4507 塩野義薬 2019-09-02 15:00:00
抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ(R)のPA/I38アミノ酸変異株に関する学会発表について [pdf]
2019 年 9 月 2 日
各 位
会 社 名 塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 手 代 木 功
(コード番号 4507 東証第一部)
問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
TEL (06)6209-7885
抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®の
PA/I38 アミノ酸変異株に関する学会発表について
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)
は、抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®の臨床試験において確認された本薬に対して感受性
が低下したPA/I38アミノ酸変異株に関するデータを2019年4月13~16日にオランダ アムステル
ダムで開催された欧州臨床微生物学感染症学会議(以下「ECCMID」)、および2019年8月28日
~9月1日にシンガポールで開催されたOptions X for the Control of Influenza(OPTIONS X)に
て発表しましたので、お知らせいたします。
【PA/I38アミノ酸変異株に関する学会発表内容の概要】
① PA/I38アミノ酸変異株の検出頻度について
PA/I38アミノ酸変異株の検出頻度は、低年齢小児患者で高い結果でした。また、ウイル
スの型としては、成人・青少年、小児ともにA/H3N2型で検出頻度が高い結果でした。
PA/I38アミノ酸変異株は、服薬前時点でのインフルエンザウイルスに対する抗体価が低
い患者で高い頻度で検出され、低年齢小児患者でPA/I38アミノ酸変異株の検出頻度が高
かったことには、免疫機能の未成熟が影響している可能性が考えられました。
流行するインフルエンザウイルスはシーズンにより異なり、抗インフルエンザウイルス薬に対
する耐性ウイルスの検出頻度もシーズンにより異なることが知られています。従って、今後も、
PA/I38アミノ酸変異株の検出頻度に関して更なるデータ取得が必要であり、引き続き、PA/I38ア
ミノ酸変異株検出の特徴をモニタリングし、適切な情報開示に取り組みます。
② PA/I38アミノ酸変異株と臨床症状の関連について
成人・青少年について
CAPSTONE-1試験: ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株が検出された患
者群の罹病期間中央値は、同変異株が検出されなかった患者群よりも長い傾向に
あるが、プラセボ投与群より短い結果でした。
CAPSTONE-2試験: ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株の検出された患
者群の罹病期間中央値は、同変異株が検出されなかった患者群よりも短い結果で
した。
両試験において、PA/I38アミノ酸変異株の検出と症状の悪化に明確な関連性は認
められませんでした。
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小児について
国内小児試験(錠剤・顆粒剤)では、ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株が
検出された患者群において、罹病期間中央値が長い傾向が認められ、特にA/H3N2
型に感染した低年齢小児で罹病期間が長い傾向にありました。また、一部の患者で
再発熱が認められましたが、この試験では比較対照群のデータはなく同変異株の
臨床症状への影響の有無を明確に判断することはできませんでした。
グローバル小児試験では、ゾフルーザ投与後にPA/I38アミノ酸変異株が検出され
た患者群での罹病期間中央値は、同変異株が検出されなかった患者群と比較して
長い傾向が認められましたが、オセルタミビル群と同程度でした。従って、小児集
団においても、一定の治療効果を示唆する結果が得られました。
以上の結果から、成人・青少年においては、ゾフルーザ投与後のPA/I38アミノ酸変異株の検出
と罹病期間中央値の関連性に一定の傾向は認められず、また同変異株の有無によらず、評価した
集団において治療効果を示すことが示唆されました。
小児においては、比較対照のない日本人集団での試験成績で、PA/I38アミノ酸変異株が検出さ
れたA/H3N2型感染の低年齢小児患者で罹病期間中央値が長い傾向や、一部の患者における解熱
後の再発熱が認められましたが、グローバル小児試験では、小児で治療効果が確認されているオ
セルタミビルと比べて明確な差はみられず、一定の治療効果を示唆する結果が得られました。
現時点では、小児において解析に利用可能なデータが限られており、引き続きデータの収集と
解析が必要と考えております。
③ 国内予防投与試験(BLOCKSTONE試験)でのPA/I38アミノ酸変異株の検出状況について
国内予防投与試験において、PA/I38アミノ酸変異株の伝播性を探索的に評価しました。
初発患者のうち53%がゾフルーザを服薬していましたが、本治験において予防目的でプ
ラセボ投与に割付けられた同居家族群でインフルエンザ感染を診断した際にPA/I38ア
ミノ酸変異株が検出された例、すなわち初発患者からのPA/I38アミノ酸変異株の伝播が
疑われた症例はありませんでした。
本薬の開発および販売は現在、Rocheグループとの提携下で進めており、日本と台湾における
本薬の販売は塩野義製薬が、それ以外の国における本薬の販売はRocheグループが行います。本
薬は日本で製造販売承認を取得し、成人および小児におけるA型およびB型インフルエンザウイ
ルス感染症を対象に製品名ゾフルーザ®として販売されております1。米国では、12歳以上の合併
症のない急性のインフルエンザウイルス感染症治療を適応として製品名XOFLUZATMとして発売
されております2。
