4507 塩野義薬 2019-03-06 15:00:00
抗インフルエンザウイルス薬XOFLUZA(TM)の米国における新薬承認追加申請受理について [pdf]

                                              2019 年 3 月 6 日
  各 位
                            会 社 名   塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
                            代表者名    代表取締役社長    手代木       功
                              (コード番号 4507 東証第一部)

                            問合せ先    広 報 部 長 京川 吉正
                                      TEL (06)6209-7885


抗インフルエンザウイルス薬 XOFLUZATM の米国における新薬承認追加申請受理について
 -重症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつ患者のインフルエンザウイルス感染症治療を適応として-

  塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
 または「当社」  )は、XOFLUZATM について、     「重症化および合併症を起こしやすいリスク要因を
 もつ 12 歳以上の患者のインフルエンザウイルス感染症治療」を適応とした新薬承認追加申請が、
 米国食品医薬品局(FDA)より受理されましたので、お知らせいたします。FDA の審査終了目標
 日(PDUFA date)は 2019 年 11 月 4 日です。

  このたびの追加申請は、重症化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつ 12 歳以上のイ
 ンフルエンザ患者を対象としたグローバル第 III 相臨床試験(CAPSTONE-2)における有効性お
 よび安全性の結果 1 をもとに行われました。

  高齢の患者さまや、肺疾患や代謝性疾患などの基礎疾患をもつ患者さまでは特に、インフルエ
 ンザ症状の重篤化により入院や死亡などの深刻な事態に至る場合があります。これまで、このよ
 うなリスク要因をもつ患者さまにおいて、臨床効果を臨床試験で明確に示した薬剤はありません
 でしたが、XOFLUZA は、初めて本対象集団においてインフルエンザ罹病期間(インフルエンザ
 症状が回復するまでの時間)をプラセボに対して有意に短縮することにより臨床効果を示した薬
 剤であることから、当社は、本薬がこれらの患者さまにとってより良い治療選択肢になると考え
 ております。

  XOFLUZA は塩野義製薬が創製し、CAPSTONE-2 の実施を含む開発をしてまいりました。本
 薬の開発および販売は現在、Roche グループ(米国 Genentech 社を含む)との提携下で進めてお
 り、日本と台湾における本薬の販売は塩野義製薬が、それ以外の国における本薬の販売は Roche
 グループが行います。本薬は現在米国において、12 歳以上の合併症のない急性のインフルエンザ
 感染症治療を適応として発売されています 2。詳細は XOFLUZA ホームページをご覧ください。

  塩野義製薬は「創薬型製薬企業として社会とともに成長し続ける」ことを経営目標として掲げ
 た中期経営計画 SGS2020 の中で、
                    「世界を感染症の脅威から守る」ことを当社が取り組むべき社
 会課題の一つにあげております。人々の健康を守るために必要な感染症治療薬を、世界中の患者
 さまのもとにいち早くお届けできるよう、引き続き努力してまいります。

  なお、本件が 2019 年(平成 31 年)3 月期の業績に与える影響は軽微です。

                                                        以上
【XOFLUZA について】
  塩野義製薬が創製した XOFLUZA は、        既存の薬剤とは異なる新しい作用機序であるポリメラー
ゼ酸性タンパク質        (PA*)   内のキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害       (米国添付文書ではポリメ
ラーゼ酸性エンドヌクレアーゼと記載)によりインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。既
存の薬剤とは異なり、本薬は 1 回の経口投与で効果を発揮します。XOFLUZA は前臨床試験にお
いて、   オセルタミビルに耐性を示すウイルスおよび、          鳥インフルエンザウイルス      (H7N9, H5N1)
を含むインフルエンザウイルスに抗ウイルス効果を示しました              3, 4, 5。

  本薬は日本で製造販売承認を取得し、            成人および小児における A 型および B 型インフルエンザ
ウイルス感染症を対象に製品名ゾフルーザ®として販売されております 6。2018 年 6 月 29 日に、
12 歳以上の合併症のないインフルエンザウイルス感染症を適応症として、台湾食品薬物管理局
(TFDA)に本薬の新薬承認申請を行っております 7。
  Roche グループは、小児またはインフルエンザ症状が重篤化した入院患者を対象としたグロー
バル第 III 相臨床試験を実施中です。また今後、本薬のインフルエンザウイルス伝播抑制効果に
ついて検証する予定です。当社は、2018-2019 年のインフルエンザ流行期に予防を目的とした第
III 相臨床試験を日本で実施中です。
*PA: polymerase acidic protein

