9432 NTT 2021-06-07 15:30:00
特別調査委員会による調査報告を踏まえた今後の対応について [pdf]

 




                                                     2021 年 6 ⽉ 7 ⽇


    各     位                            会社名       ⽇本電信電話株式会社
                                       代表者⽒名     代表取締役社⻑   澤⽥   純
                                       (コード番号9432 東証第⼀部)



               特別調査委員会による調査報告を踏まえた今後の対応について



         先般の弊社経営層と省庁関係者等との会⾷(以下、
                               「本件」とします)について、2021 年 3 ⽉
    9 ⽇に公表(※)のとおり、特別調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。本⽇、その調
    査結果の報告を受けましたので公表いたします。また、調査報告書での指摘等を踏まえた弊社の
    対応についてお知らせします。
         本件に関して、お客さま、株主の⽅々をはじめ、関係する皆さまに多⼤なご迷惑とご⼼配をお
    かけしておりますことを、改めて⼼より深くお詫び申し上げます。今後⼆度とこのようなことを
    起こすことのないよう、新たな時代に相応しい経営への転換に向け、誠⼼誠意、取り組んでまい
    ります。
    (※)特別調査委員会の設置について(2021 年 3 ⽉ 9 ⽇ 弊社報道発表資料)



    1.    特別調査委員会による調査報告書(以下、「本報告書」とします)
          別添の調査報告書を本⽇受領いたしました。本報告の概要は別紙 1 のとおりです。


    2.    再発防⽌に向けた取り組み(別紙 2、3 参照)
          本報告において適⽰された原因や提⾔等を踏まえ、今後、以下の対応を実施してまいります。
          (1) 会⾷等に関するルールの策定
          (2) 役員等に対する研修の実施
          (3) 運⽤状況に関する適正な管理体制の構築


    3.    新たな経営スタイルへの変⾰(別紙 4 参照)
          今後、会⾷以外の件も含め、従来のビジネススタイルを刷新し、新たな時代に相応しい、リ
         モートワークを基本とする新たな経営スタイルへの変⾰に取り組んでまいります。


    4.    関係役員等の処分(別紙5参照)
          本⽇開催の⼈事・報酬委員会に付議のうえ、決定しております。
 




    別紙 1



    特別調査委員会による調査報告の概要について


    (1) 調査の概要
    ・調査対象期間:2016 年 4 ⽉ 1 ⽇〜2021 年 3 ⽉ 16 ⽇(第 1 回特別調査委員会開催⽇)
    ・調査範囲:NTT グループ(持株、東、⻄、コミュニケーションズ、ドコモ、データ)の
      経営陣と総務省課⻑級以上の職員及び総務省の政務三役との間の会⾷
    ・調査⽅法:関係資料(決裁資料等)の精査及びヒアリングの実施


    (2) 本件調査の結果判明した事実
    ・総務省幹部等との間で、費⽤を等分負担していなかった会⾷は 29 件であることが判明した。
      (政務三役との会⾷:5 件、国家公務員との会⾷:24 件)
       ※他に費⽤を等分負担している会⾷が 8 件


    (3) 本件における不正の有無
    ・本件調査の結果、NTT グループの経営陣と総務省幹部等との会⾷において、総務省幹部に
     よる便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があったとは認められなかった。
    ・また、NTT 持株による NTT ドコモ完全⼦会社化や NTT ドコモによる携帯電話料⾦の値下
     げなどについて、⾏政の判断が歪められたという事実も確認されなかった。
    ・しかしながら、本件会⾷のうち、総務省幹部が参加しているものは、当該総務省幹部が、国
     家公務員倫理法に基づき定められている国家公務員倫理規程に違反する結果を招いたもので
     あり、NTT グループ経営陣は、かかる法令違反を誘発・助⻑した点で、⾮難を免れることは
     できない。また、総務省政務三役が参加しているものは、国⺠の疑惑を招きかねない会⾷で
     あった。
    ・NTT グループ経営陣は、本件会⾷が国⺠や社会から厳しい批判を招いたことを真摯に反省
     し、⼆度とこのような事態を引き起こさないように、徹底した再発防⽌に努めるべきである。


    (4) 原因・背景の分析
    ・当委員会のヒアリング結果によれば、経営陣において国家公務員倫理法・倫理規程及び⼤⾂
     規範に関する知識、感度が不⾜していたことが認められる。
    ・知識、感度が不⾜していたことの背景には、国家公務員倫理法・倫理規程及び⼤⾂規範に沿
     った会⾷を実施するための具体的なルールを定めた社内規程が存在していなかったことや、
     国家公務員倫理法・倫理規程及び⼤⾂規範を遵守するための研修を実施していなかったこと
     が挙げられる。
    ・また、経営陣の発案した会⾷に関する牽制機能が⼗分に働いていなかったことも、本件の⼀
     因となったものと考えられる。


    (5) 再発防⽌策の提⾔
    ・国家公務員倫理法・倫理規程及び⼤⾂規範を遵守させるための社内規程を新たに制定、既存
 



    の社内規程の趣旨を明確化すべきである。
    ・国家公務員倫理法・倫理規程及び⼤⾂規範遵守の重要性や利害関係者との間での会⾷は完全
    な等分負担でなければ許容されていないことなどの具体的な規定内容が理解できるように、
    国家公務員倫理法・倫理規程及び⼤⾂規範に関する研修を実施するべきである。
    ・経営陣が発案した会⾷について、新たに策定するルールに基づいて適切に実施されているか
    を確認するとともに、政治家や公務員との会⾷に関する場合には、適切な機関による事前チ
    ェックを必要とすべきである。
    ・また、会⾷を実施した後も、内部監査部⾨等が、特定の政治家や国家公務員との会⾷の件数
    や集中度等を確認し、会⾷での会話内容や会⾷の趣旨⽬的を確認するなどの事後のチェック
    策を講じるべきである。
    ・本件問題に即した再発防⽌策を実施するだけに⽌まらず、今後とも引き続いて、組織として
    の問題を⾃ら究明する努⼒を不断に継続していくべきである。
 




    別紙 2



    ■ 会⾷等に関するルールの策定
     「NTT グループ企業倫理憲章」に公務員・政治家との応接に関する⾏動規範を明記すると
    ともに、持株会社において、利害関係のある政務三役、公務員等との個別の会⾷を原則実施し
    ないとすることなどを主な内容とする「社外との接遇に関する規程」を新設します。また、グ
    ループ会社においても、同様の規程をルール化します。


     (1) 企業倫理憲章への公務員・政治家との応接に関する⾏動規範の明記
      NTTグループ企業倫理憲章 第 3 項(下線部が今回の変更箇所)
      「NTT グループのすべての役員および社員は、国内外を問わず、法令、社会的規範およ
      び社内規則を遵守することはもとより、公私を問わず⾼い倫理観を持って⾏動する。
      とりわけ、情報流通企業グループの⼀員として、お客様情報をはじめとした企業内機密情
      報の漏洩は重⼤な不正⾏為であることを認識し⾏動するとともに、社会的責務の⼤きい企
      業グループの⼀員として、お客様、取引先などとの応接にあたっては過剰な供授を厳に慎
      む。また、公務員、政治家と応接する場合には、贈賄や相⼿⽅に国家公務員倫理法・国家
      公務員倫理規程違反または⼤⾂規範違反をさせる⾏為やその疑いを⽣じさせる⾏為は⾏わ
      ない。」


     (2) 「社外との接遇に関する規程」に定める主な内容
      ・利害関係のある政務三役、公務員(地⽅公務員、⾸⻑、みなし公務員も同様。以下「公務
           員等」とします)との個別の会⾷は実施しないことを原則とします。また、祝電・弔電
           を除く物品等の贈答は⾏いません。
      ・利害関係のない公務員等との会⾷等については、
                            「国務⼤⾂、副⼤⾂及び⼤⾂政務官規範」
           「国家公務員倫理法」及び「国家公務員倫理規程」等を遵守します。
      ・上記以外の国会議員、⺠間企業等との会⾷は費⽤を等分負担することを原則とし、実施回
           数等においても節度を持った対応とします。
      ・規程に違反した場合は罰則を課します。
 




