4507 塩野義薬 2019-04-01 15:00:00
新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルの欧州における製造販売承認申請受理およびAccelerated Assessmentの指定について [pdf]
2019 年 4 月 1 日
各 位
会 社 名 塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 手 代 木 功
(コード番号 4507 東証第一部)
問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
TEL (06)6209-7885
新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルの
欧州における製造販売承認申請受理および Accelerated Assessment の指定について
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
)
は、セフィデロコルについて、
「治療が限定される好気性グラム陰性菌による感染症」を適応症と
して、欧州医薬品庁(EMA)に新薬承認申請を行い受理されましたので、お知らせいたします。
本薬は欧州医薬品評価委員会(CHMP)により Accelerated Assessment(迅速審査)の対象品目
に指定されております。
セフィデロコルは、細菌が元来有する鉄イオン取り込み機構を利用することにより効率的に菌
体内に入るとともに、細菌の抗菌薬に対する耐性獲得の原因の一つであるβラクタマーゼに対し
安定で分解されにくいという特徴を有します。また、世界保健機関(WHO)が 2017 年に公表し
た世界的に大きな問題になっている 12 種類の病原菌リストのうち、セフィデロコルは新薬の研究
開発の優先度が最も高いカルバペネム耐性を示す 3 種のグラム陰性菌(緑膿菌、アシネトバク
ター・バウマニおよび腸内細菌科細菌)のすべてに、非臨床試験において強い抗菌活性を示した
ことから、薬剤耐性(Antimicrobial Resistance 以下「AMR」)に対応できると期待されている
薬剤です 1,2。
AMR は緊急に取り組む必要のあるヘルスケア上の課題です。米国と欧州だけでも、年間でおよ
そ 5 万 6 千人が薬剤耐性菌感染症で亡くなっています 3,4。2050 年までに薬剤耐性菌感染症によ
る死亡者数は 1000 万人、GDP に対する影響は 100 兆ドルにもおよぶという予測もあります 5。
欧州においてセフィデロコルの新薬承認申請が受理されたことから、本薬が薬剤耐性菌感染症の
治療における新たな選択肢として貢献できるよう審査対応を進めてまいります。
塩野義製薬は「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」ことを経営目標として掲げ
た中期経営計画 SGS2020 の中で、
「世界を感染症の脅威から守る」ことを当社が取り組むべき社
会課題の一つにあげております。人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患者
さまのもとにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。
なお、本件が 2019 年(平成 31 年)3 月期の業績に与える影響は軽微です。
以 上
【セフィデロコルについて】
セフィデロコルは、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌に対し抗菌活性を示す、新規のシデロフォ
アセファロスポリンです。セフィデロコルは鉄イオンと結合することにより、細菌が養分である
鉄イオンを取り込むために有している鉄イオントランポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれ
ます 6。これにより、セフィデロコルは細菌のペリプラズム内に高濃度に保たれ、細胞壁合成を阻
害します 7。さらに、セフィデロコルはポーリンチャネルを介し受動的に外膜を透過します。また、
細菌が抗生剤に対する耐性獲得の主要な原因の一つであるメタロカルバペネマーゼ及びセリンカ
ルバペネマーゼを含む既知のすべてのβラクタマーゼに対し安定であり、これらの特徴からセ
フィデロコルは強活性を発揮します 8。グローバルで実施したサーベイランス試験*において、セ
フィデロコルはカルバペネムに耐性を示す緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、ステノトロホ
モナス・マルトフィリアおよび腸内細菌科細菌を含むグラム陰性菌に対し、 vitro 下で広い抗菌
in
スペクトルを示しました 1。これとは対照的に、セフィデロコルはグラム陽性菌及び嫌気性菌に対
しての in vitro 活性は弱いです。
現在、カルバペネム耐性菌感染症を対象とした第 III 相臨床試験(CREDIBLE-CR)及び院内
肺炎・人工呼吸器関連肺炎・医療ケア関連肺炎患者を対象とした第 III 相臨床試験(APEKS-NP)
を行っています。これらの臨床試験についての情報は、www.clinicaltrials.gov にて参照可能です
(識別番号:NCT02714595、NCT03032380)
。
*サーベイランス試験 : 薬剤感受性を調査するため、医療機関より臨床分離菌を入手する試験
【APEKS-cUTI 試験について】
グラム陰性菌による複雑性尿路感染症患者を対象に、セフィデロコルの有効性および安全性を
カルバペネム系抗菌薬イミペネム/シラスタチン(IPM/CS)と比較したグローバル試験です。1-2
週の入院治療が必要と判断された症例が集積されました。主要評価項目である、投与終了時から
