6815 ユニデンHD 2021-06-11 19:15:00
第三者委員会の調査報告書受領のお知らせ [pdf]

                                                               2021 年 6 月 11 日
各位
                                          会社名 ユニデンホールディングス株式会社
                                          代表者         代表取締役社長 西川 健之
                                                (コード番号 6815 東証第1部)
                                          問合せ先          人事・総務部 小尾 幹之
                                                         (TEL:03-5543-2812)


                     第三者委員会の調査報告書受領のお知らせ


 当社は、2021 年 4 月 30 日付「第三者委員会設置のお知らせ」にてお知らせしましたとおり、
2020 年 6 月 3 日付の「第三者機関の調査報告書の公表に関するお知らせ」に添付した「調査結果
と改善提案」と題する書面の作成経緯に関して疑義が生じたことから、当社と利害関係を有しない
外部の専門家から構成される第三者委員会(以下単に「第三者委員会」という。
                                   )を設置し、事実関
係の解明のための調査を進めて参りました。
 本日、第三者委員会から、
            「調査報告書」を受領しましたので、お知らせ致します。


                                     記


1. 第三者委員会の調査結果について
  第三者委員会の調査結果につきましては、添付の「調査報告書(開示版)」をご覧ください。な
 お、当該報告書は、第三者委員会において関係者の個人情報等に配慮し部分的な非開示措置を施
 したものです。


2. 今後の見通し
  当社は、今回の第三者委員会の調査結果を真摯に受け止め、Baker Tilly Virchow Krause, LLP
 の Jonathan T. Marks 氏及び The Volkov Law Group LLC の Michael Volkov 氏が作成した 2020
 年 4 月 30 日 付 の 英 文 の 報 告 書 で あ る 「 INVESTIGATION FINDINGS AND
 RECOMMENDATIONS」の適切な翻訳を改めて作成し開示するほか、第三者委員会の調査報告
 書の内容を精査し、適切に対処していく所存です。


                                                                        以   上
調   査   報    告   書(開示版)




        令和 3 年 6 月 11 日


ユニデンホールディングス株式会社          第三者委員会



        委 員 長:青沼   隆之


        委   員:大谷   晃大


        委   員:清原     健
第1 本調査の概要 ................................................................................................................1
   1 当委員会設置の経緯及び目的等 ...................................................................................1
      (1) 当委員会設置の経緯.................................................................................................1
      (2) 当委員会設置の目的.................................................................................................2
   2 当委員会の構成 ............................................................................................................2
   3 本調査の期間及び当委員会の開催日程 ........................................................................2
   4 本調査の方法 ................................................................................................................2
      (1) 関係者のメール解析,デジタル・フォレンジック調査 ..........................................2
      (2) UHD 社から提供され又は当委員会が公表資料から収集した資料の分析 ..............3
      (3) 関係者に対するヒアリング......................................................................................3
   5 本報告書の前提条件及び調査に内在する限界 .............................................................4
第2 本調査結果 ....................................................................................................................4
   1 UHD 社の事業概要・役員構成等 ................................................................................4
      (1) 沿革・事業の概要 ....................................................................................................4
      (2) 株主の状況 ...............................................................................................................5
      (3) 役員の状況 ...............................................................................................................5
      (4) 会計監査人の状況 ....................................................................................................6
   2 BT&V 調査報告書の改変の有無について ...................................................................6
      (1) BT&V 調査報告書からの変更点 ..............................................................................6
      (2) 改変の有無 ...............................................................................................................7
   3 本件改変に至る経緯 .....................................................................................................7
      (1) 本件改変に至る経緯の概要......................................................................................7
      (2) 本件会計不正への対応に当たった主な従業員等 .....................................................8
      (3) BT&V 調査報告書の開示に係るコンセンサス形成に至る経緯 ..............................9
      (4) 開示版調査報告書作成の経緯 ................................................................................15
   4 開示版調査報告書に対する当時の役員の関わり .......................................................18
      (1) A 会長 .....................................................................................................................18
      (2) F 専務 .....................................................................................................................18
      (3) G 取締役 .................................................................................................................19
      (4) H 取締役.................................................................................................................19
      (5) L 社外取締役 ..........................................................................................................19
      (6) J 監査役(物故者) ...............................................................................................20
      (7) N 監査役 .................................................................................................................20
      (8) M 監査役 ................................................................................................................20
第3 結語 .............................................................................................................................20
別添 ........................................................................................................................................23
第1 本調査の概要
    1 当委員会設置の経緯及び目的等
    (1)   当委員会設置の経緯
          ユニデンホールディングス株式会社(以下「UHD 社」という。)は,2020 年 5
      月 15 日,連結子会社の Uniden America Corporation(以下「UAC 社」という。)
      及び Uniden Australia Pty. Ltd.(以下「UAUS 社」という。)における不適切な
      会計処理(以下「本件会計不正」という。)に関し,同年 3 月期第 3 四半期報告書
      及び過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の関東財務局への提出とともに,同
      年 3 月期第 3 四半期決算及び過年度の決算短信等の訂正を公表した。
          その後,UHD 社は,同年 6 月 3 日,本件会計不正の調査を行っていた米国の会
      計事務所 Baker Tilly Virchow Krause, LLP(以下「BT」という。)及び米国の法
      律事務所 The Volkov Law Group LLC(以下「Volkov」という。なお, と Volkov
                                                     BT
      と を 併 せ て 「 BT&V 」 と い う こ と が あ る 。 ) に よ る 同 年 4 月 30 日 付 け
      「INVESTIGATION FINDINGS AND RECOMMENDATIONS」(以下「BT&V
      調査報告書」という。なお「英語版調査報告書」ということもある。)の和訳を開
      示した(以下「本件開示」といい,開示された調査報告書の和訳を「開示版調査報
      告書」という。)1。本件開示において,開示版調査報告書は,個人情報等に配慮
      し部分的な非開示措置を施したものである旨の説明がされていた。
          ところが,今般,雑誌「FACTA」2021 年 5 月号(同年 4 月 20 日発行)に,開
      示版調査報告書と BT&V 調査報告書の内容には齟齬があり,本件会計不正の責任
      の所在として言及されていた,UHD 社の代表取締役会長(当時)である A 氏(以
      下「A 会長」という。)ら UHD 社のリーダーシップが「有害な」(“toxic”) 企業文
      化を創り上げたこと,A 会長ら UHD 社の経営幹部が部下に対して非現実的な売
      上目標を強要していたことなどの部分が開示版調査報告書からは削除されるなど
      の改変がなされていたとする記事が掲載された2。
          そこで,UHD 社が改めて開示版調査報告書と BT&V 調査報告書とを比較対照
      したところ,開示版調査報告書作成に当たり,調査対象事項に関する責任の所在・
      背景を不明瞭にする削除等が行われた疑いがあることを把握した。しかし,UHD
      社は,現役員の一部が本件開示当時において UHD 社の役員や顧問であったこと
      から,調査の中立性・公正性を図り,徹底した調査を行うため,第三者委員会によ
      る調査を実施することとし,同年 4 月 30 日,取締役会において当委員会設置を決
      議し,同日,日弁連ガイドラインに準拠して中立・公正な外部の専門家として選任
      した旨が公表された。


1 2021 年 6 月 3 日「第三者機関の調査報告書の公表に関するお知らせ」
(http://www.uniden.co.jp/ir/news/dat/2020/20200603_information.pdf)
2 「ユニデンが不正会計の『調査報告書』改変」月刊 FACTA2021 年 5 月号 66 頁。




                                         1
    (2)   当委員会設置の目的
          当委員会は,開示版調査報告書の作成経緯に関する事実関係(英語版調査報告書
      からの改変の有無,改変が認められる場合には役員の関与の有無を含む。)を調査
      する目的で設置された。以下では,当委員会における調査を「本調査」ということ
      がある3。
          ただし,前記改変が認められた場合においても,改変に関与した役員,従業員等
      の責任追及を目的とするものではない。
          なお,本調査は,BT&V 調査報告書の報告内容,特に数値,事実認定の真偽・原
      因分析その他認定事実の評価について,その当否を再調査するものではない。


    2 当委員会の構成
          当委員会は,以下の 3 名の委員で構成される。
           委 員 長:青沼 隆之 弁護士(シティユーワ法律事務所)
           委   員:大谷 晃大 弁護士(ITN 法律事務所)
           委   員:清原    健 弁護士(清原国際法律事務所)
          また,当委員会は,弁護士 7 名を補助者として使用した。
          なお,当委員会の各委員及び各補助者は,いずれも,UHD 社及びその関連会社
      と利害関係を有していない。


    3 本調査の期間及び当委員会の開催日程
          本調査の期間は,当委員会が設置された 2021 年 4 月 30 日から同年 6 月 10 日
      (本報告書の日付の前日)までである。この間に当委員会は以下の日程で開催され
      た。
           同年 5 月 4 日,同月 6 日,同月 10 日,同月 12 日,同月 13 日,同月 15 日,
           同月 22 日,同月 24 日,同年 6 月 4 日,同月 7 日,同月 9 日,同月 10 日


    4 本調査の方法
    (1)   関係者のメール解析,デジタル・フォレンジック調査
          当委員会は,まず,ヒアリング開始に先立ち,2020 年 6 月 3 日当時の開示業務
      の担当責任者であり,関東財務局及び東京証券取引所(以下「東証」という。)との
      折衝や開示文書その他の書類の作成等を担当していた B(以下「B」という。)の,
      退職時に PC 内に保管されていたメール,及び,BT&V の調査報告書を和訳してい
      た,当時 UHD 社の顧問の C(以下「C」という。)の,UHD 社のサーバー上で保


3なお,本調査では,UHD 社の内部統制,コンプライアンス・ガバナンス上の問題点,企業風土等に係る
原因分析は調査スコープには含まず,そのため,再発防止策の提言も行わない。




