9503 関西電力 2020-03-14 18:00:00
添付資料1:金品受取り問題にかかる第三者委員会の調査報告書2 [pdf]

第4章     本件問題(本件金品受領行為及び本件事前発注約束等)について


 本章においては、第 1 として、関西電力等(第 1 章第 2 で定義したとおり、
関西電力、関電プラント及び関電不動産開発を指す。   )の役職員による金品の受
領について関西電力等における内規や過去の処分例について、第 2 及び第 3 と
して、森山氏に関連して関西電力・本件取引先等間の受発注に生じていた問題に
ついて詳述する。


第1     関西電力等の役職員による金品受領


1     関西電力等における取引先からの贈答・接待について


(1)   関西電力等における取引先からの贈答・接待に関するルール

 関西電力グループにおいては、「コンプライアンス・マニュアル」において、
「贈答や接待については、節度をもって良識の範囲内にとどめます。    」
                                   「政治や行
政と適正な関係を保ちます。政治や行政に対して、接待・贈り物等により不当な
利益を提供しません。」と定められている(第 2 章 16「贈答・接待等に対する節
度」。
  )
 「コンプライアンス・マニュアル」においては、  「こちらから接待を強要して
はならないのは当然のこと、先方からの申出であっても、度を越えた接待は受け
るべきではありません。私たちが、接待と引換えに特定の取引先に発注していた
といったことがあれば、お客さまや社会は関西電力グループをどのような目で
みるでしょうか。不透明な事業運営を行う会社として、信頼を失ってしまう可能
性があります。お客さまや社会から不透明な事業運営に見える行為は、  避けなけ
ればなりません。」との記載がある。また、当該規定に関する Q&A では、『良
                                    「
識の範囲内』がどこまでかは、頻度・価格・役職等の立場などによって変わり、
一概に言うことはできません。しかし、…(中略)…頻度が高く、価格も高額で
あり、良識の範囲を越えたものであると見られる可能性がある行為は、  避けるべ
きです。…(中略)…昨今、民間どうしの接待といえども、社会からの目は厳し
いものになっています。関係構築は節度を持って行い、常に、第三者であればど
う見るかという意識を持って行動するようにしましょう。」と記載されており、
多額の金品の授受については、これを避けるべき旨が記載されている。
 また、後述するとおり金品を受領した者が存した関西電力等においては、上記
コンプライアンス・マニュアルのほかに、社外の者からの贈答や接待を直接的に



                     81
規制する内規は存在しなかった68。社外の者からの贈答や接待について、コンプ
ライアンス上問題となる事象を除き、  受領者等に対して、  その所属する企業に対
する報告を網羅的に義務付ける内規もなかった。
 しかしながら、本件問題を受けて、関西電力は、2019 年 12 月 9 日付で、「贈
答および接待の取扱いに関する規程」「贈答および接待の取扱いに関する規程
                  、
取扱通達」及び「『贈答および接待の取扱いに関する規程』   『贈答および接待の取
扱いに関する規程取扱通達』 に関する Q&A 集」を制定した。これらの規程では、
贈答(中元、歳暮、昇進祝等の名目の如何にかかわらない。    )については全面禁
止69とされている。また、接待についても、会費制又は定例的に行われ幹事会社
が交代で費用を支払うといった限定的な場合であり、かつ事前に会社の承認を
得た場合を除き、原則として全面禁止70とされている。これらの規程に反して贈
答又は接待を受けた場合は、受領者の役職に応じて、所属長、コンプライアンス
推進責任者又は総務室長等に対して報告しなければならないほか、贈答品の返
却や接待の費用負担の申し出等の是正措置を行うものとされた。
 また、関電不動産開発は、2019 年 11 月 12 日付で、
                               「接待・贈答に関する規程」
及び「接待・贈答に関する取扱いマニュアル」を制定した。これらの規程では、
役職員が社会常識の範囲を超えるような接待や金品その他有形無形の利益を接
受したり供与したりすることなどが禁止71されている。
 なお、関電プラントにおいては、2020 年 2 月時点においては、上記のような
接待・贈答に関する内規は制定されておらず、同年 3 月末までに新たに制定す
ることを検討しているとのことである。


(2)   関西電力グループにおける取引先からの贈答品受領に関する傾向



68
   なお、関電不動産開発においては、2016 年 4 月に競争発注の実施部門を対象に作成され
た 「競争発注業務における取引先への対応ポイント集~入札談合を誘発・助長させないため
に~」において、 「2.取引先との関係で気をつけなければならないこと」   「(4)取引先との節度
を持った対応」として、   「社会通念を逸脱する取引先からの贈答や接待の申し出は固く辞退
する」などと記載されている。
69 ただし、業務関連性のないものは贈答に当たらないとされており、業務関連性の有無に

ついては、  ①相手方との間における職務上の利害関係の状況、    ②私的な関係がある場合はそ
の経緯および現在の状況、③行おうとする行為の態様を総合勘案して判断するとされてい
る。
70 ただし、贈答と同様に業務関連性のないものは接待に当たらないとされているほか、取

引先との間の負担額の多寡や、   関西電力側の負担主体が会社か役職員かによって、     接待に当
たるか否かが区分されている。
71 ただし、一定額未満の中元及び歳暮は社会常識の範囲として受領しても構わないとされ

ている。また、一定額以上の中元及び歳暮は、受領時に会社に報告した上で、贈答元に対し
て、社内規程により次回以降辞退する旨明記した礼状を送付するものとされている。

                       82
 当委員会は、 本件書面調査及び本件ホットライン等により、  森山氏又は本件取
引先から受領した金品以外に、  より一般的に、 関西電力及びその子会社の役職員
が取引先からどのような贈答品を受けていたかを調査した結果、以下のような
傾向が認められる。
 関西電力グループの役職員を対象に実施した本件書面調査によれば、本件書
面調査対象者の約 69%が取引先(森山氏及び本件取引先を除く。 )から贈答品を
受領したことがあり、全体の約 33%の者が 1 万円以上の贈答品を受領したこと
があった。
 本件書面調査及び本件ホットライン等によれば、贈答品を受領する名目とし
ては、1 万円以上のケースでは、昇進祝い(就任祝いや異動に際しての餞別も含
む。以下同様である。 )が最も多く、1 万円未満のケースでは中元や歳暮が最も
多かった。 そのほか、入院した際のお見舞い等として受領するケースもあった。
 また、受領した贈答品の内容は、昇進祝いとしては、現金、商品券、スーツ仕
立券、ワイシャツ仕立券、カタログギフト、食品、花等が多い。いずれも 1 万円
~3 万円程度のものが多いが、10 万円や 20 万円程度の贈答品を受領した事例も
複数認められた。中元・歳暮としては、食品、ワイシャツ仕立券、商品券、ビー
ル券等が多い。食品はその金額が不明なものが多いが、そのほかは 1 万円~3 万
円程度のものが多かった。


(3)   関西電力等における取引先からの贈答・接待に関連する懲戒事例


 1980 年代以降、取引先から金品の提供や饗応を受けたことについて懲戒処分
がなされた事案は、関西電力において 6 件、関電不動産開発において 1 件存在
する。
 この中には、取引先から頻繁に飲食接待を受けるとともに車代として金銭を
受領し、当該取引先による多額の不正請求を看過していた者について減給等の
処分がされた事案が存在する。
 また、2016 年に関西電力の電力流通事業本部において発覚した事案では、延
べ 91 名72もの従業員が、工事立会や工事竣工等に際して、協力会社から昼食代
や謝礼等の名目で、現金、商品券、クオカード等の金品を受領していた73。当該
事案において受領した金品の額は数千円~最大 5 万円程度(飲食代等も含まれ
るとのことである。)であり、金品受領の態様としては、関西電力の従業員から


72
   なお、金品受領者の数は 2014 年 1 月以前に 60 名、2014 年 2 月以降に 31 名とのことであ
り、両時期を通じて同一の者が受領していた可能性もある。
73 協力会社からの金品受領のほか、協力会社においてアルバイトをしていた者もおり、併

せて処分がなされている。

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金品を求めていないにもかかわらず、協力会社の者から強引にポケットに押し
込まれたり、受領を断っても車内に投げ入れられたりしたことにより受領した
ケースも多くあったとのことである。当該事案で下された懲戒処分のうち最も
重いものは「出勤停止」であった。なお、当該事案について、関西電力では、
                                  「一
部の者は、高額な現金(数万円)を複数回にわたり受領しており、不適切極まり
ない」とされ、また「現金を含む金品の継続的な受領という不適切事象があった
ことを重く受止め、事象の根絶と再発防止に事業部門全体で取組む」とされてお
り、原因の分析と再発防止策の検討がされている。
 これらの懲戒処分事案のほか、懲戒処分には至らないものの、取引先から饗応
を受けたり、取引先が同席しない懇親会費用やタクシー代を取引先に支払わせ
るなどした者に対し、人事上の措置として戒告がなされた事案も存在する。
 なお、関西電力等においては、     上記のとおり金品等の受領や接待に関する懲戒
処分等の事案が存在したが、森山氏及び本件取引先等からの金品受領について
は、後記第 6 章第 1、6(1)のとおり、一部の者に対する社内処分が行われたこと
を除けば、これまで懲戒処分ないしは戒告等の措置がなされたことはなかった。


2 関西電力等の役職員による森山氏及び本件取引先等からの金品受領の状況


(1)   関西電力が実施した本件社内調査により判明した金品受領の状況


 関西電力が 2018 年に実施した本件社内調査によって判明した、森山氏及び本
件取引先から金品を受領した関西電力の役職員は合計 23 名であり、その詳細は
別紙 4-1-2-1(この別紙は本件社内調査報告書別添 1 及び追加社内調査報告書
(2019 年 1 月 8 日付)別添 2 を引用したものである。)のとおりであり、森山氏
から受領した金品の総額は、約 3 億 2000 万円であった。
 これを踏まえ、当委員会が上記関西電力による本件社内調査の調査対象者に
対する本件ヒアリング調査等を実施したところ、         以下のとおり、本件社内調査報
告書による調査結果を修正すべき事実が判明した。
  -会長であった八木誠氏(以下「八木氏」という。        )は、本件社内調査報告書
    記載の受領金品に加えて、2001 年 6 月頃の中央送変電建設事務所長就任
       時に森山氏へ挨拶に行った際、商品券約 30 万円分を森山氏から受領した。
       八木氏によれば、受領した商品券相当額の品物を購入し、中央送変電建設
       事務所の幹部であった者を介して、森山氏に返礼したとのことである。
      -大飯発電所の幹部であった者は、本件社内調査報告書において金品受領な
       しとされているが、大飯発電所の同役職に就任した 2010 年代前半に、10
       万円相当の女性用化粧品を森山氏から受領した。このことは、本件社内調

