2678 アスクル 2019-07-17 18:10:00
ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ [pdf]
2019 年7月 17 日
各 位
会 社 名 ア ス ク ル 株 式 会 社
代 表 者 名 代表取締役社長 CEO 岩田彰一郎
(コード番号:2678 東証一部)
問 合 せ 先
役職・氏名 執行役員 CFO 玉井 継尋
TEL 03-4330-5130
ヤフー株式会社からの社長退陣要求と、アスクルからの提携解消協議申入れのお知らせ
当社は、当社株主ヤフー株式会社(以下「ヤフー社」)との間の業務・資本提携関係(以下「本提携関係」)
を解消すべく、ヤフー社に対し、協議の申入れを行いましたので、お知らせいたします。
1.本件経緯
当社とヤフー社は、2012 年 4 月に業務・資本提携契約を締結し、ヤフー社は当社の議決権の 42.47%(現
在約 45%)を保有する筆頭株主となりました。また、この業務・資本提携に基づく事業として、当社は BtoC
通販 LOHACO を立ち上げました。その後、2015 年 5 月にヤフー社による当社の IFRS 連結を契機に業務・資本
提携契約を更改し、現在に至っています。
2019 年 1 月、ヤフー社から当社に対し、LOHACO 事業のヤフー社への譲渡の可否、および譲渡が可能な場
合の各種条件について検討するよう要請がありましたところ、翌月、当社は独立役員会および取締役会の審
議を経て、ヤフー社への譲渡の提案は行わないことを決定し回答しました。
同年 6 月 27 日、ヤフー社川邊社長が当社へ来訪、岩田社長に対し退陣要求するとともに、ヤフー社が 8 月
2 日の当社定時株主総会において岩田社長再任へ反対することの意向表明がありました。当社は、指名・報
酬委員会の審議等、当社所定の手続きに従い、7 月の当社取締役会において、指名・報酬委員会の提案に基
づき現任取締役全員の再任案を決議しました。
当社は、この半年に渡り、当社とヤフー社との経営思想の違い、業務・資本提携契約で合意したイコール
パートナーシップ精神の喪失、上場企業としての独立性の侵害が顕著になったことを鑑み、もはや当初本提
携関係によって実現しようとしていた個人向けECを両社共同で成功させるという目的を達成することが
できなくなったと考え、本提携関係の解消を申し入れることといたしました。
本リリース添付別紙のとおり、7 月 10 日以降、当社からヤフー社に質問書、本提携関係解消の協議開始申
入れ書等を交付し、ヤフー社からは当社株式の譲渡先・譲渡条件について質問がありましたので、当社はこ
れに回答しております。
なお、当社の今期(2020 年 5 月期)連結業績は、営業利益 88 億円(前期比 194.7%)の大幅増益を見込ん
でおります。2017 年からの物流センター火災、宅配クライシスの影響を完全に克服し、当社の BtoB 事業、
BtoC 事業、ロジスティクス事業の 3 事業のシナジーを最大化する EC の実現に引き続き邁進していきます。
※2019 年 5 月期決算説明資料(2019 年 7 月 3 日発表)
https://pdf.irpocket.com/C2678/Uxy1/yH62/a8Am.pdf
2.本件の問題点
(1)業務・資本提携契約の精神に反すること
両社間の業務・資本提携契約には、当社が上場会社でありながら、ヤフー社という実質的な支配株主が存
1
在することとなるに当たり、当社の少数株主の皆様の利益が毀損されることがないよう、締結当時、当社の
社外役員を中心に構成された特別委員会、独立委員会の審議を踏まえ、ヤフー社と交渉した結果、以下のよ
うな特徴的条件を織り込んでおります。
①当社および LOHACO の独立性に関する条項
冒頭、目的・精神に関する条項において、
「イコールパートナーシップの精神」や、ヤフー社が、当社およ
び LOHACO 事業の独立性を最大限尊重することが明記されています。また、LOHACO の運営をヤフー社が運営
する Yahoo! ショッピング、Yahoo! オークションと区別するという条項も置かれています。
②当社による取締役の受入れに関する条項
ヤフー社は、当社の常勤取締役 1 名、および非常勤取締役 1 名の指名権を有する旨が定められています。
一方、当社のその余の取締役候補者に関しては、当社が設置する指名・報酬委員会の答申を最大限尊重の上、
当社の取締役会において決定することとされています。