                                2
  管されていたメールを,キーワード検索を使用せず網羅的に見る方法で,同年 2 月
  1 日から同年 9 月 30 日の期間について確認した。また,当委員会は,当時の A 会
  長に対する社内報告(この報告は,UHD 社の社内で「HF レポート」と呼ばれてい
  た。)について,メールでの受信と A 会長への手交を行っていた秘書室所属の運転
  手である D(以下「D」という。)の UHD 社サーバー上に保管されていたメール
  と,本件会計不正に関する調査等の現地対応をしていた E(以下「E」という。 の,
                                       )
  退職時に PC 内に保管されていたメールも,同様に確認した。なお,これらのメー
  ルは,システム上,ローカル PC で削除をするとサーバーでも同期して削除され,
  復元はできないものであった。
      また,UHD 社は,同年 3 月 9 日以降,UHD 社の日本サーバーを経由する全メ
  ールをアーカイブするメールジャーナルを導入していた。そこで,当委員会は,関
  係者のヒアリングと並行して,同年 6 月頃までのメールジャーナルについて一定の
  キーワードの使用や送受信者の絞込みを行った上で,各役員及び従業員の関与,並
  びに前記サーバーから削除された重要メールの有無を確認した。
      さらに,当委員会は,調査可能であって関連データが保存されている可能性があ
  る PC,具体的には,UHD 社の F 代表取締役専務(当時)
                                (以下「F 専務」という。,
                                             )
  G 取締役(以下「G 取締役」という。,H 取締役(以下「H 取締役」という。,C,
                     )                   )
  D,経理・財務担当の I 部長(以下「I」という。
                          )の PC に対してデータフォレン
  ジックを実施し,保存されているデータを復元して確認した。なお,C は,当委員
  会に対し,UHD 社の許可を得たうえで業務上使用していた個人用 PC も任意に提
  供した。


(2)   UHD 社から提供され又は当委員会が公表資料から収集した資料の分析
      当委員会は,UHD 社から提供された,又は当委員会が独自に公表資料から収集
  した関連資料として,以下を含む資料を確認した。
      E 及び B の作成に係る A 会長宛ての 2020 年 9 月 23 日付け監査時系列説明報告
  (HF レポート)
          ,UHD 社の取締役会議事録,監査役の来社に係る経費情報,A 会
  長の出社日に係る情報,UHD 社の組織図(ホワイトボードへの記載の写真) UAC
                                      ,
  社及び UAUS 社の組織図,UHD 社の職務分掌規程,人事記録,有価証券報告書,
  四半期報告書,内部統制報告書,臨時報告書,プレスリリース,定款,法人登記簿,
  A 会長から当委員会の委員に宛てられた書簡等。


(3)   関係者に対するヒアリング
      当委員会は,本件開示当時の UHD 社の取締役及び監査役のうち物故者を除く全
       ,従業員 4 名及び顧問 1 名の合計 12 名のヒアリング(のべ 15 回)を実
  員(7 名)
  施したが,コロナ禍による緊急事態宣言中であったこと,ヒアリング対象者の中に




                           3
  は既に退任又は退職した者がいること,遠隔地居住者がいることなどの理由により,
  リモート会議システム及び電話によるヒアリングも併用した。また,ヒアリング対
  象者から任意に資料の提供を受けることもあった。
      なお,本件開示当時の UHD 社役員のうち,J 常勤監査役(以下「J 監査役」と
  いう。
    )は,本調査開始時点で他界している。


5 本報告書の前提条件及び調査に内在する限界
      本報告書は,2021 年 6 月 10 日までに当委員会が収集した資料及び情報に基づい
  ている。したがって,その後に新たに生じ,又は発見された資料及び情報や当委員
  会に提供されなかった資料及び情報によっては,本報告書における認定が修正又は
  変更される場合があり得る。
      また,当委員会の調査は任意のものであり,既に UHD 社を退任又は退職した者
  を含め,調査対象者の協力の範囲内での調査であること,本調査の調査対象が限定
  されていることによる限界がある。


第2 本調査結果
1 UHD 社の事業概要・役員構成等
(1)    沿革・事業の概要
ア 主な沿革
      1966 年   A 会長がユニ電子産業株式会社(Uni Electronic Industrial Co., Ltd.)
               を設立
      1974 年   商号をユニデン株式会社(Uniden Corp. )
                                        (以下「ユニデン社」とい
               う。
                )に変更
      1979 年   American Radio Corporation(現 UAC 社)を買収
      1986 年   日本証券業協会の店頭登録銘柄として登録
      1988 年   東証の市場第二部に上場
      1989 年   UAUS 社を設立
      1990 年   東証の市場第一部に指定替え
      2007 年   Uniden Vietnam Ltd.設立
      2012 年   ユニデンキャピタル株式会社(現ユニデン不動産株式会社(以下「ユ
               ニデン不動産社」という。)設立
      2015 年   ユニデン社からユニデンホールディングス株式会社へ商号変更
               ユニデンジャパン株式会社(以下「ユニデンジャパン社」という。)を
               設立し,ユニデン社の欧州向け販売事業及び国内販売事業を分割譲渡


イ 事業の概要



                                       4
          UHD 社グループは,2020 年 9 月 30 日提出の第 55 期(自 2019 年 4 月 1 日   至
      2020 年 3 月 31 日)の有価証券報告書(以下「第 55 期有価証券報告書」という。)
      によれば,UHD 社及び子会社 18 社(うち連結子会社 17 社,持分法適用関連会社
      1 社)で構成され,
               エレクトロニクス事業及び不動産事業を主要な事業としている。
          UHD 社は,主としてベトナム子会社である Uniden Vietnam Ltd.で製造したエ
      レクトロニクス機器を海外拠点及び国内で販売する事業会社であり,純粋持株会社
      ではない。
          エレクトロニクス事業は,海外向けは無線通信・応用機器の販売,国内向けはユ
      ニデンジャパン社を通じたデジタル家電機器の販売が中心である。
          不動産事業は,主に UHD 社が 33.3%の株式を保有するユニデン不動産社におい
      て行っているほか,UHD 社においても営んでいる。
          第 55 期有価証券報告書によれば,2020 年 3 月期のセグメント別販売高は,エレ
      クトロニクス事業が 10,646 百万円(うち UAC 社が 5,687 百万円,UAUS 社が
      3,190 百万円。デジタル家電機器が 1,007 百万円),不動産事業が 9,386 百万円で
      ある。セグメント別に見た場合,同年 3 月 31 日時点のエレクトロニクス事業の従
      業員は 667 名(うちデジタル家電機器が 71 名),不動産事業の従業員は「-」,そ
      の他が 4 名となっている。なお,ユニデン不動産社は,2022 年 3 月期第 1 四半期
      より連結子会社から持分法適用関連会社へと変更する旨公表されている。


    (2)   株主の状況
          第 55 期有価証券報告書によれば,2020 年 6 月当時の UHD 社株主の状況は,同
      月 26 日現在,筆頭株主はフジファンド株式会社(A 会長がその株式 100%を保有
      し,代表取締役を務める。)であり(所有割合 8.64%) 位から 9 位は外国法人又
                                  ,2
      は信託銀行の信託口(所有割合合計 27.7%)であった。


    (3)   役員の状況
          UHD 社の法人登記簿及び第 55 期有価証券報告書によれば,本件開示当時の
      UHD 社の役員は以下のとおりである4。なお,2019 年 6 月 27 日に UHD 社の代表
      取締役社長に就任した K 氏が同年 9 月 20 日に辞任した後は,2020 年 9 月 25 日に
      F 専務が代表取締役社長に就任するまでの間,UHD 社の社長は不在であった。こ
      のため,本件会計不正の対応や本件開示当時は,社長及び海外エレクトロニクス事
      業を所管する取締役が欠けた状態であった。




4   A 会長は,2020 年 10 月 30 日付けで UHD 社の取締役を退任した。




                                  5
          業務執行取締役(2020 年 6 月当時)
          氏名       2020 年 6 月 3 日当時 UHD 社のグループ会社における主要な兼務
                   の役職           状況等
          A        代表取締役会長       ユニデン不動産社代表取締役
          F        代表取締役専務       ユニデン不動産社代表取締役(不動産事業所
                                 管)
          G        取締役           ユニデンジャパン社取締役(国内エレクトロ
                                 ニクス事業所管)
          H        取締役           ユニデン不動産社取締役(不動産事業所管)


          社外取締役及び監査役(2020 年 6 月当時)
          L        社外取締役
          J        社外監査役(常勤)
          M        監査役
          N        社外監査役


          なお,N 社外監査役(以下「N 監査役」という。
                                 )は,公認会計士(監査法人日
      本橋事務所名誉理事長。日本公認会計士協会元副会長)であり,一般社団法人 Baker
      Tilly Japan の理事長(現任)である5。N 監査役によれば,同社団法人は,日本に
      おける BT の関連法人とのことである。


    (4)       会計監査人の状況
              本件会計不正が発覚した 2019 年末当時,UHD 社の会計監査人は国際的な監査
      法人ネットワークの BDO と提携関係にある三優監査法人(以下「三優」という。)
      であった6。また,UAC 社は BDO USA, LLP(以下「BDO」という。)が,UAUS
      社は BDO Australia が監査を行っていた。


    2 BT&V 調査報告書の改変の有無について
    (1)       BT&V 調査報告書からの変更点
          開示版調査報告書は,下記3で述べるとおり,C が BT&V 調査報告書を和訳し
      たものを,B が編集して作成したものである。当委員会において,C が当時作成し
      た BT&V 調査報告書の和訳(以下「BT&V 調査報告書 C 訳」という。
                                           )の記載を左
      欄に,開示版調査報告書の記載を右欄に並べて変更点を比較した対照表を別添とし