    別紙3



    ■ 役員等に対する研修の実施
    ・持株会社及びグループ会社の全役員に対し、会⾷等に関するルールの研修を実施します。
     また、新任役員研修等、時機をとらえて継続的に実施します。
    ・グループ社員等に対し、新たなルールについての研修を実施します。


    ■ 運⽤状況に関する適正な管理体制の構築
    ・執⾏役員以上の会⾷等については、事前チェックとしてコンプライアンス担当役員の承認
     を要することとします。
    ・執⾏役員以上が実施した会⾷等について、監査役が四半期ごとにチェックします。
    ・ルールの運⽤に関する内部統制の強化及び内部監査部⾨による全数監査を実施します。
    ・経営層のコンダクトリスクへの対応等について、監査役による監督を強化します。
 




    別紙4



    ■ 新たな経営スタイルへの変⾰
     今後、会⾷以外の件も含め、従来のビジネススタイルを刷新し、新たな時代に相応しい、リ
    モートワークを基本とする新たな経営スタイルへの変⾰に取り組んでまいります。
     具体的な取り組みとして、以下の施策を検討・推進してまいります。


      (1) クラウドベースシステム/ゼロトラストシステムの導⼊
      (2) DXの推進、業務の⾃動化/標準化、紙利⽤の原則廃⽌
      (3) 職住近接によるワークインライフ(健康経営)の推進
      (4) 組織(本社・間接部⾨含む)の地域への分散設置
      (5) ⼥性/外国⼈/外部⼈材の活躍推進、ジョブ型⼈事制度の導⼊
      (6) 情報インフラの整備推進による分散型国⼟形成への貢献   等
 




    別紙 5

    ■ 関係役員等の処分
     (1) 報酬減額(3 名)
      本報告書においては、監督官庁の政務三役・国家公務員との会⾷⾃体は法律に抵触するも
     のではないとされておりますが、結果として、会⾷相⼿の公務員の国家公務員倫理法・倫理
     規程違反を誘引したことなどを深く反省し、会⾷ルールを整備・運⽤する⽴場にある者に対
     して報酬減額を実施します。
                                                     実施内容
           会社              ⽒名     役職(現職)
                                                (2021 年 7 ⽉報酬より)
                                 代表取締役社⻑    報酬減額
                       澤⽥   純
                                 社⻑執⾏役員     (⽉額報酬 40%減×3 ヵ⽉)
                                 代表取締役副社⻑   報酬減額
      ⽇本電信電話株式会社       島⽥   明
                                 副社⻑執⾏役員    (⽉額報酬 20%減×3 ヵ⽉)
                                 執⾏役員       報酬減額
                       北村   亮太
                                 総務部⾨⻑      (⽉額報酬 20%減×3 ヵ⽉)


     (2) NTTデータから報告を受けた報酬減額(1 名)
      当社の特別調査委員会とは独⽴してNTTデータが設置した特別調査委員会の調査結果に
     基づき、以下のとおりNTTデータにて報酬減額を実施します。
                                                     実施内容
           会社              ⽒名     役職(現職)
                                                (2021 年 7 ⽉報酬より)
      株式会社エヌ・ティ・テ                           報酬減額
                       岩本   敏男   相談役
      ィ・データ                                 (⽉額報酬 30%減×3 ヵ⽉)


     (3) 厳重注意(12 名)
      総務省幹部等との間で費⽤が等分負担されていなかった会⾷に参加していた役員等に対し
     ては、グループ会社の役員等も含め厳重注意とします。
                      会社                   ⽒名          役職(現職)
                                       鵜浦 博夫        相談役
      ⽇本電信電話株式会社
                                       篠原 弘道        取締役会⻑
                                       村尾 和俊        相談役
      ⻄⽇本電信電話株式会社
                                       坂本 英⼀        代表取締役副社⻑
      エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社          栗⼭ 浩樹        代表取締役副社⻑
                                       丸⼭ 誠治        代表取締役副社⻑
      株式会社NTTドコモ                       ⽥村 穂積        副社⻑執⾏役員
                                       藤原 道朗        取締役常務執⾏役員
      株式会社ドコモCS                        阿佐美 弘恭       代表取締役社⻑
      NTTファイナンス株式会社                    伊藤 正三        代表取締役副社⻑
      エヌ・ティ・ティ都市開発株式会社                 辻上 広志        代表取締役社⻑
      株式会社NTTネクシア                      ⾼美 浩⼀        代表取締役社⻑

                                       本件に関するお問合せ先
                                       ⽇本電信電話株式会社 IR 室
                                       Tel :03-6838-5481
日本電信電話株式会社   御中


                                  2021 年 6 月 7 日




             調 査 報 告 書




                  特 別 調 査 委 員 会



                      委 員 長   榊   原    定   征



                      委   員   飯   田        隆



                      委   員   伊   藤    鉄   男



                      委   員   井   上        宏
                                    目次


第1章    調査の概要 ··························································· 1

  第1       本件調査に至った経緯及び体制 ····································· 1

  第2       本件調査の範囲 ··················································· 1

  第3       本件調査の方法 ··················································· 2

       1   関係資料の精査 ··················································· 2
       2   ヒアリングの実施 ················································· 2

  第4       本件調査の基準日 ················································· 2

第2章    本件調査の結果判明した事実等 ········································· 3

  第1       NTT グループにおける会食に関する決裁手続等 ························ 3

  第2       会食に関する事実関係等 ··········································· 3

       1   国家公務員等との会食における法令等の定め ························· 3
       2   会食実施状況の調査 ··············································· 7
       3   NTT グループ経営陣の利害関係者の該当性 ···························· 9
       4   本件会食における不正の有無 ······································ 10
       5   NTT グループにおけるその他の会食状況等 ··························· 30
       6   小括 ···························································· 31

  第3       NTT グループにおける会食に関する社内規程等 ······················· 32

       1   NTT 持株の社内規程等 ············································· 32
       2   NTT 持株以外の NTT グループ各社の社内規程等 ······················· 32

  第4       原因・背景の分析 ················································ 35

       1   NTT 持株に関する原因・背景 ······································· 35
       2   NTT ドコモに関する原因・背景 ····································· 37
       3   NTT 東日本、NTT 西日本及び NTT コミュニケーションズに関する原因・背景
           等 ······························································ 38

  第5       再発防止策の提言 ················································ 38

       1   NTT グループにおける再発防止策の検討状況 ························· 38
       2   当委員会による再発防止策の提言 ·································· 40

  第6       処分について ···················································· 43
第1章   調査の概要


第 1 本件調査に至った経緯及び体制


 2021 年 3 月 4 日、総合週刊誌「週刊文春」において、日本電信電話株式会社(以下「NTT 持
株」という。)をはじめとする NTT グループ経営陣と総務省の職員による会食をめぐる問題
が報じられた。
 2021 年 3 月 9 日、NTT 持株は、会食に関連する事実関係の解明と原因究明等を目的とし
て、以下の 4 名を委員とする特別調査委員会(以下「当委員会」という。)を設置した。

   委員長    榊   原 定 征    NTT持株 独立社外取締役
   委 員    飯   田   隆    NTT持株 独立社外監査役
   委 員    伊   藤 鉄 男    西村あさひ法律事務所 オブカウンセル
   委 員    井   上   宏    桃尾・松尾・難波法律事務所 オフカウンセル


 当委員会の調査(以下「本件調査」という。)の目的及び調査事項は以下のとおりである。
  ①   NTT グループに対する許認可や重要な政策決定を行う監督官庁である総務省幹部
      等と NTT グループ経営陣との間における、会食に関連する事案の有無の調査
  ②   上記①で判明した事案に関する事実関係の解明
  ③   対応策の提言、その他関連する事項


