当社は、報酬に関する調査とは別に、当社のポリシー(社内規則)及び法令違反の可能性、
ゴーン氏の利益のためになされた会社資産・経費の私的利用、並びに、当社とゴーン氏の関係
者との間でなされた可能性がある利益相反取引について、調査を実施しました。同調査は、当
社グローバルコンプライアンス室に加え、外部アドバイザーのサポートも受けています。当社
の取締役会は、定期的に、グローバルコンプライアンスオフィサー(当時)から、内部調査の
過程で判明した当社のポリシー(社内規則)及び法令違反の可能性を要約した中間報告を受領
しています。

(c) RNBV に関する共同調査

 当社及び Renault S.A.(以下「ルノー」といいます。)は、両社が折半出資したオランダ法人
である Renault-Nissan B.V.(以下「RNBV」といいます。)について、共同して、外部弁護士及
び外部会計士を起用し、調査(以下「RNBV 共同調査」といいます。)を実施してまいりました。
RNBV 共同調査は、RNBV のガバナンス、内部統制、法令遵守、及び会計を広く調査対象とした
ものです。外部会計士は、当社取締役会に対し、2019 年 4 月、RNBV 共同調査に関する中間報告
を行い、同年 5 月、追加報告を行いました。当社は、外部会計士から、同年 7 月 11 日、RNBV 共
同調査の最終的な発見事項に関する報告書を受領致しました。これらの調査報告結果について
は、後記「Ⅰ.4. 本事案の内容及び関係者の関与状況」に記載のとおりです。

(d) NMBV に関する共同調査

 当社及び三菱自動車工業株式会社(以下「三菱自動車」といいます。)は、両社が折半出資
したオランダ法人である Nissan-Mitsubishi, B.V.(以下「NMBV」といいます。)について、外部
弁護士に委任し、共同調査を行いました。当社が外部弁護士から報告を受けた調査結果の内容
は、本報酬調査結果に含まれています。

(e) その他関連する法律業務

 当社は、本事案に起因する問題点に関連する法律業務のために、複数の法律事務所を起用し

                            5
ました。本事案を検討する当社内部及び外部アドバイザーには、これらの法律事務所が得た情
報を共有しています。

3.      ガバナンス改善特別委員会

 当社取締役会は、2018 年 12 月 17 日付けで、以下の目的で、ガバナンス改善特別委員会を設置
いたしました。
   (a) 有価証券報告書の虚偽記載等を招いた当社のガバナンスの問題点に関する根本要
       因の解明

        (b)   取締役報酬の決定プロセスの改善をはじめ、ガバナンスの改善策の提言

        (c)   将来にわたり世界をリードしていく企業として事業活動を行っていくための基盤
              となる健全なガバナンス体制の在り方の提言

 ガバナンス改善特別委員会は、独立第三者委員 4 名(うち 2 名が共同委員長)及び当社の独立
社外取締役 3 名により構成されました。当社取締役会は、ガバナンス改善特別委員会から、2019
年 3 月 27 日付けで、ガバナンス改善特別委員会報告書(以下「特別委員会報告書」といいます。)
を受領し、同日、同報告書を公表いたしました。

4.      本事案の内容及び関係者の関与状況

 当社は、特別委員会報告書及び上記の内部調査の結果を踏まえ、本事案の内容及び関係者の
関与状況は、以下のとおりであると考えております。なお、上記の内部調査のうち、「2.(4)
(a)報酬に関する調査」の一部及び「2.(4)(c)RNBV に関する共同調査」については特別
委員会報告書の公表後に判明したため、特別委員会報告書には、以下の「(3)RNBV 共同調査
による主な発見事項」、「(6)株価連動型インセンティブ受領権行使日操作に伴う西川氏等へ
の報酬の不正支給」並びに「(1)ゴーン氏に対する取締役報酬及び退職後の金銭支払いの検討」
の記載の内、株価連動型インセンティブ受領権の権利行使日偽装による報酬の不正受領、及び
「(5)ケリー氏の取締役報酬」の記載の内、株価連動型インセンティブ受領権付与の偽装によ
る報酬不正受領の内容は含まれていません。

(1)     ゴーン氏に対する取締役報酬及び退職後の金銭支払いの検討

     日産の取締役会決議により、ゴーン氏に対し、自身の報酬の決定も含む、取締役及びトッ
      プラインマネジメント(副社長、専務執行役員、常務執行役員及び理事を含む。)の報酬
      を決定する権限が一任されていました。
     個々の取締役及びトップラインマネジメントの報酬額については、ゴーン氏が実質的にす
      べて一人で決定していました。ゴーン氏が決定した個々の報酬の支払いは秘書室が担当し
      ており、秘書室から他部署に個々の取締役及びトップラインマネジメントの報酬額に関す
      る情報が出ることはありませんでした。
     2009 年度以降、ケリー氏が SVP(専務執行役員2)になり、CEO オフィス、アライアンス
      CEO オフィス、法務室、秘書室、グローバル人事などの責任者となりました。同氏は、ゴ
      ーン氏の信任が最も厚い側近の一人として日産内で知られており、トップラインマネジメ



2
    2009 年当時、Senior Vice President(SVP)は日本語の役職上常務執行役員でした。
                                 6
      ント以外のほぼすべての職員の報酬及び人事について決定権を持っており、契約締結を含
      む日産の法務事項を管轄する、最上位の責任者でした。また、ケリー氏は、監査役に対す
      る執行側の窓口も務めていました。ケリー氏は、監査役、内部監査室、経理部等からの質
      問や要請に対し、対応は必要最小限にとどめ、また「CEO の決定である」と述べそれ以上
      の質問や追及を許しませんでした。
     ゴーン氏は、別紙1の当社組織図(2009 年 4 月時点)のとおり、上記のいわゆる管理部門に
      ついて、ケリー氏をトップに特定少数の者に権限を集中させました。結果、一定の情報は
      限定された少数の者にとどめ他部署には出さないような組織が出来上がりました。
     ゴーン氏は、開示される自らの取締役報酬の金額を減らすため、自らに付与した取締役報
      酬の一部(以下「繰延報酬」という。)について支払時期を退任後に繰り延べるなどして
      その開示をせず、その結果、2010 年 3 月期から 2018 年 3 月期におけるゴーン氏の報酬総額
      は過少に開示されてきました。
     2010 年 3 月期以降、繰延報酬について、ケリー氏をはじめとする特定少数の者の間で、開示
      せずに支払う方法について様々な検討が行われました。退職後の報酬についても、繰延報
      酬相当額の支払方法の一つとして、又は退職後における別個の報酬として、支払うことが
      検討されました。上記検討に際して作成された書面も残されており、ゴーン氏の署名が付
      されたものもあります。
     退職後の処遇に関して、ゴーン氏は、グローバル人事及び法務の責任者であるケリー氏を
      通じて、西川 CEO(当時)の署名が付された書面を取得しました。
     2007 年に株主総会で承認された役員退職慰労金の打切支給としてゴーン氏に支払われる金
      額を増額するため、書類の改ざんがなされました。
     株価連動型インセンティブ報酬の開示を避けるため報酬内容の操作や書類の改ざんがなさ
      れました。
     ゴーン氏の株価連動型インセンティブ受領権行使による報酬について、権利行使日の偽装
      により、権利行使日前日より高い株価を使って報酬額の計算がなされ、株主総会決議によ
      り承認されている計算式に基づく金額より合計約 1 億 4,000 万円多い支払いがなされました。
     ゴーン氏は、NMBV から、定められていた適正な手続を経ずに報酬等を取得しました。
     ゴーン氏は 2017 年に CEO を退任した後も、2018 年 11 月 19 日に金融商品取引法違反で逮捕
      されるまでの間、ないしは同年 12 月 17 日に日産取締役会がゴーン氏に対する報酬決定権限
      の一任を取りやめるまでの間、日産の人事・報酬に関する決定権限を手放すことはなく、
      事実上の CEO ともいうべき重要な権限を維持し続けました。

(2)    ゴーン氏による会社資金・経費の私的利用

     2010 年、日産のエグゼクティブコミッティは、ケリー氏の提案により、オランダに投資を
      目的とする 100%子会社として Zi-A Capital B.V.(以下「ZiA 社」という。)を設立すること
      を承認しました。ZiA 社は非連結子会社とされました。ZiA 社を使って、ゴーン氏が使用す
      る住宅がリオデジャネイロやベイルートに購入され、その改装費用も支払われました。こ
      れらの購入・改装費用は総額 22 百万米ドル以上です。これらの行為には、ケリー氏のほか、
      CEO オフィス長(当時)及び秘書室長(当時)が関与していました。
     ゴーン氏の姉に対し、長期にわたり日産から顧問料が支払われました。支払われた金額は、
      総額 75 万米ドル以上です。この事実は特定少数の者を除き、日産社内では認識されていま
      せんでした。顧問料の対価として提供された成果物は見当たりません。
     日産のコーポレートジェット及びチャータージェットを自身及び家族の私的用途に使用し
      ました。かかる私的用途による推定増分費用は、6.1 百万米ドルであり、うち日産が負担し

                                7
      た金額は 4.4 百万米ドルです。本件について、日産で関与者が存在した事実は、認識してお
      りません。
     ゴーン氏は、秘書室長(当時)を関与させて株式会社新生銀行との為替スワップ取引を日
      産に付け替え、日産には実損が発生しましたが、ゴーン氏から実損分が日産に支払われま
      した。取締役会には、上記取引の内容は開示されませんでした。

