4507 塩野義薬 2020-11-02 09:00:00
認知機能改善薬候補BPN14770の脆弱X症候群患者を対象とした第2相臨床試験の良好な結果について [pdf]

                                               2020 年 11 月 2 日
 各       位
                             会 社 名   塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
                             代表者名    代表取締役社長     手 代 木     功
                               (コード番号 4507 東証第一部)
                             問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
                                     TEL (06)6209-7885

               認知機能改善薬候補 BPN14770 の
     脆弱 X 症候群患者を対象とした第 2 相臨床試験の良好な結果について
        言語に関連する領域における認知機能の有意な改善および高い安全性と忍容性を確認
        言語および日常機能の改善を介護者が確認


 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製
薬」または「当社」)は、認知機能改善薬候補 BPN14770 について、グループ会社である Tetra
社が実施した脆弱 X 症候群(Fragile X Syndrome: FXS)患者を対象とした第 2 相臨床試験で良
好な結果を得ましたので、お知らせいたします。

 BPN14770 は、記憶形成に関わる Phosphodiesterase 4D(PDE4D)を標的とした新規の選
択的ネガティブアロステリックモジュレーターです。このユニークな作用機序は、FXS、アルツ
ハイマー型認知症(Alzheimerʼs disease: AD)およびその他の認知症、学習/発達障害、統合失
調症などの治療が困難な中枢神経疾患における認知および記憶機能を改善する可能性がありま
す。BPN14770 は、既に実施された AD を対象とした第 2 相臨床試験において認知機能の改善
傾向が確認されています 1。また、非臨床試験において、FXS 患者で損なわれていることが報告
されている神経細胞同士の結合に対して、BPN14770 投与による成熟促進が見られています。

 第 2 相臨床試験は、FXS 患者を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照 2 群 2 期クロスオー
バー試験として実施しました。期間 1 と期間 2 の間にウォッシュアウト期間はなく、それぞれの
投与期間は 12 週間で、18〜41 歳の成人 FXS 患者 30 人が登録され、BPN14770 またはプラセ
ボが 1 日 2 回投与されました。キャリーオーバー効果を認めたため、有効性に関する主要な統計
解析は期間 1 に限定されていますが、全ての被験者が 2 期の治療期間を完了しました。

  主要評価項目である安全性および忍容性に関して、全例(30 例)は試験を中止することなく
完遂し、良好な安全性と忍容性を示しました。有害事象の発現率は、BPN14770 投与時とプラ
セボ投与時でそれぞれ 36.7%(11/30 例)と 26.7%(8/30 例)でした。最も多かった有害事象で
ある嘔吐については、BPN14770 投与時とプラセボ投与時の発現頻度はそれぞれ 10.0%(3 例)
と 6.7%(2 例)でした。有効性に関しては探索的な評価を行ったところ、NIH-Toolbox を使用
した認知機能の評価では、音読認識(調整平均の差 + 2.80、p = 0.0157)   、画像語彙(+ 5.79、p
= 0.0342)
        、および認知複合スコア(+ 5.29、p = 0.0018)の項目でプラセボ群に対して統計的に
有意な差が見られました。100 ポイントの視覚的評価スケールを使用した親あるいは介護者の評
価においては、言語(調整平均の差 + 14.04、p = 0.0051)および日常機能(+ 14.53、p =
0.0017)の項目でプラセボ群に対して統計的に有意な差が見られました。BPN14770 からプラ
セボにクロスオーバー後も 12 週間後まで効果が持続しました。




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 塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「社会生産性向上」を特定し
ています。引き続き、アンメットメディカルニーズの高い認知機能障害に対する画期的な治療薬
を世界中の患者さまにお届けできるよう努力し、FXS、AD を含む精神・神経系疾患を抱える患
者さまとそのご家族の QOL や生産性の向上に貢献してまいります。

     なお、本件が 2021 年 3 月期連結業績に与える影響は軽微です。
                                                        以   上




【本試験(第 2 相臨床試験)について】
     本試験は、BPN14770 の安全性と有効性を評価するため、18 歳~45 歳の FXS 患者 30 名を対
象に、プラセボ対照無作為化二重盲検 2 期クロスオーバー試験として実施しました。本試験は、
イリノイ州シカゴのラッシュ大学医療センターにて Elizabeth M. Berry-Kravis を治験責任医師
として実施されました。本試験は FRAXA Research Foundation から財政支援を受けて実施され
ました。詳細は、clinicaltrials.gov(NCT035696312)をご確認ください。


【BPN14770 について】
     BPN14770 は、記憶形成に関わる PDE4D を標的とするネガティブアロステリックモジュ
レーターです。PDE4D は、細胞内セカンドメッセンジャーである環状ヌクレオチド cAMP を
分解する酵素であり、BPN14770 は、神経細胞内のシグナル伝達系を制御することで、認知機
能を向上させることが示唆されています。非臨床試験において、FXS 患者で損なわれている神
経細胞同士の結合の成熟促進が見られています。なお、FXS は自閉スペクトラム障害を呈する
遺伝型です。このユニークな作用機序は、FXS、AD およびその他の認知症、学習/発達障害、統
合失調症などの治療が困難な中枢神経疾患における認知および記憶機能を改善する可能性があり
ます。BPN14770 は、米食品医薬品局(FDA)より希少疾患治療薬に指定されています。




【Tetra 社について】
     Tetra 社は、FXS、AD、外傷性脳損傷、その他の脳疾患で苦しむ患者さまに対する治療薬を
開発するバイオテクノロジー関連の研究開発型企業です。タンパク構造をベースにしたドラッグ
デザインを行い、PDE4 に対する新規メカニズムのネガティブアロステリックモジュレーターを
探索しています。本社は米国ミシガン州にあります。詳細は Tetra 社のホームページをご覧くだ
さい。


参考:
1.    2020 年 5 月 26 日 プレスリリース
      米国 Tetra 社の完全子会社化に関するお知らせ
2.    https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03569631




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