4507 塩野義薬 2019-03-18 11:30:00
抗HIV治療における月1回投与注射剤カボテグラビルとリルピビリン2剤レジメンの良好な試験結果に関するViiV社の発表について [pdf]

                                                                     2019 年 3 月 18 日
 各 位
                                     会 社 名     塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
                                     代表者名      代表取締役社長 手 代 木              功
                                       (コード番号 4507 東証第一部)
                                     問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
                                             TEL (06)6209-7885


    抗 HIV 治療における月 1 回投与注射剤カボテグラビルとリルピビリン 2 剤レジメンの
                良好な試験結果に関する ViiV 社の発表について
       - CROI にて ATLAS 試験および FLAIR 試験の良好な 48 週の結果を発表-

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」または「当社」                                 )
は、当社が GlaxoSmithKline plc.および Pfizer Inc.とともに資本参加している ViiV Healthcare Ltd.(本社:英
国ロンドン、Chief Executive Officer:Deborah Waterhouse、以下「ViiV 社」    )が、長期作用型注射剤カボテグ
ラビル(ViiV 社)と長期作用型注射剤リルピビリン            (Janssen 社)による 2 剤レジメンの第 III 相臨床試験       (ATLAS
試験、FLAIR 試験:試験概要と詳細結果は 2 ページ以降参照)に関して、48 週時点の良好な結果をワシントン
州シアトルで開催された Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections (CROI)で発表しましたので、
お知らせいたします。

 これらの 2 試験では、成人 HIV-1 感染患者でのウイルス抑制効果の維持において、カボテグラビルおよびリル
ピビリンを 4 週間毎に注射する長期作用型注射剤レジメンが、標準治療である毎日投与の経口 3 剤レジメンに対
して非劣性であることが示され、主要評価項目を達成しました。
  ATLAS 試験:
   ・カボテグラビル+リルピビリン群:92.5%(285/308) 剤経口レジメン(CAR)群:95.5%(294/308)
                                 、3
  FLAIR 試験:
                                 、トリーメク®群:93.3%(264/283)
   ・カボテグラビル+リルピビリン群:93.6%(265/283)

 また、48 週目に実施した HIV 治療満足度に対するアンケートにおいては、両試験とも以前の経口療法から長
期作用型注射レジメンへの変更が好ましいという結果が示されました。
  ATLAS 試験:
   ・患者の 266/308 (86.4%)が長期作用型注射レジメンを、7/308 (2.3%)が以前の経口療法を好ましいと回答
  FLAIR 試験、
   ・患者の 257/283 (90.8%)が長期作用型注射レジメンを、2/283 (0.7%)が以前の経口療法を好ましいと回答

 その他、安全性、ウイルス学的失敗については、既に実施した第 IIb 相臨床試験(LATTE 試験、LATTE-2 試
験 1,2)と同等の結果でした。この長期作用型注射剤レジメンは今年中の申請を予定しています。

 塩野義製薬は ViiV 社の株主として、世界中の HIV 感染者の皆さまに継続的に新たな治療選択肢が提供される
ことを期待するとともに、今後も同社の経営に参画することで、抗 HIV 治療における患者さまへの提供価値の最
大化に貢献してまいります。

 なお、本件が 2019 年(平成 31 年)3 月期の業績に与える影響は軽微です。
                                                                               以 上
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1.    Margolis D A et al. Cabotegravir plus rilpivirine, once a day, after induction with cabotegravir plus nucleoside reverse
      transcriptase inhibitors in antiretroviral-naive adults with HIV-1 infection (LATTE): a randomised phase 2b dose-ranging
      trial. The Lancet Infectious Diseases. Published online July 2015. Available at:
      http://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(15)00152-8/abstract

2.    Margolis, D. et al. Long-acting intramuscular cabotegravir and rilpivirine in adults with HIV-1 infection (LATTE-2):96-
      week results of a randomised, open-label, phase 2b, non-inferiority trial. The Lancet. July 2017. Published online:
      http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(17)31917-7 Last accessed August 2018




参考
【ATLAS 試験における 48 週の有効性および安全性の結果】
     第 III 相 ATLAS 試験は、48 週目の FDA スナップショットアルゴリズムを用いて、血漿中 HIV-1 RNA ≥50
コピー/mL (c/mL) の参加者の割合で評価した結果、カボテグラビルおよびリルピビリンは、2 剤の核酸系逆転
写酵素阻害薬 (NRTI) およびキードラッグを含む 3 剤経口レジメン (CAR) に対して非劣性を示し、主要評価項
目を達成しました(カボテグラビル+リルピビリン群:5/308[1.6%]、現在の抗レトロウイルス療法維持群
[CAR]:3/308[1.0%]、調整差:0.6%、95%信頼区間[CI]: -1.2、2.5)。48 週目のウイルス学的抑制率 (HIV-1 RNA <
50 c/mL) は、治療群間で同様でした(cabotegravir + rilpivirine:285/308 [92.5%]、CAR:294/308 [95.5%]、調整
差:-3%、95% CI: -6.7、0.7)。


