4507 塩野義薬 2020-06-09 11:30:00
抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ(R) ハイリスク患者を対象とした第III相臨床試験結果のLancet Infectious Diseases誌掲載について [pdf]

                                                             2020 年 6 月 9 日
 各   位
                                     会 社 名      塩 野 義 製 薬 株 式 会 社
                                     代表者名       代表取締役社長        手 代 木     功
                                       (コード番号 4507 東証第一部)
                                     問合せ先 広 報 部 長 京 川 吉 正
                                             TEL (06)6209-7885


     抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®(バロキサビル マルボキシル)
          ハイリスク患者を対象とした第 III 相臨床試験結果の
            Lancet Infectious Diseases 誌掲載について

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」
                                           )
は、抗インフルエンザウイルス薬バロキサビル マルボキシル(日本での製品名:ゾフルーザ®)
の、合併症を併発するリスクの高い患者を対象とした第 III 相臨床試験(CAPSTONE-2)の良好
    「Lancet Infectious Diseases」2020 年 6 月 8 日号に掲載されたことをお知らせいたし
な結果が、
ます 1。


 12 歳以上のインフルエンザ関連合併症を併発するリスクの高い患者(糖尿病、喘息または慢性
肺疾患、心疾患などの基礎疾患を有する患者、65 歳以上の高齢者など)2 における CAPSTONE-
2 において、本薬は主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間(インフルエンザ症状が回復す
るまでの時間)をプラセボと比較して有意に短縮しました。
 オセルタミビルとの比較において、インフルエンザ罹病期間は同程度でしたが、B 型インフル
エンザウイルス感染患者における部分集団解析では、本薬はオセルタミビルに対してインフルエ
ンザ罹病期間を有意に短縮しました。また、本薬はプラセボと比較して、気管支炎などのインフ
ルエンザ関連合併症の発生頻度を有意に低減しました。安全性に関しては、本薬は良好な忍容性
を示し、安全性上の新たな懸念はありませんでした。


 本論文の筆頭著者である Northwestern University Feinberg School of Medicine 教授、Michael
G. Ison, MD MS は、「CAPSTONE-2 は 2 つの面で重要です。まず、抗ウイルス療法が、インフ
ルエンザ関連合併症を発症するリスクが高い患者において合併症の発現抑制に有効であることを
示しました。次に、バロキサビル マルボキシルは A 型、B 型インフルエンザウイルス感染患者そ
れぞれに対して、これまでと異なる特徴的な治療効果を示し、中でも、B 型インフルエンザウイ
ルス感染患者に対して、プラセボやオセルタミビルと比較して、より速やかな臨床症状の改善お
よびウイルス量の減少効果を示しました。
                  」と述べられています。


 CAPSTONE-2 の結果は、本薬が合併症を併発するリスクの高い患者に対して効果を発揮する
ことを示すものです。これまで、このような患者を対象とした臨床試験で明確に臨床効果を示し

                                   1 / 5
た薬剤はありません。また本薬は、リスク要因を持たない健常のインフルエンザ患者を対象とし
たグローバル第 III 相臨床試験(CAPSTONE-1)3 においても良好な結果を示しており、患者さ
まのリスク要因の有無によらず、インフルエンザウイルス感染症の治療に貢献することが期待さ
れます。


 本薬の開発および販売は、現在 Roche グループとの提携下で進めており、日本と台湾における
販売は塩野義製薬が、それ以外の国では Roche グループが行います。本薬は日本で承認され、製
品名ゾフルーザ®として販売されています 4。米国では、
                          「12 歳以上の合併症のない急性のインフ
ルエンザウイルス感染症治療」を適応として、2018 年 10 月 25 日に本薬は承認され 5、米国疾病
予防管理センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)のガイドラインにおい
て、12 歳以上の合併症のない発症後 48 時間以内の急性インフルエンザウイルス感染患者に対す
る治療薬として推奨されています 6。
 また、CAPSTONE-2 の結果をもとに、米国食品医薬品局(FDA)に新薬承認追加申請を実施
し、2019 年 10 月 16 日に、本薬が抗インフルエンザウイルス薬として初めて「合併症を併発する
リスクが高い 12 歳以上の患者の発症後 48 時間以内の急性のインフルエンザウイルス感染症治
療」の追加適応を承認されています 7。さらに、米国では、経口懸濁用顆粒剤の製造販売承認申請
と「1 歳以上 12 歳未満の合併症のない急性のインフルエンザウイルス感染症治療」および「1 歳
以上のインフルエンザウイルス感染曝露後予防」を適応とした新薬承認追加申請を実施し、FDA
から受理されており、FDA の審査終了目標日(PDUFA date)は 2020 年 11 月 23 日です 8。


 塩野義製薬は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「感染症の脅威からの解放」
を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といっ
た感染症のトータルケアに対する取り組みを進めております。引き続き本薬の有効性、安全性に
関するデータの収集と解析に鋭意取り組み、適正使用に向けた情報提供活動に努めてまいります。


