6815 ユニデンHD 2021-06-17 18:00:00
「INVESTIGATION FINDINGS AND RECOMMENDATIONS」と題する報告書の全文和訳の開示のお知らせ [pdf]

                                                                  2021 年 6 月 17 日
各位
                                            会社名 ユニデンホールディングス株式会社
                                            代表者          代表取締役社長 西川 健之
                                                   (コード番号 6815 東証第1部)
                                           問合せ先            人事・総務部 小尾 幹之
                                                             (TEL:03-5543-2812)


     「INVESTIGATION FINDINGS AND RECOMMENDATIONS」と題する報告書の
                             全文和訳の開示のお知らせ


 当社は、2021 年 6 月 11 日付「第三者委員会の調査報告書受領のお知らせ」及び 2021 年 6 月 14
日付「第三者委員会の調査報告書を受けた当社の対応について」にてお知らせいたしましたとおり、
Baker Tilly Virchow Krause, LLP の Jonathan T. Marks 氏及び The Volkov Law Group LLC の
Michael Volkov 氏が作成した 2020 年 4 月 30 日付の英文の報告書である「INVESTIGATION
FINDINGS AND RECOMMENDATIONS」
                            (以下「2020 年英語版調査報告書」といいます。)の全
文和訳を、本お知らせ添付のとおり、開示いたします。なお、本全文和訳においては、当社グルー
プの取引先の名称及び役職員の氏名について非開示措置を施しております。
 本全文和訳は、2020 年英語版調査報告書を今般改めて和訳し直したものであり、当社が 2020 年
6 月 3 日付で公表した「第三者機関の調査報告書の公表に関するお知らせ」添付の「調査結果と改
善提案」と題する書面(以下「2020 年開示版調査報告書」)とは和訳表現が必ずしも一致しており
ませんが、調査対象となった会計不祥事の内容や金額につきましては、2020 年開示版調査報告書で
開示したものから変更はありません。


 当社グループは、
        2021 年 6 月 14 日付「第三者委員会の調査報告書を受けた当社の対応について」
にてお知らせしたとおり、再発防止に努めるとともに、当社グループの永続的な企業価値向上を目
指す所存です。当社株主をはじめとするステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも引き
続き当社に対するご支援を頂けますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


                                                                              以上
                               2020 年 4 月 30 日




ユニデンホールディングス株式会社 御中




      調査結果と改善提案




            Baker Tilly Virchow Krause, LLP
            Jonathan T. Marks


            The Volkov Law Group LLC
            Michael Volkov




            - 1 -
1.   ユニデン調査の背景


Baker Tilly と The Volkov Law Group への当初の依頼


      2020 年 1 月 21 日、Uniden America Corporation(以下「UAC」)は、UAC の不正会
     計実務、特に収益の認識(以下「会計実務」)を巡る疑惑に関するフォレンジック調
     査の実施について Baker Tilly を起用した。8 日後、ユニデンホールディングス株式
     会社(以下「UHC」)は、UAC の会計実務の独立内部調査を指揮させるべく The Volkov
     Law Group(以下「Volkov」)を起用した。
      Baker Tilly は調査の作業計画を提出し、UAC と BDO USA は 2020 年 1 月 23 日に同計
     画を承認した。同計画の写し 1 部は別紙に含まれている。Volkov はその後、この作業
     計画をレビューして承認した。
      当初の作業計画は、2018 年 3 月 31 日から 2019 年 12 月 31 日までの期間の各四半期
     の最終 5 日間に焦点を当てた。この予備調査の結果に基づき、Volkov と Baker Tilly
     は、期間を 2017 年 7 月 1 日から 2019 年 12 月 31 日まで(以下「UAC 該当期間」)に
     修正した。UHC と UAC は、UHC が第 3 四半期財務報告書を期限までに日本の金融規制当
     局に提出するために、内部調査を 2020 年 2 月 29 日までに完了するよう求めた。


Baker Tilly と The Volkov Law Group への拡大した依頼の範囲


      Baker Tilly と Volkov は、当初の調査において、UAC において不正会計が蔓延して
     いたこと、そして不正行為に関与した UAC の経営幹部 1 名が後に UHC に昇進して他の
     子会社を含むより幅広い責任を与えられていたことの証拠を発見した。そこで、
     Baker Tilly と Volkov は、日本とオーストラリアの現地業務が UAC において特定され
     た不正会計と同様の不正会計の被害を被ったか否かを判断するために、ユニデンの
     オーストラリア(以下「Uniden Australia」又は「UAU」)及びユニデンジャパンの
     会計実務を対象とする検査を推奨した。
      Baker Tilly の検査手順は 2019 年度中の選択した財務取引に焦点を当てた。
      Baker Tilly によるユニデンジャパンに関する予備的調査により不正会計の証拠は
     判明しなかった。
      Baker Tilly によるオーストラリアに関する予備的調査により、3 件の顧客が関与す
     る 7 件の取引、合計約 130 万豪ドル(~$940,000 米ドル)が明らかになった。
      当初の検討の結果、Baker Tilly は、UAU の業務運営に係る主要幹部 3 名の E メール
     の収集及びレビューを要請した。とりわけ、UAU は当初、我々による E メール収集の
     取り組みを 9 日間にわたり妨害した。最終的に対象 E メール・データを収集しレ
     ビューした後、調査チームは、UAU が販売目標と目標収益を達成するため「架空の請
     求書」と「粉飾決算」(実際の従業員の E メールからの引用)を利用した詐欺スキー




                                - 2 -
   ムに従事していた証拠を明らかにした。
     Baker Tilly は、大枠のレビューに基づき、UAU が収益を水増しして目標収益を達成
   するために多種多様の詐欺的スキームに従事していた証拠を明らかにした。
        Baker Tilly と Volkov は、UAU の幹部が調査に全面的に協力することを前提とし
   た、UAU の全面的なレビューのための作業計画の提案書を提示した。
     Baker Tilly と Volkov の提案に従い、UAU の経営幹部は、2018 年 4 月 1 日から 2019
   年 12 月 31 日までの期間(以下「UAU 該当期間」)の詐欺的取引の特定に協力するこ
   とに自主的に合意した。BDO International Limited のメンバーファームである三優
   監査法人(以下「BDO 三優」)は、UAU 該当期間について同意した。
     UAU の幹部が全面的かつ迅速な協力を約束したことに基づき、Baker Tilly と Volkov
   は、UAU の活動を調査し、UHC、UAU、UAC を網羅する報告書を、UHC の第 3 四半期財務
   報告書の日本国規制当局及び東京証券取引所への最終提出期日である 2020 年 4 月 15
   日までに作成することに合意した。
     UHC、Baker Tilly、Volkov、BDO 三優及び BDO USA の間で協議した後、BDO 三優は、
   2020 年 4 月 15 日までに適時の報告書と修正された財務上の入力が完了されるのであ
   れば、必要な財務上の届出書を準備することに合意した。UHC はその後、当該期日に
   ついて 2020 年 5 月 14 日までの延長を申請し、付与された。