 当委員会は、本件調査を実施するに当たり、西村あさひ法律事務所から木目田裕弁護士
他 9 名を、補助調査員として任命した。
 また、当委員会は、本件調査の事務局について、事務局長及び事務局長が指定した者で
構成することとし、以下の者を事務局長に任命した。
   尾 崎 英 明 NTT持株 執行役員グローバルビジネス推進室長
 そして、事務局長である尾崎英明氏は、事務局員として、以下の者を指定した。
  NTT 持株総務部門担当部長 6 名
  西村あさひ法律事務所の弁護士 10 名(補助調査員と兼務)及び事務員 14 名


第 2 本件調査の範囲


 当委員会は、関連資料・データの保存期間等を踏まえ、2016 年 4 月 1 日から 2021 年 3 月
16 日(第 1 回の当委員会の開催日)までに実施された、NTT グループ経営陣と、総務省幹部
等との間の会食を本件調査の対象とした。
 本件調査の対象とする「NTT グループ」の範囲は、NTT 持株に加え、NTT グループの売上高
の約 9 割を占める主要な各セグメントの中核企業であり、かつ、総務省を監督官庁とし、
重要な経営判断を行っている主要 5 社(東日本電信電話株式会社(以下「NTT 東日本」とい




                          1
う。)、西日本電信電話株式会社(以下「NTT 西日本」という。)、エヌ・ティ・ティ・コミュ
ニケーションズ株式会社(以下「NTT コミュニケーションズ」という。)、株式会社 NTT ドコ
モ(以下「NTT ドコモ」という。)、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下「NTT データ」と
いう。))とする。ただし、上場子会社である NTT データは、独自の特別調査委員会を設置
して調査を行っていることから、当委員会としては、NTT データの経営陣が行った会食に
関しては、NTT データの調査方法を検証することによりその適切性等を確認し、詳細につ
いては NTT データ特別調査委員会の報告書に依拠している。
    本件調査の対象とする「NTT グループ経営陣」は、会食当時、通信行政に関係する重要な
意思決定を行う各社の取締役、執行役員以上の役職者とする。また、本件調査の対象とす
る「総務省幹部等」は、会食当時、通信行政に大きな影響力を有すると考えられる総務省の
課長級以上の職員及び総務省の政務三役とした。
 なお、本報告書において、総務省の課長級以上の職員を「総務省幹部」と称し、総務省幹
                      .
部及び総務省の政務三役を総称して「総務省幹部等」と称している。
    当委員会は、上記調査範囲に含まれない会食であっても、報道等において、具体的な事
実関係が摘示された会食については、必要に応じて、個別に調査範囲に含めた。


第 3 本件調査の方法


1    関係資料の精査


    当委員会は、本件調査に必要な範囲で、会食に関する社内決裁資料、スケジュール資
料、社内規程、研修資料などの関係資料を収集し、その内容を精査した。


2    ヒアリングの実施


    当委員会は、本件の事実関係、原因・背景事情等を明らかにするため、本件調査の対象
となる会食に参加していた NTT グループ経営陣のうち、本件調査の時点で NTT グループに
所属している経営陣に対して、ヒアリングを実施した。また、当委員会は、本件調査の対
象となる各会食に NTT グループ経営陣と共に同席していた役職員のうち、少なくとも 1 名
に対して、ヒアリングを実施した。ヒアリング対象となった人数は 27 名であり、一部のヒ
アリング対象者については、複数回ヒアリングを実施した。


第 4 本件調査の基準日


    当委員会は、2021 年 3 月 9 日に設置された。本件調査の報告のための基準日(以下「基準
日」という。)は、2021 年 6 月 4 日であり、基準日までに 6 回の委員会を開催した。下記第
2 章は、基準日までに判明した事実関係等をまとめたものである。




                          2
第2章    本件調査の結果判明した事実等


第 1 NTT グループにおける会食に関する決裁手続等


    ここでは NTT 持株を例として記載しているが、他の NTT グループの会社においても、概
ね同様の内容となっている。
    NTT 持株では、会食を実施する際は、会議費等支出事務処理という社内規程に基づき、
決裁処理を行っている。具体的な決裁手続は、以下のとおりである。
    会食実施前に、実施日時、実施場所、実施目的、出席者、出席人数、支出予定額等につ
いて、判明している限りの情報を決裁資料に記載し、各部門長等の組織の長や秘書室長の
決裁を受ける。組織の長が会食を実施する場合には、自ら決裁を行うこととされている。
なお、代表取締役社長や取締役会長が会食を実施する場合には、秘書室長が決裁を行って
いる。
    会食を実施した後は、組織の長が自ら、実施結果の確認を行うこととされている。具体
的には、実施日時、実施場所、出席者、支出額等が、事前決裁の内容の範囲内で実施され
たかを確認する。もっとも、組織の長が会食に出席していない場合には、会食に出席した
課長等が上記のような実施結果の確認を行い、組織の長の承認を得ることとしている。た
だし、事前に決裁を受けた内容から、出席者、人数、実施時期及び実施場所に変更、中止
が生じた場合、又は実際の支出額が事前に決裁を受けた支出予定額を上回った場合につい
ては、改めて組織の長の承認を受けることとしている。


第 2 会食に関する事実関係等


1    国家公務員等との会食における法令等の定め


(1) 国家公務員倫理法・倫理規程


    国家公務員倫理法は、国家公務員が国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託
された公務であることにかんがみ、国家公務員の職務に係る倫理の保持に資するため必要
な措置を講ずることにより、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような
行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することを目的とするものであ
る(同法第 1 条)。




                         3
    同法第 5 条第 1 項に基づき定められた現行の国家公務員倫理規程は、国家公務員 1が、多
数の者が出席する立食パーティー等の場合を除き、利害関係者から供応接待 2を受けること
を禁じている(同規程第 3 条第 1 項第 6 号)。
    ここで、利害関係者とは、国家公務員倫理規程第 2 条第 1 項各号に定める者をいい、例
えば、国家公務員が職務として携わる許認可等をする事務について、当該許認可等を受け
て事業を行っている事業者等 3 や当該許認可等の申請をしている事業者等が、これに当た
る。そのほか、国家公務員が職務として携わる補助金等を交付する事務について、当該補
助金等の交付を受けている事業者等やその交付申請をしている事業者等、不利益処分をす
る事務について、当該不利益処分の名宛人となるべき事業者等、行政指導をする事務につ
いて、当該行政指導により現に一定の作為又は不作為を求められている事業者等も利害関
係者に当たる。もっとも、同規程は、国家公務員が利害関係者と共に飲食すること自体を
禁じてはおらず、「自己の飲食に要する費用について利害関係者の負担によらない場合」に
は、利害関係者と飲食を共にすることを許容している 4(同規程第 8 条本文)。ここでいう
「自己の飲食に要する費用について利害関係者の負担によらない場合」とは、自己の飲食に
要する費用を国家公務員が自ら負担し又は利害関係者以外の第三者が負担する場合のほ
か、自己の飲食に要した費用が不明な場合に、当該飲食全体でかかった費用の総額を参加