 なお、本件が 2021 年 3 月期連結業績に与える影響は軽微です。


                                                             以   上




                                2 / 5
【CAPSTONE-2 1 について】
    CAPSTONE-2 は、合併症を併発しやすいリスク要因をもつ 12 歳以上のインフルエンザ患者を
対象に実施した、多施設共同、無作為化、プラセボおよび実薬対照二重盲検比較の第 III 相臨床試
験です。本試験は塩野義製薬がグローバルで実施いたしました。2,184 名の被験者が本薬 40 mg
または 80 mg(体重により決定)の 1 回投与群、プラセボ、またはオセルタミビル 75 mg 1 日 2
回 5 日間投与群に無作為に割り当てられました。そのうち、1,163 名(53%)の被験者でインフル
エンザウイルスへの感染が RT-PCR により確認されました(A/H3N2 型:47.9%、A/H1N1 型:
6.9%、B 型:41.6%)
              。本試験における主なリスク要因は、喘息または肺疾患(39.2%)
                                             、65 歳以
上の高齢者(27.4%)
           、内分泌疾患(13.5%)
                       、心疾患(12.7%)
                                 、極度の肥満(10.6%)でした。本
試験の主な結果は下記のとおりです。
    ゾフルーザは、インフルエンザ罹病期間(インフルエンザ症状が回復するまでの時間)をプ
     ラセボに対して有意に短縮しました。インフルエンザ罹病期間の中央値は、プラセボ群の
     102.3 時間に対し、ゾフルーザ群では 73.2 時間でした(p<0.001)
                                            。
    このうち B 型インフルエンザ感染患者では、ゾフルーザはインフルエンザ罹病期間をプラセ
     ボおよびオセルタミビルに対して有意に短縮しました。インフルエンザ罹病期間の中央値は、
     プラセボ群 100.6 時間、オセルタミビル群 101.6 時間に対し、ゾフルーザ群では 74.6 時間で
     した。
    喘息または慢性肺疾患といった基礎疾患を有する患者において、インフルエンザ罹病期間を
     プラセボに対して有意に短縮しました。インフルエンザ罹病期間の中央値は、プラセボ群で
     110.2 時間に対し、ゾフルーザ群では 74.6 時間でした。
    ゾフルーザは、体内からのウイルス排出期間をプラセボおよびオセルタミビルに対して有意
     に短縮しました。体内からのウイルス排出期間の中央値は、プラセボ群 96.0 時間、オセルタ
     ミビル群 96.0 時間に対し、ゾフルーザ群では 48.0 時間でした。(p<0.001)
    ゾフルーザは、インフルエンザ関連合併症の発生頻度をプラセボに対して有意に低減しまし
     た。インフルエンザ関連合併症の発生頻度は、プラセボ群で 10.4%(40/386 名)に対し、
     ゾフルーザ群では 2.8%(11/388 名)でした(p<0.05)
                                      。
    ゾフルーザの投与後に認められた主な有害事象は、下痢(2.7%)
                                   、気管支炎(2.9%)、吐き気
          、副鼻腔炎(1.9%)でした。ゾフルーザは良好な忍容性を示し、安全性上の新たな懸
     (2.7%)
     念はありませんでした。
    本薬に対し感受性が低下した PA/I38 アミノ酸変異株に関する情報
        検出頻度について
         本薬投与後に検出された PA/I38 アミノ酸変異株の検出頻度は 5.2% (15/290 株) でした。
         インフルエンザ亜型別の解析では、A(H3N2) で 9.2% (13/141 株) 、A(H1N1) で 5.6%
         (1/18 株)、 B 型で 0.8% (1/131 株)でした。
        臨床症状への影響について
         本薬投与後に PA/I38 アミノ酸変異株が検出された患者群の罹病期間中央値は 65.2 時間、
         一方、同変異株が検出されなかった患者群の罹病期間中央値は 76.8 時間でした。プラセ
         ボ投与群で罹病期間中央値は 100.6 時間であり、同変異株の有無によらず、治療効果が
         確認されました。




                                     3 / 5
【CAPSTONE-1 3 について】
     CAPSTONE-1 は、リスク要因を持たない健常のインフルエンザ患者を対象に行った無作為化,
多施設共同,並行群間,プラセボおよび実薬対照二重盲検比較試験で、計 1,436 人が登録されま
した。本試験においてゾフルーザは、インフルエンザ症状の罹病期間をプラセボに対して有意に
短縮し(中央値:ゾフルーザ 53.7 時間、プラセボ 80.2 時間、p<0.0001)、オセルタミビルと変わ
らない効果を示しました(中央値:ゾフルーザ 53.4 時間、オセルタミビル 53.8 時間)。さらに本
薬は、良好な忍容性と、プラセボおよびオセルタミビルと比較して低い有害事象の発現率を示し
ました(有害事象発現率:ゾフルーザ 20.7%、プラセボ 24.6%、オセルタミビル 24.8%)。
     CAPSTONE-1 試験ならびに第 II 相臨床試験の結果は、New England Journal of Medicine の
2018 年 9 月 6 日号に掲載されています 2。


