2397 DNAチップ研 2020-07-31 17:00:00
疾病診断用プログラム「EGFRリキッド遺伝子解析ソフトウェア」の高度管理医療機器製造販売承認のお知らせ [pdf]
2020 年7月 31 日
各位
東 京 都 港 区 海 岸 一 丁 目 1 5 番 1
株 式 会 社 D N A チ ッ プ 研 究 所
代 表 取 締 役 社 長 的 場 亮
(コード番号 : 2397 東証第2部)
電 話 番 号 : 03-5777-1700(代表)
疾病診断用プログラム「EGFR リキッド遺伝子解析ソフトウェア」の
高度管理医療機器製造販売承認のお知らせ
~患者に優しい遺伝子検査でがんの精密医療に貢献~
2019 年 7 月 10 日付で開示いたしました「EGFR リキッド薬事承認申請に関するお知らせ」に
ついて、この度、厚生労働省より承認されましたので、以下の通りお知らせいたします。
【概要】
株式会社DNAチップ研究所(代表取締役社長:的場亮)は、2020 年 7 月 31 日に、癌組織又
は血漿から抽出した DNA 中の EGFR 遺伝子変異(エクソン 19 欠失および L858R)を検出し、
EGFR チロシンキナーゼ阻害剤(ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩又はアファチニブマレイン
酸塩)の非小細胞肺癌患者への適応を判定するための補助に用いる疾病診断用プログラム
(販売名「EGFR リキッド遺伝子解析ソフトウェア」)の高度管理医療機器製造販売承認を取得
したことをお知らせいたします。本品は、奈良先端科学技術大学院大学と大阪国際がんセン
ターの研究成果をもとに開発したもので、コンパニオン診断*1 として昨年 7 月に厚生労働省へ
製造販売承認を申請し、この度、承認されました。
肺がんの種類の一つである非小細胞肺がん*2 では、遺伝子変異の種類によってがんの特徴
が異なることが知られており、その遺伝子の種類に特異的に作用する薬剤開発が進められて
きました。とくに日本人では、非小細胞肺がんの中で、EGFR(上皮成長因子受容体)遺伝子
変異が 5 割程度見られるという報告があり、遺伝子検査を行うことは非常に重要です。
一般にがんの遺伝子検査では生検(検査のためがん組織を採取する操作)でがん組織を
取得する必要がありますが、この方法は患者の苦痛を伴い、また人体への侵襲が問題になる
ケースがあります。しかし、がん患者の血液中に存在する肺がん細胞から放出された血中腫
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瘍 DNA(ctDNA)*3 を解析することで、患者負担を軽減したうえで変異を検出することが可能に
なりつつあります。このような血液を用いたがん遺伝子検査はリキッドバイオプシー*4 とよばれ、
現在、世界中で盛んに研究開発が行われています。
本検査もリキッドバイオプシーに数えられ、次世代シークエンス技術*5 を駆使して、血液中の
EGFR 遺伝子を 1 万分子以上解析して変異の有無を探索します。そのため、従来の技術では
検出が難しかったわずかな変異でも検出することが可能です。変異が検出されることにより、
薬を使用できる可能性が高まります。日本では年間 5 万件以上(推定)の EGFR 遺伝子検査
が行われています。本検査を上市することにより、個人や病態に応じて最適な医療を提供する
“精密医療(Precision Medicine)*6”への貢献が期待されます。
DNAチップ研究所では、引き続き、本検査の保険収載を目指すとともに、次世代シークエン
ス技術による複数のドライバー遺伝子に対するがん遺伝子パネル検査*7 を開発し、医療現場
に届けられるよう事業化に努めてまいります。
検査概要
販売名:EGFR リキッド遺伝子解析ソフトウェア
一般的名称:体細胞遺伝子変異解析プログラム(抗悪性腫瘍薬適応判定用)
対象国:日本
対象検体:非小細胞肺癌患者の血液または未固定組織(手術検体、生検)
対象遺伝子変異:エクソン 19 欠失、L858R
コンパニオン診断対象薬剤:ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩、アファチニブマレイン酸塩
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【解説】
1. 背景と目的
ゲフィニチブ(商品名:イレッサ)、エルロチニブ塩酸塩(同:タルセバ)、アファチニブマレイ