                       84
 査時にも報告されており、  その際は手土産として受領したものとして金品
 受領なしと整理されていたが、当委員会としては価額が 10 万円という一
 定程度高額に及ぶことから修正すべきと判断した。
-原子力事業本部の幹部であった者は、    本件社内調査報告書において商品券
 を合計 30 万円分受領した旨が記載されている。しかし、より正確には、
 同氏によれば、2010 年代に、現金 10 万円及び商品券 13 万円分の合計 23
 万円分を森山氏から受領したとのことである。このうち、現金 10 万円は
 同幹部の親族が他界した際に香典として受領したものであるため、5 万
 5000 円相当のワイシャツ仕立券を香典返しとして返礼したとのことであ
 る。また、本件社内調査においては、香典のほかに商品券 10 万円分を 2
 回受領したと述べたが、    当時は 2 回目に受領した商品券を開封しないまま
 1 回目と同額の 10 万円だと思い回答したが、改めて受領した商品券を確
 認したところ、2 回目は 3 万円だったため、金額を修正したとのことであ
 る。
-京都支店の幹部であった者は、本件社内調査報告書において、現金及び商
 品券を併せて 110~120 万円受領した旨が記載されているが、これに加え
 て、関電不動産株式会社(現在の関電不動産開発)在職期間中である 2010
 年代後半にも、森山氏から商品券 10 万円程度分を受領し、また同幹部の
 親族が他界した際に森山氏から香典として現金 10 万円を受領した。同幹
 部によれば、前者の商品券は未開封のまま保管しているため、その金額に
 ついては推測によるものであり、後者の香典については、商品券 5 万円分
 を香典返しとして返礼したとのことである。
-原子力事業本部の副事業本部長であった勝山佳明氏(以下「勝山氏」とい
 う。)は、本件社内調査報告書において、森山氏から商品券 2 万円分を受
 領した旨が記載されているが、これに加えて、関電プラント常務執行取締
 役在職期間中である 2015 年 12 月 2 日に森山氏から就任祝いとして商品
 券 20 万円分を受領した。なお、勝山氏によれば、本件社内調査の段階で
 も商品券 20 万円分の受領を含めて関西電力に申告したとのことであり、
 また、受領した商品券は関電プラントに預けて保管中とのことである。
なお、原子力事業本部の本部長代理であった白井良平氏(以下「白井氏」と
いう。)は、本件社内調査報告書において現金 200 万円を受領したと認定され
ているが、そのうちの 100 万円については、2012 年 7 月 23 日に森山氏及び塩
浜工業の役員と会食をした際に当該役員から受領した手土産の中に入ってい
たとのことであった。なお、   本件デジタル・フォレンジック調査により顕出さ
れた資料には、白井氏が同日に 300 万円を受領したことをうかがわせる資料
が存在したが、白井氏に対する本件ヒアリングによれば、この時に受領した

                     85
     のは間違いなく 100 万円であるとのことである。


(2)   本調査により判明した金品受領の状況


 前記(1)を除き、本件ヒアリング、本件書面調査及び本件ホットライン等の本
調査により新たに判明した、関西電力等における森山氏及び本件取引先等から
の金品受領者は 52 名74(関西電力 41 名、関電プラント 7 名、関電不動産開発 7
名)である。したがって、前記(1)の 23 名と併せて金品受領者は合計 75 名(関
西電力 64 名、関電プラント 7 名、関電不動産開発 7 名)となり、森山氏及び本
件取引先等から受領した金品の総額は、約 3 億 6000 万円に上った75。これら 52
名について、金品受領者、受領した金品、金品を受領した時期及び返却又は返礼
の有無の詳細は別紙 4-1-2-2 のとおりである。なお、これらの合計人数及び合計
額の算定においては、社会的儀礼の範囲内と考えられる贈答については除外し
ている。
 また、本件ヒアリング、本件書面調査及び本件ホットライン等によれば、これ
らの調査対象となった、別紙 4-1-2-2 の一覧表に記載されている以外の関西電力
の部門(火力事業本部76及び水力事業本部を含むがそれに限られない。    )及び関
西電力の子会社においては、上記のような森山氏及び本件取引先等からの社会
的儀礼の範囲を超える継続的な金品受領は認められず、     また、これと類似するコ
ンプライアンス上問題のある金品受領も認められなかった。


(3)   金品受領・返却等の状況の分析


ア     役職員による金品受領について


74
   前記第 1 章第 2、 のとおり、
              2      各社において重複して受領していた者が含まれているため、
合計としては 55 名ではなく 52 名としている。
75 百万円以下は四捨五入している。現金及び商品券以外の金品の算定方法としては、基本

的に本件社内調査における算定方法と同様に、米ドル 1 ドル 110 円、スーツ仕立券 1 着 50
万円、金 4800 円/1g、金杯 1 個 44 万円、1 オンス金貨 1 枚 15 万円(金貨の重量が不明であ
る場合は 1 オンス金貨として算定)       、小判 1 枚 8 万円(重量が判明している場合は 4000 円
/1g)として算定し、それらに加えて、ワイシャツ仕立券を 3 万円、受領した金品や回数に
ついて幅のある供述がある場合にはその下限とし、金額について自己申告のある金品はそ
の額によることとして算定した。
76 2000 年代後半、舞鶴発電所(火力)の幹部であった者が、立地業務の先輩であった高浜

発電所副所長の要請により森山氏との会食に同席した際に、森山氏及び吉田開発から手土
産として受領した紙袋の中に商品券が入っていたことが 1 回のみあったとのことである。
なお、その後、同幹部に対して、森山氏及び吉田開発からそれぞれ仕事を発注して欲しいと
の依頼があったが、同幹部は拒絶したとのことである。

                           86
(ア)    受領者及び受領物について


 本件社内調査及び本調査によれば、関西電力等の役職員による森山氏及び本
件取引先等からの金品受領について、以下の事実が認められる。


a     原子力事業関係の役職員


(a)   美浜町への原子力事業本部設置以前


    1987 年 5 月に森山氏が高浜町の助役を退任した直後から、関西電力の役職員
は森山氏から金品を受領するようになった。なお、本調査において、森山氏が高
浜町の助役を退任した 1987 年 5 月以前に、関西電力の役職員が森山氏から金品
を受領した事実は認められなかった。
 本調査において判明した最も古い時期の金品受領は、1980 年代の大飯発電所
長による 5~10 万円分の商品券の受領である。同所長によれば、1987 年 5 月の
高浜町助役退任後、森山氏が同年 6 月頃に同所長の自宅を訪問し、   「柳田産業を
頼む。」と言って商品券を置いていったとのことである。なお、同時期の原子力
事業本部長及び高浜発電所長は既に他界しており、本調査でヒアリングにより
金品の受領の有無を確認することはできなかった。
 森山氏が高浜町助役を退任した 1987 年から、原子力事業本部が若狭支社と統
合する形で福井県三方郡美浜町に設立される 2005 年頃までの金品受領者の役職
は、高浜発電所、大飯発電所、福井原子力事務所(1994 年に若狭支社に改組)
といった福井県内の部署の重要な役職者が多くを占めていた。    もっとも、原子力
管理部の幹部であった者(1980 年代後半に受領)や取締役であった者(1990 年
代前半以降受領)といった本店の役職員の中にも森山氏から金品を受領してい
る者がいた。
 受領した金品の金額としては、1 回当たり 5~20 万円相当が多く、主に就任祝
いや離任時の餞別として受領したケースが多かった。    もっとも、例えば大飯発電
所の幹部であった者のように、森山氏との会食時に渡される手土産の中に商品
券やワイシャツ仕立券が入っていたという会食時の金品提供のケースもあった。
 一方で、上記の取締役であった者は、1kg の金の延べ棒 2 本(1990 年代当時
の時価で 1 本当たり約 140 万円)や金の小判等、当時の金品受領者の中では特
に高額の金品を受領していた。同人によれば、これらの金品は、同人が取締役
に就任後、森山氏が同人の自宅を訪問した際に置いていったとのことである。

(b)   美浜町への原子力事業本部設置・東日本大震災以降

                      87
 福井県三方郡美浜町に原子力事業本部が設置された 2005 年以降は、前記の各
発電所77や後記 b の京都支社の重要な役職者に加え、  原子力事業本部の事業本部
長、本部長代理、副事業本部長(発電、技術、企画等の各担当)や森山氏対応を
担っていた総務担当部長らも金品を受領するようになった。
 特に、2011 年の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故以降、原子力
発電所の運転が順次停止され、その後の新規制基準への対応の必要等の事情か
ら、前記第 2 章第 2、1(3)イのとおり、原子力発電所における土木建設工事等の
工事発注が増加することが見込まれたが、     これらと時期を同じくして、森山氏が
関西電力の役職員に対して提供する金品の額も急激に増加し始め、1 回当たり
100 万円以上の金品が頻繁に提供されるようになった。具体的には、以下のとお
りである。
  豊松秀己氏(以下「豊松氏」という。   )は、2009 年 6 月から原子力事業本部長
代理、2010 年 6 月から原子力事業本部長を務めていたが、2010 年 1 月以降、森
山氏及び柳田産業、オーイング、塩浜工業から、合計 40 回以上にわたり合計約
1 億 1000 万円相当の金品を受領した。とりわけ、2011 年 8 月に森山氏から商品
券 200 万円分を受領して以降、 回当たり 100 万円以上の金品を受領するように
                  1
なり、1 度に 1000 万円もの現金を複数回受領したり、100 万円相当以上の商品
券や米ドルを複数回受領していた。
  森中郁雄氏(以下「森中氏」という。   )は、2006 年に高浜発電所長に就任して
以降、森山氏から金品を受領するようになり、合計約 4000 万円相当の金品を受
領した。2014 年までは 1 回当たりの受領金品の内訳の記録が残っておらず詳細
は明らかにはならなかったが、記録が残っている 2015 年以降、原子力事業本部
長代理として、  森山氏から 100 万円以上の現金や商品券を複数回受領しており、
2017 年には現金 500 万円を 2 回にわたり受領している。
  鈴木聡氏(以下「鈴木氏」という。      )は、2013 年 6 月に原子力事業本部副事業
本部長に就任して以降、森山氏並びに吉田開発、柳田産業、オーイング及び塩浜
工業から、合計 70 回以上にわたり合計約 1 億 2000 万円相当の金品を受領して
     100
おり、 万円以上の現金や商品券及び米ドルを受領したり、             1000 万円や 500 万
円といった非常に高額の現金を受領することも複数回あった。
 そのほかにも、原子力事業本部長代理であった白井氏や原子力事業本部副事
業本部長であった右城望氏(以下「右城氏」という。   )や大塚茂樹氏(以下「大
塚氏」という。)も 100 万円の現金や商品券を受領することがあった。以上のよ

77
 美浜発電所に関しては、2010 年代前半に、美浜発電所の幹部であった者が、森山氏から
商品券 10 万円分を受領していたことが確認されたが、本調査においては、それ以外に美浜
発電所の幹部による受領は確認されなかった。

                          88
うな 5 名についてのより詳細な金品の受領状況、返金・返礼の状況等について
は別紙 4-1-2-1 のとおりである。
 このように、2011 年以降は、1 回当たり 100 万円以上の金品の提供が頻繁に
行われるようになり、その中には 1000 万円もの現金が提供されるという異常な
事態が生じていた。
 なお、この時期においても、各発電所や後記 b の京都支社の重要な役職者が
受領していた金品は 1 回当たり数十万円程度であることが多く、上記のような
非常に高額の金品は原子力事業本部の幹部に対してのみ提供されていた。


b    京都支社(旧京都支店)の役職員


 京都支社(2015 年 6 月の組織改正以前は京都支店)の幹部も、遅くとも 1991
年頃以降、森山氏から金品を受領するようになり、以後、歴代の多くの京都支社
の幹部が金品を受領していた。
 受領した金品の金額としては、1 回当たり 5~20 万円程度が多く、主に就任祝
いや離任時の餞別として受領したケースが多い。また、京都支社では、幹部らが
森山氏と定期的に食事会を開催していたり、春の花見と称して森山氏を原子力
事業本部とともに接待することなどがあり、それらの際に渡される手土産に金
品が入っていたケースもあった。
 このほか、京都支店の幹部であった者によれば、2000 年代前半、森山氏及び
吉田開発の役員からの依頼に応じて関西電力所有地を吉田開発に賃貸したとこ
ろ、そのお礼として設けられた会食の席で受領した手土産の中に商品券 20 万円
が入っていたことがあるとのことである。  また、別の京都支店の幹部であった者
によれば、2000 年代後半、森山氏から吉田開発に関西電力所有地を譲渡してほ
しいとの要請を受け、当該土地は遊休地であり譲渡金額も妥当であったことか
ら売却したところ78、 売買契約の調印の際に森山氏から受領した手土産の中に現
金 10 万円が入っていたことがあるとのことである。さらに、京都支社の幹部で
あった者によれば、2010 年代後半、別の京都支社の幹部からの歳暮を渡しに森
山氏が入院している病院を訪問したところ、  森山氏から「お見舞いによく来てく
れた。、 」「いつも貰ってばっかですまんかったな、御礼に受け取ってくれ。」など
と言われて、商品券 10 万円分を受領したとのことである。
 このような京都支社と森山氏との関わり合いには、京都支社の営業所が若狭
地域にあったこと及び前記第 2 章第 3、3(2)のとおり、森山氏が 1990 年代前半
以降京都市に居を移し、森山氏と継続的に接触する機会が多くなったことが影

