4507 塩野義薬 2019-10-28 15:00:00
抗インフルエンザ薬の使用に関する一般社団法人日本感染症学会ならびに公益社団法人日本小児科学会からの公表について [pdf]
2019 年 10 月 28 日
各 位
会 社 名 塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 手 代 木 功
(コード番号 4507 東証第一部)
問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
TEL (06)6209-7885
抗インフルエンザ薬の使用に関する一般社団法人日本感染症学会ならびに
公益社団法人日本小児科学会からの公表について
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
または「当社」)は、一般社団法人日本感染症学会ならびに公益社団法人日本小児科学会より、そ
れぞれ「抗インフルエンザ薬の使用について」の提言、
「2019/2020 シーズンのインフルエンザ治
療指針」がまとめられ、両学会のホームページにて公表されましたことをお知らせいたします。
日本感染症学会:「抗インフルエンザ薬の使用について」の提言
日本感染症学会提言*(以下「本提言」 では、
) インフルエンザに対する基本的な考え方に加え、
抗インフルエンザ薬それぞれの概要がまとめられており、当社の販売するゾフルーザ®に関しては
その使用方針について議論された内容が記載されております。その結果、本薬の使用に関して以
下のように提言されております。
(1) 12~19 歳および成人:臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。
(2) 12 歳未満の小児:低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。
(3) 免疫不全患者や重症患者:単独での積極的な投与は推奨しない。
*日本感染症学会提言「抗インフルエンザ薬の使用について」
なお、本提言は、科学雑誌に公表済みの論文情報を中心に現時点で判明している情報を伝える
ことを目的としており、抗インフルエンザ薬の使用に関しては、個々の医師の処方を規定するも
のではなく、本提言を参考に医師の裁量で適切な治療薬を選択する旨が記載されております。ま
た、ゾフルーザ®の使用に関しては、現時点ではまだ十分なエビデンスに乏しく、今後の基礎およ
び臨床のデータの蓄積と解析により、その使用方針を変更する可能性があることが記載されてお
ります。
日本小児科学会:「2019/2020 シーズンのインフルエンザ治療指針」
日本小児科学会より公表されたインフルエンザ治療指針**(以下「本指針」
)は、例年流行期を
迎える同時期に、新たに科学雑誌に公表された論文情報等をもとに更新されるものです。本指針
では、一般診療における治療や重症例への対応、インフルエンザワクチンの推奨について、同学
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会の新興・再興感染症対策小委員会・予防接種・感染症対策委員会の見解がまとめられており、
ゾフルーザ®に関しては、小児患者への使用について以下のように記載されております。
(1) 同薬の使用経験に関する報告が少ない事や薬剤耐性ウイルスの出現が認められることから、
当委員会では 12 歳未満の小児に対する同薬の積極的な投与を推奨しない。
(2) 一方で現時点においては同薬に対する使用制限は設けないが、使用に当たっては耐性ウイル
スの出現や伝播について注意深く観察する必要があると考える。
(3) 免疫不全患者では耐性ウイルスの排泄が遷延する可能性があり同薬を単剤で使用すべきでは
ないと考える。また重症例・肺炎例については他剤との併用療法も考慮されるが、当委員会
では十分なデータを持たず、現時点では検討中である。
**日本小児科学会「2019/2020 シーズンのインフルエンザ治療指針」
本指針におけるゾフルーザ®の使用方針策定にあたり、現時点での懸念事項として小児における
使用経験の報告が乏しいこと、治療中に本薬に対する低感受性株(本指針においては薬剤耐性ウ
イルスと表現されております)が出現することが挙げられております。これらは、日本感染症学
会が同提言をまとめる際に着目した点に共通するものです。
ゾフルーザ®は、リスク要因を持たない健常のインフルエンザ患者に加え、合併症を併発するリ
スクが高い患者に対しても臨床試験で効果を示した初めての薬剤です 1, 2。合併症を併発するリス
クが高い患者を対象とした試験では、オセルタミビルに対して B 型インフルエンザ患者における
罹病期間の短縮や、プラセボに対してインフルエンザ関連合併症の発現率を低減するなどの臨床
効果も確認されております 3 。米国では、疾病予防管理センター(CDC: Centers for Disease
Control and Prevention)のガイドラインにおいて、12 歳以上の合併症のない発症後 48 時間以
内の急性インフルエンザウイルス感染患者に対する治療薬として推奨されており、合併症を併発
するリスクが高い患者に対しても、先日、米国食品医薬品局(FDA)より追加適応承認を取得し
ました 4, 5。一方で、本邦においては、本薬に対して感受性が低下した PA/I38 アミノ酸変異株の
検出が使用上の懸念として注目されており、両学会でも、本薬の使用におけるリスクとベネフィッ
トについて議論されておりますが、現時点では、結論に至るだけの十分なエビデンスが不足して
いる状況と認識しております。
当社では、実施済みの臨床試験や 2018/19 シーズンのデータをもとに、PA/I38 アミノ酸変異株
の出現頻度や臨床症状への影響について、関連学会で発表し、一部は原著論文として公表してま