(3)    RNBV 共同調査による主な発見事項

     RNBV の取締役会は日産及びルノーから派遣された役職員(ゴーン氏、ケリー氏、西川氏、
      CEO オフィス長(当時)を含みます。在任期間はそれぞれ異なります。)によって構成さ
      れていました。RNBV の取締役会は RNBV の業務についてオランダ法上必要とされる
      RNBV としての意思決定の形式的な承認や Alliance Board Meeting の決定の形式的な承認等
      の最小限の監督しか行っておらず、RNBV の予算及び財務諸表の承認も形式的なものに過ぎ
      ず、ガバナンスが有効に機能していませんでした。RNBV は日産とルノーによる出資比率が
      それぞれ 50%であり、重要性が乏しいと判断していたことから日産又はルノーの連結/持
      分法適用対象会社とされていなかったため、両社の監査手続の対象となっていませんでし
      た。日産のオランダ現地法人からの兼務者や東京本社からの兼務者で構成された RNBV の
      従業員は、社長であるゴーン氏の秘密主義を背景に、その職責が縦割りであったために、
      事務的にほとんどの費用の支出手続きを行っていた日産の秘書室長(当時)と RNBV の
      Controller を除いて、RNBV の費用構造の全体像を理解している人はいませんでした。
      このように、RNBV が日産及びルノーの連結対象外で、日産及びルノーの内部監査等内部管
      理部門からの牽制が働かなかったこと、業務の縦割りに加えて、日産及びルノーから派遣
      された各取締役が、RNBV をアライアンスの議論を行うためだけのプラットフォームに過ぎ
      ず、実態のない会社であると捉え、内部管理等に関心を示さなかったこと、さらに、社長
      であったゴーン氏が秘密主義が重要であるとして、予算や財務諸表についても、詳細を開
      示することなく、取締役会で承認させていたこと等が、RNBV のガバナンスが形骸化し、有
      効に機能しなかった原因です。
     RNBV は、ベルサイユ宮殿でのパーティー費用、リオのカーニバルやカンヌ映画祭における
      ゲストの招待費用、マルモッタン美術館での夕食、パリのカルティエでの贈答品の購入、
      日産のビジネスが殆どないレバノンの法律事務所の弁護士費用等、ゴーン氏の個人的な費
      用及び RNBV の業務目的と無関係な費用として、少なくとも 390 万ユーロを支出したものと
      見受けられます。
     2009 年から 2018 年にかけて、RNBV は、ゴーン氏に代わり約 237 万ユーロの寄付を行いま
      した。寄付は、学校等の教育機関を中心に、10 の機関に対して行われており、その内、9 の
      機関は日産のビジネスがほとんどないレバノンの学校や非営利団体に対するもので、多く
      の場合、ゴーン氏個人の名前で行われており、RNBV と業務と関係のない可能性が高いもの
      です。
     ゴーン氏は、行先や家族同伴等の事実から、アライアンスの業務とは無関係な可能性が高
      い目的のために、コーポレートジェットを利用しました。これらの個人的な渡航にかかる
      費用は、市場価値に換算すると少なくとも 310 万ユーロに上り、RNBV が被ったコストは少
      なくとも 510 万ユーロに上ります。
      ケリー氏は、RNBV の職員を兼務していた日産の秘書室長(当時)が RNBV を代表してサ
      インした契約に基づき、2016 年に、RNBV からコンサルタントフィーとして 20 万米ドルを
      受領しました。しかし、コンサルタントとしての業務が RNBV に対して提供されることは
      ありませんでした。また、RNBV は、2013 年から 2017 年にかけて、ルノーの上級役員であ

                                8
      った取締役 1 名に対して 60 万ユーロの役員報酬を支払いました。同氏以外に RNBV の役員
      で、日産又はルノーからの報酬に加えて、役員報酬を受け取っている人はおらず、同氏に
      対する役員報酬の支払いについては、2013 年 3 月に新設され、新設時に 1 度開催されただけ
      でそれ以降開催されることのなかったガバナンス・管理・報酬委員会で決議されている点
      で異例であり、かかる報酬の合理性について納得感のある説明はありませんでした。
     なお、寄付を含めた RNBV の費用の支払いについては、2011 年度以降 2 百万ユーロを上限
      に取締役会から支出について包括委任を受けていた日産の秘書室長(当時)が RNBV の職
      員として、ゴーン氏の指示に従い、事務的に支払手続きを行っていました。

(4)    CEO リザーブを利用した支出

     日産の予算管理上、各部門の予算の枠外で支出をするための「CEO リザーブ」と呼ばれる
      予算項目が、2009 年ころに創設されました。中東地域の営業担当者を関与させ、CEO リザ
      ーブを利用していわゆる「CEO 案件」に関する、他部署が探知することが難しい形での支
      出が実行されました。CEO リザーブは、CEO が承認したという前提がまずあって、その後、
      各部門から所定の手続に則った出金手続が行われました。そのため、日産社内の一部の部
      署は出金手続に関与しているものの、支出に対する牽制機能に問題があったため、支出の
      適切さに疑義を述べることは事実上困難でした。
     具体的には、ゴーン氏は、国外の知人から私的な資金援助を得ていることを当社取締役会
      及び関係部署に秘したまま、当社子会社から当該知人の経営する企業に対し、CEO リザー
      ブを使用して、特別ビジネスプロジェクト費用などの名目で合計 1,470 万米ドルの支払いを
      行わせました。また、国外の販売代理店の関係者からゴーン氏自身又はその関係企業に対
      して数千万米ドルの支払いがなされていることを当社取締役会及び関係部署に秘したまま、
      当社子会社から当該販売代理店に対し、CEO リザーブを使用して、販売奨励金名目で合計
      3,200 万米ドルの支払いを行わせました。

(5)    ケリー氏の取締役報酬

 ケリー氏は、2013 年 3 月期から 2017 年 3 月期にかけて、日産における取締役報酬が毎年度 1
億円を超えていました。しかしながら、ケリー氏は、ゴーン氏及び秘書室長(当時)の関与の
もと、複数の方法を用いて、報酬を開示しませんでした。これらの事業年度において過少に開
示されていた額は、累計 626 百万円です。
 また、ケリー氏は、新株予約権(行使価額を会社に払い込み株式を取得する権利)を 2008 年
に付与されており、他方で株価連動型インセンティブ受領権の付与は受けていなかったにもか
かわらず、2017 年になって、2008 年には新株予約権ではなく株価連動型インセンティブ受領権
の付与を受けていたかのように偽装し株価連動型インセンティブ受領権を行使したかのような
経理処理をした上、さらに権利行使日前日より高い株価を使って報酬額の計算を行い、その結
果、不正に 717 万円を受領しました。

(6)    株価連動型インセンティブ受領権行使日操作に伴う西川氏等への報酬の不正支給

 株価連動型インセンティブ受領権に関する追加調査の結果、西川氏等の役員及び一部執行役
員に対しても、秘書室による株価連動型インセンティブ受領権行使日操作により、本来受け取
るべきであった報酬以上の金額を支給していたことが発見されました。
 西川氏については、2013 年に株価連動型インセンティブ受領権を行使した際、秘書室による
行使日の操作により税引前で 9,650 万円(税引後 4,744 万円)を水増しされた金額を支給してい

                            9
ました。
  また、西川氏以外にも、1 名の役員と 5 名の執行役員等に対し行使日の操作により水増しされ
た金額を支給していました。水増しされた金額は、6 名分の合計で、税引前で 5,772 万円です。
  なお、西川氏分についてはケリー氏と秘書室長(当時)の発案により実行されました。他の
役員及び執行役員等分については秘書室が発案して手続きを行っており、これも 1 名の役員及び
5 名の執行役員等が発案ないし実行したものではないことが証拠上確認されています。しかし、
当該 7 名が秘書室に株価連動型インセンティブ受領権の行使手続きを代行させていた点は社内規
程違反に該当することから、受領時役員であった西川氏ともう 1 名及び退職者 1 名、計 3 名を除
いた 4 名に対して執行役員以上(取締役を含まない。)の社内処分を検討するために 2019 年 9
月に設立された Corporate Action Committee(以下「CAC」といいます。CAC は CEO、COO、 及
び人事・秘書室担当役員により構成されています。)が社内処分を決定しております(後記
Ⅱ.2.(1)参照)。受領時役員であった西川氏ともう 1 名に対しては、9 月の監査委員会におい
て、取締役の善管注意義務違反の観点から株価連動型インセンティブ受領権の問題に関する責
任追及の要否について検討を行った結果、両名にケリー氏及び秘書室の発案による過大な支給
についての認識はなく、第三者による行使日操作の結果であることから、違法性はないもの
の、社内規則違反であるため、西川氏については、自主返納を求める他、道義的責任を含めた
責任問題について取締役会の議論に委ねること、もう 1 名の役員については既に退任済であった
ことから、自主返納は求めるものの、それ以上の責任追及は行わないことが妥当と判断し、同
月の取締役会に報告するとともに、責任追及の方針について勧告しております。同月の取締役
会は勧告を受け入れるとともに、株価連動型インセンティブ受領権の問題を受けた西川氏の道
義的責任を含む責任問題について議論し、その結果、法的責任は無いものの、社内規則違反で
あるため、西川氏は過大支給されていた金額の返納に同意し、またこの問題によって混乱を生
じさせた責任をとる為に同月の取締役会後、代表執行役社長兼最高経営責任者を辞任いたしま
した。また、退職者を除く当該 6 名に対しては水増しされた金額の返還請求を行っております
が、前例のない手続きの為、確認に時間を要しており、未だ返還されていません。2020 年 3 月
までには返還を受ける予定です。