ン酸塩(同:ジオトリフ)、オシメルチニブメシル酸塩(同:タグリッソ)、ダコミチニブ水和物(同:ビ
ジンプロ)といった、上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)*8 は、EGFR
に活性化変異(エクソン 19 欠失、L858R など)がある非小細胞肺がん(肺がん患者の 90%以
上を占める)患者にのみ効果があります。このため、EGFR 遺伝子変異検査は進行肺がん治
療に必須であり、医療現場で薬剤を選択し、投与するために不可欠なコンパニオン診断となっ
ています。検査では、肺生検で採取されたがん組織を用いますが、肺がんは他臓器のがんに
比べて腫瘍組織の採取が難しく、侵襲性が高いです。こうした高侵襲な検査を避けるため、血
液を使ったコンパニオン診断技術の開発が世界中で進められています。
また、EGFR-TKI の投与を続けていくと、当初は薬が効いても、がん細胞がその薬に対して
耐性を持つようになり、最初に投与した薬が効かなくなってしまうことがあります。その場合、薬
に対する耐性を持ったがん細胞の約半数において EGFR の別の変異(T790M 耐性変異等)
を持つようになります。しかし、薬の耐性が発生した場合、再発巣や転移巣の生検は非常に困
難を極めます。そのため、病態モニタリングや耐性変異用 EGFR-TKI 選択のために、生検で
はなく血液を用いた遺伝子変異検査へのニーズは高く、リキッドバイオプシーを用いた検査技
術の研究開発は 2005 年頃から広く行われてきました。
EGFR 遺伝子検査を非侵襲性の血液検査で代替できれば、この領域の実地臨床に大きな
進歩をもたらすことになります。がん患者の血液中には、がん細胞から遊離した DNA(血中腫
瘍 DNA;circulating tumor DNA;ctDNA)が存在します。しかし、ctDNA は極微量しか含まれて
いないため、既存の手法に基づく遺伝子変異の検出は非常に困難で、微量変異を検出する
技術の開発が必須でした。
2.研究開発と申請までの経緯
次世代シークエンシング技術(NGS)は遺伝情報を解析する高度な技術で、個人の全ゲノム
配列(全遺伝情報)でも低コストで得ることができます。個人の全ゲノムを解析する代わりに、肺
がん患者血液中の EGFR 遺伝子断片のみを多数(実際には1万分子以上)解析して変異を探
索すれば、変異が低頻度でも検出することが可能です。従来の検査技術では 5%の変異がな
いと検出できませんが、NGS では、例えば、1 万分子解析すれば 0.01%の変異でも検出できま
す。奈良先端科学技術大学院大学の加藤菊也特任教授―当時大阪府立成人病センター
(現大阪国際がんセンター) 研究所長―は 2013 年にこの検出技術を開発しました。
新しい技術を開発したとしても、実際に使えるかどうかは、肺がん患者で試験を行わなけれ
ばわかりません。加藤特任教授と大阪国際がんセンター副院長の今村文生(当時大阪府立成
人病センター呼吸器内科主任部長)は 288 名の肺がん患者について従来の検査法(肺がん
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組織の生検)と新しい技術(血液を使用)を比較し、「十分実地臨床で使用可能」な成績を得る
ことができました。この試験は 2013 年から 2015 年にかけて行われました。また 2018 年には大
阪国際がんセンター呼吸器外科(岡見次郎主任部長、東山聖彦副院長)の 156 検体による比
較試験を追加しています。
以上の研究成果を踏まえ、上記検出技術について厚生労働省に医療機器製造販売承認申
請をし、この度承認されたものです。
3.今後の展開
現在、非小細胞肺がんにおいては、EGFR 以外に ALK、ROS1、BRAF、MET、NTRK の 5
つの遺伝子に対応した薬剤があり、EGFR-TKI 同様、それぞれの遺伝子の変異検出が薬剤
選択の条件になっています。次世代シークエンサーを用いれば、複数の遺伝子変異の診断を
同時に行う遺伝子パネル検査が可能です。日本でも遺伝子パネル検査が製造販売承認され、
実地臨床で使われ始めています。しかしながら、従来の遺伝子パネル検査を日本の肺がん医
療現場で使用するには、問題があります。米国と異なり、日本では、気管支鏡による生検が中
心で、採取するがん組織の量が少ないため、変異検出感度が重要になるのですが、既存の遺
伝子パネル技術は検出感度が不十分であり、高感度に遺伝子変異を検出することができませ
ん。高感度な検出ができなければ、肺がん患者に対する薬剤投与が遅れることになるため、医