【CAPSTONE-2 試験について 1】
  CAPSTONE-2 試験は、 重症化および合併症のリスク要因をもつ 12 歳以上のインフルエンザ患
者を対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボおよび実薬対照二重盲検比較の第 III 相臨
床試験です。     本グローバル試験は塩野義製薬が実施いたしました。      2184 名の被験者が XOFLUZA
40 mg または 80 mg(体重により決定)の 1 回投与群、プラセボ、またはオセルタミビル 75 mg
1 日 2 回 5 日間投与群に無作為に割り当てられました。そのうち、1163 名(53%)の被験者でイ
ンフルエンザウイルスへの感染が RT-PCR により確認されました       (A/H3N2 型:47.9%、A/H1N1
型:6.9%、B 型:41.6%)。本試験における主なリスク要因は、喘息または肺疾患(39.2%)        、65 歳
以上の高齢者(27.4%)   、内分泌疾患(13.5%)、心疾患(12.7%)、極度の肥満(10.6%)でした。
本試験の主な結果は下記のとおりです。

 XOFLUZA は、主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(インフルエンザ症状が回復する
までの時間)をプラセボに対して有意に短縮し、本試験の主要目的を達成しました。インフルエ
ンザ罹病期間の中央値は、プラセボの 102.3 時間に対し、XOFLUZA では 73.2 時間でした
(p<0.0001) インフルエンザウイルスの亜型別に解析した結果、
            。                              A/H3N2 型インフルエンザウイ
ルス感染患者のインフルエンザ罹病期間の中央値はプラセボの 100.4 時間に対し、XOFLUZA で
は 75.4 時間でした(p<0.05) 。また、B 型インフルエンザ感染患者では、プラセボの 100.6 時間
に対し、XOFLUZA では 74.6 時間でした(p<0.05) 。
 XOFLUZA は、以下の主要な副次評価項目について、プラセボに対する優越性を示しました。
 ・ 体内からのウイルス排出期間の中央値は、プラセボの 96.0 時間に対し、XOFLUZA では
      48.0 時間でした(p<0.0001)。
 ・ インフルエンザ感染による二次的な感染に対する抗生剤の処方頻度は、                 プラセボの 7.5%に
      対し、XOFLUZA では 3.4%でした(p=0.01)
                                  。
 ・ インフルエンザ関連合併症の発生頻度は、          プラセボの 10.4%に対し、   XOFLUZA では 2.8%
      でした(p<0.05)。
 XOFLUZA は、以下の評価項目について、オセルタミビルとの比較において良好な結果を示し
ました。
 ・ インフルエンザ罹病期間の中央値は、         オセルタミビルの 81.0 時間に対し、    XOFLUZA では
      73.2 時間であり、統計学的な差は認められないものの低い値を示しました(p=0.8347)            。
      また、B 型インフルエンザウイルス感染患者については、インフルエンザ罹病期間の中央
      値はオセルタミビルの 101.6 時間に対し、   XOFLUZA では 74.6 時間であり、 優越性を示し
      ました(p<0.05)。
 ・ 体内からのウイルス排出期間の中央値は、オセルタミビルの 96.0 時間に対し、XOFLUZA
      では 48.0 時間であり、有意に短縮しました(p<0.0001)  。
 ・ インフルエンザ関連合併症の発生頻度は、オセルタミビルの 4.6%に対し、XOFLUZA は
    2.8%であり、統計学的な差は認められないものの低い値を示しました。
 安全性に関しては、XOFLUZA は良好な忍容性を示し、安全性上の新たな懸念はありませんで
した。有害事象の発生頻度は、プラセボ(29.7%)ならびにオセルタミビル(28.0%)に対し、
XOFLUZA では統計学的な差は認められないものの低い値(25.1%)を示しました。XOFLUZA
の投与後に認められた主な有害事象は、気管支炎(2.9%)            、下痢(2.7%)
                                                、吐き気(2.7%)
                                                         、副鼻
腔炎(1.9%)でしたが、これらすべてがプラセボに比べ低い発現率でした。
【インフルエンザについて】
 インフルエンザの世界的な流行は今なお公衆衛生上の懸念であり、既存の治療法より優れた新
薬が切望されています。世界的には、インフルエンザの流行により年間 300~500 万人が重症化
し、65 万人が亡くなると報告されています 8, 9, 10, 11, 12。
 米国では、    毎年人口の 3~11%がインフルエンザに罹患し、       重症化し入院や死亡に至る場合もあ
ります  13。2010 年以降、年間 930~49,000 万人がインフルエンザに罹患し、そのうち 14~96 万

