9503 関西電力 2020-06-15 19:00:00
当社現旧取締役および現旧監査役に対する提訴請求への当社の対応について [pdf]

                                         2020 年 6 月 15 日


各   位
                              会 社 名 関西電力株式会社
                              代 表 者 名 取締役社長 森本 孝
                              (コード:9503 東証第一部)
                              問 合 せ 先 経理部長 坂田 道哉
                              T E L 06-6441-8821



         当社現旧取締役および現旧監査役に対する提訴請求への当社の対応について



当社は、当社の役員等が社外の関係者から金品等を受け取っていた問題等(以下、
                                    「本件問題」という)
に関して、2020年3月14日付第三者委員会調査報告書の内容や個人株主から提訴請求(2019
年11月28日、2020年4月18日)を受けたことを踏まえて、独立性を確保した利害関係のない
立場にある社外の弁護士に調査を委嘱し、その客観的かつ厳正な調査結果を受け、当社現旧取締役およ
び現旧監査役に対する責任追及の訴えの提起の要否について検討してまいりました。

1.当社現旧取締役に対する提訴判断について
当社監査役は、独立性を確保した利害関係のない立場にある社外の弁護士からなる取締役責任調査委
員会を設置し、6月8日に調査報告書を受領いたしました。
                          (2020年3月30日、2020年6月8
日 お知らせ済み)
当社監査役は、上記調査報告書に基づいて、当社現旧取締役に対する提訴の要否について、本日、以
下のとおり決定いたしました。


①当社旧取締役に対する責任追及の訴えの提起について
当社監査役は、旧取締役5名に対し、本件問題に関する善管注意義務違反があるとして、以下のとお
り、責任追及の訴えを提起することを決定いたしました。


    (旧取締役の氏名)        (損害賠償請求額)※
    八木   誠氏          金 19億3,600万円
    岩根 茂樹氏           金 19億3,600万円
    豊松 秀己氏           金 19億3,600万円
    白井 良平氏           金 19億3,600万円
    森    詳介氏         金   1億7,000万円

※各請求額は、責任ありとされた各取締役に対して、連帯して支払いを求めるものです。
②当社現旧取締役に対する責任追及の訴えの不提起について
当社監査役は、提訴請求の対象となっている現旧取締役のうち、①で提訴することとした旧取締役5
名を除く9名の現旧取締役に対しては、以下のとおり、責任追及の訴えを提起しないことを決定いたし
ました。


(現旧取締役の氏名・理由)
森中郁雄氏
 取締役に就任した2019年6月時点では、会社として金品受取り問題を認識しており、事前発注
 約束等も行われていなかったことから、善管注意義務違反はなかった。
井上富夫氏
 社内調査結果の公表等について、公表しないと決定したものではなく、善管注意義務違反はなかっ
 た。
土井義宏氏・森本孝氏・彌園豊一氏・杉本康氏・大石富彦氏・島本恭次氏・稲田浩二氏
 役員研修会に出席した取締役が、報告された事項は既に解決済みであり、今後、然るべき対策が必
 要であると思い至らなかったとしてもやむを得なかったものと認められ、善管注意義務違反はなか
 った。


併せて、不提訴を決定した現旧取締役に関しては、会社法第847条4項に基づき当該株主の代理人
に対し通知書を送付いたします。


今後、当社は、旧取締役に対する損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起いたします(会社法の規
定により、本訴訟については代表取締役ではなく監査役が会社を代表します)
                                  。
なお、今後の訴訟の経過につきましては、必要に応じてお知らせいたします。
2.当社現旧監査役に対する責任追及の訴えの不提起について
当社取締役会は、現旧監査役7名(以下「本件監査役ら」
                         )の責任について、独立性を確保した利害
関係のない立場にある弁護士法人北浜法律事務所の弁護士に対して調査を依頼し、本件問題を本件監査
役らが取締役会へ報告しなかった経緯等について調査いたしました。