78
 なお、最終的には、買主は吉田開発ではなく吉田開発の役員の親族が代表を務める企業
に変更された。

                       89
響していると考えられる。


c     電力システム技術センター(旧中央送変電建設事務所)の役職員


  送電線や変電所に関する工事を担当する電力システム技術センター(2003 年
6 月の組織改正以前は中央送変電建設事務所)  の役職員も森山氏から金品を受領
していた。
  1990 年代後半に中央送変電建設事務所の幹部であった者は、関西電力の役員
を通じて森山氏から同幹部に挨拶したいとの申入れを受け、森山氏と面談した。
その際、   吉田開発の役員も同席しており、森山氏の合図を受けて同役員が紙袋を
手渡してきたところ、   その中に 50 万円分の商品券が入っていたとのことである。
この際、 同幹部は森山氏から、  吉田開発が送電線の工事に参画したいと依頼され
たとのことである。また、同幹部は、2000 年代前半に関西電力の幹部への就任
が内定したところ、就任祝いとして、森山氏から 100 万円相当の金製品を受領
した。
  その後、 八木氏が森山氏に挨拶に行った際、    前記(1)のとおり、八木氏は商品券
30 万円分程度を受領した。
  さらに、2010 年代前半、電力システム技術センターの所長であった福田氏及
び同センターの幹部であった者 2 名が森山氏から金品を受領していた。本件ヒ
アリングによれば、2010 年代前半に電力システム技術センターが大飯町におい
て太陽光発電所の工事を行うことになったところ、京都支店から、当該工事が若
狭地方において比較的大きな工事のため森山氏に事前に説明した方がよいとの
指摘を受け、森山氏と会食を行い工事の概要を説明したが、その際に、着任祝い
として金品を受領したとのことである。
 その後も電力システム技術センターでは、高浜町での太陽光発電所の工事や
美浜町での改良工事等があったことから、森山氏に工事について説明するため
に電力システム技術センターの幹部らが面談しており、その際に森山氏から商
品券やスーツ仕立券を受領していた。


d     関電プラント及び関電不動産開発の役職員


 関西電力の役職員だけではなく、以下のとおり、関西電力の子会社である関電
プラント及び関電不動産開発の役職員も森山氏から金品を受領していた。


(a)   関電プラント(旧商号:関電興業株式会社)の役員



                     90
  関電プラントは、原子力発電所や火力発電所等の設備の点検、設備設置・修繕
等を行う会社であり、若狭地域の原子力発電所においてもこれらの工事を請け
負っている。
  関電プラントの代表取締役社長やその他の取締役は、遅くとも 1997 年 6 月以
降、森山氏から金品を受領していた。前記第 3 章第 1、5(1)のとおり、森山氏は
1987 年 7 月 1 日から 2018 年 12 月 31 日まで関電プラントの顧問を務めていた
ところ、   関電プラントの役員は、        森山氏との会食の際に渡された手土産に現金や
商品券、   金貨が入っていたり、       就任祝いや離任時の餞別として金品を受領してい
たほか、森山氏から突然現金が送付されてきた者もいた。なお、関電プラントの
幹部であった者によれば、森山氏から商品券 10 万円分を受領したところ、同幹
部が受領当時自ら作成したメモに、  日付の記載とともに「****対策工事でオーイ
ング使用予定 全国百貨店券 10 万円」との記載があるとのことである。これは
2010 年代前半に高浜発電所及び大飯発電所において当該工事を検討していたと
ころ、森山氏から同幹部にオーイングを使ってくれないかとの連絡があったこ
とから、  同幹部が関電プラントの担当者に確認したところ、 オーイングに発注す
る予定だったと言われ、  実際にオーイングに発注したことがあり、  その頃に森山
氏から受領したとのことである。


(b) 関電不動産開発(旧商号:関電不動産株式会社、関電産業株式会社)の役
  職員


 関電不動産開発は、高浜町等の若狭地域における関西電力の役職員用の独身
寮や社宅の修繕や管理等を行っており、    これらの業務に関連して、   若狭地域にお
いて工事の発注を行っている。
 後記第 3、3(1)のとおり、関電不動産開発では、遅くとも 2000 年代前半から、
森山氏の要求に応じ、関電不動産開発の幹部が森山氏と年に 1 回面談を行い、
関電不動産開発が吉田開発や X2 社及び X4 社に対して翌年発注する工事の内容
や概算額を説明していた(ただし、2010 年代以降は、森山氏による説明要求の
対象は吉田開発に対する発注工事のみとなった。。   ) その際に、 関電不動産開発の
幹部が森山氏から受領した手土産に、商品券や金貨が入っていることがあった。
このような森山氏との関係については、2010 年代後半まで続き、順次、前任の
幹部から後任の幹部に対し、森山氏への発注工事の内容説明等に関する引継ぎ
がなされていた。なお、関電不動産開発の幹部退任後に同社の監査役に就任した
者が複数名いるところ、監査役就任後に後任者とともに森山氏に異動の挨拶に
行った際に、森山氏から商品券を受領した事案もあった。また、当該部署を所管
する取締役も同幹部とともに森山氏と会食することがあり、その際に森山氏か

                        91
ら金品を受領した事案もあった。


e   小括


 関西電力等の役職員による森山氏及び本件取引先等からの金品の受領は、森
山氏が高浜町の助役を退任した直後から始まり、  その受領者は、若狭地域に所在
する原子力部門の重要な役職者を中心としつつ、工事発注に関係のある部署の
役職員及び子会社の役職員等多岐にわたっていた。本件社内調査及び本調査に
より判明した関西電力等の役職員における金品受領者は、合計 75 名である。
 2005 年に原子力事業本部が美浜町に設立された以降は、従来は大阪の本店に
勤務し森山氏と疎遠だった役職員の多くが、森山氏から金品を受領するように
なった。特に、東日本大震災以降、原子力発電所の運転が順次停止され、その後
における新規制基準対応等から、原子力発電所における工事発注が増加するこ
とが見込まれたが、 これらと時期を同じくして、       金品を受領した役職員の数や受
                          1
領する金品の額も大きく増加していった。 回当たりに受領する金品の額として
は数万円~数十万円程度であった者が多い中、とりわけ、豊松氏、森中氏及び鈴
木氏においては、1 回に 500 万円や 1000 万円といった高額の金品を受領するこ
ともあり、他の金品受領者と比較しても 1 回当たりの受領額が群を抜いて大き
く、総額もそれぞれ約 1 億 1000 万円、約 4000 万円、約 1 億 2000 万円であり、
極めて高額となっている。
 上記 3 名がそれぞれ、原子力事業本部長、同本部長代理、同副本部長といった
重要な職位にあったことからすると(別紙 4-1-2-1 参照)、森山氏は役職員の職
位をも考慮した上で、後記第 5 章第 2 において詳細に記載する意図・目的をも
って、金品を提供する対象者や提供する金品の内容を決定していたものと考え
られる。


(イ)   受領時の態様について


 本件ヒアリングによれば、森山氏及び本件取引先等から金品を受領する際は、
多くの場合、森山氏との会食や森山氏が役職員の自宅を訪問したときなどの帰
り際に、手土産として受領したとのことである。森山氏が直接封筒等に入れたも
のを手渡すこともあったが、多くの場合は、お茶や菓子等の手土産の入った紙袋
を森山氏又は同席していた本件取引先等から受領し、その紙袋の底に商品券等
が入っていた。そのため、初めてこのような方法によって金品を受領した者は、
受領した時点においては商品券等の金品が手土産に含まれていることがわから
ず、事務所や自宅に帰った後又は森山氏らが役職員の自宅から帰った後にこれ

                        92
に気づいたとのことである。また、これまでに同様の方法で金品を受領したこと
がある者であっても、その場で手土産を開封することは憚られるため、金品が入
っているかもしれない手土産を持ち帰らざるを得なかったとのことである。こ
のほか、森山氏が役職員の自宅に金品を郵送することもあったとのことである。


イ   役職員による金品の返却、返礼及び費消について


 本件ヒアリングによれば、森山氏及び本件取引先等から金品を提供された際
に受領を拒んだり、後にそのまま返却しようとしたりすると、「ごちゃごちゃ言
うな。おれの志が受け取れないなら、原発はやめだと高浜の連中に言うぞ。、
                                  」「わ
しの気持ちがなぜ受け取れないのか。」などと言って、森山氏が激昂することが
頻繁にあったとのことである。また、本件取引先等に返却したところ、森山氏か
ら激昂されたケースもあったとのことである。このように森山氏らからの金品
の受領を謝絶したりそのまま返却しようとすると森山氏が激昂するということ
は、金品を受領した役職員の多くが知るところであった。
 そのため、森山氏らから金品を受領した役職員の多くは、前述のとおり、森山
氏と接点のある役職からの異動又は退職の際やそのほかの機会に、それまで森
山氏らから受領し管理していた現金・商品券等を用いて受領した金品と同額相
当の品物を購入し、それを森山氏に贈ることで金品相当額を返却していた。金品
受領者の中には、前任者や同僚等からこのような対応をするのがよいと教えら
れた者も多数おり、       中には、 原子力部門の先輩等に森山氏から受領した金品の取
り扱いについて相談したところ、         「商品券については、同じ金額の品物をお返し
する。金杯等の品物の場合は、当日返却拒否されたら、一旦預かり保管とし後日
返却する機会をうかがう。       保管していた物については、   退職の時にまとめて返却
する」などといった助言を受けた者もいた。
  また、金沢国税局による吉田開発に対する税務調査が行われたことを受け、
2018 年 2 月 17 日及び同月 24 日には、役職員の一部が豊松氏を通じて、森山氏
に対し受領していた金品をまとめて返却した。         具体的には、   鈴木氏が関西電力の
顧問税理士に森山氏から受領した金品の取扱いにつき相談し、同税理士から返
却の努力をすべきとの助言を受けたことを端緒とし、         2018 年 2 月 13 日に豊松氏
と森山氏が面談し、2017 年 10 月から同年 12 月までの間に豊松氏が森山氏から
手渡された現金の返却を打診したところ、     森山氏は返却を承諾して受領した。  そ
の際、それまでとは異なり、新たな金品の提供もなかったことから、豊松氏はこ
れまで預かっていた金品の返却が可能との感触を得た。そこで、豊松氏は、八木
氏、岩根氏、森中氏、鈴木氏、大塚氏ら 5 名の受領分もまとめた上で、2018 年
2 月 17 日に柳田産業の役員の同席の元で森山氏と面談し、森山氏に対し金品を

                         93
まとめて返却した。その際に交付された「お預り物の返却一覧表」によれば、現
金 4602 万円、商品券 2770 万円分、米ドル 12 万 5000 ドル、金貨等が返却され
たとのことである。   また、  一部未返却の金品があったことから、       豊松氏は同月 23
日にも同役員に対し、   森山氏へ残りの金品をまとめて返却するよう依頼し、         同役
員から同月 24 日付で森山氏の署名のある受取証を受領したとのことである。そ
の際に交付された「あづかりもの返却リスト」によれば、商品券 350 万円分、コ
イン 156 万円分、米ドル 110 万円分、金杯等が返却されたとのことである。
 このように、   金品を返却した者がいた一方で、      森山氏や本件取引先等から金品
を受領した役職員の中には、       森山氏らから受領した金品について、     返却を試みる
ことなく、費消ないし処分した者もいた。また、返却することも費消することも
できず、受領した金品を現在も保管している者もいた。