1
     国家公務員法第 2 条第 2 項に規定する一般職に属する国家公務員(委員、顧問若しくは参与の職にあ
     る者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で常勤を要しないもの(同法第 81 条の 5 第 1 項
     に規定する短時間勤務の官職を占める者を除く。)を除く。)をいう(国家公務員倫理規程第 1 条柱
     書、国家公務員倫理法第 2 条第 1 項)。
2
     供応接待とは、供応(酒食を提供してもてなすこと)と接待(客をもてなすこと)の両者を包括するも
     ので、供応については、単なる飲食物の提供ではなく、一定の席を設けて飲食物を提供する行為が
     これに該当し、接待については、他人をもてなすことを目的として行われる行為全般(温泉地等への
     旅行、ゴルフ等のスポーツ、映画・演劇の鑑賞への招待)がこれに該当する(国家公務員倫理審査会
     のホームページに掲載されている国家公務員倫理規程解説[PDF]11 頁。以下、同解説を「国家公務員
     倫理規程解説」という。)。
3
     「事業者等」とは、「法人(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む。)そ
     の他の団体及び事業を行う個人(当該事業の利益のためにする行為を行う場合における個人に限
     る。)」(国家公務員倫理法第 2 条第 5 項)及び「事業者等の利益のためにする行為を行う場合における
     役員、従業員、代理人その他の者」(同条第 6 項)をいう(国家公務員倫理規程第 2 条第 1 項第 1 号)。
4
     ただし、「自己の飲食に要する費用について利害関係者の負担によらないで利害関係者と共に飲食を
     する場合」であっても、自己の飲食に要する費用が 1 万円を超えるときは、「多数の者が出席する立
     食パーティーにおいて、利害関係者と共に飲食をするとき」などの例外を除き、事前に倫理監督官に
     対する届出が必要となる(国家公務員倫理規程第 8 条)。
     なお、国家公務員倫理法第 6 条第 1 項は、本省課長補佐級以上の職員に対しては、利害関係の有無
     を問わず、事業者等から 1 件 5000 円以上の供応接待等を受けた場合には、事後に各省各庁の長又は
     行政執行法人の長に対し、贈与等報告書を提出することを義務付けている。




                              4
者にて等分負担 5(完全な割り勘)とすることが含まれると解される 6。
    この点、2005 年 4 月改正以前の国家公務員倫理規程においては、利害関係者との飲食
は、原則禁止とされ、国家公務員が自己の飲食に要する費用を自ら負担する場合であって
も、夜間に行われる飲食については 7、会議その他の打合せの際の簡素な飲食を除き、倫理
監督官の許可を得ないと行えないものとされていた。これに対しては、「公務員が職務を
的確に遂行するために必要な民間等との間における情報収集や意見交換等を行うことをた
めらわせる要因の一つになっている」などと、これを問題視する指摘があった(国家公務員
倫理規程解説 22 頁)。こうした指摘等を踏まえ、「職員が萎縮することなく、民間等との間
において職務遂行のために必要な情報収集や意見交換等を行いやすくする」必要があると
して、2005 年 4 月に、国家公務員倫理規程が改正された。具体的には、改正により、「自
己の飲食に要する費用を自ら負担する場合・・・には、利害関係者と共に飲食することをで
きるようにした上で、1 万円を超える飲食については、その形態によっては、接待を受け
ているのではないかと誤解される可能性も否定できないことから、原則として 8事前に届出
をさせる」こととされた(国家公務員倫理規程解説 22 頁)。


    国家公務員倫理規程の適用対象となるのは国家公務員であり、その違反は国家公務員法
上の懲戒処分の対象となるが、一方で、NTT グループの役職員が国家公務員倫理規程の適
用を受けるものではなく、その違反の主体とされるものでもない。しかし、国家公務員倫
理規程に違反する会食が国家公務員と NTT グループの役職員との間でなされた場合、当該
NTT グループの役職員も、かかる国家公務員の法令違反を誘発・助長した点で、非難を免
れることはできない。




5
     「等分負担した」とは、費用を参加者にて完全に割り勘にしたという意味であり、国家公務員が会食
     費用を参加者の人数で割った金額と完全に同額を支払ったことをいう。
6
     例えば、国家公務員倫理審査会のホームページに掲載されている「倫理法・倫理規程セルフチェック
     シート(課長補佐級以上職員用② 解答・解説)」は「利害関係者と割り勘で飲食を行った際、利害関係
     者の方が年上だということで 1 万円を支払い、年下である自分は 8 千円を請求された。自己の飲食
     に係る費用として請求された額である 8 千円を利害関係者に支払えば、倫理規程上問題はない。」と
     の設問への回答として、「自己の費用を負担して利害関係者と共に飲食することは自由にできます
     が、きちんと割り勘になっていなかった場合など、自己費用負担額が不十分だった場合には、実際
     の金額との差額分の供応接待を受けたこととなり、倫理規程の禁止行為に該当することとなりま
     す。」と述べており、厳密に自己が飲食したものの費用を支払うのではなく、国家公務員が会食費用
     を参加者の人数で割った金額を支払う形であれば、割り勘も許容されることを前提としているもの
     と考えられる。
7
     なお、朝又は昼に行う飲食については、自己の飲食に要する費用を自ら負担する限りは、自由に行
     えるものとされていた。
8
     「多数の者が出席する立食パーティーにおいて、利害関係者と共に飲食をするとき」などには、例外
     的に届出が不要とされている(国家公務員倫理規程第 8 条各号)。




                           5
(2) 国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範


     国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範(以下「大臣規範」という。)は、政治家であって国
務大臣等の公職にある者としての清廉さを保持し、政治と行政への国民の信頼を確保する
とともに、国家公務員の政治的中立性を確保すること等を目的して定められた規範である
(同規範前文)。同規範 1(6)①は、倫理の保持に万全を期するため、「関係業者との接触に
当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や便宜供与を受けること等で
あって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない。」と定めており、文言上、国家公
務員倫理規程とは異なり、関係業者との会食において会食費用を等分負担としなくとも直
ちに規範に違反することにはならず、「国民の疑惑を招くような行為」に該当する場合に違
反することとされている。
     同規範には、違反した場合の罰則等は定められておらず、これに違反した政務三役は政
治的責任を問われるにとどまる。また、NTT グループの役職員は同規範の適用を受けるも
のではなく、その違反の主体とされるものでもない。しかし、同規範に違反する会食が政
務三役と NTT グループの役職員との間でなされた場合、当該 NTT グループの役職員も、同
規範違反を誘発・助長した点で、非難を免れることはできない。


(3) 贈収賄罪(刑法第 197 条以下)


     収賄罪の基本的な規定である刑法第 197 条第 1 項は、収賄罪について「公務員が、その職
務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5 年以下の懲役に処
する。この場合において、請託を受けたときは、7 年以下の懲役に処する。」と規定する。
また、刑法第 198 条は、贈賄罪について、「第 197 条から第 197 条の 4 までに規定する賄賂
を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3 年以下の懲役又は 250 万円以下の
罰金に処する。」と規定する。
     かかる贈収賄罪の保護法益は、公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼であ
り 9、「賄賂」とは、公務員の職務行為の対価として授受等される不正な利益をいい、接待供
応も含むとされている。また、賄賂と対価関係に立つべき公務員の職務行為とは、公務員
                                               10
がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務をいうと解されている               。公務員の
職務行為の対価として不正な利益の授受等があった場合に、刑法第 197 条の「職務に関
し」、賄賂の収受等があったとされる。典型的には、公務員が私人に職務上の便宜を図っ
たことの見返り・謝礼として、当該私人が当該公務員に利益を供与した場合や、私人が公
務員に職務上の便宜を図ることを依頼し、その見返り・謝礼として当該私人が当該公務員
に利益を供与した場合に、「職務に関し」の要件を満たし、当該私人が贈賄罪に、当該公務


9
      最大判平成 7 年 2 月 22 日刑集 49 巻 2 号 1 頁。
10
      最判昭和 28 年 10 月 27 日刑集 7 巻 10 号 1971 頁。