調査の結果、本件監査役らに善管注意義務違反があったとされました。一方、当社による訴え提起の
必要性判断を検証した顧問弁護士から、善管注意義務違反の存在自体について、様々な意見があり得る
との見解も徴しているところです。
その上で、善管注意義務違反がある場合でも、損害の有無およびその範囲は必ずしも明らかではな
く、また本件監査役らが賠償すべき損害額が巨額に及ぶとは考えられない一方、本件監査役らに対し、
責任追及の訴えを提起したとしても、回収が期待される利益が訴訟に要する費用を上回るとは考え難い
こと、併せて、長期にわたりそのような訴訟に経営資源を割かれるというデメリット等、当社の今後の
事業運営に対する様々な影響等も考慮した結果、当社取締役会は、本日、本件監査役らに対して責任追
及の訴えを提起しないことが当社のために最善と判断し、その旨決定いたしました。
併せて、不提訴を決定した本件監査役に関しては、会社法第847条4項に基づき当該株主の代理人
に対し通知書を送付いたします。


                                           以 上



 別紙1:本件監査役らの責任に関する調査の概要
 別紙2:本件監査役らの責任追及の訴えの必要性に関する検証の概要
 別紙3:株主からの提訴請求等への当社の対応にかかる経緯
                               別 紙 1

         本件監査役らの責任に関する調査の概要

1.調査委嘱事項
 ・本件監査役らは、当社に対し委任契約に基づく損害賠償責任を負うか。仮に
  損害賠償責任を負う場合、会社は、責任追及の訴えを提起する必要があるか。

2.調査委嘱先
  弁護士法人北浜法律事務所 渡辺 徹(わたなべ とおる)弁護士
  ※併せて渡辺弁護士から京都大学大学院法学研究科の前田雅弘教授に調査を委嘱

3.調査対象者
  現旧監査役 7名(本件監査役ら)
  常任監査役(現)八嶋康博氏、樋口幸茂氏(旧)田村康生氏
  社外監査役(現)十市勉氏、大坪文雄氏(旧)土肥孝治氏、槇村久子氏

4.調査期間
  2020年3月30日~2020年6月12日

5.調査結果の概要
  調査委嘱先は、第三者委員会報告書をはじめ、関係資料を調査するととも
 に、本件監査役らに直接ヒアリングを実施する等の調査を実施した結果、以
 下のとおり認定した。

(1)事実の経緯
  ・2018年10月、常任監査役はコンプライアンス担当の常務執行役員
   等から国税調査に端を発する本件金品受取り問題発覚後の一連の執行
   部の対応について報告を受けた。
  ・常任監査役は、本件金品受取り問題について、当社役員等が受領した金
   品はほとんどが既に返却済みであること、工事発注の見返りとの認識は
   なかったこと、発注プロセスは社内ルールに従い問題なかった等の理由
   により、
      「著しく不当な事実」に該当しないため、取締役会への報告義務
   はないと判断した。
  ・社外監査役も、取締役会へ報告するべきであるという意見を述べること
   はなかった。その結果、同年11月に開催された監査役会において、本
   件監査役ら全員の意見が一致したことを確認した。
(2)善管注意義務違反について
   本件金品受取り問題については、金品の額、受け取った者の人数等に照
  らし、取締役に「著しく不当な事実」があったと認められるところ、本件
  監査役らは取締役会への報告を怠ったため、善管注意義務違反がある。

(3)本件監査役らが賠償すべき損害について
   本件監査役らが賠償すべき損害は、報告義務違反と相当因果関係にあ
  る損害に限られる。損害の有無及び額は、監査役が取締役の違法行為を阻
  止できなかった場合ほど明確でないが、本件では、巨額に及ぶとは考えら
  れない。本件監査役らの責任調査に要した費用は本件監査役らの報告懈
  怠により支出を余儀なくされた費用と言い得る一方、第三者委員会への
  委嘱費用や信用低下による損害は賠償すべき損害とは認められない。

(4)本件監査役らに対する責任追及の訴えの提起の要否
  ・監査役に対し実際に訴えを提起するかについては取締役に広い「裁量」
   があり、会社の最善の利益にならないとの理由で訴えを提起しないこと
   もできる。
  ・本件では、①勝訴の高度の蓋然性、②債権回収の確実性は認められる可
   能性が高いが、③訴訟追行により回収が期待される利益が諸費用等を上
   回るかについて、訴訟に要する費用や、訴訟が会社の信用に及ぼす影響
   等も考慮すると、期待利益が見込まれる費用等を上回らない可能性も十
   分にあり得る。
  ・現取締役が、合理的な情報に基づいて、期待利益が費用等を上回らない
   と判断して不提訴の決定をした場合、その判断内容が著しく不合理でな
   い限り、提訴しないことが現取締役としての善管注意義務違反に該当す
   ることはない。

