9621 建設技研 2021-08-12 15:00:00
特別調査委員会からの調査報告書受領と当社の対応について [pdf]

                                                                             2021年8月12日
各            位
                                                       東京都中央区日本橋浜町三丁目21番1号
                                                           株 式 会 社 建 設 技 術 研 究 所
                                                            代表取締役社長            中 村 哲 己
                                                           (コード番号       9621   東証第一部)
                                                                 問合先     法務室長      大貫俊二
                                                                        電話     03—3668—4128

                   特別調査委員会からの調査報告書受領と当社の対応について


    2021 年 5 月 28 日 に お 知 ら せ い た し ま し た 当 社 社 員 の 不 正 行 為 に 関 し て 、 特 別 調 査 委 員 会 か ら の 調
査報告書を受領しました。あわせて、調査報告書の受領を受けて下記のとおり対応等を決定いたしま
したのでお知らせいたします。
    このような事態は誠に遺憾であり、関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。今後は、すべての
役員と従業員にあらためてコンプライアンス意識を徹底し、信頼回復に努めてまいります。
                                             記
1.特別調査委員会の報告書
       今回の不正行為は、当社社員が当社の外注システムを利用して架空発注を行い、自らが実質的
     に経営する会社に還流させ、当該会社から当社に転籍した者への給与補填と当該会社の運転資金
     等に充当していたもので、その詳細は添付の報告書のとおりです。なお、調査の過程で、案件の
     抽出漏れが発見され、不正の額は10百万円増加し128百万円となりました。
2.当社の対応
(1)関係者の処分
       本件に直接関与した社員につきましては懲戒解雇、他の関係した社員につきましても、社内規
     程に従い厳正な処分を決定しました。
       また、経営責任を明確にするため、取締役会で以下の処分を決議しました。
       ・取締役副会長         寺井和弘(処分対象:東京本社長)                  取締役報酬20%減額2カ月
       ・代表取締役社長          中村哲己(処分対象:東京本社長)                  取締役報酬30%減額2カ月
       ・代表取締役専務執行役員              西村達也(処分対象:事業部門担当)取締役報酬20%減額2カ月
       ・取締役執行役員          鈴木直人(処分対象:管理本部長)取締役報酬10%減額2カ月
       ・その他の取締役(社外を除く)                 代表取締役社長から口頭厳重注意
(2)再発防止策
       特別調査委員会から、外注を含む業務システムの改善、業務執行体制に関する改善、就業規則
     改正のその他の改善の提言を受けました。今後具体的な改善を進め再発防止を図ります。
3.本件の周辺調査の結果
       管 理 本 部 財 務 ・ 経 理 部 長 が 責 任 者 と な り 、 2012 年 4 月 以 降 の 類 似 案 件 を 抽 出 し 、 取 引 の 実 在
     性の確認、取引先アンケート、データ復元等による調査を行いましたが、新たな不正は発見され
     ませんでした。
4.業績への影響
       2016年12月 期から2020 年12月期ま での親会社 株主に帰属 する当期純 利益への影 響見積額は、
     2018年16百万円減、2019年36百万円減、2020年13百万円増にとどまり、各会計期間の影響が軽
     微であるため遡及修正は行いません。
       今 期 は 、 未 成 業 務 支 出 金 ( 一 般 的 に は 「 仕 掛 品 」 に 相 当 ) に 計 上 さ れ た 架 空 外 注 分 29 百 万 円
     とその消費税等2百万円を不正関連損失として営業外費用に計上する他、過年度に過大計上され
     た 仮 払 消 費 税 等 の 精 算 と し て の 消 費 税 等 お よ び 過 年 度 分 の 法 人 税 等 を 合 わ せ て 45 百 万 円 見 積 計
     上する予定で、業績に与える影響は軽微であります。
                                                                                       以上
東京本社内技術部における不正外注に関する調査報告書
           (開示版)




        2021年8月12日




東京本社内技術部における不正外注に関する特別調査委員会
                                          2021年8月12日




株式会社建設技術研究所
 代表取締役社長    中村哲己殿




           株式会社建設技術研究所
           東京本社内技術部における不正外注に関する特別調査委員会


             委   員   長   秋葉    努
                         取締役常務執行役員ガバナンス統括本部長

             副委員長        鈴木直人
                         取締役執行役員管理本部長

             委       員   中下惠勇
                         常勤監査役

             委       員   弁護士       板橋喜彦
                         新都総合法律事務所
                                   目   次




Ⅰ.調査の概要 .................................................................. 1
 1.調査の端緒等 .............................................................. 1
 2.社内調査委員会 ............................................................ 1
 3.社内調査委員会による調査 .................................................. 1
 4.特別調査委員会の設置 ...................................................... 2
 5.特別調査委員会の構成 ...................................................... 2
 6.特別調査委員会による調査 .................................................. 2
Ⅱ.調査結果 .................................................................... 3
 1.予備調査 .................................................................. 3
 2.外注記録の抽出と確認 ...................................................... 3
 3.社内ヒアリング ............................................................ 5
 4.社員Xへの確認聴取 ........................................................ 6
 5.不正外注に至った経緯 ...................................................... 6
 6.取締役を含む関係者へのヒアリングおよび調査 ................................ 7
 7.当社従業員の関与 ......................................................... 10
Ⅲ.不正の事実とその原因 ....................................................... 11
 1.認定された事実 ........................................................... 11
 2.今回の不正の原因 ......................................................... 12
Ⅳ.再発防止策への提言 ......................................................... 15
 1.外注を含む業務システムの改善 ............................................. 15
 2.業務執行体制に関する改善 ................................................. 17
 3.その他の改善 ............................................................. 18
Ⅴ.類似案件調査 ............................................................... 18
 1.調査対象の設定 ........................................................... 18
 2.調査方法 ................................................................. 18
 3.調査結果 ................................................................. 19
Ⅰ.調査の概要

1.調査の端緒等
      2021年1月29日に東京本社内の技術部(以下、「技術部」という。)の部長からガバ
  ナンス統括本部コンプライアンス室長に相談があり、技術部の社員Xには従業員から多
  額の金銭の借入があることが判明した。金銭貸借が多額なこと、勤務時間に行われたこ
  と、不適切な外注がなされた疑いもあることから、事実関係を明確にして必要な対応を
  行うために、2021年2月18日に東京本社長の発案で社内調査委員会を設置した。


2.社内調査委員会
  委    員   長:東京本社長(*)
  副 委 員 長:ガバナンス統括本部長、管理本部長
  委        員:法務室長、管理本部総務部長、東京本社総務部長
  アドバイザー:石川剛顧問弁護士
  事    務   局:法務室員、東京本社総務部次長(*)
  東京本社メンバー(*)は、2021年4月以降の人事異動にかかわらず委員を継続する。