BDO USA の条件


     BDO USA は、2020 年 1 月 27 日付の UHC の会長その他に宛てたレターにおいて、まず
   は以下の 7 点の特定の条件が満たされない限り、BDO USA は UHC の第 3 四半期財務報
   告書を適時に作成することができないと述べた。
   1.    調査を監督する独立した弁護士が起用されること
   2.    フォレンジック会計士によって実施される調査が完了し、外部弁護士によって必
         要とみなされる追加の手順が実施済みとなること
   3.    BDO が状況に応じて適切とみなすシャドーイングとテストの全手順を実施したこ
         と
   4.    UHC の財務報告書において、潜在的に可能な財務調整項目がすべて特定され、記
         録され、訂正されたこと
   5.    財務報告に対する内部統制への影響が経営陣により適切に評価され、是正計画が
         作成されたこと
   6.    これらの事項について責任を負う人物と特定された個人に関する措置を含め、こ
         れらの調査結果を踏まえた経営陣による是正措置の計画が策定、レビューされ、
         実施が開始されたこと
   7.    全ての事項が UHC の経営陣と監査委員会に提示され、評価されたこと




                              - 3 -
      BDO はさらに、調査の完了後、調査結果次第では、UAC の第 3 四半期財務報告書の作
     成を担当する BDO 三優に対して報告書を発行する前に、BDO は内部調査のレビューに
     少なくとも 30~60 日間又はそれ以上を必要とすると述べた。
      その後の 2020 年 1 月 30 日付の UHC の会長その他宛てのレターにおいて BDO は、BDO
     がその監査手続を開始できる前に、UHC が前述した 7 点の条件のすべてを確実に完了
     させなければならないと繰り返した。BDO はさらに、当該レビューに要する 30~60 日
     間という当初の見積りは「UHC の米国外の業務に関連して実施されるフォレンジック
     作業」及び「BDO 三優がそのレビューを完了させるために必要な期間」により、延長
     される可能性があるとも明記した。


2.   主要な調査及び検査の手順


Uniden America の調査及び検査の手順


A.   ドキュメント・レビュー


      Baker Tilly は、別紙記載の UAC の主要な文書のカストディアン(custodians)16
     名に関する E メール、文書、及びデータを収集し、スクリーニングした。フォレン
     ジック・テクノロジーと 120 以上の本件に合わせたキーワード(UAC と BDO USA と合
     意したもの)を用いて、合計約 200 万もの多数の文書を約 230,000 の対象文書に絞り
     込んだ後、それらについて疑わしい販売取引やコミュニケーションを含む関連性を調
     査した。


B.   財務分析/データアナリティクス


      Baker Tilly は、該当期間について、領収書を通じた販売受注のハードコピー文
     書、準備、出荷、納品、請求及び記帳について、手作業でレビューした。Baker
     Tilly はさらに、UAC 該当期間中の異常を検知するために、そのフォレンジック・テク
     ノロジストを活用して全販売受注データ(約 42,000 項目、合計額 1 億 6,400 万ドル以
     上)の記録のデータアナリティクスを実施した。詳細については別紙を参照のこと。


C.   対面インタビュー


      Baker Tilly と Volkov は、別紙記載の UAC の個人 13 名に対してインタビューを実
     施した。




                            - 4 -
Uniden Australia の調査及び検査の手順


A.   予備的レビュー


       Baker Tilly のオーストラリア及び米国チーム(以下「Baker Tilly」と総称する)
     は当初、2019 年 3 月から 2020 年 1 月までの期間について選択した UAU の販売データ
     とクレジットデータ、並びに裏付文書を分析した。さらに、Baker Tilly Australia
     は、販売実務を理解して潜在的な収益認識問題を探し出すために、主要なプロセスの
     担当者と協議し、選択した顧客契約をレビューし、売掛金の経過記録を分析し、第三
     者の倉庫施設を訪問するなどした。


B.   ドキュメント・レビュー


       予備的調査結果の結果、Baker Tilly と Volkov は、別紙記載の UAU の文書のカスト
     ディアン 5 名の E メール、文書、データをスクリーニングした。我々のレビューは、
     UAU の幹部及びスタッフの全面的協力に基づき、促進され、集中的に行われた。UAC か
     らの電子データ及び E メールと同様に、我々はフォレンジック・テクノロジーとター
     ゲットを絞ったキーワード検索を用いて、収集した合計約 1,000,000 もの多数の文書
     の中からスクリーニングして関連文書を特定した。
          調査チームに協力するよう指示されていたにもかかわらず、UAU は当初、調査チー
     ムの E メールの収集を 9 日間以上にわたり遅延させ、妨害した。UAU の経営陣は最終
     的に、該当期間に関する著しく不適切で虚偽の販売取引とそれに対応するクレジット
     について詳細に記載した別個のスプレッドシートを、調査チームに開示した。UAU は
     さらに、特定期間における報告された利益を引き上げるために記帳されなかった(不
     正記録された)マーケティング及び販促費用のための APV 資金を詳細に記載した別の
     スプレッドシートも開示した。UAU は、多種多様の虚偽取引をサポートするために利
     用したその他の不正加工した虚偽の文書を提供した。


C.   財務分析


       予備的調査の結果、Baker Tilly は、手順を拡大し、UAU 該当期間の選択した UAU の
     販売データとクレジットを分析した。Baker Tilly は、これらの取引を分析し、その
     他の財務分析手法を用いて、選択した UAU の財務情報中の想定外の関係を検証し又は
     特定しようとした。Baker Tilly の分析及び手順には、以下が含まれ、それらに限定
     されない。
     1.    UAU により提出された販売データを、その試算表及び UHC に報告された財務諸表
           と照合する




                              - 5 -
     2.    売掛金データと経過ファイルを分析する
     3.    販売及びクレジットデータを分析する
     4.    マネージングディレクターとファイナンシャル・コントローラーに対し、特定の
           販売とそれに対応するクレジットに関する説明を要請する
     5.    選択した取引の裏付文書をレビューする
     6.    第三者のデータ(例えば、Toll IPEC や ILS など)を分析し、販売取引と比較す
           る
     7.    E メールをレビューし、期末に不正記録された販売取引の更なる実例を特定する
     8.    四半期の目標とコミッションのデータを分析する
     9.    選択した取引について UAU から提供された売上原価と粗利益に関する情報を分析
           する
          さらに、我々はドキュメント・レビューから特定された選択した文書及び E メール
     通信を、これらの販売及びクレジット取引並びに顧客と比較し、追跡した。我々のレ
     ビューは、UAU の幹部及びスタッフから提供された詐欺スキーム、関連顧客、UAU の財
     務実績を水増しするための実務を特定した UAU の経営幹部及びスタッフから提供され
     た問題点及び情報に合わせたものであった。