塩野義製薬は「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」ことを経営目標として掲げ
た中期経営計画SGS2020の中で、「世界を感染症の脅威から守る」ことを当社が取り組むべき
社会課題の一つにあげております。人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患
者さまのもとにいち早くお届けできるよう努力してまいります。また、引き続き本薬の有効性、
安全性に関するデータの収集と解析に鋭意取り組み、適正使用に向けた情報提供活動に努めてま
いります。
以 上
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【ゾフルーザ®(一般名: baloxavir marboxil)について】
塩野義製薬が創製したゾフルーザは、既存の薬剤とは異なる新しい作用機序であるキャップ依
存性エンドヌクレアーゼ阻害作用によりインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。既存の薬
剤とは異なり、本薬は 1 回の経口投与で効果を発揮します。ゾフルーザは前臨床試験において、
オセルタミビルに耐性を示すウイルスおよび、鳥インフルエンザウイルス(H7N9, H5N1)を含
むインフルエンザウイルスに抗ウイルス効果を示しました 3, 4。
本薬は 2019 年 8 月 28 日に、成人および 12 歳以上の小児の急性 A 型、B 型インフルエンザウ
イルス感染症を適応症として、台湾食品薬物管理局(TFDA)に承認されました 5 。
「重症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつ 12 歳以上の患者のインフル
米国では、
エンザウイルス感染症治療」を適応とした新薬承認追加申請が米国食品医薬品局(FDA)より受
理されており、FDA の審査終了目標日(PDUFA date)は 2019 年 11 月 4 日です 6。詳細は
XOFLUZA ホームページをご覧ください。
Roche グループは、小児またはインフルエンザ症状が重篤化した入院患者を対象としたグロー
バル第 III 相臨床試験を実施中です。また今後、本薬のインフルエンザウイルス伝播抑制効果に
ついて検証する予定です。
本薬は、臨床試験にて確認された本薬に対し感受性が低下した PA/I38 アミノ酸変異株につい
てのデータも含め、各国規制当局による審査を受け、日米を含め複数の国で承認されておりま
す。塩野義製薬では引き続きあらゆる面から同変異株に関するデータを集積し、当局にデータを
提供すると共に、学会や科学論文等を通じて最新の知見を医療関係者の皆様に提供してまいりま
す。
【CAPSTONE-1 試験について】
CAPSTONE-1 試験は、リスク要因を持たない健常のインフルエンザ患者を対象に行った無作
為化,多施設共同,並行群間,プラセボおよび実薬対照二重盲検比較試験で、計 1,436 人が登録
されました。本試験のデザインおよび主な結果は、2017 年 9 月 14 日および 10 月 6 日のリリー
ス文をご参照ください 7, 8。
【CAPSTONE-2 試験について】
CAPSTONE-2 試験は、重症化および合併症のリスク要因をもつ 12 歳以上のインフルエンザ患
者を対象に、多施設共同、無作為化、プラセボおよび実薬対照二重盲検比較の第 III 相臨床試験で
す。本グローバル試験は塩野義製薬が実施いたしました。本試験のデザインおよび主な結果は、
2018 年 10 月 4 日のリリース文をご参照ください 9。
【国内小児試験(錠剤)について】
国内小児試験(錠剤)は、6 ヶ月以上 12 歳未満のリスク要因を持たない健常のインフルエンザ
患者を対象にしたオープンラベル試験です。104 名の被験者がスクリーニング時の体重に基づき、
バロキサビル マルボキシル 5~40mg を 1 日目に単回経口投与し、試験期間 22 日間において 14
日間の有効性評価と 22 日間の安全性評価を実施しました。
【国内小児試験(顆粒剤)について】
国内小児試験(顆粒剤)は、体重 20kg 未満のリスク要因を持たない健常のインフルエンザ患者
を対象にしたオープンラベル試験です。33 名の被験者がスクリーニング時の体重に基づき、バロ
キサビル マルボキシル 1mg/kg (体重 10kg 未満)あるいは 10mg (体重 10kg 以上)を 1 日目に単回
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経口投与し、試験期間 22 日間において 14 日間の有効性評価と 22 日間の安全性評価を実施しま
した。
【グローバル小児試験(MINISTONE-2)について】
MINISTONE-2 試験は、1 歳以上 12 歳未満の小児インフルエンザウイルス感染症患者を対象
に実施した、多施設共同、無作為化、二重盲検比較の第 III 相臨床試験です。本試験は Roche グ
ループが実施しました。本試験に登録された被験者は 5 歳以上 12 歳未満と、1 歳以上 5 歳未満
の 2 つのコホートに割り当てられました。両コホートの被験者は、ゾフルーザ投与群(1 回投
与、投与量:20 kg 未満 2 mg/kg、20 kg 以上 40 mg)と、オセルタミビル投与群(1 日 2 回 5
日間投与、投与量は体重により調整)に割り当てられました。本試験の主要評価項目は、投与
29 日目までに有害事象(重篤な有害事象を含む)を示した被験者の割合であり、副次評価項目
は薬物動態、インフルエンザ罹病期間(熱を含むインフルエンザ症状が消失するまでの時間)で
した。
【BLOCKSTONE 試験について】
BLOCKSTONE 試験は、インフルエンザウイルス感染症患者(初発患者)の同居家族または共
同生活者(被験者)を対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボ対照二重盲検比較の第
III 相臨床試験です。本試験は 750 例を対象に、日本で塩野義製薬が実施しました。被験者はゾフ
ルーザの 1 回投与群(投与量は年齢・体重に応じて調整*)、またはプラセボ投与群に無作為に割