3.社内調査委員会による調査
      調査は、予備調査、取引記録の抽出と確認、社内ヒアリング、社外ヒアリングおよび
  社員Xへの確認聴取により実施した。その概要は以下のとおりである。
(1)予備調査
      社員Xが社員Xの父親を代表取締役としてA社を設立していることが判明したため、
  A社の登記情報などをもとに社員XおよびA社関係者の財産状況を調査した。また、石
  川顧問弁護士同席で、社員X本人から事情を聴取した。その後、追加の聴取をした。
(2)取引記録の抽出と確認
      社員Xが発注に関与した疑いが強いA社、B社、C社、D社および個人外注先の社員
  Xの父親に対する発注または購入(以下、「外注」という。)の記録を、東京本社総務
  部が抽出した。なお、技術部の他の外注記録は別途確認し、不正外注は、A社、B社、
  C社およびD社に対してのみ行われていたことを確認している。
(3)社外ヒアリング
      抽出した外注記録について、A社は社員Xおよび代表取締役である社員Xの父親(個
  人外注先としての社員Xの父親を含める)に、B社は代表電話への電話後対応した社員
  Xの兄に、C社はC社担当者に、D社はD社設立者(現代表者の配偶者)に確認した。
  なお、D社については、社内調査委員会から調査を引き継いだ特別調査委員会にて実施
  した。
(4)社内ヒアリング
      技術部に所属する者のうち、社員Xに金銭を貸し付けた者、A社の関係者および調査
  の手掛かりとなりそうな者に対するヒアリングを実施した。
      なお、機密保持のため、個別に対面でヒアリングを実施したが、新型コロナウィルス
  感染拡大防止のための在宅勤務の者が多かったため、終了までに長期間を要した。

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(5)社員Xへの確認聴取
      上記(4)までの調査結果を踏まえ、2021年5月7日に社員X本人に対し、石川顧問
  弁護士、前東京本社長、ガバナンス統括本部長および法務室がヒアリングを実施し、5
  月10日にガバナンス統括本部長および法務室が補充の聴取を実施した。


4.特別調査委員会の設置
      2021年5月14日に開催された臨時取締役会において、社内調査委員会により判明した
  技術部における不正外注の概要が報告された。本件の深刻な状況を勘案し、外部の弁護
  士を加え、調査の独立性を確保した特別調査委員会を設置し、速やかに調査結果を取締
  役会に報告することが決議された。特別調査委員会は、取締役会の諮問委員会であるが、
  取締役会の指揮命令に属さず独立してその職務にあたった。


5.特別調査委員会の構成
  委 員 長:ガバナンス統括本部長
  副委員長:管理本部長
  委     員:常勤監査役、板橋喜彦弁護士
  事 務 局:法務室長、法務室員
      板橋喜彦弁護士は、当社の内部通報窓口の社外窓口を依頼している弁護士であり、当
  社の業務内容を理解していることに加え、これまでに第三者委員会を担当した経験が豊
  富であることから、委員への就任を依頼した。


6.特別調査委員会による調査
      調査は、社内調査委員会による調査を継続するとともに取締役を含む関係者へのヒア
  リングにより実施した。その概要は以下のとおりである。
(1)社内調査委員会による調査の継続
      上記3について結果を検証し、特段の問題が見受けられなかったため、社内調査委員
  会による調査を継続し、不足と判断した部分において追加調査を実施することとした。
(2)取締役を含む関係者へのヒアリングおよび調査
      不正外注があったとされる期間において技術部が所属する東京本社または事業部門の
  責任者またはそれに準じる立場にあった取締役および執行役員に対し、事務局である法
  務室が反面調査ヒアリングを実施した。あわせて、クレーム報告書および事業部門会議
  議事録を確認した。
(3)委員会の開催等
      調査報告書の作成や取締役会への報告のため、以下のとおり委員会を開催したほか、
  委員と事務局とは適宜協議を実施した。
   第1回 2021年5月25日 13:05~15:15
   第2回 2021年6月10日 14:50~17:20
   第3回 2021年6月22日 15:30~17:00
   第4回 2021年7月2日   9:00~10:00
   第5回 2021年7月8日   メール審議
   第6回 2021年7月21日  メール審議
   第7回 2021年8月4日  9:00~10:00


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Ⅱ.調査結果

1.予備調査
(1)社員Xの資産・負債の状況
   社員Xは、従業員に対し多額の負債があることが想定されたため、その返済能力を確
  認するため、A社の所在地、A社の代表取締役である社員Xの父親の住所等の土地建物
  の状況を確認した。
   社員Xは、A社の所在地に居住しているが、賃貸物件であり、返済原資にはならない。
   次に、A社の代表取締役である社員Xの父親の自宅住所を確認したところ、2006年に
  社員Xを債務者とする根抵当権の登記(当時社員Xは、当社とは別の勤務先に勤務して
  いた。)があったことが確認された。後者の代表取締役の資産も返済原資としては十分
  ではない。
(2)社員Xへの予備聴取
   2021年3月26日に、前東京本社長、石川顧問弁護士および法務室が聴取を実施した。
  社員Xは、かつて派遣会社E社から当社に派遣されていたことがあったが、E社の管理
  費控除が多額であったとして、派遣会社の管理費控除を少なくし、もって派遣社員の受
  取分を増やすために、新たな派遣会社とする目的で2016年にA社を設立したと述べた。
  あわせて、設立当初から資金繰りのためにファクタリング(借入に代えて運転資金を確
  保することを目的に債権を大幅に割り引いた買取り)を利用していたこと、派遣業の許
  可が取得できなかったことから、2017年にA社従業員を当社の契約社員およびアルバイ
  トに転籍させたこと、アルバイトについては転籍により所得が下がったため当社を退職
  してしまうことが考えられ、これを回避するためにA社時代の給与との差額を補填する
  必要が生じたこと、その補填費用を捻出するために当社従業員からの借入とともに技術
  部長および技術部次長了承のもと当社からA社への不正な外注取引を始めたことを説明
  した。
   A社への外注については、上記アルバイトへの補填のために技術部の外注手続担当者
  に依頼して行ったとも述べた。
   また、A社従業員が当社に転籍してしばらく経過したのち、補填終了として技術部長
  および技術部次長から補填のためのA社への発注を認められなくなったため、A社に迂
  回して発注するための会社を探すことにしたこと、B社、C社、D社の3社に一旦発注
  し、各社40%の管理費を控除後にA社に再発注される方法をとったこと、A社が受注し
  た業務は、社員Xが処理していたが、当社の勤務と区別なく当社内で生産したと説明し
  た。


2.外注記録の抽出と確認
   抽出した外注記録について、外注先に確認した。
(1)A社、A社の代表取締役
   2021年4月27日に法務室長が、A社の代表取締役でもある社員Xの父親と直接面会し
  て確認した。以下に概要を記す。
  ・社員XがA社を設立するにあたって代表者を探したが、引受け手がないとのことで、