                                         6
員が収賄罪に該当する。
     公務員が供応接待を受けることは利益であり、かかる供応接待と当該公務員の職務行為
との対価性が認められる場合には賄賂となり得るが、かかる対価性の有無は、供応接待の
金額、頻度・回数、趣旨・経緯、及び参加者の地位等の諸般の事情を考慮し、具体的な事
                                         11
案における客観的諸状況から総合的に判断される                     。供応接待であっても、社交的な儀礼
の範囲内にとどまり、公務員の職務行為との対価性を欠く場合には、「職務に関し」の要件
を欠き、賄賂に当たらないと解されている(以上につき、大塚仁ほか編『大コンメンター
ル刑法第 10 巻〔第 193 条~第 208 条の 2〕』70 頁-79 頁(青林書院、第 3 版、2021 年)) 12。
     供応接待をする者が、公務員の職務行為について手心を加えてもらうなど、何らかの見
返りを求める場合には、公務員の歓心を買おうと、より多くの金額を費やす傾向にあり、
供応接待される者も、かかる供応接待の趣旨を認識しやすくなる。そのため、供応接待の
金額が大きくなるほど、賄賂であるとの認定がなされやすくなる。
     また、供応接待の頻度・回数についても、供応接待をする者が、公務員に対して、何ら
かの見返りを求める場合には、公務員の歓心を買おうと、便宜供与を期待する時期に向け
て頻繁に供応接待を繰り返す傾向にあり、特定の時期における頻度・回数が増すほど、供
応接待される者も、かかる供応接待の趣旨を認識しやすくなる。そのため、供応接待が、
特定の時期に頻繁に行われるほど、賄賂であるとの認定がなされやすくなる。
     供応接待の趣旨・目的に関し、人事異動の際の送別会や海外出張の際の餞別など、職務
上の便宜の供与等と関わりがなく、社会的にも通常なされ得るものは、賄賂に該当しない
と判断される。
     供応接待の参加者の地位については、参加者の地位が上がるほど、会食の単価が高くな
ることは社会通念上、通常であると考えられるため、金額が高額となっても賄賂との判断
が否定される傾向にある。例えば、東京地判昭和 33 年 9 月 29 日一審刑事裁判例集 1 巻 9
号 1560 頁は、国会議員に対し、新築祝儀名下に現金を交付した事案において、「衆議院議
員としての地位を十分考慮してもなお」と述べ、収賄したとされる者の地位が高いという
事情を踏まえて、社交的な儀礼の範囲内にとどまるかどうか、当該現金が賄賂に該当する
かどうかを判断している。


2     会食実施状況の調査


     当委員会は、事務局をして、NTT グループ各社における会食の決裁資料から、調査対象


11
      内藤謙「社交儀礼と賄賂の限界」ジュリスト 676 号 17 頁、20 頁-21 頁(1978 年)参照。
      また、大阪高判昭和 26 年 3 月 12 日高刑判決特報 23 号 48 頁、高松高判昭和 28 年 7 月 10 日高刑判決
      特報 36 号 19 頁、福岡高判昭和 33 年 10 月 10 日高刑裁判特報 5 巻 10 号 431 頁、福岡高判昭和 41 年
      6 月 7 日下級刑集 8 巻 6 号 825 頁等も参照。
12
      社交的な儀礼の範囲にとどまるか否かの基準は、社会や時代とともに変遷することに留意が必要で
      ある(松宮孝明『刑法各論講義』491 頁-492 頁(成文堂、第 5 版、2018 年))。




                                     7
となる会食を抽出させた。
     また、当委員会は、決裁資料の確認とは別に、調査対象となる NTT グループ経営陣をし
て、2016 年 4 月 1 日から 2021 年 3 月 16 日までの間の会食のうち調査対象となる会食を、
各自のイントラネット上のスケジュールや手帳等の予定表等を確認させ、申告させた。さ
らに、補助調査員においても、NTT グループ経営陣のスケジュールの一部をサンプル抽出
して現物確認を行い、また、補助調査員及び事務局においてクラブノックス麻布において
保管されていた予約・注文管理に係るデータの現物確認を行い、申告に漏れがないことを
確認した。
     以上のとおり、当委員会は、会食の決裁資料の確認と NTT グループ経営陣のスケジュー
ル等の確認という二つの方法によって、調査対象となる会食を抽出した。
     国家公務員倫理規程においては、総務省幹部が利害関係者と会食を行う場合には、上記
1(1)記載のとおり、総務省幹部が自己の飲食に要する費用を自ら負担するか、利害関係者
以外の第三者が負担しない限り、会食費用は完全割り勘、つまり等分負担としなければな
らない(同規程第 3 条第 1 項第 6 号)。本件会食においては、当日の食べ物や飲み物等は、
NTT グループ側が一括で注文し、飲食代金もまとめて支払われていたことから、総務省幹
部において、自己の飲食に要した費用が必ずしも判明せず、会食費用は等分負担としなけ
ればならなかった。また、総務省政務三役との会食については、上記 1(2)記載のとおり、
会食費用を等分負担していないからといって、直ちに大臣規範に抵触することになるわけ
ではないものの、総務省政務三役は NTT グループ各社に対する許認可等に関する権限を有
していること等からすれば、会食費用を等分負担としていない会食については、国民の疑
惑を招きかねず、会食に参加した総務省政務三役をして大臣規範に抵触したとの疑いを招
かせる可能性がある。そこで、当委員会では、調査対象となる会食のうち、総務省幹部等
との間で、費用を等分負担していなかった会食について、会食における不正の有無等を検
討することとした。
     当委員会において確認した結果、総務省幹部等との間で費用を等分負担していなかった
会食(以下「本件会食」ということがある。)は、別紙のとおり合計 29 件であり、各社ごとの
会食の件数は以下のとおりであった 13。このうち、総務省幹部との本件会食は 24 件、総務
省政務三役との本件会食は 5 件であった 14。


      NTT 持株   15 件    NTT コミュニケーションズ   0件
      NTT 東    1件      NTT ドコモ           12 件
      NTT 西    2件      NTT データ           2件



13
      なお、一つの会食に複数の会社の者が参加していることもあるため、本件会食の合計件数と、各社
      ごとの会食の件数の合計は一致しない。
14
      本文記載の会食のほか、これらの総務省政務三役を務めた国会議員について、総務省政務三役では
      なかった期間に NTT グループ経営陣との間で行われた会食もあった。




                            8
    なお、以上のほか、総務省幹部との間で費用を等分負担している会食(1 人当たりの負担
額は 1 万円以下)が 8 件あった。この 8 件のうち 4 件は、総務省技術系幹部ら約 10 名と NTT
グループ技術系幹部ら(NTT 持株代表取締役副社長等)約 10 名の合計約 20 名が参加して、お
およそ 1 年に 1 回、将来ネットワーク等に関する意見交換のために、同一の飲食店におい
て定期的に実施しているものであり、会費は毎回 1 人 8,000 円であった。残り 4 件は、2016
年 7 月 15 日に総務省幹部 b 他 2 名と矢野信二 NTT 東日本取締役経営企画部長他 3 名との間
で、総務省側の人事異動に伴って行われたもの(会費は 1 人 5,000 円)、2016 年 8 月 8 日に
総務省幹部 a 他 2 名と矢野氏他 5 名との間で、総務省側の人事異動に伴って行われたもの
(会費は 1 人 5,000 円)、2017 年 5 月 9 日、総務省幹部 a と矢野氏他 1 名との間で矢野氏の
人事異動に伴って行われたもの(会費は 1 人 6,000 円)、2020 年 2 月 6 日、総務省幹部ア他
2 名と田辺博 NTT 東日本常務取締役 NW 事業推進本部長他 3 名との間で、コンパクトシティ
構想についての意見交換のために行われたもの(会費は 1 人 7,000 円)であり、いずれも会
食に参加した総務省幹部も自己負担分を支払っていた。


3    NTT グループ経営陣の利害関係者の該当性


    上記 1(1)記載のとおり、国家公務員倫理規程は、国家公務員が、利害関係者から供応接
待を受けることを禁じている(同規程第 3 条第 1 項第 6 号)。そこで、本件会食に参加して
いた NTT グループ経営陣が、本件会食に参加していた総務省幹部にとって利害関係者に該
当するかが問題となる。
    まず、国家公務員倫理規程が定める利害関係者は、例えば以下のような者である。すな
わち、国家公務員が許認可等をする事務に職務として携わっている場合の当該許認可等を
受けて事業を行っている事業者等(国家公務員倫理規程第 2 条第 1 項第 1 号)、国家公務員
が行政指導をする事務に職務として携わっている場合の当該行政指導により一定の作為又
は不作為を求められている事業者等である(国家公務員倫理規程第 2 条第 1 項第 5 号)。
    例えば、NTT 持株、NTT 東日本及び NTT 西日本は、総務大臣から、毎事業年度の事業計画
の認可を受けているが(日本電信電話株式会社等に関する法律(以下「NTT 法」という。)第 12
条)、当該認可に関する事務を所管しているのは、総務省総合通信基盤局電気通信事業部
事業政策課である。また、NTT ドコモは、総務大臣から、電気通信事業の登録(電気通信事
業法第 9 条)、無線局の免許(電波法第 4 条第 1 項)を受けているが、前者を所管しているの
は総務省総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課であり、後者を所管しているのは総務
省総合通信基盤局電波部移動通信課である。
    以上からすれば、本件会食に参加していた NTT グループ経営陣は、本件会食に参加して