③明確な目標設定と誠実協力義務に関する条項
「お客様に最高の E コマースを提供する」という両当事者の壮大な目標を LOHACO において具現化するた
め、ヤフー社と協議の上、当社が、主体的、自主的に各時点において最善と考える施策を講じることとし、
ヤフー社は、これに誠実に協力する旨が定められています。
ヤフー社の一連の行為は業務・資本提携契約の精神に反するものであり、当社としては本提携関係の解消
が最適な解決と考えます。
(2)ガバナンスプロセスを逸脱する行為が行われたこと
当社は独立役員の確保等、適切なコーポレート・ガバナンス体制を積極的に整備してきており、都度適切
な経営判断を実施しております。健全なコーポレート・ガバナンス体制は、持続的成長、中長期的な企業価
値の向上に欠かせないものと考えております。
当社は、前述のとおり圧倒的多数である約 45%の株式を保有する実質的な支配株主であるヤフー社が存す
る一方、上場会社として、少数株主の利益にも配意した適切なコーポレート・ガバナンスの体制を実現する
べく、取締役 10 名中、社外取締役 5 名(内独立役員 3 名)を選任すると共に、指名・報酬委員会を設置して
おり、株主総会に提出する取締役の選任に関する議案に関しては、取締役会による決定に先立ち、同委員会
の答申を受け、これを最大限尊重することとしております。
なお、別紙のとおり、当社独立役員会からも、本提携関係を見直すべきとの意見書が当社に提出されており
ます(本件業務・資本提携契約に基づく売渡請求権の行使については現在決まっておりません)。
3.公表にいたった理由
今般、当社としては
①本件が約 45%の株式の異動に関すること、業務・資本提携契約解消に関すること、当社岩田社長の再任
の否決可能性に関することから、株主の皆様にとって重大な情報であり速やかに開示すべき
②ガバナンスの観点からも看過しがたい支配株主による強引な株主権の行使であり、当社各ステークホー
ルダーに開示すべき
③目前に株主総会が迫っており、議決権を行使される株主の皆様にとって重要な情報であり会社として情
報提供すべき
と考え、本件の公表にいたりました。本件の推移につきましては、今後も、適時適切に公表する所存でお
ります。
以上
2
<参考資料>
1.当社第 56 回定時株主総会招集通知
https://pdf.irpocket.com/C2678/Uxy1/dJ1G/TjN3.pdf
2.これまでの経緯(詳細)
2012 年 4 月 27 日 当社・ヤフー社間で「業務・資本提携契約」締結。
同年 10 月 22 日 個人消費者向け通販「LOHACO」事業開始。
2015 年 5 月 19 日 「業務・資本提携契約」を一部更改。
2019 年 1 月 15 日 ヤフー社より当社へ、LOHACO 事業のヤフー社への譲渡の可否、および譲渡可
能な場合の各種条件について検討依頼。
同年 2 月 26 日 当社独立役員会(※1)、当社取締役会で上記について検討。
ヤフー社への譲渡は行わず、新たな戦略(※2)に基づき事業継続すること
を当社取締役会で決議。同日、ヤフー社へ回答。ヤフー社からは、真摯かつ
誠実な検討に感謝する旨の返答。再度検討依頼はなし。
同年 5 月 8 日 当社指名・報酬委員会(※3)において、次期取締役候補者について決議。
当社事業進捗状況を鑑み、現経営陣による体制続行が最適と判断し現任取締
役すべてを再任する議案を第 56 回定時株主総会に上程することを取締役会
に答申する方針。
同年 6 月 5 日 当社取締役会において、指名・報酬委員会が次期取締役候補者について説
明。小澤取締役、輿水取締役(※4)を含め、一切の異論提出はなかった。
同年 6 月 27 日 ヤフー社川邊社長が当社へ来訪、岩田社長に対する退陣要求。
同年 7 月 1 日 岩田社長よりヤフー社に対し、当社所定の手続きに従い、自身の進退は指
名・報酬委員会の答申を踏まえて取締役会に諮る旨を回答。
同年 7 月 3 日 当社指名・報酬委員会において、小澤取締役によるヤフー社の立場での意見
陳述も踏まえた上で、同年 5 月 8 日に決議された方針を維持することを再度
決議。
同日、当社取締役会において、第 56 回定時株主総会に上程する取締役選任
議案について決議。小澤取締役、輿水取締役は棄権。賛成多数で承認可決。
同年 7 月 10 日 当社独立役員会から当社に対し、本件に関する意見書(別紙)提出。
同年 7 月 10 日 当社からヤフー社に対し、第 56 回定時株主総会に関する質問書を提出。