人が入院し、1 万 4 千~7 万 9 千人が死亡したことが報告されています 14。
          2         65
 一般的に、 歳未満の子供、 歳以上の高齢者、           妊婦および、   心疾患、 肺疾患、代謝性疾患 (例:
糖尿病) 免疫機能不全等の基礎疾患を持つ方は重症化および合併症を起こしやすいハイリスク患
      、
者に含まれます 15。


参考:
1. 2018 年 10 月 4 日開示
   「バロキサビル マルボキシルの臨床試験結果の学会発表について-IDWeek 2018 にて、重症
   化および合併症を起こしやすいリスク要因をもつインフルエンザ患者を対象とした第 III 相臨
   床試験(CAPSTONE-2)の良好な結果を発表-」
2. 2018 年 10 月 25 日開示
   「XOFLUZATM (一般名:バロキサビル マルボキシル) の米国における承認取得について-合
   併症のない急性のインフルエンザ感染症治療を適応として-」
3. T. Noshi et al. In Vitro Characterization of Baloxavir Acid, a First-in-Class Cap-Dependent
   Endonuclease Inhibitor of the Influenza Virus Polymerase PA Subunit. Antiviral Research
   2018;160:109-117.
4. K.Taniguchi et al. Inhibitory Effect of S-033188, a Novel Inhibitor of Influenza Virus Cap-
   Dependent Endonuclease, Against Avian Influenza A/H7N9 Virus in Vitro and in Vivo.
   Poster presentation at ESWI, September 2017.
5. K.Taniguchi et al. Inhibitory Effect of S-033188/S-033447, a Novel Inhibitor of Influenza
   Virus Cap-Dependent Endonuclease, Against Highly Pathogenic Avian Influenza Virus
   A/H5N1. Poster presentation at ECCMID, April 2017.
6. 2018 年 3 月 14 日開示
   「抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ TM 錠 10mg・20mg」新発売のお知らせ」
7. 2018 年 7 月 2 日開示
   「新規インフルエンザ治療薬バロキサビル マルボキシルの台湾における製造販売承認申請に
   ついて」
8. http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2017/seasonal-flu/en/          World    Health
   Organization website, Up to 650 000 people die of respiratory diseases linked to seasonal
   flu each year, Accessed December 14, 2017.
9. http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs211/en World Health Organization website,
   Influenza (Seasonal), Accessed January 31, 2018.
10.       Baxter D. Evaluating the Case for Trivalent or Quadrivalent Influenza Vaccines. Hum
   Vaccin Immunother. 2016; 12(10):2712-2717.
11.       https://www.cdc.gov/flu/about/disease/2015-16.htm      CDC      website,   Estimated
   Influenza Illnesses, Medical Visits, Hospitalizations, and Deaths Averted by Vaccination in
   the United State. Accessed April 19, 2017.
12.       Nair H, et al. Global Burden of Respiratory Infections Due to Seasonal Influenza in
   Young Children: a Systematic Review and Meta-Analysis. Lancet. 2011 Dec
   3;378(9807):1917-30.
13.      Tokars JI et al. Seasonal incidence of symptomatic influenza in the United States.
   Clin Infect Dis. 2018 May 2;66(10):1511-1518.
14.      https://www.cdc.gov/flu/about/disease/burden.htm CDC website, Disease Burden of
   Influenza
15.      https://www.cdc.gov/flu/about/disease/high_risk.htm CDC website, People at High
   Risk of Developing Flu–Related Complications, Accessed January 23, 2018.