4507 塩野義薬 2019-06-24 11:00:00
トロンボポエチン受容体作動薬LusutrombopagならびにHER2/EGFR阻害剤Epertinibの中国におけるEddingpharmグループとのライセンス契約締結について [pdf]
2019 年 6 月 24 日
各 位
会 社 名 塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 手 代 木 功
(コード番号 4507 東証第一部)
問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
TEL (06)6209-7885
トロンボポエチン受容体作動薬 Lusutrombopag ならびに HER2/EGFR 阻害剤 Epertinib の
中国における Eddingpharm グループとのライセンス契約締結について
塩野義製薬株式会社 (本社:大阪市中央区、代表取締約社長:手代木 功、 以下 「塩野義製薬」 または「当
社」)は、この度、トロンボポエチン受容体作動薬 lusutrombopag(日本での製品名:ムルプレタ®)を
Eddingpharm(本社:中華人民共和国上海市、Chief Executive Officer: Ni Xin、以下「Edding 社」
)に、
ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)/上皮成長因子受容体 (EGFR) 阻害剤 epertinib を Edding 社のグルー
プ企業である EOC Pharma(本社:中華人民共和国上海市、Chief Executive Officer: Zou Xiaoming、以下
「EOC 社」 にそれぞれ導出するライセンス契約を締結しましたので、お知らせいたします。
)
<Lusutrombopag の Edding 社とのライセンス契約締結>
中国における成人の慢性肝疾患患者数は約 1,360 万人 1,2,3 で、 待機的な観血的手技を予定している慢性肝
疾患患者数も多いと言われています。一方で、日米欧に比べて献血率が低く、加えて医療水準の向上によ
り血液需要が増加し、慢性的に輸血用の血液が不足しています。また、確保した血液は輸血における感染
のリスクが高いと言われています。 Lusutrombopag は、当社で創製された低分子トロンボポエチン受容体
作動薬で、待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者の施術の際の血小板輸血を回避できる代替
療法として、すでに日本と米国において承認発売されております。Edding 社は、中国全土の肝疾患、血液
疾患、感染症専門病院を広くカバーする販売網を持った製薬企業であり、Edding 社の販売網と
lusutrombopag をグローバルに開発、販売してきた当社のノウハウにより、lusutrombopag は、承認後、
患者さまの治療に一層貢献することが期待されます。
今回のライセンス契約締結により、Edding 社は中国、香港、マカオにおける本薬の独占的販売権を獲得
します。当社は、Edding 社に製品を供給し、ライセンス契約締結に伴う一時金および製品上市後の経過
時期に応じたマイルストンを受領する予定です。なお、承認申請を両社が共同して行うことも合意されて
います。
<Epertinib の EOC 社とのライセンス契約締結>
HER2 陽性乳がん患者さまの治療については Her2 抗体の普及により生存期間が延長すると同時に抗体
の効きにくい脳転移の発症率は相対的に高くなっています 4。一方、脳転移巣に対して明確な有効性を示
した薬剤は上市されておらず、脳転移に有効な乳がん治療薬が望まれています。Epertinib は、当社が創
製した HER2/ EGFR 阻害剤で、既存の HER2 分子に対する標的治療薬施行歴のある乳がん患者さまに対
する良好な抗腫瘍効果に加えて、非臨床試験における良好な脳移行性が確認できていることから、脳転移
巣に対する抗腫瘍効果が期待されています。
EOC 社は、がん領域に特化したスペシャリティファーマです。今回のライセンス契約締結により、
EOC 社は中国、香港、マカオにおける epertinib の開発、製造、販売権を取得し、中国において開発に
着手します。当社は、ライセンス契約締結に伴う一時金および開発進展に応じたマイルストン、ならびに
製品上市後の販売額に応じたロイヤリティーを受領する予定です。
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塩野義製薬は、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」という経営理念のもと、 社外
リソースを活用しながら、革新的新薬の継続的な供給を通じ、世界中の皆様の健康と QOL の改善に貢献し
てまいります。
なお、本件が 2019 年(平成 31 年)3 月期の業績に与える影響は軽微です。
以 上
参考 1
【Eddingpharm について】
Eddingpharm は、2001 年設立の製薬企業で、GSK 社、Lilly 社、Roche 社等の海外大手製薬企業との
提携品の中国市場での販売実績があります。lusutrombopag の処方が見込まれる中国全土の肝疾患、血液
疾患、感染症専門病院を広くカバーできる販売網を持っています。より詳細はウェブページをご覧くださ