52020 年 7 月 30 日に提出された株式会社甲の第 49 期有価証券報告書による。
62020 年 9 月 4 日付の臨時報告書によれば,UHD 社は同日付で三優との監査契約を合意解除することと
し,監査法人アリアを一時会計監査人に選任した。




                                  6
      て添付する。
          変更点のうち削除その他の重要な変更があったものは,大要以下のとおりである。


          ①   UHD 社の調査結果のうち UHD 社会長・上級幹部による非現実的な売上目
           標の達成へのプレッシャーが,UAC 社及び UAUS 社共通の会計不正の原因と
           された部分の削除
          ②   UAC 社と UAUS 社に共通する発見事項に係る記述の一括削除
          ③   根本原因の分析に係る章の一括削除
          ④   UHD グループの企業文化に関するネガティブな記載の削除


          前記比較と併せて,当委員会は,今般 UHD 社が翻訳業者を起用して作成した
      BT&V 調査報告書の和訳を確認したが,BT&V 調査報告書 C 訳は,要旨において
      和訳時に意図的な変更を加えたとは認められなかった。
          なお,BT&V 調査報告書と開示版調査報告書とを比較すると,本件会計不正の内
      容や金額について変更点はない。


    (2)    改変の有無
           別添対照表の内容から明らかなとおり,開示版調査報告書においては,BT&V 調
          査報告書に記載された事実を意味内容の異なる事実に書き換えるといった変更は
          行われていないが,主に,本件会計不正の主たる原因が,親会社である UHD 社の
          役員にあったという部分に関連した記載の削除等が行われている。
          「改変」とは,一般的に,「改めて違うものにする」ことを意味する7ところ,
      BT&V 調査報告書においては,UAC 社のみならず UAUS 社においても会計不正
      が行われていた原因として,UHD 社の役員に問題があったことが複数回にわたっ
      て言及され,それらは再発防止策の提言に繋がっている。その点からいえば,この
      ような削除等があった部分は BT&V 調査報告書において相当程度に重要な意味を
      持っていたと考えられる。かかる部分を削除することは,「改変」に当たるものと
      評価できる。
          以下では,この改変を,
                    「本件改変」ということがある。


    3 本件改変に至る経緯
    (1)    本件改変に至る経緯の概要
          後記(4)のとおり,開示版調査報告書は,開示業務を担当していた B が,BT&V 調
      査報告書 C 訳をベースにその文案を作成したものである。しかしながら,B には,



7   広辞苑第 7 版。




                              7
 対外公表文書の内容につき自らの判断のみで決定する権限はなく,また改変を行う
 個人的な動機も見当たらない。
      他方,本件改変は,本件会計不正の調査・訂正監査等への一連の対応をしていく
 中で,いわば派生的に生じた出来事であるところ,本調査において,本件開示から
 2 か月半以上遡る 2020 年 3 月中旬頃の,B が関東財務局に提出した第 3 四半期報
 告書の提出期限再延長申請書等においても,本件改変と趣旨を同じくする削除等が
 行われていたことが判明した。そして,この時点で,既に本件改変へと通じる認識
 が関係者間で形成されていたと評価し得ることから,以下では,そのような認識の
 形成に至る経緯等を含めて,本件会計不正への UHD 社における対応体制(下記「(2)
 本件会計不正への対応に当たった主な従業員等」 2020 年 3 月中旬に本件改変と
                      ),
 同様の削除等が行われるに至る経緯(下記「(3) BT&V 調査報告書の開示に係るコ
 ンセンサス形成に至る経緯」,
              ) その後本件改変に至る経緯(下記「(4) 開示版調査報
 告書作成の経緯」
        )の順に明らかにする。


(2)   本件会計不正への対応に当たった主な従業員等
ア 前記のとおり,本件会計不正が発覚し,その対応が必要となった 2020 年 1 月当
  時,UHD 社は代表取締役社長が空席であった。当時は,UHD 社ではいわゆる組
  織図や配置表を作成しておらず,役員らが出席する会議において,A 会長が決めた
  人事配置をホワイトボードに記載し,その画像を撮影してメールに添付して送付す
  る等によって周知するという方法が取られていた。加えて,UHD 社では頻繁に担
  当業務の変更が行われていた。
      2019 年 10 月から同年 12 月にかけて,過去にユニデン社の業務執行取締役や代
  表執行取締役を務めた経験のある E 及び C が, 会長の招聘で UHD 社に復帰し,
                          A
  海外での調達業務の支援や A 会長の補佐的な業務等に従事するようになっていた。
  そのような中で本件会計不正が発覚したため,A 会長の指示で,以下のとおり,E
  及び C を実務責任者として,それぞれ海外及び国内での対応方針等を決定して対
  応する体制が敷かれ,その下で B が関東財務局や東証との折衝や開示業務等の事
  務作業を担当していた。


イ E
      E は,2013 年 2 月 28 日に取締役を退任したのを最後に一旦ユニデン社から離れ
  ていたが,A 会長に誘われて 2019 年 10 月にエレクトロニクス事業の責任者たる
  経営幹部の一員として復職していた。当時,E は,役員及び従業員の間では,A 会
  長の意向として,2020 年 3 月期の定時株主総会において UHD 社取締役に選任さ
  れた後,UHD 社の代表取締役に就任しエレクトロニクス事業を担当する見込みで
  あると認識されていた。




                         8
      E は,UHD 社に復職後 2020 年 1 月末頃までは主に中国に長期出張するなどし
  て調達業務を担当していたが,本件会計不正が発覚すると,その調査や BDO の四
  半期レビューに現地で対応するよう A 会長から指示され,同年 2 月 3 日から米国
  に長期出張して,UAC 社の CEO として現地対応に当たった。
      E は,UAC 社における一連の対応終了後,同年 4 月 30 日頃に帰国し,新型コ
  ロナウイルスの感染拡大防止上の待機期間を経て同年 5 月 15 日頃に UHD 社での
  業務に復帰したが,同年 6 月には辞意を表明し,同年 10 月 22 日に UHD 社を退
  職した。


ウ C
      C は,1984 年 4 月から当時のユニデン社に社長室長として中途入社し,同年 6
  月からは取締役となり,米国に駐在して UAC 社社長を務め,ユニデン社の常務取
  締役となったが,1994 年 4 月に辞任した。その後,A 会長に誘われて 2011 年 4 月
  にユニデン社に復職し,同年 6 月に同社代表取締役に就任したが,同年 12 月には
  辞任した。
      C は,A 会長に請われて 2019 年 12 月に UHD 社顧問に就任したところ,本件
  会計不正が発覚したため,A 会長から,英語力と UAC 社の社長経験等を買われて
  本件会計不正に関する対応を要請され,以後は,E から UAC 社における日々の調
  査状況等の情報を得て適宜の対応を検討し提案する役割を担った。また,E から 5
  回にわたり暫定版を含めた BT&V の調査報告書を受領すると,その都度和訳し,A
  会長を始め必要な社内共有を図った。さらに,関東財務局や東証との折衝等に当た
  っていた B から相談を受け,適宜助言していた。
      なお,C は,2020 年 9 月 25 日の株主総会で UHD 社の常勤監査役に就任した。


エ B
      B は,2012 年 4 月に UHD 社に入社し,2016 年 6 月頃から経理管理本部で関東
  財務局や東証との折衝や開示業務を担当していた。B は,UHD 社取締役に就任し
  たこともあるが,2020 年当時は管理部門を担当する執行役員であった。
      B は,本件会計不正に関しては,主として関東財務局や東証の担当者との折衝を
  担当し,各種手続に必要な提出書類や適時開示文書も作成していた。
      なお,B は,2021 年 3 月 10 日に UHD 社を自主退職した。


(3)   BT&V 調査報告書の開示に係るコンセンサス形成に至る経緯
ア 2019 年 12 月 20 日頃,UAC 社の監査人である BDO による第 3 四半期レビュー
  の準備段階で売掛金 571,000 米ドルの長期滞留が発見されたのとほぼ同じ時期,
  C,E,B らは,2020 年 1 月 4 日(以下,特段の記載がない限り,月日のみの記載




                            9
 は全て 2020 年の出来事である。)頃までの間に,UAC 社の経理担当者から,UAC
 社における 2 件の不正売上計上につき連絡を受け,これらは BDO にも連絡がなさ
 れていた。
  同月 17 日には,UAC 社と三優が,BDO から,第三者による調査を実施しなけ
 れば UAC 社の四半期レビューができない旨の通告を受けるとともに,第三者とし
 て BT の紹介を受け,UAC 社は,同月 21 日,BT との間で UAC 社の調査委嘱契
 約を締結した。
  UHD 社は,同月 24 日,BDO から,2017 年 7 月まで遡って調査を行う必要が
 あること及び独立した法律事務所に調査の監督を委嘱する必要がある旨の指摘を
 受けたため,2020 年 1 月 29 日,BT から紹介を受けた法律事務所である Volkov
 と契約した。


イ UHD 社は,同月 28 日,三優との電話会議で,2 月 5 日までに UAC 社の四半期
 レビューが完了すれば,第 3 四半期報告書の提出期限である同月 14 日に UHD 社
 の第 3 四半期レビューを間に合わせることができるとの見解を得た。
  そこで,UHD 社は, 月 31 日,
             1       BDO 及び三優と電話会議を行い, 会長自ら,
                                      A
 UHD 社の上場廃止を避けるために 2 月 5 日までに UAC 社の四半期レビューを完
 了させてほしい旨を要望した。そして,現地で BT&V の調査や BDO の四半期レビ
 ューに協力することで UAC 社の四半期レビュー完了を早期に実現させるため,2
 月 3 日から E を UAC 社に派遣した。