II.   改善措置

1.    発生原因の分析

当社は、特別委員会報告書を踏まえ、不正行為の主な根本原因は、ゴーン氏への人事・報酬を
含む権限の集中であると考えております。ゴーン氏は、経営者不正を発見し得る一部管理部署
の権限を、ケリー氏をはじめとする特定少数の者に集中させることで、当該部署をブラックボ
ックス化し、ゴーン氏の私的利益の追求を探知することが難しい体制を作りあげました。その
結果、一部の管理部署の牽制機能が、ゴーン氏の私的利益の追求に関する問題点については必
ずしも有効に機能しませんでした。具体的には、以下のとおりです。なお、特別委員会報告書
以降の内部調査で発見された不正行為の根本原因についても同様であると考えております。

(1)   1 人の取締役に権限が集中したこと(特に人事・報酬)

 日産の再建への貢献を背景に、ゴーン氏に対する個人崇拝が進み、ゴーン氏の活動を日産社
内で不可侵領域とみなす風潮が形成されていました。ゴーン氏が大株主のトップを兼任したこ
とで、その傾向はさらに強くなりました。これを背景に、ゴーン氏は、人事と報酬に関する権
限を実質的に掌握することで、自身への権限集中を実現しました。報酬に関する権限について、
具体的には、ルノーが、当社株式の 43.4%を保有する大株主として、当社取締役の報酬総額の上
                               10
限について、実質的な決定権限を有していました。日産は、取締役会決議により、そのルノー
のトップを兼任していたゴーン氏に対し、ゴーン氏自身の報酬の決定も含む、取締役の報酬の
個別額を決定する権限を付与していました。これにより、取締役の報酬総額と個別配分の決定
権限が、ともにゴーン氏に帰属する構造になっていました。

(2)   一部の管理部署がブラックボックス化したこと

 ゴーン氏は、人事本部、CEO オフィス、秘書室、法務室、内部監査室等、数々の主要な部署
の責任者たる地位を、ケリー氏をはじめとし、CEO オフィス長(当時)及び秘書室長(当時)
に集中させ、ゴーン氏の報酬や会社資金・経費の私的利用に関与する役職員をこれらの責任者
と秘書室の一部の担当職員に限定しました。これらの責任者は、報酬支払いや資金の私的利用
に関連する問題を監査役や経理部などから指摘された場合、「CEO 案件」であると説明するな
どして詳細の説明を拒みました。これにより、ゴーン氏は一部の管理部署のブラックボックス
化を実現しました。これらの責任者や部署を通じて、ゴーン氏の報酬等に関する検討や会社資
金・経費の私的利用及び西川氏等への報酬の不正支給の原因となった秘書室による株価連動型
インセンティブ受領権行使日操作が実行されていたため、本件不正行為等が監査役や他部署
(経理部等)に知られることが阻まれてきました。

(3)   取締役会の監督機能が一部有効に機能しなかったこと

 ゴーン氏は取締役会について、会議をできる限り短い時間で終了することを求め、会議の場
で議案に対する質問や意見をさせない雰囲気を作りました。また、ゴーン氏は、自己の利益を
図る取引に関して、取締役会において利益相反取引の承認を得る必要がある場合も、必要な事
実を開示しませんでした。ゴーン氏が事実を隠したため、取締役会に参加した取締役は提出さ
れた議案に関して不自然さを探知することができず、このような取締役会の状況について、監
査役もかかる状況を是正できませんでした。

(4)   他の会社機関の監視・監査機能が一部有効に機能しなかったこと

 取締役の権限濫用は、会社法上、取締役会による監督のみならず、その他の機関による監
視・監査によって未然に防がれることが期待されます。しかしながら、本件不正行為等におい
ては、例えば、非連結子会社及び持分法非適用関連会社に対する監視・監査の程度が連結子会
社に対するそれと比べて低いことを踏まえて、非連結子会社とされた ZiA 社や持分法非適用関連
会社とされた NMBV 及び RNBV が利用されていました。また、監査役は、ZiA 社の実態に疑問
を抱きましたが、ゴーン氏及びケリー氏をはじめとする特定少数の者がブラックボックス化し
た部署の存在により、その実態の解明には至りませんでした。

(5)   社内各部署の牽制機能が一部有効に機能しなかったこと

 ゴーン氏の報酬支払いや資金の私的利用の一部、及び西川氏等への報酬の不正支給の原因と
なった株価連動型インセンティブ受領権行使日操作は、これに深く関与した秘書室や CEO オフ
ィスの他にも、法務室、内部監査室、経理部といった、他部署の目に触れる機会が全くないわ
けではありませんでした。しかしながら、これらの他部署には、適切な判断に必要な情報が隠
されたため、問題を探知するに至りませんでした。また、問題を探知した場合も、例えば、探
知した部署が法務室や内部監査室である場合、ゴーン氏が当該部署の責任者をケリー氏をはじ
めとし、CEO オフィス長(当時)及び秘書室長(当時)に集中させ、当該部署の責任者が了解

                        11
しているという外観を創り出したことによって、当該部署はそれ以上の追及をすることができ
ませんでした。また、探知した部署が経理部である場合、当該部署それ自体はケリー氏らの影
響下になかったものの、ゴーン氏及びケリー氏をはじめとする特定少数の者により情報が隠さ
れたため、当該部署はそれ以上の追及をすることができませんでした。

2.     再発防止に向けた改善措置

当社は、上記の原因分析に基づき、順次、以下の改善措置を講じました。改善措置の進捗は、
2019 年 6 月までは、当社の独立社外取締役に対するコーポレートマネジメントオフィスによる
定期報告という形で、2019 年 6 月 25 日付けで指名委員会等設置会社に移行した後は、独立社外
取締役が過半数を占める取締役会における定期報告という形で、管理してまいりました。ま
た、当社は、コーポレートウェブサイトに当社のコーポレートガバナンスに関して情報を提供
するサイトを設けました(https://www.nissan-
global.com/JP/COMPANY/PROFILE/CORPORATEGOVERNANCE/)。
その後、2019 年 9 月末及び 10 月中旬に、「サステナビリティレポート」、「アニュアルレポー
ト」により、日産のコーポレートウェブサイトに、今般のガバナンス改善に関する取り組みの
詳細を公開しました。具体的には、ガバナンス体制変更に至った経緯、指名委員会等設置会社
としての取締役会や委員会の構成と役割、各取締役の紹介、木村取締役会議長や豊田筆頭社外
取締役からのメッセージなどの公開を行っています。
今後は、更なる情報の透明性向上をめざし、より多くのステークホルダーに容易にご理解いた
だけるようなコンテンツの構築とウェブ上での公開をめざし、取り組んでまいります。

(1)    不正を行った代表取締役 2 名の解任

改善報告書に記載した改善策
       ゴーン氏につき、社内調査の結果、本人主導による不正行為を確認したため、2018 年 11 月
     22 日開催の取締役会決議に基づき、代表取締役及び会長職を解職しました。また、2019 年 4
     月 8 日開催の株主総会決議に基づき、同氏を取締役から解任しました。

       また、ケリー氏につき、社内調査の結果、ゴーン氏とともに本事案の首謀と判断されたた
     め、2018 年 11 月 22 日開催の取締役会決議に基づき、代表取締役を解職しました。また、
     2019 年 4 月 8 日開催の株主総会決議に基づき、同氏を取締役から解任しました。

      これは、上記 1 記載の各原因に対応する措置です。



実施・運用状況
   改善報告書提出時に、上記「改善報告書に記載した改善策」を実施済みです。
   また、ゴーン氏、ケリー氏以外に不正に関与していた者の処分については、追加の社内調
   査を実施し、 2020 年 1 月 13 日に開催された CAC で決定されました。本件は多種多様な不
   正行為が長期間にわたって犯されてきており、関係者の数が多いうえ、不正行為が日本国
   内にとどまらず海外に及び、処分決定の為に必要な事実関係の把握は評価にも相当な時間
   が必要となるため、調査対象者の優先順位をつけました。関係者のうち部長級以上でかつ
   現職に於いて社内のガバナンス上大きな影響を与える可能性が高い者を優先し、CAC にて
   3 名の処分を決定しています。
   それ以外の者の処分についても準備が整い次第順次決定していきます。
                            12
(2)    代表取締役への他の取締役の報酬配分を決定する権限の付与の停止

改善報告書に記載した改善策
   当社は、ゴーン氏らによる重大な不正行為を受けて、2018 年 12 月 17 日、取締役会長に対
  する取締役報酬の配分の決定権限の付与を撤回しました。以後、2019 年 6 月 25 日に指名委員
  会等設置会社に移行するまでの間、取締役の報酬配分は、独立社外取締役委員会において、
  都度、審議したうえで、取締役会において決定しました。

      これは、上記 1(1)、(2)及び(3)記載の原因に対応する措置です。



実施・運用状況
   改善報告書提出時に、上記「改善報告書に記載した改善策」を実施済みです。



(3)   当社の取締役会の事前承認を受けない子会社・関連会社からの報酬受取りの禁止

改善報告書に記載した改善策
   当社は、2018 年 12 月 17 日付で、取締役及び監査役が、取締役会に対しその内容を全面的
  に開示して承認を受けることなく、日産の子会社、関連会社又は関係者(連結しているか非
  連結かを問わない)から報酬を受け取ることを禁止しました。現時点で具体的な内容及び実
  行時期は未定ですが、子会社側の支出の具体的な統制(例えば、子会社を利用した支出を防
  止する体制を整えるなど)についても、今後検討します。