ウ   役職員による金品の保管について

 森山氏及び本件取引先等から受領した金品の保管方法としては、大半の受領
者は、受領者の自宅、貸金庫、執務スペースの引き出し、社内のキャビネット等
において、受領者個人で保管していた。受領者の中には、鈴木氏のように日付や
金額、相手方等を付箋に記載して整理して保管していた者もいれば、受領物をそ
のまま開封せずに保管していた者もいた。また、ごく一部には、事務局の担当者
や秘書に預けて保管していた者もいた。
 なお、本調査の過程で、関西電力の倉庫から、  「貴重品扱 高浜 森山氏から
会社預り品 ロレックス時計 2 個」と記載されたメモが添付されたロレックス
社製の時計 2 個が発見されたが、誰が受領した物かは判明しなかった。
 他方で、本件ヒアリングによれば、電力システム技術センターにおいては、同
技術センターの職員が受領した金品は、  受領者が相談の上、全て同技術センター
の金庫で保管していた。
 また、関電プラントや関電不動産開発においても、  社内の金庫で保管していた
ケースがあった。


3 役職員への金品提供者及びその金品の原資


 金品提供の事実について分析を行うためには、その時期、相手方(受領者)等
上記で認定した事情に加え、金品の提供者及びその金品の原資も重要な事実と
なる。本調査の結果は、以下のとおりである。




                        94
(1)   役職員への金品提供者と原資の拠出者が一致するケース


 前記 2(2)のとおり、本調査においては、75 名の関西電力等の役職員が森山氏
から金品を受領していたことが確認されているが、    本件ヒアリングによれば、こ
れらの金品の大半は森山氏によって直接提供されていた。このような場合には、
森山氏により提供されたとの事実のみからでは、この金品の原資が森山氏本人
であるのか否かは明らかではない。
 他方で、  例外的に、関西電力等の役職員が本件取引先等から直接金品を受領す
るケース、  森山氏と本件取引先等が共同又は連名で提供するケース、  本件取引先
等が金品を準備していることが役職員に明かされたケースもあった。具体的に
は、例えば以下のような事例であり、これらのケースでは、金品の全部又は一部
の原資の拠出者が本件取引先等であると認められる。
 なお、本件取引先等により提供された金品の多くは、本件取引先等に対してそ
のまま返却されたり、その他の品物により返礼された。


ア     本件取引先から直接金品を受領するケース


(ア)   吉田開発から受領したケース


     鈴木氏によれば、原子力事業本部副事業本部長であった 2015 年 4 月に、吉田
開発の役員に対し、「金品を贈るのをやめてほしい。」
                        「贈ってきても送り返す。」
と伝えていたにもかかわらず、同年秋頃に同役員が金品を送付してきたことが
あったため、同役員にその理由を尋ねると、同役員は森山氏に言われて仕方なく
金品を贈ったとのことであった。鈴木氏は、その際に初めて、森山氏の指示によ
り吉田開発がやむを得ず金品を準備していることがあることを認識した。そこ
で、鈴木氏は、同役員と相談し、同役員が偽札79を用意して、それを森山氏の前
で本物の札束であるかのようにして鈴木氏に渡すことにより、森山氏の指示ど
おりに同役員が鈴木氏に金品を提供したように装ったことがあったとのことで
ある。このような偽装については、同役員は否定しているものの、偽札には吉田
開発が業務上使用したと思われる裏紙が使用されていること、鈴木氏が受領物
を日付や金額、相手方等を付箋に記載して整理して保管していたことなどから
すれば、鈴木氏の供述は信用性が高いと認められる。
 次に、大塚氏によれば、2016 年 7 月 9 日に、大塚氏が森山氏及び吉田開発の

79
 当委員会は、鈴木氏から上記偽札の実物の提出を受け、確認したところ、トランプや雑資
料の裏紙等を札束の厚さにまとめ、それを紙で包んだだけの簡素なものであり、包み紙を開
ければ一目で本物の紙幣ではないと分かるようなものであった。

                       95
役員と大塚氏の昇進祝い又は慰労会として会食をしたところ、     会食中に、森山氏
から分厚い熨斗袋に入れた現金 100 万円とスーツ生地を渡され、その際、同役
員からも熨斗袋で現金 100 万円を渡された。また、大塚氏は、2017 年春と秋に
同役員とゴルフに行ったところ、その際に同役員から渡された手土産を帰宅後
に確認したところ、それぞれ商品券が 20 万円分ずつ入っていたのを発見したと
のことである。
 このほか、   吉田開発の役員から手土産として渡された紙袋の中に、  菓子ととも
に 10 万円や 30 万円の商品券が入っているケースも複数あった。


(イ)   柳田産業から受領したケース


 大飯発電所の幹部であった者によれば、1990 年代後半、柳田産業の役員から
自宅の訪問を受け、  大飯発電所からの転勤の餞別として、 20kg と商品券 10 万
                              米
円分を受領したとのことである。
 次に、別の大飯発電所の幹部であった者によれば、同幹部は 1990 年代後半の
同役職就任時に、スーツの仕立券に加えて、森山氏及び柳田産業から 5 万円ず
つ合計 10 万円ほどの商品券を受領した。また、同年に別の役職に就任した際に
も、森山氏及び柳田産業からそれぞれ 5 万円ずつ合計 10 万円ほどの商品券を受
領した。2000 年代前半に大飯発電所幹部を退任した時にも、森山氏と柳田産業
併せて 5 万円ほどの商品を受領したとのことである。
 さらに、原子力事業本部の幹部であった者によれば、2010 年代後半に、柳田
産業からブルガリの男性用時計を受領したとのことである。
 このほか、京都支店の幹部であった者は、2000 年代前半に京都支店から他所
へ転勤する際、森山氏、柳田産業及び吉田開発が揃って京都支店を訪れ、餞別と
してそれぞれから 10 万円を渡されたとのことである。


(ウ)   塩浜工業から受領したケース


 白井氏によれば、白井氏が 2012 年 7 月に森山氏及び塩浜工業の役員と会った
際、それぞれより手土産を受領し、そこに現金 100 万円が同封されていた。現金
は同役員から受領した手土産の中に入っていたため、白井氏は 100 万円は同役
員から提供されたものと認識したとのことである。


(エ)   その他の本件取引先等から受領したケース

 これらのほか、京都支店の幹部であった者によれば、2000 年代前半に京都支

                      96
店の同役職に就任した際、森山氏、吉田開発の役員、柳田産業の役員及び X5 社
の役員が挨拶に訪れ、その時に X5 社の役員から現金 10 万円分を受領したとの
ことである。
 また、関電不動産開発の幹部であった者によれば、同役職を退任した 2000 年
代後半に、X2 社及び X4 社から、商品券 10 万円分と 5 万円分を受領したとのこ
とである。なお、 いずれの企業からいくら受領したのかは覚えていないとのこと
である。


イ    森山氏と本件取引先との共同又は連名で提供するケース


 京都支店の幹部であった者によれば、2000 年代前半に親族が他界した際、森
山氏、吉田開発及び柳田産業から、それぞれ 10 万円ずつ合計 30 万円の香典が
郵送されてきたとのことである。
 また、白井氏によれば、2012 年 5 月、森山氏が親族の見舞いに来たことがあ
り、森山氏から花と一緒に渡された封筒を森山氏が帰った後に確認したところ、
森山氏、塩浜工業、吉田開発、柳田産業、オーイング、X1 社の各役員名義の見
舞金がそれぞれ別々の袋で入っており、    金額を確認したところ、   塩浜工業の役員
から受領した分は 50 万円、それ以外は各 10 万円で合計 100 万円が入っていた
とのことである。
 さらに、原子力事業本部の幹部であった者によれば、    同幹部が同役職在任中に
受領した金品の中には森山氏と柳田産業との連名のものもあった。 同幹部は、柳
田産業と連名であったことから同社に返却しようとしたところ、同社の役員か
ら「ばれたら先生80に怒られるから」と返却を断られたとのことである。


ウ    小括


 以上のように、頻度としては多くはないものの、森山氏だけではなく、吉田開
発、柳田産業及び塩浜工業等から関西電力の役職員に対して、直接金品が提供さ
れることもあった。これらの事例については、森山氏が金品を準備した上であえ
て吉田開発、柳田産業又は塩浜工業等に金品を提供させていたとは考え難いこ
とから、実際に金品を関西電力の役職員に提供していた者が金品の原資の拠出
者であったと認められる。また、共同又は連名で提供するケースについても、森
山氏本人か共同又は連名で金品を提供した本件取引先かは明確ではないものの、
全部又は一部の原資が本件取引先等から拠出されていた可能性がある。

 前記第 3 章第 2、
80
            3(1)イのとおり、森山氏は本件取引先や関西電力等の役職員から「先生」
と呼ばれることがあった。

                      97
 なお、金品を提供した者が本件取引先等の者であったとしても、森山氏から促
される形で本件取引先の者が役職員に金品を提供することがあった旨を複数名
が供述していること、吉田開発からの金品受領後に吉田開発の役員に対して金
品を返還したい旨を連絡した際に「返したら森山さんに怒られまっせ。」と言わ
れた旨の供述があることなどから、本件取引先からの金品提供についても、森山
氏が関与している場合があることが認められる。


(2)   森山氏が提供した金品の原資


  一方、森山氏が金品提供者である場合であっても、本件取引先から森山氏に対
し、手数料、顧問料等の名目で金銭が提供されている場合には、これらの金銭が
関西電力等の役職員が受領した金品の原資であったとの評価もあり得るため、
以下、本件取引先から森山氏に対する金銭の提供状況について検討する。

ア     本件取引先から森山氏に対する金銭の提供状況


 前記第 3 章第 1、5(2)イのとおり、森山氏は、高浜町助役退職以降、2018 年 10
月までの間、柳田産業の相談役に就任していた。また、前記第 3 章第 1、5(2)ウ
のとおり、森山氏は、1997 年 3 月から 2018 年 5 月までオーイングの取締役に就
任しており、同社の株主でもあった。したがって、森山氏は、少なくともこれら
の企業から当該役職に対する報酬等を受領していたと考えるのが自然かつ合理
的である。本件ヒアリングにおいて、    森山氏は柳田産業から報酬として年数千万
円単位の支払いを受けていたと聞いたことがある旨を供述する者もいた。
 加えて、例えば前記第 3 章第 1、5(2)アのとおり、吉田開発は総額約 3 億円を
森山氏に支払っていたことが認められるように、     本件取引先等において、  数百万、
数十万単位の多額の謝礼、 手数料、  付け届け等を支払っていたことが認められた。
 以上及び本件ヒアリング等を総合すると、森山氏は、報酬、謝礼、手数料、付
け届け等の名目で、少なくとも、本件取引先等の一部から、これまでの総額では
数億円単位の金銭を受領し、年単位で見ても多い年は数千万円程度の金銭を受
領していたことが認められる。


イ     小括


 本調査においては、森山氏が既に亡くなっていたこともあり、同氏の生涯を通
じた資産状況、収支状況については明らかにならなかったものの、報酬、謝礼、
手数料、付け届け等の名目で、少なくとも本件取引先等の一部から極めて多額の

                      98
金銭を受領していたことが認められる。また、前記(1)アのとおり、関西電力の
役職員に対して金品を提供していた本件取引先等が金品の原資を拠出していた
ことが明らかな事例もある。
 以上からすると、森山氏が金品を提供している場合についても、 その原資の少
なくとも一部は、本件取引先等の一部からの報酬等や前記第 3 章第 1、5(1)の関
電プラントからの顧問料から拠出されており、実質的な原資の拠出者はこれら
の者であったと評価する方が実態に合うと考えられる。