同年 7 月 12 日 当社からヤフー社に対し、本提携関係の解消について協議開始を申入れ。
同年 7 月 16 日 ヤフー社から当社に対し質問書に対する回答。また、本提携関係解消につい
ての協議開始を検討するにあたっての質問。
同年 7 月 17 日 ヤフー社が当社の第 56 回定時株主総会において、当社岩田社長の再任に反
対の議決権を行使する予定である旨を公表。
同年 7 月 17 日 当社からヤフー社に対し、本提携関係解消についての協議開始にかかる質問
に対する回答書を提出。
※1:独立役員である社外取締役 3 名、および社外監査役 3 名により構成される任意設置の委員会。
※2:2018 年 12 月 14 日第 2 四半期決算発表時に広報した LOHACO 事業の新戦略。当社にしかできない「独自価値 EC」とし
て経営の舵を切ることを発表。なお、当該新戦略の策定にかかる取締役会の審議に際し、ヤフー社から派遣されてい
る小澤取締役、輿水取締役は異議を述べていなかった。
※3:社内取締役 1 名、独立役員である社外取締役 3 名、独立役員である社外監査役 1 名、社外有識者 1 名により構成され、
社外取締役が委員長を務める任意設置の委員会。
※4:ヤフー社から派遣されている小澤取締役、輿水取締役。
3
<別紙>
2019 年 7 月 10 日
アスクル株式会社取締役会 御中
アスクル株式会社独立役員会
社外取締役 戸田一雄
同 宮田秀明
同 斉藤 惇
社外監査役 安本隆晴
同 北田幹直
同 渡辺林治
当独立役員会としては、LOHACO 事業の譲渡に関するヤフー株式会社(以下「Y 社」
といいます。 とのやりとり及び今般の Y 社からの岩田社長退陣要求を踏まえ、
) 今後の本
件業務・資本提携契約の維持・継続について重大な懸念を抱いており、以下のとおり意
見を申し述べます。
1 LOHACO 事業の譲渡に関する Y 社とのやりとり
アスクル株式会社(以下「当社」といいます。)は、Y 社との間で、それぞれの企業
価値の最大化を実現するべく、イコールパートナーシップの精神の下、当社が運営す
る B to C 事業「LOHACO」の維持・発展等を目標として、業務・資本提携契約を締
結し(2012 年 4 月 27 日締結、2015 年 5 月 19 日更改。以下「本件業務・資本提携契
約」といいます。、LOHACO 事業を運営してきました。
)
しかしながら、Y 社は当社に対し、本年(2019 年)1 月 15 日付「LOHACO につい
てのご提案のお願い」を送付し、LOHACO 事業の Y 社への譲渡の可否及び譲渡可能
な場合の各種条件等について議論・意思決定の上、書面にて回答するよう求めてきま
した。
当社取締役会は、当独立役員会に対して LOHACO 事業の Y 社への譲渡の可否等に
ついて諮問し、当独立役員会は、真摯に検討した結果、①LOHACO 事業については、
1
ステアリング・コミッティ1で議論を重ね、2018 年 12 月 5 日の当社取締役会2におい
て審議した上、第 2 四半期決算発表時(同年 12 月 14 日)に LOHACO 事業の戦略変
更を公表し、各種施策の実行を開始したばかりであるため、今は LOHACO 事業の譲
渡を検討するべき時期ではない、②当社としては、今後の LOHACO 事業が目指す EC
像を明確に打ち出していくべきである、との意見を申述いたしました。
当社は、2019 年 2 月 26 日開催の取締役会3において、当独立役員会の意見を踏まえ
て検討の上、当社から LOHACO 事業の譲渡を提案するという結論に至らなかった旨
を回答することを決議し、同日、Y 社に対し回答書を送付しました。それに対し、Y 社
から「真摯かつ誠実にご対応頂きまして誠にありがとうございました」との文書によ
る回答がありました。その後、Y 社から何らの反論あるいはご提案をいただいており
ません。
2 Y 社からの岩田社長退陣要求
当社では、昨年(2018 年)12 月 14 日に公表した LOHACO 事業の戦略(事業再構
築)に従い、各種施策を着実に実行してきました。LOHACO オリジナル商品の開発、
メーカーとの協働による E コマースならではのデザイン商品等の独自価値商品の開発
強化や、配送料無料となるご注文金額の値上げ等の戦略シフトにより、2019 年 5 月期
の第 3 四半期から第 4 四半期にかけて LOHACO 事業を含む EC 事業の営業利益も順