D.   対面インタビュー


          Baker Tilly と Volkov は、別紙記載の UAU の個人 5 名のインタビューを実施した。


ユニデンジャパンの調査及び検査の手順


A.   レビュー


          ベーカーティリージャパン税理士法人は、2019 年 3 月から 2020 年 1 月までの期間
     について選択したユニデンジャパンの販売及びクレジットデータをそれぞれ分析し
     た。ベーカーティリージャパン税理士法人は次に、2019 会計年度末(例えば、2019 年
     3 月末)と 2020 会計年度中の四半期末(例えば、2019 年 4 月から 2020 年 1 月まで)
     に近い時期に発生した、選択した販売注文とクレジットの裏付文書を要請し、それを
     レビューした。
          上記の検査手順に基づき、ベーカーティリージャパン税理士法人は、不適切な販売
     及び会計実務の証拠を何も検知せず、したがって更なる調査手続は必要でないと結論
     付けた。




                                - 6 -
3.   調査結果


ユニデンホールディングス株式会社の調査結果


     1.   Baker Tilly と Volkov は、UHC、UAC、UAU において少なくとも 2017 年以降に、
          UHC の財務報告書の重大な虚偽記載をもたらした重大な財務会計の不正行為を検
          知した。
     2.   UHC から販売目標を達成するよう絶え間なく極端な圧力を受ける中、UAC と UAU
          は、それぞれ月次、四半期、年間の販売目標を達成したように見せかけるための
          虚偽で変則的な財務会計実務に従事した。これら虚偽の水増しされた財務諸表
          は、次に UHC の公式の財務報告書に組み込まれた。
     3.   実質的な(substantial)証拠によれば、会長と上級経営幹部を含む UHC の幹部
          が、侮辱的で、辛辣で、脅迫的な言葉を通じて非現実的な販売目標に基づき、強
          引な販売目標を強制する有害な(toxic)企業文化を創り上げたことが、示唆さ
          れている。
     4.   UHC による UAC 及び UAU の運営の適切な管理と監督の欠如は、UHC の販売目標達
          成への固執と相俟って、UAC と UAU において有害な(toxic)管理環境を生み出
          し、現地従業員は、非現実的な販売目標を達成するため、売上の操作やその他の
          不実行為に頼った。多数の従業員が関与し、懸念を表明することを恐れた。
     5.   これらの会計上の不正行為における UHC の役割と責任は次の基本的事実によって
          確認される-UAC と UAU は、それぞれ、非現実的な月次、四半期、年次の販売目
          標を達成するための蔓延した組織的な会計詐欺に、独自に従事した。
     6.   UHC、UAC、UAU ではそれぞれ、基本的なガバナンスと監督、財務統制、並びに、
          倫理及びコンプライアンスの機能が欠如している。
     7.   UHC は、故意又は意図的な無関心により、財務上の虚偽記載を防ぐための、財務
          報告に対する適切な監督や適切な内部統制の維持を怠った。
     8.   UAC 及び UAU の経営陣を非難することは容易であるが、そのような狭い視野は、
          ユニデンの根本的な問題―ネガティブな企業文化と、UAC 及び UAU に課された非
          現実的な販売目標がある中で、UHC の管理及び監督に欠陥があり最終的に現地の
          不正行為について責任があること―に目を背けるものである。
     9.   UHC による UAC 及び UAU の不適切な管理と監督は、組織全体にわたる直接的かつ
          大々的な是正措置を必要とする。
     10. 今や、UHC の存続は、自社の企業文化、リスク管理、財務報告統制、並びに倫理
          及びコンプライアンス・プログラムを改革し是正する UHC の能力にかかってい
          る。これら是正のための任務が迅速に遂行されることを確実なものとするため、
          特定の監視プログラム、UHC 取締役会への強力な報告、同取締役会による強力な
          監督が推奨される。




                                - 7 -
Uniden America Corporation と Uniden Australia に共通の調査結果


   1.   UHC は、UAC と UAU の経営陣に対し、厳しく非現実的な月次、四半期、年次の販
        売目標を課した。UHC は、懲罰及び/又は解雇により脅すことでこの販売目標を
        強制し、UAC 及び UAU の経営陣と営業スタッフを厳しい個人的な批判にさらし
        た。
   2.   UHC、UAC、UAU の欠陥ある内部財務統制は、組織全体にわたる有意義な倫理及び
        コンプライアンス・プログラム機能の欠如によって悪化した。
   3.   UHC が月次の販売目標を達成することのみに集中する中で、また UHC の企業文化
        及び発したメッセージの当然で起こりうる成り行きとして、UAC 及び UAU の経営
        陣とスタッフはかかる目標達成のために不正かつ違法な会計実務を採用した。
   4.   UAC 及び UAU は、それぞれの該当期間中、UHC の非現実的で強引な(unrealistic
        and aggressive)販売目標を達成するために、詐欺的又は時期を早めて収益を増
        加させる複数のスキームを実行した。これらのスキームを実行するため、UAC 及
        び UAU の上級管理職と従業員はそれぞれの組織内で不正行為を隠蔽することを共
        謀した。


Uniden America Corporation の調査結果


   1.   UAC の経営陣並びにスタッフは、実際の販売収益を正確に記録すると期待された
        販売目標が未達であったにもかかわらず、月次、四半期、年次の販売目標の達成
        を確保するため、以下のスキームに従事した。
        a) 契約上「元払い」であったにもかかわらず、「着払い」の条件で商品を発送
             し、送料を顧客に直接払い又は払戻すことにより、売上を配達日ではなく発
             送日で計上するという商品販売の不適切かつ不正確な記録を行い、収益を早
             期に認識した(表 5 の「スキーム A/スキーム B」を参照)。
        b) 顧客との間の非公式の「サイドアグリーメント」により、支払期間を延長し
             て売上を記録し、顧客のアカウントを最新の状態に見せかけて追加の売上の
             計上を可能にするために「支払期限の見直し」をした売掛金。このスキーム
             は、スキーム A と組み合わせて利用された。この個別のスキームを考慮する
             ために必要な財務上の影響又は調整エントリーは一切ない(表 5 の「スキー
             ム A/スキーム B」を参照)。
        c) 製品を第三者の倉庫に数日間出荷した後、顧客が集荷するために製品を UAC
             に返却することにより、製品の売上の不適切かつ不正確に記録し、収益を早
             期に認識した(表 5 の「スキーム C」を参照)。
        d) 顧客が製品を販売(すなわち委託販売)するまで支払期限は到来しないとい




