4507 塩野義薬 2020-09-29 09:00:00
FETROJA(R)(cefiderocol)の米国における院内肺炎を対象とした適応追加承認取得について [pdf]

                                               2020 年 9 月 29 日
 各   位
                           会 社 名   塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
                           代表者名    代表取締役社長       手 代 木       功
                             (コード番号 4507 東証第一部)
                           問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
                                   TEL (06)6209-7885


         FETROJA®(cefiderocol)の米国における院内肺炎を対象とした
                       適応追加承認取得について


 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
      )は、FETROJA®(cefiderocol)について、米国食品医薬品局(FDA)より「18 歳
または「当社」
以上の患者における、グラム陰性菌による院内肺炎(院内細菌性肺炎および人工呼吸器関連肺炎)
治療」の適応追加承認を取得したことをお知らせいたします。


 FETROJA®は、新規シデロフォアセファロスポリン抗菌薬であり、18 歳以上の患者における、
                                 「
グラム陰性菌による腎盂炎を含む複雑尿路感染症治療」を適応に米国で承認されており 1、当社の
米国子会社である Shionogi Inc.が販売しています。このたびの適応追加は、院内肺炎を対象とし
た第 III 相臨床試験 [APEKS-NP])の良好な結果 2 を基に判断されました。


 院内肺炎は、最も重要な院内感染症のひとつであり、中でも薬剤耐性のグラム陰性菌によって
引き起こされる感染症に対する治療薬は限られていることから、患者さまにとって致命的な脅威
となります。FETROJA®は、世界保健機関(WHO)により最優先の対応が必要であると考えられ
ているカルバペネム系抗菌薬に耐性を示すアシネトバクター・バウマニ、緑膿菌および腸内細菌
目細菌に有効性を示す唯一の薬剤です。当社は、このたびの適応追加承認により、グラム陰性菌
が引き起こす院内肺炎と闘う患者さまおよび医療関係者に、新たな治療選択肢を提供できると考
えています。


 塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「感染症の脅威からの解放」
を特定し、研究、開発、製造、販売と幅広く感染症に対する取り組みを進めております。当社
は、グローバルの課題である AMR の対策を成功させるため、政府、国際機関、製薬会社、抗菌
薬の処方医師、使用者(患者さま)を含む全てのステークホルダーと連携して課題解決に向けて
取り組んでまいります。


 なお、本件が 2021 年 3 月期連結業績に与える影響は軽微です。


                                                         以   上




                           1/3
【APEKS-NP 試験について】
  APEKS-NP 試験は、アシネトバクター・バウマニ、緑膿菌および腸内細菌目細菌といった幅
広いグラム陰性菌による院内肺炎(院内感染肺炎、人工呼吸器関連肺炎、医療ケア関連肺炎)の
重症患者を対象に、cefiderocol 群(1 回 2 g、3 時間点滴、1 日 3 回)と高用量のメロペネム群
(1 回 2 g、3 時間点滴、1 日 3 回)の有効性と安全性を比較するための無作為化、盲検下におけ
る第 III 相臨床試験です。本試験において、主要評価項目である投与終了 14 日後の全死因死亡
率は、cefiderocol 群で 12.4%(18/145 例)
                                、高用量メロペネム群で 11.6%(17/146 例)であ
り、cefiderocol 群は高用量メロペネム群に対して非劣性を示しました(調整治療差 0.8% [95%
CI -6.6~8.2])
            。また、本試験において認められた有害事象の発生率は両薬剤間で同程度であ
り、cefiderocol について新たな安全性の懸念は認められませんでした。


【薬剤耐性グラム陰性菌について】
  カルバペネム系抗菌薬耐性を含めた多剤耐性を示す緑膿菌、アシネトバクター・バウマニ、
ステノトロホモナス・マルトフィリアおよび腸内細菌目細菌による感染症の増加は医療における
重要課題となっています 3-8。これらの感染症の既存薬での治療は困難であり、致死率も上昇し
ています 9。米国では、年間少なくとも 280 万人が薬剤耐性菌に感染し、そのうち少なくとも 3
万 5 千人が死亡することが報告されています 10。何らかの手立てを打たなければ、2050 年まで
に薬剤耐性菌感染症による全世界での死亡者数は 1000 万人、GDP に対する影響は 100 兆米国
ドルにも及ぶという予測もされています 11。
  当社の薬剤耐性問題に対する取り組みについては、こちらをご覧ください。


