4582 J-シンバイオ製薬 2020-08-05 15:30:00
抗ウイルス薬ブリンシドフォビルの注射剤において造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象とするグローバル開発計画を策定 [pdf]

                                             2020年8月5日
各位

                   会 社 名 シ ン バ イ オ 製 薬 株 式 会 社
                   代 表 者 名 代表取締役社長兼 CEO 吉 田 文 紀
                                    (コード番号:4582)
                   問合せ先     IR 担当(TEL.03 - 5472 - 1125)


     抗ウイルス薬ブリンシドフォビル注射剤において造血幹細胞移植後の
      アデノウイルス感染症を対象とするグローバル開発計画を策定

 シンバイオ製薬株式会社(本社:東京都、以下「シンバイオ」       )は、本日開催の取締役
会において、抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)注射剤(以下
「BCV IV」
       )におけるグローバル臨床開発計画を決定しましたのでお知らせいたします。

 シンバイオは、「空白の治療領域」でアンメットメディカルニーズの高い造血幹細胞移
植後のアデノウイルス(AdV)感染症を対象に(注1)、日本/アメリカ/ヨーロッパを中心
としたグローバル開発を優先的に進めることを決定しました。そして、当該試験の進展に
より得られた有効性と安全性に関する知見に基づき、造血幹細胞移植後のマルチウイルス
感染症へ対象領域を拡大、更には腎臓移植を含む臓器移植分野等の対象領域拡大の可能性
を追求することで、市場の拡大、BCVの事業価値の最大化を目指します。

 シンバイオは、昨年9月にBCVの独占的グローバルライセンスを取得して以来、BCV IV
のグローバル開発計画の策定にあたり、国内外の感染症領域の専門家の方々と意見交換を
重ね、複数の見解を踏まえつつ、科学的・医学的な妥当性とBCVの事業性評価について慎
重に検討を進めてまいりました。本剤が持つ各種dsDNAウイルス(注2)に対する幅広い抗
ウイルス活性は造血幹細胞移植後の各種ウイルス感染症の予防及び治療に有効と考えてい
ます。造血幹細胞移植後のAdV感染症については、時に致命的な経過を辿り、現在世界的
に有効な治療薬がないことから医療ニーズが極めて高く、可及的速やかに開発を進める必
要性があるものと判断しました。AdV、サイトメガロウイルス(CMV)等の感染症につい
てはシンバイオの戦略的パートナーであるChimerix Inc.(本社:米国ノースカロライナ
州)によって実施されたBCV経口剤の臨床試験に基づく知見から、BCV IVに関しても有
効性と安全性が期待されます。

 当社代表取締役社長兼CEO吉田文紀は次のようにコメントしております。
「造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症は、現在治療薬がなく新薬が切望されている
疾患領域です。グローバルアドバイザリーボードの強い要請を受けて優先順位を見直し、
医療ニーズが極めて高い小児の移植を対象として国際試験を進め、順次、他のウイルス感
染症へと適応拡大を進めてまいります。当社にとりグローバル事業の展開は、更なる飛躍
のための新たな挑戦です。
           」


なお、本件が 2020 年 12 月期業績に与える影響は軽微です。


                                                   以 上



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【注記】
(注1)造血幹細胞移植と感染症
造血幹細胞移植は、白血病や悪性リンパ腫など、多くの血液がん治療で、抗がん剤治療や
放射線治療だけでは治せない場合に、完治を目的に行うもので、ドナーから提供された、
あるいは事前に保存しておいた患者さん自身の造血幹細胞を移植する。造血幹細胞移植の
前には、ドナーからの新たな幹細胞を拒絶しないように、大量の化学療法と、全身放射線
照射で、がん細胞を死滅させるが、同時に患者さん自身の免疫力も失われてしまう。次に
点滴により、造血幹細胞移植を行うが、移植した造血幹細胞が患者さんの骨髄で血液を作
り出すには2週間から4週間程度の期間が必要である。移植後、免疫力が十分回復するに
は、長い時間がかかるが、特に移植直後は免疫力が著しく低下しているため、様々な感染
症にかかりやすい状態となっており、予防投与できれば合併症も減り生存率も高くなる。
造血幹細胞移植後の様々な感染症は未だ有効な治療法が確立されていない「空白の治療領
域」であり、医療現場においては、長年にわたり有効性と安全性を兼ね備えた治療方法が
切望されている。


(注2)dsDNAウイルス:
CMV、AdV、HHV-6、BKウイルス、HSV1/2、VZV、HPV、JCV、天然痘ウイルスな
ど、ヘルペスウイルス科、アデノウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイル
ス科、ポックスウイルス科を含む。