り当てられました。本試験の主要評価項目は投与後 10 日間における、インフルエンザウイルスに
感染し、発熱かつ呼吸器症状を有する被験者の割合です。また、本試験では PA/I38 アミノ酸変異
株の出現についての探索評価も行いました。
*本試験におけるゾフルーザ®の投与量
1.12 歳以上
体重 投与量
80kg 以上 80mg
80kg 未満 40mg
2.12 歳未満
体重 投与量
40kg 以上 40mg
20kg 以上 40kg 未満 20mg
10kg 以上 20kg 未満 10mg(顆粒剤)
10kg 未満 1mg/kg(顆粒剤)
【インフルエンザについて】
インフルエンザの世界的な流行は今なお公衆衛生上の懸念であり、世界的には、インフルエン
ザの流行により年間 300~500 万人が重症化し、 万人が亡くなると報告されています 10, 11, 12, 13,
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14。
参考:
1. 2018 年 3 月 14 日開示
「抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ TM 錠 10mg・20mg」新発売のお知らせ」
2. 2018 年 10 月 25 日開示
「XOFLUZATM(一般名:バロキサビル マルボキシル)の米国における承認取得について
-合併症のない急性のインフルエンザ感染症治療を適応として-」
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3. T. Noshi et al. In vitro Characterization of Baloxavir Acid, a First-in-Class Cap-
dependent Endonuclease Inhibitor of the Influenza Virus Polymerase PA Subunit.
Antiviral Research 2018;160:109-117
4. K. Taniguchi et al. Inhibition of avian-origin influenza A(H7N9) virus by the novel cap-
dependent endonuclease inhibitor baloxavir marboxil. Scientific Reports volume 9,
Article number: 3466 (2019)
5. 2018 年 8 月 29 日開示
抗インフルエンザウイルス薬「紓伏效®(ゾフルーザ®)錠 20mg」の台湾における製造販
売承認取得について
6. 2019 年 3 月 6 日開示
抗インフルエンザウイルス薬 XOFLUZATM の米国における新薬承認追加申請受理について
-重症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつ患者のインフルエンザウイルス感染
症治療を適応として-
7. 2017 年 9 月 14 日開示
新規キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 S-033188 の第Ⅲ相臨床試験結果について-
欧州インフルエンザ科学ワーキンググループ会議(ESWI)にて結果を発表-
8. 2017 年 10 月 6 日開示
新規キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 S-033188 の学会発表について-米国感染症
学会週間(IDWeek 2017)にて臨床および非臨床試験結果を発表-
9. 2018 年 10 月 4 日開示
バロキサビル マルボキシルの臨床試験結果の学会発表について-IDWeek 2018 にて、重症
化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつインフルエンザ患者を対象とした第 III 相
臨床試験(CAPSTONE-2)の良好な結果を発表-
10. http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2017/seasonal-flu/en/ World Health
Organization website, Up to 650 000 people die of respiratory diseases linked to seasonal
flu each year, Accessed December 14, 2017.
11. http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs211/en World Health Organization website,
Influenza (Seasonal), Accessed January 31, 2018.
12. Baxter D. Evaluating the case for trivalent or quadrivalent influenza vaccines. Hum
Vaccin Immunother. 2016; 12(10):2712-2717.
13. https://www.cdc.gov/flu/about/disease/2015-16.htm CDC website, Estimated Influenza
Illnesses, Medical Visits, Hospitalizations, and Deaths Averted by Vaccination in the
United State. Accessed April 19, 2017.
14. Nair H, et al. Global burden of respiratory infections due to seasonal influenza in young
children: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2011 Dec 3;378(9807):1917-30.
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