【ゾフルーザ®について】
     塩野義製薬が創製したゾフルーザは、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害作用によりイン
フルエンザウイルスの増殖を抑制します。本薬は 1 回の経口投与で治療が完結します。ゾフルー
ザは非臨床試験において、オセルタミビルに耐性を示すウイルスおよび、鳥インフルエンザウイ
ルス(H7N9, H5N1)を含むインフルエンザウイルスに抗ウイルス効果を示しました 9, 10。
     本薬は、臨床試験にて確認された本薬に対し感受性が低下した PA/I38 アミノ酸変異株について
のデータも含め、各国規制当局による審査を受け、日米を含め複数の国で承認されております。
米国における詳細は XOFLUZA ホームページを、PA/I38 アミノ酸変異株についてはこれまでの
リリース(リリース①、リリース②)をご覧ください 11, 12。塩野義製薬では引き続きあらゆる面
から同変異株に関するデータを集積し、当局にデータを提供すると共に、学会や科学論文等を通
じて最新の知見を医療関係者の皆様に提供してまいります。
     Roche グループは、1 歳未満の小児またはインフルエンザ症状が重篤化した入院患者を対象と
したグローバル第 III 相臨床試験、また本薬のインフルエンザウイルス伝播抑制効果について検
証するためのグローバル第 III 相臨床試験を実施中です。また、当社は本薬のインフルエンザウイ
ルス感染症の発症予防効果について検証し、第 III 相臨床試験における良好な有効性および安全
性の結果をもとに、2019 年 10 月 16 日に日本において、インフルエンザウイルス感染症予防に
関する効能・効果追加申請               13、2020   年 3 月 31 日には台湾において成人および 12 歳以上の小児
におけるインフルエンザウイルス感染曝露後予防に関する新薬承認追加申請を実施しております
14。




参考:
1.    Michael G. Ison, MD MS et al. Early treatment with baloxavir marboxil in high-risk
      adolescent and adult outpatients with uncomplicated influenza (CAPSTONE-2): a
      randomised, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Infect Dis 2020; published online
      June 8, 2020: https://doi.org/10.1016/S1473-3099(20)30004-9
2.    米国疾病予防管理センター(CDC)インフルエンザ合併症のハイリスク患者の定義
      CDC website, People at High Risk For Flu Complications
3.    プレスリリース: 2018 年 9 月 6 日




                                             4 / 5
     抗インフルエンザウイルス薬バロキサビル マルボキシル 第 II 相、第 III 相臨床試験結果の
     New England Journal of Medicine 誌掲載について
4.   プレスリリース: 2018 年 3 月 14 日
     抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ TM 錠 10mg・20mg」新発売のお知らせ
5.   プレスリリース: 2018 年 10 月 25 日
     「XOFLUZATM(一般名:バロキサビル マルボキシル)の米国における承認取得について
     -合併症のない急性のインフルエンザ感染症治療を適応として-」
6.   米国疾病予防管理センター(CDC)ガイドライン
     CDC website, Influenza Antiviral Medications: Summary for Clinicians.
7.   プレスリリース: 2019 年 10 月 18 日
     抗インフルエンザウイルス薬 XOFLUZATM の米国における適応追加承認について-合併症
     を併発するリスクが高い患者のインフルエンザウイルス感染症治療を適応として-
8.   プレスリリース: 2020 年 3 月 27 日
     抗インフルエンザウイルス薬 XOFLUZA®の米国における顆粒剤の製造販売承認申請受理お
     よび 2 つの新薬承認追加申請受理について
9.   T. Noshi et al. In vitro Characterization of Baloxavir Acid, a First-in-Class Cap-
     dependent Endonuclease Inhibitor of the Influenza Virus Polymerase PA Subunit.
     Antiviral Research 2018;160:109-117
10. K. Taniguchi et al. Inhibition of avian-origin influenza A(H7N9) virus by the novel cap-
     dependent endonuclease inhibitor baloxavir marboxil. Scientific Reports volume 9,
     Article number: 3466 (2019)
11. プレスリリース: 2019 年 9 月 2 日
     抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®の PA/I38 アミノ酸変異株に関する学会発表につい
     て
12. プレスリリース: 2019 年 9 月 2 日
     抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®の PA/I38 アミノ酸変異株検出に関する特定使用成
     績調査の学会発表について
13. プレスリリース: 2019 年 10 月 16 日
     抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ®のインフルエンザウイルス感染症予防に関する日
     本における効能・効果追加申請について
14. プレスリリース: 2020 年 3 月 31 日
     抗インフルエンザウイルス薬「紓伏效®(ゾフルーザ®)」のインフルエンザウイルス感染症
     予防に関する台湾における新薬承認追加申請について




                                              5 / 5