                                   - 8 -
           う UAC と顧客の間の非公式な理解に基づき、特定の顧客への製品販売につい
           て不適切な記録を行い、収益を不適切に認識した(表 5 の「スキーム D」を
           参照のこと)。
        e) 輸送中の製品を在庫として UAC の帳簿及び記録に記帳し、次に架空在庫の製
           品販売を記録し、収益を早期に認識した(表 5 の「スキーム E」を参照のこ
           と)。
        f) 実際には出荷されなかった注文について請求し、製品の販売を不適切に記録
           することにより、収益を早期に認識した(表 5 の「スキーム F」を参照)。
   2.   Baker Tilly と Volkov は、UAC の帳簿及び記録には該当期間(2017 年 7 月 1 日か
        ら 2019 年 12 月 31 日まで)中、虚偽の記載が含まれていると判断した。Baker
        Tilly は、総売上について合計 1,577 万米ドルの虚偽記載がなされていることを
        特定した。
   3.   UAC の不適切な会計スキームは蔓延しており、組織的で(systemic)、UAC の財
        務報告の正確性を損なった。
   4.   これらの会計スキームには複数の経営陣と従業員が関与したが、すべての経営陣
        と従業員が同じ程度の知識と理解をもって作為又は不作為をしたわけではなかっ
        た。UAC の従業員は、知りながら意図的に違反した者から、意図的に無関心で
        あった者、又は、不正会計実務に対して合理的な疑いを有していた者まで、異な
        るレベルの知識を有していた。
   5.   該当期間中の UAC のプレジデントであった                  と       は、このス
        キームの不適切な性質について十分に理解し、意図的に行動した。                        と
            【訳注:どちらも UAC のプレジデント】は、毎月の目標を達成するため、
        組織的に不適切な配送及び売上計上を実施するよう、従業員に指示し、命令し
        た。彼らの意図的かつ故意に基づく行為は、UHC が UAC の運営に対して適切な監
        督を行わず、必要な統制を効かせていなかったという状況を利用していた。


Uniden Australia の調査結果


   1.   UAU の経営陣及びスタッフは、実際の販売収益を正確に記録すると販売目標が未
        達であったにもかかわらず、月次、四半期、年次の販売目標を「達成」するため
        のスキームに従事した。
        a) UAU は、「公式」の会計帳簿及び記録とは別に、2 つの別個のスプレッド
           シートを維持していた。すなわち 1 つ目は、虚偽の販売を追跡して実際の在
           庫残高を管理するために利用され、2 つ目は、記録されていない APV マーケ
           ティング及び販促費用を追跡するために利用された。
        b) UAU は、顧客から発注書を受けたこともなく製品を出荷したこともない販売
           に関して収益を増加させるため、期末に虚偽の請求を記録した。これらの請




                              - 9 -
        求書は最終的に、翌四半期に UAU によって貸方計上された。
     c) UAU は、代金の受領を伴わずに代理店/顧客に発送した商品について不適切
        で虚偽の販売請求書を作成した。その代わり、UAU は、商品が販売(すなわ
        ち、委託販売)された後に代理店/顧客が当該商品について支払を行うこと
        について合意した。多くの場合、大量の製品が他の顧客へ再販売するために
        UAU に返品された。
     d) UAU は、顧客に対し、特定のプロモーション及びマーケティング割引やリ
        ベートを UAU の APV 資金から提供した。UAU は、この APV ファンドについて
        帳簿及び記録に記帳することを怠り、したがって純利益を過剰に計上した。
     e) UAU は、月次、四半期、年次のレポート期間が終了する前に、将来の納品に
        関する販売請求書を本来よりも早く発行した。UAU はその後、顧客の本社の
        アカウントにクレジットを付与し、個別の店舗に出荷し、売上を計上し、早
        期に収益を計上した。
     f) UAU は、月次、四半期、年次のレポート期間が終了する前に、UAU が該当期
        間の終了前にこれらの注文が納品されないことを知りつつ製品を出荷して、
        当該レポート期間が終了する前の不適切な販売に係る請求を計上した。UAU
        は、自社のカットオフ・テストの一環としてこれらの取引を取り消すべきで
        あったが、取り消さないことを選択したため、収益が早期に認識された。
     g) 返品に対する不適切なクレジットについて、受け取った期間にすべてのクレ
        ジットの金額を記録せず、複数の期間にわけて記録していた。
2.   Baker Tilly と Volkov は、UAU 該当期間(2018 年 4 月 1 日~2019 年 12 月 31 日)
     に関する UAU の帳簿及び記録に虚偽の記載が含まれていると判断した。Baker
     Tilly は、合計 2,780 万豪ドルの誤った総売上高を特定したが、そのうち約 1,060
     万豪ドルについては、裏付けとなる発注書が存在せず、出荷されたこともなかっ
     た。端的に言えば、それらはすなわち「虚偽」の販売であった。
3.   UAC での調査結果と同様に、UAU の不適切な会計スキームは蔓延し、組織的で、
     UAU の財務報告の正確性を損うものであった。
4.   UAU の上級管理職、公認会計士、取締役(CEO 及び                   【訳注:UAC のプレジ
     デント】)は、故意かつ意図的に違法なスキーム及び詐欺的な報告実務に関与し
     ていた。
5.   UAU の従業員は、E メールアカウントへのアクセスを求めた当初の要請に対して 1
     週間以上にわたり抵抗し、インタビューの間噓をつき、特定の取引をサポートす
     る試みで文書を改ざんし、我々の調査を故意に妨害した。さらに、特定のインタ
     ビュー対象者は全面的には協力せず、あるいは、虚偽又は不適切な販売を記録す
     るために実施したプロセスを開示しなかった。
6.   UAU は、発注書の存在しない注文を故意に計上した。
7.   UAU は、主要な顧客の場所に間に合うように処理できないことがわかっていた注




                              - 10 -
           文の売上げを計上した。注文が完了し、注文を完全に処理できるようになるまで
           の時間が経過した後で、UAU は、この取引(transaction)をクレジットし、本社
           のアカウント/住所ではなく正しい顧客の特定の場所への販売と配送を計上し
           た。
     8.    UAU は、配送完了の実際の証拠データを、監査人から隠蔽した。
     9.    UAU の幹部に加え、他に多数の UAU 従業員が帳簿及び記録を改ざんするスキーム
           に関与し、そのことを知っていた。


4.   根本原因の分析


トップからのネガティブな発言が不祥事を招いた


          UHC の上級経営陣は、不合理に釣り上げた目標売上高を設定し、多大な圧力を生み
     出した有害な(toxic)企業文化によって当該目標を積極的に強制した
     (aggressively enforced)。
          この上級経営陣からの極端な圧力は、当然にして可能性の高い結果として、インセ
     ンティブの低下を生み出し、それが従業員のネガティブな行動を牽引した。
          したがって、このような極端で有害な企業文化が、必然的に、圧力にさらされた者
     の、同様に有害で蔓延的な不正行為と不正行為の正当化を招いた。




                                - 11 -
ケーススタディ:Wells Fargo のスキャンダル


  Wells Fargo の幹部は以下を行った。
  ・   不合理な販売目標の設定
  ・   当該目標の厳重な実施
      ・   実績を上げない者に対する軽蔑や脅迫
      ・   目標未達及び/又は苦情を申し立てた従
      業員を 5,000 名超解雇


