9787 イオンディライ 2019-05-24 15:00:00
当社連結子会社カジタクにおける会計処理問題に係る特別調査委員会からの中間報告書の受領について [pdf]

                                                2019 年 5 月 24 日
各    位
                    会   社   名   イオンディライト株式会社
                                代表取締役社長
                    代 表 者 名                      濵田 和成
                                兼社長執行役員
                                  (コー ド番号 9787 東証第 一部 )
                                取締役兼常務執行役員
                    お問合せ先       グループ戦略・デジタル      四方 基之
                                ソリューション統括
                                          (TEL.03-6840-5712)




          当社連結子会社カジタクにおける会計処理問題に係る
           特別調査委員会からの中間報告書の受領について


    当社は、2019年4月5日付「当社連結子会社における不適切な会計処理の判明および2019
年2月期決算発表の延期のお知らせ」および2019年4月11日付「特別調査委員会設置に関
するお知らせ」に記載のとおり、当社連結子会社である株式会社カジタク(以下、
                                    「カジ
タク」)において、不適切な会計処理が行われていた可能性があることについて、当該事
案の詳細および当社連結財務諸表への影響額を含めた全容の解明と再発防止策およびグ
ループガバナンス強化策の検討を目的に、当社と利害関係を有しない外部の専門家によ
って構成される特別調査委員会を設置し、調査を実施しております。
    その過程において、当該事案の詳細および当社連結財務諸表への影響額の見込み、そ
の他、カジタクにおける類似案件の有無や組織的な関与、不正行為の有無の確認の経過
などを含め、特別調査委員会より調査の中間報告書を受領いたしましたので、別紙にて
その内容をお知らせいたします。なお、中間報告書の全文につきましては、個人のプラ
イバシーおよび機密情報保護などの観点から、全文に部分的な非開示措置・匿名化を施
しております。
                            記


1.特別調査委員会の調査結果
    特別調査委員会の調査結果につきましては、添付の「株式会社カジタクの不正会計に
関する調査結果中間報告書(開示版)」をご覧ください。


2.連結財務諸表に与える影響額
 特別調査委員会の調査により、調査対象期間(2013 年 3 月から 2019 年 2 月末)で判明し
た現時点における当社連結財務諸表の純資産に与える影響総額は△96 億円となりました。そ
の内訳は以下のとおりです。
    なお、カジタクにおいて、①調査対象期間全般にわたり実態を表す適切な会計記録が存在
していないこと、②商品の受払記録が存在していないことなどの要因が障害となり、期間帰
属の適正性を考慮した会計期間ごとの影響額については現在も調査を継続中です。
                                          単位:億円
  No.           項目       金額              摘要
   ①    未設置物件請求修正額         △ 23 監査前概算数値。
   ②    架空売上修正額            △ 26 調査対象期間全体の
   ③    証明写真機仕入修正額         △ 17 累積純資産影響額。
   ④    中古複写機仕入修正額         △ 12
   ⑤    その他仕入修正額              △ 2 調査対象期間
   ⑥    棚卸資産評価損            △ 13 (2013 年 3 月から
   ⑦    売掛金残高確認修正             △ 1   2019 年 2 月末)
   ⑧    仮勘定修正                 0.4
   ⑨    その他修正                 △ 3
        合計                    △96
※主に①②は連結損益計算書の連結売上高および連結貸借対照表の売掛金に影響を及ぼしま
す。また同様に③④⑤は連結損益計算書の売上原価等および連結貸借対照表の買掛金に影響
を及ぼします。上記以外で連結財務諸表への影響が発生する場合は、速やかに開示してまい
ります。


3.その他対象子法人における会計処理等の不正行為及びこれに類する不正の有無
 特別調査委員会より、その他対象子法人(国内外のイオンディライト連結子会社等 25
社)の財務諸表分析及び証憑突合を実施し不正の兆候の有無について検討を行ったが、
問題となる事項は発見されなかった、と報告を受けております。


4.今後のスケジュール
 特別調査委員会からの最終的な報告書および再発防止策ならびにグループガバナンス
強化策に関する提言につきましては、2019年6月下旬を目途に提出されることを見込んで
おります。


 この度は、株主をはじめとするステークホルダーの皆さまに、多大なるご迷惑、ご心
配をお掛けしておりますことを心より深くお詫び申し上げます。


                                                   以上
                         2019 年 5 月 24 日


イオンディライト株式会社   御中




   株式会社カジタクの不正会計に関する

        調査結果中間報告書

           (開示版)




     イオンディライト株式会社   特別調査委員会




               1
目次
第1   特別調査 委員会によ る本中間報 告書の趣意 等 ........................ 4

 1   特別調査委 員会設置の 端緒及び目 的 ................................ 4
 2   当委員会の 構成 .................................................. 4
 3   留意事項 ........................................................ 4

第2   調査担当 者、調査期 間及び調査 方法 ................................ 5

 1   調査担当者 ...................................................... 5
 2   調査期間 ........................................................ 6
 3   調査対象期 間 .................................................... 6
 4   調査対象法 人 .................................................... 6
 5   調査方法 ........................................................ 6
 (1 )当委員会 による関係 者らに対す るヒアリン グ ...................... 7
 (2 )当委員会 が貴社及び カジタクか ら開示を受 けた資料 ................ 7
 (3 )会計デー タ及び各種 証憑類等の 閲覧及び検 討 ...................... 7
 (4 )デジタル ・フォレン ジック調査 .................................. 7
 (5 )協力業者 への確認 ............................................. 10
 (6 )ホットラ インの開設 ........................................... 10

第3   調査結果 ....................................................... 10

 1   貴社に関す る基本情報 ........................................... 10
 (1 )貴社の企 業概要 ............................................... 10
 (2 )貴社のコ ーポレート ・ガバナン ス体制 ........................... 11
 2   カジタクに 関する基本 情報 ....................................... 12
 (1 )カジタク の企業概要 (2019 年 3 月 1 日現在 ) .................... 12
 (2 )カジタク の業績の推 移 ......................................... 13
 (3 )カジタク の店頭支援 事業の概要 ................................. 13
 (4 )カジタク の家事支援 事業の概要 ................................. 15
 (5 )カジタク の組織・体 制 ......................................... 17
 3   店頭支援事 業本部にお ける売上計 上、買掛金 計上及び支 払等の流れ ... 18
 (1 )複写機等 の販売及び 売上計上の 流れ ............................. 18
 (2 )複写機等 の保守・管 理に係る売 上計上の流 れ ..................... 19
 (3 )請求書発 行の流れ ............................................. 20
 (4 )買掛金計 上及び支払 の流れ ..................................... 21
 (5 )店頭支援 事業本部と 管理本部と の調整、部 門勘定を用 いた調整 ..... 23

                                2
(6 )業務手順 の不存在及 び稟議手続 の不遵守 ......................... 23
4   本不正行為 ..................................................... 24
(1 )カジタク における不 正行為の認 定 ............................... 24
(2 )その他対 象子法人に おける本不 正行為及び これに類す る不正の有 無 . 35
5   本件の貴社 連結財務諸 表への影響 ................................. 35
6   本件に至る 背景事情、 経緯等 ..................................... 36
(1 )はじめに ..................................................... 36
(2 )組織的背 景 ................................................... 36
(3 )本件不正 に至る経緯 及び考えら れる動機 ......................... 37




                              3
第1    特別調査 委員会によ る本中間報 告書の趣意 等
 1    特別調査委 員会設置の 端緒及び目 的
      2019 年 2 月期の決算手続を進めるにあたり、貴社が連結子会社である株式会
     社カジタク(以下「 カジタ ク」という。)の貸借対照表とキャッシュフロー計
     算書が不均衡であることを指摘し、カジタクによる社内調査を実施させた結果、
     同年 3 月下旬に、カジタクにおいて不適切な会計処理が行われていた可能性が
     あることが判明した。これを受けて貴社が、社内調査チーム(以下「 貴社社 内
     調査 チーム」という。)を立ち上げ、外部専門家のサポートを受けつつ、主に
     カジタクの財務調査を中心とした調査を進めたところ、カジタクの店頭支援事
     業の中古複写機等再販ビジネスにおいて在庫廃棄等の処理手続に過誤があり、
     貴社業績に影響が発生する見込みがあること(以下「 本件」という。)が発覚
     した。貴社は、かかる事態を受け、より透明性の高い調査を実施し、本件の原
     因究明、類似事案の有無の確認及び連結財務諸表への影響額の確定を行うとと
     もに、調査結果を受けての再発防止策の策定及び貴社グループのガバナンスの
     更なる強化を目的に、2019 年 4 月 11 日、貴社及びカジタクと利害関係を有し
     ない外部の専門家や弁護士を含む特別調査委員会(以下「 当委 員会」という。)
     を設置した。
      当委員会は、貴社からのかかる依頼を受けて、①カジタク店頭支援事業の中
     古複写機等再販ビジネスにおける在庫廃棄等の処理手続の過誤の内容に関す
     る調査(これに類する不適切な会計処理の有無に関する調査を含む。)、これ
     による貴社連結財務諸表への影響額の認定、並びに②上記在庫廃棄等処理手続
     が行われた背景事情、経緯及びカジタクの企業風土に関する調査(以下「 本調
     査」という。)を実施している。当委員会は、現在もなお本調査を継続中であ
     るが、本中間報告書(以下「 本中間報 告書」という。)をもって、現時点にお
     ける本調査の経過及び現状を報告するものである。


 2    当委員会の 構成
      当委員会は,以下の委員により構成される。
       委員長:野     間   敬   和(弁護士   TMI総合法律事務所)
       委   員:岩   田   知   孝(弁護士 公認会計士   招和法律事務所)
       委   員:田   代   啓史郎(弁護士     TMI総合法律事務所)


 3    留意事項
      本調査及び本中間報告書は,以下の事項を前提とする点に留意されたい。
 (1) 本調査は、後述第2「調査担当者、調査期間及び調査方法」のとおり、限