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   社員Xから強い依頼を受けて代表者となった。自分から報酬の支払を求めたことはな
   く、数万円の支払いを何回か受けただけである。
  ・社員Xの父親は、建築系のコンサルタント出身で積算ができるため、社員Xの依頼を
   受けて、当社の東京本社で半年ほど働いたことはある。
(2)B社
   B社は測量・建設コンサルタント会社である。法務室長がB社の代表電話に電話して
  事情を説明したところ、社員Xの兄が担当として電話に出たため、2021年4月20日に法
  務室が直接面会して確認した。以下に概要を記す。
  ・社員Xの兄はB社の取締役である。兄弟ではあるが、母親と死別した後は、父親であ
   る社員Xの父親、社員Xとは疎遠になっている。
  ・当社からの外注を受注したのは、疎遠である社員Xより、コンプライアンス上の問題
   から、父親が代表取締役であるA社に直接発注できないため、代理受注してほしい旨
   の電話があったためである。一旦は断ったものの泣きつかれ、管理費相当分の25%だ
   け控除してA社に発注した。B社では何も作業しないため管理費相当分だけの控除と
   しており、40%も控除した事実はない。また、受注者として成果品の取りまとめが必
   要と考えていたが、社員Xから連絡がなかったため、一切の作業をしなかった。
(3)C社
   法務室長がC社の代表電話に電話し、状況を説明したところ、担当であるとして電話
  に出た者がいた。折り返しの電話を依頼したが電話がなかったため、2021年4月23日に
  法務室長がC社担当者に電話を入れ、確認を実施した。以下に概要を記す。
  ・C社担当者は、社員Xとは業務の関係で知己があり、社員Xから代理受注の依頼を受
   けた。
  ・代理受注の理由として、親族の会社に発注していたがコンプライアンス上の問題があ
   り発注できないためと聞いた。
  ・当社からの受注業務については、C社に適用される税率に応じ25%~15%程度を控除
   して、A社に発注した。40%も控除した事実はない。
(4)D社
   D社は、かつて技術部にE社からの派遣社員として勤務していた者が代表として設立
  した。現在は、設立者の配偶者が代表を務める会社である。
   社員XがD社設立者に電話を入れてもつながらない、と説明したので、法務室から手
  紙を送ったところ、D社設立者から電話があり、2021年5月25日に法務室長が直接面会
  して確認した。以下に概要を記す。
  ・D社は、D社設立者がE社に在籍していた時に設立した。理由は、もともと会社を持
   ちたいと思っていたからで、会社設立についてE社からとがめられることはなかった。
   同業者ではよくある話である。会社設立について、営業もかねて社員Xを含む周囲に
   話した。
  ・社員XからA社設立についての相談はなかった。
  ・D社が社員Xの依頼でA社への代理受注を始めたのは2015年12月で、技術部からの受
   注は、管理費として30%程度を控除して、すべてA社に再委託している。(社員Xの
   A社設立後という説明とは食い違っている。)

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  ・D社設立者が、E社から当社に派遣されていた2018年から2019年頃に、社員Xから百
   万円単位での借金の申込みがあったが、断った。E社からの別の派遣社員にも同様の
   申込みをしていたのではないかと思う。


3.社内ヒアリング
(1)実施方法、実施日程等
   2021年2月25日、社員Xと同等以上の等級にある正社員2名に対し、東京本社長およ
  び法務室がヒアリングを実施した。
   2021年3月25日、A社出身の契約社員に対し、石川顧問弁護士、前東京本社長および
  法務室がヒアリングを実施した。なお、当該契約社員に対するヒアリングは、社員Xと
  の関係に重点を置いたため、貸付額の精査はしていない。
   2021年4月12日、14日、16日および21日に、15名に対し、前東京本社長、ガバナンス
  統括本部長および法務室がヒアリングを実施した。15名の内訳は、正社員5名、契約社
  員2名、アルバイト8名である。
   2021年5月7日に技術部長に対し、石川顧問弁護士、ガバナンス統括本部長および法
  務室がヒアリングを実施した。
   2021年5月11日に技術部次長に対し、ガバナンス統括本部長および法務室がヒアリン
  グを実施した。
(2)金銭の貸借
   技術部内の正社員、契約社員、アルバイトの多くの者が社員Xに対し金銭を貸し付け
  ている、または過去に貸し付けたことがあることが判明した。
   貸し付けた理由としては、いずれも「A社の経営難」または「元A社従業員で現アル
  バイトへの給与差額補填」であり、社員Xを信用し、または社員Xに押し切られる形で
  貸し付けていた。
   貸 付 時 期 は 、 一 番 早 い 者 で A 社 が 設 立 さ れ て 間 も な い 時 期 ( 2016年 秋 頃 ) 、 直 近 で
  2020年秋であった。
   金銭の貸借は、従業員と社員Xとの間の個人的取引であり、本来当社がかかわるもの
  ではない。さらに、貸付者の中には、自身の貸付残高を把握せず、社員X任せの者も少
  なくなかったため、貸付残高を正確に把握することはできなかった。このため、ヒアリ
  ング終了時点での社員Xの借入残高は数千万円と推定した。
(3)元A社従業員に対する給与差額補填の実態
   社員Xが金銭を借り受ける理由としていた「元A社従業員で現アルバイトへの給与差
  額補填」について、「元A社従業員で現アルバイト」に該当する5名のうち、3名が補
  填の事実を認め、1名は回答を避け、1名は否定した。
   回答を避けた1名は、同時期にA社に入社した者の説明およびヒアリング時の反応か
  ら、具体額は真実記憶にないかもしれないが補填自体はあったものと強く推測される。
   また、すでに当社を退職した元A社従業員数名に対しても、当社退職まで補填があっ
  たとの説明が複数人からあった。
   他にも、A社の従業員ではなかったが、2016年の当社入社後1年~1年半にわたって、
  月に数万円を社員Xから受け取っていたがその理由は、社員Xから前職給与と当社給与

                                  5 / 19
  の差額を支払うと申出があり、深く考えずに受け取っていたと説明する者もいた。
      以上より、一部の者に対し給与補填は行われていたことに疑いはないが、個別の支払
  額などその詳細まで把握することはできなかった。


4.社員Xへの確認聴取
      社員Xに、調査結果について直接確認を行った。
(1)社員Xへの資金流入
  ①    A社(社員Xの父親を含む)への発注
        社 員 X は 、 A 社 へ の 発 注 の う ち 、 2016年 ~ 2017年 の 常 駐 外 注 分 を 除 く 19百 万 円
       は、A社の人件費の補填が目的であることを認めた。
  ②    A社以外への発注
        B社、C社、D社への発注がA社に再発注されていることを認めた。その際の
       3 社 の 管 理 費 控 除 率 に つ い て は 、 C 社 は 32% 、 D 社 は 30% で あ る と 説 明 を 改 め た
       が、B社の管理費控除率(25%)は、認めがたいとの返答であった。
  ③    社員Xの借入
        借入残高の合計が数千万円であることを認めた。
(2)社員Xの資金使途
  ①    ファクタリング費用
        社 員 X が 保 管 し て い た 契 約 書 か ら 、 社 員 X は 、 39回 フ ァ ク タ リ ン グ を 利 用 し て
       いた。利用した理由はA社の資金繰りのためであったが、ファクタリング業者に
       よ る 債 権 買 取 は 、 20~ 30% 程 度 控 除 さ れ る 上 に 、 数 万 円 の 手 数 料 を 請 求 さ れ る た
       め、ファクタリングに要した費用は20百万円を上回るものと推定した。
  ②    A社の元従業員への給与補填
        社員Xは、遅配はあったが必ず支払っていたと述べて自らが作成した記録を提
       出した。A社の元従業員の申告とは矛盾するものの、その照合が難しいことから
       社員Xが提出した記録に基づき合計30百万円を上回るものと推定した。
  ③    A社の経費
        A社が事業を行っていた常駐外注の人件費のほか、一時期雇用していた事務の
       パートの給与、顧問税理士報酬、税金、社会保険料、家賃(自宅の一部)などの
       経費を支出したと説明した。
  ④    その他経費
        社員Xは、A社の資金繰りのためにファクタリングを利用している。一般的に
       はファクタリングは最も利息相当額が高いものであるため、ファクタリングを利
       用する前に市中金融を利用することが通常であり、その利息などの相当額の支払
       いがあったと推定される。