     長期作用型カボテグラビル+リルピビリンを投与された 3 名の参加者(研究対象集団の約 1%)がウイルス学的失
敗 (Confirmed virologic failure [CVF]) となり、一方または両方の薬剤に対する耐性変異が同定されました。そ
のうち、2 名については既存の NNRTI 耐性が確認されました。3 名のうち 2 名はロシア出身であり、3 名すべ
てがロシア、東ヨーロッパおよび東アフリカで頻繁に確認され、世界の他の地域ではまれにしか確認されない、
サブタイプ HIV-1 A のウイルスを有していました。この予期せぬパターンについては追加調査を実施します。経
口 CAR 投与群において、4 名の患者で CVF が認められ、うち 3 名でウイルス耐性変異が認められました。


     カボテグラビルおよびリルピビリンによる治療の忍容性について、重篤な有害事象 (SAE) の発現率は 4.2%
(13/308) 、有害事象 (AE) による治療中止率は 3.2% (10/308) でした。カボテグラビルおよびリルピビリンの
注射を受けた参加者のうち、83% (250/303) が、48 週間のある時点で注射部位反応 (injection site reaction
[ISR]) の報告がありました。48 週間の試験中に投与された合計 6978 回の注射のうち、1460 回の ISR が報告さ
れました。ほとんどの ISR 事象(98.5%)は軽度または中等度 (軽度:1156/1460、中等度:283/1460) であり、平均
3 日間持続しました。4 名 (1.3%) の参加者が注射関連の事象により治療を中止しました。


     HIV 治療満足度に対するアンケートの結果から、患者の治療に対する満足度は、以前の経口療法から長期作用
型注射剤に切り替えた場合、経口療法を継続した場合と比較して 44 週時点で有意に改善していました
(HIVTSQs 差の平均値 5.68; 95% CI [4.37,6.9]; p<0.001) 。48 週目に実施した一項目のアンケートでは、患者の
266/308 (86.4%) が長期作用型注射レジメンを、7/308 (2.3%) が経口療法を好ましいと回答しました。


     ATLAS 試験参加医師であるネブラスカ大学医療センター感染症課内科学教授、MBBS のスーザン・スウィン
デルズ博士は以下のように述べています。
                  「ATLAS 試験の安全性と有効性の結果は、HIV と共に生きる人々に
とって、カボテグラビルとリルピビリンが長期作用型注射剤レジメンとして治療選択肢となる可能性を示してい
ます。この新しいアプローチは、毎日の経口療法による負担を軽減し、HIV と共に生きる人々にとって HIV が
占める割合を、より小さなものにすることに寄与する可能性があります。
                                」




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【FLAIR 試験における 48 週間の有効性および安全性の結果】
 第 III 相 FLAIR 試験では、48 週目に FDA Snapshot アルゴリズムを用いて血漿 HIV-1 RNA ≥50c/mL であっ
た参加者の割合で評価した結果、カボテグラビルおよびリルピビリンはトリーメク配合錠 (アバカビル/ドルテグ
ラビル/ラミブジン-ABC/DTG/3TC) に非劣性を示し、主要評価項目を達成しました (カボテグラビル+リルピビ
リン:6/283[2.1%]、トリーメク 7/283[2.5%]、調整誤差:-0.4%、95% CI: -2.8、2.1) 。48 週目のウイルス学的抑
制率 (HIV-1 RNA <50c/mL) は、治療群間で同様でした (カボテグラビル+リルピビリン:265/283 [93.6%]、ト
リーメク:264/283 [93.3%]、調整差:0.4%;95% CI: -3.7、4.5) 。


 長期作用型カボテグラビル+リルピビリンを投与された患者のうち、3 例 (試験対象集団の約 1%) にウイルス
学的失敗 (CVF) が確認され、いずれも治療下での NNRTI および INSTI 耐性が認めらました。3 名全員がロシ
ア出身であり、ロシア、東ヨーロッパおよび東アフリカに多く、世界の他の地域ではまれにしか確認されない、
サブタイプ HIV-1 A1 のウイルスを有していました。この予期せぬパターンについては追加調査を実施します。
トリーメク配合錠投与群の 3 名の参加者でウイルス学的失敗が確認されましたが、治療中にウイルス耐性は認め
られませんでした。