                             4
     られた期間の中で、当委員会が独自に収集した資料、貴社及びカジタクから
     入手した資料並びに貴社及びカジタクの関係者等へのヒアリングに基づき、
     後述の本調査期間内で行われたものであり、本中間報告書作成時までに分析、
     検討等した資料から確認できた内容のうち、本調査の目的に照らして指摘す
     るべきであると考えられる点について記載しているものであって、入手した
     資料等から確認できた内容の全てを網羅的に記載したものではないこと
 (2) 後述のとおり、入手資料については、貴社及びカジタクから提供を受けた
     ものであり、メールサーバや個々人のメールを独自に全て収集し精査したも
     のではなく、限定的なものであること
 (3) 本調査においては、以下の事項を前提としていること
     ① 検討対象となった書類上の署名及び押印は真正になされたものであるこ
      と
     ② 写しとして開示を受けた書類は、いずれも原本の正確かつ完全な写しであ
      ること
 (4) 本中間報告書は、前述(2)及び(3)のとおりの前提において作成され
     たものであり、本調査外の資料及び関係者の供述等により本中間報告書と異
     なる事実が認められることを否定するものではない。そのため、新たな事実
     関係が判明した場合には、本中間報告書と異なる結論に至ることもあり得る
     こと
 (5) 本調査及び本中間報告書作成は、貴社との関係において客観的立場におい
     てなされたものであり、かかる立場確保のために、貴社その他いかなる者も
     本中間報告書作成者に対していかなる権利も取得せず、本中間報告書作成者
     に対していかなる請求も起こさず、本中間報告書を証拠、資料その他主張等
     の根拠として使用しないこと及び本中間報告書作成者は、貴社その他いかな
     る者に対しても何らの義務及び責任を負わないこと


第2   調査担当 者、調査期 間及び調査 方法
 1   調査担当者
     当委員会は、本調査の実施に当たり、TMI総合法律事務所の弁護士 5 名及
 びデジタル・フォレンジック等の外部専門家を起用するとともに、本調査を効
 率的に行うため、先行してカジタクに対する調査を実施していた貴社社内調査
 チームからの情報提供及び補助を得て、本調査を実施している。




                       5
2    調査期間
     2019 年 4 月 11 日から同年 5 月 23 日まで(以下「 本 調査期 間」という。)で
    あるが、現在も本調査は継続中である


3    調査対象期 間
    本調査の対象期間については、必要性と実効性を勘案して、2013 年 3 月から
2019 年 2 月までとしたが、必要に応じてそれ以前の期間に遡って調査を実施し
た。


4    調査対象法 人
     本調査の主たる対象法人は、本件が確認されたカジタクであるが、貴社グル
    ープのその他の法人において類似する事案がないかを調査するため、貴社連結
    子会社のうち以下の法人(以下「その他対象子法人」という。)に対しても、
    合理的と考えられる範囲で調査を行った。
                   会社名                                    会社名
    イオ ンディライ トアカデミ ー株式会社                   AEON DELIGHT(Malaysia)SDN.BHD
    イオ ンディライ トセキュリ ティ株式会 社                 A ライフサポー ト株式会社
    イオ ンディライ トセレス株 式会社                     株式 会社白青舎
    環境 整備株式会 社                             中央 管財株式会 社
    関東 エンジニア リング株式 会社                      箕面 駅前パーキ ングサービ ス株式会社
    株式 会社ドゥサ ービス                           株式 会社ユーコ ム
    エイ ・ジー・サ ービス株式 会社                      永旺 永楽泰達 (天津 )物業服 務有限公司
    FM Sソリュー ション株式 会社                      永旺 永楽(江蘇 )物業服 務有限 公司
    永旺 永楽(中国 )物業管理 有限公司                    武漢 小竹物業管 理有限公司
    イオ ンコンパス 株式会社                          永旺 永楽(上海 )企業管 理有限 公司
    J-horizons Travel(M)Services Sdn.Bhd   永旺 永楽深蘭科 技(上 海)有限公司
    株式 会社ジェネ ラル・サー ビシーズ                    PT Sinar Jernih Sarana
    AEON DELIGHT(VIETNAM)CO., LTD


5    調査方法
     当委員会は、以下のとおり、関係者へのヒアリング並びに貴社、カジタク及
    び取引先から提供を受けた資料の分析・検討等の方法により、本調査を実施し
    た。




                                     6
(1 )当委員会 による関係 者らに対す るヒアリン グ
      当委員会は、2019 年 4 月 12 日から同年 5 月 21 日までの間、本件の関係者
  (貴社及びカジタクの役職員等)延べ 37 名からヒアリングを実施した。そ
  の合計時間は、40 時間 02 分である。なお、店頭支援事業本部の責任者は、
  本調査期間中は医師の診断書に基づき自宅療養していたことから、当委員会
  はヒアリングを実施することができなかった。


(2 )当委員会 が貴社及び カジタクか ら開示を受 けた資料
      当委員会は、貴社及びカジタクに対し、随時、分析・検討等が必要となる
  と考えた資料(カジタクの取締役会その他の会議体の議事録、本件に関連す
  る各種契約関係書類、社内規程類及びマニュアル等)の開示を依頼し、その
  開示を受けて内容を分析・検討した。
      当委員会は、これに加えて、関係者の各ヒアリング時に各人が持参し当委
  員会に提供があった資料、並びに、各ヒアリング時等に当委員会から関係資
  料の提示を求めたことにより当委員会に各関係者から提供があった資料に
  ついても分析・検討した。


(3 )会計デー タ及び各種 証憑類等の 閲覧及び検 討
      当委員会は、本件に関連すると合理的に考えられる合計残高試算表・総勘
  定元帳等の会計データ及び各種証憑書類等の関連資料の閲覧及び検討を行
  った。


(4 )デジタル ・フォレン ジック調査
  ア    総論
       当委員会は、本調査の実施に当たっては、カジタクの電子メールサーバ
      内のデータ、カジタク関係者が使用するカジタク支給のパソコン及びスマ
      ートフォン内のデータを保全した上で分析・検討する必要があると考え、
      貴社からデジタル・フォレンジック専門業者に依頼し、以下の方法によっ
      てデジタル・フォレンジック調査を行った。


  イ    情報保全の 対象とした 機器等
 (ア ) 対象 役職員
        当委員会は、カジタクの全ての常勤取締役、執行役員、店頭支援事業
       本部担当者、経理担当者の 7 名を本調査のデジタル・フォレンジック調
       査の対象役職員とした。

                         7
(イ ) 保全 対象データ
    当委員会は、データ保全実施前にカジタクに対してヒアリングを行い、
   上記調査対象役職員が業務内でコミュニケーションを取る際に発生する
   データを網羅的に取得するためには、下記 4 つの機器・サービスからデ
   ータを保全する必要があると判断した。
    ①    クラウドメール (Google 社提供 g-mail)
    ②    カジタクからの貸与 PC(以下「 会社貸 与 PC」という。)
    ③    カジタクからの貸与携帯電話(スマートフォン。以下「会社貸与
         携帯 電話」という。)
    ④    クラウドストレージ(Box JP 社提供 BOX)


(ウ ) 保全 データの規 模
    本調査の 保全作業で 取得したデ ータの容量 は、それぞ れ合計が以下の
   とおりであった。
    ①    クラウドメール:417GB
    ②    会社貸与 PC:689GB
    ③    会社貸与携帯電話:775MB
    ④    クラウドストレージ:5.31GB


(エ ) 保全 方法
    本調査の保全作業は、それぞれ以下の手順で実施した。
    ①    クラウドメール
         全 対 象 者 の g-mail の 復 元 処 理 と g-mail の ア ー カ イ ブ 作 成 を
        Google 社に依頼し、作成されたアーカイブデータを後日全てダウン
        ロードした。


    ②    会社貸与 PC
         各 対 象 者 が 使 用 す る 会 社 貸 与 PC を 停 止 し た 状 態 で DEFT ZERO
        Version 2018.2(以下「 DEFT」という 。)を使用 し、 E01 形 式で 、
        HDD のイメージファイルを取得した。また、DEFT による保全が技術
        的に困難と判断した PC は OS にログインした状態で ACCESS Data 社
        製 FTK Imarger Lite Version 3.1.1 を使用して、E01 形式で、HDD
        のイメージファイルを取得した。



                            8
     ③    会社貸与携帯電話
          サン電子株式会社製 UFED 4PC version 7.16.0 を使用して、各対
         象者が 使用する会社 貸与携帯電 話の保全を 実施した。 但し、この 手
         続で取 得できなかっ たコミュニ ケーション データは、 会社貸与携 帯
         電話に 搭載されて いるバック アップ機能 により SD カードにデ ータ
         をコピ ーした。さら に、この機 能でも取得 できないデ ータには、 会
         社貸与携帯電話の画面をカメラで撮影し、保全を実施した。


     ④    クラウドストレージ
          各対象者の Box 用アカウントでログインし、アクセス権を持つフ
         ォルダのデータをダウンロードした。


(オ ) 削除 データの復 元の可否
     上記デー タの内、削 除データの 復元が可能 なものは、 クラウドメール
    及び会社貸与 PC のデータとなり、クラウドメールについては Google 社
    に復元を依頼し、会社貸与 PC については Opentext 社製 EnCase version
    7.10.1(以下「 EnCase」という。)の機能を利用して復元処理を行った。


ウ   保全・抽出 したメール データの分 析・検討
(ア ) 選別 の手順
     ①    クラウドメール
          上記手 順により取 得した全ア ーカイブデ ータをメー ルレビュー 環
         境である Vound 社製 Intella Connect version 2.1.1 以下 Intella」
                                                   (   「
         という。)に取り込んだ。


     ②    会社貸与 PC
          上記手順により取得したイメージファイルを EnCase に取り込み、
         削除デ ータの復元処 理を実施後 、メールの 拡張子を持 つファイル を
         検索し、該当するデータを全て抽出した後、これを Intella に取り
         込んだ。


     ③    会社貸与携帯電話
          上記手 順により取 得したデー タのうち、 キャリアメ ール及びシ ョ
         ートメッセージに該当するものを Intella に取り込んだ。また、カ



                             9
             メラ により携帯 電話の画面 を撮影した 写真は、 Intella に取 り込ま
             ず、レビュー用のフォルダにアップロードした。


         ④    クラウドストレージ
              上記 手順により 取得したデ ータを EnCase の拡 張子検索機 能を利
             用し、メールに該当するものを Intella に取り込んだ。


     (イ ) キー ワードでの 選定
         当委員会 において、 分析・検討 対象を本調 査に関連す るものに限定す
        るために、キーワードを選定した。
         当委員会 は、以上の とおり抽出 、選定を行 った資料に ついて、検討、
        分析を行った。


(5 )協力業者 への確認
      当委員会は、貴社社内調査チームが実施した、①カジタクの店頭支援事業
     における主要な売掛先及び買掛先に対する債権債務の残高確認の結果、並び
     に②主要な売掛先及び買掛先へのインタビューの結果について、その内容を
     確認した。


(6 )ホットラ インの開設
      当委員会は、本調査期間において、カジタクの役職員向けのホットライン
     を開設し、本件及び類似の事象に関する情報の提供を求めた。