ウ しかし,同月 5 日までに UAC 社の四半期レビューは完了しなかったことから,
 B は,同日,関東財務局に提出する第 3 四半期報告書の提出期限延長申請の準備を
 開始することとなった。
  B は,同申請書類の準備の過程で,同月 9 日,E,C,F 専務,G 取締役,H 取
 締役,N 監査役及び J 監査役らに対するメールにおいて,提出期限延長申請書に
 UAC 社の O 氏(以下「O 氏」という。)の肩書を「営業部門責任者」と記載してい
 たところ,三優から,O 氏は「President(社長)
                            」と表記すべきである旨の指摘を
 受けたことを伝えて,その対応を相談した。これに対し,C は,全返信で,O 氏の
 肩書は President ではあるが,UAC 社の重要意思決定は UHD 社本社で行ってお
 り,O 氏の役割は営業部長にすぎないのであるから,監査人が O 氏を UAC 社の社
 長と表現した場合には,UHD 社から関東財務局や東証に実態を説明すればよい旨
 伝えた。また,N 監査役は,B のメールに対する同日付けの返信において,O 氏は
 連結べースでは営業拠点の責任者にすぎないと考える旨連絡していた。
  関東財務局は,同月 14 日,UHD 社の第 3 四半期報告書の 3 月 16 日までの提出
 期限延長を承認した。




                       10
エ A 会長,E,C,B ら及び UAC 社の経理担当者は,2 月 22 日,BT 及び Volkov
 と電話会議を行った。その際,A 会長らは,本件は UAC 社全体で行われた不正で
 はなく,セールスマンが個人的な売上目標を達成するために行ったことである旨主
 張した。しかし,この UHD 社の主張は BT 及び Volkov に受け入れられなかった。
   BDO は,A 会長,F 専務,N 監査役,J 監査役,M 監査役(以下「M 監査役」
 という。,B,E 等を宛先として同月 24 日付けレターを送付し,同レターで,BT
     )
 及び Volkov から受けた電話での報告によれば,O 氏の不正は UHD 社から販売目
 標を達成するよう圧力を掛けられたことが原因であること及び同様の圧力が他の
 ユニデン拠点でも発生しているとの主張があるので精査する必要があることを指
 摘した。


オ UHD 社は,同月 28 日,BT&V の「Preliminary Investigative Summary」
                                                         (予
 備的調査報告書)
        (以下「BT&V 調査報告書①」という。)を受領した。BT&V 調査
 報告書①には,予備的調査結果として,UHD 社による厳格な販売目標の達成のプ
 レッシャー等が指摘されていた。
   C は,3 月 2 日頃,BT&V 調査報告書①に記載された上記指摘が UHD 社の実態
 と異なる点について,A 会長の主張を説明する BT 宛てのレターを作成し,A 会長
 の確認を得て,一部修正した後,大要「あなたが調査して発見したことと私たちの
 慣行との間にいくつかの根本的な不一致があることに気付いた。 (会長) UHD
                              私    は,
 社の他の経営陣と同様に,子会社に販売目標を強制することはなかった。」旨主張
 する A 会長のレターを BT に対して送付した。しかし,BT は同主張を受け入れる
 ことはなかった。


カ UHD 社及び UAC 社は,同月 2 日,BDO から,BT&V 調査報告書①では不十分
 で,更にユニデンジャパン社及び UAUS 社の調査も行う必要があり,同月 14 日ま
 でに UAC 社のレビューを完了することは不可能である旨のレターを受領した。こ
 のため,B は,関東財務局に対し,第3四半期報告書の提出期限再延長申請を行う
 ことになる旨の連絡をした。これに対し,関東財務局からは,同月 6 日,仮に再延
 長に係る承認申請を行う場合には,同月 9 日午前 10 時までに,BT&V の最終報告
 書を日本語訳したもの,仮にその時点で最終版を受領していない場合には最新版を
 日本語訳したもの及び延長承認申請に係る書類一式を提出するよう要請された。


キ B は,同月 8 日午後 5 時 59 分頃,E,C,I,F 専務,N 監査役,J 監査役等に
 対し,関東財務局に提出する申請書の文案を回付し,翌 9 日午前 9 時 53 分頃,関
 東財務局に対し,承認申請書案を送付した。この承認申請書案には,2 月 14 日提




                           11
 出の提出期限延長承認申請書の時点の後に生じた新たな事実として,(UAC 社の
                                「
 従業員が)当該不適切な行為を行った理由が売上目標達成のためであり,それをし
 なければならなかった理由の一つとして,当社経営陣による過度なプレッシャーの
 存在の可能性を認識されたため,販売子会社すべてに同じ動機が存在する可能性が
 疑われ,」たことから,調査範囲を UAC 以外の販売子会社である UAUS 社及びユ
 ニデンジャパン社に拡大せざるを得なくなったとの説明がなされていた(下線部は
 当委員会が付した。以下断りがなければ同じ。。このように,B が当初作成してい
                      )
 た承認申請書案では,BT&V の調査報告書で指摘された本件会計不正の原因につ
 いて,多少表現を婉曲的なものとしていたものの,これを前提とする説明ぶりとな
 っていた。
  しかし,3 月 9 日午後 6 時 36 分頃,C が,E,F 専務,B 等に対し,メールで,
 「各位,本日の会長との打ち合わせで指摘頂いた部分を改定(ママ)したお知らせを
 添付します。「上記内容に関東財務局あての報告書,申請書もすべて改定(ママ)い
       」
     」と送信した後,続けて,同日午後 6 時 42 分頃,承認申請書案の改訂案
 たします。
 を添付して送信した。同改訂案では「当該不適切な行為を行った理由が営業担当者
 のインセンティブ獲得のための売上目標達成のためですが,それをしなければなら
 なかった理由の一つとして,経営陣による過度なプレッシャーがあったとの誤った
 説明がなされていため(ママ),販売子会社すべてに同じ動機が存在する可能性がある
 のではという判断により」調査範囲を拡大せざるを得なくなったという説明ぶりに
 変更されていた。すなわち,BT&V の調査報告書における本件会計不正の原因に関
 する指摘につき,UHD 社の反論を示すものへと変更されていた。
  また,E においても,同月 10 日午前 4 時 22 分頃,C,F 専務及び B に対し,関
 東財務局への提出書類について「会計監査は,犯罪捜査機関では有りませんので,
 本社からの過度なな(ママ)プレッシャーはないものとの明記で良いと思います。但
 し,受ける側がプレッシャーと誤解を受ける表現,行動があったのであれば,改め
 る,との姿勢で良いと思います。経営者責任に問われる危険性を含みますので,事
 実と異なる事象はクローズアップせずとも良いと思います。」との上記改訂案と同
 趣旨の見解をメールで伝えた。


ク そこで,B は,同日午前 9 時 9 分,関東財務局に対し,C が,A 会長との打合せ
 で指摘された部分を修正した改訂案を,更に微修正した文案をメールで送付した。
  しかし,B は,関東財務局から,本件会計不正が行われた原因に関して UHD 社
 の見解を断定的に記載していた部分につき,事実でない部分は断定せず表現を変更
 するよう指摘された。
  そのため,B は,「当該不適切な行為を行った理由が営業担当者のインセンティ
 ブ獲得のために売上目標を達成する目的であったと推定されるものの,当該行為を




                      12
     行った理由の一つとして,経営陣による過度なプレッシャーがあったとの営業部門
     責任者の発言があったことで,販売子会社すべてに同じ動機が存在する可能性が疑
     われ,」との文案に変更し,改めて,同月 11 日午後 3 時 26 分頃に関東財務局に提
     出した。
      もっとも,B は,同月 13 日適時開示の「2020 年 3 月期第 3 四半期報告書の提出
     期限延長(再延長)に係る承認申請書提出のお知らせ」について,前記断定的な記
     載の残されたままの文案を東証担当者に送付しており,「当該不適切な行為を行っ
     た理由が営業部門責任者のインセンティブ獲得のための売上目標達成であったに
     も関わらず,それをしなければならなかった理由の一つとして,経営陣による過度
     なプレッシャーがあったとの発言により,販売子会社すべてに同じ動機が存在する
     可能性が疑われ,
            」との内容で適時開示がなされた。このように関東財務局に対す
     る再延長申請書類の文言と,東証の適時開示の文言において一貫性のない対応が取
     られているが,その理由は,本調査においても判然としない。


    ケ C は,同月 10 日頃,BT&V の調査報告書を和訳していたところ,B から,関東
     財務局に提出する日本語訳の内容について相談を受けたことから,UHD 社の認識
     と異なる内容の報告書を提出しても意味がないから,原因分析に係る部分は全て削
     除して提出するよう助言した。
       そこで,B は,同月 13 日午前零時 12 分頃,関東財務局に対して延長申請書類
     一式を送付した際,同月 11 日に BT&V から受領した「Investigation Findings and
     Recommendations」
                    (以下「BT&V 調査報告書②」という。)の日本語訳であると
     して,C の和訳から原因分析に係る部分を全て削除したものを送付した8。
      関東財務局は,同日, 3 四半期報告書の提出期限延長
                第               (再延長)申請を承認し,
     UHD 社の第 3 四半期報告書の提出期限は 4 月 16 日となった。

8   主要な削除部分は以下のとおり。
    1. UHD は,厳格な月次販売目標の達成に特に焦点を当てた企業文化を形成していたために,その結果,
    内部統制が無効になっつ(ママ)いました。UHD は,UAC の営業責任者とセールススタッフがこれらの
    目標を達成できなかった場合,規律や解雇の脅威を含む否定的な文化を作り出すことにより,これらの
    月間販売目標の達成を積極的に図ろうとしました。
    2. UAC のネガティブな文化は,UAC の経営者と上級販売員が関与する UHD との定期的な会議を通じ
    て強化されました。UHD の上級役員は,UAC の販売実績と目標を確認し,規律や解雇で脅かし,UAC
    の管理者と販売スタッフを厳しい個人的な批判にさらしました。
    3.UAC は,財務報告と運用に関する効果的な内部統制を設計も維持もしていません。これは,有意義
    な倫理およびコンプライアンスプログラムが存在しないことにより更に悪化しました。
    4. UHD が毎月の販売目標の達成に単独で焦点を当てていること,および UHD の文化とメッセージの
    当然の結果として,   UAC の経営陣とスタッフは,毎月の販売目標を達成するという絶え間ないプレッシ
    ャーを経験し,基本的な会計原則を無視する環境を作りました。
    5.当該期間中,UAC は複数の手法を実行して,月次および四半期目標を達成するために収益を時期尚
    早に認識させました。これらの手法を実行するために,UAC の上級管理職とスタッフは共謀し,不正行
    為を隠匿していました。