5.不正外注に至った経緯
      社員Xへの聴取等調査を進めていく中で、委員会が認識した不正外注に至った経緯及
  び動機は、以下のとおりである。
(1)技術部内の契約社員・アルバイトの意識

                                    6 / 19
   社員Xは、主に契約社員・アルバイトの不満が今回不正に至った根底にあると主張し
  た。
   ・社員Xは、社員Xが主に担当している業務を生産していた契約社員、アルバイトは
       時給や派遣料が労働に見合ったものではないように感じており、このままでは不満
       をもった派遣社員とアルバイトとが退職してしまうと感じていた。
   ・社員Xが主に担当している業務は、経験ある正社員が多くの派遣社員やアルバイト
       を指導しながら生産している業務生産体制であり、派遣社員やアルバイトを退職さ
       せないことが不可欠であると考えていた。
   ・不満を解消する手立てとして管理費控除が少ない新たな派遣会社を社員X自身で設
       立し、派遣社員とアルバイトを所属させ当社に派遣するという計画を立てた。


(2)事業所および事業部門担当役員の対応
   技術部長、技術部次長等からの社内ヒアリングから、当社従業員が社員Xの不正に関
  与した理由として、以下の不満が技術部内にあることが判明した。
   ・部目標を大きく超える生産限界を超えた量の受注と業務遂行
   ・東京本社の幹部および事業部門担当役員の実効性のある対策の技術部依存
   そのため技術部では、生産限界を超えた受注量を生産するとなると、外注で対応可能
  な部分があれば積極的に発注するという方針をとるとともに、主担当の社員Xが少しで
  も働きやすい環境を整えたいとの思いから、外注稟議書が回議されれば作業内容を精査
  することなく承認した。当該技術部の部長・次長は、自分たちだけでどうにかしようと
  した結果が、今回の不正につながった一因であると説明した。
   この原因について、取締役および執行役員を含む関係者のヒアリング、技術部の外注
  状況等を詳細調査して、上記状況を確認した。


6.取締役を含む関係者へのヒアリングおよび調査
   社員Xからの聴取と社内ヒアリングにおいて、技術部が所属する事業所と事業部門か
  ら実効性のある指導のなかったことが不正外注に至った背景として示されたことから、
  事業所と事業部門の対応を検証すべく、個別に反面調査ヒアリング等を実施することと
  した。
(1)実施方法、実施日程
   2021年5月26日、不正外注があったとされる期間において東京本社長とそれを代行す
  る東京本社次長、2019年4月以降の事業部門担当役員に対し、反面調査ヒアリングを実
  施した。あわせて、事業部門の会議議事録を確認した。
   なお、反面調査ヒアリングに際し、特別調査委員会が独立である旨の確認書への署名
  を依頼し、全員から署名を得た。
(2)事業所と事業部門の関係
   当社では、一定の地域ごとに事業所を置くとともに、技術分野ごとにいくつかの事業
  部門を置いている。当社の規程においては、事業所と事業部門は対等である。
   事業所は、その担当地域における一切の業務を本社の指導を受けて行い、事業部門は、
  その管轄する事業分野において委任された一切の事項を行う。つまり、当社の技術部室

                      7 / 19
  は、その所在地を担当する事業所とその技術分野を管轄する事業部門の2つに属するこ
  とになる。
   各組織の所掌からは、仮に当社の技術部室において人手不足となった場合、単純な作
  業要員であれば事業所に、業務担当者レベルの人員を求めるのであれば事業部門に採用
  に関する報告や協議をすることになる。
(3)東京本社における外注稟議の取扱い
   外注 取 引に つい て 、当 社で は 、税 抜3百 万円 を境 に 見積 額で 決 裁権 者を わ けて い る 。
  見積 額が 税 抜3百万 円 未満 であ れ ば、 外注 取 引を 発注 す る部 の部 長 が決 裁権 者 であ り 、
  税抜3百万円以上であれば、事業所長が決裁権者である。
   一方、外注稟議は日々膨大な数が回議されるので、事業所長がその裁量によって定め
  る運用方針において、決裁権を事業所長から委任することがある。東京本社の場合、東
  京本社長が定めた運用方針に基づいて、東京本社長から副本社長または本社次長に決裁
  権が委任されていた。
   決裁権者が外注稟議を決裁する判断基準としては、発注理由が適切か、元契約で認め
  られていない「主たる部分の外注」ではないかどうか、見積書と発注内容に妥当性があ
  るかどうかがあげられる。なお、外注稟議の中には、決裁権者の専門外の分野に関する
  業務も当然あるが、その場合には、決裁権者がそれまでに技術者として得た知見をもと
  に、常識的な範囲での契約内容かどうかで判断している。
   しかしながら、社員Xが主に担当していた業務は、当初契約が少額での契約であり、
  外注取引も当初は少ない金額で発注し、成果品の納品を受けた後に精算することになっ
  てい るこ と が多 いた め 、稟 議起 案 時の 見積 額 が税 抜3百 万円 未満 で ある こと は 考え ら れ
  る。外注稟議が東京本社幹部に回議されないことは、特段不自然なことではない。
   また、社内ヒアリングの中で、技術部次長は、東京本社幹部に回議されない金額以下
  になるよう分割したと述べている。
   上記 の とお りで あ るの で、 ひ とつ の取 引 が外 注稟 議 起案 時点 で 税抜 3百万 円未 満 の 発
  注を恣意的に行われたことから、東京本社幹部が事前に認識することは不可能であった。
(4)2017年4月から2019年3月までの東京本社の認識
   不正外注があったとされる期間のうち、2017年4月から2019年3月までは、当時の本
  社次長は、業務の受注量が過大であること、人員の補充が必要であることについて認識
  していたが、本社長は、いずれについても相談や報告はなかったと述べた。本社次長は、
  自身の認識を本社長と共有せず、また、技術部からの相談は受けるものの、具体の対策
  は技術部任せであった。
   その結果、当該期間において、発注者からのクレーム対応は、受注事業所および東京
  本社が連携して実施していたが、東京本社幹部の技術部に対する実質的な対応は、以下
  のとおりであった。
   ・受注量が過大であることについては、技術部の残業時間の増大を懸念して「慎重に
   受注するように」との注意喚起にとどまり、原因究明と対策の実施は未着手(無対策)
   であった。
   ・人員の補充については、出向受け入れや常駐外注にて技術部が対応しただろうと述
   べるのみで、東京本社幹部として対策を主導した形跡はなかった。