第3   調査結果
 1   貴社に関す る基本情報
(1 )貴社の企 業概要
     1. 社名        イオンディライト株式会社
     2. 株主        イオン㈱(28.75%)、イオンリテール㈱(23.16%)等
                  (2019年2月13日現在)
     3. 資本金       3,238百万円
     4. 設立        1973年4月6日
     5. 従業員数      13,430名(2018年2月末現在)
     6. 事業内容      IFM(インテグレーテッド・ファシリティマネジメント)
                  事業(設備管理事業、警備事業、清掃事業、建設施工事



                              10
             業、資材関連事業、自動販売機事業、サポート事業)
  7. 本社所在地   〒542-0081   大阪市中央区南船場2-3-2


(2 )貴社のコ ーポレート ・ガバナン ス体制
   貴社は、監査役会設置会社であり、監査役・監査役会が取締役・取締役会
  の職務執行・意思決定を監査している。取締役会は、専門知識や経験等のバ
  ックグラウンドが異なる多様な取締役で構成するとともに、独立性・中立性
  のある独立社外取締役を 3 名置き、執行役員制度を導入し執行に関わる意思
  決定の一部を執行役員会に委ねている。
   監査役会は、監査役会の独立性確保のため半数以上を社外監査役で構成し、
  少なくとも 1 名以上を証券取引所が定める独立役員に指定している。
   また、取締役候補者の指名に関わる方針・基準、取締役の報酬に関わる方
  針・基準の策定や、取締役会における個々の指名・報酬案の決定に際しての
  独立性・客観性と説明責任を強化するため、また取締役会全体の実効性を評
  価分析する上でその独立性と客観性を供するため、取締役会の任意の諮問機
  関として、指名・報酬諮問委員会及び評価諮問員会を設置している。




                          11
              コー ポレート・ ガバナンス 体制図




2   カジタクに 関する基本 情報
(1 )カジタク の企業概要 (2019 年 3 月 1 日現在 )
    1. 社名     株式会社カジタク
    2. 役員     常勤取締役      2名
              取締役(非常勤)            1名
              監査役(非常勤)            1名
    3. 株主     貴社(97.8%)及び個人1名(2.2%)
    4. 資本金    155,000,000円
    5. 設立     2008年8月22日


                             12
  6. 従業員数          155名(2017年8月末現在)
  7. 事業内容          家事支援事業、店頭支援事業
  8. 本社所在地         〒104-0032   東京都中央区八丁堀4-3-3
  9. その他           2011年 4月 に 発 行 済 株 式 総 数 の 90% を 貴 社 が 取 得 し グ ル
                   ープ入り


(2 )カジタク の業績の推 移
      カジタクでは、主として店頭支援事業と家事支援事業の 2 事業を営んでい
  る。店頭支援事業は、小売店舗等に対して複写機や証明写真機の販売、保守
  等を行う事業である。家事支援事業は、一般消費者に家事代行及びクリーニ
  ングサービスを提供する事業である。店頭支援事業と家事支援事業における
  過去の業績の推移(管理本部費用控除前数値。本調査による修正を行う前の
  数値。)は、以下のとおりである。
                                                    単位:百万円
             項目            2017/2       2018/2       2019/2
      店 頭 支 援 事業
      売上 高                     7,230        7,036        7,551
      営業 利益                    1,362        1,193        1,128
      家 事 支 援 事業
      売上 高                     1,120        1,187        1,699
      営業 利益                    △ 188         △ 84             52


(3 )カジタク の店頭支援 事業の概要
  ア    店頭支援事 業本部の事 業
       店頭支援事業本部は、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニ
      エンス・ストア、CDレンタルストアー等の小売店舗に対して、コイン式複
      写機及び証明写真機(及び証明写真機に付随するプリンター機)を販売、
      設置する事業、並びに、カジタクが販売したコイン式複写機及び証明写真
      機等の保守・管理を行う事業である。店頭支援事業本部は、A社を通じて、
      X社製の複写機を仕入れていた。また、B社を通じて、Y社製の複写機及
      びZ社製の証明写真機及びプリンター機を仕入れていた。販売先は、上記
      スーパーマーケット等のエンドユーザーであるが、エンドユーザーがレン
      タル取引を希望する場合には、C社を通じてレンタル取引を行うため、そ
      の場合のカジタクの販売先はC社となる。


                                13
   イ    新規顧客の 開拓
        2008年の設立後、カジタクのエンドユーザーは主として新規顧客(地域
       の小売店等)であった。このため、当時のカジタクが複写機等の在庫を保
       有することはほぼなく、受注後に複写機等を仕入れ、リース会社に販売し、
       顧客に設置する事業モデルであった。なお、カジタクが複写機等を納入す
       る顧客の大半は、「レンタル取引」によって複写機等を導入、設置してい
       た。これは、エンドユーザーが複写機等をC社から賃借し、カジタクに対
       して後述の保守・管理業務を委託する取引であり、エンドユーザーとして
       は、複写機等を買い取る場合と比較して初期投資をより低減して複写機等
       を設置できるものであり、カジタクの複写機等の販売は、レンタル取引が
       主流となった。


【店頭支援事業の業務の方法】




   ウ    複写機等の 保守・管理 事業
        カジタクは、複写機等を販売したC社及びエンドユーザーより、当該複
       写機等の保守・管理業務を受託し、かかるサービスを複写機等のメーカー
       に再委託することによって同サービスを提供している。かかる保守・管理
       業務は、複写機等の保守作業に加えて、コピー用紙等の消耗品を提供する
       サービスも含まれる。C社がエンドユーザーに請求する金額は、①基本料
       金と、②カウンター料金に分かれている。このうち①基本料金は、複写機
       等のレンタルに係る料金である。②カウンター料金は、当該月において、
       エンドユーザーに設置された複写機において実際にコピーされた枚数、若
       しくはエンドユーザーに設置された証明写真機において撮影・印刷された
       枚数に応じて支払われる費用である。

                         14
  エ    中古複写機 等の買取り 及びその転 売事業
       カジタクは、2010年ころより、複写機等の新規販売にあたり、エンドユ
      ーザーに既に設置されていた複写機等の買取りを始めるようになり、2015
      年又は2016年ころから、中古複写機の買取りが増加していった。その理由
      は、カジタクが新規で複写機等を設置したエンドユーザーが、リース期間
      (通常5年間)の満了に伴い新型機への入替需要が生じたところ、新型機に
      入れ替えるために既存の複写機等の買取需要が生じたためである。
       既存の複写機等の買取りは、当該既存複写機等がリース又はレンタル中
      の物件の場合には、リース契約等のレッシーの地位をカジタクが引き継い
      いで残リース料等を支払う、若しくは、カジタクがリース契約等の中途解
      約金を支払うことによって、既存複写機等に係る既存のリース取引等の清
      算のための支払をエンドユーザーに代わって行っていた。これに対して、
      既存レンタル等取引の対象となっていない場合には、カジタクが定める一
      定の金額で引き取っていたものであるが、かかる引取り金額の決定につい
      ては、確固たるルールは存在しなかった。なお、かかる支払は、リース業
      界においては見られる商慣習とのことである。
       カジタクが販売先から買い取った複写機等は、その程度によって、中古
      機として再販売することが可能なものもあり、そのような複写機等は、ク
      リーニングと呼ばれる点検整備をした上で再販売若しくは再販売の上で再
      レンタルする場合もあるが、再販売できないものについては、廃棄してい
      た。かかる再販売は、新品の複写機等と同じ方法で行われ、エンドユーザ
      ーがレンタル取引を希望する場合には、カジタクはC社に販売して、C社
      がレンタルする取引が行われていた。
       但し、カジタクが引き取った中古複写機等のうち、40%程度は廃棄され
      るとのことであり、これらを廃棄する場合には、廃棄費用の他に、運送費、
      保険料等の費用が発生する。


(4 )カジタク の家事支援 事業の概要
  ア    家事支援事 業本部の業 務内容、ビ ジネスモデ ル
       家事支援事業本部は、①ハウスクリーニング、②宅配クリーニング及び
      ③家事代行を業務内容とする。
       ①ハウスクリーニングとは、顧客からの依頼に応じてエアコン及びキッ
      チン等の清掃を行うもの、②宅配クリーニングとは、顧客から配送により
      受領した衣類及び布団等のクリーニングを行い、それらを一定期間倉庫で

                       15
    保管した後、顧客に返送するというもの、③家事代行とは、顧客の自宅等
    の清掃、整理整頓及び料理等を代行するというものである。


イ    家事支援事 業本部の収 益構造
     顧客からの受注方法については、上記①乃至③のいずれの業務について
    も、顧客からインターネット又は電話で申込みを受ける方法及び小売店等
    で販売されている「チケット」を購入した顧客から電話又はインターネッ
    トで予約を受ける方法がある。「チケット」は、カジタクからサービスの
    提供を受ける権利を表象する証票のようなものであり、カジタクはチケッ
    トを小売店等に卸し、顧客はこれを小売店等で購入できるが、カジタクと
    しては、チケットを小売店に卸す際に、小売店から代金を受領する。チケ
    ット以外の代金受領方法としては、インターネットでの注文の場合、顧客
    からの注文時にクレジットカード決済により代金の支払を受け、電話での
    注文の場合には、サービス提供後、後払い決済代行業者を通じて顧客から
    代金の支払を受ける方法がある。
     上記③の家事代行事業については、カジタクの家事代行部の従業員が直
    接サービスを提供することから、かかる人件費を要する。一方、①ハウス
    クリーニング事業及び②宅配クリーニング事業については、カジタクが他
    社(サプライヤー)と業務委託契約を締結して各サービスを行わせており、
    家事支援事業本部における経費の多くを占めるのは、サプライヤーに対す
    る業務委託費である。
     顧客からの注文状況はカジタクのシステム上で管理されており、サプラ
    イヤー又は家事代行部所属の従業員がこれに従って顧客にサービスを提供
    する。顧客へのサービス提供後、ハウスクリーニング事業及び宅配クリー
    ニング事業については、システム上のデータが家事支援事業本部から管理
    本部の経理担当に送信され、サプライヤーへの業務委託費の支払が行われ
    る。


ウ    家事支援事 業本部の収 支状況
     家事支援事業本部においては、赤字の状態が続いていた。その要因とし
    ては、業務委託費等のコストが多額にのぼることや、1年を通して繁閑の差
    が大きいため、顧客対応を担うコンタクトセンター部所属の従業員が繁忙
    期には多数必要となる一方、閑散期には必要以上の従業員が同部に所属す
    ることとなり余分なコストがかかること、競合他社の進出等が挙げられる。