      これは、上記 1(1)、(2)及び(3)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況

      当社取締役会の事前承認を受けない子会社・関連会社からの報酬受取りの禁止については、
      改善報告書提出時に、上記「改善報告書に記載した改善策」を実施済みです。

      統制の具体的な内容として、本年度に在籍した取締役・監査役・執行役の子会社兼務の状
      況と子会社からの報酬支払いの有無の調査を本報告書の提出までに完了致しました。調査
      の結果、正当な理由の無い報酬支払いは確認されませんでした。
      その調査結果を踏まえて、2020 年度以降の統制の運用を確定致します。



(4)    CEO リザーブの廃止

改善報告書に記載した改善策
    当社は、2019 年 3 月 20 日付で、CEO リザーブを廃止しました。予算設定の過程で、グル
  ープ全体の予算管理を担当するグローバルコントローラーである経理担当常務執行役員及び
  CFO が従来の CEO リザーブが存在しないことを確認しています。またその支払い申請手続き
  が現在の決定プロセスの中に存在せず、申請そのものができません。


                          13
      これは、上記 1(1)、(2)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況
   改善報告書提出時に、上記「改善報告書に記載した改善策」を実施済みです。



(5)    取締役会での活発な議論のためのプレミーティングの実施

改善報告書に記載した改善策
   当社は、2019 年 2 月以降、取締役会の開始に先立って、各出席者の議題への理解を深め、
  実質的な議論を促進するため、事前のプレミーティングを実施しています。取締役会におい
  て、説明者及び担当者が出席役員からの質問又は意見に応答するために十分な時間を設けて
  います。取締役会の閉会後は、各出席取締役の理解を相互に確認し、より詳細な情報共有を
  行う等の目的で、必要に応じ、フォローアップの場を設けています。

      これは、上記 1(3)記載の原因に対応する措置です。



実施・運用状況

      当社は、2019 年 2 月以降、取締役会の開始に先立って、各出席者の議題への理解を深め、
      実質的な議論を促進するため、事前のプレミーティングを実施しています。取締役会にお
      いて、説明者及び担当者が出席役員からの質問又は意見に応答するために十分な時間を設
      けています。取締役会の閉会後は、各出席取締役の理解を相互に確認し、より詳細な情報
      共有を行う等の目的で、必要に応じ、フォローアップの場を設けています。取締役会にお
      いては、15 分から 30 分程度の予備時間を設けるとともに、議題に合わせた時間配分を行
      ってまいりました。また、取締役会の事前説明(プレミーティング)、取締役会、及び社
      外取締役のみによる会合(以下「社外取締役ミーティング」といいます。)で、要望事項
      や確認事項が出た場合は、基本的に、メールで、取締役会室から全取締役に共有する形で、
      その後の情報共有及び報告などのフォローアップを実施しています。



(6)    取締役及び執行役員への行動規範教育の徹底

改善報告書に記載した改善策
   当社は、2019 年 2 月、当社が従来導入しているグローバル行動規範(Global Code of
 Conduct)に関し、全取締役及び執行役員を対象とする研修を実施しました。また、グローバ
 ルコンプライアンス室が、当該研修の受講状況についてモニタリングを実施し、2019 年 4 月、
 CEO が議長を務める内部統制委員会において受講状況を報告しました。内部統制委員会にお
 ける議論の内容については、2019 年 5 月開催の取締役会において報告がなされました。なお、
 当該研修に対し、2019 年 6 月時点において、全取締役及び執行役員が受講しております(一
 部調整中のため、ルノーとのアライアンスによる執行役員 1 名は除く)。

  当社は、取締役及び執行役員に対し、上場会社役員としてのコンプライアンス及びガバナ
 ンスに対する意識を高めるために、グローバル行動規範(Global Code of Conduct)を含む様々
 なコンプライアンス(決裁承認プロセス(以下「DOA」といいます。)、贈収賄、個人情報
 保護等)に係る研修を、月 1 回程度のペースで継続的に実施してまいります。グローバルコン
 プライアンス室は、少なくとも年 2 回の定期的なモニタリングを通じて、取締役及び執行役員

                           14
が実際に研修を受講していることを確認し、仮に未受講の取締役及び執行役員が発見された
場合には、内部統制委員会(年 2 回実施予定)及び取締役会への報告を通して、受講を推奨し
てまいります。

 当社の役員以外の職員に対しても、コンプライアンス及びガバナンスの遵守を促進するた
め、グローバル行動規範(Global Code of Conduct)を含む様々なコンプライアンス(DOA)、
贈収賄、個人情報保護等)に係る研修を継続的に行うとともに、グローバルコンプライアン
ス室による受講状況のモニタリング(少なくとも年 2 回)を実施してまいります。また、報酬
を管理する秘書室その他の関連部署において、役員報酬の設計・開示制度に関する正しい理
解、及び報酬内容の操作・関連書類の改ざんの禁止を担保するため、月 1 回程度のペースで研
修を実施してまいります。

 これは、上記 1(3)、(4)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況

  ① コンプライアンス研修の実施

  以下のとおり、取締役、執行役、執行役員に対する研修を実施してまいりました。

          実施期間            内容             所管部署      対象者
     2019 年 6 月 5 日~6 会社法説明         法務室         取締役 9 名
     月 20 日
     8月 2日           同上             同上          執行役・執行役員
     11 月 6 日        環境マネジメント       コンプライアンス    取締役 8 名
                     個人情報保護         室(各関連部署研
                     輸出入コンプライ       修内容から作成
                     アンス            ※)
                     贈収賄防止
                     DOA
                     行動規範(集合研
                     修)
     11 月 8 日        同上             同上          取締役 1 名
     11 月 22 日       同上             同上          執行役・執行役員
                                                計 40 名(フェロー
                                                2 名を含む。)
     12 月初旬~2020 年   情報セキュリティ       コーポレートアド    取締役 10 名
     1月              (E ラーニング)      バイザリーオフィ    執行役・執行役員
                                    ス(情報セキュリ    計 49 名(フェロー
                                    ティ)         2 名を含む)
     2020 年 2 月~     2019 年度グローバ    グローバルコンプ    執行役・執行役員
                     ル行動規範(E ラ      ライアンス室      49 名(フェロー 2
                     ーニング)                      名を含む)
    ※各関連部署       環境&ファシリティエンジニアリング部、人財開発部、財務部、法務室




                               15
  2019 年 11 月 18 日に開催した 2019 年上半期に係る内部統制委員会において、役員に対する
  コンプライアンス研修の受講状況及び受講計画を報告しました。取締役・執行役・執行役
  員に対する研修については、対象者が参集する機会を利用して対面で実施することにより
  受講の促進を図っております。また、不参加であった場合には個別に別途日程調整または
  資料の共有等のフォローをすることとしております。

  2020 年度第 1 四半期の内部統制委員会において、2019 年度の通期報告を行うことを予定し
  ています。

  以下のとおり、報酬を管理する秘書室その他の関連部署において、活発なディスカッショ
  ンが有効であると考え、勉強会形式での研修を実施してまいりました。

        日付              内容             参加部署及び出席人数
     7 月 26 日   「現行の役員報酬決定プロセスの解説     部署:秘書室、経理部、
                および、要改善点の整理」          財務部、内部監査部
                「新しい役員報酬決定プロセスの設計     出席人数:18 名
                アプローチの検討およびディスカッシ
                ョン」
     8月 7日      「関連部署における役員報酬の設計ア     部署:秘書室、経理部、
                プローチおよび現行のプロセスに関す     財務部、内部監査部、人
                る懸念事項の共有」             事部
                「新しい役員報酬の設計アプローチの
                                      出席人数:21 名
                問題点および今後のアクションの検討
                およびディスカッション」
     8 月 26 日   「新制度設計における秘書室の役割お     部署:秘書室、経理部、
                よび機密情報の取り扱いに関する検討     人事部、
                およびディスカッション」          出席人数:8 名
     8 月 30 日   「新制度設計における関連部署の役割     部署:秘書室、経理部、
                および役員報酬関連口座に関する検討     財務部
                およびディスカッション」          出席人数:8 名
                「新しい役員報酬決定プロセスの導入
                時期に関する検討およびディスカッシ
                ョン」
  上記ディスカッションを実施した結果、報酬の計算及び検証プロセスの不備は改善しまし
  たが、プロセス全体をより詳細に理解した上で、より効果的かつ効率的な統制に改善すべ
  く 2019 年内に追加調査を実施しました。追加調査の結果を受けて、人事部によるレビュー
  ミーティングを定期的に開催し、改善の進捗確認を行い、今年度末までを目処に課題の解
  決を図ります。

(7) 会計処理と役員報酬の明細情報の突合等、役員報酬に関する適正な会計処理のための管
理体制の強化

改善報告書に記載した改善策
  当社は、従来、役員報酬に関し、秘書室が作成・管理している役員報酬の個人別の明細情
 報は経理部へ回付されず、秘書室が記帳した会計仕訳・支払伝票に合計金額のみがわかる証
 憑を回付し、承認・支払をしていました。このため、会計処理体制、及び、開示管理体制を

                         16
 強化するため、2018 年度の有価証券報告書の作成にあたり、秘書室が作成した役員報酬の明
 細情報を経理部に共有した上、経理部においても、個々の役員に関する会計仕訳・支払情報
 等と突合・検証する管理体制の強化に取り組み、2018 年度の決算の過程において運用を開始
 いたしました。
  なお今後においても、役員報酬に関しては、全件、その支払いの適正性を経理部が確認し
 てまいります。
  これは、上記 1(2)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況
   2018 年度の有価証券報告書における役員報酬の開示については、改善報告書提出時に、上
   記「改善報告書に記載した改善策」を実施済みです。