いりました 6, 7。リスク要因を有する患者試験やグローバル小児試験の結果をはじめ、その他各試
験における PA/I38 アミノ酸変異株に関わる追加解析結果などにつきましても、すでに主要学会
にて報告しておりますが 8, 9、現在論文審査を必要とする専門誌に投稿中であるため、今回両学会
より公表された提言および指針には引用されておりません。今後も速やかに主要雑誌に掲載され
るべく努めてまいります。また、流行するインフルエンザウイルスはシーズンにより異なり、抗
インフルエンザウイルス薬に対する耐性ウイルスの検出頻度もシーズンにより異なることが知ら
れていることから、今後も複数シーズンにわたって、PA/I38 アミノ酸変異株に関する継続した
データの取得が必要と考えております。当社は、国内の各種サーベイランスへの協力や、Roche グ
ループと共同でグローバルサーベイランスを実施することで、PA/I38 アミノ酸変異株の特徴をモ
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ニタリングし、両学会の提言および指針の内容も踏まえて、それらの結果を医療機関や学会等に
対して順次情報提供を行っていくことで、当社の社会的責任を果たしてまいります。
塩野義製薬は「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」ことを経営目標として掲げ
た中期経営計画 SGS2020 の中で、
「世界を感染症の脅威から守る」ことを当社が取り組むべき社
会課題の一つにあげております。人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患者
さまのもとにいち早くお届けできるよう努力してまいります。また、引き続き本薬の有効性、安
全性に関するデータの収集と解析に鋭意取り組み、適正使用に向けた情報提供活動に努めてまい
ります。
なお、本件が 2020 年 3 月期連結業績に与える影響に関しては、現時点では軽微と考えており
ますが、今後、状況に応じて精査いたします。
以 上
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【ゾフルーザ®(バロキサビル マルボキシル)について】
塩野義製薬が創製したゾフルーザは、既存の薬剤とは異なる新しい作用機序であるキャップ依
存性エンドヌクレアーゼ阻害作用によりインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。既存の薬
剤とは異なり、本薬は 1 回の経口投与で効果を発揮します。ゾフルーザは前臨床試験において、
オセルタミビルに耐性を示すウイルスおよび、鳥インフルエンザウイルス(H7N9, H5N1)を含
むインフルエンザウイルスに抗ウイルス効果を示しました 10, 11。
本薬は、臨床試験にて確認された本薬に対し感受性が低下した PA/I38 アミノ酸変異株につい
てのデータも含め、各国規制当局による審査を受け、日米を含め複数の国で承認されております
12, 13。2019 年 8 月 28 日には、成人および 12 歳以上の小児の急性 A 型、B 型インフルエンザウ
イルス感染症を適応症として、台湾食品薬物管理局(TFDA)に承認されました 14。また、2019
年 10 月 16 日には、「合併症を併発するリスクが高い 12 歳以上の患者の発症後 48 時間以内の急
性のインフルエンザウイルス感染症治療」を追加適応として、米国食品医薬品局(FDA)より承
認されました 5。詳細は XOFLUZA ホームページをご覧ください。
本薬の開発および販売は現在、Roche グループとの提携下で進めており、日本と台湾における
本薬の販売は塩野義製薬が、それ以外の国における本薬の販売は Roche グループが行います。
Roche グループは、1 歳未満の小児またはインフルエンザ症状が重篤化した入院患者を対象とし
たグローバル第 III 相臨床試験を実施中です。また今後、本薬のインフルエンザウイルス伝播抑
制効果について検証する予定です。塩野義製薬は Roche グループと協働し、引き続きあらゆる
面から同変異株に関するデータを集積し、当局にデータを提供すると共に、学会や科学論文等を
通じて最新の知見を医療関係者の皆様に提供してまいります。
【インフルエンザについて】
インフルエンザの世界的な流行は今なお公衆衛生上の懸念であり、世界的には、インフルエン
ザの流行により年間 300~500 万人が重症化し、65 万人が亡くなると報告されています 15, 16, 17,
18, 19。米国 CDC は、2 歳未満の子供、65 歳以上の高齢者、妊婦および、喘息および肺疾患、心疾
患、血液疾患、内分泌疾患、代謝異常、極度の肥満、免疫抑制状態等の基礎疾患を持つ方などを
重症化および合併症を起こしやすいハイリスク患者と定義しています 20。
参考
1. 2017 年 7 月 24 日開示
新規キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 S-033188 の第Ⅲ相臨床試験結果について
(速報)-リスク要因を持たない健常のインフルエンザ患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験
において主要目的を達成-
2. 2018 年 7 月 17 日開示
抗インフルエンザウイルス薬バロキサビル マルボキシルの 良好な第 III 相臨床試験
(CAPSTONE-2)結果について(速報)
3. 2018 年 10 月 4 日開示
バロキサビル マルボキシルの臨床試験結果の学会発表について-IDWeek 2018 にて、重
症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつインフルエンザ患者を対象とした第
III 相臨床試験(CAPSTONE-2)の良好な結果を発表-
