4582 J-シンバイオ製薬 2021-03-11 08:30:00
抗ウイルス薬ブリンシドフォビル注射剤(brincidofovir)による小児のアデノウイルス感染症を対象とした第2相臨床試験のINDの申請 [pdf]

                                                  2021年3月11日
各位

                        会 社 名 シ ン バ イ オ 製 薬 株 式 会 社
                        代 表 者 名 代表取締役社長兼 CEO 吉 田 文 紀
                                         (コード番号:4582)
                        問合せ先     IR 担当(TEL.03 - 5472 - 1125)


      抗ウイルス薬ブリンシドフォビル注射剤(brincidofovir)による
     小児のアデノウイルス感染症を対象とした第2相臨床試験のINDの申請

 シンバイオ製薬株式会社(本社:東京都、以下「シンバイオ」           )は、この度、主に小児
を対象としたアデノウイルス感染症(以下「AdV感染症」        )に対する抗ウイルス薬ブリン
シドフォビル注射剤(以下「BCV IV」)に関する第2相臨床試験(以下「本試験」           )を開始
するため、米国食品医薬品局(FDA)にInvestigational New Drug(IND)Application
(治験許可申請)を行ったことをお知らせします。

 シンバイオは、「空白の治療領域」でアンメットメディカルニーズの高い播種性アデノ
ウイルス(AdV)感染症及び免疫不全状態でのアデノウイルス(AdV)感染症を対象に、
米国及び英国を中心とした国際共同第2相臨床試験(フェーズ2a)を開始するため、この
度米国についてFDAにINDの申請を行いました。本試験の進展により得られた有効性と安
全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後のマルチウイルス感染症(注1)へ対象領域を
拡大、更には腎臓移植を含む臓器移植分野等の対象領域拡大の可能性を追求することで、
市場の拡大、BCV IVの事業価値の最大化を図ってまいります。

  シンバイオは、2019年9月にBCVの独占的グローバルライセンスを取得して以来、BCV
IVのグローバル開発計画の策定にあたり、国内外の感染症領域の専門家の方々と意見交換
を重ね、科学的・医学的な妥当性とBCV IVの事業性評価について検討を進めてまいりま
した。本剤が持つ各種二本鎖DNAウイルス(注2)に対する幅広い抗ウイルス活性は造血幹
細胞移植後など免疫不全状態での各種ウイルス感染症の予防及び治療に有効と考えていま
す。播種性AdV感染症については、時に致命的な経過を辿り、現在世界的に有効な治療薬
がないことから医療ニーズが極めて高く、可及的速やかに開発を進める必要性があるもの
と判断しました。アデノウイルス(AdV)   、サイトメガロウイルス(CMV)等の感染症に
ついてはシンバイオの戦略的パートナーであるChimerix Inc.(本社:米国ノースカロライ
ナ州)によって実施されたBCV経口剤の臨床試験に基づく知見から、BCV IVに関しても
有効性と安全性が期待されます。

 吉田文紀社長兼CEOは「造血幹細胞移植後のAdv感染症は、現在有効な治療方法がない
ため新薬が切望されている疾患領域です。先ずは極めて医療ニーズが高い小児のAdV感染
症を対象として国際試験を開始しました。今後順次、他のウイルス感染症へと積極的に適
応拡大を進めてまいります。現在進行形の事業黒字化に加え、第二の創業の2つ目のマイ
ルストーンであるグローバル事業の展開が本試験の開始により本格化しました。 」と語っ
ています。
 なお、本件が2021年12月期業績に与える影響はありません。
                                       以 上



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【注記】
(注1)造血幹細胞移植と感染症
造血幹細胞移植は、白血病や悪性リンパ腫など、多くの血液がん治療で、抗がん剤治療や
放射線治療だけでは治せない場合に、完治を目的に行うもので、ドナーから提供された、
あるいは事前に保存しておいた患者さん自身の造血幹細胞を移植する。造血幹細胞移植の
前には、ドナーからの新たな幹細胞を拒絶しないように、大量の化学療法と、全身放射線
照射で、がん細胞を死滅させるが、同時に患者さん自身の免疫力も失われてしまう。次に
点滴により、造血幹細胞移植を行うが、移植した造血幹細胞が患者さんの骨髄で血液を作
り出すには2週間から4週間程度の期間が必要である。移植後、免疫力が十分回復するに
は、長い時間がかかるが、特に移植直後は免疫力が著しく低下しているため、様々な感染
症にかかりやすい状態となっており、予防投与できれば合併症も減り生存率も高くなる。
造血幹細胞移植後の様々な感染症は未だ有効な治療法が確立されていない「空白の治療領
域」であり、医療現場においては、長年にわたり有効性と安全性を兼ね備えた治療方法が
切望されている。