  2019 年度においては、全役員の支払いの適正性を確認するために、各月の役員個人別の報
  酬及び変動賞与に関する給与明細・会計仕訳・支払証憑を、経理部が四半期毎に突合・検
  証を行っております。

  また、2019 年度の有価証券報告書の作成にあたっては、秘書室が作成した役員個人別の報
  酬の明細情報を、経理部が四半期毎に検証した情報と整合していることを確認した上で、
  役員報酬開示を行う予定です。



(8) 株価連動型インセンティブ受領権の行使による利益を、役員報酬として追加開示するこ
とを含む適正な役員報酬開示のための管理体制の強化

改善報告書に記載した改善策
  当社は、従来、行使条件の決定において、例年 4 月に取締役会で、当該事業年度に付与さ
 れる株価連動型インセンティブ受領権の発行日、発行総数、行使価格及び権利行使期間を決
 定した上で、付与対象者及び付与数等はゴーン氏に一任していました。今後は報酬委員会で
 決定することを検討しています。株価連動型インセンティブ受領権に関する役員報酬に関
 し、開示管理体制を強化するため、2018 年度の有価証券報告書の作成にあたり、秘書室が作
 成した株価連動型インセンティブ受領権の明細情報を経理部に共有した上、経理部において
 も、個々の役員に関する会計仕訳・支払情報等と突合・検証する管理体制の強化に取り組
 み、2018 年度の決算の過程において運用を開始いたしました。
  なお、行使状況の管理については、従来より外部の管理システムを利用していることか
 ら、上記の経理部における突合・検証過程において、当該システムデータと秘書室が作成し
 た明細情報の照合手続きも追加しています。

  これは、上記 1(2)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況
   2018 年度の有価証券報告書における株価連動型インセンティブ受領権に関する役員報酬の
   開示については、改善報告書提出時に、上記「改善報告書に記載した改善策」を実施済み
   です。




                      17
  2019 年度においては、全役員の株価連動型インセンティブ受領権行使時の支払いの適正性
  を確認するために、年度内に行使された株価連動型インセンティブ受領権については、秘
  書室が作成した株価連動型インセンティブ受領権の付与レターなど役員個人別の明細情報
  と会計仕訳・支払証憑を、経理部が四半期毎に突合・検証を行っております。株価連動型
  インセンティブ受領権の行使状況の管理については、従来より外部の管理システムを利用
  していることから、上記の経理部における突合・検証過程において、当該システムデータ
  と行使申請書及び秘書室が作成した明細情報の照合手続きを、追加しています。なお、従
  前、例外的に一部の役員を対象に行われていた、株価連動型インセンティブ受領権行使時
  の秘書室による代行入力については、上記「4.(6)株価連動型インセンティブ受領権行使日
  操作に伴う西川氏等への報酬の不正支給」で判明した事実を踏まえ、2019 年 9 月 9 日付け
  で廃止しました。現在はインターネット環境により外部システムにアクセスができないな
  どやむを得ない事情がある場合を除き、本人のみが外部システムを利用して行使の手続き
  を実施しております。

  2019 年度の有価証券報告書の作成にあたっては、秘書室が作成した役員個人別の報酬の明
  細情報を、経理部が四半期毎に検証した情報と整合していることを確認した上で、役員報
  酬開示を行う予定です。

  なお、2019 年 9 月 9 日開催の報酬委員会において、2020 年度以降は、株価連動型インセン
  ティブ受領権の付与を廃止することを、決定しています。なお、この決定は来年度からの
  付与を廃止するものであり、これまでに付与された権利は継続されます。



(9) 取締役会・エグゼクティブコミッティから経理部への新規会社設立の提案に関する情報
提供プロセスの構築

改善報告書に記載した改善策
  当社は、従前から、経理部内に子会社を連結範囲に含めるか否かを決定する会社設立委員
 会を有していましたが、会社設立に際して会社設立委員会に対する情報提供義務は、正式に
 は制度化されておりませんでした。そのため、2019 年 4 月に、不適切な目的に基づいて当社
 グループ会社が設立される事態の防止及び適切な連結財務情報の収集・作成のため、会社設
 立委員会への情報提供ルートを明確にし、会社設立委員会が新規会社設立等の提案者及び意
 思決定者から、エグゼクティブコミッティの事務局を通じ詳細な関連資料を確実に入手可能
 とする体制を明確にいたしました。かかる体制により、会社設立委員会が従前より十分な検
 討を経て適切な判断が行えるようにいたしました。

  加えて、2019 年 5 月 21 日付で、会社設立等一定の事項の提案者となる関係各部署に対し
 て、DOA における当該事項の決定にあたり、経理部による検証の手続きを踏むよう、周知し
 ました。これは、会社設立等の意思決定に必ず経理部が関与し、かつ経理部が関連する情報
 を網羅的に入手することで、提案部署への牽制機能を働かせることを企図しております。な
 お、かかる経理部による検証手続きを正式に織り込む DOA の改定は、2019 年度第 2 四半期
 中の達成を目指しております。




                        18
  また、現時点で具体的な内容及び実行時期は未定ですが、非連結子会社の事業の状況、当
 社の主要な事業運営とのかかわりなどについて再検討を行い、今後の経営における位置づけ
 を会社ごとに決めた上で、適切な監査・監視の方向性を今後議論していきます。

  これは、上記 1(4)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

  なお、当社は、ZiA 社を解散させる予定であり、RNBV については休眠会社とすることを
 ルノーと合意しています。

実施・運用状況
   ①  経理部による検証手続き

  2019 年 4 月以降、子会社設立を含む案件に関する情報は、エグゼクティブコミッティ事務
  を担当するコーポレートガバナンスサポート部より会社設立委員会の担当者に提供する形
  で、上記「改善報告書に記載した改善策」記載の体制を運用しています。

  2019 年 5 月に、会社設立等一定の提案者となる関係各部署に対して、DOA における当該事
  項の決定にあたり、経理部による検証の手続きを踏むよう周知しています。これは、各地
  域マネジメントコミッティ(地域別に、グループ会社横断的な組織として設立される会議
  体)で決定される新規会社設立も子会社の経理担当役員経由で会社設立等の意思決定に必
  ず経理部が関与し、かつ日産本社経理部が関連する情報を網羅的に入手することで、提案
  部署への牽制機能を働かせることを企図しております。

  経理部は、関係各部署と調整しながら会社設立等に関する DOA の改訂作業を行っており
  ます。かかる改訂作業では、下記のような改善を目指しています。
     会社設立等に関して経理部が必ず検証する。
     会社設立等が関連する複数の DOA を統合して明確化を図る。

  かかる経理部による検証手続きを正式に織り込む DOA の改定案は 2019 年度第 3 四半期に
  おいて作成され、現在経理部担当常務執行役員の確認を受けています。確認の結果、追加
  の修正と強化の指示が経理部に対し出ました。これらが完了次第 2019 年度第 4 四半期の
  DOA コミッティにおいて、審議と検証を行います。DOA コミッティは DOA の新設、修
  正、削除を審議し確認する会議体です。上記改定案はその後エグゼクティブコミッティに
  付議され、最終化されます。さらに、2019 年度第 2 四半期中に当社は全子会社向けに保有
  する投資有価証券中に、本社経理部への報告が漏れている子会社・関連会社情報が無いか
  再度確認の徹底を依頼しました。この調査は、日産グループの議決権保有比率が 15%以上
  の被投資会社を網羅的に対象としました。調査の結果、報告が漏れている会社情報はあり
  ませんでした。

  ②   非連結子会社に対する適切な監査・監視

  経理部が通常の業務プロセスとして収集している情報を整理し、連結対象会社の範囲の再
  検討のため必要となる追加情報が何であるかの確認を、経理部が継続して行っています。
  当社は、連結や持分法への変更を検討するため 2018 年度末時点の非連結子会社及び関連会
  社の事業、財務の状況の再検証を実施しており、必要に応じた変更を実施することで、よ

                       19
       り強化された統制、ガバナンスの下に置いていくことを決定しました。これについては、
       2021 年 3 月までに実施を完了させる予定です。また、2019 年度以降は財務諸表上の重要性
       に関わらず連結会計の原則に即した会計方法を適用する方針としています。上記の変更の
       結果削減される非連結子会社及び持分法非適用関連会社に対して、継続してグループで保
       有し続ける場合には、経理部が 2020 年 3 月末までに、それぞれの会社を監督する責任を、
       適切な役員やマネジメントコミッティの議長に割り当てることを取締役会に提案すること
       を決定しました。

       上記のとおり子会社等に関する対応の進捗状況について、経理部等関係部署及び会計監査
       人等より、監査委員は適宜報告を受けます。

       ZiA 社及びその子会社 4 社の過年度の財務諸表作成及び監査を進めています。それらの資
       産の処理と適切な閉鎖手続きが実行され次第、解散する予定です。解散までの間は、過年
       度の財務諸表の妥当性の確認と当年度の財務諸表の作成が完了次第、日産連結財務諸表に
       ZiA 社及び子会社 4 社の業績を取り込む予定です。
       また、NMBV 及び RNBV は現在、特段の業務を行っておりません。今後においても特段の
       業務を行わせないことを NMBV については三菱自動車と、RNBV についてはルノーと合意
       しています。また、2019 年 3 月のルノー、日産及び三菱自動車によるアライアンス オペレ
       ーティング ボード創設決定に基づき、アライアンスにおいても、NMBV 及び RNBV は現
       在ガバナンスの機能や役割を担っておりません。