調に拡大しています。
当社指名・報酬委員会では、このような LOHACO 事業再構築の取組みが着実に進
んでおり、営業利益の改善が図られつつあることを確認した上、次期取締役候補者と
しては現経営陣の体制を続行することが最適であると判断し、2019 年 5 月 8 日の指
名・報酬委員会において、現任取締役 10 名を再任する方針とすることを決議し、同年
7 月 3 日開催予定の取締役会に指名・報酬委員会の意見として上申することを決定い
たしました。
ところが、Y 社は、2019 年 6 月 27 日に至って突然、Y 社社長及び法務本部長が来
1
ステアリング・コミッティとは、本件業務・資本提携契約に基づき、当社及び Y 社の代表取
締役又は両名が代理として指定するものをメンバーとして設置される組織であり、本業務提
携における重要な事項について協議・検討し、その進捗状況を共有することを目的として、
原則として毎月 1 回開催されています。
2
2018 年 12 月 5 日の取締役会には Y 社から当社に派遣されている取締役 2 名も参加してお
り、何ら異論を唱えていませんでした。
3
2019 年 2 月 26 日の取締役会では、プラス株式会社代表取締役社長である非常勤取締役が反
対し、Y 社から派遣されている取締役 2 名は欠席しました。
2
社して岩田社長と面談し、①Y 社としては、当社の定時株主総会において岩田社長を
含む取締役選任議案が提出された場合には反対する旨を経営会議で決定したこと、②
次期社長は当社側において決めてほしいこと、③同年 7 月 3 日の取締役会において岩
田社長を含む取締役選任議案を上程した場合には、 社から派遣している取締役 名)
Y (2
は棄権し、Y 社は株主総会で反対する旨をプレスリリースすることになると思われる
こと、を通告し、岩田社長の退陣を要求してきました。
岩田社長は、Y 社社長に対し、自身の進退は指名・報酬委員会に一任する旨を回答
し、当社指名・報酬委員会では、2019 年 7 月 3 日開催の委員会において、Y 社派遣の
取締役(1 名)から説明を聞いた上、当初の方針どおり、現任取締役 10 名を再任する
ことが最適であると判断し、その旨再決議いたしました。
そして、当社は、同日開催の取締役会4において、指名・報酬委員会からの答申を踏
まえ、現任取締役 10 名を候補者とする取締役選任議案を定時株主総会に上程する旨
を決議しました。
なお、Y 社は、岩田社長の退陣を要求してきた理由について、業績の低迷を指摘す
るのみで LOHACO 事業の切り離しについては特段言及していません。ただし、岩田
社長が、当社第 2 位の株主であるプラス株式会社(以下「P 社」といいます。)の代表
取締役社長(かつ当社非常勤取締役)と面談した際、同氏より、 社から P 社に対し、
Y
LOHACO 事業を当社から切り離すためには岩田社長に退任いただく必要があり、
LOHACO 事業の切り離しの時期は年内という話があったという説明を受けたとのこ
とです。
3 当独立役員会の意見
(1) 以上に述べた LOHACO 事業の譲渡に関する Y 社とのやりとり及び Y 社から
の岩田社長退陣要求の経緯を見る限り、当社と Y 社の間では、LOHACO 事業の
今後の運営方針について大きな見解の対立があるだけでなく、より良い運営方針
を目指して建設的に意見交換を行い協力していくことが困難な状況に立ち至っ
ていると評価せざるを得ません。
当社経営陣におかれては、業績の低迷に関する大株主からの指摘に真摯に耳を
傾ける必要がある一方で、LOHACO 事業に関しては、当社及び Y 社は本件業務・
資本提携契約に基づき協力するべき責務を負っています。にもかかわらず、両社
が参加するステアリング・コミッティで議論を重ねて LOHACO 事業の再構築戦
4
2019 年 7 月 3 日の取締役会では、P 社代表取締役社長である非常勤取締役が反対し、Y 社か
ら派遣されている取締役 2 名は棄権しました。
3
略を決定・公表してからわずか 1 ヶ月後に LOHACO 事業の譲渡を検討するよう
求めてくるなどといった Y 社の対応は、本件業務・資本提携契約の精神にもとる
ものと考えられます。
Y 社は、当社からの「LOHACO 事業の戦略変更を公表して各種施策の実行を
開始したばかりであるため、今は LOHACO 事業の譲渡を検討するべき時期では
ない」との回答に対し、
「真摯かつ誠実にご対応頂きまして誠にありがとうござい