                   99
第2    森山氏に対する本件事前発注約束等


1    森山氏に対する本件事前発注約束等の概要


 本調査によれば、森山氏は、関西電力の役職員等81に対し、原子力事業本部や
京都支社の管轄する工事等について、本件取引先等に発注することを強く要求
したり、工事等に関する情報の提供を求めていたことなどが認められる。
 これらの森山氏の要求は執拗かつ威圧的な方法でなされる場合も多く、時に
は恫喝ともいえる態様であり、本調査においては、このような森山氏の要求に関
連する資料や電子メール等も多数確認されている。
 そして、関西電力の役職員は、森山氏の要求に応じる形で、森山氏に対し、事
前に本件取引先等に発注する個別の工事等の内容や年度ごとの発注予定額を伝
え、個別の工事等や発注予定額に見合う工事等を発注することを約束し、   その中
には実際に当該約束に従って発注を行っている場合があることが判明した(以
下「本件事前発注約束」と総称する。。加えて、関西電力の役職員は、森山氏に
                 )
対し、現在又は将来の工事等に関する情報(案件名、工事等の内容、発注・施工
の時期、費用の概算額等)も提供していた(以下「本件事前情報提供」といい、
本件事前発注約束及び本件事前情報提供を、以下「本件事前発注約束等」と総称
する。。
   )
 関西電力の役職員による本件事前発注約束等は遅くとも 2000 年代から行われ
ていたことが認められる。   当委員会は、関西電力から提供を受けた資料とともに、
本件デジタル・フォレンジック調査を通じて、    本件事前発注約束等をうかがわせ
る多数の資料や文書等を得た。これらに基づき本調査において認められた本件
事前発注約束等の件数は 120 件以上(本件事前発注約束等の対象となった工事
等の件数は延べ約 380 件以上)に上っている82。本件事前発注約束等については、
本調査においてその全てを同じ深度で調査した上で本報告書に掲載することは
現実的でも実効的でもないため、代表的な事例を後記 2 及び第 3、2 に掲載する
こととする。
 なお、本調査においては、   関西電力が森山氏に提供した資料であるとして当委
員会に提出した資料、   本件デジタル・フォレンジック調査により顕出された電子
メールを中心とする電子データ、原子力事業本部に森山氏の対応資料として保

81
   後記第 3、3(1)記載のとおり、関西電力のほか、関電不動産開発の役職員に対する発注の
要求も認められた。     ただし、確認された大半の事例は関西電力の役職員に関するものであり、
後記第 3、3(1)以外の箇所では原則として単に「関西電力」又は「関西電力の役職員」と表
記する。
82 1 度の本件事前発注約束等により複数の工事等が対象となることもあり、
                                       本調査で判明し
た限りにおいて、最大で 79 件の工事等が対象となっているケースもあった。

                      100
管されていた電子的記録媒体に含まれていた電子データを中心に本件事前発注
約束等を認定している。これらの認定については、前記第 1 章第 1、5 の限界に
服するほか、大量に存在する資料等が、いつどのような説明とともに森山氏に提
出されたか、繰り返し改訂されている電子データについてどのバージョンが森
山氏に提出された最終版であるのか、資料や電子メールに記載されている内容
がどれほど正確であるのか、本件事前発注約束が実際にどの程度守られたのか
などについて必ずしも判然としない点があることを前提に、合理的推測を用い
ながら行われているという限界にも服することを付言しておく。  また、  当委員会
においては上記資料から本調査期間内で実務上可能な限りの調査を尽くしたが、
過去の本件事前発注約束等に関する全ての資料や電子データ等が保管されてい
たわけではなく、本件事前発注約束等は森山氏との面談や電話に際して口頭で
も行われていたため、当委員会が関西電力による本件事前発注約束等を網羅的
に調査したわけではない。

2    本件事前発注約束等の具体例


 本調査によって判明した本件事前発注約束等の一例を示すと、以下のとおり
である83。
 なお、下記は例示であり、これら以外にも、本調査によって本件事前発注約束
等を裏付ける資料が多数確認されており、その中で問題が大きく、本件事前発注
約束等の不当性を示すものであると判断したものを選び、後記第 3、2 に掲載し
ている。


(1) 本件事前発注約束の具体例①(事前に本件取引先等に個別の工事等を発注
   することを約束するケース)


 本件事前発注約束には大きく分けて、事前に本件取引先等に個別の工事等を
発注することを約束するケースと本件取引先等について年度ごとの発注予定額
を約束するケースがあるが、前者の具体例としては、本件デジタル・フォレンジ
ック調査により顕出された 2012 年 4 月 22 日に関西電力の高浜発電所長の長谷
氏が原子力事業本部長の豊松氏ら複数名に送信した電子メール 84に示される事

83
   資料等の内容については、本報告書の目的・意義、プライバシー等への配慮及び機密保持
の要請並びにこれらについて関西電力から聴取した意見等を総合考慮の上、本報告書に掲
載するために必要範囲で内容を省略又は簡略化し、  匿名化処理をするほか、形式等を調整し
ている。また、資料等に誤記等がある場合であっても原文のまま記載をしている。
84 電子メール中の「先生」とは森山氏、
                    「カンソウ」とは環境総合テクノスのことをそれぞ
れ指している。

                     101
実関係が挙げられる。当該電子メールには、以下の記載がある。

本日午前 10 時半頃、先生から下記電話があり、いつもながらの工事要求。約 10 分間の再稼
動に関してのご指示も。機嫌は普通。最近で、土日に電話をしてくるのが 3 回目。何か焦っ
ているのか。以下、先生の指示。
1. 明後日会う時に、いい話(工事)を持って来い。びっくりするような。
2. 大手建設会社と腐れ縁を作るな。地元との関係をキチッとしろ。塩浜は頑張っている。
   一昨日、[人名](いつもの呼び捨てで申し訳ありません)にも言っておいた。
3. (再稼動に関して)雑音に惑わされず、ドシッとしておけ。
最近、再三にわたり吉田開発に工事を持って来いとの要求。上期にカンソウ経由で 4000 万
円の A 工事を約束したが、それでは物足りない?様子。明後日会う時には、更に 6000 万円
程度(事業本部に予算を交渉中)の B 工事を出す予定。これで今年は計約 1 億円。安全性向
上対策関係で構内の土地を探しいる中、  これらは我々にとっても大変意味のある工事。   但し、
極多忙な土建課に、自公法・予算獲得手続き、工事実施の負担をかけているのが気になると
ころです。


 また、上記電子メールを送信した 3 日後の 2012 年 4 月 25 日に、同じく長谷
氏が豊松氏ら複数名に送信した上記電子メールには、以下の記載がある。

結果を報告します。特に懸案事項・問題等はありません。

○日時・場所      平成 24 年 4 月 24 日(火)11:00~16:30 [某所]
○出席         森山先生、[人名]、[人名]、[人名]、長谷
○結果
 ・ 吉田開発への仕事を持って来いとの要求に、B 工事(H24 年度下期、4000 万円、添付
  資料の 2 ページ目)を提案し、了解。この程度か、との感触を示されたが、とりあえず
  今回はこの程度にしておいてやる、とのこと。
   昨年末に吉田開発への工事要求があり、添付資料の 1 ページ(A 工事、4000 万円)を
  提示して凌いでいたが、今年に入り更なる要求が繰り返され、今回に至ったもの。
  今年計 8000 万円も出す、これが精一杯とのニュアンスを伝えた。
 ・ その後、全員での会食になり、至極ご機嫌。話が弾み、終わったのは 16:30。


  上記電子メールには「B 工事(H24 年度下期、4000 万円、添付資料の 2 ペー
ジ目)を提案し、了解。  」との記載があるところ、上記「添付資料」の 1 頁目は
「A 工事(その 1)」という標題が付された資料であり、2 頁目は「B 工事(その
2)←今回ご報告」という標題が付された資料である。このうち「B 工事(その
2)←今回ご報告」の記載内容(イメージ)は、以下のとおりである。


             B 工事(その2)←今回ご報告           平成 24 年 4 月 24 日
④3/4 号機緑地帯                ⑤倉庫奥
1. 工事概要                   1.   工事概要
 緑地帯とアスファルトに整備する。              アスファルト舗装、及び進入路を拡幅整


                        102
                                       備する。
                 工種      数量                        工種           数量

      (1)   立木処理         約**㎡           (1)   掘削               約**㎡

      (2)   切土           約**㎡           (2)   擁壁設置             約**m

      (3)   アスファルト舗装     約**㎡           (3)   アスファルト舗装         約**㎡

      (4)   ガードレール設置     約**m           (4)   ガードレール設置         約**m

 2. 願書関係                          2.   願書関係
 (1) 工場立地法                        (1) 自然公園法
                       <現場写真>     (2) 工場立地法                   <現場写真>
                        (略)       (3) 建設リサイクル法                 (略)
 3. 工期(予定)                        3.   工期(予定)
 平成 24 年 10~12 月                  平成 24 年 10~12 月
 (但し、許認可               <現場地図>
                                  (但し、許認可・干渉物移設後)
 ・干渉物移設後)               (略)
                                                   <現場地図>

                                                        (略)




 〇工事費(④~⑤の合計)
      約 40,000 千円


 上記資料には「④3/4 号機緑地帯」85及び「⑤倉庫奥」との表題の下、工事概要
や予定工期等とともに工事予定箇所の写真及び地図が掲載されているほか、そ
の左下にはこれらの工事の工事費が約 4000 万円であることが記載されている。
 これらの電子メール及び添付資料によれば、森山氏は関西電力に対して吉田
開発に工事を発注するよう繰り返し要求していたところ、    関西電力は、  その要求
を受けて、子会社である環境総合テクノス経由で吉田開発に 4000 万円の B 工事
を発注することを約束したことが認められる。
 そして、現に、上記の「④3/4 号機緑地帯」の工事については、2012 年 12 月、
関西電力から環境総合テクノスを通じ、発注総額 1571 万 8500 円で吉田開発に
発注されている。また、上記の「⑤倉庫奥」の工事についても、関西電力から環
境総合テクノスを通じ、発注総額 1407 万円で吉田開発に発注されている。
 このように、両工事の発注金額を合算すると 2978 万 8500 円となり、事前に


85   「3/4 号機」とは高浜発電所 3 号機及び 4 号機を指している。


                                103
約束していた金額である 4000 万円には満たないものの、森山氏の要求に応じて、
関西電力が事前に吉田開発に個別の工事を発注することを約束し、そのような
約束に従って工事を発注していたことが認められる86。
 以上が、本件事前発注約束のうち、   事前に特定の企業に個別の工事等を発注す
ることを約束し、当該約束に従って発注を行うケースの具体例の一つである。


(2) 本件事前発注約束の具体例②(本件取引先等について年度ごとの発注予定
   額を約束するケース)


     本件事前発注約束のうち、本件取引先等について年度ごとの発注予定額を約
束するケースの具体例としては、       本件デジタル・フォレンジック調査により顕出
                 8788
されたエクセル・ファイル により認められる事実関係が挙げられる。
 当該エクセル・ファイルには 2004(平成 16)年度分から 2008(平成 20)年度
分及び 2011(平成 23)年度分の「計画折衝経緯」というシートとともに、上記
各年度における関西電力と柳田産業の間で行われた柳田産業に対する発注予定
額に関する交渉経緯等が時系列で記載されている。       そして、各年度のシート中に
は、以下①~⑤の記載が存在する89。


①「平成 16 年度分     計画折衝経緯」という表題のシート

      項目                内容                  コメント
           11 月上旬に三者([役職①]、相談役、[役職 16 年度 34.5 の資料を準
           ②])会談を予定している。               備のこと([若狭支社幹部
 [ 若狭支社幹   内容は 16 年度 34.5 で手打ち         ①]から[役職①]に渡す)
 部①]より     [役職②]とは別途 15 年度の実勢  90を相談する
                                       15 年度実勢の落としどこ
           が、[役職②]から 15 年度は厳しいとの打診 ろを発電所と相談し、資料
                34
           があり、 で決着しているが、      来年その分下 準備のこと。  (34 or 34.5 or