                       16
(5 )カジタク の組織・体 制
  ア     カジタクの 組織
       2019年4月時点におけるカジタクの組織は、店頭支援事業を行う店頭支援
      事業本部、家事支援事業を行う家事支援事業本部、人事・経理・総務機能
      を行う管理本部から構成される。


  イ     店頭支援事 業本部にお ける体制
       店頭支援事業本部は、①法人営業部、②オペレーション部及び③店舗支
      援部から構成される。店頭支援事業本部のうち法人営業部は、スーパーマ
      ーケット等に対して複写機等を販売する営業活動を行う部署である。オペ
      レーション部は、法人営業部の営業活動をサポートするミドルオフィス部
      門であり、複写機等を受注した場合における複写機等の設置手続、販売や
      レンタルに係る契約書の作成事務、及び複写機等の保守管理事務の管理業
      務を行う。店舗支援部は、サイネージ広告事業を行う。店頭支援事業本部
      は、常勤取締役のうち1名が統括している。


  ウ     管理本部に おける体制
       管理本部は、人事担当、総務・秘書担当、経理担当、業務改善担当が置
      かれ、組織上は常勤取締役のうち1名が統括しているが、実質的には、人事
      及び経理に係る事務については、管理本部担当の執行役員が統括している。
      経理担当は2名であるが、管理本部担当執行役員及び経理担当2名は、いず
      れもカジタクにおいて初めて経理業務に携わるようになったものであり、
      経理及び会計に関する基本的な知識は業務を通じて得ていたものの、経理
      や会計について精通していたとはいえず、かつ、経理担当職員の離職率は
      高く入替りが頻繁に生じており、経理部門としての機能が十分とはいえな
      い状況であった。なお、業務改革担当1名は、複写機等の保守・管理に係る
      請求事務及び支払事務を担当していた。


  エ     コンプライ アンスに関 する体制
       カジタクは、内部統制システムに関する基本方針については、取締役会
      に お い て 親 会 社 で あ る 貴 社 の も の を 踏 襲 し た 内 容 を 都 度 決 議 し 、 2016年 8
      月の取締役会においてコンプライアンス基本規程及び内部通報規程を制定
      しているが、内部統制やコンプライアンスについて具体的な規程や細則は
      ない。組織上も、法務やコンプライアンスを所管する部署及び内部監査を
      取り扱う部署は、明示的には設置されておらず、管理本部の役職員が、都

                                 17
        度必要に応じて親会社である貴社の法務部等に相談することになっていた。
         また、2014年5月に貴社から派遣された者がカジタクの取締役に就任し、
        翌年から管理本部を管掌している。2016年7月の取締役会において、内部統
        制システムに関する基本方針に定めるコンプライアンス責任者に社長が、
        コンプライアンス監理者に上記元取締役がそれぞれ任命されたが、上記元
        取締役の2017年5月の退任後は、常勤取締役のうち1名が店頭支援事業本部
        に加えて管理本部の担当を兼務するようになり、コンプライアンス監理者
        については空席となった。
         なお、内部通報制度は、カジタクの役職員が貴社及びイオングループの
        通報窓口を利用することも可能であるが、内部通報があった場合には、コ
        ンプライアンス責任者であるカジタク社長の指示の下で管理本部が調査を
        行うものとされている。


3   店頭支援事 業本部にお ける売上計 上、買掛金 計上及び支 払等の流れ
(1 )複写機等 の販売及び 売上計上の 流れ
        カジタクにおける店頭支援事業本部の売上げの計上は、最終的には管理本
    部における経理担当者が、売上げを会計ソフトに入力する方法によって行っ
    ている。2015年ころより、店頭支援事業本部における売上げの計上は、①法
    人営業部からオペレーション部に対する「販売計画」(後述)に基づく当月
    売上予想及び前月売上実績の報告、②オペレーション部から経理担当者への
    当月売上予想及び前月売上実績の報告、③経理担当者による会計ソフトへの
    入力という過程を経て行われていた。


    ア    法人営業部 における「 販売計画」 に基づく管 理
        法人営業部は、同部の営業目標、進捗管理、営業実績の管理を行うた め
     に、「販売計画」と題するエクセル資料を作成し、法人営業部の各部長 及
     び営業担当者は、販売見込案件及びこれら案件の進捗状況を入力するこ と
     となっている。販売計画におけるステータスには、「確定、A、B、C」があ
     り、受注の見込みに応じて入力される。受注の見込みは「A」が最も高く 、
     「C」が最も低いものであり、「確定」とすると、当該案件の売上額が、販
     売計画における当該月の売上げの数値に反映される仕組みとなっている。


    イ    「ウイング バック」に よる複写機 等の販売に 係る進捗管 理
         法人営業部は、複写機等の受注を受けた場合、これをオペレーション部
        の営業補助担当者に連絡する。カジタクは、販売やレンタルに係る契約書

                        18
      の作成及び複写機等の設置等の進捗の管理のために、「ウイングバック」
      というクラウド上のソフトウエアを自社開発しており、複写機等を受注し
      た場合には、営業補助担当者がウイングバックに受注したことを入力し、
      受注後の進捗管理を行っている。ウイングバックのデータは、A社、B社
      及びC社に共有されており、営業担当補助者が受注の事実をウイングバッ
      クに入力した後は、当該受注に係る複写機等の設置日の調整、設置手続及
      び販売取引やレンタル取引に係る契約締結手続は、ウイングバックを通じ
      て行われる。


  ウ    オペレーシ ョン部によ る売上げの 管理及び経 理担当への 報告
       売上げの90%以上を占めるC社に対する売上げに関しては、月初に店頭
      支援事業本部が認識している前月分の売上見込額 「売上機器確定見込額」
                            (
      と表示されている。)及び前々月分の(売上)確定値を、オペレーション
      部がメールで経理担当に報告し、経理担当は、かかる報告を受けて、会計
      ソフトに前月分の売上見込額を売上げとして計上するとともに、入力済み
      の前々月分の売上げを確定額に基づいて修正していた。なお、オペレーシ
      ョン部の担当者が経理担当に報告していた「売上機器確定見込額」は、販
      売計画記載の売上見込額に、ウイングバック上のデータから成約済みの案
      件を加算した金額(但し、上方修正のみ)であったため、販売計画上の売
      上見込額より大きい金額となる場合があった。また、「確定値」の数値に
      は、契約書が未調印のものや契約書作成中のものが含まれていた。


  エ    販売に係る 契約書の作 成及び調印
       カジタクが複写機等を販売し、これをエンドユーザーに設置する手続の
      進捗をC社が確認した場合、同社は、カジタク及びエンドユーザーの3者間
      でのレンタルに関する契約書、カジタクとの間の複写機等の売買に関する
      注文書(契約書)等を作成し、カジタクに送付する。エンドユーザーの調
      印が必要なレンタルに係る契約書等については、カジタクがエンドユーザ
      ーからこれら契約書に係る押印を徴求し、調印済みの契約書一式をC社に
      送付する。
       また、C社を通さないエンドユーザーとの直接の取引については、カジ
      タクが販売に係る契約書を作成し、エンドユーザーとの調印手続を行う。


(2 )複写機等 の保守・管 理に係る売 上計上の流 れ
      カジタクは、カジタクが販売した複写機等の保守管理を、エンドユーザー

                      19
  から受託している(レンタル取引の場合には、C社からも受託している。)。
  レンタル取引において、C社は、エンドユーザーに対し、複写機等のレンタ
  ルに係る請求として、①基本料金及び②月額カウンター料金を請求するが、
  基本的な構造としては、かかる請求のうち、基本料金の部分はレンタル料に
  相当する部分であることからC社が受領し、カウンター料金に相当する部分
  は複写機の利用に応じた手数料であることからカジタクがC社を通じてエ
  ンドユーザーより受領する。
      但し、カジタクとC社との間で、複写機及び証明写真機のレンタル取引に
  ついて別途覚書を締結し、エンドユーザーが負担すべき基本料金の一部又は
  全部をカジタクがエンドユーザーに代わって負担するものがあった。複写機
  に関する覚書は、月額カウンター料金の金額が基本料金の金額を超えない場
  合には、月額カウンター料金をエンドユーザーに請求しない内容となってい
  た。証明写真機に関する覚書は、C社がエンドユーザーから受領する月額カ
  ウンター料金の金額が基本料金に満たない場合には、当該差額をカジタクが
  C社に補填する内容となっていた。これらの取引の目的は、設置された複写
  機 又 は 写 真 証 明 機 が 消 費 者 に 認 知 さ れ る の に 概 ね 6か 月 要 す る と こ ろ 、 か か
  る期間はエンドユーザーの収支がマイナスになる場合が多いことから、かか
  るエンドユーザーの負担を補填する点にある。これらカウンター料金の不受
  領及び基本料金差額の支払(以下「 損失補 填取引」という。)は、年々増加
  し、カジタクの資金繰りを悪化させることになった。


(3 )請求書発 行の流れ
  ア    複写機等の 販売に係る 請求書の発 行
       レンタル取引におけるカジタクのC社に対する請求書は、C社が、エン
      ドユーザーに対するレンタル取引、カジタクとの売買取引に係る契約書を
      受領し、かつ、複写機等が設置されたことを確認するエンドユーザー作成
      の確認書の受領を確認後に、発行できるものとされている。カジタクのオ
      ペレーション部の担当者は、ウイングバックを通じて、上記ステータスを
      確認後、ウイングバックを用いて作成した請求書をC社に送付する取扱い
      とされている。C社以外の販売先であるエンドユーザーについても、オペ
      レーション部が請求書を発行する。


  イ    保守・管理
       カジタクは、保守・管理業務委託先より請求対象月の複写機及び証明写
      真機の利用枚数(カウンター)の報告を受け、かかるデータに基づいて、

                               20
      C社又はエンドユーザーに対し、保守・管理費用を請求する。保守管理に
      係るC社に対する請求は、オペレーション部ではなく、管理本部の業務改
      善担当の従業員が行う。


(4 )買掛金計 上及び支払 の流れ
  ア    複写機等の 仕入れ及び 買掛金の計 上
       カジタクは、X社製又はY社製の複写機をA社から、また、Z社製の証
      明写真機をB社から仕入れている。
       まずA社からの仕入れについては、ウイングバックのデータ上複写機の
      設置が確実になった時点において、A社が注文書を作成してカジタク(オ
      ペレーション部)に送付する。同部の担当者は、送付を受けた注文書に調
      印し、A社に送付することによって仕入れの注文が行われる。A社からの
      請求書は、オペレーション部の担当者に送付される。
       B社への発注については、ウイングバックのフォームを用いた注文書を
      B社に送付する方法によって行われる。同社からカジタクへの請求は、ウ
      イングバックのフォームによってB社が作成し、カジタクの経理担当者に
      送付する。経理担当者は、オペレーション部の担当者に請求書を転送し、
      同人がその内容を確認して、経理担当に支払指示を出す。