                             8 / 19
(5)2019年4月からの東京本社の認識
   不正外注があったとされる期間のうち、2019年4月以降は、当時の本社長と本社次長
  とも、業務の受注量が過大であること、人員の補充が必要であることについて、自身の
  着任以前からの課題であると認識していた。
   しかしながら、技術部の業務は、生産できる会社が多くないため、発注者からの要請
  を断り切れず、生産に無理が生じないような条件を付けて受注せざるを得なかった。そ
  のため、過大な受注量自体に対しては、両氏とも対策を講じられなかった。
   ただし、状況把握は十分でなかったが、折に触れ技術部長に部内の様子を尋ねたり、
  人員補充の手当を講じたりしていたが改善(雇用の確保)に至らなかった。
   また、技術部が起案したデータ購入に関する一般稟議については、データ量と金額が
  見合っていると判断し決裁した。
   当該期間においては、技術部のために東京本社幹部が対策を一定程度講じたことは確
  認できた。
(6)クレーム報告書の調査
   当社は、発注者からの指摘や成果品のミス等について、当社の品質管理システムに従
  ってクレーム報告書を作成している。
   このクレーム報告書のうち、不正外注があったとされる期間に技術部が作成したもの
  を抽出して確認した。
   技術部が作成したクレーム報告書は、当該期間において10件存在する。このうちの多
  くが2017年4月から2019年3月までの2年間に作成されている。クレーム報告書の内容
  は、適切にチェックが実施されていれば防止できたと思われる送信先間違いや記載ミス
  等であった。事実、再発防止策には、業務担当者以外によるチェックや指差し確認等チ
  ェック体制の強化が記載されている。
   2年間で同種業務で同種のミスが発生していれば、その生産体制に根本的な理由があ
  るとの疑いを持ってしかるべきであるが、前述の(4)のとおり、2017年4月から2019
  年3月の東京本社幹部が、技術部に対し何らかの働きかけを行った形跡は見受けられな
  かった。
(7)事業部門担当役員の認識
   不正外注があったとされる期間のうち、2019年4月以降の事業部門担当役員の立場に
  あった者の記憶の限りでは、事業部門会議は3ヶ月に1回程度開催されるが、その会議
  で業務評定点が低いことやクレーム・ミスについて話しはあったが、体制が十分かどう
  か、外注先をどうするかといった話は一切なかったとのことである。
   また、社員Xが主に担当していた業務は、年度最初の部門会議の時点で業務量がある
  程度見えるが、発注者からの要請でさらに受注することがあるため、該当の発注者を担
  当する事業所の営業部に発注者と交渉してもらうこととの方針を決めていたが、事業部
  門では特段の対応はとっていなかったと述べた。
(8)技術部の所属する事業部門会議議事録の確認
   2016年2月から2021年2月までの事業部門幹部会の議事録を確認した。
   部門会議議事録を確認すると、2019年4月から、事業部門の運営が大きく変化してい
  ることが分かる。2019年3月までの事業部門会議議事録には、技術部の生産体制に配慮

                       9 / 19
  した記載が多く見られる。
      一方、2019年4月(次期部門担当役員として出席しているため、議事録上は3月)か
  らの事業部門会議議事録には、業務評定点や表彰などへの言及が目立つ。
      上記のとおり、議事録で確認する限り、2019年4月を境に、生産体制議論から評定点
  重視の議論に変わっている。2019年4月以降で事業部門担当が生産体制に明確に触れた
  のは2回だけである。


7.当社従業員の関与
 今回の不正を主導したのは社員Xであることは明らかであり、社員X本人も認めている。
しかしながら、今回の不正は、社員X単独で実行できるものではない。
 A社元従業員への給与補填を除き、取締役を含む当社関係者に対する社員Xからの報酬支
払や便宜供与は確認されていないことから、社員Xによる報酬や便宜供与を動機とはしてい
ないものの、以下のとおり技術部の外注手続担当者、技術部次長および技術部長が関与して
いる。
 技術部長と技術部次長は、社員Xに還流していることを知らなかった時期もあると説明し
ている。
(1)外注登録
 外注を発注するためには、発注しようとする先を外注先として、社内で登録する必要があ
る。登録にあたっては、登記事項証明書(登記簿謄本または抄本)および技術者名簿の提出
が必要である。これらをもとに技術部室の外注担当が事前審査を行い、技術部室長が承認し
た後に事業所総務部、管理本部総務部に回付され、最終的に管理本部総務部が承認し、外注
先として登録される。
 当社では、従業員の親族およびその経営する法人への発注を禁止してはいないため、社員
Xの父親を代表取締役とするA社を当社外注先として登録すること自体に問題はない。ただ
し、実質的にはA社を社員Xが経営しており、これは二重就業を禁止している就業規則に違
反する。技術部の外注担当でもある技術部次長は、それを承知しながら容認したことは問題
である。技術部長はこのことを後に知ったが、それ以前にA社が社員Xの親族企業であると
当時の東京本社総務部長に相談したところ、「気をつけて発注するように」と指摘されたに
もかかわらず、その実態を自ら確認することを怠った。
 B社、C社およびD社について、外注手続担当者は、3社が社員Xの紹介だったことなど
の周辺情報から、3社への外注はA社への還流が目的だと当時思っていたと説明している。
したがって、外注手続担当者は3社の外注登録についても関与していると考えられる。
(2)発注手続き
 外注の発注手続きは、外注手続担当者が外注稟議を起案し、部の外注担当である技術部次
長が承認後、技術部長が決裁し、事業所総務部によるチェックが行われる。なお、前述のと
おり、3 百万円以上の外注は事業所幹部による決済が必要となる。
 2017 年にA社の従業員が当社アルバイトに転籍して以降になされたA社への外注につい
て、技術部長、技術部次長および外注手続担当者は、それが実態のともなわない発注である
ことを認識しながら、手続きを行った。



                       10 / 19
 B社、C社およびD社への外注について外注手続担当者は、外注稟議の内容は、技術部長
と技術部次長と社員Xの間で調整されていると認識し、社員Xが提出した3社の見積書を一
切の確認をせずに受け取り、形式的に外注稟議を起案していた。
 また、技術部次長は、後述のとおり発注の適正性については一切判断せず、回議された外
注稟議をただ承認するだけであった。技術部長についても、同様である。
(3)検収・支払手続き
 委託した外注成果は、検査担当者である外注手続担当者が、委託した成果品の内容をチェ
ック、要求を満たしていることを検査した上で、検収担当者が検査結果を確認し、委託した
成果品の受入確認を行う。
 部の外注担当者である技術部次長は、A社、B社、C社およびD社からの成果の検収は、
形式だけのものであることを認めており、外注手続担当者も同様の説明をしている。さらに
外注手続担当者は、請求書が来れば支払処理をするだけであることも説明している。


