4507 塩野義薬 2020-06-22 10:00:00
新型コロナウイルスを含む感染症領域のウイルス迅速診断法に関する日本大学、群馬大学、東京医科大学との業務提携について [pdf]
2020 年 6 月 22 日
各 位
会 社 名 塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
代表者名 代表取締役社長 手 代 木 功
(コード番号 4507 東証第一部)
問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
TEL (06)6209-7885
新型コロナウイルスを含む感染症領域のウイルス迅速診断法に関する
日本大学、群馬大学、東京医科大学との業務提携について
- 唾液等のサンプルから 25 分の反応で検出機器を必要とせず目視で判定可能な、高い感度をもつ迅速診断法 -
塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
または「当社」 )は、日本大学、群馬大学、東京医科大学との間におきまして、新型コロナウイル
ス(SARS-CoV-2)を含むウイルスの新規迅速診断法に関するライセンス契約に合意しましたの
で、お知らせいたします。今後、当社は公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、本診
断法の実用化に向けて取り組んでまいります。
SARS-CoV-2 の世界的な蔓延による社会の混乱が続く中、発症者のみならず、未発症者や潜伏
期間にある感染者からの感染拡大が感染制御の上で大きな問題となっています。現在、新型コロ
ナウイルス感染症(COVID-19)患者を診断する検査法としては、鼻腔や咽頭、唾液から採取した
検体からウイルスの核酸を検出する PCR 法 (ポリメラーゼ連鎖反応)や抗原検査キット等が用い
られています。しかしながら、これらの検査法では、専用測定器の必要性や、測定の簡便性、迅
速性、検体採取時の医療従事者の感染リスク等、依然として多くの課題が残っています。そのた
め、これらの課題を解決した高感度かつ安価な診断法が求められています。
日本大学、群馬大学、東京医科大学からなる共同研究チームは、これまでにない全く新しい革
新的核酸増幅法(SATIC 法)によるウイルス迅速診断法の開発に成功しました 1。SATIC 法は、
特定の遺伝子のみならず、変異遺伝子、さらにはタンパク質や代謝物などの生体内分子も、簡便
な手法で特異的かつ高感度に測定できる技術です。 SATIC 法を感染症の原因となるウイルスに
本
適用した迅速診断法は、以下の特徴の全てを兼ね備えています。
・ SARS-CoV-2 やインフルエンザウイルスの感染の有無を、検出機器を必要とせず目視で容
易に判定可能
・ 検体採取から 25 分程度で判定可能
・ 偽陽性反応等の非特異反応がなく、PCR 法と同等の高い感度
・ 鼻咽頭ぬぐいの綿棒のみでなく、唾液や喀痰からの検出が可能であるため、患者の侵襲性
が低く、検体採取に伴う医療従事者の感染の危険性が限りなく低減され、さらに唾液の場
合、患者本人による検体採取も可能
当社は、 2020 年 6 月 3 日に SARS-CoV-2 既感染者数の把握等を目的とした研究用試薬として、
新型コロナウイルス IgG/IgM 抗体検出キットを発売しております 2。一方、今回の診断法では、
COVID-19 やインフルエンザウイルス感染症等の検査時点での感染の有無を短時間で簡便に知る
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ことが可能です。本診断法を実用化した際の適応としては、クリニック等の医療機関・検疫での
感染の有無の把握や、将来的には、海外からの渡航者の感染者のスクリーニングが想定されます。
これまで前述の特徴の全てを併せ持つ検査法はなかったことから、本検査法を活用することによ
り、迅速かつ簡便に、症状のない方を含めた SARS-CoV-2 感染者の診断が行われるようになり、
国内感染者動向をタイムリーに把握できるという公衆衛生学的利点とともに、早期診断による重
症化予防対策や、治療薬の早期投与が可能となる利点があります。
塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「感染症の脅威からの解放」
を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といっ
た感染症のトータルケアに対する取り組みを進めております。当社はパンデミックの早期終息に
よる社会の安心・安全の回復に貢献するために、上記 3 大学をはじめとした産官学での連携を密
にすることで、本迅速診断法の早期実用化に取り組んでまいります。
なお、本件が 2021 年 3 月期連結業績に与える影響は軽微です。
以上
【Signal Amplification by Ternary Initiation Complexes 法(SATIC 法)に関する補足資料 1,2,3】
以下、図1~4 は、SATIC 法の原理と実際の COVID-19 患者さまから提供いただいた検体で
の検査結果を示しております。
図1: SATIC 法の基本原理
(P: Primer、CT: Circular Temperature、THT-HE: ThT derivative、dNTP: deoxyribonucleotide triphosphate)
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図2: 判定までのフロー(手順)
図3: PCR 法による検査結果
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図4: SATIC 法による検査結果
参考:
1. 東京医科大学、日本大学発プレスリリース: 2020 年 5 月 14 日
PCR 法に代わる革新的核酸増幅法を用いた COVID-19 の迅速診断法の開発に成功
2. プレスリリース: 2020 年 6 月 3 日
新型コロナウイルス IgG/IgM 抗体検出キットの研究用試薬としての新発売について
3. H. Fujita et al. Novel one-tube-one-step real-time methodology for rapid transcriptomic
biomarker detection: signal amplification by ternary initiation complexes. Anal. Chem. 88
7137-7144 (2016)
4. H. Fujita et al. Specific Light-Up System for Protein and Metabolite Targets Triggered by
Initiation Complex Formation. Scientific Reports. 15191 (2017)
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