約7日後の臨床効果および細菌学的効果の複合有効率は、cefiderocol が 72.6%(n=252) IPM/CS
、
が 54.6%(n=119)で、両薬剤の有効率の差は 18.58%(95%信頼区間:8.23, 28.92)であり、
cefiderocol の IPM/CS に対する非劣性が検証されると共に、優越性も示されました。安全性に関
しては、IPM/CS 群において 50.0%の症例に有害事象が、8.1%の症例に重篤な有害事象が確認さ
れたのに対し、cefiderocol 群では 40.0%の症例にこれまで認められている有害事象が、4.7%の症
例に重篤な有害事象が確認され、cefiderocol に対する高い忍容性が確認されました 9,10,11。また、
本試験の良好な結果は The Lancet Infectious Diseases に掲載されております 12。
参考:
1. M Hackel, M Tsuji, Y Yamano, et al. n Vitro Activity of the Siderophore Cephalosporin,
Cefiderocol, Against a Recent Collection of Clinically Relevant Gram-Negative Bacilli
from North America and Europe, Including Carbapenem Non-Susceptible Isolates: The
SIDERO-WT-2014 Study. Antimicrobial Agents Chemotherapy. 2017;61(9), posted online.
2. WHO. WHO publishes list of bacteria for which new antibiotics are urgently needed:
https://www.who.int/en/news-room/detail/27-02-2017-who-publishes-list-of-bacteria-for-w
hich-new-antibiotics-are-urgently-needed
3. CDC. Antibiotic / Antimicrobial Resistance (AR / AMR). Available at:
https://www.cdc.gov/drugresistance/index.html Last accessed March 2019
4. European Commission. EU Action on Antimicrobial Resistance. Available at:
http://ec.europa.eu/health/amr/antimicrobial-resistance_en Last accessed March 2019
5. O’Neill, J. et al. Review on antimicrobial resistance. Tackling drug-resistant infections
globally: final report and recommendations. 2016
6. Ito A, Nishikawa T., Masumoto S, et al. Siderophore Cephalosporin Cefiderocol Utilizes
Ferric Iron Transporter Systems for Antibacterial Activity against Pseudomonas
aeruginosa. Antimicrob Agents Chemother. 2016;60(12):7396-7401.
7. Tillotson GS. Trojan Horse Antibiotics—A Novel Way to Circumvent Gram-Negative
Bacterial Resistance? Infectious Diseases: Research and Treatment. 2016;9:45-52
doi:10.4137/IDRT.S31567
8. Ito-Horiyama T, Ishii Y, Ito A, et al. Stability of Novel Siderophore Cephalosporin
S-649266 against Clinically Relevant Carbapenemases. Antimicrob Agents Chemother.
2016;60(7):4384-4386.
9. 2017 年 1 月 12 日開示
新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬 cefiderocol の複雑性尿路感染症における二
重盲検比較試験の良好な結果について(速報)
10. 2017 年 4 月 25 日開示
新規注射用シデロフォアセファロスポリン抗菌薬 Cefiderocol の多剤耐性菌を含むグラム陰
性 菌 に 対 す る 臨 床 お よ び 日 臨 床 試 験 結 果 に つ い て - 欧 州 臨 床 微 生 物 学 感 染 症学 会 議
(ECCMID)にて結果を発表-
11. 2017 年 10 月 5 日開示
新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬 cefiderocol の学会発表について
-米国感染症学会週間(IDWeek2017)にて臨床および日臨床試験結果を発表-
12. 2018 年 10 月 26 日開示
新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬セフィデロコルの臨床試験結果
The Lancet Infectious Diseases 誌での掲載について