4507 塩野義薬 2021-08-24 15:00:00
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンS-268019の新製剤を用いた第1/2相臨床試験の進捗に関するお知らせ [pdf]
2021 年 8 月 24 日
各 位
会 社 名 塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 手 代 木 功
(コード番号 4507 東証第一部)
問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
TEL (06)6209-7885
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン S-268019 の新製剤を用いた
第 1/2 相臨床試験の進捗に関するお知らせ
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
または「当社」
)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチン(開発番号:
S-268019)の新製剤を用いた国内第 1/2 相臨床試験につきまして、2021 年 8 月 19 日付で全被験
者 60 例への初回投与が完了しましたのでお知らせいたします。初回投与 3 日後までに生じた副
反応はいずれも軽度または中等度であり、安全性上の懸念は確認されておりません。
当社が開発に取り組んでいるワクチンは、グループ会社の UMN ファーマが有する BEVS 注1
を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンです。BEVS により発現・精製した抗原タンパクなら
びに、安全性の観点から Th1/Th2 バランス注 2 を重視して選択したアジュバント注 3 を用いて、
2020 年 12 月より第 1/2 相臨床試験を実施してきました。その後の種々の検討結果や集積された
知見を踏まえ、当社は先の 2021 年度第 1 四半期決算資料において開示しましたとおり、Th1/Th2
バランスを維持しつつもより高い中和抗体価の誘導が必要と判断し、アジュバントを変更した新
製剤を用いて、2021 年 7 月末より国内における第 1/2 相臨床試験を新たに開始しました。
注 1 Baculovirus Expression Vector System:昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術。UMN ファーマが有する
技術ではバキュロウイルスや昆虫細胞由来の成分・病原ウイルスの混入なしに抗原タンパクの精製が可能
注 2 免疫応答を調整する 2 種類のヘルパーT 細胞のバランス。詳細は【Th1/Th2 バランスについて】を参照
注 3 免疫を活性化させ、ワクチンの効果を補強する物質
開始した第 1/2 相臨床試験は、旧製剤と同一の抗原タンパクおよび新たに選択したアジュバン
トの組み合わせからなる、日本人成人を対象とした無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験です。
本ワクチンを 3 週間間隔で 2 回接種した際の安全性、忍容性ならびに免疫原性の結果から、抗原
タンパク量の低減化を含めて至適な用量を検討するとともに、各指標を接種後 1 年間追跡評価し
ます(jRCT : 2031210269)。上記試験で用量を決定した後、約 3,000 例の日本人を対象とする次
相試験に速やかに移行し、安全性、有効性のさらなる検討を行うとともに、最終段階の試験を年
内に開始すべく準備を進めてまいります。なお、これら大規模試験の実施ならびに承認申請に向
けては、引き続き厚生労働省や独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)等との協議、相
談を進めていく予定です。
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塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」
を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、疾患の啓発・検知・予防・診断ならびに重症化
抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めております。新型コロナウイルスが
世界的な脅威として引き続き人々の生活に大きな影響をもたらしている中、当社は本パンデミッ
クの早期終息による社会の安心・安全の回復に貢献するために、共同研究先や治験実施施設、生
産施設、関係省庁ならびに PMDA との連携を密にし、COVID-19 に対する国産ワクチンの早期開
発・提供が可能となるよう鋭意取り組んでまいります。また、ワクチンと並んで最優先で進めて
いる治療薬の開発にも引き続き注力し、その他の取り組みの進捗も含めて状況に変化があり次第、
皆さまにお知らせし、企業としての社会的責任を果してまいります。
なお、本件が 2022 年 3 月期の連結業績予想に与える影響に関しては、今後、状況に応じて精
査いたします。
以 上
【遺伝子組換えタンパクワクチンについて】
遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・
精製後に投与に供されます。遺伝子情報そのものを投与し、体内にて抗原タンパクを合成させる
mRNA ワクチン等の新規技術と比べて、 BEVS
抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、
を活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性を基に承認・
実用化されている確立された技術です。
【Th1/Th2 バランスについて】
生体内の免疫応答は、 種類のヘルパーT 細胞である Th1 細胞と Th2 細胞によって制御されて
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います。Th1 細胞が主に細胞性免疫を活性化するのに対し、Th2 細胞は主に抗体産生に関わる液
性免疫を活性化することが知られています。遺伝的要因や移植手術、ワクチン接種等の外的要因
により、これら 2 つの免疫応答のバランスが崩れると様々な免疫疾患が引き起こされると考えら
れています。過去に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)に対
する研究では、免疫が関与するワクチン関連疾患増悪(VDE)や抗体依存性感染増強(ADE)の
リスク低減には Th1/Th2 バランスが重要との考察がなされています。
参考:
COVID-19 に対する当社の取り組みは、当社ホームページでも随時更新しております。また、
各機関から発信されている COVID-19 に関する情報も同ページにまとめておりますので、ご参考
までにご確認ください(塩野義製薬ウェブサイト)
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