い。www.eddingpharm.com
【EOC Pharma について】
EOC Pharma は Eddingpharm のグループ企業であり、GSK から許諾を受けて Tykerb を中国で独占
販売する一方で、新規メカニズムの抗がん剤を中国で自社開発して進める、がん領域に特化した Specialty
pharma です。より詳細はウェブページをご覧ください。https://www.eocpharma.com/
【Lusutrombopag について】
Lusutrombopag は、当社で創製された低分子トロンボポエチン受容体作動薬で、待機的な観血的手技を
予定している慢性肝疾患患者の施術の際の血小板輸血にみられる発熱性非溶血性副作用や細菌感染、ウイ
ルス感染などを回避できる代替療法として 2015 年 9 月日本において「ムルプレタ®」として世界に先駆け
承認発売されております。また、米国においては 2018 年 7 月に承認、8 月から発売(商品名
「Mulpleta®」、欧州においては 2019 年 2 月に承認を得ております。
)
【慢性肝疾患における血小板減少症について】
血小板は出血時の止血、血液の凝固に重要な役割をはたしていますが、その数が減少する血小板減少症
は、トロンボポエチン(血小板の前駆細胞の増殖および分化に関与する造血因子)の産生減少を含むさま
ざまな要因によって引き起こされます。血小板の正常値は 15~35 万/mm3 で、通常 15 万/mm3 未満が血
小板減少症と定義されており、慢性肝疾患の合併症として頻繁に発生し 5,6,7、肝硬変患者では 78%に認めら
れます 8。 慢性肝疾患で血小板減少症を合併する場合は、血小板減少症の合併のない場合と比較して出血
のリスクが高く、血小板輸血を繰り返し、外来診療回数の増加および入院期間の延長が必要になると報告
されております 9。 C 型肝炎ウイルスによる慢性肝炎で血小板減少症を合併している場合は、血小板減少
症を合併していない慢性肝疾患と比較して、年間医療費が 3 倍になるという報告もあります 9。特に重度の
血小板減少症(50,000 /μL 未満の血小板数)では、外傷や手術時の出血が悪化するため、肝生検などの外
科的処置や抗ウイルス療法の遅れや中止の原因となり、診断・治療行為を困難にしております 10。
【Epertinib(開発番号:S-222611)について】
HER2 は、がん細胞に特異的に発現するがん増殖因子の受容体であり、主に乳がんや胃がんにおいて発
現が認められています。Epertinib は、当社が創製した HER2/ EGFR 阻害剤で、これまでの試験結果か
ら、HER2 分子に対する標的治療後の乳がん患者に対して良好な抗腫瘍効果が確認されています。更に、
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非臨床試験において、epertinib と同じ分子標的薬である lapatinib に比べて良好な脳移行性を示したこと
から、脳転移巣に対しても抗腫瘍効果が期待できます。中国では、遠隔転移のある HER2 陽性乳がん患者
数は、新規の発症例で約 17,600 人 11 と日本の約 3 倍と見積もられております。このうち脳転移を新規に
発症する患者の割合は 30~55%12 とされています。
参考 2
1. DM Report, GlobalData から推定
2. 2008 年中国慢性病統計データから推定
3. Datamonitor report
4. Chronic Diseases and Translational Medicine 3 (2017) 21-32.
5. Giannini EG. Aliment Pharmacol Ther. 2006;23(8):1055-1065.
6. Koruk M, et al. Hepatogastroenterology. 2002;49(48):1645-1648..
7. Aref S, et al. Hematology. 2004;9(5/6):351-356.
8. Peck-Radosavljevic M. Liver Int. 2017; 37(6):778-793..
9. Poordad F, et al. J Med Econ. 2012; 15:112-124.
10. Hayashi H, et al. World J Gastroenterol. 2014; 20: 2595-2605.
11. Global Data HER2 positive breast cancer global drug forecast and market analysis to 2025 (2017 年 6 月発行)
12. Chronic Diseases and Translational Medicine 3 (2017) 21-32.
参考 3
1. 2015 年 12 月 1 日リリース:血小板減少症治療薬「ムルプレタ®錠 3mg」新発売のお知らせ
2. 2018 年 8 月 31 日リリース
トロンボポエチン受容体作動薬 Mulpleta®(一般名:ルストロンボパグ)の米国における新発売について
3. 2019 年 2 月 22 日リリース
トロンボポエチン受容体作動薬 Lusutrombopag の欧州における承認取得について
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