4. 米国疾病予防管理センター(CDC)ガイドライン
CDC website, Influenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians.
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5. 2019 年 10 月 18 日開示
抗インフルエンザウイルス薬 XOFLUZATM の米国における適応追加承認について-合併
症を併発するリスクが高い患者のインフルエンザウイルス感染症治療を適応として-
6. Hayden FG et al. Baloxavir marboxil for uncomplicated influenza in adults and
adolescents. N Eng J Med 2018; 379: 913-23.
7. T. Uehara et al. Treatment-emergent influenza variant viruses with reduced baloxavir
susceptibility: impact on clinical and virologic outcomes in uncomplicated influenza. J
Infect Dis 2019; Jul 16.
8. 2019 年 9 月 2 日開示
抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®の PA/I38 アミノ酸変異株に関する学会発表につ
いて
9. 2019 年 9 月 2 日開示
抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®の PA/I38 アミノ酸変異株検出に関する特定使用
成績調査の学会発表について
10. T. Noshi et al. In vitro Characterization of Baloxavir Acid, a First-in-Class Cap-
dependent Endonuclease Inhibitor of the Influenza Virus Polymerase PA Subunit.
Antiviral Research 2018;160:109-117
11. K. Taniguchi et al. Inhibition of avian-origin influenza A(H7N9) virus by the novel cap-
dependent endonuclease inhibitor baloxavir marboxil. Scientific Reports volume 9,
Article number: 3466 (2019) .
12. 2018 年 3 月 14 日開示
抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ TM 錠 10mg・20mg」新発売のお知らせ
13. 2018 年 10 月 25 日開示
XOFLUZATM(一般名:バロキサビル マルボキシル)の米国における承認取得について
-合併症のない急性のインフルエンザ感染症治療を適応として-
14. 2019 年 8 月 29 日開示
抗インフルエンザウイルス薬「紓伏效®(ゾフルーザ®)錠 20mg」の台湾における製造販
売承認取得について
15. http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2017/seasonal-flu/en/ World Health
Organization website, Up to 650 000 people die of respiratory diseases linked to seasonal
flu each year, Accessed December 14, 2017.
16. http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs211/en World Health Organization website,
Influenza (Seasonal), Accessed January 31, 2018.
17. Baxter D. Evaluating the case for trivalent or quadrivalent influenza vaccines. Hum
Vaccin Immunother. 2016; 12(10):2712-2717.
18. https://www.cdc.gov/flu/about/disease/2015-16.htm CDC website, Estimated Influenza
Illnesses, Medical Visits, Hospitalizations, and Deaths Averted by Vaccination in the
United State. Accessed April 19, 2017.
19. Nair H, et al. Global burden of respiratory infections due to seasonal influenza in young
children: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2011 Dec 3;378(9807):1917-30.
20. https://www.cdc.gov/flu/highrisk/index.htm CDC website, People at High Risk For Flu
Complications.
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