                              13
コ このように,本件会計不正の原因については, 月 22 日の BT 及び Volkov との
                       2
 電話会議の頃から BT 及び Volkov と A 会長らとの認識に不一致が見られていたと
 ころ,同月 28 日の BT&V 調査報告書①において,本件会計不正の原因が A 会長
 を始めとする UHD 社経営陣による販売目標に対する過度なプレッシャーにある
 旨記載されたことに対し,A 会長,C 及び E の間において,それは事実と異なる
 として,これをそのまま受け入れることはできない,という共通の認識が形成され
 ていたことは明らかである。
  そして,B においては,第 3 四半期報告書の再延長申請書類を準備する中で,3
 月 9 日に,C から,A 会長との打合せの結果,その指摘を踏まえ,本件会計不正の
 原因は UAC 社営業担当者のインセンティブ獲得を目的とした売上目標達成のた
 めであること,及び,ヒアリングにおける UHD 社経営陣による過度な売上目標達
 成のプレッシャーがあったとの説明は誤りであることを明示する記載とすべきこ
 とを伝えられ,また,同月 10 日には,E からも,無用に経営者責任を問われる危
 険性があるから UHD 社からの過度なプレッシャーはない旨明記するのがよい,事
 実と異なる内容は記載しなくてよい旨の見解を示され,さらに,同月 12 日頃まで
     C
 の間に, に対し,関東財務局への日本語訳の開示内容について相談した際,UHD
 社の認識と異なる内容の報告書を提出しても意味がないから原因分析に係る部分
 は全て削除して提出するよう助言されるなどしていた。
  すなわち,C 及び E は,UHD 社の認識と異なる内容の報告は,当局に対して提
 出する書類からは削除するのが会社にとって適切な対応であり,また A 会長の意
 向にも沿うものと考え,B においても,C を通じて認識した A 会長の意向や C 及
 び E の助言等から,外部に BT&V の調査報告書の内容を示すに当たっては UHD
 社の認識と異なる内容は削除する方針である旨理解していた。
  このようにして,同月 13 日頃までに,C,E 及び B の間で,BT&V の調査報告
 書の内容と UHD 社の認識が異なる部分については外部に開示しないとの,おおよ
 そのコンセンサスが形成されたと考えられる。


サ 同月 13 日以降 4 月にかけて,C 及び E は,BDO の四半期レビュー報告に向け
 て,1 月 27 日に BDO が四半期レビュー報告の前提条件として UHD 社に提示し
 ていた 7 つの条件を充足すべく対応していた。当初,C は,本件会計不正の原因に
 ついての UHD 社の認識は BT&V の報告内容と異なる旨を明示したうえで,叱咤
 激励が過度なプレッシャーと受け止められないよう通信方法を改善するなどとい
 う内容の書面を作成し提出した。しかし,BDO から,UHD 社のプレッシャーに対
 する認識が甘い,内部統制の改善策が不十分であるなどと複数回指摘されたことか
 ら,BDO の納得を得るため,やむを得ず,UHD 社が BT&V の調査報告書にある




                      14
  事実と原因分析に基づいて推奨された再発防止策を受け入れ,UHD 社の経営幹部
  及び従業員に対してパワーハラスメント研修を実施することなどを確約する内容
  の内部統制改善対策に係る書面を作成し,E を通じて BDO に提出した。
      そして,B は,4 月 3 日,三優から,内部統制報告書の訂正報告書の提出が必要
  である旨指摘を受け,内部監査室の P(以下「P」という。)に連絡して準備を開始
  した。
      もっとも,B は,同日,P に対して送付したメール文の中で,BDO に提出した
  UHD 社の内部統制の改善や不正会計の再発防止策に関する書面について,「パワ
  ハラが原因と認めない方向で UAC 側にて話をしていましたが,パワハラによる過
  度なプレッシャーが,UAC の営業が不正を働いた一因になっていることを UHD
  幹部が認めない限り     B/T は最終レポートを書かず,BDO US もレビュー報告書
  を提出しない。ということを盾にされ,添付の改善案を提出にするに至りました。
  但し,何をもってパワハラがあったと言っているかは,UAC の従業員に対するイ
  ンタビューと彼らのメールチェックの結果という以外は明示されていません。」な
  どと記載していたほか,同月 7 日,P に送付した,内部統制報告書の訂正報告書の
  準備に関するメール文の中で,
               「一方的な調査結果の報告書なので,開示文書に全
  てを反映させるつもりはありません」などと記載しており,既に固まった前記コ記
  載の方針に沿った説明をしていた。


(4)    開示版調査報告書作成の経緯
ア UHD 社は,4 月 9 日,BT&V の途中段階の調査報告書(以下「BT&V 調査報告
        )を受領した。同時点で,UAC 社の第 3 四半期レビューは完了して
  書③」という。
  いたが,UAUS 社についてはいまだ調査が継続中であった。
      B は,同月 14 日,新型コロナウイルス感染拡大対策の影響により調査及びレビ
  ューが遅延していることを理由とする第 3 四半期報告書の提出期限延長(再々延
  長)申請書を作成し,同月 15 日,A 会長の承認を得て,また C,E 及び F 専務に
  報告したうえで,関東財務局に提出した。
      UHD 社は,同日,BT&V の途中段階の報告書(以下「BT&V 調査報告書④」と
  いう。)を受領した。
      関東財務局は,同日,UHD 社の第 3 四半期報告書の 5 月 15 日までの提出期限
  延長(再々延長)を承認した。


イ UHD 社は,4 月 30 日頃,BT&V の最終調査報告書(これが BT&V 調査報告書
      である。)を受領した。この時点で,UAUS 社の第 3 四半期レビューは完了してい
      た。
       B は,関東財務局及び東証担当者との間で,提出ないし開示する書面の内容につ




                         15
     いて調整を行ったうえ,5 月 15 日,UHD 社の取締役会の書面決議による承認を
     経て,過年度の有価証券報告書等の訂正報告書,内部統制報告書の訂正報告書等を
     関東財務局に提出し,これらを決算発表や過年度の決算短信の訂正等と併せて適
     時開示した。
      なお,同日適時開示した「内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知ら
     せ」には,本件会計不正の原因は連結子会社における業務プロセスの不備や法令順
     守意識の欠如,不十分なモニタリング体制等であり,UHD 社における連結子会社
     に対する管理・監督が不十分だったことも原因である旨記載していた。しかしなが
     ら,UHD 社経営陣によるプレッシャーが原因とする部分は記載されておらず,こ
     れは, 月 13 日までに形成された前記コンセンサスに沿うものであったといえる。
       3


    ウ B は,5 月 15 日の適時開示前(同月 14 日夜又は同月 15 日早朝)に,東証担当
     者から,今後,BT&V 調査報告書を和訳して概要を適時開示するよう要請された。
      そこで,B は,同月 15 日,E,C,F 専務及び I に対し,BT&V 調査報告書の和
     訳を開示する必要があることを伝えるとともに,メールで,他社が開示した調査報
     告書の例を添付し,
             「先ほどお話をしました調査報告書の他社事例をお送りします。
     不適切な会計処理,不正会計が発覚した企業に対しては,その内容によっては詳細
     な内容と改善策の開示を求められているようです。「東証の担当者からは,現時点
                            」
     では調査報告書の概要でよいとの話にはなっていますが,どこまでをオープンにす
     べきかを慎重に検討をしていきたいと思います。
                          」と連絡した。
      これに対し,C は,
               「ジャパンディスプレイ程度の調査報告書(要旨)で済ませる
                    E
     ことが出来れば良いと思います。 さんとの協議結果と最終報告書,待っています。
                                          」
     などと返信した9。


    エ C は,途中段階であった BT&V 調査報告書①から④までについては適宜和訳し
     て A 会長,E,B らに共有していたところ,B は,同月 16 日以降,数回に分けて,
     BT&V 調査報告書のうち BT&V 調査報告書④までには記載がなかった部分を翻訳
     するよう C に依頼し,C は,随時要請に応じて和訳を作成して B に送付した。
      BT&V 調査報告書中,UAUS 社に関する記載において,UAUS 社が BT による
     E メールの収集活動を 9 日間にわたり妨害した等の記載があった部分に関して,C,
     E,B らは,UAUS 社が BT の調査を妨害した事実はなく,アクセス権を BT に渡
     したにも関わらず,何らかの問題があって BT が電子メールを見ることができなか
     ったにすぎないのであるから,前記記載は不当である旨話し合った。


9なお,E と B の協議についてはメールもなく,その後に協議が行われたのか,また協議が行われたので
あればその結果はどうかなどの点について,E 及び B のいずれにおいても明確な記憶がなく,当委員会で
はこの点についての事実関係の確認ができなかった。




                          16
     オ B は,同月 27 日から同月 31 日までの間に,一人で,横書きパワーポイントの形
      式の pdf ファイルで作成された BT&V 調査報告書 C 訳を,適時開示の添付用に
      Word ファイルに作り直したうえ,開示用に編集して作り直した。B は,その際,
      3 月 13 日までに形成された前記コンセンサスや C 及び E からの助言に沿った内容
      となるように修正を加えた開示版調査報告書の文案を作成した。
       B は,このように修正したことについて,事実ではない記載を開示すれば誤解を
      生じさせるだけなので,従前のコンセンサスのとおり,これらを削除することが適
      切な措置と考えており,後日,BT&V 調査報告書の全文を提出することになっても,
      その旨説明すれば何ら問題にはならないものと思っていた。