                            9
いた総務省幹部にとって、利害関係者に該当していたと思われる 15。


4     本件会食における不正の有無


(1) 別紙 No.2 乃至 8、10、12、14、16、17、21 及び 25 の会食について


     本件会食のうち、別紙 No.2 乃至 8、10、12、14、16、17、21 及び 25 の会食(以下一括し
て「会食類型①」という。)は、1 人当たりの会食費が 1 万円以下にとどまり、総務省側出席
者が会費として相当部分を支払っているものである。


ア     会食の実施目的等


     会食類型①の実施目的は、NTT グループ経営陣の供述によれば、概ね人事異動の挨拶、
業界の動向及び今後の情報通信業界の情勢等についての定期的な意見交換等であって、実
際の会食での会話も、両者の自己紹介や過去の経験談、情報通信業界の情勢に関する意見
交換等であり、個別具体的な特定の業務案件について意見交換することはなかったとのこ
とである。
     上記供述は、これらの会食に関する決裁資料の記載と矛盾するものではなく、客観的に
も、これらの会食については、例えば、総務省側、NTT グループ側の人事異動が多い毎年 6
月か 7 月の後などに、年に 1~2 回程度、実施されていたものと認められ、上記供述の信用
性に疑いを差し挟む事情は見当たらない。
     その他、当委員会のヒアリング結果や決裁資料等からも、例えば、総務省幹部から通信
行政政策に関する未公表情報を他事業者に先んじて聞き出そうとしたり、自社の競争上の
地位を有利なものにしようと画策して総務省幹部に働きかけるといった事実は、いずれの
会食においても認められない。
     以上のとおり、会食の実施目的等に照らしても、これらの会食に関して、総務省幹部に
よる便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があったとは認められない。


イ     会食費の負担状況


     上記 2 記載のとおり、国家公務員倫理規程においては、総務省幹部が利害関係者と会食
を行う場合には、会食費用は完全割り勘、つまり等分負担としなければならない。会食類
型①については、総務省側出席者も会費として等分負担額の一部(1 人当たり 5,000 円~


15
      総務省の課長以上であれば、その課等が所掌する事務全般を担当していたと考えられる。なお、本
      件会食には、課長補佐以下の総務省職員も参加していたが、課長補佐以下の職員にとって、会食に
      参加していた NTT グループ経営陣が利害関係者に該当するか否かは、各人が担当していた職務との
      関係で個別に判断する必要があることに留意する必要がある。




                              10
7,000 円)を支払っているものの、残りの金額(1 人当たり約 1,000 円~約 4,000 円)は NTT
グループが負担している。このように、総務省幹部との間で費用を等分負担していない以
上、会食類型①は、総務省幹部において国家公務員倫理規程第 3 条第 1 項第 6 号に違反す
ることになるものであって、総務省幹部とそのような会食を行った NTT グループ経営陣
も、総務省幹部の法令違反を誘発・助長した点で非難を免れることはできない。
 会食類型①について費用を等分負担としなかった理由として、NTT グループ経営陣は、
総務省幹部が国会対応等の公務のため会食に遅刻してくることが多く、その間 NTT グルー
プ側だけで飲食することになるので、その分、総務省幹部の負担額を NTT グループ側より
減らしていた(以下「傾斜配分」ということがある。)からであると説明している。また、
NTT グループ経営陣の中には、全額を NTT グループが負担することは許されないものの、
総務省幹部に一部でも支払ってもらえば、国家公務員倫理法・倫理規程上の問題はないだ
ろうと甘く考えていた者もいた。そうした者は、NTT グループ側が会社の経費で会食費を
負担するのに対し、総務省幹部側が個人で会食費を負担することから、総務省幹部の負担
額を個人でも無理なく支払える金額(例えば、1 人 5,000 円や 7,000 円など)に傾斜配分して
決めていたと説明している。
 しかし、国家公務員倫理規程においては、総務省幹部は、利害関係者と会食をする場合
には、如何なる場合であれ、自己の飲食に要する費用については、利害関係者の負担とし
てはならない旨規定している。この点、国家公務員側が遅刻したなどの事情があった際
に、各出席者が実際に飲食した金額を個別に算定できるのであれば、算定できる限りにお
いて国家公務員側の負担額を減らすことは問題ない。一方で、そのような個別算定ができ
ないのであれば、利害関係者が国家公務員の飲食費用の一部を実質的に負担する事態にな
らないように、原則どおり等分負担としなければならない。然るに、NTT グループ経営陣
による上記説明によれば、各出席者の負担額は、各人個別の飲食費用に関係なく、総務省
側出席者が遅刻したことを理由に一律に総務省側出席者が減額されているにすぎなかっ
た。このように、NTT グループ経営陣による傾斜配分の説明は、総務省幹部との会食にお
いて費用を等分負担しなかったことを正当化するものではなく、会食類型①において、総
務省幹部が国家公務員倫理規程第 3 条第 1 項第 6 号に反することに変わりはない。NTT グ
ループ経営陣も、総務省幹部の法令違反を誘発・助長した点で非難を免れることはできな
い。
 もっとも、会食類型①については、いずれも、総務省側幹部も会費として等分負担額の
一部(1 人当たり 5,000 円~7,000 円)を支払っており、NTT グループ側が総務省幹部に肩代
わりして負担した金額は、1 人当たり約 1,000 円~約 4,000 円にとどまっている。また、1
人当たりの会食費を見ても、約 6,600 円~約 9,700 円であって、1 万円以下にとどまる。
 国家公務員倫理規程第 8 条本文が、1 人当たりの会食費が 1 万円以下の利害関係者との割
り勘の会食について倫理監督官への事前届出までは求めていないように、会食類型①それ
自体は、華美とまではいえず、総務省幹部自身が等分負担額の相当部分を支払っているこ
とからすれば、総務省幹部への利益供与やその見返りとしての便宜供与の存在をうかがわ




                           11
せるものとは認められない。


ウ     結論


     以上のとおり、会食類型①について、NTT グループ経営陣は、総務省幹部の国家公務員
倫理規程第 3 条第 1 項第 6 号への違反を誘発・助長した点で、非難を免れることはできな
           16
いものの         、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があった
とまでは認められない。


(2) 別紙 No.1、9、11、13、15、18 乃至 20、22 乃至 24 及び 26 乃至 29 の会食について


     本件会食のうち、会食類型①以外の会食(別紙 No.1、9、11、13、15、18 乃至 20、22 乃
至 24 及び 26 乃至 29 の会食。以下一括して「会食類型②」という。)については、会食当時、
総務省幹部等が費用を全く負担していないもの、あるいは、総務省幹部等の負担額が 1 人
                                      17
当たり会食費に比して著しく少ない会食である                   。なお、別紙 No.23 及び No.27 の会食に
ついては、NTT データ特別調査委員会の報告書に依拠している。