86 なお、 「④3/4 号機緑地帯」の工事については、その後も「既設工事との関連で設計内容等
を熟知している既設の工事業者」という特命理由によって吉田開発に特命発注されており、
2013 年 7 月に発注総額 2971 万 5000 円の契約が締結されている。
87 資料中の「Y」は柳田産業、
                      「先生」及び「相談役」は森山氏をそれぞれ指している。森
山氏は、当時、柳田産業の相談役を務めていた。
88 関西電力によれば、資料中の「[役職①]」及び「[役職②]」はいずれも柳田産業の役員を

指している。
89 「平成 18 年度分
                計画折衝経緯」という表題のシートにおいては、森山氏と関西電力と
の間では発注予定額を協議していたことをうかがわせる記載はあるものの、森山氏との間
で発注予定額を合意したと明確に認められるまでの記載は確認されなかった。
90 本件ヒアリングにおいて、関係者に「実勢」との文言の趣旨を確認したが、明確にその趣

旨を説明できた者はいなかった。もっとも、その文意や文脈からすれば、当該年度の発注金
額の「実績値」を指している可能性が高いと考えられる。

                             104
  項目               内容                             コメント
          げるとの条件で落としどころを検討のこと               35)
          との指示あり。



②「平成 17 年度分    計画折衝経緯」という表題のシート

  項目                   内容                           コメント
          [若狭支社幹部①]より、 年度については 16
                        17                  各 発電 所キ ーマン に対し
          年度と同額の 34.5 とする。若狭支社幹部①]
                           [                て、  H16 年度実勢 34.5 につ
[ 若狭支社幹   には 34.5 のペーパー(3 点セット)を紙及び         いて通知。未達無きよう指
部① ]と打合   メールにて配布。若狭支社幹部①]から[役職
                     [                      示。また、現状未達が大き
わせ        ①]にメール転送をするとのこと。 の 34.5
                                H17         い 大飯 発電 所につ いては
([ 若狭支社   は Y の体力強化との位置づけ。    11/15 に[役職    Y[ 幹部 ]に提案するように
幹部②]同     ①]が相談役に H17 について 34.5 とすること       連絡済。
席)        を通知する予定。
          また、16 年度については実勢無しの 34.5 を
          ターゲットとしてやるとのこと。


③「平成 19 年度分    計画折衝経緯」という表題のシート

  項目                    内容                        コメント
          ・M 氏との打ち合わせ結果、H18 年度と同様
          に 35.5 と決定した。
          ・18 日までに M 氏宅に 35.5 の内訳を発送す
執行役員か
          るとのこと。(今週中にチェックしたいとの
らの TEL
          意向)
          ・今後 H19 年度の実勢を Y[役職②]以下と調
          整することとなる。別途指示する。


④「平成 20 年度分    計画折衝経緯」という表題のシート

  項目                    内容                        コメント
          ・10/6 に相談役と敦賀自宅で会談。本年並
          (35.5)ということでお願いした。
副事業本部
          ・11/30 に Y 事務所にて 35.5 の 1 枚ものを渡
長と打ち合
          す予定。
わせ
          ・12/14 に別途 Y[役職②]と会談するとのこ
          と。


⑤「平成 23 年度分    計画折衝経緯」という表題のシート

  項目                   内容                         コメント



                             105
 森中統括が       37.0 案を提示。
 先生と交渉       37.5 で妥結



 上記資料によれば、関西電力は、2003 年頃以降、森山氏らとの間で年度ごと
の柳田産業に対する発注予定額に関する事前協議を行っており、当該協議にお
いて合意した金額を発注予定額としていたことが認められる。
    「各発電所キーマンに対して、H16 年度実勢 34.5 について通知。未達
 そして、
無きよう指示。」などの記載からすると、発注予定額に関しては、美浜発電所、
高浜発電所及び大飯発電所の担当者とも必要に応じて共有され、原子力事業本
部(当時の若狭支社)から各原子力発電所に対し発注予定額の「未達」がないよ
うにする旨の指示が出されていたことが認められる。そして、特に「未達」が大
きいとされた大飯発電所については、柳田産業の幹部に提案するよう連絡まで
なされていたことが認められる。
 実際、上記資料に記載された各年度の発注予定額と実際の発注額を比較する
と以下のとおりであり、いずれの年度においても約束された発注予定額を超え
る金額又はそれとほぼ同等の発注が行われていたという結果が見て取れる91。

          年度              約束された発注予定額     実際の発注額
     2004(平成 16)年度92         34.5 億円   約 35 億 3840 万円93
     2005(平成 17)年度           34.5 億円   約 37 億 5498 万円
     2007(平成 19)年度           35.5 億円   約 33 億 8704 万円
     2008(平成 20)年度           35.5 億円   約 35 億 8320 万円
     2011(平成 23)年度           37.5 億円   約 42 億 3078 万円


 以上が、本件事前発注約束のうち、本件取引先等について年度ごとの発注予定
額を約束するケースの具体例の一つである。



 2007 年度の実際の発注額は発注予定額を若干下回っているが、
91
                                       「平成 19 年度分 計画折
衝経緯」という表題のシートには、    「1.5 億円については H20 年度へ繰越しとする。」「実勢
                                                  、
金額に 1.5 をプラスしたものを H20 年度の額面とすることができれば、    表裏なしとなる」  と
いった記載が存在し、2007 年度の発注予定額に達しなかった部分については、2008 年度の
発注予定額を決定する際に考慮されていたことがうかがえる。
92
93
  後記第 3、1(1)イ脚注のとおり、関西電力によれば、2004 年 9 月までは、一部の点検業
務については関電興業株式会社(現商号:関電プラント)を通じて発注していたため、
2004(平成 16)年度の発注金額については、同社を通じて、発注した金額を加味した金額
を記載している。

                               106
(3)   本件事前情報提供の具体例


 本件事前情報提供の具体例としては、関西電力が 2016 年 11 月 29 日に森山氏
に提供した「高浜地元企業のご協力依頼について」と題する資料に示される事実
関係が挙げられる。当該資料には、以下の記載が存在する。

                     高浜地元企業のご協力依頼について

               件名                概算額(千円)              内容
      ① C 用地の活用                       107,000   資料 1・2 参照
      ② 高浜発電所 D 工事                     27,600   資料 3 参照
      ③ 高浜町内の E 工事                      9,400   資料 4 参照
                 計                    144,000

                                   ※ 競札の結果等で概算額は変動します。


 上記資料中の資料 1 は「①C 用地の活用」 、資料 2 は「①C 用地の活用(現地
図)、資料 3 は「②高浜発電所 D 工事」「資料 4」は「③高浜町内の E 工事」
  」                   、
と題する資料をそれぞれ指しており、上記資料と併せて森山氏に提供されてい
る。
 そして、 「①C 用地の活用」と題する資料には、 (α)
                          「C    」地点の活用案として
「****用地@120 万円/月」と記載され、そのための「上部アスファルト舗装及
び入り口フェンス改修」の工事費用の概算額として「約 14,500 千円」と記載さ
れている。また、 (β)「C     」地点の活用案として、       「****用地@96 万円/月」と
記載され、  そのための    「****整備」の工事費用の概算額として「約 58,500 千円」
と記載されている。
 この点、関西電力によれば、関西電力は「C(α)              」地点の工事を吉田開発に発
注し、2016 年 7 月 1 日付賃貸借契約を締結し、賃料月額 120 万円で当該土地を
賃借している。また、関西電力は、吉田開発に対して、 (β)            「C   」地点の工事を
他の工事と併せて 9798 万円で発注し、     2017 年 9 月 26 日付賃貸借契約を締結し、
賃料月額 85 万 3000 円で当該土地を賃借している。
 また、「②高浜発電所 D 工事」と題する資料には、図面とともに「工事概要:
[工事の内容] 約**m」「工期:H29 年 1 月~3 月(予定)、
             、                       」「概算額:27,600 千
円(競札の結果により契約金額は変動します)、          」「その他:高浜地元企業とグル
ープ会社との競札を予定。   (入札結果により、契約会社を決定)       」といった記載が
存在する。そして、   当該工事については、競争入札が実施され、吉田開発が 2800
万円、環境総合テクノスが 3100 万円でそれぞれ入札した結果、吉田開発が当該
案件を落札し、 関西電力は、  2016 年 12 月 28 日、当該工事を吉田開発に対し 2760


                           107
万円で発注している。
  さらに、「③高浜町内の E 工事」と題する資料には、    地図とともに 「工事概要:
[工事の内容]・約**㎥」「工期:H28 年 11 月~12 月(予定)、
             、                      」「概算額:9,400
千円」「その他:元請ゼネコンの下請けとして、仮置土砂を町内住宅造成地に運
    、
搬。 」といった記載が存在する。ただし、当該工事については、工事自体が中止
されている。
  以上のとおり、関西電力は、森山氏に対して、今後、関西電力が実施を予定し
ている工事等に関する情報を提供していたことが認められる。
  以上が、本件事前情報提供の具体例の一つである。




                      108
第3    本件取引先等に対する発注の適切性


1 関西電力及び関電子会社 6 社から本件取引先に対する発注状況


(1)   関西電力から本件取引先に対する直接発注94の状況95


 関西電力は、本件取引先について、本件社内調査報告書等において森山氏と一
定の関係を有すると指摘していた。そこで、本調査においては、本件取引先に対
する発注状況を検証した。


ア     吉田開発に対する直接発注


 吉田開発に対する直接発注の発注件数及び発注金額の推移(2002~2018 年度)
            969798
は、下表のとおりである        。




94 本報告書においては、   関西電力が、他社を経由せずに、   本件取引先に対して工事等を発注
するケースを「直接発注」と呼称する。
95 関西電力では 2001 年度以前の取引データは基本的に保存されておらず、正確な数値を算

出することができないため、吉田開発、柳田産業及び塩浜工業については、2002 年度以降
の取引を検証対象としている。
96 関西電力の原子力部門に関する契約は、
                        ①一般契約、   ②単価契約、③簡易購買契約及び④
原子力事業本部が発注権限を有している委託契約等(前記第 2 章第 3、3(4)脚注参照)に区
分されるが、     本報告書の一覧表においては、金額の多寡等の重要性等を考慮し、  「競争発注」
及び「特命発注」の発注件数及び発注金額は、①一般契約及び④原子力事業本部が発注権限
を有している契約に関する数値を記載し、それ以外の区分の契約の発注件数及び発注金額
については、    「その他の発注」の項目に含めている。
97 原子力事業本部が発注権限を有している委託契約等(前記第 2 章第 3、3(4)脚注参照)の

2002~2011 年度の取引データ及び簡易購買契約の 2002 年度の取引データは基本的に保存さ
れておらず、正確な数値を算出することができない。もっとも、関西電力によれば、吉田開
発、  柳田産業及び塩浜工業においては、   これらの契約の発注件数及び発注金額は相対的に少
ないとのことであり、これらの数値は本調査の検証からは捨象した。
98 本報告書の一覧表においては、
                    発注件数及び発注金額については、   原則として、契約締結
日を基準として集計しているが、     原子力事業本部が発注権限を有している委託契約等   (前記
第 2 章第 3、3(4)脚注参照)については、管理の都合上、竣工・検収日を基準に計上してい
る。