     カ B は,6 月 1 日午前 8 時 45 分頃,C,E,F 専務,H 取締役,G 取締役らに対
      し,メール本文に「東証へ提出,開示をする調査報告書(案)を添付します。C さ
      んに和訳して頂いた報告書から,文章を少し変更しました。報告書の原本の提出を
      求められた際に問題にならないように          できるだけ元々の形をキープしましたが
      UHD からのプレッシャーが必要以上に書かれていた部分は記載しておりません。」
      と記載して,開示版調査報告書の文案を共有した(以下「1 日の開示案」という。。
                                            )
      また,B は,同日午前 9 時 28 分頃,東証担当者に対し,1 日の開示案を送付する
      際に,「個人名が記載されている部分以外を全訳した報告書」として,それが前記
      の削除等を施した概要版である点は伝えずに,今後言い回しに多少の変更が発生す
      る可能性がある点のみを伝えるメッセージとともに送付していた。


     キ B は,同月 2 日午後 4 時 59 分頃,C,E,F 専務,H 取締役,G 取締役,I らに
      対し,メール本文に「東証に開示するための調査報告書を,頂いたご意見を基に修
      正致しました。N 先生,J 監査役へもチェックして頂きました。「お気づきの点等
                                     」
                                   1
      ございましたらご指摘をお願いします。 などと記載したうえ, 日の開示案から,
                        」
      「UHD 会長らへの手紙で」を「UHD 幹部への手紙で」「UHD の会長やその他の
                                  ,
      上級幹部が」を「UHD の幹部が」などと変更し,
                             「会長」の文言を出さないように
      した文案を添付した(以下「2 日の開示案」という。 10。
                               )


     ク B は,前記メールに対して役員らから特段の意見が出なかったことから,2 日の
      開示案をもって最終版として確定し,同日午後 10 時 8 分頃,東証担当者に対し,
      メールで送付した(これが開示版調査報告書である。。
                              )
       6 月 3 日,開示版調査報告書が適時開示された。



10   当委員会はなぜこのような修正を行ったのか B にヒアリングしたが,経緯は判明しなかった。




                            17
4 開示版調査報告書に対する当時の役員の関わり
(1)   A 会長
      A 会長は,2 月 22 日以降,第 3 四半期レビューが終わるまでの間,レビューを
  促進するために BT 及び Volkov 並びに BDO との電話会議に出席して発言したほ
  か, 月 2 日頃に UHD 社から BT 宛てに送付したレターにおいて,
    3                                  UAC 社の会計
  不正の原因は UHD 社からの過度なプレッシャーではなく,現地営業マンのインセ
  ンティブ獲得の動機によること,売上目標の設定とインセンティブ報酬の慣行が
  BT&V 調査報告書①における記載とは異なること等の意見を述べるなど,積極的に
  UHD 社の認識の説明や BT&V 調査報告書①への反論を示していた。
      また,A 会長は,同月 13 日に関東財務局へ提出された第 3 四半期報告書提出期
  限再延長に係る承認申請書の記載について C と打合せを行い,その結果により,そ
  の記載は,UAC 社の会計不正の原因が現地担当者のインセンティブ獲得であり,
  UHD 社の過度なプレッシャーにあるとの説明は誤りであると断定する記載へと修
  正されるなどしており,BT&V 調査報告書①の内容がそのままの形で記載されるこ
  とには,強い抵抗があったものと考えられる。
      しかしながら,当時,A 会長を始め UHD 社が最も懸念していたのは,第 3 四半
  期の四半期報告書を期限までに提出することができずに UHD 社の上場維持が危う
  くなることであり,その後,4 月 14 日の再延長申請が認められ,5 月 15 日に四半
  期報告の提出の目途が立った後は,BT&V 調査報告書の開示やその内容について A
  会長が気にかけていた形跡は認められず,これに関して HF レポートで報告された
  痕跡もない。また,A 会長は,適時開示の前日である 6 月 2 日午後 1 時 41 分頃か
  ら同日午後 3 時 44 分頃まで UHD 社に出社しているが,このときに 1 日の開示案
  又は 2 日の開示案を A 会長が見たと認めるに足る証拠もない。
      そうすると,開示版調査報告書において,BT&V 調査報告書の記載内容から UHD
  社の過度のプレッシャーの記載等が削除されているところは,結果として A 会長
  の意向に沿うものとは認められるものの,本件改変につき, 会長から B に対して
                             A
  何らかの指示をするなどの関与があったとは認め難い。


(2)   F 専務
      F 専務は,本件会計不正が発覚した 1 月当時は UHD 社代表取締役専務であった
  が,不動産事業を担当していてエレクトロニクス事業には全く関わっておらず,ユ
  ニデン不動産社代表取締役社長を兼任して,ユニデン不動産社の事業に注力してい
  た。他方,A 会長の指示で,2 月途中頃から,F 専務も本件会計不正に関する A 会
  長,C,E(電話参加) らが参加する会議に何度か出席し,また,関係する連絡
            ,B
  メールの宛先や参考送付先に入ることが増えた。したがって,順次送られてくる




                        18
  BT&V の調査報告書やその C 訳についても内容に目を通していた。
                                   しかしながら,
  エレクトロニクス事業のことは,やがて同事業担当の代表取締役になることが予定
  されていた E を中心に対応すべきことであって自分とは関係がないと考えており,
  本件会計不正についても,E,C,B らがいわば専属で対応していたことから,門
  外漢が意見を言える立場でもないとの考えで,積極的に関与することはなかった。
      そのため,F 専務は,B から 1 日の開示案や 2 日の開示案をメールで共有され,
  メール本文に「UHD からのプレッシャーの部分が必要以上に書かれていた部分は
  記載しておりません。
           」と記載されていることも理解していたが,このような開示
  方針は,A 会長を始め E,C らが決定した既定方針であろうと考え,また,自身に
  は適時開示に関する知見が乏しく,どのような開示をするべきかは分からないこと
  から,何ら意見を述べることはなかった。


(3)   G 取締役
      G 取締役は,当時ユニデンジャパン社取締役を兼任し,ユニデンジャパン社が行
  う国内営業の責任者として奔走していた。そのため,海外事業である UAC 社の会
  計不正やその調査等に対する対応については関心が乏しく,時折メールで情報共有
  がなされても中身を十分に検討することはなく,何らコメントすることもなかった。
      6 月 1 日の B からのメールに対しても,メール本文に「UHD からのプレッシャ
  ーの部分が必要以上に書かれていた部分は記載しておりません。」と記載されてい
  るのを読んだ際は,既に決定した事項なのだろうと理解し,同月 2 日にも続けて共
  有された開示案についても,最終版であり決定した内容なのだろうと理解したこと
  から,何ら意見を述べることはなかった。


(4)   H 取締役
      H 取締役は,当時ユニデン不動産社の取締役を兼任しており,ユニデン不動産社
  の業務に専ら注力していたことから,エレクトロニクス事業である UAC 社のこと
  には関心が乏しく,実際,B らから H 取締役宛てに,本件会計不正に関する協議が
  なされることはほとんどなかった。
      したがって,6 月 1 日及び同月 2 日に B から開示案の共有があったが,詳しい経
  緯を知らず,A 会長の意向なのだろうと考え,何ら意見を述べることはなかった。


(5)   L 社外取締役
      L 社外取締役は,第 55 期(2020 年の定時株主総会の終結の時)の任期満了以降
  は社外取締役の再任を望まない旨意思表明し, 月 12 日の取締役会に冒頭 30 分程
                       3
  度出席して他の役員らに退任の挨拶をした後は,書面決議がある際に B とメール
  のやり取りをする以外には,役員らの議論に関与したことはなかった。開示版調査




                         19
       報告書の作成について L 社外取締役が関与した事実は認められなかった。


     (6)   J 監査役(物故者)
           B は,6 月 2 日のメールで「N 先生,J 監査役へもチェックして頂きました。」な
       どと記載している。しかし,J 監査役は,当時,既に体調を悪くしており,同月 1
       日及び同月 2 日の出勤の有無も判然としないこと,また,J 監査役が普段からメー
       ルのやり取りをせず,出社した際に B らがプリントアウトした書類を手渡して中
       身を確認してもらうという直接のやり取りしかしていなかったことから,J 監査役
       が開示版調査報告書の作成についてどれほど関与していたかは明らかでない。


     (7)   N 監査役
           B は,6 月 2 日のメールで「N 先生,J 監査役へもチェックして頂きました。」な
       どと記載しているが,N 監査役は,当委員会に対し,開示版調査報告書について B
       から事前にチェックを求められた覚えはないと述べている11。
           N 監査役について,B の前記メールは残存していたものの,B から N 監査役に
       対して開示版調査報告書の文案を送付したメールはなく,B と N 監査役の間で開
       示版調査報告書の文案を事前に N 監査役がチェックしたことを裏付けるその他の
       メール等の資料は見当たらなかった。
                 N
           したがって, 監査役が開示版調査報告書の作成に関与したと認めることは困難
       である。


     (8)   M 監査役
           M 監査役は,非常勤の監査役を務めているものの,UAC 社の会計不正につき調
       査が行われていたこと,BT&V 調査報告書の内容,開示版調査報告書を適時開示し
       たことについて,UHD 社から情報共有を受けていなかった旨当委員会に回答して
       いる。また,M 監査役は,メールの解析結果からも,メールを使用していないこと
       が分かっており,B から開示版調査報告書のファイルを受領した形跡もない。した
           M
       がって, 監査役が開示版調査報告書の作成に関与した事実は認められなかった。


第3 結語
       これまで詳述してきたとおり,開示版調査報告書は BT&V 調査報告書を改変した
     ものと評価でき,その改変に係る文案は B が作成した。B は,当該文案を作成するに



