4507 塩野義薬 2019-10-02 11:30:00
難治性・原因不明慢性咳嗽治療剤候補S-600918の臨床試験結果の学会発表について-欧州呼吸器学会(ERS 2019)にて良好な第II相臨床試験結果を発表- [pdf]

                                             2019 年 10 月 2 日
 各   位
                           会 社 名   塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
                           代表者名    代表取締役社長     手 代 木      功
                             (コード番号 4507 東証第一部)
                           問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
                                   TEL (06)6209-7885


難治性・原因不明慢性咳嗽治療剤候補 S-600918 の臨床試験結果の学会発表について
         -欧州呼吸器学会(ERS 2019)にて良好な第 II 相臨床試験結果を発表-

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
      )は、当社が創製した難治性・原因不明慢性咳嗽治療剤候補 S-600918 の第 II 相臨
または「当社」
床試験の良好な結果を、2019 年 9 月 28 日~10 月 2 日にスペイン マドリードで開催された欧州
呼吸器学会(ERS 2019)において発表しましたので、その概要をお知らせいたします。


 S-600918 は、咳反射に関与する P2X 3 受容体を選択的にブロックすることで難治性・原因不明
慢性咳嗽の咳症状の改善が期待される新規化合物です。S-600918 の第 II 相臨床試験では、 カ月
                                                6
以上咳症状が継続する難治性・原因不明慢性咳嗽患者 31 名を対象に、多施設共同プラセボ対照無
作為化二重盲検クロスオーバー試験として実施し、1 日 1 回 2 週間投与における有効性及び安全
性を評価しました。


 主要評価項目である「日中時間帯における 1 時間あたりの咳回数のベースラインからの変化率」
は、S-600918 投与時で−54.1%、プラセボ投与時で−33.0%であり、S-600918 投与によるプラセ
ボ調整後のベースラインからの変化率は−31.6%(p=0.0546)でした。また、副次評価項目である、
S-600918 投与時の 24 時間における 1 時間当たりの咳回数のプラセボ調整後のベースラインから
の変化率は−30.9%であり、統計学的に有意な減少が認められました(p=0.0386)。さらに、咳特
異的な QOL 質問票であるレスター咳質問票(LCQ)スコアのベースラインからの変化量におい
ても、プラセボ投与時と比較して有意な改善を認めました(p=0.0415)。
 有害事象の発現率は、S-600918 投与時とプラセボ投与時でそれぞれ 35.5%と 29.0%で、有意な
差を認めませんでした。類薬で見られている有害事象である味覚異常について,S-600918 投与時
の発現頻度は 6.5%でした。治験薬との因果関係ありと判断された有害事象は全て軽度で処置なく
回復し、良好な安全性と忍容性が確認されました。
 今回の良好な結果を基に、現在後期第 II 相試験を準備中です。


 塩野義製薬は、
       「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」という経営理念の
もと、研究開発型の製薬企業として革新的新薬の継続的な提供を通じて、世界中の皆さまの健康
と QOL の改善に貢献してまいります。


 なお、本件が 2020 年 3 月期連結業績に与える影響は軽微です。
                                                      以   上




                           1 /2
【難治性・原因不明慢性咳嗽について】
     咳嗽は、痰や気道内の異物を喀出するための生体防御反射の一つですが、過剰に続くと QOL の
低下を招きます。そのなかでも、慢性咳嗽は 8 週間以上継続する咳と定義されており 1-3、日本に
おける有病率は 2%~10%程度、欧米では 10%程度と報告されています 4, 5。慢性咳嗽のなかには、
咳嗽の原因と考えられる疾患(咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症、上気道咳症候群、非喘息
性好酸球性気管支炎、副鼻腔炎、等)に対する治療後も咳症状が残存する場合や、詳細な検査を
行っても原因疾患が特定できない場合があり、これらを難治性・原因不明慢性咳嗽と定義してい
ます。慢性咳嗽のうち難治性患者の割合は欧米で 20%~40%であり、欧米と日本とで大きな差は
ないという報告もあります 4, 6。現在、難治性・原因不明慢性咳嗽に対して承認された薬剤はあり
ません。咳嗽治療においては、可能な限り原因疾患を見極め、原因に応じた特異的な治療を行う
ことが基本となりますが、それでもなお持続する難治性・原因不明慢性咳嗽に対する、安全かつ
有効な治療薬が望まれています。



参考:
1.    日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2019 作成委員会.咳嗽・喀痰の診療ガイ
      ドライン 2019.
2.    Gibson P, Wang G, McGarvey L, Vertigan AE, Altman KW, Birring SS, CHEST Expert
      Cough Panel. Treatment of Unexplained Chronic Cough: CHEST Guideline and Expert
      Panel Report. Chest 2016; 149(1): 27-44.
3.    Morice AH, Fontana GA, Sovijarvi AR, et al. The diagnosis and management of chronic
      cough. Eur Respir J 2004; 24(3): 481-92.
4.    松本 久子.遷延性/慢性咳嗽の疫学・分類.日本胸部臨床 2015; 74(11): 1179-88.
5.    Gibson PG, Vertigan AE. Management of chronic refractory cough. BMJ 2015; 351:
      h5590.
6.    Pacheco A, Cobeta I, Wagner C. Refractory Chronic Cough: New Perspectives in
      Diagnosis and Treatment. Arch Bronconeumol 2013; 49(4):151-7.




                                                 2 /2