  この有害な販売圧力が以下につながった。
  ・   大量の虚偽の口座と詐欺
  ・   蔓延した組織的な問題の無視
  ・   ゲートキーパーの関与又は無視


               ・ DOJ(米司法省)の調査の後、Wells Fargo は、「非現実的な
                  販売目標を達成するよう従業員に圧力をかけたこと……に基
                  づく潜在的な刑事上及び民事上の法的責任」を解決した。
               ・ 「厄介な販売目標とそれに伴う経営陣からの圧力は……同社
                  従業員の詐欺を含む不法行為への従事……及び非倫理的な商
                  品販売慣行につながった……」
               ・ 「幹部は、当該慣行の実例を防止し削減するために十分な措
                  置を講じることを怠り……この問題を営業モデル自体ではな
                  く個人の不正行為によって引き起こされたものとして扱うこ
                  とにより、……問題を小さくしようとした。」
                                       -DOJ のプレスリリース




                        - 12 -
Wells Fargo とユニデンの比較




5.   是正策


是正にはコーポレート・ガバナンスの改善が必要


     上級幹部が主導した有害な企業文化は、深く根付き蔓延する問題を引き起こす。かか
     る固有の不正行為の是正には、それと同様に強力かつ持続的な是正努力が必要であ
     る。
     コーポレート・ガバナンスの改善を重視することが必要不可欠である。




                       - 13 -
推奨される是正策


  1.   該当期間中に提出された UHC、UAC、UAU の財務報告のすべてについて、虚偽記
       載、エラー、若しくは遺漏を修正する。
  2.   調査結果及び是正案を検討するために、UHC の取締役会と(COVID-19 の状況下、
       安全となり次第)直接会って会議及び協議を行う。
  3.   Baker Tilly と Volkov の助力により、UHC 取締役会のガバナンス機能を、監督、
       コミュニケーション、法務、倫理及びコンプライアンス、財務報告の各手続に重
       点を置きながら、検討し、強化する。このプロセスの一環として、Baker Tilly
       と Volkov は、UHC の取締役会、幹部、関連する内部手続及び内部統制について、
       現地においてガバナンスのレビューを実施すべきである。
  4.   Baker Tilly と Volkov の助力により、UHC は、現実的な販売目標を確立し、組織
       内での適切な会計処理を確保すべく、自社の売上高予測慣行を修正すべきであ
       る。かかる見直しは、少なくとも予測に関するプロセスが、過去の不合理な予測
       の究極的な責任者である UHC の会長及びその他の上級幹部の参加なしに実施され
       ることが要求される。
  5.   UHC の改定された全世界及び現地の財務会計統制をレビュー、強化、実施するこ
       とにより、特定の不正行為に対処し、そのような統制が財務上の詐欺及び虚偽記
       載の防止と検知に効果を有することを確保する。
  6.   UHC、UAC、UAU は、それぞれ、最低限、各拠点における財務と報告の制度を管理
       するため、専門資格を有する最高財務責任者を雇用する必要がある。このような
       専門家は、任務を遂行するうえでの適切な経験とスキルを備えている必要があ
       る。
  7.   不正行為に参加した UHC、UAU、UAC のマネージャー及びスタッフに対する適切な
       懲戒を、各人の役職、監督上の責任、勤続年数、有責性、不正行為に関する知識
       に応じて、検討すべきである。かかる懲戒処分は、解雇から社員の人事ファイル
       に記録される書面での警告までの範囲にわたるべきで、将来のすべての賞、賞
       与、又は昇進の適格性を決定する際に考慮されるべきである。
       a) 当初の不正行為に従事しただけでなく、後に本調査における問題取引を隠蔽
            するために嘘をつき文書を改ざんした UAU の従業員に関しては、会社が(現
            地の雇用規制及び規則を確実に遵守するため人事又は労働法弁護士に相談し
            たうえで)彼らを解雇することを推奨する。ユニデンの是正策とコンプライ
            アンスへのコミットメントを示し、将来の潜在的な不正行為に対する効果的
            な抑止力として機能するよう、このような厳しい懲戒が必要である。ユニデ
            ンはさらに、詐欺の訴追を求めて本件について現地当局に知らせることを検
            討されたい。
  8.   新しい倫理及びコンプライアンス・プログラムを作り上げるためにユニデンのグ




                          - 14 -
     ローバル組織の包括的なリスク評価を実施し、当該プログラムを継続的に改善す
     るため、当該リスク評価を毎年更新する。
9.   UHC の上級幹部のオフィスに、グローバル・コンプライアンス機能を新設する。
     適切な独立性、権限、及びリソース(人員、予算、及びテクノロジー)を伴う最
     高コンプライアンス・オフィサー(「CCO」)を任命する。
     a) 新 CCO は、四半期毎に UHC 取締役会に直接報告し、倫理及びコンプライアン
       ス・プログラムの実績に関する関連情報を提供する。
     b) UHC 取締役会は、関連問題について定期的に CCO と相談し、CCO が有効なコ
       ンプライアンス・プログラムの実施にあたり適切な独立性、権限、視線、リ
       ソースを備えるよう徹底する。
10. UAC 及び UAU において少なくとも 1 名の従業員に対して、グローバル CCO に対し
     て機能するレポーティング・ライン及び説明義務を伴うコンプライアンスの責任
     を割り当てる(専属のコンプライアンス・オフィサーを雇用するか、現地の CFO
     にその任務を割り当てる)。
11. 取締役、幹部、経営陣、及びスタッフを対象として、組織全体の倫理及びコンプ
     ライアンス研修プログラムを実施する。従業員の賞与、受賞、及び昇進は、一定
     程度、研修を成功裡に修了したか否かにより決めるべきである。
12. 内部監査機能の有効性を改善する。内部監査は、コーポレート・ガバナンスと会
     計処理に一定の重点をおくことを含め、会社の内部統制を定期的に評価し検査す
     るものでなければならない。
13. ユニデンの新しい倫理及びコンプライアンス・プログラムには、少なくとも、以
     下の要素が含まれなければならない。
     a) 更新され拡大された事業倫理規定を含め、販売慣行及びその他関連性あるリ
       スクを網羅した、関連する規定及び手続の実施
     b) 客観的な内部調査システムと結びつけられた、匿名の報告ラインを含む、効
       果的な従業員報告プログラムの実施
     c) UHC の組織全体の内部統制並びに倫理及びコンプライアンス・プログラムの
     有効性を定期的にレビューする監査及び監視プログラムの採用
     d) 機密性の高い職能に就く従業員がコンプライアンス認証を毎年取得すること
14. 少なくとも 3 年間にわたり、Baker Tilly と Volkov は、UHC、UAC、UAU の運営を
     監視、検査、監査、及びレビューして、少なくとも毎四半期 UHC の取締役会及び
     幹部に以下を報告する。
     a) 是正プログラムの実施の進捗状況
     b) UHC のガバナンス・プログラムの改善
     c) UHC の販売予測及び販売目標プログラムの実績
     d) UHC、UAC、及び UAU の内部統制及び財務報告の評価
     e) UHC の倫理及びコンプライアンス・プログラムの評価