11N 監査役は,当委員会に対し,仮に当時状況を理解していれば,BT&V 調査報告書の内容をよく確認
したうえで,UHD 社の認識と異なる記載内容については,開示しようとする内容を BT&V に提示して了
解を得るとか,了解を得られなければ UHD 社との主張の差異や証拠の評価の差異を併せて開示すべきで
あった旨述べている。




                              20
当たり,改変することを誰かから指示されたとか,あるいは誰かと協議したというこ
とはなく,その内容については自身一人の判断で決めたものである。
 もっとも,改変の対象となった主たる事項は,BT&V 調査報告書における会計不正
の根本原因に係る記述,すなわち本件会計不正の原因が,海外販売子会社である UAC
社や UAUS 社の業務目標の達成に向けた,UHD 社の経営幹部からの強いプレッシ
ャーに起因するものであるとする部分であるが,このような分析は BT&V 調査報告
書①に既に記載されていたものである。このような内容に対しては,A 会長並びに本
件会計不正問題の対応に当たっていた C,E 及び B の間での共通認識は,2020 年 3
月には,それは UAC 社で本件会計不正を行った者の一方的な主張のみに基づく偏頗
な分析であって,会計不正の原因はインセンティブ獲得という利己的な動機により行
われたというのが実態というべきであり,親会社である UHD 社としては到底受け入
れ難い,というものであった。そして,対外的な文書において,このような調査結果
をそのまま記載した場合には UHD 社がこれを認めているという誤解を招きかねず,
適切でないなどの共通の問題認識も醸成されていた。
 対外的な文書の作成作業に従事していた B においては,そのような上層部の共通
認識を前提として,開示版調査報告書の作成以前から関東財務局等に提出する書面の
作成に従事していたものである。そのため,B が BT&V 調査報告書 C 訳をベースに
開示版調査報告書の文案作成に従事した際においても,このような既定方針を前提に
して,その延長として作業をしていたにすぎず,この時に限って,B が新たに独自の
判断をしたものではない。
 一方,B も当然のことながら,自分一人の判断で開示版調査報告書の最終化や公表
を行うことはできないことから,自身の作成した文案を役員に送付し,内容の確認や
意見を求めていた。これに対して,確認等を求めるメールの送付先であった F 専務,
G 取締役,H 取締役らにおいては,その文案の内容を特に仔細に検討することはせ
ず,かつ,開示版調査報告書の開示の在り方に伴いどのようなリスクがあるのかにつ
いて特に意識することもなく,特段の意見を示さなかった。これらの役員がこのよう
な対応を取ったのは,本件会計不正問題は,A 会長,E,C 等が対応していた案件で
あり,自分たちにはおよそ関わり合いのない案件であって,B から示された文案につ
    A
いても, 会長以下で決定されたものであろうから自分たちは意見を言う立場にはな
いとの判断によるものである。
 以上のような役職員の共通認識なり対応の仕方は,遠因をたどれば,当時の UHD
社の内部統制・開示統制,コンプライアンス及びガバナンス上の問題点並びに企業風
土等に関連するものとも推察される。前述したとおり,当委員会の調査では,これら
の問題は調査スコープに含まないことから,その当否についての評価は差し控えるが,
本調査を契機に,関係者におかれては,当時の問題点の有無と,問題があったとした
ら,現在,それは改善されているのかといったことなどについて,然るべく説明責任




                     21
を果たされることを期待したい。
                       以上




                  22
別添
                                BT&V 調査報告書 C 訳と開示版調査報告書の対照表


下線部は削除・文言の変更のあった個所を示す。なお、委員会において途中の引用を省略する場合は(略)ないし(以下略)としている。
                 BT&V 調査報告書 C 訳                                                開示版調査報告書
ユニデン調査の背景                                                1.(削除)調査の背景
 BAKER TILLY と VOLKOV Group の関与の範囲拡大                         2) Baker Tilly と Volkov Law Group の関与の範囲拡大
 UAC での不正会計の蔓延と、UAC の経営陣の一人で悪事を行って                           UAC での不適切な会計処理と、UAC の経営陣の一人が UHD におい
 いた人物が昇格し UHD でより広い権限を与えられていたという証                            ても広い権限を与えられていたことにより、Baker Tilly と Volkov
 拠により、Baker Tilly と Volkov は Uniden Australia(UAUS) と        は UHD の子会社である Uniden Australia PTY. LTD.(以下、
 UHD で UAC で見つけられたと同様な不正行為や会計慣習がローカ                          「UAUS」)とユニデンジャパン株式会社(以下、
                                                                                    「ユニデンジャパ
 ルなオペレーションで行われていなかったかについて的を絞ったテ                              ン」においても、UAC で発見された不正行為や会計慣習がローカル
 ストを実施することを推奨しました。                                           なオペレーションで行われていなかったかについての調査実施を推奨
                                                             しました。
                       (略)                                                          (略)
 UAUS に対する Baker Tilly の予備テストでは、
                               (略)Baker Tilly                UAUS に対する Baker Tilly の予備テストでは、
                                                                                           (略)Baker Tilly
 は UAUS の 3 人の主要幹部の電子メールの収集とレビューを要求し                         は UAUS の 3 人の主要幹部の電子メールの収集とレビューを要求し
 ましたが、UAUS は 9 日間もの間、電子メールを収集、提供するこ                          ました(削除)
                                                                   。       対象者を絞った電子メールの調査の結果、売上と
 とを拒み妨害しました。対象者を絞った電子メールの調査の結果、                              収益の目標を達成するために、UAUS の担当者が架空の請求書によ
 売上と収益の目標を達成するために、UAUS の担当者が偽の請求                             る売上計上の処理を発見しました。
 書、見せかけの売上計上による詐欺的な処理を発見しました。
 大枠のレビューに基づき、Baker Tilly は、UAUS が収益を増やし、                     大枠のレビューに基づき、Baker Tilly は、UAUS が収益を増やし、
 収益目標を達成するために、さまざまな詐欺行為をに(ママ)行ったと                            収益目標を達成するために、不適切行為を行ったという証拠を明らか




                                                        23
 いう証拠を明らかにしました。                                      にしました。
                   (以下略)                                               (以下略)
主要な調査およびテスト手順                                       2. 主要な調査およびテスト手順
 UAUS の調査およびテスト手順                                    2)UAUS の調査及びテスト手順
 B   文書調査                                            B   文書調査
(略)                                                  (略)
     Baker Tilly の調査に協力するように指示されたにもかかわらず、            (削除)
 当初 UAUS は、調査チームが 9 日間以上メールを収集できないよう                     UAUS 経営陣は、(削除)該当する期間における全ての不適切な偽
 にしました。UAUS の経営陣は、最終的に調査チームに別の該当す                    の販売トランザクションと対応するクレジットの明細を記録したスプ
 る期間における全ての不適切な偽の販売トランザクションと対応す                      レッドシートを開示しました。(以下略)
 るクレジットの明細を記録したスプレッドシートを開示しました。
 (以下略)
調査結果                                                3.調査結果
 UHD の調査結果                                           1) UHD の調査結果
 1.Baker Tilly と Volkov は、少なくとも 2017 年以降、UHD、UAC、    1.Baker Tilly と Volkov は、少なくとも 2017 年以降、
                                                                                            (削除)UAC、
     および UAUS で財務会計上の重大な不正行為を検出、UHD 財務                   および UAUS で財務会計上の(削除)不正行為を検出、UHD の連
     報告での重大な虚偽表示を指摘しました。                                 結財務報告における虚偽表示を指摘しました。
 2.UHD からの継続的で強いプレッシャーの下、販売目標を達成す                    2.
                                                      (削除)販売目標を達成するために、UAC と UAUS は、誤った(削
     るために、UAC と UAUS は、誤った不規則な財務会計手法に取り                  除)財務会計処理を行い、月次、四半期、および年次の販売目標を
     組み、月次、四半期、および年次の販売目標を達成したように見え                      達成したように見せました。これらの虚偽の報告が、UHD の公式
     るように仕組みました。これらの虚偽で誇張された報告が、UHD                      な財務報告に取り込まれました。
     の公式な財務報告に取り込まれました。
3.実質的な証拠が、UHD の会長を含むリーダーや幹部のリーダーシ                    (削除)




                                                24
ップが、非現実的な期待に基づいた有毒な企業文化を作り出し、侮
辱的、過酷、脅迫的なコメントを通じて販売目標の達成を強力に促
していことを(ママ)示唆しています。
4.UHD の適切な管理の欠如と UAC と UAUS の運用の監視と、販        3.UHD の適切な管理(削除)と UAC と UAUS の運用の監視の欠如
 売目標の達成に対する UHD の先入観が加味され、UAC と UAUS          が原因で、UAC と UAUS に不適切な管理環境が生まれ、
                                                                           (削除)不
 には有毒な管理環境が生まれ、現地のスタッフが非現実的な期待                正行為を実行することになりました。多くの従業員が参加し、彼ら
 に応える販売やその他の不正行為を操作することになりました。                は懸念を提起することを控えていました。
 多くの従業員が参加し、彼らは懸念を提起することを恐れていま
 した。
5.UHD のこれらの会計の不規則性についての役割と責任は、               (削除)
UAC と UAUS の両方が独立して、非現実的な月次、四半期、お
よび年次の販売目標を達成するために設計された広範かつ体系的
な会計詐欺を犯していたという(事を放置していた)基本的な事
実によって確認されます。
6.UHD、UAC、並びに UAUS には夫々基本的なガバナンス、監           4.UHD、UAC、並びに UAUS には基本的なガバナンス、監視、財
視、財務管理、倫理およびコンプライアンス機能が欠如していま                 務管理、倫理およびコンプライアンス機能が欠如しています。
す。
7.UHD は、意図的に或いは意図的に無関心で、適切な監視を実行し            (削除)
財務報告に対する適切な内部統制を維持し、財務上の虚偽表示から
保護することができません。
8.UAC と UAUS の管理を非難するのは容易ですが、そのような狭          5.UAC と UAUS の管理を非難するのは容易ですが、そのような狭い
い見解は Uniden の根本的な問題を無視することになります-              見解は Uniden の根本的な問題を無視することになります。-UHD
UHD の管理と監視は欠陥があり、それこそが UAC と UAUS に課          の管理と監視は欠陥があり、それこそが各拠点の不正行為の最終的