                       109
                                                                             (千円)99
                     発注合計             競争発注100            特命発注            その他の発注
               件数      金額            件数   金額        件数     金額           件数    金額
     2002 年度    11          41,424    1     1,830    8       18,268      2     21,325
     2003 年度     5          23,229    0         0    2       14,497      3      8,732
     2004 年度     4          14,680    1     4,360    3       10,320      0          0
     2005 年度     9          46,432    3    13,610    2          9,130    4     23,692
     2006 年度    11          78,784    3    25,480    8       53,304      0          0
     2007 年度     5          15,904    1     2,860    2          9,520    2      3,524
     2008 年度     8          23,277    2    10,550    4          9,430    2      3,297
     2009 年度     5          11,566    0         0    3          9,180    2      2,386
     2010 年度     7          15,448    1     1,950    3          9,876    3      3,622
     2011 年度     4          26,847    1     4,810    2       21,580      1         457
     2012 年度     2          19,460    0         0    2       19,460      0          0
     2013 年度     4          40,130    2    29,830    2       10,300      0          0
     2014 年度     2          49,600    1    35,100    1       14,500      0          0
     2015 年度    10      118,982       4    85,800    6       33,182      0          0
     2016 年度    13      148,414       5    84,078    8       64,336      0          0
     2017 年度    17      249,168       2    29,100   15      220,068      0          0
     2018 年度     7      131,172       2    35,500    5       95,672      0          0



  吉田開発に対する直接発注の発注金額は、   2014 年度までは、  2006 年度を除き、
1000~4000 万円台の範囲で推移してきたが、2015 年度に 1 億円を超えるまで急
増し、その後 2017 年度には約 2 億 5000 万円程度となっている。
 関西電力によれば、   これは新規制基準に基づく安全対策工事のため、    高浜発電
所構外の土地を整備する必要があり、そのための工事を吉田開発に発注したこ
とが理由とのことである。


イ      柳田産業に対する直接発注


 柳田産業に対する直接発注の発注件数及び発注金額の推移(2002~2018 年度)
は、下表のとおりである。


                                                                             (千円)



99
 本報告書においては、千円単位での表示については、千円未満を切捨表示にしている。
100
 本報告書においては、2 社以上の取引先から見積書を徴収し、見積額の最も低い取引先
を契約予定先とする方法による発注を「競争発注」と呼称し、特定の取引先を指名する方
法により発注することを「特命発注」と呼称する。(別紙 2-3-3-4 参照)。

                                          110
               発注合計                  競争発注                  特命発注           その他の発注
            件数      金額         件数      金額           件数       金額          件数    金額
  2002 年度    150   1,926,823     2      54,870       144     1,865,477     4    6,476
  2003 年度    140   1,395,111     2       10,900      134     1,381,923     4     2,288
  2004 年度    113   2,088,550     4          6,728    104     2,073,945     5     7,877
  2005 年度    189   3,754,984     0             0     183     3,748,897     6     6,087
  2006 年度    176   3,985,860     2          5,429    169     3,964,929     5    15,502
  2007 年度    169   3,387,046     2       16,000      166     3,370,975     1       71
  2008 年度    173   3,583,201     1          9,260    168     3,557,577     4    16,364
  2009 年度    184   4,626,920     3       98,060      180     4,528,789     1       71
  2010 年度    186   5,536,734     2       14,200      178     5,502,365     6    20,169
  2011 年度    148   4,230,786     0             0     142     4,207,919     6    22,867
  2012 年度    109   2,575,746     2       25,380       94     2,510,758    13    39,608
  2013 年度    120   4,080,592     3      108,300      112     3,957,696     5    14,596
  2014 年度    110   3,311,434     2       23,630      101     3,265,713     7    22,091
  2015 年度    108   3,122,783     2       43,600       99     3,047,995     7    31,187
  2016 年度    120   4,182,300     2       18,310      110     4,133,824     8    30,165
  2017 年度    118   3,264,063     4       76,440      103     3,128,678    11    58,945
  2018 年度     95   3,349,039     1       46,700       72     3,161,532    22   140,806


 柳田産業に対する直接発注の発注金額は、2005 年度以降、約 25~55 億円の間
で推移している101。
 関西電力によれば、年度ごとに柳田産業に対する発注件数及び発注金額にば
らつきがある理由は、各年度で定期検査を実施する発電基数が異なるほか、    点検
内容も異なってくるためとのことである。なお、2010 年度の発注金額は約 55 億
円と突出しているが、これは通常の定期検査とは別に、   関西電力が柳田産業から
高額の設備等を購入したためとのことである。


ウ     オーイングに対する直接発注


 オーイングに対する直接発注の発注件数及び発注金額の推移(2012102~2018
年度)は、下表のとおりである。


101
    関西電力によれば、2004 年 9 月の定期検査までは、一部の点検業務については関電興業
株式会社(現商号:関電プラント)を通じて発注をしていたため、関西電力からの直接発注
の金額が低くなっていたとのことである。
102 オーイング及び X1 社に対する直接発注は原子力発電所の警備業務の委託契約が大半で

あるところ、    これらの委託契約については原子力事業本部が発注権限を有している   (別紙 2-
3-3-4 参照)
        。この点、原子力事業本部が発注権限を有している契約については、2011 年度
以前の取引データが基本的に保存されておらず、       正確な数値が算出できないことから、本調
査においては、オーイング及び X1 社については、2012 年度以降の取引を検証対象とした。

                                       111
                                                                                         (千円)
                 発注合計                    競争発注                  特命発注              その他の発注
           件数       金額          件数         金額            件数        金額          件数        金額
 2012 年度    25      2,213,032    0                  0     21       2,205,872     4          7,159
 2013 年度    58      2,510,408    0                  0     35       2,043,051    23        467,356
 2014 年度    35      2,872,940    0                  0     18       2,860,556    17         12,383
 2015 年度    39      3,109,431    0                  0     24       3,102,727    15          6,703
 2016 年度    47      3,403,707    0                  0     25       3,302,446    22        101,261
 2017 年度    54      3,851,898    0                  0     46       3,843,178     8          8,719
 2018 年度    46      3,557,333    0                  0     30       3,406,795    16        150,537



 オーイングに対する直接発注の発注金額は、     2012 年度は約 22 億円であったと
ころ、その後急増し、2017 年度には 38 億円を超えている。
 関西電力によれば、発注金額が増加した理由は、       新規制基準を受けて警備員を
増員したほか、各種安全対策工事等に必要な車両、要員、物資等の出入管理を行
うための警備員を増員したためとのことである。


エ   塩浜工業に対する直接発注


 塩浜工業に対する直接発注の発注件数及び発注金額の推移(2002~2018 年度)
は、下表のとおりである。


                                                                                         (千円)
                 発注合計                    競争発注                  特命発注              その他の発注
           件数       金額          件数          金額           件数         金額         件数        金額
2002 年度         2     31,300         2          31,300         0           0         0         0
2003 年度         3     49,030         3          49,030         0           0         0         0
2004 年度         1       3,170        1           3,170         0           0         0         0
2005 年度         2     96,700         2          96,700         0           0         0         0
2006 年度         6    153,630         3          36,010         3     117,620         0         0
2007 年度         3    137,600         1          54,500         2      83,100         0         0
2008 年度         2     38,020         2          38,020         0           0         0         0
2009 年度         9     32,305         5          29,500         4       2,805         0         0
2010 年度         1       9,740        1           9,740         0           0         0         0
2011 年度         0          0         0              0          0           0         0         0
2012 年度         1       9,480        1           9,480         0           0         0         0
2013 年度         0          0         0              0          0           0         0         0
2014 年度         0          0         0              0          0           0         0         0



                                            112
                 発注合計              競争発注                 特命発注          その他の発注
            件数     金額         件数      金額           件数      金額        件数    金額
  2015 年度     0          0     0              0      0           0     0        0
  2016 年度     0          0     0              0      0           0     0        0
  2017 年度     1      70,000    1          70,000     0           0     0        0
  2018 年度     0          0     0              0      0           0     0        0



 塩浜工業に対する直接発注の発注金額は年度ごとにばらつきがあり、2002 年
度から 2010 年度までは継続して直接発注がされていたが、2011 年度以降は 2012
年度と 2017 年度を除き、発注件数がゼロとなっている。
 関西電力によれば、元々、塩浜工業に対する発注は競争発注が主であったとこ
ろ、東日本大震災以降、新規制基準により、原子力発電所で行われる工事の規模
が大きくなった結果、塩浜工業が入札に参加できるような工事が減少したため
とのことである。


オ      X1 社103に対する直接発注


 X1 社に対する直接発注の発注件数及び発注金額の推移(2012~2018 年度)は、
下表のとおりである。


                                                                           (千円)
                 発注合計              競争発注                 特命発注          その他の発注
            件数     金額         件数     金額            件数     金額         件数    金額
  2012 年度    32     506,495    0              0      7     504,521    25    1,974
  2013 年度    25     498,111    0              0      9     495,217    16    2,893
  2014 年度    20     512,464    0              0      6     510,735    14    1,728
  2015 年度    21     522,166    0              0      7     520,380    14    1,786
  2016 年度    22     517,543    0              0      8     515,370    14    2,173
  2017 年度    22     574,690    0              0      9     572,594    13    2,095
  2018 年度    28     607,783    0              0     14     601,600    14    6,183



      X1 社に対する直接発注の発注金額は、2012 年度から 2016 年度までは概ね 5
億円前後で推移していたが、2017 年度以降は増加傾向にある。
 関西電力によれば、発注金額が増加した理由は、  美浜発電所で実施されている
工事等に必要な車両、要員、物資の出入管理を行うための警備員を増員したため

 本件取引先のうち X1 社については、前記第 1 章第 1、4(1)イ脚注のとおり、他の本件取
103

引先と同列に論じることは必ずしも適切ではないと考えられるため、匿名化処理をしてい
る。

                                      113
とのことである。


(2)   関電子会社 6 社から本件取引先に対する間接発注104の状況


 前記第 2 章第 3、4 のとおり、関西電力には 95 社の子会社があり(2019 年 3
月 31 日時点)、そのうち、本件取引先に対する発注実績105がある子会社は 18 社
であった。本調査においては、当該 18 社の中から、本件取引先に対する発注件
数及び発注金額が相対的に多いと判断した関電子会社 6 社を選定し、本件取引
先に対する発注状況等の検討分析を実施した。


ア     吉田開発に対する間接発注


 関電子会社 6 社を通じた吉田開発に対する間接発注の発注件数及び発注金額
の推移(2006~2018 年度)106は、下表のとおりである。


                                                                         (千円)
                  発注合計              競争発注               特命発注          その他の発注
            件数      金額         件数     金額         件数      金額         件数   金額
  2006 年度     5       36,035    0            0     5       36,035    0        0
  2007 年度     4      145,397    0            0     4      145,397    0        0
  2008 年度     2       14,489    0            0     2       14,489    0        0
  2009 年度     4      159,869    0            0     4      159,869    0        0
  2010 年度     5      112,185    0            0     5      112,185    0        0
  2011 年度     5      126,288    0            0     5      126,288    0        0
  2012 年度     6      135,581    0            0     6      135,581    0        0
  2013 年度     5       72,272    0            0     5       72,272    0        0
  2014 年度     8       82,251    0            0     8       82,251    0        0
  2015 年度     5      106,367    0            0     5      106,367    0        0
  2016 年度    17       39,638    0            0    17       39,638    0        0
  2017 年度    18      100,111    0            0    17       98,553    1    1,557
  2018 年度    19      207,582    0            0    18      206,185    1    1,396



104
    本報告書においては、関西電力が本件取引先等以外の登録取引先に工事等を発注し、さ
らに、当該取引先が本件取引先等に当該工事等を下請発注するケースを「間接発注」と呼称
する。
105 2011 年 1 月以降に検収された工事等に限る。
106 関電子会社 6 社の一部の会社について、システムデータの保存期間や帳票類の保管期限

等の関係から 2005 年度以前については正確な数値を算出することができないため、本報告
書の間接発注に関する発注状況の一覧表においては、2006 年度以降の発注件数及び発注金
額を記載した。