                         - 15 -
より良い洞察をもたらす。




               - 17 -
6.   財務的影響


UAC の虚偽記載の要約 - 損益計算書上の影響


             表 1: 該当期間の総売上高の虚偽記載(四半期別)




                      - 18 -
表 2: 該当期間の売上原価の虚偽記載(四半期別)




          - 19 -
UAC の虚偽記載の要約 - 貸借対照表上の影響


         表 3: 該当期間の売掛金残高の虚偽記載(四半期別)




                     - 20 -
表 4:該当期間の完成品棚卸資産残高の虚偽記載(四半期別)




            - 21 -
表 5 及び表 6: UAC の調査結果の要約(四半期別)


  総合して、該当期間中の UAC の財務諸表に影響を及ぼす総売上高は 1,577 万ドル、同じく売上原価は 921 万ドルとなることが特定された。


売上高




売上原価




                                  - 22 -
UAU の虚偽記載の要約 - 損益計算書上の影響


          表 7: 該当期間の総売上高の虚偽記載(四半期別)




表 8: 該当期間の売上原価の虚偽記載(四半期別)




                     - 23 -
UAU の虚偽記載の要約 - 貸借対照表上の影響


         表 9: 該当期間の売掛金残高の虚偽記載(四半期別)




       表 10:該当期間の完成品棚卸資産残高の虚偽記載(四半期別)




                     - 24 -
表 11~表13: UAU の調査結果の要約(四半期別)


  総合して、該当期間中の UAU の財務諸表に影響を及ぼす総売上高は 2,780 万豪ドル(1,770 万米ドル)、同じく売上原価は 1,580 万豪ドル
  (1,010 万米ドル)となることが特定された。さらに、140 万豪ドルが帳簿及び記録に記帳されていなかったことも確認された。


表 11:売上高(単位: 豪ドル)




                                              UAU が開示した虚偽記載であった総売上高の合計:            24,418,821
                                              BT が特定した虚偽記載であった総売上高の合計:             3,444,511
                                                       虚偽記載であった総売上高の合計:            27,863,332
  1)   BT(Baker Tilly)は、UAU によって 2,440 万ドルが開示された後、この追加の不正売上高を特定した。
  2)   E メールの審査及び配送完了証明(POD)データの分析に基づき、販売取引は期間末に先立ち記録されたが期間末後に顧客に納品され
       たことが特定された。したがって、ここに示される金額は次の期間に記録されるべきであった。
  3)   2019 年 3 月 31 日時点で、UAU は、2019 年 3 月に記録されたが 2019 年 4 月に納品された売上高を修正するために 511,237 ドルの修正




                                           - 25 -
     仕訳記入を行った、と理解される。したがって、BT は、これを考慮に入れ、2019 年 3 月に記録されたが 2019 年 4 月に納品された追
     加販売取引を 1,043,044 ドルと修正する。
4)   項目「返品の遅延記録」(スキーム G)は、2019 年 12 月に受け取った実際の製品の返品額 271,000 ドルに関するものであるが、UAU
     は、返品の貸方計上を 2019 年 12 月から 2020 年 2 月までの 3 ヵ月間にわたり分散させた。したがって、貸方計上額 246,330 ドルは
     2019 年 12 月 31 日に終了した四半期に加えられるべきであった。




                                      - 26 -
表 12:売上原価(単位: 豪ドル)[5]




表 13:未記帳の「APV」(単位: 豪ドル)




  5)   BT(Baker Tilly)が特定した取引の売上原価を算定するために、UAU から特定の原価の詳細が提供されなかった項目には一定の想定
       を適用した。
  6)   未記帳の「APV」とは、UAU に生じたものの、UAU の帳簿及び記録に記載されなかったマーケティング/販促費用を表す。




                                    - 27 -
虚偽記載の概要


  ユニデンの経営陣の表明によれば、2017 年 6 月 30 日から 2019 年 12 月 31 日までの各四半期及び各年度末に獲得されなかった収益につい
  て、不適正に/本来よりも早く収益を認識したことが特定された虚偽記載を反映させるため、訂正され、適切に開示される予定であると
  のことである。虚偽記載は総収益又は純利益の傾向を隠ぺいするものではない。




                                     - 28 -
ユニデンホールディングス株式会社(「UHC」)の株価の概要


   我々は、このグラフを、UHC の株価が 2017 年 6 月頃に上昇し始め、その後 2018 年 5 月頃に急落したことを示すために提示する。我々
  は、UAC のプレジデントが 2017 年 6 月頃に就任し、我々に対して売上を伸ばすことが一番の目的であると語ったことを指摘したい。さら
  に、いくつかのインタビューでの発言から、UHC の幹部が 2018 年 4 月頃及び 2019 年 6 月頃の販売目標を達成するために、価値観の欠如し
  た環境に対して更なる圧力を加えたことが判明した。




                                    - 29 -
虚偽記載の概要(続)


   ユニデンは、虚偽記載が定量的及び定性的の双方において重要かを考慮した。定量的には、経営陣は、下記の更なる分析の基準とし
  て、財務諸表の項目に 5%の影響が及んだか否かの「経験則」を適用した。
   エラーはキャッシュには影響を与えない。エントリーの内容は、純利益(損失)をキャッシュフロー計算書内の営業活動の項目で使用
  されるネットキャッシュと訂正するための個別訂正には影響を及ぼすものの、エラーは営業活動において使用されるネットキャッシュに
  対して何の影響も及ぼさない。
   ユニデンは、貸借対照表及び損益計算書で影響を受けた項目に対して、期間外訂正を個別に評価した。




                               - 30 -
免責条項


 実施された手順は、本文書中に説明される手順に限定されます。当方の調査結果、検証、推奨は、誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どの
ように被疑又は既知の不正行為を行ったかについて、本文書の日付までに文書証拠と供述証拠の両方から引き出された事実情報に基づきま
す。本報告書の日付の後に取得された情報は当方の分析に影響を及ぼす可能性があり、またかかる影響は重要又は重大となる可能性がありま
す。要請がある場合には、当方は、分析及び報告書を更新し、それに準じた報酬を受領するものとします。
 本調査は、一般に公正妥当と認められる監査基準(「GAAS」)に従う監査、審査、若しくはコンピレーションであるとみなされることを意
図せず、そのようにみなされるべきではありません。米国公認会計士協会 (The American     Institute of Certified Public Accountants、
「AICPA」)は、「独立監査人による財務諸表の通常監査の目標は、財務諸表が一般に公正妥当と認められる会計原則に準拠して財務状況、業
績、及びキャッシュフローをすべての重要な点について提示する公正性についての、意見の表明である」と定義しています。
 本調査は、一般に公正妥当と認められる会計原則(「GAAP」)に準拠して実施される監査とは異なり、特定的な容疑を分析するために実施
されたものです。したがって、当方は、いずれの特定取引、又はいずれの人物の有罪又は無罪に関しても、いかなる判断も行いません。かか
る判断は司法制度のみにより判断されます。
 財務諸表及びそれに関連する開示は、Baker Tilly LLP 又は Volkov の責任ではなく、ユニデンの責任とされます。