                                        25
せられた否定的な文化と非現実的な販売期待に基ずく(ママ)拠点の              な原因となります。
不正行為の最終的な原因となります。
9.~10.(略)                                   6.~7.(略)
UAC と UAUS に共通する発見                          (削除)
1.UHD は、UAC および UAUS の管理に、厳格で非現実的な月次、
 四半期、および年次の販売目標を課しました。UHD は、規律や解
 雇で脅し、これらの販売目標の達成を図り、UAC と UAUS の管理
 および販売スタッフに厳しい批判や個人的な批判を行いました。
2.UHD、UAC、並びに UAUS の欠陥のある内部財務管理体制は、
 組織全体に意味のある倫理およびコンプライアンス・プログラム機
 能がないため悪化しました。
3.UHD は月次の販売目標の達成に特に注力しており、UHD の文化
 と指示は、当然の結果として、UAC と UAUS の管理者とスタッフ
 に、これらの目標を達成するために不適切で違法な会計手法を採用
 させることになりました。
4.それぞれの当該調査期間中に、UAC と UAUS は、UHD の非現
 実的で協力な(ママ)圧力により販売目標を達成するため、不正に或
 いは時期尚早に収益を増やすための複数の手法をを(ママ)実行しま
 した。これらの手法を実行するために、UAC と UAUS の上級管理
 職とスタッフがそれぞれの組織に集まり、不正行為を隠蔽しまし
 た。
UAUS の調査結果                                  4) UAUS の調査結果
1. ~3. (略)                                  1. ~3. (略)




                                       26
 4.UAUS の上級管理職、公認会計士、および取締役(CEO と Q)        (削除)
 は、故意に、そして意図的に、違法なスキームと詐欺的な報告行為
 に参画しました。
 5.UAUS の従業員は、電子メールアカウントへの最初のアクセス要          (削除)
  求に 1 週間以上抵抗し、インタビューで嘘をつき、特定のトランザ
  クションをサポートするために文書を改竄し、意図的に調査を妨害
  しました。さらに特定のインタビュー対象者は、偽または不適切な
  販売を計上したプロセスの解明に、完全に協力または開示しません
  でした。
 6.UAUS は、注文書がない注文を意図的に計上しました。              (削除)
 7.
  (略)                                       4.
                                             (略)
 8.UAUS は、監査人から配達データの実際の証拠を隠匿しました。          (削除)
 9.
  (略)                                       5.
                                             (略)
根本原因の分析                                     (削除)
トップからの否定的なトーンが誤解を惹起する
 UHD の上級管理職は、不合理で過大な販売目標を設定し、重大な圧
力を生み出す有毒な企業文化でこれらの目標を強力に実施した。
リーダーからのこのような極端な圧力による自然でありそうな結果は、
社員の否定的な行動を促す貧弱な動機を生むだけです。
そのような極度で有毒な文化は、必然的に、圧力にさらされている人々
から、有毒かつ蔓延する不正行為につながります。




                                       27
                                         (削除)




ケーススタディ:WELLS FARGO スキャンダル〈司法省ニュー
スレリースの内容   略〉                            (削除)


ウェルズファーゴとユニデンの比較
                                         (削除)




                                    28
           (削除)




           (削除)




改善策    4.改善策




      29
改善にはコーポレートガバナンスの改善が必須                                1) 改善にはコーポレートガバナンスの改善が必須
上級指導者による有毒な企業文化の推進は、深く根付き蔓延する問題                       (削除)不正行為の是正には、強力で持続的な是正努力が必要です。
を生みます。そのような風土での不正行為の是正には、強力で持続的                       コーポレートガバナンスの改善に焦点を当てることが不可欠です。
な是正努力が必要です。コーポレートガバナンスの改善に焦点を当て                                         (以下略)
ることが不可欠です。
                   (以下略)
推奨される改善策                                             2)推奨される改善策
1. ~3. (略)                                           1)~3)(略)
 4.UHD は、Baker Tilly と Volkov の支援を得て、現実的な販売目標        4) UHD は、Baker Tilly と Volkov の支援を得て、現実的な販売目標
  を設定し、組織内での適切な説明責任を確保するために、これまで                      を設定し、組織内での適切な説明責任を確保するために、これまで
  の販売予測の慣行を改訂する。そのようなレビューでは、少なくと                      の販売予測の慣行を改訂する。そのようなレビューでは、少なくと
  も、過去の不合理な予測に最終的に責任を負っていた UHD の会長                    も、過去の不合理な予測に最終的に責任を負っていた UHD の(削
  やその他の上級幹部が参加せずに予測プロセスを実施する必要が                       除)幹部が参加せずに予測プロセスを実施する必要があります。
  あります。
5.~6.(略)                                             5)~6)(略)
 7.個人の立場、監督上の責任、勤続年数、過失責任、および不正行                     7) 個人の立場、監督上の責任、勤続年数、過失責任、および不正行
 為に関する知識に応じて、不正行為に参加した UHD、UAUS、                     為に関する知識に応じて、不正行為に参加した UHD、UAUS、
 UAC のマネージャーおよびスタッフに対する適切な処置を検討す                     UAC のマネージャーおよびスタッフに対する適切な処置を検討す
 べきです。そのような懲戒措置は、社員の人事ファイルに含めるた                      べきです。そのような懲戒措置は、社員の人事ファイルに含めるた
 めに、解雇から書面による警告までの範囲であるべきで、賞、ボー                      めに、解雇から書面による警告までの範囲であるべきで、賞、ボー
 ナス、または将来の昇進の適格性の決定において考慮されるべきで                      ナス、または将来の昇進の適格性の決定において考慮されるべきで
 す。                                                  す。
 a)最初の不正行為に関与した者だけでなく、この調査で問題となって                    (削除)




                                                30
     いた取引を隠匿す(ママ)ために文書を偽造および改変した UAUS
     従業員については、解雇することをお勧めします(現地の雇用規則
     および規制の遵守のもと人事担当者または労働顧問に相談した
     後)。このような厳格な規律は、是正とコンプライアンスへのユニ
     デンの取り組みの証しであり、潜在的な将来の不正行為に対する効
     果的な抑止効果があります。またユニデンは詐欺の起訴のために地
     方自治体に問題を紹介することを検討されたいと思われるかもし
     れません。
8.~15.(略)                                        8)~15)(略)
 Uniden Holdings Corp(「UHD」)株価の概要            (削除)
 UHD の株価のグラフを提示します。2017 年 6 月頃に UHC の株価
 が上昇し始め、その後 2018 年 5 月頃に急落し始めたことを示しま
 す。2017 年 6 月頃には UAC の社長(O)が就任したことを指摘し
 たい。彼は我々に、自分の社長就任目的は売上を増やすことだと語
 っています。更に、一部のインタビューで行われた声明の中で、UHD
 のリーダーから厳しい環境下にも関わらず、さらに圧力を加えられ、
 2018 年 4 月頃と 2019 年 6 月に販売目標を達成することだと念を押
 された明らかに(ママ)していました。
調査結果と改善提案の概要                                 調査結果と改善提案の概要
 問題                                          ◼    問題
 ⚫    UAUS                                   ・UAUS
 ・UHD の決算への虚偽報告となる不正行為及び詐欺に加担した上級                ・UHD の決算への虚偽報告となる不正行為及び詐欺に加担した上級
     管理職、スタッフ                                     管理職、スタッフ




                                            31
 ⚫    UAC                            ・UAC
 ・UHD の決算への虚偽報告となる不正行為及び詐欺に加担した上級        ・UHD の決算への虚偽報告となる不正行為及び詐欺に加担した上級
     管理職、スタッフ                             管理職、スタッフ


根本的な原因・要因                            ◼    (削除)原因・要因
 ⚫    根本的な原因                             (削除)
 ・不正行為の正当化につながる圧力、脅威、脅迫の文化。
 ⚫    背景要因                           ・背景要因
 ・非現実的な販売目標                              (削除)
 ・監督、監視の欠如                               ・監督、監視の欠如
 ・不十分、機能していない内部統制                        ・不十分、機能していない内部統制
 ・不十分な研修、コミュニケーション                       ・不十分な研修、コミュニケーション
 ・信頼できる倫理報告チャネルの欠如                       ・信頼できる倫理報告チャネルの欠如
改善策                                  ・改善策
・財務報告を修正、不正行為に関与した社員の懲戒検討                ・財務報告を修正、不正行為に関与した社員の懲戒検討
・現実的な販売目標を確立のため販売予測の慣行を改訂し、リーダーシ         ・現実的な販売目標を確立のため販売予測の慣行を改訂し、リーダー
ップを訓練。トップのトーンを改善。                         シップを訓練。
                                                (削除)
・財務管理の強化                                 ・財務管理の強化
・CFO の採用と強化                              ・CFO の採用と強化
・CCO の採用、取締役会への直接アクセス                    ・CCO の採用、取締役会への直接アクセス
・リスク評価コンプライアンスプログラム実践                    ・リスク評価コンプライアンスプログラム実践
・機密保守社員の選抜、年次認証付与                        ・機密保守社員の選抜、年次認証付与
・匿名ホットライン設置、信頼できる報告チャネル開設                ・匿名ホットライン設置、信頼できる報告チャネル開設




                                    32
・調査報告と改善策実施の検証        ・調査報告と改善策実施の検証
・監査、監視プログラム採用         ・監査、監視プログラム採用




                 33