Ⅲ.不正の事実とその原因

1.認定された事実
   調査結果と社員Xの説明を総合すると、以下の不正が認定される。不正外注の件数は
  36件、その合計金額は128百万円(*)になる。
(1)A社への発注
   A社設立(2016年4月)から2017年末までは、A社の従業員が技術部に常駐して外注
  された業務を生産していた。
   2018年になると、A社の従業員が技術部に常駐することはなくなったため、以降のA
  社への発注は、理由のないものである。2018年5月に2件発注があるが、この発注が社
  員Xの行ったA社の元従業員への補填原資であることについて、技術部長と技術部次長
  は、発注時点で知っていた。
   2019年6月のA社への発注は、社員XがA社元従業員への退職金が必要と技術部長と
  技術部次長に説明し、両氏からこれが最後との条件付きで補填原資として発注された。
   技術部長と技術部次長は、これ以降のA社への補填原資としての発注を認めないと社
  員Xに指示しており、この点は、技術部長、技術部次長、社員Xとも認めている。なお、
  この補填を認めないとの指示が、B社、C社およびD社に迂回する発注につながってい
  る。
   A社への外注手続きは、すべて外注手続担当者が担当しており、外注手続担当者はこ
  れらの外注が理由のないものであることを承知のうえで手続きを行っていた。A社への
  不正な発注を正当な外注とするための外注成果品の検収手続きは、技術部の外注担当の
  技術部次長が行っており技術部次長はこれを認めている。
   A社への不正な発注は7件、その合計金額は19百万円になる。この不正に関与したの
  は、技術部長、技術部次長、社員Xおよび外注手続担当者である。
(2)B社への発注
   B社には、2019年7月に5件、2020年1月に1件の発注がされ、A社への迂回発注で
  ある。
 (*)公 表 後 確 認 し た 当 社 担 当 者 か ら の 報 告漏れ1件を 加えた額とし た。
                                 11 / 19
   B社への不正な発注は6件、その合計金額は13百万円になる。この不正に関与したの
  は、社員Xおよび外注手続担当者であり、技術部長と技術部次長は関与を認めていない
  が、少なくとも技術部次長は検収手続きを行っていることから、関与していると考えら
  れる。
(3)C社への発注
   C社とは、2019年7月に5件、2020年1月に1件の発注に加え、データ購入が2019年
  5月に1件、2020年10月に1件があるが、社員XおよびC社のC社担当者は、いずれの
  発注も当社からA社への迂回発注であることを認めている。
   C 社へ の 不 正 な発 注 は 9 件、 そ の 合 計金 額 は 47百万 円(*)にな る 。 こ の不 正 に 関 与 し
  たのは、社員Xおよび外注手続担当者(データ購入の1件を除く)であり、技術部長と
  技術部次長は関与を認めていないが、少なくとも技術部次長は検収手続きを行っている
  ことから、関与していると考えられる。
(4)D社への発注
   D社には、2015年12月から発注が始まっている。D社設立者は、2015年12月からのす
  べてについて社員XまたはA社への迂回発注であることを認めている。
   D社への不正な発注は合計14件、その合計金額は48百万円になる。この不正に関与し
  たのは、社員Xおよび外注手続担当者(2016年の1件を除く)であり、技術部長と技術
  部次長は関与を認めていないが、少なくとも技術部次長は検収手続きを行っていること
  から、関与していると考えられる.
(5)発注手続きについて
   A社、B社、C社およびD社のへのほとんどの発注について、技術部の外注手続担当
  者が外注稟議を起案し、外注成果の検査も行っている。
   外注手続担当者は、A社への発注は社員Xの行ったA社の元従業員への補填原資だと
  認識し、残りの3社への発注も同様ではないかと推測していた。4社への外注稟議の起
  案に必要な見積書等がすべて社員Xから提供されており、外注登録および発注に社員X
  が関与していることから、技術部長と技術部次長は外注責任者として必要な外注であっ
  たのか、外注成果がどうであったのか確認すべきであった。
(6)本不正の法的な位置づけ
   今回の不正は、社員Xが会社の外注システムを使って自らに金銭を還流させたことか
  ら背任罪の構成要件を満たすと考えられる。
   社員Xは発注の全件について背任行為を主導しており、正犯である。技術部部長はA
  社への発注について承認しており、正犯である。技術部次長は、少なくともA社への発
  注について承認しており正犯であるほか、他の発注については、3社への発注がA社に
  再発注されていることを知らなかったとしても、検収を怠ったことにより社員Xの背任
  行為のほう助にあたり、従犯である。外注手続担当者は発注の多くの件数でA社への補
  填であることを想定して発注手続きを進めており、正犯とは言えないまでも従犯である。


2.今回の不正の原因
   今回の不正の原因について、当社の外注を含む業務システム、業務執行およびその他
  の観点から検討した。その結果は以下のとおりである。

                               12 / 19
(1)外注を含む業務システム上の原因
   今回の不正は、外注を通して行われたのは明らかであり、外注を含む業務システムに
  ついて検討した。
   当社は、外注に関して起こり得るリスクを想定し、外注事務取扱要領やガイドライン
  などで管理している。
   要領やガイドラインを適切に運用していれば「通常想定される不正行為を防止しうる
  程度の管理体制を整えていた」ことは確認できる。
   実際に外注を発注するためには、発注しようとする先を外注先として、社内で登録す
  る必要がある。登録にあたっては、登記事項証明書(登記簿謄本または抄本)および技
  術者名簿の提出が必要である。これらをもとに技術部室の外注担当が事前審査を行い、
  技術部室長が承認した後に事業所総務部、管理本部総務部に回付され、最終的に管理本
  部総務部が承認し、外注先として登録される。
   今回の不正外注で重要な役割を担ったA社は、2016年に社員Xの父親が代表者となり
  設立され、その技術者名簿には社員Xの父親と社員Xの兄が記載されている。技術部の
  外注担当でもある技術部次長は、実質的にはA社を社員Xが経営していることを承知し
  ながら、これを容認した。2016年に技術部長がA社の登録を部長として承認し、東京本
  社総務部からの親族企業であるとの注意喚起はあったものの、外注先として登録され、
  発注手続きがされている。この点において、東京本社総務部が利益相反の可能性につい
  て気づいてはいたものの、当社の外注システムでは親族企業の取引は禁止されていない
  ため十分な措置が取られることはなく、チェック機能が不十分であった。その後、A社
  に迂回発注するためのB社、C社およびD社も社員Xの紹介により外注先として登録さ
  れているが、外注稟議の起案者である外注手続担当者は、不審に思いながらも外注稟議
  を起案している。
   このような外注先の登録と発注手続きがされた背景には、生産可能な受注量を大きく
  超えた業務量をこなすために、業務の主な担当である社員Xが働きやすくするため、外
  注先で対応可能な部分であれば積極的に発注するという方針があった。このため、外注
  稟議書が回議されれば、部次長は作業内容を精査することなく承認していた。
   また 、 当社 の外 注 手続 きで の 外注 稟議 は 、外 注金 額 が3百万 円 未満 であ れ ば、 部 長 承
  認だけで発注できるが、3百万円以上の案件であっても、1件当たり3百万円未満になる
  よう分割すれば、部長承認だけで済むようになっている。外注事務取扱要領では同一案
  件の分割は禁止されているものの、本件では、技術部次長が分割を認めたA社への外注
  のように業務番号を分けるなど、より巧妙に偽装されていた。
   以上から、現在の外注システムでは、外注先の登録や外注への発注時にこれらを運
  用・管理する部門によるチェック機能を定めているものの、その運用において実施され
  たチェックが十分でなかったことが不正を見逃した原因である。また、当該技術部は、
  部員の異動が少なく、部次長を含め本件関係者全員が固定化され、外注手続きも含め担
  当者に任せきりになっていた。これもチェック機能が働かなかった原因である。
   当社の内部統制システムは必要な整備がされていたものといえるが、今回の不正の発
  生を防止できなかったことから、その運用面に不十分な点があったことは否定できない。
  善管注意義務違反ではないが、経営層の相応の結果責任を否定しきれるものではない。