ました」と回答し、その後、当社の経営方針に対し、具体的な代替案の提示など
を行うことはありませんでした。その間、当社では、指名・報酬委員会において
次期取締役候補者の検討を行い、現経営陣の体制を続行することが最適であると
判断し、指名プロセスを進めておりました。
Y 社は、当社に派遣している取締役を通じて、当社が指名・報酬委員会におけ
る次期取締役候補者の検討を進めている経緯を了知しているにもかかわらず、定
時株主総会に上程する取締役選任議案を決定する指名・報酬委員会及び取締役会
の開催予定日(2019 年 7 月 3 日)の直前に突如として岩田社長の退陣を要求し
てきたものであり、まさに数の論理で上場企業たる当社の指名・報酬委員会によ
るプロセスを踏みにじろうとしたものです。本件業務・資本提携契約第 3.2 条第
3 項では、当社取締役選任に係る議案は、当社が設置する指名・報酬委員会の答
申を最大限尊重して当社取締役会で決定すると定められていますが、今般の Y 社
による岩田社長退陣要求は上記条項の趣旨に反するばかりでなく、上場企業とし
ての当社におけるガバナンス体制を全く尊重していないものと言わざるを得ず、
極めて遺憾であります。
(2) 当独立役員会としては、いかに本件業務・資本提携契約による制約があるとは
いえ、Y 社が今後 LOHACO 事業をどのように経営する方針なのかを一切明らか
にしないまま、LOHACO 事業の Y 社への譲渡を検討するよう求め、それに応じ
ない岩田社長の退陣を要求する、それも指名・報酬委員会のプロセスを無視して
定時総会直前に(しかも定時総会における反対をちらつかせて)要求するといっ
た Y 社の対応については、極めて不誠実であると考えます。
一連のやりとりを見る限り、当社と Y 社の間では、LOHACO 事業の再構築に
向けた建設的な協議・協力を行うことが難しい状況に立ち至っており、本件業務・
資本提携契約の目的の達成は著しく困難になったものと認められます。当社経営
陣としては、可及的速やかに Y 社との業務・資本提携関係の見直し(本件業務・
資本提携契約に基づく売渡請求権の行使の是非を含む。 を検討し、 社と交渉す
) Y
るべきであると考えます。
4
(3) LOHACO 事業の Y 社への譲渡に関しては、Y 社から具体的な提案がなされて
いない現時点において、当独立役員会として、当社が現在進めている LOHACO
事業の再構築を実行する場合と LOHACO 事業を譲渡する場合のいずれが当社
の企業価値向上に資するのかについて明確な比較検証に基づく判断を示すこと
はできません。
ただし、当独立役員会としては、LOHACO 事業の Y 社への譲渡については、
支配株主との利益相反取引に該当すること、さらには競業ビジネスを営む企業と
の取引であることに十分に留意して検討を進める必要があると考えます。
特に、①当社の行っている B to B 事業と LOHACO 事業は、車の両輪のように
密接不可分の関係にあり、そもそも分離することは困難である上、②LOHACO
事業を Y 社へ譲渡することで当社に残された B to B 事業の弱体化を招くリスク
が高いことなどの事情を勘案すると、
LOHACO 事業の Y 社への譲渡については、
Y 社以外の少数株主の利益保護という観点から慎重に検討する必要があります。
LOHACO 事業はここ数年赤字が継続していますが、E コマース事業という将
来性のある事業分野であり、2018 年 12 月に公表した LOHACO 事業の戦略(事
業再構築)に従って各種施策を実行した結果、2019 年 5 月期の下半期には営業
利益が着実に回復しつつあります。このような実態を正しく評価することなく、
短期的な視点で LOHACO 事業を Y 社に譲渡してしまった場合には、長期的に見
た当社企業価値を大きく毀損し、Y 社以外の当社少数株主の利益を侵害する可能
性を否定できません。
当社経営陣(仮に本年定時株主総会において現経営陣の入れ替えが行われた場
合には、入れ替え後の当社経営陣)におかれては、支配株主である Y 社との間で
LOHACO 事業の譲渡について交渉するに当たり、当社の企業価値向上に資する
かどうか、当社少数株主の利益を侵害するものでないかどうかを慎重に検討する
べきであり、かかる検証・検討が不十分であり、あるいは検討の結果としての判
断が不合理であった場合には、取締役としての任務懈怠に該当することに留意す
る必要があります。
以上
5