【Cefiderocol について】
  Cefiderocol は、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を効果的に通過して抗菌活性を発揮す
る新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬です。Cefiderocol は細菌のカルバペネムへの耐
性獲得に関連する 3 つの主な機序(βラクタマーゼによる抗菌薬の不活化、ポーリンチャネルの
変異による膜透過性低下、排出ポンプの過剰産生)による影響を受けずに抗菌力を発揮します。
鉄と結合する独自の構造を有することにより、細菌が養分である鉄を取り込むために利用する鉄
トランスポーターを介し、細菌内に能動的に運ばれます 12。その結果、cefiderocol は細菌のペリ
プラズム内に効率よく取り込まれ、細胞壁合成を効率的に阻害します 13。


参考
1. 2019 年 11 月 15 日リリース FETROJA®(cefiderocol)の米国における新薬承認について
2. 2019 年 10 月 3 日リリース Cefiderocol の APEKS-NP 試験結果について
3. World Health Organization. Global priority list of antibiotic-resistant bacteria to guide
   research, discovery, and development of new antibiotics. February 27, 2017. Retrieved
   from https://www.who.int/medicines/publications/global-priority-list-antibiotic-resistant-
   bacteria/en/.
4. World Health Organization. 2019 ANTIBACTERIAL AGENTS IN CLINICAL
   DEVELOPMENT. 2019. Retrieved from
   https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/330420/9789240000193-eng.pdf
5. Hackel M, Tsuji M, Yamano Y, et al. In Vitro Activity of the Siderophore Cephalosporin,
   Cefiderocol, Against a Recent Collection of Clinically Relevant Gram-Negative Bacilli from
   North America and Europe, Including Carbapenem Non-Susceptible Isolates: The


                                            2/3
     SIDERO-WT-2014 Study. Antimicrob Agents Chemother. 2017;61(9):e00093−17.
     https://doi.org/10.1128/AAC.00093-17.
6.   Diene SM, Rolain JM. Carbapenemase genes and genetic platforms in gram-negative
     bacilli: Enterobacteriaceae, Pseudomonas and Acinetobacter species. Clin Microbiol Infect
     2014; 20:831−38.
7.   Livermore DM. Current epidemiology and growing resistance of gram-negative pathogens.
     Korean J Intern Med 2012; 27:128−42.
8.   Brooke JS. Stenotrophomonas maltophilia: an emerging global opportunistic pathogen.
     Clin Microbiol Rev 2012; 25:2−41.
9.   Tangden T, Giske CG. Global dissemination of extensively drug-resistant carbapenemase-
     producing Enterobacteriaceae: clinical perspectives on detection, treatment and infection
     control. J Intern Med 2015; 277:501−12.
10. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Antibiotic Resistance Threats in the
     United States 2019, Atlanta, GA: U.S. Department of Health and Human Services, CDC;
     2019. Retrieved from https://www.cdc.gov/drugresistance/pdf/threats-report/2019-ar-
     threats-report-508.pdf
11. O’Neill J. ‘Tackling Drug-Resistant Infections Globally: Final Report and
    Recommendations’. Review on Antimicrobial Resistance. May 2016. Retrieved from
    https://amr-review.org/sites/default/files/160525_Final%20paper_with%20cover.pdf
12. Ito A, Nishikawa T., Matsumoto S, et al. Siderophore Cephalosporin Cefiderocol Utilizes
    Ferric Iron Transporter Systems for Antibacterial Activity against Pseudomonas
    aeruginosa. Antimicrob Agents Chemother. 2016;60(12):7396-7401.
13. Tillotson GS. Trojan Horse Antibiotics—A Novel Way to Circumvent Gram-Negative
    Bacterial Resistance? Infectious Diseases: Research and Treatment. 2016;9:45-52
    doi:10.4137/IDRT.S31567.




                                             3/3