                            13 / 19
(2)業務執行上の原因
  ①    業務生産体制の不備
       社員Xが主に担当していた業務の多くは、業務打合せや業務が進められていくなか
      で追加の指示が出され、これに応じた業務体制を構築しながら業務生産を行っている。
      これを遂行するためには、人員の確保が重要である。
       技術部は、部目標を大幅に超え、生産限界を超えた量の業務を毎年受注せざるを得
      ない状況であった。このような状況下で多くのクレームが発生した。クレームはチェ
      ック漏れやミスに起因したものが多く、技術部は業務生産体制の確保、チェック方法
      の確立と厳格化等を再発防止策として説明しており、業務生産体制に不備があったの
      は明らかである。
  ②    業務生産体制に関する東京本社幹部と事業部門担当役員の対応
       ヒアリングで確認した東京本社幹部と事業部門担当役員の対応状況は、以下のとお
      りである。
       まず、2017年4月から2019年3月までの東京本社であるが、この時期に多くのクレ
      ームが発生し、クレームの対応にあたっていたことは確認できる。しかしながら、そ
      の原因究明と対策の実施については置き去りで、東京本社幹部として対策を主導した
      形跡は、ほぼ認められなかった。何らの対策も講じていなかったという点において、
      この時期の東京本社幹部の責任は重大である。
       次に、2019年4月からの東京本社であるが、2017年4月から2019年3月と違い、ク
      レームが発生していない。この時期の東京本社幹部は、折に触れ技術部長に部内の様
      子を尋ねていたこと、業務遂行要員確保の体制整備に一定程度努力していたことなど
      相応の経営努力は講じていた。
       事業部門担当役員であるが、技術部の属する事業部門は、2018年4月に独立してで
      きた部門である。2019年3月までは技術部の生産体制を心配した発言が見られるが、
      2019年4月以降は評価点向上や表彰に関する発言が中心となり、業務生産体制整備に
      触れられることは減っていた。
       以上から、業務執行について、2017年4月から2019年3月までの東京本社幹部は窮
      状に陥った技術部への対応への不作為、2019年4月の東京本社幹部は窮状に陥った技
      術部への対応の不十分、2019年3月までの事業部門担当役員は窮状に陥った技術部へ
      の対応に不十分なところがあった。このことにより、技術部の部次長が業務を完了さ
      せるために目の前の生産だけを優先するあまり、結果的に定められた外注手続きを怠
      ることに結びついたと思われる。
  ③    常駐外注禁止後の総務部とのコミュニケーション不足
       2017年7月に東京本社総務部長が常駐外注禁止を技術部に指示した。その際、A社
      の従業員から当社に実質的に転籍したアルバイトの時給は、新規に入社する業務経験
      がないアルバイトと同じ程度となり、常駐外注時の給与を下回る賃金となってしまっ
      た。結果的に東京本社総務部は、単純に常駐外注からアルバイトの雇用に契約内容を
      変えただけで、これによる業務体制の問題や業務への影響について技術部と相談せず、
      その考慮もしなかった。技術部も、A社の常駐外注からアルバイトに転換した者に関
      して東京本社総務部に雇用時の待遇について相談した形跡はなかった。総務部と技術

                        14 / 19
   部のコミュニケーション不足が今回の不正の要因となった。
(3)その他の原因
   今回の不正は、技術部長が従業員間の借金問題をコンプライアンス室長に相談したこ
  とにより明らかになった。しかしながら、より早期に技術部内から不正についての自主
  申告もしくは内部通報があれば、従業員間の借金も不正外注も未然防止が可能であった
  はずであり、コンプライアンス意識が不十分であったということができる。
   また、一部の従業員には、従業員間での金銭貸借が問題であるとの意識が欠如してい
  た、と言わざるを得ない。安易な金銭貸借が今回の不正を生んだ原因でもある。




Ⅳ.再発防止策への提言
   特別調査員会の責務は、今回の不正について速やかに調査結果を取締役会に報告する
  ことである。しかしながら、今回明らかになった不正の原因から、以下のとおり必要な
  再発防止策の提言を行うものとする。
1.外注を含む業務システムの改善
(1)外注登録・更新手続きの厳格化
   外注登録は、「外注事務取扱要領」に、「協力会社等の選定にあたっては、価格、品
  質、納期に関する要求を満たし、かつ臨機に応じた協力が期待できる十分な業績と信用
  を総合的に判断して行うものとする。」と定められている。
   実際の協力会社等(外注先)の登録および更新は、2018年10月までは毎年、それ以降
  は1年おきに、登録会社の実績、信用状態等を考慮して登録の更新(削除・追加)が行
  われている。
   今回の不正外注が発生した原因には、次の2点が考えられる。
   ・事業所総務部は、A社を外注登録するときに親族が代表者であることを知っていた。
     しかし、特に外注事務取扱要領では、親族企業を登録できないルールにはなってい
     ないため、東京本社総務部長から「注意するように」との注意喚起のみで登録が承
     認された。その後、特に厳格な評価はされることはなく更新が申請され、登録が繰
     り返され継続となった。
   ・B社、C社およびD社は、技術部の担当者が部次長と相談して、外注登録申請が行
     われた。担当者は、外注成果の検査は実施しておらず、外注担当者の検収も形式だ
     けの対応であった。さらに、その後の登録の更新も形式的であった。
   不正な外注を防止するためには、まず、技術部室から会社登録申請があった際に、事
  業所総務部での登録申請チェックを厳格化することが重要である。利益相反が予想され
  る親族企業などは外注登録を禁止する等のルール構築やチェック体制の確立を提案する。
(2)外注稟議決裁の厳格化
   技術 部 室で 作成 し た外 注稟 議 書は 、3百 万円 以上 の 場合 は、 部 長承 認を 経 て事 業 所 の
  総務 部お よ び技 術統 括 部の チェ ッ クを 経て 事 業所 長の 決 裁と なる 。 一方 、3百 万円 未 満
  の場合は、部長決裁後、総務部チェックにより注文書が発送される(外注管理ガイドラ
  イン:東京本社)。
   外注稟議が3百万円未満であれば部長承認だけで発注できるが、実際には3百万円以上

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  の外 注を3百万 円未 満 にな るよ う に分 割す る こと も理 論 的に は可 能 であ る。 外 注事 務 取
  扱要領では同一案件を分割することは禁止されているが、技術部ではこれが守られてい
  なかった。外注された発注総量が確認できれば、外注を分割することを抑止し、不正を
  検知できる可能性が高くなるので、外注稟議時に外注先の既発注額の累計額の表示と分
  割発注の関係を把握するなど、事業所総務部がチェックできる仕組みの構築を提案する。
  また、発注時には仕様書に外注成果をより明確にすることや、外注成果が不明確な場合
  には外注を禁止するなど、より厳格なルールの設定が必要である。
(3)外注成果の検査・検収の明確化
      外注管理ガイドライン(東京本社)では、外注成果の検収は、外注先から成果品の報
  告を受けて、品質環境システムの「外注成果品の検収手順」に従い検査を実施すること
  になっている。実際には、技術部室の担当技術者が外注成果品を検査し、「外注成果品
  検収記録」に結果を記録することになっている。一方、外注先から納品された成果品の
  保管等の取り扱いに関するルールは定められていないため、外注費用に見合った成果か
  どうかの確認は技術部室任せとなっており、その検証には時間を要する状況である。
      このように、外注の成果についての検査、検収および保管管理といった一連の手続き
  に曖昧なところがあり、ここに不正が発生する要因が隠れている。技術部室の担当者に
  よる外注成果検収時の外注費用と成果の確認方法や部内の外注検査・検収結果について、
  事業所の総務部もしくは技術統括部が定期的にチェックするルールの構築を提案する。
  また、外注成果の保管、管理方法についても明確なルールがなく、発注内容の妥当性が
  確認できない状況にあるため、ルール化を早急に行うことを提案する。
(4)外注事務担当の研修の実施
      「技術部門におけるコンプライアンス・ガイドライン」では、外注先とのコンプライ
  アンスが整理されており、外注先との契約の適正化に留意するよう喚起している。外注
  先との契約の適正化の基本は、事業所の外注管理ガイドラインに沿って留意する点を示
  している。特に、①      外注そのものの妥当性の確認、②          特命随意契約の妥当性確認、
  ③    納入物品等の受取を定めること、に留意するよう喚起している。このような指摘が
  技術部内で守られていれば今回の不正外注は十分防げたと考える。
      外注に関する要領やガイドラインは整備されているが、技術部室から起案された外注
  稟議のチェック体制に問題があることは既に指摘したとおりである。これらを改善する
  ためにも、事業所総務部の機能を向上させる必要があり、外注事務に対する管理部門の
  役割や不正を見抜く研修を実施することを提案する。
(5)人事ローテーションの実施
      当該技術部の業務範囲の特殊性から部員の異動は少なく、部幹部を含め本件関係者全
  員の業務体制が固定化されていた。部内幹部も含めて部の裁量で実施できる外注処理等
  は、常に会社のルールの適正運用が最も重要な点と考える。
      部幹部の人事については、事業所および事業部門の連携により、業務体制が固定化さ
  れることを防止する人事異動を行うものとし、やむを得ず長期化、固定化する場合は、
  人事異動あるいは人事異動に代えて業務体制の透明性を担保する施策等が実施できるよ
  う、人事部が事業部門および事業所と協議できるルールの導入を提案する。