                                     - 31 -
                                2GB               0GB                0GB            1,038


1)              のノートパソコンの 78GB のデータも収集された。
2)            のノートパソコンの 92GB のデータも収集された(同氏の E メールデータの大半が O365 サーバーでは入手可能でなかった
      ため)。Baker Tilly は、同氏のノートパソコンから 29.3GB の PST データ(すなわち、E メールデータ)を抽出、処理した。


2017 年 6 月 30 日終了期から 2019 年 12 月 31 日終了期までの期間に関する以下の紙面文書
  •    2019 年 12 月終了期の最終 10 日間、2019 年 9 月、2019 年 6 月、2019 年 3 月、2018 年 12 月、2018 年 9 月、2018 年 6 月、2018 年 3
       月、2017 年 12 月、2017 年 9 月の各終了期の最終 5 日間の請求書、船荷証券、発注書、その他
  •    2017 年 7 月から 2019 年 12 月までの再経過の要請及びその承認に関する文書証拠
  •    顧客アカウントに適用されたクレジットメモ(貸記伝票)に関する文書証拠


Baker Tilly の監督及び指示を受けて会社によって AS400 から抽出された、2017 年 6 月 30 日終了期から 2019 年 12 月 31 日終了期までの期
間に関する以下のデータ
  •    試算表、出荷/請求書、発注書、マニフェスト(積荷目録)、クレジットメモ(貸記伝票)、AP 貨物運送料、売掛金


UAC から受け取り考慮した以下の他のデータ
  •    売上高、予測、目標に関するデータ
  •    賞与に関するデータ
  •    顧客の約定及び契約
  •    四半期の収益認識テストファイル
  •    内部で作成された四半期財務諸表
  •    選抜した第三者から提供された貨物運送ログ




                                                 - 35 -
3.       面談対象者及び面談日(UAC)


     •                   、プレジデント/CSO: 2020 年 2 月 3 日
     •                、注文入力担当事務員: 2020 年 2 月 13 日
     •                  、出荷コーディネーター: 2020 年 2 月 13 日
     •                     、上級会計事務員: 2020 年 2 月 18 日
     •                    、販売管理/サポート・マネージャー: 2020 年 2 月 18 日
     •                    、物流・通商コンプライアンス・マネージャー: 2020 年 2 月 18 日
     •                    、営業マネージャー: 2020 年 2 月 18 日
     •                 、営業部門ディレクター: 2020 年 2 月 19 日
     •                    、西部営業部門ディレクター: 2020 年 2 月 19 日
     •                  、流通販売マネージャー: 2020 年 2 月 20 日
     •                   、中西部営業部門ディレクター: 2020 年 2 月 26 日
     •                、最高業務責任者(COO): 2020 年 3 月 5 日
     •                 、総務担当 VP、コントローラー: 2020 年 4 月 2 日及び 3 日


3.       面談対象者及び面談日(UAU)


                      、マネージングディレクター: 2020 年 4 月 13 日
                            、全国営業マネージャー: 2020 年 4 月 13 日
                         、ファイナンシャルコントローラー(経理財務部長): 2020 年 4
             月 11 日
                            、全国営業マネージャー: 2020 年 4 月 14 日
                     、 財務部マネージャー: 2020 年 4 月 14 日


4.       文書審査(UAC)


            UAC と BDO と共に適合したキーワードと検索用語のリストを作成した。
            当方のフォレンジック・テクノロジー・ツールを用いて 120 以上のキーワードを
             電子データに適用し、290,000 超の文書でキーワードのヒットが組成された。関
             連性に基づき、270,000 のうち約 198,000 の文書を審査した。
            キーワード検索に加えて、請求書データを分析するなかで、特定の注文、顧客、
             及び/又は運送業者について追加のアドホック検索を実行した。
            スキームにおいて                 【訳注:UAC のプレジデント】が果たした重要な
             役割を理由とし、期間中の同氏とユニデンジャパン(「co.jp」)の間のコミュ
             ニケーションが関与する約 1,100 通の E メールを審査した。




                                      - 37 -
4.   文書審査(UAU)


        当初の 120 以上に加えて 30 の追加キーワードのリストを作成した。
        当方のフォレンジック・テクノロジー・ツールを用いてこれら 150 以上のキー
         ワードを電子データに適用した。UAU のカストディアンからの合計 1,000,000 の
         文書のうち、関連性に基づき約 90,000 の文書を審査した。
        特定の注文、顧客、従業員に関する追加のアドホック検索、及び特定の財務に関
         する文書及び情報の検索を実行した。


5.   財務審査(UAC)


            会社から提出された紙面での財務文書を審査し、また審査用に更なる文書を追加
             選択した。ドキュメントパケットには一般的に、顧客の請求書、船荷証券、配送
             完了証明(入手可能な場合)、マニフェスト(積荷目録)データ、発注書、及び
             入手可能なその他の文書が含まれた。
            AS400 データ、第三者貨物運送料データ、E メール、及び会社から提供された追加
             情報を分析した。
            販売注文文書パケット及び本調査の過程で収集した追加データの手作業での審査
             と合わせて、データアナリティクスの結果を考慮した。


     出荷、発注書、AP 運送料、第三者貨物運送ログ、クレジットメモ(貸記伝票)のデー
     タを統合し分析することにより、分析、面談、E メール審査の最中に特定したデータ
     に、データアナリティクス及びレッドフラッグ・テストを適用した。レッドフラッ
     グ・テストの対象には以下が含まれる。
         •    PO と出荷データの間の出荷条件の相違
         •    「集金」として特定されているものの、運送料が UAC によって直接支払われた
              注文
         •    「集金」として特定されているものの、運送料が UAC により払い戻された注文
         •    四半期末に運送料の条件を「前払い」から「集金」に変更した顧客
     上記のデータアナリティクス及びレッドフラッグ・テストの結果を、E メールデータ
     の検索並びにクレジットメモ(貸記伝票)又は POD(配送完了証明)などの文書証拠
     (入手可能であれば)の審査によって、サンプリングした。




                             - 38 -
5.   財務審査(UAU)