ア     別紙 No.1 の会食について


                                                          18
     本会食は、2016 年 7 月 20 日、総務省幹部 a 他 3 名と、NTT ドコモ取締役        (本会食当
時)Z(既に NTT グループを退職)他 3 名との間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費
は 10,356 円のところ、総務省側の出席者は、会費として 1 人当たり 5,000 円を支払ってお
り、NTT グループが負担した総務省側出席者分の金額は、1 人当たり 5,356 円(合計 21,424
円)である。
     本会食は、NTT グループから本会食に出席した者の供述によれば、NTT ドコモ側、総務省
側の人事異動に伴って開催されたものであり、その実施目的は、人事異動に伴う挨拶や今
後の情報通信業界の情勢等に関する意見交換等であって、実際の会話内容も上記実施目的
に沿うものであったとのことである。
     上記供述は、本会食に関する決裁資料の記載と矛盾するものではなく、総務省幹部 a の
総務省内での人事異動があった時期及び Z 氏が当時の役職に就任した時期はいずれも 2016

16
      なお、会食類型①については、総務省幹部において国家公務員倫理規程に違反することになるもの
      ではあったが、1 人当たりの会食費は 1 万円以下であって、国家公務員倫理規程第 8 条において事前
      届出が義務付けられる金額を下回るものであった。また、NTT グループ側が総務省幹部に肩代わりし
      て負担した金額はいずれも 5,000 円以下であって、国家公務員の贈与等報告(国家公務員倫理法第 6
      条第 1 項)において報告が義務付けられる金額を下回るものであった。
17
      なお、別紙 No.9、11、24、28 及び 29 の会食については、2021 年 3 月 1 日以降、総務省幹部等から、
      総務省幹部等の負担額の支払を受けている。
18
      以下、役職名の記載については、いずれも、会食が行われた当時の役職を指す。




                                 12
年 6 月であり、本会食はその翌月に実施されており、客観的事実にも反しない。
 また、本会食と同じ出席者による会食は、本会食のほか、2017 年 1 月 17 日にも実施され
ているが(別紙 No.5)、これは新年会を兼ねて定期的な意見交換会として実施したとのこと
である。別紙 No.5 の会食は、1 人当たりの会食費用が 8,735 円であり、本会食も、1 人当
たりの会食費用が、1 万円をわずかに上回る(10,356 円)ものであり、いずれも、殊更に華
美な会食とまではいえない。また、いずれの会食においても、総務省側出席者は、会費と
して 1 人当たり 5,000 円を負担しており、等分負担ではないものの、相応の負担をしてい
る。以上のことからすれば、本会食や別紙 No.5 の会食が、人事異動の挨拶とそれに伴う定
期的な意見交換として実施されたという出席者の供述の信用性について、特に疑いを差し
挟む事情は見当たらない。
 なお、総務省と NTT グループにおいては、両者の人事異動等に伴い、顔合わせを兼ねて
意見交換会を実施することも少なくなく、その場合には、総務省側出席者が負担する会費
を傾斜配分にするということも多かった。傾斜配分で問題ないと考えていた点につき、国
家公務員倫理法・倫理規程に関する認識が甘く、等分負担としないことを正当化するもの
ではないことは上記(1)イ記載のとおりであるが、本会食は、1 人当たりの負担額が 1 万円
をわずかに超えるにとどまり、人事異動に伴い顔合わせを兼ねた意見交換会として実施し
た他の会食(主に上記(1)記載の会食)と比較しても、会食場所やその態様等において特段
便宜供与等をうかがわせる事情も見当たらない。
 以上からすれば、本会食に関して、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便
宜供与の依頼等があったとは認められない。


イ    別紙 No.9 の会食について


 本会食は、2018 年 3 月 29 日、政務三役 D と、村尾和俊 NTT 西日本代表取締役社長他 1 名
との間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費は 26,150 円のところ、NTT グループ
が負担した政務三役 D 分の金額は、1 人当たり 26,150 円であり、このほか、政務三役 D に
対し、手土産が渡された。
 村尾氏の供述によれば、村尾氏は、約 20 年前、NTT 持株広報部報道部門長や秘書室担当
部長等を務めていたことから、国会議員を含む様々な人と接点を持つ機会が多く、その中
で政務三役 D とも知り合い、それ以降、政務三役 D との親交を続けていたところ、政務三
役 D の出身地の NTT 西日本の支店長に新しい者が着任したので、その顔合わせと情報交換
を目的として、本会食を行うことになったとのことであり、本会食は、政務三役 D が総務
省政務三役であることが理由になって行われたものでもなく、実際に会食での会話内容
も、社会における女性の活躍、世の中の情勢等であったとのことである。
    本会食に関する決裁資料等に照らしても、上記供述の信用性に疑いを差し挟む事情は見
当たらない。
 NTT 西日本と総務省との間では、2017 年 3 月以降、「接続料の算定に関する研究会」が開




                          13
かれており、本会食当時も継続していた。当該研究会の目的は、IP 網同士の接続条件等、
電気通信事業における競争基盤となる接続を巡る諸論点について、議論、検証を行い、多
様なサービスが公正競争環境の中で円滑に提供されるよう接続料の算定方法等について検
討を行うことであった。当該研究会の検討事項であった接続料の算定方法等は、主として
技術的なものであって、この会食が行われた 2018 年当時、接続料の算定方法等が政策課題
として特に懸案とされていたわけでもなかった。
 また、政務三役 D が総務省政務三役を務めていた時期に、NTT グループ経営陣が政務三
役 D と会食を行ったのは本会食のみであり、NTT グループとの間で癒着関係のようなもの
は認められなかった。
 以上からすれば、本会食に関して、総務省政務三役による便宜供与や NTT グループから
の便宜供与の依頼等があったとは認められない。


ウ    別紙 No.11 の会食について


    本会食は、2018 年 6 月 29 日、政務三役 F と、篠原弘道 NTT 持株取締役会長他 1 名との間
で行われた会食であって、1 人当たりの会食費は 22,648 円のところ、NTT グループが負担
した政務三役 F 分の金額は、1 人当たり 22,648 円であり、このほか、政務三役 F に対し、
手土産が渡された。また、政務三役 F にはタクシーチケットも渡された。
 篠原氏の供述によれば、本会食は、NTT 持株が、CSR の一環として、学者イによる教育に
関する活動を支援していたところ、学者イと同窓の国会議員である政務三役 F を学者イに
紹介するために実施したものであり、その実施目的は、教育のあるべき姿や昨今の情報通
信技術の情勢に関する意見交換等であって、実際の会話内容も、学者イの著書や技術の動
向についてなどであったとのことである。
 この点、NTT 持株は、2014 年度から、学者イを中心として発足したプロジェクトに参画
しており、同プロジェクトは着実に成果を残していた。このように、NTT 持株が学者イと
共同でプロジェクトの研究を推進していたことに加え、本会食に関する決裁資料等に照ら
しても、上記供述の信用性に疑いを差し挟む事情は見当たらない。
 以上のほか、政務三役 F が総務省政務三役を務めていた時期に NTT グループ経営陣が政
務三役 F と会食を行ったのは本会食のみであったことにも照らせば、本会食に関して、総
務省政務三役による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があったとは認めら
れない。


エ    別紙 No.13 の会食について


    本会食は、2018 年 9 月 4 日、総務省幹部 g と、鵜浦博夫 NTT 持株相談役及び栗山浩樹 NTT
持株取締役新ビジネス推進室長との間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費は
60,480 円のところ、NTT グループが負担した総務省幹部 g 分の金額は、1 人当たり 60,480