                               以   上
                                別 紙 2

    本件監査役らの責任追及の訴えの必要性に関する検証の概要

1.検証委嘱事項
 ・本件監査役らの責任追及の訴えを提起しないことが、取締役の善管注意
  義務違反に該当するか。

2.検証委嘱先
  弁護士法人大江橋法律事務所(当社顧問弁護士事務所)
   池田 裕彦(いけだ ひろひこ)弁護士
   後岡 伸哉(のちおか しんや)弁護士

3.検証期間
  2020年5月27日~2020年6月12日

4.検証結果の概要
  検証委嘱先は、第三者委員会報告書をはじめ、関係資料の検証を実施した
 結果、以下のとおり認定した。

(1)取締役の善管注意義務違反の有無の前提となる法的枠組みについて
  ・善管注意義務の違反がないというためには、
   第一に、取締役が不提訴の判断 決定に際して合理的な情報収集を行ったこと、
                 ・
   第二に、取締役の不提訴の判断・決定の過程・内容に不合理な点がないこと
   が必要である。

(2)取締役が不提訴の判断・決定に際して合理的な情報収集を行ったかどう
   かについて
  ・取締役は、事実調査の面でも法的検討の面でも法律専門家(弁護士・学
   者)に委嘱することで情報収集を行っており、委嘱を受けた法律専門家
   の調査結果の信用性・信頼性に疑いを生じさせるような事情は認められ
   ないので、合理的な情報収集を行っていると評価できる。
(3)取締役の不提訴の判断・決定の過程・内容に不合理な点がないかどうか
   について
  ・不提訴の判断・決定については、①提訴した場合に勝訴の高度の蓋然性
   があるか、②債権回収の確実性が認められるか、③訴訟追行により回収
   が期待される利益が訴訟に要する費用等を上回るか、の観点から、その
   過程・内容に不合理な点がないかどうかが判断される。
  ・本件では、委嘱した法律専門家の意見によれば、善管注意義務違反が認め
   られ、また損害が巨額になると考え難いことから、①勝訴の高度の蓋然
   性、②債権回収の確実性は認められる可能性が高いとされた。もっとも、
   善管注意義務違反の存在自体については、様々な意見があり得るし、善管
   注意義務違反があると判断するとしても、その違反の程度は重大でない
   といえる。
  ・③訴訟追行により回収が期待される利益が訴訟に要する費用等を上回る
   かについて、訴訟に要する費用や、訴訟が会社の信用に及ぼす影響等も考
   慮すると、期待利益が見込まれる費用等を上回らないと判断することは
   十分に合理的である。
  ・以上からすると、不提訴の判断の過程・内容に不合理な点はない。

(4)取締役の善管注意義務違反の有無
  ・以上のとおり、取締役は、不提訴の判断・決定に際して合理的な情報収集
   を行っており、また、不提訴の判断・決定の過程・内容に不合理な点も
   ないことから、本件監査役らに対する責任追及の訴えを提起しないと判
   断・決定したとしても、善管注意義務違反に該当することはない。

                                以   上
               株主からの提訴請求への当社の対応にかかる経緯                                                   別紙3


     2019年     2020年
      11/28     1/23                3/14   3/30 4/18                   6/15


         提 訴 請 求①(11/28受領)
         (監査役宛)
         現旧取締役5名に対して
株                                                   提 訴 請 求②(4/18受領)
                                                    (監査役宛)
                                                    現旧取締役12名に対して
主
                                                    提 訴 請 求③(4/18受領)
                                                    (代表取締役宛)
                                                    現旧監査役7名に対して



                                             調取                                 提 訴
 (                                           査締
会監
                   回答書の送付(1/23送付)            委役                        提
                                                   調査・検討                      (→大阪地裁)
 査                 ・第三者委員会の調査報告書を            員責                        訴
                    踏まえ最終判断                  会任 (対象取締役の責任)
社役                 ・現時点では提起せず                  設
                                                                       要
 )                                             置                       否      不提訴通知
                        (→株主)
                                                                       の      (→株主)
              第三者委員会による調査                                              判
                                                                       断
 (
 代                                                                     (
会表                                                                     ①
                                                                       ②
 取                                                 専門家による調査・検討
                                                                       ③      不提訴通知
社締                                                  (対象監査役の責任)
                                                                       )
 役                                                                            (→株主)
 )