                                       114
 関電子会社 6 社を通じた吉田開発に対する間接発注の発注金額は年度ごとに
ばらつきがあるが、吉田開発への間接発注の大半は環境総合テクノス及び関電
プラントを通じたものである。
 なお、吉田開発に対する間接発注の発注件数は 2016 年度以降、急増している
が、関西電力によれば、 関電プラントから吉田開発に対し、 特定の業務を委託し、
当該契約が毎月更新されており、各月の契約を 1 件として計算しているため、
契約件数が増加したとのことである。


イ   柳田産業に対する間接発注


 関電子会社 6 社から柳田産業に対する間接発注の発注件数及び発注金額の推
移(2006~2018 年度)は、下表のとおりである。

                                                                          (千円)
                発注合計              競争発注                 特命発注          その他の発注
          件数      金額         件数     金額           件数      金額         件数    金額
2006 年度    82      465,182    0             0     70      461,320    12    3,862
2007 年度   121      453,834    0             0     97      447,687    24    6,147
2008 年度   121      425,197    0             0     91      420,211    30    4,986
2009 年度   112      510,853    0             0     83      505,626    29    5,227
2010 年度   103      402,239    0             0     72      396,909    31    5,330
2011 年度    91      456,361    1          8,200    64      443,917    26    4,244
2012 年度    99      433,370    4      115,900      74      314,087    21    3,383
2013 年度    79      314,692    1          8,900    60      303,867    18    1,925
2014 年度    66      500,655    2       43,500      55      456,230     9        925
2015 年度    79      348,847    5       37,200      62      310,198    12    1,449
2016 年度    82      528,535    4      111,500      63      415,738    15    1,297
2017 年度    64      318,796    0             0     55      317,426     9    1,370
2018 年度    70      349,636    1       13,400      52      333,857    17    2,379



 関電子会社 6 社を通じた柳田産業に対する間接発注の発注金額は、2006 年度
以降は、約 3~5 億円程度で推移している。
 関西電力によれば、柳田産業に対する間接発注は、配水管等の設置、修繕、塗
装業務等が主であるとのことである。


ウ   オーイングに対する間接発注


 関電子会社 6 社を通じたオーイングに対する間接発注の発注件数及び発注金


                                     115
額の推移(2006~2018 年度)は、下表のとおりである。
                                                                              (千円)
                 発注合計               競争発注                 特命発注             その他の発注
           件数      金額          件数     金額           件数      金額           件数    金額
 2006 年度    12       18,468     0             0      4           366      8    18,102
 2007 年度    12       18,640     0             0      4           457      8    18,183
 2008 年度    13       27,509     0             0      5           384      8    27,125
 2009 年度    12       35,185     0             0      4           900      8    34,285
 2010 年度    13       34,631     0             0      5           740      8    33,891
 2011 年度    17       35,675     0             0      9          1,365     8    34,310
 2012 年度    24       42,467     0             0     16          8,424     8    34,042
 2013 年度    28       42,056     0             0     20          9,910     8    32,145
 2014 年度    41       48,897     0             0     33       16,605       8    32,291
 2015 年度    48       43,967     0             0     40       11,396       8    32,571
 2016 年度    64       64,625     1          5,310    38       16,878      25    42,436
 2017 年度    69       86,046     0             0     35       33,498      34    52,548
 2018 年度    54       44,439     0             0     18          7,211    36    37,228



 関電子会社 6 社を通じたオーイングに対する間接発注の発注金額は、2009 年
度以降、2016 年度及び 2017 年度を除いて概ね 3000~4000 万円台で推移してい
る。
 関西電力によれば、オーイングに対する間接発注は主に警備業務の委託であ
る。


エ    塩浜工業に対する間接発注


 関電子会社 6 社を通じた塩浜工業に対する間接発注の発注件数及び発注金額
の推移(2006~2018 年度)は下表のとおりである。


                                                                              (千円)
                 発注合計               競争発注                 特命発注             その他の発注
           件数      金額          件数     金額           件数      金額           件数    金額
 2006 年度    1           795     0             0     1            795      0        0
 2007 年度    0             0     0             0     0              0      0        0
 2008 年度    0             0     0             0     0              0      0        0
 2009 年度    0             0     0             0     0              0      0        0
 2010 年度    0             0     0             0     0              0      0        0
 2011 年度    0             0     0             0     0              0      0        0
 2012 年度    5      2,799,800    0             0     5      2,799,800      0        0
 2013 年度    0             0     0             0     0              0      0        0


                                       116
                発注合計              競争発注               特命発注             その他の発注
          件数      金額         件数     金額         件数      金額           件数    金額
2014 年度     0           0     0            0    0              0      0        0
2015 年度     0           0     0            0    0              0      0        0
2016 年度     0           0     0            0    0              0      0        0
2017 年度     3      370,500    0            0    3       370,500       0        0
2018 年度     0           0     0            0    0              0      0        0



 関電子会社 6 社を通じた塩浜工業に対する発注金額は、年度ごとに相当にば
らつきがあり、全く発注が無い年度もあるが、2012 年度は約 28 億円もの発注を
行っており、同年度の発注金額のみ突出している。
 関西電力によれば、これは 2012 年度に環境総合テクノスから塩浜工業に対し
て 5 件の工事が特命発注されたことによるものである。


オ   X1 社に対する間接発注


 関電子会社 6 社を通じた X1 社に対する間接発注の発注件数及び発注金額の推
移(2006~2018 年度)は下表のとおりである。
                                    (千円)
                発注合計              競争発注               特命発注             その他の発注
          件数      金額         件数     金額         件数      金額           件数    金額
2006 年度    16      28,460     0            0    13          4,250     3    24,210
2007 年度    13      26,657     0            0    10          2,425     3    24,231
2008 年度    20      29,237     0            0    17          4,812     3    24,424
2009 年度    19      66,041     0            0    16       41,768       3    24,272
2010 年度    22      70,536     0            0    19       46,200       3    24,335
2011 年度    30      66,929     0            0    21       41,382       9    25,546
2012 年度    23      65,940     0            0    17       41,600       6    24,339
2013 年度    37      73,490     0            0    23       47,651      14    25,838
2014 年度    38      74,540     0            0    20       47,076      18    27,464
2015 年度    60      86,196     0            0    39       60,678      21    25,518
2016 年度    54      82,654     0            0    37       57,269      17    25,385
2017 年度    47      75,844     0            0    35       50,016      12    25,828
2018 年度    43      69,833     0            0    24       48,364      19    21,469



 関電子会社 6 社を通じた X1 社に対する間接発注の発注金額は、2009 年度以
降は、概ね 6000~8000 万円台で推移している。
 関西電力によれば、X1 社に対する間接発注は主に警備業務の委託である。



                                     117
2     本件取引先への発注に関する問題点107


 関西電力及び関電子会社 6 社から本件取引先に対する発注件数及び発注金額
の推移は前記 1 のとおりであるが、これらに含まれる個々の取引について、以
下のとおり、コンプライアンス上の問題点が認められた。


(1)   特命発注案件に関する問題点


ア     特命発注の合理性について


(ア)    吉田開発に対する特命発注案件


a     特命理由108について

(a)   特命理由の内容


 2002 年度から 2018 年度にかけて、関西電力から吉田開発に直接発注された工
事等のうち、特命発注された案件(以下、関西電力から特命発注109された案件を
「特命発注案件」と総称する。      )が占める割合は約 72%110である。
 吉田開発の特命発注案件における特命理由については、主として、①同種・類
似工事の実績、②地元状況に精通、③早期実施が可能、④信頼性・業務効率等、
⑤土地所有で現場熟知、⑥他に実施可能な登録取引先がない、 ⑦技術的制約によ
り他社による実施が不可能といった事由が挙げられている111。


(b)   特命理由の合理性



107
    本項において掲載されている資料は、主に本件デジタル・フォレンジック調査により顕
出されたものである。
108 特命発注に当たっては、取引先に特命発注をするための事由が必要とされており、本

報告書においては、これを「特命理由」と呼称する(別紙 2-3-3-4 参照)
                                     。
109 専門性等を有している一部の業務に関する委託契約等は、競争発注が原則とされておら

ず、厳密にいえば、  「特命」と「競争」の区別はないが、相対で契約している点においては
特命発注と相違がないことから、  本報告書においては、  特命発注として位置付けるものとす
る。
110 本報告書における特命発注案件の割合は、前記 1 の一覧表で記載した競争発注の件数と

特命発注の件数を合算した件数のうち、特命発注の件数が占める割合を意味する。
111 大半の特命発注案件において、稟議に用いられた書類には複数の特命理由が記載されて

いた。

                        118
 本件ヒアリングによれば、関西電力の吉田開発に対する特命発注案件の中に
は、一般的な建設業者であれば吉田開発でなくても施工可能な工事が含まれて
いたとのことである。そのため、上記の①同種・類似工事の実績、③早期実施が
可能、及び④信頼性・業務効率等といった理由が、関西電力が原則とする競争発
注を排する特命理由として合理的といえるかは疑問が残る。また、②地元状況に
精通という特命理由についても、特命発注案件の中には京都府内で実施される
工事等、吉田開発の地元(本社所在地)である高浜町とは無縁の地域の工事にも
そのような特命理由が付されているものがあり、特命理由の合理性を検討する
に当たって、地元状況に精通しているという事情が、真実どこまで考慮されてい
たのか不明である。
 こうした特命理由について、  本件ヒアリング対象者の中には、  地元重視の観点
から、 高浜町に所在する企業に対して優先的に工事を発注する必要があり、   その
ため吉田開発に工事を発注せざるを得なかった旨を述べる者もいる。    しかし、例
                        112
えば、2019 年度の原子力事業本部の登録取引先 のリスト中、吉田開発と同じ
「第 2 種取引」で登録種目に「土木工事」又は「建築工事」が含まれている取引
先は 30 社ある。そのうち福井県内に本社を置く取引先は 16 社であり、高浜町
内に本社を置く取引先は吉田開発を含め 2 社である。したがって、関西電力が
掲げる地元重視の観点からすれば、福井県内又は関西電力の原子力発電所が立
地する美浜町、高浜町及び大飯町内に土木工事又は建築工事を施工可能な取引
先が複数社存在する以上、吉田開発に対してのみ優先的に工事を発注する合理
的な理由を見出すことはできない。
 実際、本件ヒアリング対象者の中には、吉田開発に特命発注されている土木・
建築工事の中には特命理由に疑義があるものが存在する旨を述べる者もいた。
 以上のとおり、吉田開発に対する特命発注案件に関する特命理由の合理性に
ついては疑問があるといわざるを得ないが、さらに、本調査の結果、吉田開発に
対する特命発注案件については、コンプライアンス上の問題点も認められたた
め、具体的な資料等の内容を掲載しながら、以下、その点を指摘する。


b 原子力事業本部において森山氏に対して本件事前発注約束等がなされてい
たこと




112
  関西電力と取引を希望する企業は、関西電力に対して取引先の登録申請を行う必要があ
り、登録された取引先を登録取引先という。関西電力は、申請があった企業に対する評価等
を実施し、取引先登録の対象を選定した上で、管理項目(取引種目及びグレード区分)を設
定する。

                   119
(a)   高浜発電所長の長谷氏の電子メール


 前記第 2、2(1)のとおり、2012 年 4 月 22 日及び同 25 日に関西電力の高浜発電
所長の長谷氏が原子力事業本部長の豊松氏ら複数名に送信した電子メール及び
その添付資料によれば、森山氏は関西電力に対して吉田開発に工事を発注する
よう繰り返し要求し、     これを受けて、   関西電力は環境総合テクノス経由で吉田開
発に 4000 万円の B 工事を発注することを約束したことが認められる。
 そして、実際、関西電力から環境総合テクノスを通じて、発注総額は約束され
た 4000 万円には満たないものの、吉田開発に対し発注総額 2978 万 850