4507 塩野義薬 2019-10-03 09:00:00
注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルの院内肺炎患者を対象とした第III相臨床試験(APEKS-NP)の試験結果について [pdf]

                                                      2019 年 10 月 3 日
 各   位
                               会 社 名    塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
                               代表者名     代表取締役社長      手 代 木   功
                                 (コード番号 4507 東証第一部)
                               問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
                                       TEL (06)6209-7885


         注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルの
     院内肺炎患者を対象とした第 III 相臨床試験(APEKS-NP)の試験結果について
         -主要評価項目を満たす結果を米国感染症週間(IDWeek 2019)にて発表-


 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または
「当社」)は、注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルについて、院内肺炎患者を対
象とした第 III 相臨床試験(APEKS-NP)で主要評価項目を満たす結果を得たことをお知らせいたしま
す。本試験結果は米国 ワシントン DC で開催中の米国感染症学会週間 Infectious Disease Week 2019
(以下「IDWeek 2019」
               )において現地時間 10 月 3 日午後に発表いたします。

 本試験において、セフィデロコルが主要評価項目を達成し、カルバペネム系抗菌薬メロペネムの高用
量投与と比較して非劣性を検証したことは、セフィデロコルが院内肺炎患者に対する新たな治療選択肢
となり得ることを示す重要なエビデンスとなります。

 IDWeek 2019 において発表した APEKS-NP 試験結果の概要は、次のとおりです。

主要評価項目
 主要評価項目である投与終了 14 日後の死亡率は、セフィデロコル投与患者(1 回 2g、3 時間点滴、1
日 3 回) 12.4%
      で     (18/145 例) メロペネム投与患者
                     、          (1 回 2g、 時間点滴、 日 3 回) 11.6%
                                        3     1      で     (17/146
例)であり、メロペネムに対して非劣性が検証されました。


副次評価項目
 主な副次評価項目である投与終了 7 日後における臨床効果や細菌学的効果、投与終了 28 日後の死亡
率のいずれにおいても、セフィデロコルはメロペネムと同程度の成績を示しました。

[投与終了 7 日後における臨床効果:医師により肺炎が治癒したと診断された割合]
     セフィデロコル投与患者で 64.8%(94/145 例)
                                、メロペネム投与患者で 66.7%(98/147 例)

[投与終了 7 日後における細菌学的効果:医師により原因菌が除菌されたと判断された割合]
     セフィデロコル投与患者で 47.6%(59/124 例)
                                、メロペネム投与患者で 48.0%(61/127 例)




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[投与終了 28 日後における死亡率]
   セフィデロコル投与患者で 21.0%(30/143 例)
                              、メロペネム投与患者で 20.5%(30/146 例)


 投与終了 7 日後における臨床効果について菌種毎に追加分析した結果、院内肺炎の主要な原因菌とな
るアシネトバクター、緑膿菌、大腸菌および肺炎桿菌のいずれのグラム陰性菌においてもセフィデロコ
ルはメロペネムと同程度の成績を示しました。


安全性概要
 本試験において認められた有害事象の発生率は両薬剤間で同程度であり、セフィデロコルについて新
たな安全性の懸念は認められませんでした。
有害事象のカテゴリー                          セフィデロコル        メロペネム
試験治療下で発現した有害事象(以下 TEAE)の発生率             87.8%         86.0%
                                     (130/148 例)   (129/150 例)

投与薬剤に関連する TEAE 発生率                      9.5%          11.3%
                                     (14/148 例)    (17/150 例)

試験治療下で発現した重篤な有害事象(以下 SAE)の発生率           36.5%         30.0%
                                     (54/148 例)    (45/150 例)

投与薬剤に関連する SAE 発生率                       2.0%          3.3%
                                      (3/148 例)    (5/150 例)

TEAE による投与中断・中止の発生率                     8.1%          9.3%
                                     (12/148 例)    (14/150 例)

投与薬剤に関連する TEAE による投与中断・中止の発生率           1.4%          1.3%
                                      (2/148 例)    (2/150 例)

TEAE による死亡率                             26.4%         23.3%
                                     (39/148 例)    (35/150 例)




 塩野義製薬は、感染症領域を重点領域のひとつに定め、人類の脅威となる種々の感染症治療薬の創製
に注力しております。これからも人々の健康を守るために必要な感染症の治療薬を、世界中の患者さま
のもとにいち早くお届けすることができるよう、努めてまいります。



                                                              以   上




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【APEKS-NP 試験について】
 APEKS-NP試験はグラム陰性菌による院内肺炎・呼吸器関連肺炎・医療ケア関連肺炎に罹患した成人
患者を対象に、セフィデロコルの有効性および安全性をカルバペネム系抗菌薬メロペネムの高用量3時間
点滴投与と比較した国際共同試験です。患者をセフィデロコル投与患者とメロペネム投与患者に1:1で
無作為に割り付け、7-14日の入院期間中、それぞれ1回2gの被験薬剤を1日3回8時間毎に3時間かけて静
脈内投与しています。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)および他のグラム陽性菌の影響を排除
するため、各投与患者ともにリネゾリドを最低5日間以上投与しています。安全性は投与後28日目まで
評価しました。