(注2)二本鎖DNAウイルス:
サイトメガロウイルス(CMV) 、アデノウイルス(AdV)   、ヒトヘルペスウィルス6型
(HHV-6)、単純ヘルペスウィルス-1型又は2型(HSV-1/2)
                                 、BKウイルス(BKV)、水痘
帯状疱疹ウイルス(VZV) 、ヒトパピローマウイルス(HPV)    、JCウィルス、天然痘ウイ
ルスなど、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマ
ウイルス科、ポックスウイルス科を含む。

【抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)概要】
BCVはシドフォビル(cidofovir:CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦は未
承認)の脂質結合体として新しい作用機序を持ち、CDVと比べて高活性の抗ウイルス効果
の他、優れた安全性を併せ持つことから、広範囲のDNAウイルス感染症(CMV:サイト
メガロウイルス、AdV:アデノウイルス、HV:ヘルペスウイルス、BKV:BKウイルス、
パピローマウイルス及び天然痘ウイルス等)に対して有効な治療方法となり得るものと期
待されている。BCV分子の画期性は、CDVに特定の長さの脂肪鎖を結合することにより細
胞内への取り込み効率を飛躍的に向上させ、細胞内で直接作用する分子に変換され高い抗
ウイルス効果を発揮する。更には、CDVの深刻な副作用である腎毒性を回避できるため使
い易く、今までにない新規の高活性の抗マルチウイルス薬である。
  シンバイオは2019年9月30日付で、Chimerix Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、
「キメリックス社」)との間で、BCVに関してのグローバルライセンスの権利取得を目的
としてライセンス契約を締結し、本契約の締結により、キメリックス社は天然痘疾患を除
いたすべての疾患を対象として、BCVの開発・販売・製造を含めた独占的権利を、世界全
域を対象として、シンバイオに対して供与した。シンバイオはBCVの独占的グローバルラ
イセンスを取得することにより、事業のグローバル化を推し進めると同時に高品質の医薬
品供給のための一貫体制を確立し、スペシャルティファーマとして成長することを目指し
ている。グローバル事業の展開については対象疾患の地域特性を生かしたパートナーシッ
プも視野に入れて検討中であり、日本だけでなく臓器移植の市場規模が大きい欧米市場及
び中国市場を含めたアジア地域を睨み、本剤を必要とする患者さんに一日も早く提供でき
るよう、事業価値の最大化を図っている。
当ライセンス契約の締結については2019年10月1日のプレスリリースを参照ください。
https://www.symbiopharma.com/news/20191001.pdf




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【ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)分子の画期性】
BCVは、シドフォビル(CDV)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプロピル:HDP)が結合
した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく細胞内へ移行した後、
細胞内ホスフォリパーゼによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、生成された活性化体
(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗ウイルス活性が飛躍
的に向上した化合物である。また、HDP結合により、OAT-1トランスポーターによる腎尿
細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離するレベルは低いため、
CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できる。




【Chimerix Inc. (キメリックス社)概要】
米国ノースカロライナ州に拠点を置き、NASDAQ上場(CMRX)    。がんや他の重篤な疾患
の患者さんの生活向上に貢献する革新的な医薬品の開発を行うバイオ医薬品企業で、最も
臨床試験の進んだパイプラインはBCV、ONC201、DSTATの3つである。BCVは潜在的な
天然痘の医療用対策として開発された抗ウイルス薬であり、米国で承認審査中である。
ONC201は、再発性H3 K27M変異グリオーマに対する登録臨床試験中であり、今年後半に
は確認試験における奏効率の評価が期待される。DSTATは、急性骨髄性白血病における潜
在的な一次治療として、また入院中の新型コロナ(COVID‐19)患者に対する急性肺障
害の潜在的治療として開発中である。キメリックス社の詳細については同社ウェブサイト
(https://www.chimerix.com/)をご覧ください。
【当社会社概要】
シンバイオ製薬株式会社は、米国アムジェン社元副社長で、旧アムジェン株式会社の実質
的な創業者である吉田文紀が2005年3月に設立した医薬品企業です。経営理念は「共創・
共生」(共に創り、共に生きる)で表され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、
資本提供者を「共創・共生」の経営理念で結び、満たされない医療ニーズに応えてゆくこ
とにより、社会的責任及び経営責任を果たすことを事業目的としています。なお、2016年
5月に米国完全子会社 SymBio Pharma USA, Inc.(本社:米国カリフォルニア州 メンロ
ーパーク、社長:吉田文紀)を設立しました。




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