(10)   取締役会の構成・機能の強化

改善報告書に記載した改善策
   当社は、特別委員会報告書における提言を踏まえ、取締役会の構成・機能を強化する観点
  から、2019 年 6 月 25 日開催の定時株主総会及び取締役会決議に基づき、同日付で、以下の体
  制となりました。
    ① 取締役の過半数を、独立性を有する社外取締役としました。
    ② 取締役は、11 名としました。これは、活発な議論と迅速な意思決定を可能にする適
      切な規模として、当面は 11 名程度が望ましい旨のガバナンス改善特別委員会の提言
      を参考にし、暫定指名・報酬諮問委員会(2019 年 3 月 29 日付で設置された、当社の
      当時の社外取締役を構成員とする会議体)が適正と判断した規模です。
    ③ 暫定指名・報酬諮問委員会の意見を踏まえ、国籍及びジェンダーを含むダイバーシ
      ティに配慮して社外取締役を選任いたしました。
    ④ 取締役会規則に、別途当社が定める独立性基準を満たす社外取締役の中から、取締
      役会議長を定める旨を規定しました。
    ⑤ 当社の当時の社内規程上、会長の権限は(i)株主総会の議長、(ii)取締役会の招集
      権者及び(iii)取締役会の議長でした。権限の一極集中を避けるための方策として、
      このような「会長(Chairman)」職に関する規定は廃止し、(i)は執行役社長兼最
      高経営責任者、(ii)及び(iii)は取締役会議長(社外取締役の中から選定)の権限
      となりました。
    ⑥ 社外取締役のみによる会合を定期的に開催することとしました。独立性を有する社
      外取締役の中から筆頭独立社外取締役を定め、上記会合の議長は筆頭独立社外取締
      役が務めます。なお、筆頭独立社外取締役は取締役会議長を兼任いたしません。


                            20
  ⑦ 取締役会の指示のもと、執行役に対する監督のため必要となる活動並びに取締役
    会、指名委員会、報酬委員会、監査委員会及び社外取締役ミーティングの適切な運
    営に必要となる活動を行う、取締役会室の設定を予定しております。取締役会室
    (監査委員会事務局を除く。)の人事及びその長の評価については、独立社外取締
    役間の協議により選定された独立社外取締役と協議し、妥当性の確認を得なければ
    ならないこととし、取締役会室のスタッフの評価は、執行役の意向のみによって決
    定されない体制としています。但し、監査委員会を補助するスタッフの評価は監査
    委員間で協議し、人事異動や懲戒処分については監査委員会の同意を得なければな
    らないこととしています。
  ⑧ 取締役会は、毎年、自己評価に基づく取締役会の実効性評価を行うものとし、3 年に
    一度は、第三者評価機関を活用した取締役会の実効性評価を行うこととしました。
    加えて、監査委員会は、取締役会の監督機能の実効性について適切な監査を行いま
    す。
  ⑨ 取締役利益相反解消指針を制定し、利益相反の定義及び利益相反を解消するための
    具体的な手続を明確化する予定です。

  これは、上記 1(1)及び(3)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況

  上記「改善報告書に記載した改善策」に記載した①~③、⑤は、改善報告書提出時に実施
  済みです。その他の項目についても、改善報告書に記載した体制・計画に従い、以下のと
  おり、実施・運用いたしました。

  ④について、2019 年 6 月 25 日開催の取締役会において、独立社外取締役の木村康氏を取
  締役会議長として選任しました。

  ⑥について、2019 年 7 月 25 日、10 月 8 日及び 11 月 12 日に社外取締役ミーティングを開
  催しました。今後も定期的に開催を予定しております。

  ⑦について、2019 年 6 月 15 日付けで取締役会室を創設しました。取締役会室長の評価に
  ついては、原則として執行側のプロセスを踏襲します。評価時期が到来する 2020 年 5 月に
  最終的な確認を取締役と行い確定させる予定です。なお、2019 年度の評価については、評
  価時期が到来する 2020 年 3 月下旬より実施する予定です。

  ⑧について、2020 年度第 1 四半期の取締役会報告に向けて、自己評価に基づく取締役会の
  実効性評価の指標を策定し、2019 年度第 4 四半期から 2020 年度第 1 四半期にかけて、第三
  者機関である KPMG コンサルティング株式会社と共に取締役会実効性評価を実施し、評価
  結果及び改善提案を、上記の 2020 年度第 1 四半期の取締役会で行う計画としております。
  なお、今後提出するコーポレートガバナンスに関する報告書において、取締役会の実効性
  評価結果の概要を開示する予定です。

  ⑨について、取締役利益相反解消指針は、2019 年 7 月開催の取締役会で提案し、各取締役
  の意見を踏まえて取締役利益解消組織や利益相反解消手続きなどを定めた取締役利益相反
  解消指針を最終化し、同年 10 月に制定いたしました。

                           21
       なお、当社には役員を退任した後に相談役や顧問に就任している者が従前より存在し、主
       には渉外活動や社外で行われる講演会への参加を担ってきていますが、日常のオペレーシ
       ョンやビジネス判断には関与せず、経営会議にも出席しないこと等から、現役経営陣へ影
       響力を不当に行使する懸念は無く、取締役会の機能に影響を与えるものではありません。
       また、当社は 2020 年 1 月 14 日開催の取締役会において、今後は、相談役・顧問制度を原
       則廃止することを決定いたしました。

(11)   指名委員会等設置会社への移行

改善報告書に記載した改善策
   当社は、特別委員会報告書における提言を踏まえ、2019 年 6 月 25 日付で指名委員会等設置
  会社に移行し、以下の体制を導入いたしました。各委員会の構成メンバーは、別紙3をご参
  照ください。

       ①   指名委員会の委員の過半数を、独立性を有する社外取締役としました。
       ②   指名委員会の委員長を、独立性を有する社外取締役としました。
       ③   指名委員会は、5 名以上の取締役で構成するものとしました。
       ④   指名委員会は、取締役の選解任に関する株主総会議案の内容のみならず、代表執
           行役の選解任に関する取締役会議案の内容を決定する権限、及び執行役社長兼最
           高経営責任者の後継者計画を策定・変更する権限を有し、少なくとも1年に1回
           その見直しを行うこととしました。
       ⑤   指名委員会は、定期的に取締役会の構成員を入れ替えることを目標としていま
           す。
       ⑥   指名委員会の委員は、指名委員会における自身の再指名の審議及び決議への参加
           を禁止されています。
       ⑦   報酬委員会の委員の全員を、独立性を有する社外取締役としました。
       ⑧   報酬委員会は、3 名以上の取締役で構成するものとしました。
       ⑨   報酬委員会は、取締役及び代表執行役の個人別の報酬額を決定する権限を有しま
           す。
       ⑩   利益相反の可能性を考慮し、当社の代表執行役は、主要株主若しくはアライアン
           スの相手方である三菱自動車工業株式会社又はそれらの子会社若しくは関連会社
           の取締役、執行役その他の役職員を兼任することはできません。当社の代表執行
           役就任時に当該役職員に就任している場合には、速やかに兼任を解消するための
           措置を採ります。
       ⑪   各取締役は、業務執行機関の適切な監督を行うため業務上の必要性がある範囲
           で、エグゼクティブコミッティ等の経営会議体に関する資料・データにアクセス
           できます。
       ⑫   取締役会に対して、執行役が定期的に、かつ取締役の求めに応じて適時に、執行
           状況を直接報告する機会を設けることとしました。
       ⑬   監査委員会の委員の過半数を、独立性を有する社外取締役としました。
       ⑭   監査委員会の委員長を、独立性を有する社外取締役としました。
       ⑮   監査委員会の人数は 5 名以上としました。
       ⑯   監査委員会の委員の選定にあたっては、以下の要素を考慮することといたしまし
           た。

                            22
       監査委員会の委員の少なくとも 1 名は、当社の社内で必要な情報収集を効率
        的に行うことができる取締役であること。
       監査委員会の委員の少なくとも 1 名は、国際的な監査の経験・知見を有する
        取締役であること。加えて、監査人、会計士その他金融関連の専門的職務に
        従事した経験を有する取締役であることが望ましい。
   ⑰ 少数株主との間の利益相反等を考慮し、監査委員会において、審議事項に関して
     利益相反を有する委員がいる場合、当該委員は、かかる審議事項の検討には関与
     しないこととしました。
   ⑱ 監査委員会の委員長は、監査に関する議論を牽引し、内部監査や監査法人との連
     携においても主導的な役割を果たすために、相当程度の時間を監査業務に費やす
     べきこととしました。
   ⑲ 従前から監査役は監査法人と連携してまいりましたが、ブラックボックス化され
     た部署の存在によって限界がありました。2019 年 6 月 25 日付で指名委員会等設置
     会社に移行したことを機に、連携の程度をより高めるべく、監査委員会は、内部
     監査部門及び監査法人とも連携して、三様監査(監査委員会監査、内部監査及び
     会計監査)の実効性を高めるよう努める方針を定めました。具体的には、(i)会
     計監査人との間では、四半期に 1 度監査委員会に報告してもらい、その指摘を監査
     委員会及び監査委員会事務局が共有して対応を検討し、(ii)内部監査との間で
     は、2 か月に 1 度以上の頻度で監査委員会等に報告してもらう、という三者間の連
     携強化のための活動を年間の活動計画の中に織り込む予定です。また、2019 年度
     第1四半期より、内部監査部門は、監査法人との連携強化の一環として、四半期
     に一度発行した内部監査レポートのリストを監査法人へ提供し、財務諸表監査上
     必要と判断された監査レポートについて閲覧を許可しております。会計監査人か
     ら受けた指摘は内部監査部門で共有し対応を検討してまいります。また、会計監
     査人からの指摘を含む情報を受けた社内部署は、その情報及びそれに関する対応
     状況を監査委員会及び監査委員会事務局と共有することを検討してまいります。
   ⑳ 独立社外取締役が過半数を占める監査委員会が、効果的かつ効率的な監査を行え
     る様、監査委員会事務局にはスタッフを必要数配置し、監査委員の指揮命令の下
     にその職務を遂行する方針を定めました。
   ㉑ 監査委員会は、執行役等のマネジメントの関与の疑義がある内部通報の通報先と
     なります。当該通報対応は、関係する執行役等が通報者及び通報内容を知りえな
     い体制を構築して行います。