  イ    経費精算シ ステムの導 入
       カジタクは、それまでエクセルや紙ベースで処理していた仕入れや経費
      の精算の事務効率化のため、2015年6月ころ、外部業者から経費精算システ
      ムを導入した。同システム導入後、店頭支援事業本部においては、A社や
      B社からの仕入れや従業員の立替経費について、経費精算システムによっ
      て管理するようになった。仕入れに関しては、仕入れ先からの請求書を受
      領後、店頭支援事業本部の担当者が請求書の確認をした上で経費精算シス
      テムに入力することとなっている。経費精算システムに入力後は、仕入れ
      等の担当部署が経理担当者に支払指示書を交付することによって、支払を
      実行する。
       しかしながら、B社からの仕入れについては、同社からの請求の支払時
      期が細分化されているなどの理由により、経費精算システムを用いた管理、
      処理が煩雑であるとされ、2018年3月ころから経費精算システム導入前の紙
      ベースによる管理及び支払手続(オペレーション部担当者が、経費精算シ
      ステム導入前の手書きの支払指示書をB社からの請求書に添付し、経理担
      当に交付する方法)に戻された。

                       21
ウ    中古複写機 等の引取り
     店頭支援事業本部は、新品の複写機等をエンドユーザーに販売する際に、
    エンドユーザーがすでに導入していた複写機等の引取りを行うことがある。
    これら引取りが生じる場合にも仕入れが発生する。この場合の仕入れ先は、
    当該エンドユーザーにリース若しくはレンタルを行っているリース会社で
    あり、多くはC社である。
     なお、販売計画においては、入替取引と新規取引とを区分して管理して
    おり、「解約金等他経費」という欄が設けられている。しかしながら、入
    替取引であるにも関わらず、「解約金等他経費」の欄に数字が入力されて
    いないものが見られる。また、中古機の引取りに関しては、輸送、保管等
    の様々な費用が生じるが、そもそも販売計画においては、これら費用につ
    いて計上する欄は設けられておらず、これら費用が販売計画における収益
    管理においては考慮されていなかった。
     カジタクが引き取った中古複写機等のうち、再販が可能なものは60%程
    度とされ、残りは再販されずに廃棄される扱いとなっている。


エ    保守管理業 務に係る仕 入れ
     カジタクが販売した複写機等の保守管理を受託する業務については、カ
    ジタクが複写機等のメーカーに委託している。このため、当該保守管理業
    務を提供するベンダーからの請求がカジタクに行われる。その管理及び支
    払手続は、前述の経費精算システムが用いられている。


オ    「仮費用」 勘定での処 理
     経費精算システムにおいては、仕入れや経費を入力したオペレーション
    部の担当者が、経理担当者に対して、支払指示書を交付する方法により、
    仕入れ等の支払を指図するとされている。実際には、仕入れや経費等につ
    いて、請求書をカジタクが受領していないのに、支払指図を仮で申請する
    場合が多く行われていた。このため、経理担当者は、店頭支援事業本部の
    担当者と協議し、2016年10月ころより、かかる仮の精算処理を可能とする
    ために、「仮費用」という債務勘定を設定し、見積計上した費用に対応す
    る債務については仮費用として計上を開始した。


カ    B社等から の仕入れ等 の非計上
     前述イのとおり、カジタクは、B社からの仕入れについては、同社への

                      22
   支払時期が細分化されているなどの理由から経費精算システムでの管理及
   び支払は煩雑であるとされ、2018年3月ころから経費精算システム導入前の
   紙ベースによる管理及び支払手続に戻した。これにより、店頭支援事業本
   部のオペレーション部は、B社から受領した請求書を経理担当者に紙媒体
   で報告し、経理担当者がかかる報告に基づいて会計ソフトに入力すること
   となったが、経費精算システムの導入前と異なり、「仮費用」勘定で計上
   していた。そして、B社からの請求書に対して支払を行う場合には、「買
   掛金/銀行預金」という仕訳をしていたことから、買掛金に大きなマイナ
   スが計上される状態となっていた。
    また、こうした仕入れの非計上は、B社からの仕入れ取引にとどまらな
   い。C社からの中古複写機仕入れ取引や、A社からの新品複写機仕入れ取
   引についても、本来費用計上すべき仕入れ取引が簿外処理され、店頭支援
   事業の売上総利益が水増しされる状態が常態化していた。


(5 )店頭支援 事業本部と 管理本部と の調整、部 門勘定を用 いた調整
   店頭支援事業本部の経理処理は、店頭支援事業本部から電子データや紙に
  よって送付を受けた取引証憑に基づき、経理担当者が会計ソフトに仕訳を入
  力する方法によって行われていた。月次の決算を確定する作業に際して、管
  理本部の責任者である執行役員と店頭支援事業本部の責任者である取締役
  は、会計ソフトによって作成された収支のデータと、店頭支援事業本部が管
  理する「販売計画」とを照合させ、両者に乖離がある場合には、会計ソフト
  の会計データを販売計画の収支のデータに合わせて変更する処理を行って
  いた(以下、このような処理を「 損益 調整」という。)。なお、管理本部担
  当の執行役員は、販売計画が正しくカジタクの収支を反映しており、損益調
  整を行うこと自体は問題のない行為と考えていた。このような損益調整がさ
  れた会計ソフトの会計データに基づき、カジタクの財務諸表が作成されてい
  た。損益調整後の売上高、営業利益は実態を上回ることが常態化していた。
   さらに、家事支援事業本部、管理本部の部門勘定を使って、損益調整と同
  様の方法で売上高の過大計上、費用の過小計上が行われることもあった。


(6 )業務手順 の不存在及 び稟議手続 の不遵守
   以上の店頭支援事業本部及び管理本部における業務の流れの、仕入れの未
  計上は勿論、損益調整並びに家事支援事業本部及び管理部における部門勘定
  を用いた調整は、カジタクから開示を受けた経理規程、固定資産管理規程、
  仕入管理規程、購買・外注管理規程等に根拠がない、又はこれら規程等の手

                    23
    続とは乖離しているものであった。また、職務責任権限規程及び決裁規程に
    おいては、例えば、100 万円以上の仕入れ、10 万円以上の在庫の廃棄処分等
    は社長が決定するものとされていたが、そのような稟議、決裁は行われてい
    なかった。債務の確定や支払の実行についても、経理担当者が管理本部担当
    執行役員の承認を得ることなく、行っていた。


4   本不正行為
(1 )カジタク における不 正行為の認 定
        当委員会は、前述の調査によって得られた資料等の検討・分析により、以
    下のとおり、本不正行為の有無・態様、背景事情等を認定した。


    ア    未設置物件 請求による 売上げの水 増し
    (ア )態様・方 法
          販売取引の中には、販売に係る複写機等がエンドユーザーに未設置で
         あるにもかかわらず、売上げとして計上されているものが見られる。こ
         れら未設置物件に係る取引は、翌月又は数か月以内に設置される見込み
         の売上げを先取りした取引もあると思われるが、中には、当該時点で販
         売に係る複写機等が設置される具体的な可能性が希薄であるにもかか
         わらず、売上げとして計上しているものが見られる。これら物件未設置
         の取引について、カジタクは、C社から、複写機等の代金相当額の支払
         を受けている(以下、かかる取引を「 未設 置物件 請求」という。)。




                        24
【未設置物件請求の仕組み】




     未設置物件請求の取引では、形式上は、C社からエンドユーザーに対
    するレンタル取引が開始しているものであり、C社からエンドユーザー
    に対する基本料金(レンタル料)の支払請求が開始するため、カジタク
    は、未設置の状態が解消されるまで、同基本料金を補填し、エンドユー
    ザーに迷惑がかからないようにしていた。
     かかる補填の方法は、前記の「損失補填取引」を用いたものである。
    損失補填取引は、C社とカジタクの覚書に基づく取引であり、複写機の
    場合は、月額カウンター料金の金額が基本料金の金額を超えない場合に
    は月額カウンター料金をエンドユーザーに請求しないとするものであ
    る。複写機が未設置の場合はカウンター料金がゼロとなることから、C
    社のエンドユーザーに対する基本料金の請求が行われることになるが、
    基本料金の支払時期に合わせて、カジタクがエンドユーザーに対して、
    当該基本料金相当額を支払方法によって補填していたものである。
     証明写真機の損失補填取引は、C社がエンドユーザーから受領する月
    額カウンター料金の金額が基本料金に満たない場合には、当該差額をカ
    ジタクがC社に補填する内容となっていた。証明写真機が未設置の場合
    にはカウンター料金がゼロとなることから、カジタクは、C社に対して、
    基本料金の全額を支払っていた。
     これらの基本料金の補填取引についてカジタクは「売上値引」として
    経理処理を行っていた。なお、C社は、複写機等が設置されたことをエ
    ンドユーザーが確認する確認書の提出を受けて初めてカジタクに当該
    複写機等の代金を支払う取扱いとしている。未設置取引の場合、複写機
    等が未設置であるにもかかわらずエンドユーザーへのレンタル取引が

                 25
  開始し、カジタクがC社に代金を請求していることになるが、これは、
  カジタクの法人営業部従業員が、エンドユーザーに対して上記のとおり
  未設置期間中の基本料金の全額の補填を行うことを前提として、エンド
  ユーザーより複写機等の設置に係る確認書を他の契約書と同時に徴求
  し、これをC社に交付することによって複写機等が設置された外観を整
  えることにより、実行されたものである。これら未設置物件請求に関し
  ては、2018 年 7 月ころ、C社からカジタクの社長に対し、証明写真機等
  が実際には設置されていないにもかかわらず、契約書及び確認書を作成、
  提出して代金を請求している事例がある旨を指摘され、同年 8 月にC社
  が主催する勉強会が開催され、常勤取締役ら及び店頭支援事業本部の大
  半の従業員が参加し、適切な設置の後に請求する必要があることを改め
  て指導されていた。その後、未設置物件請求の数は減少したが、解消さ
  れることはなかった。
   こうした未設置物件請求の取引は資金調達目的で実行され、カジタク
  の資金繰りが悪化するのと並行して未設置物件請求の取引規模は急増
  することになった。