療現場での使用は難しくなります。
これらの問題を解決するために弊社は奈良先端科学技術大学院大学、大阪国際がんセン
ターと共同で、肺がんに特化した高感度のがん遺伝子パネル検査(仮称:肺がんコンパクトパ
ネル)を開発中です。従来のパネル検査は、多数の遺伝子を一括処理して解析するために効
率が悪い点が問題になっていましたが、肺がんコンパクトパネルは遺伝子を小グループに分
け、分割処理することにより無駄を省き、低コストと高感度を実現しています。
DNAチップ研究所は、今後も遺伝子解析(DNA、RNA)を中心とした診断技術を通じて、世
界のヘルスケア分野に貢献できるよう、様々な病気の判定や、薬剤効果判定、さらには予防
医療等のサービスの開発に努めてまいります。
本年度の業績への影響については、発表している本年度業績見通しにおり込み済です。
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【用語解説】
*1 コンパニオン診断:
EGFR-TKI に対応する EGFR 遺伝子検査のように、特定の薬剤を投与するためにあら
かじめ行う遺伝子変異を検出する検査。
*2 非小細胞肺がん:
最も多い肺がんのタイプで、全肺がんの 90%以上を占める。肺がんには非小細胞肺が
ん以外に小細胞肺がんや大細胞肺がんがある。
*3 血中腫瘍 DNA、循環腫瘍 DNA(Circulating Tumor DNA):
がん患者の血液中に存在する腫瘍細胞から放出された遊離 DNA(cell-free DNA;
cfDNA)。
*4 リキッドバイオプシー:
がん患者の血液中にはがん細胞から放出された遊離 DNA があり、高感度な検出技術を用
いれば、この遊離 DNA を用いて遺伝子検査をすることが可能。血液を用いたがん遺伝子検査
はリキッドバイオプシー(体液を用いた生検)とよばれ、生検の侵襲を回避できるほか、がんの
早期発見にも役立つ可能性があるため、現在世界中で盛んに研究開発が行われている。
*5 次世代シークエンス・次世代シークエンサー(Next Generation Sequencing / Sequencer;
NGS):
遺伝情報を解析する高度な技術で、個人の全ゲノム配列(全遺伝情報)でも低コストで得る
ことが可能(現在一人当たり 10 万円)。EGFR リキッドでは全ゲノムを一回解析するかわりに、
EGFR 遺伝子のみを 1 万分子以上解析して変異を探索するため、目的の遺伝子変異が低頻
度でも検出することを実現している。
*6 精密医療(Precision Medicine):
遺伝子変異に基づいて治療法を個別に決定する新しい医療コンセプト。一人一人に適した
最適な医療を指す。米国のオバマ前大統領によって一般教書演説で取り上げられて以降、頻
繁に用いられるようになった概念であり、次世代シークエンスといった遺伝子解析技術を駆使
し、適切な薬剤を投与することを指す。
*7 遺伝子パネル検査:
多数の遺伝子の変異を次世代シークエンサーで同時検出する検査。使用用途はコン
パニオン診断とゲノムプロファイリングに大別され、ゲノムプロファイリングは標準治療の効
かなくなった患者の治療方針決定の補助に用いられる。
*8 上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤( Epidermal Growth Factor Receptor
Tyrosine Kinase Inhibitor; EGFR-TKI):
進行性非小細胞肺がんの治療に広く使われている薬剤。この薬の 治療効果は、EGFR
遺伝子に特定の変異(エクソン 19 欠失、L858R など)がある場合に限られるため、これらの変
異の検出は薬剤選択の条件とされている。日本では、進行性非小細胞肺がんにおける EGFR
変異陽性の比率は 50%以上であり、これらの肺がん患者に対して年間 5 万件以上の EGFR
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遺伝子検査が実施されている。
<本件に関する問い合わせ先>
株式会社DNAチップ研究所
E-mail: info@dna-chip.co.jp
東京都港区海岸 1-15-1 スズエベイディアム 5 階
電話番号:03-5777-1700
FAX 番号:03-5777-1702
HP: http://www.dna-chip.co.jp/
以上
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