 これは、上記 1(1)、(3)及び(4)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況

  上記「改善報告書に記載した改善策」に記載した①~③、⑤~⑪、⑬~⑰、⑲~㉑は、改
  善報告書提出時に実施済みです。その他の項目についても、改善報告書に記載した体制・
  計画に従い、以下のとおり、実施・運用いたしました。

  ④について、2019 年 7 月に開催された第二回以降の指名委員会において CEO 候補者案を
  策定していましたが、同年 9 月 9 日の取締役会にて、上記「4.(6)株価連動型インセンティ
  ブ受領権行使日操作に伴う西川氏等への報酬の不正支給」で判明した事実、また、違法性
  ではなくガバナンスの問題として議論、市場の信頼や従業員に対するリーダーシップの観
                       23
点といった諸事情を考慮して、西川氏に代表執行役 CEO 職を辞任することを要請し、西川
氏が辞任しました。それに伴い、同年 10 月末までを目標に後任を選定することを併せて決
定したため、後任の選定日程を早め、同年 10 月 8 日の取締役会にて、新たな CEO 及び代
表執行役を選定しました。2020 年 1 月~3 月には育成策を含む CEO 後継者計画の策定を実
施する予定です。

⑩について、2019 年 12 月 1 日に発足した新執行体制の代表執行役は、ルノー及び三菱自
動車又はそれらの子会社もしくは関連会社の取締役、執行役その他の役職員の兼任は行い
ません。

⑪について、エグゼクティブコミッティに参加していない取締役の内、常勤であるため当
社業務に最も精通している監査委員長に対し、エグゼクティブコミッティ事務局より議案
の事前説明を行っており、必要に応じ、エグゼクティブコミッティの資料や個別の説明を
するという運用をとっています。また、その上で、監査委員長から、必要に応じて、エグ
ゼクティブコミッティには参加しない他の取締役にも共有される体制となっています。

⑫について、2019 年 7 月、9 月、10 月開催の取締役会において、執行役から、四半期決算
に関する業務執行の報告、事業近況、第 1 四半期振り返りと第 2 四半期見通しを執行状況
の報告として実施しました。今後も、三か月に 1 回以上の頻度で執行状況の報告を実施し
ていく予定です。

⑱について、監査委員会の委員長は、経営層との定例会議の実施、内部統制モニタリング、
国内外子会社往査など、多数の項目を監査しています。監査内容は、2019 年 10 月 8 日開
催の取締役会にて報告しており、今後も適宜報告する予定です。

⑲について、以下を実施いたしました。

   2019 年度監査委員会年度計画に、監査法人と監査委員会との四半期ミーティング、
    及びグローバル内部監査室と監査委員会との定期ミーティングを、織り込みました。
   2019 年 7 月の監査委員会において、監査法人から監査計画及び第 1 四半期レビュー報
    告を受けました。同年 11 月に、第 2 四半期レビュー報告を選定監査委員が受け、同
    年 12 月の監査委員会では、監査法人から指摘事項等の報告を受けました。
   2019 年 7 月の監査委員会において、内部監査部門の年度計画、予算、人員計画を承
    認しました。また同年 10 月の監査委員会においてグローバル内部監査室から内部監
    査業務報告を受けました。同年 12 月の監査委員会でもグローバル内部監査室から内
    部監査業務報告を受けました。
   2019 年 7 月、監査法人とグローバル内部監査室との間のグローバルでの情報交換会
    を実施し、双方の監査計画を協議しました。
   監査委員の米国及び欧州往査に向けて、2019 年 7 月及び 9 月に、監査法人より、事前
    ブリーフィングを実施しました。また、上記往査時に、各現地の監査法人とのミー
    ティングを実施しております。当該往査には、当社の現地内部監査チームも参加し
    ました。監査委員会事務局は、米国及び欧州往査結果をグローバル内部監査室及び
    会計監査人にフィードバックし、米国及び欧州については内部監査部門がフォロー
    アップ監査を実施しました。


                      24
          アカウンティングコントロールタワー(ACT)は、経理部において監査上(マネジ
           メントレター、J-SOX、内部監査を含む)の重要な指摘事項に包括的に対処する内部
           統制手続きであり、2019 年度において以下のように主導的かつ広範囲に活動を行っ
           ています。
              経理部グローバルコントロールプロセスプランニング部(GCPP)の中の内
               部統制担当チームが分担して各地域の経理責任者とともに監査、会計、内部
               統制上の重要な諸課題に対応する体制を構築している。
              GCPP が、本社のリージョン事業収益管理グループや連結会計グループとと
               もに、四半期ごとの定期ミーティングを各地域の経理責任者と実施し、過去
               に指摘された問題が繰り返し発生しないように、現状の課題や対応策の進捗
               などを徹底的に議論し、指導している。
              ACT エグゼクティブミーティングが四半期に一度開催され、EY 新日本監査
               法人の監査人も同席のもと、各地域の経理責任者が経理担当常務執行役員や
               他の関係する役員に活動の進捗を報告し、それに基づいた討議を行っている。
               関係役員による討議が統制の鍵として機能しており、そこで経理や会計の主
               要メンバーが関与する形で綿密かつ包括的に問題が検討され、改善のための
               活動に寄与している。
           本年度の第 3 四半期に ACT エグゼクティブステアリングコミッティが開催され、そ
           の後経理部が 2019 年 12 月に監査委員長とミーティングを実施し、ACT エグゼクティ
           ブステアリングコミッティにおいて議論されたフィードバックや全体の改善の進捗、
           重要な課題や傾向についての報告を行いました。この報告プロセスは定例化され、
           次回以降も四半期ごとに開催される ACT エグゼクティブステアリングコミッティの
           後すみやかに、ACT 活動状況を監査委員長および必要に応じて監査委員会に共有し
           ます。

       今後も、三様監査の連携強化の取り組みを継続してまいります。

(12)   内部監査による監督機能の強化

改善報告書に記載した改善策
  当社は、特別委員会報告書における提言より一歩踏み込み、内部監査部門の独立性を高め
 る目的で、2019 年 6 月 25 日付で、内部監査部門が「常に」監査委員会にレポートするための
 以下の体制を導入いたしました。ガバナンス改善特別委員会では、「トップマネジメントの
 不正のおそれを探知した場合」のみ、レポートラインを監査委員会のみとすると提言いたし
 ましたが、内部監査部門の独立性をより高めるために、このような体制を導入いたしまし
 た。

   具体的には、以下のとおりとなります。
    ① 監査委員会は、内部監査部門を管轄し、内部監査部門に対して監査に関する指示を行
      うものとします。
    ② 監査委員会は、取締役、執行役及び執行役員の職務を監査し、内部監査部門は主に従
      業員の職務(業務プロセス)の監査を行います。
    ③ 内部監査部門は、内部監査の基本方針、年度計画、予算及び人員計画について、監査
      委員会の承認を得ることとし、監査委員会に対して継続的に、職務の執行状況及び発
      見事項等を報告するものとします。

                             25
       ④ 内部監査部門の責任者の人事及び評価については、監査委員会の承認を得るものとし
         ます。

   これは、上記 1(1)、(2)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況

       上記記載の体制において、以下の取り組みを実施いたしました。

           ①について、監査委員が、2019 年 7 月に米国、10 月に欧州の拠点を往査し、グロー
            バル内部監査室に対して、当該内容のフィードバックを行いました。これを受けて、
            拠点の内部監査部門によるフォローアップ監査を検討、実施しています。2019 年度
            中に、上記に加え、その他の拠点についても監査委員による往査のフィードバック
            を踏まえ、グローバル内部監査室によって選定された項目について、内部監査部門
            がフォローアップ監査を実施しました。
           ②について、2019 年 7 月開催の監査委員会において、内部監査部門による業務プロ
            セスの監査にかかる監査計画内容を報告し、内容の承認を受けました。内部監査部
            門は、かかる監査計画に従い、2019 年度の業務プロセス監査を実施しています。
           ③について、2019 年 7 月に、内部監査部門の年度計画・予算・人員計画を報告し、
            承認を得ました。グローバル内部監査室は、内部監査部門の業務状況(監査進捗、
            重要な発見事項及び基本方針の改訂)に関して、同年 10 月開催の監査委員会におい
            て報告し、承認を受けました。
           ④について、グローバルコンプライアンスオフィサー兼チーフインターナルオーデ
            ィットオフィサーであった前任者の退職に伴い、2019 年 11 月に、チーフインターナ
            ルオーディットオフィサーに、内部監査、コンプライアンス、経理及び人事の経験
            を有するミッシェル バロンが就任いたしました。当該人事は、監査委員会において
            承認しています。なお、同月に、グローバルコンプライアンスオフィサー代行には、
            グローバルリスク&コンプライアンス室長の経験を有し日本コンプライアンスオフィ
            サーであった眞野泰典が就任いたしました。