(イ )修正処理 の内容
   以上から、当委員会では、未設置物件請求の取引を、商品売買の実質
  を伴わない金融取引(架空リース取引)と認定した。
   未設置物件請求の取引に関する修正仕訳は、以下のとおりである。


  (売上取引の取消し)
         売上高          金融債務
  (基本料金補填取引の取消し)
         金融債務         売上値引


   未設置物件請求の取引は、現状、通常の商品売買と同様の会計処理が
  行われているため、売上高を取り消し、金融債務に振替処理を行う必要
  がある。
   また、売却後の基本料金補填取引に関しては、売上値引(売上高控除
  項目)として処理されているため、金融債務の返済取引として修正する
  こととした。




                 26
(ウ )規模
     現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)は、
    以下のとおりである。
                                    単位:億円
         項目      金額            摘要
                         監査前概算数値。調査対象期間
    未設置物件請求修正額     △23
                         全体の累積純資産影響額


イ   損益調整に よる架空売 上げの計上 等
(ア )態様・方 法
     カジタク店頭支援事業では、前述のとおり財務会計数値を管理会計数
    値に合わせて変更する損益調整が行われていた。損益調整は、取引証憑
    に基づく経理処理ではなく、店頭支援事業本部が予算や営業実績の管理
    のために作成する販売計画に基づいて、カジタクの財務諸表を作成する
    ものである。販売計画は、個々の営業担当者が、販売の可能性が生じた
    時点で入力するものであり、また、すでに販売の見込みがなくなった案
    件も消去されず、証憑に基づく確認もされていないなど、売上げが過大
    に計上される傾向にある。
     その結果、カジタクの財務会計上の売上高には、設置先の検収未了の
    状態で売上計上されるものや、契約書未締結の状態で売上計上されるも
    のなど、売上計上要件を充足しない取引が含まれることになった。
     そこで、当委員会では、C社との契約締結日を検収日とみなした上で
    検収基準による売上高(以下「 検収基 準売上高」という。)の再計算を
    行い、カジタクの会計記録に基づく売上高(以下「 損益調整 売上高」と
    いう。)と比較した。
     その結果、年度決算でみた場合、調査対象期間の全てにおいて損益調
    整売上高が検収基準売上高を上回り、かつ、両者の乖離幅が累積的に増
    加していくことが確認された。これは、契約締結日を基準とした場合に
    全体として先行的に売上高が計上されていること、当該先行売上計上金
    額が年々増加していることを意味している。


(イ )修正処理 の内容
     以上の分析結果に基づき、当委員会では、売上計上基準について、客
    観性が高い検収基準(契約締結日基準)を採用し、損益調整売上高の修
    正を行うこととした。なお、未設置物件請求の取引については、前述ア

                    27
    のとおり金融取引として修正しており、損益調整売上高の修正の対象か
    らは除外している。
     これらの修正に関する修正仕訳は、以下のとおりである。


    (架空売上修正)
          売上高               売掛金
         仮受消費税
         租税公課
    (売上原価修正)
          商品               売上原価


     今回、損益調整売上高を取り消した上で検収基準売上高を計上する洗
    替え処理を行っているが、上記仕訳は洗替え後の純額売上高が減少する
    場合の仕訳を例示している。
     租税公課は、法定期限超過により消費税修正額の還付ができず、損金
    経理されることになる金額を意味している(以下、同じ)。
     また、損益調整売上高の修正に対応する売上原価の振戻処理も併せて
    行っている。


(ウ )規模
     現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)は、
    以下のとおりである。
                                    単位:億円
         項目      金額            摘要
                         監査前概算数値。調査対象期間
    架空売上修正額      △26
                         全体の累積純資産影響額


ウ   B社に対す る仕入れの 未計上等
(ア )態様・方 法
     B社からの仕入れについては、2018 年 3 月から、経費精算システムを
    使わずに、紙ベースで店頭支援事業本部から経理担当者に報告し、経理
    担当者が仮費用として計上し、月次で、仮費用勘定を仕訳処理する作業
    が行われていた。その際、B社からの仕入れについては、仕入れ又は買
    掛金として計上されていなかった。この処理方法は、カジタクにおける
    資金繰りが悪化した時期に開始された措置であることもあり、意図的に

                    28
  そのような処理がなされた可能性も否定できない。カジタクの 2018 年
  度における月次の会計データ上は、B社からの仕入れ分が債務として認
  識されておらず、その過小計上をもたらしたものである。
   カジタクからB社に対して商品を販売する取引が存在し、かかる取引
  においては、カジタクからB社に対して基本料金差額の支払がなされて
  いる取引(損失補填取引)が存在しているが、上記仕入れの過小計上と
  同様の手法で、当該損失補填支払額の一部について少額の計上漏れが存
  在している。
   また、B社関連の取引記録には、カジタクのC社に対する売掛金とカ
  ジタクのB社に対する買掛金を相殺処理する取引が含まれていた。本来
  相殺できない残高を相殺する実態を伴わない処理であり、損益調整によ
  り過大計上された売掛金を減額・再修正する目的で投入された仕訳と考
  えられる。


(イ )修正処理 の内容
   以上のとおりカジタクの会計記録はB社との取引実態を反映してい
  ないため、当委員会ではB社側記録に合わせて、カジタクの会計記録を
  修正することとした。
   B社関連の修正仕訳の概要は、以下のとおりである。


  (仕入計上漏れ修正等)
          仕入高         買掛金
          経費         その他債務
       仮払消費税
        租税公課
  (損失補填取引修正)
        売上値引          買掛金
  (相殺処理の修正)
          売掛金         買掛金


   「仕入計上漏れ修正等」は、簿外処理された仕入取引を追加計上する
  修正仕訳である。
   「売上値引処理の修正」は、前記損失補填取引に関する修正仕訳であ
  る。



                29
(ウ )規模
     現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)は、
    以下のとおりである。
                                    単位:億円
         項目       金額           摘要
                         監査前概算数値。調査対象期間
    証明写真機修正額       △17
                         全体の累積純資産影響額


エ   中古複写機 等の仕入れ の未計上
(ア )態様・方 法
     店頭支援事業では、新品販売が得意先を一巡した後、中古複写機等を
    下取り購入、転売した上で新たな機器の販売を行うなどの販売施策が推
    進されていた。
     C社からの買取りという形式で実行される中古複写機等の下取取引
    は、本来であれば、当該機器の検収時にC社からの仕入高が計上されな
    ければならない。しかしながら、カジタクでは仕入計上すべき金額の一
    部が簿外で未処理となっていた。


(イ )修正処理 の内容
     以上から、当委員会では、簿外処理された取引をC社の記録に基づき
    追加計上することとした。
     簿外処理された仕入高に関する修正仕訳は、以下のとおりである。


    (仕入計上漏れ修正等)
          仕入高               買掛金
         仮払消費税
         租税公課


(ウ )規模
     現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)は、
    以下のとおりである。




                    30
                                    単位:億円
           項目      金額          摘要
                         監査前概算数値。調査対象期間
    中古複写機仕入修正額     △12
                         全体の累積純資産影響額


オ   新品複写機 の仕入れの 未計上等
(ア )態様・方 法
     店頭支援事業では、新品複写機をA社から仕入れているが、仕入記録
    の正確性を検証するため、A社に残高確認を送付し、カジタク側会計記
    録と照合したところ、証明写真機や中古複写機同様、新品複写機につい
    ても仕入れの未計上が存在していた。


(イ )修正処理 の内容
     これは、カジタクで恣意的な利益調整が行われた結果生じた差異と考
    えられるため、当委員会では、A社の記録に基づいて取引金額の修正を
    行った。
     A社関連の修正仕訳は、以下のとおりである。


    (仕入計上漏れ修正等)
            仕入高             買掛金
            経費
                           その他債務
           仮払消費税
           租税公課


(ウ )規模
     現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)は、
    以下のとおりである。
                                    単位:億円
           項目      金額          摘要
                         監査前概算数値。調査対象期間
    新品複写機仕入修正額      △2
                         全体の累積純資産影響額


カ   実態を反映 しない棚卸 資産評価等
(ア )態様・方 法
     店頭支援事業では、複写機、証明写真機を見込発注することはなく、

                    31
    カジタクは複写機・証明写真機の在庫を保有しないことが通常である。
    しかしながら、販売拡大のため中古複写機の下取りを行うことになり
    年々中古複写機の在庫が拡大した結果、当該在庫金額が増加する傾向に
    あった。また、証明写真機に関しては、カジタク、B社及びZ社の 3 社
    で共同開発した経緯があり、証明写真機の販売不振が明らかになった際
    に、カジタクで証明写真機を在庫として引き取らざるを得ない状況が生
    じていた。
        上記の経緯でカジタクが保有することになった中古複写機・証明写真
    機については、決算上、将来の販売見込みに応じて低価法による評価減
    の要否を検討する必要がある。しかしながら、カジタクではそのような
    検討は行われておらず、市場実勢を上回る評価がなされていた。
        また、当委員会の調査の中で、利益の過大計上を意図した期末のコピ
    ー用紙在庫の評価単価の水増しが行われていたことも判明した。


(イ )修正処理 の内容
        以上の状況を踏まえ、当委員会では、カジタクの中古複写機、証明写
    真機、コピー用紙在庫について評価減を行うこととした。
        棚卸資産評価減に関する修正仕訳は、以下のとおりである。


    (棚卸資産評価減)
           売上原価             商品


(ウ )規模
        現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)は、
    以下のとおりである。
                                      単位:億円
           項目     金額             摘要
                         監査前概算数値。調査対象期間
    棚卸資産評価損        △13
                         全体の累積純資産影響額


キ   その他の不 正行為
(ア )実態を伴 わない売掛 金・勘定残 高の存在
    A   態様・方法
         前述のとおり、カジタクの店頭支援事業本部勘定には、多額の実態
        を伴わない残高が含まれている。

                    32
       そのため当委員会では、家事支援事業本部、管理本部を含めたカジ
      タク全社の直近年度の勘定残高を対象に、実態を伴わない残高の有無
      について検証を行った。
       当該検証作業の一環として、当委員会で、店頭支援事業・家事支援
      事業を含むカジタク全社の大口得意先に対して売掛金の残高確認を
      実施したところ、実態の伴わない利益調整が行われた結果生じたもの
      と認められる重要な差異残高が存在することが判明した。


  B   修正処理の 内容
       そこで、当委員会では、残高確認結果に合わせてカジタク会計記録
      を修正することとした。
       上記修正に関する修正仕訳は、以下のとおりである。
  (売掛金残高確認修正)
             売上高             売掛金
             仕入高
           仮受消費税