【セフィデロコルについて】
 セフィデロコルは、既存の抗菌薬とは異なる経路を利用することによりグラム陰性菌の外膜を効果的
に通過して抗菌活性を発揮する新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。セフィデロコルはポー
リンチャネルを介す受動的な経路を通して外膜を透過することに加え、鉄イオンと結合する独自の構造
を有することにより、細菌が養分である鉄イオンを取り込むために有している鉄イオントランスポー
ターを介し、細菌内に能動的に運ばれます1。また、セリン型及びメタロ型カルバペネマーゼを含む既知
のすべてのラクタマーゼに対し分解されにくい特徴を有します2。その結果、セフィデロコルは細菌の
ペリプラズム内に高濃度に保たれ、細胞壁合成を効率的に阻害します3。グローバルで実施したサーベイ
ランス試験*において、セフィデロコルはカルバペネム系抗菌薬に耐性を示す緑膿菌、アシネトバク
ター・バウマニ、ステノトロホモナス・マルトフィリアおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌に対
し、in vitro下で広い抗菌スペクトルを示しました4。これに対して、セフィデロコルはグラム陽性菌お
よび嫌気性菌に対してのin vitro活性は強くありません。
当社は、セフィデロコルの新薬承認申請を米国食品医薬品局(FDA)に申請済みです。セフィデロコ
ルはQIDP**に指定されており、FDAの審査終了目標日(PDUFA date)は2019年11月14日です。ま
た、欧州における製造販売承認も申請しており、2019年3月に受理されております5。
  *    サーベイランス試験 :医療機関より入手した臨床分離菌の薬剤感受性を調査する試験
  **   QIDP:Qualified infectious disease product、指定を受けることで優先審査や、認可後5年間の特許・優先権期間の延
           長が認められる等のインセンティブが付与されます


【グラム陰性菌感染症について】
 カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、ステノトロホモナス・マ
ルトフィリアおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌への有効な治療法は、重大なアンメットメディ
カルニーズです4, 6-9。多剤耐性グラム陰性菌が増加していることから、治療が困難になっており、これ
らの感染による致死率も増加しています10。米国では、年間少なくとも200万人が薬剤耐性菌に感染し、
そのうち少なくとも2万3千人が死亡することが報告されています11。また、欧州では、年間約2万5千人
が多剤耐性菌への感染により死亡することが報告されています12。カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す
緑膿菌、アシネトバクター・バウマニおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌に対する新たな抗菌薬
の研究開発は、世界保健機関により、最優先事項と考えられています6。


[お問合せ先]
塩野義製薬株式会社 広報部
  TEL:06-6209-7885 FAX:06-6229-9596


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参考:
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     Iron Transporter Systems for Antibacterial Activity against Pseudomonas aeruginosa.
     Antimicrob Agents Chemother. 2016;60(12):7396-7401.
2.   Ito-Horiyama T, Ishii Y, Ito A, et al. Stability of Novel Siderophore Cephalosporin S-649266
     against Clinically Relevant Carbapenemases. Antimicrob Agents Chemother. 2016;60(7):4384-
     4386.
3.   Tillotson GS. Trojan Horse Antibiotics—A Novel Way to Circumvent Gram-Negative Bacterial
     Resistance? Infectious Diseases: Research and Treatment. 2016;9:45-52
     doi:10.4137/IDRT.S31567.
4.   M Hackel, M Tsuji, Y Yamano, et al. In Vitro Activity of the Siderophore Cephalosporin,
     Cefiderocol, Against a Recent Collection of Clinically Relevant Gram-Negative Bacilli from
     North America and Europe, Including Carbapenem Non-Susceptible Isolates: The SIDERO-WT-
     2014 Study. Antimicrobial Agents Chemotherapy. 2017;61(9):e00093-17.
     https://doi.org/10.1128/AAC.00093-17.
5.   2019 年 4 月 1 日開示
     新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルの欧州における製造販売承認申請
     受理および Accelerated Assessment の指定について
6.   World Health Organization. Global priority list of antibiotic-resistant bacteria to guide
     research, discovery, and development of new antibiotics. February 27, 2017. Retrieved from
     https://www.who.int/medicines/publications/global-priority-list-antibiotic-resistant-bacteria/en/.
7.   Diene SM, Rolain JM. Carbapenemase genes and genetic platforms in gram-negative bacilli:
     Enterobacteriaceae, Pseudomonas and Acinetobacter species. Clin Microbiol Infect 2014;
     20:831−38.
8.   Livermore DM. Current epidemiology and growing resistance of gram-negative pathogens.
     Korean J Intern Med 2012; 27:128−42.
9.   Brooke JS. Stenotrophomonas maltophilia: an emerging global opportunistic pathogen. Clin
     Microbiol Rev 2012; 25:2−41.
10. Tangden T, Giske CG. Global dissemination of extensively drug-resistant carbapenemase-
     producing Enterobacteriaceae: clinical perspectives on detection, treatment and infection
     control. J Intern Med 2015; 277:501−12.
11. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Antibiotic Resistance Threats in the United
     States 2013. Retrieved from https://www.cdc.gov/drugresistance/pdf/ar-threats-2013-508.pdf
12. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC). Technical Report: the bacterial
     challenge: time to react. 2009.
     https://ecdc.europa.eu/sites/portal/files/media/en/publications/Publications/0909_TER_The_Bact
     erial_Challenge_Time_to_React.pdf




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