(13)    企業倫理の再構築

改善報告書に記載した改善策
   当社は、特別委員会報告書における提言を踏まえ、ものづくり企業としての企業倫理の再
  構築に向けて、以下の措置を講じ、又は今後講じる予定です。

   まず、当社は、新中期経営計画の事業基盤の一つとして「日産ウェイの進化/強化-CFT
  (Cross Function Team)、V-up を管理ツールの基盤とし、高いレベルの倫理、透明性、コンプ
  ライアンスを確保」することを明記しました。日産ウェイとは、5 つの心構えと 5 つの行動
  で構成される当社の行動指針をいいます。CFT とは、クロスファンクショナルチームを指し
  ます。V-up とは、日産グループ・グローバル共通の課題解決ツールをいいます。2019 年度上
  期中に「日産ウェイの進化/強化」に対応する行動指針の改定版を最終化し、全従業員に周
  知徹底を図る具体的体的な方法は今後、検討してまいります。



                             26
   また、当社は、コンプライアンスは絶対であり、コストを含む全ての要素に優先すること
  を重ねて意識し、お客様に信頼していただける企業であり続けられるよう、2019 年度上期中
  に、当社のミッション・ステートメント(企業としての使命)に、上記の趣旨を含める改定
  を予定しています。

       これは、上記 1(1)、(2)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況

       2019 年 6 月に、エグゼクティブコミッティにおいて、日産ウェイ改定版を承認し、行動指
       針改訂版の策定は完了しました。同年 9 月に、エグゼクティブコミッティメンバーによる
       ワークショップを実施し、行動指針に対する理解を深めるとともに、社員に期待される具
       体的行動イメージを共有しました。前述の(11)-④の実施・運用状況に記載のとおり同年
       12 月 1 日付けで新 CEO に選任された内田誠によるリードのもと、2020 年 1 月 23 日に全執
       行役員によるワークショップを実施します。これを皮切りに、従業員への展開と周知徹底
       を進めていきます。ただ文言を展開するのではなく、グローバル全従業員が熟考し自身の
       行動に落とし込むために、ワークショップを通じた日産ウェイ実践のための議論の場を設
       けていきます。

       ミッション・ステートメントについても、2019 年 6 月に社会的責任の遂行、法令遵守を徹
       底し、信頼される企業となることを強調する形での改定を実施いたしました。上記の日産
       ウェイ改訂版とあわせて、全従業員への展開と周知徹底を行ってまいります。



(14)    社内の部署の機能・権限見直し

  改善報告書に記載した改善策
  当社は、特別委員会報告書における提言を踏まえ、2019 年 4 月 1 日付で、以下の組織変更を
 行いました。変更後の組織体制は、別紙2の当社組織図の「変更後」に記載のとおりです。

        ① CEO オフィス:CEO オフィスの機能は解体し、CEO リザーブの管理機能を廃止し、
          経営会議の運営等の必要な機能を新部署(コーポレートマネジメントオフィス)に
          移行いたしました。同部署のレポートラインは、コーポレートガバナンス担当の理
          事としました。また、2019 年 5 月 16 日付で、コーポレートガバナンス担当の副社長
          を任命しました。
        ② 秘書室:秘書室は、人事担当の専務執行役員にレポートすることとしました。
        ③ 経理部グローバルコントロールプロセスプランニンググループ:経理部グローバル
          コントロールプロセスプランニンググループが、コーポレートマネジメントオフィ
          ス及び秘書室における経費支出の DOA の運用状況を点検することとしました。かか
          る点検に際し、既存の DOA によって適切に捕捉できていない支出が発見された場合
          には、当該支出を適切に DOA の中に位置づけるべく、DOA の運用に関する社内向
          け教育資料の注意事項等の再確認により厳密な DOA の適用の遵守を徹底することと
          しました。また、DOA 検証者による検証の際に証跡を確認することにより、全ての
          支出について DOA が適切に運用され、承認に係る証跡が確保される状況を維持して
          いきます。

                               27
   これは、上記 1(1)、(2)及び(5)記載の原因に対応する措置です。



実施・運用状況

       上記の①及び②は、改善報告書提出時に実施済みです。

       上記の③について、これを代替・補完する対応として、コーポレートマネジメントオフィ
       ス及び秘書室における経費支出においても、DOA が適切に運用されるように、DOA の運
       用に関する社内向け教育(e-learning)を展開し、徹底しました。



(15)    内部通報制度の改革

  改善報告書に記載した改善策
   当社の内部通報制度は、コンプライアンス室の限られた人員だけがアクセス可能であり、
  システムとしての情報の機密性が担保されているものです。従前、通報内容や調査結果の報
  告先は、コンプライアンスを担当する執行役員となっていました。当社は、当該執行役員及
  びその他の執行役員の関与が疑われる案件については、執行体制の中で取り扱われることに
  より最終的な調査対応の独立性が阻害されていると外形的に評価されうるリスクを、改めて
  認識しました。

   そこで、2019 年 6 月 25 日付で、執行役員等のマネジメントの関与が疑われる案件について
  は、通報を把握したコンプライアンス室から直接監査委員会のみに報告し、その指示のもと
  執行から独立して調査対応を行う体制としました。具体的には、報告者をグローバルコンプ
  ライアンスオフィサーとします。かかる体制が適用される案件であるか否かは、本社執行役
  及びマネジメントコミッティの議長(地域別に、グループ会社横断的な組織として設立され
  る会議体の議長)の関与が疑われる案件であるか否かを基準としてグローバルコンプライア
  ンスオフィサーが判断します。監査委員会との連携方法の詳細については、今後、監査委員
  会と協議し、運用を開始する予定です。

       これは、上記 1(1)、(2)及び(5)記載の原因に対応する措置です。

実施・運用状況

       グローバルコンプライアンス室から監査委員会(委員)への報告基準及び様式を定めて、
       2019 年 7 月の監査委員会で報告しました。グローバルコンプライアンス室は、上記基準及
       び様式に従い、監査委員会又は監査委員長に対して、主な通報内容及び対応を説明してい
       ます。具体的には、監査委員長に定期的に報告する機会を設け、同年 7 月に執行役の利益
       相反懸念について 1 件(利益相反は認定されず)、同年 10 月に関係会社役員の報酬不正に
       ついて 1 件(一部役員による規程外の一時金詐取を認定)、同年 12 月に執行役員の経費不
       正 1 件(私的渡航費等の不正支出を認定)及び利益相反懸念 1 件(社内規程に基づく当社
       への開示義務違反を認定)について報告を行いました。
       なお、執行役員等のマネジメントの関与が疑われる案件以外の内部通報についても、グロ
       ーバルコンプライアンス室にて、内容調査等の対応を行っています。

                           28
3.   改善措置の実施スケジュール

 →施策検討・準備 ⇒実行・運用開始及び継続的改善
 改善措置                 2018
                                                           2019 年
                       年
                            11    12   1   2   3   4   5   6   7    8   9   10   11   12
                            月     月    月   月   月   月   月   月   月    月   月   月    月    月
 1)不正を行った代表取締役2名の解任  → → → → → ⇒
 2)代表取締役への他の取締役の報酬配分
                     → ⇒
 を決定する権限の付与の停止
              事前の承認を
              受けない子会
 3)当社の取締役会の事
              社・関連会社 → ⇒
 前承認を受けない子会
              からの報酬受
 社・関連会社からの報酬
              取の禁止
 受取りの禁止
              子会社側の支
                                 → → → → → → → ⇒
              出の統制
 4)CEO リザーブの廃止                             → ⇒
 5)取締役会での活発な議論のためのプレ
                                       → ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
 ミーティングの実施
 6)取締役及び執行役員 行動規範教育
 への行動規範教育の徹底 を 含 む 様 々 な
             コンプライア                    → ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
             ンス研修の実
             施
             内部統制委員
             会の開催(受
                                               → ⇒                               ⇒
             講状況の報告
             含む)
 7)会計処理と役員報酬の明細情報の突合
 等、役員報酬に関する適正な会計処理のた                   → → ⇒
 めの管理体制の強化
 8)株価連動型インセンティブ受領権の行
 使による利益を、役員報酬として追加開示
                                       → → ⇒                            ⇒
 することを含む適正な役員報酬開示のため
 の管理体制の強化
             会社設立委員
             会への情報ル                            → ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
 9)取締役会・エグゼク ートの明確化
 ティブコミッティから経 非 連 結 子 会 社
 理部への新規会社設立の の 事 業 の 状
 提案に関する情報提供プ 況 、 主 要 な 事
                                                           → → → → → → ⇒
 ロセスの構築      業とのかかわ
             りなどについ
             て再検討
 10)取締役会の構成・機 ①~⑧                      → → → → → ⇒
 能の強化         ⑨                        → → → → → → → → → ⇒
              下記以外                     → → → → → ⇒
 11)指名委員会等設置会 社 内 部 署 と 監
 社への移行        査委員会との                   → → → → → → → → → → → ⇒
              連携
 12)内部監査による監督機能の強化                     → → → → → ⇒
                 「日産ウェイ
 13)企業倫理の再構築                                   → → → → → → → → → ⇒
                 の進化/強化」

                                 29