【抗ウイルス薬ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)概要】
BCVはシドフォビル(cidofovir:CDV、欧米では既承認・販売の抗ウイルス薬、本邦
は未承認)の脂質結合体として新しい作用機序を持ち、CDVと比べて高活性の抗ウイル
ス効果の他、優れた安全性を併せ持つことから、広範囲のDNAウイルス感染症(サイ
トメガロウイルス(CMV)等のヘルペスウイルス、アデノウイルス(AdV)        、BKウイ
ルス、パピローマウイルス、天然痘ウイルス等)に対して有効な治療方法となり得るも
のと期待されている。BCV分子の画期性は、CDVに特定の長さの脂肪鎖を結合するこ
とにより細胞内への取り込み効率を飛躍的に向上させ、細胞内で直接作用する分子に変
換され高い抗ウイルス効果を発揮する。更には、CDVの深刻な副作用である腎毒性を回
避できるため使い易く、今までにない新規の高活性の抗マルチウイルス薬である。
 シンバイオは2019年9月30日付で、Chimerix Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、
「キメリックス」)との間で、BCVに関してのグローバルライセンスの権利取得を目的
としてライセンス契約を締結し、本契約の締結により、キメリックスは天然痘疾患を除
いたすべての疾患を対象として、BCVの開発・販売・製造を含めた独占的権利を、世界
全域を対象として、シンバイオに対して供与した。シンバイオはBCVの独占的グローバ
ルライセンスを取得することにより、事業のグローバル化を推し進めると同時に高品質
の医薬品供給のための一貫体制を確立し、スペシャルティファーマとして成長すること
を目指している。グローバル事業の展開については対象疾患の地域特性を生かしたパー
トナーシップも視野に入れて検討中であり、日本だけでなく臓器移植の市場規模が大き
い欧米市場及び中国市場を含めたアジア地域を睨み、本剤を必要とする患者さんに一日
も早く提供できるよう、事業価値の最大化を図っている。
 当ライセンス契約の締結については 2019 年 10 月 1 日のプレスリリースを参照ください。
https://www.symbiopharma.com/news/20191001.pdf



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【ブリンシドフォビル(brincidofovir:BCV)分子の画期性】
ブリンシドフォビル(BCV)は、シドフォビル(CDV)に脂肪鎖(ヘキサデシルオキシプ
ロピル:HDP)が結合した構造となっており、速やかに脂質二重膜へ取り込まれ効率よく
細胞内へ移行した後、細胞内ホスフォリパーゼによる代謝によって脂肪鎖が切り離され、
生成された活性化体(CDV-PP:CDV diphosphate)が細胞内で長時間保持される結果、抗
ウイルス活性が飛躍的に向上した化合物である。また、HDP結合により、OAT-1トランス
ポーターによる腎尿細管上皮細胞への蓄積が生じないことに加え、CDVが血中に遊離する
レベルは低いため、CDVの根本的問題であった腎毒性を回避できる。




【Chimerix Inc. (キメリックス)概要】
米国ノースカロライナ州に拠点を置き、NASDAQ上場(CMRX)。がんや他の重篤な疾
患の患者さんの生活向上に貢献する革新的な医薬品の開発を行うバイオ医薬品企業。経口
抗ウイルス薬を発見、開発、商品化する。同社は独自の脂質技術を利用し、2種類のヌク
レオチド化合物を開発した。現在有効な治療法がないウイルス性疾患(AdV, BKV, EBV,
HHV-6等)に対して強くかつ幅広い活性を有する世界で初めての薬剤としてbrincidofovir
(CMX001)を開発中であったが、がん領域を中心とする事業に集中するため、天然痘を
除くグローバルライセンスを2019年9月にシンバイオ製薬株式会社へ導出した。キメリッ
クス社の詳細については同社ウェブサイト(https://www.chimerix.com/)をご覧くださ
い。




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【当社会社概要】
シンバイオ製薬株式会社は、米国アムジェン社元副社長で、アムジェン株式会社(現在は
武田薬品工業株式会社が全事業を譲受)の実質的な創業者である吉田文紀が 2005 年 3 月
に設立した医薬品企業である。経営理念は「共創・共生」(共に創り、共に生きる)で表
され、患者さんを中心として医師、科学者、行政、資本提供者を「共創・共生」の経営理
念で結び、満たされない医療ニーズに応えてゆくことにより、社会的責任及び経営責任を
果たすことを事業目的としている。なお、2016 年 5 月に米国完全子会社 SymBio
Pharma USA, Inc.(本社:米国カリフォルニア州 メンローパーク、社長:吉田文紀)を
設立した。




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