 カボテグラビルおよびリルピビリンによる治療の忍容性について、重篤な有害事象の発現率は 6.4 (18/283) お
よび中止に至った有害事象の発生率は 3.2% (9/283)でした。カボテグラビルおよびリルピビリンの注射を受けた
参加者のうち、86% (239/278) が、48 週間のある時点で注射部位反応 (ISR) の報告がありました。48 週間の試
験中に投与された合計 7704 回の注射のうち、2203 回の ISR が報告されました。99.4%の注射部位反応は軽度
または中等度であり(軽度:1907/2203、中等度:282/2203)、期間の中央値は 3 日でした。4 名の参加者が注射関連
の事象により、治療を中止しました。


 HIV 治療満足度に対するアンケートの結果から、患者の治療に対する満足度は、以前の経口療法から長期作用
型注射剤に切り替えた場合、経口療法を継続した場合と比較して 48 週時点で有意に改善していました
(HIVTSQs 差の平均 4.1;95% CI [2.8,5.5], p<0.001) 。48 週目に実施した一項目のアンケートでは、患者の
257/283 (90.8%)が長期作用型注射レジメンを、2/283 (0.7%) が以前の経口療法を好ましいと回答しました。


 FLAIR 試験参加医師のロンドンのクイーン・メアリー大学臨床教授の Chloe Orkin 博士は次のように述べて
います。
   「FLAIR 試験の結果は、カボテグラビルおよびリルピビリンが現行の毎日の経口療法に対する代替治療
選択肢としての可能性を示しました。この長期作用型注射 2 剤レジメンにより、数十年続いてきた HIV 治療で
ある毎日の服薬サイクルを変えることで、HIV と共に生きる人々のパラダイムを変える機会が提供されます。
                                                  」


 ViiV 社では、カボテグラビルおよびリルピビリンの長期作用型注射レジメンについて、ATLAS 試験で評価さ
れている 1 ヵ月 1 回投与に加え、ATLAS-2M 試験で 2 ヵ月に 1 回に投与の評価を実施します。ATLAS 試験及
び FLAIR 試験の結果は規制当局への申請に使用する予定です。


 長期作用型注射剤レジメンは、Janssen 社と共同開発中であり、これまでに承認されている国はありません。




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【ATLAS 試験 (NCT02951052) について】
  ATLAS 試験は、ViiV 社が実施している 2 剤レジメンに関する臨床試験プログラムのひとつです。
この研究は、HIV と共に生きる 616 人の男女を対象とし、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フラン
ス、ドイツ、イタリア、メキシコ、ロシア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、および米国で実施さ
れています。


  ATLAS 試験は、ウイルスが抑制された HIV 感染患者において、2 種の核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)+イン
テグラーゼ阻害剤 (INI) 、非核酸系逆転写酵素阻害剤 (NNRTI) またはプロテアーゼ阻害剤 (PI) の経口抗レト
ロウイルス療法 (ART) の継続と比較して、カボテグラビルおよびリルピビリンの長期作用型注射 2 剤レジメン
の抗ウイルス活性および安全性を評価するためにデザインされた第 III 相、非盲検、活性対照、多施設、並行群
間、非劣性試験です。ATLAS 試験の主要評価項目は、48 週目の FDA スナップショットアルゴリズムにより評
価した血漿 HIV-1 RNA が 50c/mL 以上の被験者の割合です (Missing, Switch, or Discontinuation = Failure,
Intent-to-Treat Exposed [ITT-E] population) 。試験参加者はウイルス学的失敗がなく、6 ヵ月以上ウイルスが
抑制されている必要がありました。


  詳細な情報はこちらをご確認ください。https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02951052



【FLAIR 試験 (NCT0293852) について】
  FLAIR 試験は、抗ウイルス治療の経験がない HIV 感染成人患者を対象とした、筋肉内投与の長期作用型注射
剤である、カボテグラビルとリルピビリン治療レジメンの、抗ウイルス活性および安全性を評価することを目的
とした、第 III 相、無作為化、非盲検、多施設共同、並行群間、非劣性試験です。FLAIR 試験の主要評価項目
は、48 週目に FDA のスナップショットアルゴリズムに従い、
                               「ウイルス学的失敗」となった HIV 感染患者の比
率です[Missing, Switch, or Discontinuation = Failure, Intent-to-Treat Exposed [ITT-E] population]
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  詳細な情報はこちらをご確認ください。https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02938520


【ViiV 社について】
 ViiV 社は、英国 GlaxoSmithKline plc.および米国 Pfizer Inc.によって 2009 年に設立された、抗 HIV 薬に特
化したスペシャリスト・カンパニーです。 2012 年 10 月に塩野義製薬が 10%の持ち分を取得しました。ヴィー
ブヘルスケアは、どの会社よりも、HIV/AIDS についてより深い、幅広い関心を持つことで、新たなアプローチ
で効果的な新規の HIV 治療薬を提供し、HIV の影響を受けているコミュニティを支援することを目指していま
す。詳細は、www.viivhealthcare.com をご覧ください。




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