       仕入高の修正は売上高と相殺処理された金額の戻入れに係るもの
      である。


  C   規模
       現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)
      は、以下のとおりである。
                                        単位:億円
             項目     金額             摘要
                           監査前概算数値。調査対象期間
      売掛金残高確認修正       △1
                           全体の累積純資産影響額


(イ )実態を伴 わない仮勘 定残高の残 置
  A   態様・方法
       カジタクの損益調整は、「仮費用(債務勘定)」勘定を相手勘定と
      して実行されることが多かったため、「仮費用」残高には実態を伴わ
      ない不明残高が残置していた。




                     33
  B   修正処理の 内容
       そのため、当委員会では、取引記録の個別検討を行って不明残高の
      取消し修正を行った。
       上記修正に関する修正仕訳は、以下のとおりである。


  (仮勘定修正)
      その他債務(仮費用)             売上値引
                              仕入高
                              経費
                             仮払消費税




  C   規模
       現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)
      は、以下のとおりである。
                                         単位:億円
           項目      金額               摘要
                            監査前概算数値。調査対象期間
      仮勘定修正           0.4
                            全体の累積純資産影響額


(ウ )修正を要 するその他 の不適切な 会計処理
  A   態様・方法
       カジタク全社の直近勘定残高を対象に実施された架空残高・未計上
      債務の有無の検証作業により、本来当期費用として計上すべきネット
      ワーク管理費がソフトウエア(無形固定資産)に計上されていること
      その他負債が過小計上されていることなど、修正すべき取引の存在が
      明らかになった。


  B   修正処理の 内容
       これらの取引は利益調整の一環として実施された可能性が高いた
      め、当委員会では実態とは異なる修正すべき取引と認定した。当該修
      正に関する修正仕訳は、以下のとおりである。




                     34
          (その他修正)
                     経費             その他債務
                    仮払消費税          ソフトウエア


               ※主要な修正仕訳の一部を記載している。


          C    規模
               現時点で当委員会が認識している累積純資産影響額(監査前数値)
              は、以下のとおりである。
                                              単位:億円
                     項目     金額           摘要
                                   監査前概算数値。調査対象期間
              その他修正           △3
                                   全体の累積純資産影響額


     ク    小括
          以上の次第であり、カジタクにおいては、未設置物件請求及び損益調整
         によって、本来は認められない売上げが計上されることで、財務諸表上架
         空の売上げが計上されていた。また、B社からの仕入れについて、2018年3
         月から費用ないし原価として計上されず、2018年度の月次の会計データに
         おいて、債務が過少に計上される事態となった。これらの他にも、中古・
         新品複写機の仕入れ未計上、在庫残高の水増し、ネットワーク管理費のソ
         フトウエアへの計上等も行われていたことにより、カジタクの財務諸表は
         粉飾された内容となっていた。
          なお、当委員会では、本件について前述の調査方法により可能な限りの
         調査を実施したものであるが、収集できた資料には限界があり、必ずしも
         網羅的なものではないことは留意されたい。


(2 )その他対 象子法人に おける本不 正行為及び これに類す る不正の有 無
         当委員会では、その他対象子法人の財務諸表分析及び証憑突合を実施し、
     不正の兆候の有無について検討を行ったが、問題となる事項は発見されなか
     った。


5    本件の貴社 連結財務諸 表への影響
     当委員会の調査によって判明した、現時点における貴社連結財務諸表の純資
    産に与える影響総額は、以下のとおりである。

                             35
     なお、カジタクにおいて、①調査対象期間全般にわたり損益調整が行われた
    結果、実態を表す適切な会計記録が存在していないこと、②複写機、証明写真
    機等の商品の受払記録が存在していないことなどの要因が障害となって、本調
    査における影響額の算定作業は現在も継続中である。
     そのため、現時点では、期間帰属の適正性を考慮した会計期間ごとの影響額
    の試算が完了していない点に留意されたい。
                                       単位:億円
             項目           金額          摘要
 未設置物件請求修正額                   △ 23 監査前概算数値。
 架空売上修正額                      △ 26 調査対象期間全体の
 証明写真機修正額                     △ 17 累積純資産影響額。
 中古複写機仕入修正額                   △ 12
 その他仕入修正額                     △ 2
 棚卸資産評価損                      △ 13
 売掛金残高確認修正                    △ 1
 仮勘定修正                         0.4
 その他修正                        △ 3
 合計                           △ 96


6    本件に至る 背景事情、 経緯等
(1 )はじめに
         カジタクによる前述5の不正行為(以下、これらを総称して 本不 正行為」
                                    「
     という。)が行われた背景事情、経緯及び考えられる動機について、当委員
     会が現時点で認定している事項は、以下のとおりである。


(2 )組織的背 景
     ア    営業優位の 体質
          カジタクは、常勤取締役らが中心となって2008年に設立され、管理本部
         担当の執行役員も設立当初より参画していた。常勤取締役らは、営業優位
         の気質であり、カジタク全体の企業気質も、営業優先であった。


     イ    店頭支援事 業本部にお いて売上げ を計上する 必要性
          家事支援事業本部は、カジタクの設立以来、部門としては赤字続きであ
         り、構造的に黒字とはなりにくいものであった。このためカジタクとして


                         36
      は、会社全体としては健全な経営状態であることを示すために、店頭支援
      事業本部において売上げ、利益を予算どおりに計上する必要があったと考
      えられる。


  ウ    貴社への説 明
       カジタクは、親会社である貴社に対し、予算の承認を得るとともに、月
      次で予算の達成状況や財務状況等を報告する必要があった。この月次報告
      の際に、予算未達であると、原因や対策について詳細な説明を求められる
      など、カジタクの経営陣としては厳しいと感じる追及を受けていた。
       この事情が背景にあるものと考えられるが、カジタクは、親会社である
      貴社を通じて、イオン株式会社から店頭支援事業本部の複写機等販売のビ
      ジネスで使用されている契約書のサンプルの開示等を求められた際に、証
      明写真販売取引に用いられているC社との覚書サンプルを、本来は定めら
      れている調整金条項(エンドユーザーにおいて月額カウンター料金が月額
      基本料金に満たない場合に、カジタクがその差額をC社に対して直接支払
      う旨の規定)を削除した上で、貴社及びイオン株式会社に提出していたこ
      とが認められ、貴社の監査等において不都合な事実を隠す操作をしていた
      と考えられる。


(3 )本件不正 に至る経緯 及び考えら れる動機
  ア    中古複写機 等の引取り を行うまで の店頭支援 事業本部の 事業
       カジタク設立後の店頭支援事業本部の事業は、主として新規顧客(地域
      の小売店等)を開拓し、新規に複写機等を納入する事業であった。この当
      時は、カジタクが複写機等の在庫を保有することはほぼなく、受注後に複
      写機等を仕入れ、リース会社に販売し、顧客に設置していた。カジタクが
      複写機等を納入する顧客の大半は、リース取引によって複写機等を導入、
      設置していた。新規顧客の事業モデルの場合、中古複写機等の引取りによ
      る経費が発生することも、基本料金をカジタクがC社に補填することもな
      かった。


  イ    既存顧客中 心のビジネ スの開始及 びその性質
       2012年ころから、カジタクが複写機等を設置した既存顧客が、既設の複
      写機等を新しい機種に変更したいというニーズが生じるようになった。カ
      ジタクの店頭支援事業本部の事業を始めた当初は、顧客は、新規に複写機
      等を設置するエンドユーザーが中心であったところ、原則として5年間のレ

                      37
    ンタル期間が経過した後は、すでにカジタクから複写機等を設置している
    既存顧客のリピート案件が増加した。複写機等販売事業においては、リー
    ス期間又はレンタル期間満了の数か月前には新しい機械に交換するか否か
    の営業活動、競争が開始することから、残リース期間ないし残レンタル期
    間分のリース料ないしレンタル料相当額を販売会社が負担し、当該顧客に
    新しい機種を設置してもらうことが行われていた。カジタクにおいても、
    残レンタル料相当額を自ら負担することを既存顧客に提案し、レンタル契
    約を中途解約させてカジタクが当該解約金等を負担し、中古複写機等をカ
    ジタクが引き取るサービスを行うようになった。このような複写機等の入
    替えの商談においてカジタクは、前述のとおり、エンドユーザーにC社か
    らのレンタル取引への切替えを進めており、スーパーマーケットやドラッ
    グストア等への複写機等の設置取引に係る市場がすでに飽和、成熟化して
    いたことも相まって、カジタクが無理な営業活動を行った結果、損失補填
    取引(月額基本料金を月額カウンター料金(保守・管理料金に相当)が上
    回らなければこれを取得できないか、若しくは月額基本料金を月額カウン
    ター料金(保守・管理料金に相当)が下回った場合でも、エンドユーザー
    が負担すべき当該差額をカジタクが負担する内容となる取引)が増加する
    こととなった。


ウ    中古複写機 等及び証明 写真機事業 への参入
     カジタクは、解約金を負担して引き取った中古複写機等の数が増加する
    ことに伴い、希望する顧客に販売するビジネス(以下 中古複 写機等事業」
                            「
    という。 を、
        ) 2015年ころから始めた。かかる中古複写機等事業については、
    引き取った中古複写機等が再販されることによる売上増加の機会がある一
    方、引き取った中古複写機等のうち40%は陳腐化等の理由により再販がで
    きず、カジタクにおいて引取りに係る費用及び廃棄費用のみが生じる状態
    であった。
     カジタクにおいては、引き取った中古複写機等の個々の物件の管理が厳
    密には行われておらず、また、中古複写機等の販売事業が店頭支援事業本
    部の収支にどのような影響を与えるかの検証が行われていなかった。また、
    カジタクの販売管理費について、店頭支援事業本部及び家事支援事業本部
    の事業部門別のセクション情報は計算・把握されていなかった。
     また、カジタクは、複写機の販売事業について、新規顧客の開拓は鈍化
    し、既存顧客の入替需要が中心となったことから、2017年ころより、証明
    写真機の販売に重点を置くようになった。カジタクは、証明写真機の安定