            売上高と貸方勘定のデータの動向又は異常について分析し、UAU の経営陣によっ
             て開示された売上高と貸方勘定の選抜リストを比較した。
            更なるテストのために選抜する販売と貸方計上の取引を特定し、収益又は貸方計
             上額の認識の有効性を評価するために裏付文書証拠(発注書、配送完了証明、そ
             の他)を要請し、それらを審査した。
            売掛金の経過記録の詳細を分析し、UAU 該当期間に各請求書が再経過された実例
             数を判断した。
            顧客契約、従業員契約、四半期コミッションを含む、他の入手可能な文書記録及
             び計算を審査した。
            選抜した E メール通信を、特定の販売取引及び貸方計上まで遡及追跡した。
            第三者の POD(配送完了証明)データを分析した。
            マネージングディレクターとファイナンシャルコントローラー(経理財務部長)
             により、スキーム及び取引を確証した。
            MS Excel ファイルで作成された UAU からのメタデータを審査した。


6. 財務報告に対する内部統制(UAC) – J-SOx


     手順:
         •    見積りから入金までのプロセス(売上高を含む)に関連してユニデンジャパン
              により作成された UAC のリスク及び統制のマトリクスを独自に審査し、統制が
              2014 年以降更新されていなかったことを検証した。
         •    現行の内部統制を理解するために、UAC の多種多様の従業員(              【訳
              注:総務担当 VP、コントローラー】、               【訳注:販売管理/サ
              ポート・マネージャー】、              【訳注:注文入力担当事務員】、
                    【訳注:物流・通商コンプライアンス・マネージャー】、
                     【訳注:上級会計事務員】、              、     【訳注:
              出荷コーディネーター】、               を含む)と共にプロセス・レビューを
              実施した。
         •             【訳注:倉庫業者】の倉庫を訪問し、見学して回り、UAC の従業
              員と         【訳注:倉庫業者】の従業員による注文処理プロセスを観察
              した。


     主要調査結果:
         •    UAC と顧客の間のマスターサービス契約は、存在しないか、更新されていない
              かのいずれかである。




                               - 40 -
      •       見積りから入金までのサイクルに関連する正式な方針及び手続が欠如してい
              る。
      •       カリフォルニア州カーソンの倉庫では、製品が仕向港に到着し数えられる前
              に、在庫が ERP システムに不正に荷受けされた。
      •       倉庫の荷受人は大量入力された船荷証券文書を付与されるため、個別のカウン
              トが損なわれている。
      •       小包注文の売上高は、受注品が運送会社により引き取られた時点ではなく、出
              荷が準備された時点にクロージングされている。
      •       コントローラーが集金の懸念から受注を抑えることを推奨したが、前プレジデ
              ント(売上高に直接の監督権を有した)はこの推奨を却下した。
      •       発注書の支払条件が、標準条件を包含する顧客のマスターアカウントの条件と
              異なる際に、承認が必要とされていない。
      •       発注書の出荷条件が、標準条件を包含する顧客のマスターアカウントの条件と
              異なる際に、承認が必要とされていない。
      •       請求書は作成後に、支払条件、出荷条件、顧客の連絡先情報の変更を含め、修
              正可能とされている。
      •       請求書条件は、顧客との E メール通信又は営業チームからの指令に基づき、
              AS400 内で修正可能とされている。


6.   財務報告に対する内部統制(UAU) – J-SOx


     主要調査結果:
          •   注文をクロージングし、収益を BAAN(UAU の ERP システム)に入力する際に、
              経理財務部によって発注書が必要とされていない。
          •   支払条件が顧客の発注書に一貫して文書記録されていない。
          •   顧客の販売請求書の再経過には、裏付文書証拠 (例えば、支払期日延長書
              式) 又は承認が存在せず、したがってそれらが必要とされていない。
          •   与信限度を超過し多額の延滞債権残高を抱える顧客の注文が処理されてい
              る。
          •   注文をクロージングし、収益を帳簿及び記録に記帳する際に、配送完了証明
              (「POD」)情報が必要とされていない。
          •   UAU における四半期売上高カットオフ・テストでは、受注品に関する実際の配
              送完了証明 (「POD」)情報ではなく、見積納期を用いている。見積納期の
              利用は、四半期財務実績の虚偽記載を招き得る。(注記: UAU は、年度の売上
              高カットオフ・テストを実行する際には、年度末時点の実際の配送完了証明
              (「POD」)情報を利用している。)
          •   A ストック(損傷のない製品)の返品における顧客への貸方計上の処理には、




                              - 41 -
               裏付文書証拠(例えば、返品承認書式)又は承認が存在せず、したがってそ
               れらが必要とされていない。
           •   以前に販売された損傷のない製品の返品については、顧客が UAU から他の在庫
               品を購入することに合意するという交換条件により、時には 10 カ月以上後に
               なっても貸方計上が許可されている。
           •   UAU により APV と称されているマーケティング/販促費用は、それが生じた期
               間に帳簿及び記録に記帳されていない。


7.   データアナリティクス(UAC)


     Baker Tilly は、「調査データアナリティクス・プラットフォーム」を開発し、それを
     維持するために、以下のステップを実行した。
      •        UAC により、該当期間についてシステムから生成されたデータと複数ソースか
               らの他の情報が提供された。それには以下が含まれた。
                •   UAC の AS400 会計ソフトウェア:
                      •   請求書/出荷データ
                      •   発注書データ
                      •   買掛金運送料データ
                      •   クレジットメモ(貸記伝票) データ
                      •   データのルックアップの値とディクショナリ
                •   第三者運送業者のログ
                •   四半期収益認識テスト・ファイル
               ・ 支払期日延長要請のログ
      •        Baker Tilly は、上記のデータセットを調査データアナリティクス・プラット
               フォームに取り込み、更なる分析のためにデータ統合に必要なジョインを設定
               した(スキーム・ダイアグラムを参照のこと)。
      •        Baker Tilly は次に、手作業での審査手順の最中に特定した調査レッドフラッ
               グに見合う販売取引を分析し、調査データアナリティクス・プラットフォーム
               にアップロードされた統合データにクエリを適用した(レッドフラッグ・クエ
               リを参照のこと)。
      •        クエリの各々を適用した後、調査データアナリティクス・プラットフォームか
               ら、販売取引の詳細を記載した報告書と、他の関連データソースから取引の特
               定レッドフラッグ規準未達理由を示す関連フィールドを、出力した。Baker
               Tilly はそのうえで、各クエリの結果を確証した。
       •       Baker Tilly は、各クエリが定められた規準を満たす販売取引を正確に特定し
               たことを確証した後に、以下を含む適切な紙面での文書証拠の審査により、販
               売取引をサンプリングした。




                                   - 42 -
•   顧客の発注書
•   署名入りの船荷証券
•   税関書類
•   運送会社の配送完了証明(「POD」)
•   業者の運送料インボイス
•   クレジットメモ(貸記伝票)の文書証拠
•   上記の文書証拠が入手可能でない場合、又は上記の文書証拠からテストを
    確証又はクリアできる適切な情報が提供されなかった場合には、Baker
    Tilly は、サンプリングした販売取引の有効性を評価するために、文書審査
    プラットフォームで焦点を絞った検索を実行した。




                  - 43 -
スキーム・ダイアグラム




              - 44 -
レッドフラッグ・クエリ




              - 45 -
- 46 -