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2.業務執行体制に関する改善
(1)目標を大幅に超える受注の抑止と体制に見合った受注管理の徹底
   社員Xが主に担当していた業務は、2018年から生産限界を超えた受注量となっていた。
  技術部幹部は、業務生産体制を整えようと人員補充などを事業所に訴えたが改善されな
  かったと述べている。また、事業部門会議では、人員確保の話題ではなく、クレームが
  多く発生していることから業務評定点改善が主な指摘事項となっていた。一方、クレー
  ム報告書では、チェック漏れ・ミスが原因であるとし、再発防止策として「業務推進体
  制確保・チェック方法の確立と厳格化等」を掲げていた。事業所長である東京本社長と
  東京本社次長は、技術部幹部が訴えた業務生産体制を整えるための人員補充などが不可
  欠であることをクレーム報告書で表明していたにもかかわらず、これを実施しなかった。
   さらに、部門の業務の特質はあるものの、毎年、目標を大きく超える受注生産を行う
  技術部の業務が、経験を必要としているにもかかわらず、経験ある正社員が経験の浅い
  多くの派遣社員やアルバイトを指導しながら生産している点等も業務生産体制確保の観
  点から問題である。
   したがって、業務生産における脆弱な体制を速やかに見直すとともに、計画を大幅に
  超える受注が予想される場合の生産体制強化もしくは受注抑制の仕組み(ルール)の策
  定を提案する。
(2)ルール変更の影響予測と技術部とのコミュニケーション改善
   技術部は、業務推進するための人材として常駐外注を活用していた。常駐外注は、労
  働関係法令等に抵触する可能性が高いことから、東京本社総務部は、2017年7月に常駐
  外注を禁止とした。しかし、常駐外注の活用により業務生産をしていた技術部は、その
  代替手段として外注会社の常駐者をアルバイトに転換して人員を確保して体制を構築し
  た。
   常駐外注を禁止した東京本社総務部は、法令順守の観点からその影響は検討したが、
  常駐外注禁止による生産現場への影響度合いを考慮しなかった。東京本社総務部は、常
  駐外注届を提出させ、常駐外注者を管理していたのであるから、常駐外注者がアルバイ
  トに転換したことを把握していたはずであるが、その後の追跡調査もしていなかった。
   生産現場を分掌する事業所は、ルール変更により関係する技術部室の状況を常に把握
  し、また、技術部室の事情を踏まえた人員体制状況を把握するためのコミュニケーショ
  ンの確保が必須である。特に、事業所の管理部門(総務部、技術統括部)は、ルール変
  更(本件における常駐外注禁止)における影響度合いの把握やクレームの是正報告に対
  する部内の対応結果について、技術部室から報告を受け、必要な対策をとるなどの配慮
  が必要である。
   また、人員確保にあたってアルバイト採用する際においては、採用時における経験を
  十分考慮して時給を設定することが重要である。事業所総務部は、この点においても技
  術部室とのコミュニケーションを十分確保するべきである。
   特に多くの人員で生産を担っている技術部室と、事業所の幹部および管理部門とのコ
  ミュニケ―ションをより向上させることや生産現場の人員確保に関するルール変更にと
  もなうリスクを想定して対応する手続き等の研修を至急実施することを提案する。



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3.その他の改善
(1)従業員間の金銭貸借および保証人になることの禁止
   現在の就業規則(アルバイト等含む)には、従業員間の金銭の貸借や保証人になるこ
  との禁止は明記されていない。これらの禁止を明記することを提案する。就業規則に禁
  止とこれに違反すると処分対象となることを明記することで、不要なトラブルにより本
  件のように業務に支障が発生することを防止する。さらに再発防止の観点から、就業規
  則で明記するだけではなく、従業員研修等で従業員同士の金銭の貸借や保証人になるこ
  との禁止を周知徹底する。円滑な業務遂行のため、明文化で不要なトラブルの発生を回
  避し円滑な業務遂行の実現を目指すものとする。


(2)コンプライアンス意識向上策の推進
   今回の不正は技術部長からの相談で明らかになったが、不正行為を行った従業員の周
  辺の従業員からの内部通報があればより早期に対応できたはずである。また、二重就業
  の状況になっていたのに周辺の従業員がこれを容認していたことから、周辺の従業員の
  コンプライアンス意識が高くなかったと言える。コンプライアンス意識の向上のため、
  グループ会社を含め、全社的にコンプライアンス研修を徹底することを提案する。




Ⅴ.類似案件調査
   本件不正行為は、当社との外注取引に関連して発生した事案である。類似案件の調査
  は、以下に示す調査対象、調査方法により行った。


1.調査対象の設定
   本件の調査を踏まえ、 近年受注が急増している部署、部次長の異動が長期間無い部
  署、または当該技術部と同種の業務を生産している部署における外注仕様が曖昧な業務
  を対象とした。
   また、本件の始期は2015年12月のD社への発注であるが、社員Xが当社へ入社した
  2012年4月以降を調査対象期間とした。


2.調査方法
(1)取引の実在性の確認
   調査対象業務における外注取引および一般購買について、稟議書、注文書、請求書等
  の関連資料と成果物との整合性を確認した。
(2)取引先アンケート調査
   当該技術部の取引先である36の法人および個人に対して、当社取引実績と取引先帳簿
  との整合性、社員Xを含む当社関係者への再委託、リベート等の有無に関する事項を文
  書で照会するとともに、必要に応じて電話等で内容を追加確認した。
(3)デジタル・フォレンジック調査
   当該技術部に所属する従業員のうち、本件の調査で名前が挙がった従業員を含めた22
  名について、会社貸与PCおよび外付けHDDの電子データ、メールサーバー内のメー

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  ルデータおよびチャット履歴を保全した。保全したデータのうち、メールから得られた
  データを中心に、不正な外注取引に関連したキーワードによる検索手法を用いた調査を
  行った。調査にあたっては、専門的知識を有する株式会社KPMG FASに調査支援
  を委託した。


3.調査結果
   以上の類似案件調査の結果、新たな不正の事実は確認されなかった。


                                       以上




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