                    38
    的な仕入れを確保するために、Z社の証明写真機の開発にB社とともに参画
    し、その後、B社を通じてZ社から証明写真機の仕入れを行った。


エ    未設置物件 請求(特に 証明写真機 )の拡大
     カジタクは、中古複写機等事業における収支の状況を正確に把握できて
    いないまま、2015年ころから同事業を拡大していた。その背景には、既存
    顧客においてスーパーマーケットやドラッグストア等の業種を超えた競争
    が意識されるようになり、店舗に設置する複写機等を最新の機種に早期に
    変更したいというニーズが高まっていたこと、かかる店舗における複写機
    等設置の市場はすでに飽和、成熟化していたことがあった。店頭支援事業
    本部の法人営業部は、このような早期解約が必要な商談は解約金の負担が
    高額になるものの、多少無理をしてでも獲得する選択を重ねた。しかし、
    その判断においては、店頭支援事業における取引単位が1取引で数億円規模
    の売上げが生じるような大きなものであったこともあり、実際に必要なコ
    ストが適切に考慮されていなかったため、解約金及びその他の諸費用(前
    述の月額基本料金の補填費用を含む。 を考慮すれば粗利がマイナスとなる
                     )
    取引もあったと考えられる。また、レンタル取引の増加に伴う保守料金収
    入の減少及び基本料金の補填についても考慮されていなかったと思われ、
    事業全体の収支は悪化していたと考えられる。さらに、カジタクが2015年
    ころから営業に注力していた証明写真機については、需要調査が行われず
    に損失補填取引とセットで販売を進めたことから、本来は、十分な需要が
    ない店舗等に設置されたものが相当程度あると見られる。
     このような背景事情の下で、カジタクは、売上げの確保と早期の資金回
    収のために、2017年ころから未設置物件請求を拡大していった。カジタク
    は、当時、複写機よりも証明写真機の需要が多いと判断し、証明写真機の
    販売の営業に注力し、結果として、証明写真機に係る未設置物件請求が拡
    大していった。さらに、上記のとおり、既存レンタル契約の解約金の負担
    と基本料金の補填によって、粗利がマイナスとなる取引が相当の規模で存
    在していたものと思われる。結果として、多数の未設置物件請求が寄与し
    て、2017年は表面上の売上げは増加したが、その反動として、2018年ころ
    から急激に資金繰りが悪化した。


オ    組換え取引 の拡大
     カジタクが未設置物件請求を拡大したころから、カジタクの店頭支援事
    業本部は、複写機等のソフトウエアの更新による新機能の追加や一部部品

                    39
    の交換を行ったに過ぎない物件について、部品等を交換してレンタル期間
    を延長する取引とはせずに複写機等を入れ替えたとして、既存のレンタル
    取引の精算、カジタクからC社への売却、再レンタル契約の各契約を締結
    し、C社から当該中古複写機等に係る代金を請求する取引(「入替え」「組
                                    、
    換え」などと呼ばれていた。)を行っていた。これらの取引は、本来、ソフ
    トウエアの更新や新機能追加等の保守サービスに分類されるものであり、
    既存のレンタル取引を解消して、新たな取引を行う必然性は乏しいと思わ
    れる。入替え取引においては、当該同じ複写機等について、カジタクから
    C社に対する新たな売買取引が行われることから、カジタクによる架空の
    売上計上には該当しないものの、カジタクが売上げを計上するために、本
    来は保守サービスに分類されるべき取引が、意図的に組換え取引として行
    われていた可能性は否定できない。


カ     資金繰りの 悪化及び貴 社からの借 入れ
     カジタクは、2017年ころから証明写真機の販売に重点を置いていたとこ
    ろ、販売した際に直ちに設置できるようにするため、B社から、販売見込
    台数の証明写真機の仕入れを先行して行うこととした。これは、B社に対
    して一定数量の仕入れをカジタクが約束していたこと、また、B社に対し
    て 証 明 写 真 機 を 発 注 し て か ら 納 入 さ れ る ま で に 3か 月 の リ ー ド タ イ ム が あ
    るところ、これを短縮するためであった。
     しかしながら、2018年夏になっても証明写真機の実際の販売は計画どお
    りに実現せず、B社に対する証明写真機の仕入代金の支払が先行し、カジ
    タクの資金繰りはさらに厳しい状況に陥った。役職員が当時やり取りして
    いたメールからも、遅くとも2018年2月にはB社に対する支払を遅らせてい
    ることが認められ、かつ、同年3月ころからは、前述のとおりB社に対する
    仕入れの未計上が発生している。2018年6月には、法人営業部のある部長が、
    オペレーション部の担当者とともに、顧客から入手した契約書の日付を文
    字を消すことができるペンで記入した後、この日付を消して1か月早い日付
    を無断で記入し、これをC社に提出することで、代金の支払を1か月早める
    操作を行うまでに至っていた。
     さらに、2017年からはカジタクが売上げを計上しつつ、かつ、早期に現
    金化することを企図して、未設置物件請求が拡大して行った。
     このような事態に至り、カジタクは資金不足に陥り、2018年5月から6月
    にかけて、カジタクの社長が知人から借り入れてZ社経由でカジタクに約1
    億8000万円の資金を融通したものの状況は改善せず、同年8月に親会社であ

                               40
    る貴社より10億円の借入れを、2019年2月末を返済期日として行った。しか
    しながら、上記の財務状況を半年弱の間で改善することはできず、2019年1
    月にはかかる借入れの返済計画の延期が行われた。かかる借入れの際には、
    実態を伴わない粉飾された財務諸表等の資料が、カジタクから貴社に提出
    されている。


キ    オペレーシ ョン部従業 員らの申告
     前述のとおり、カジタクは、資金繰りが悪化した2017年頃から、証明写
    真機の販売取引において、未設置物件請求によって売上げを計上し、C社
    からの支払を受ける行為を増加させているが、前述の「入替え」や「組換
    え」と呼ばれる手法の導入、前述の契約書日付改ざんの発覚等もあり、物
    件の設置事務を担当していたオペレーション部の複数の従業員らの中には、
    C社に対して物件を設置したと嘘をついて代金を請求するのは不正行為で
    はないかと思い悩み、遅くとも2018年8月ころにはオペレーション部部長や
    人事担当に申告、相談する者も現れた。これに対し、常勤取締役らがその
    対応を検討したが、常勤取締役らは、この申告に対して改善を約束する一
    方で、適切かつ迅速な解決策を講じることなく、むしろ未設置販売請求は
    継続された。なお、上記従業員のうち2名は、その後カジタクを退職してい
    る。


ク    本件の発覚
     以上のような経過を辿り、カジタクにおいて、当面の資金繰りに窮した
    ため、貴社に対して相談することとなり、本件が発覚するに至った。


ケ    カジタク経 営陣の認識 及び考えら れる動機
     カジタクの主要な経営陣は、常勤取締役ら及び管理本部担当の執行役員
    である(以下、併せて「 経 営陣」ということがある。 。カジタクの経営陣
                              )
    は、いずれも本不正行為は会計の知識の欠如や決裁手続の運用不備によっ
    て生じたものであり、本不正行為への関与や認識について認めていない。
     しかしながら、前述の組織的背景及び本件に至る経緯、これらの金額的
    な規模に照らせば、経営陣が本不正行為及びこれらが不正であることを認
    識していなかったとは考えられない。
     すなわち、損益調整については、管理本部担当執行役員らは店頭支援事
    業本部作成の販売計画がカジタクの正しい姿を示すものであったと述べる
    が、その根拠として的確な説明をすることはなく、むしろ販売計画は法人

                    41
営業部の従業員が自ら入力するもので証憑の裏付けがないことは明らかで
ある以上、経営陣が損益調整を不適切であることを認識していた可能性が
高いと考えられる。経営陣は、決算書類の作成の際に、在庫の複写機等や
在庫のコピー用紙の残高を、棚卸によって得られた数値ではなく、帳尻を
合わせた数字として調整していたことから、販管管理や在庫の調整によっ
て、財務諸表の数値を調整しようとしていた意図は強く疑われる。
 また、未設置物件請求については、確かに、当該取引が行われた当初は、
翌月又は数か月以内に設置されることが明らかな場合に限って行われてい
たようであり、取引を行った担当者の動機にも強い違法性の認識はなかっ
たように思われる。しかしながら、1年を超えて未設置である取引も相当数
見られるところであり、これらの取引が、設置の見込みもなく、売上げを
計上し、又は資金繰りを改善するために行われた金融取引であったことは
疑いようもない。そして、これらの取引は、直接的にカジタクの社長から
の指示があったことを認める従業員の供述があり、これに沿うメールも存
在する上、前述のとおりC社から未設置物件請求に対する指摘及び勉強会
が実施され、オペレーション部の複数の従業員からの未設置物件請求に関
する申告、相談があったにもかかわらず、その後も未設置物件請求は続け
られていた。かかる事実に鑑みれば、常勤取締役らが未設置物件請求を少
なくとも認識し、認容しており、かつ、これはカジタクの社長の指示によ
るものであったと考えられる。
 さらに、B社からの仕入れ未計上については、前述のとおりカジタクの
資金繰りが悪化した2018年3月になって、B社からの請求に対する会計及び
支払処理のみを経費精算システムではなく同システム導入より前の紙媒体
による方法に戻したにもかかわらず、会計処理は従前のものに戻さずに仕
入れとして計上しなかったという経緯自体が不自然であり、未設置物件請
求や損益調整が実施されていることも考慮すれば、経理担当者ら及び経営
陣は否定するものの、意図的にB社からの仕入れを計上しない処理をした
可能性も否定できない。以上の他の本不正行為についても、同様に経営陣
による意図的な操作である可能性があると認められる。
 本不正行為がいずれも意図的に行われていたとすると、その動機は、店
頭支援事業の市場は飽和し、家事支援事業は伸び悩む中で、営業重視の予
算必達の企業風土の下、店頭支援事業の拡大及び予算を達成するという経
営陣の強い目的意識のために、また、親会社である貴社からの厳しいと受
け取れる追及を回避するべく月次の予算を達成しているかのように装うた
めに、中古複写機等販売事業や損失補填取引等の粗利がマイナスとなる可

                 42
能性がある無理な取引をしてまで売上げを上げようとしたものである。さ
らに、新たに取り組んだ証明写真機の販売も、計画どおりに進まずに仕入
れの支払が先行することとなり、その簿外での処理による隠蔽も行われた
ものと思われる。このような状況下で、カジタクの財務状況は急速に悪化
したことから、資金繰りの悪化を改善しようとするために、経営陣は本不
正行為を継続したものと考えられる。


 現時点での当委員会の認定は以上のとおりであるが、本不正行為が発生
した経緯及び原因については、親会社である貴社の子会社管理の問題の有
無を含めて、現在も調査を継続しているところである。そのため、以上の
認定についても一部修正が必要となる可能性がある点について留意された
い。本不正行為の原因の分析及びこれを踏まえた貴社の子会社管理を含め
た再発防止策の提言については、最終報告書で改めて報告する予定である。


                              以   上




              43