                             14
円である。
 鵜浦氏の供述によれば、鵜浦氏は、2000 年代前半頃に総務省幹部 g と知り合って以来、
接点が多かったが、2008 年 7 月に総務省幹部 g が内閣官房等に異動してからは、接点がほ
とんどなくなっていたとのことである。そうしたところ、2018 年 7 月、総務省幹部 g が総
務省総合通信基盤局に久しぶりに戻ってきたことから、鵜浦氏は、昔からの知り合いが
戻ってきたという思いがあって、本会食を行うことを思い立ったとのことである。鵜浦氏
は、本会食に先立つ 2018 年 6 月に、NTT 持株の代表取締役社長を退任して経営の一線から
退いていたところ、総務省内の人事異動によって、10 年前後のブランクがあって通信行政
に戻ってきた総務省幹部 g に対し、その間の通信業界の動向を教えたり、鵜浦氏が NTT 持
株代表取締役社長を務めていた時代の思い出話等を話したりするつもりで、本会食を設定
したとのことである。実際の会話内容も、鵜浦氏が NTT 持株代表取締役社長時代に取り組
んできた、光や無線のブロードバンド化、グローバル事業展開等であったとのことであ
る。なお、本会食では、総務省幹部 g から支払の申出があったものの、鵜浦氏から声を掛
けて実施したものであることから、支払の申出を断り、結果として、総務省幹部 g の負担
額は 0 円となったとのことである。
 上記供述については、本会食の同席者も概ね同様のことを述べていることに加え、鵜浦
氏の退任時期や総務省幹部 g の就任時期とも合致している。
 客観的にも、鵜浦氏は、NTT 持株代表取締役社長を退任した後は、取締役ではない相談
役となり、経営の一線からは退いて、NTT グループの業務執行自体には関与していなかっ
た。また、本会食に同席した栗山氏が所属する NTT 持株新ビジネス推進室が担当している
業務は総務省の所管業務とは無関係であり、栗山氏が同席したのは、鵜浦氏が NTT 持株代
表取締役社長を務めていた 2012 年から約 2 年間、栗山氏が社長室長を務めていたためで
あったと考えられる。これらの点から考えても、本会食は、NTT 持株や NTT グループの業
務と直接の関係はなく設定されたものと認められ、鵜浦氏が、本会食において、総務省幹
部 g に対し、便宜供与の依頼等をしたとは考えられない。さらに、本件会食のうち、鵜浦
氏と総務省幹部 g との間の会食は本会食のみであり、両者がこの時期に複数回集中して会
食を実施していたといった事情もない。なお、総務省幹部 g は、本会食と同じ 2018 年 9 月
に、澤田純 NTT 持株代表取締役社長とも会食を行っているが、その会食との関係について
は、下記オ記載のとおりである。
 本会食当時、NTT 持株と総務省との間では、許認可等を含め、特段、懸案となる事項も
なかった(携帯電話料金値下げ問題との関係等に関しては後述のとおり)。
 以上からすれば、本会食に関して、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便
宜供与の依頼等があったとは認められない。
 なお、本会食においては、1 人当たりの会食費は 60,480 円と高額になっているが、その
約 3 分の 2 は、ワイン等の酒代である。この点、本会食はクラブノックス麻布において実
施されているところ、鵜浦氏は、クラブノックス麻布における会食の際は、飲み物の選択
はソムリエに任せていた。そして、ソムリエは、鵜浦氏が NTT 持株の前代表取締役社長で




                       15
あることから、高額のワイン等を提供するようにしていたため、結果として、会食費が高
額になっていたと考えられる。また、本会食が行われたクラブノックス麻布は、NTT 持株
の連結子会社が運営する店舗であることから、NTT グループ経営陣は、クラブノックス麻
布で行う会食における実質的な NTT 側の負担額は原価程度であり、メニュー上の料金ほど
高額な飲食費であるとまでは考えていなかった。以上のことからすれば、会食費が高額で
あるからといって、直ちに NTT グループからの便宜供与の依頼等をうかがわせるものでは
ない。


オ    別紙 No.15 の会食について


    本会食は、2018 年 9 月 20 日、総務省幹部 g と、澤田純 NTT 持株代表取締役社長及び北村
亮太 NTT 持株取締役経営企画部門長との間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費
は 17,431 円のところ、NTT グループが負担した総務省幹部 g 分の金額は、1 人当たり 17,431
円である。
    澤田氏の供述によれば、澤田氏は、2018 年 6 月、NTT 持株代表取締役社長に就任したこ
とから、総務省の関係者等に挨拶回りをしたところ、総務省幹部 g に挨拶を行った際、澤
田氏と総務省幹部 g は 20 年来の知己であったこともあり、将来の情報通信社会等に関する
意見交換等をしようとなり、本会食を実施するに至ったものであって、実際の会話内容も
これに沿うものであったとのことである。
    澤田氏が NTT 持株代表取締役社長に就任したのは 2018 年 6 月であり、その時期に挨拶回
りをすることは当然のことである。また、澤田氏は社長就任時の挨拶回りに伴って本会食
以外にも総務省幹部 j 及び総務省幹部 k とも会食を行っており(下記カ記載の会食)、本会
食のみが取り立てて実施されたものでもない。さらに、2016 年 4 月 1 日以降、総務省幹部
g と澤田氏との間の会食は本会食のみであることからも、本会食が澤田氏による NTT 持株
代表取締役社長就任の挨拶に伴い実施されたものであることがうかがわれる。加えて、総
務省幹部 g は、2018 年 7 月に総務省内の人事異動があり、本会食は、総務省幹部 g の就任
の挨拶という趣旨も含まれていたと思われる。以上のほか、上記供述の信用性に疑いを差
し挟む事情は見当たらない。
    本会食当時、NTT 持株と総務省との間では、許認可等を含め、特段、懸案となる事項も
なかった(携帯電話料金値下げ問題との関係等に関しては後述のとおり)。
    NTT 持株と総務省幹部 g は、上記エ記載の会食及び本会食で、1 か月の間に 2 回会食を実
施している。もっとも、NTT 持株においては、特別な事情がなければ、誰が誰と会食を
行ったかなどの情報共有は行われておらず、上記エ記載の会食及び本会食においても同様
である。まして、上記エ記載の会食に参加した鵜浦氏は、相談役となっており、経営の一
線からは退いている以上、NTT 持株の役員らと、自身が実施した会食に関する情報を共有
しなくても不自然ではない。さらに、本会食は、上記のとおり、澤田氏が代表取締役社長
に就任した挨拶の一環として設定されたものであることからしても、上記エ記載の会食及




                            16
び本会食は偶然重なったものと認められる。
 以上からすれば、本会食に関して、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便
宜供与の依頼等があったとは認められない。


カ    別紙 No.18 の会食について


    本会食は、2018 年 11 月 8 日、総務省幹部 j 及び総務省幹部 k と、澤田純 NTT 持株代表取
締役社長及び島田明 NTT 持株代表取締役副社長との間で行われた会食であって、1 人当た
りの会食費は 26,487 円のところ、NTT グループが負担した総務省側出席者分の金額は、1
人当たり 26,487 円(合計 52,974 円)である。また、総務省側出席者に、1 名分のタクシーチ
ケットが渡された。
    澤田氏の供述によれば、本会食は、上記オ記載のような社長就任時の挨拶回りをした
際、以前から面識のあった総務省幹部 j に対して、社長就任の挨拶も兼ねて、将来の情報
通信社会に関する意見交換等をしようという流れとなり、実施するに至ったものであっ
て、実際の会話内容も、情報通信業界の情勢、産業全般に関する内容から世間話まで幅広
いものであったとのことである。
    上記オ記載のとおり、澤田氏が NTT 持株代表取締役社長に就任したのは 2018 年 6 月であ
り、その時期に挨拶回りを行うのは不自然なことではない。また、澤田氏は、社長就任の
挨拶回りに伴い、本会食以外に総務省幹部 g とも会食を行っており(上記オ記載の会食)、
挨拶回りに伴って本会食が実施されたからといって不自然ではない上、他に上記供述の信
用性に疑いを差し挟む事情は見当たらない。
    本件会食のうち、総務省幹部 j 及び総務省幹部 k と、澤田氏との間の会食は本会食のみ
であり、2016 年 4 月 1 日以降、NTT グループ経営陣が、総務省幹部 j との間で行った会食
も、本会食のみであった。本会食当時、NTT 持株と総務省との間で、許認可等を含め、特
段、懸案となる事項がなかったこと等は、前述のとおりである。
    なお、本会食の前月に、総務省は、モバイル市場の競争環境に関する研究会を立ち上
げ、情報通信を取り巻く環境の変化を踏まえ、利用者利益の向上が図られるよう、モバイ
ル市場における事業者間の公正競争を更に促進し、多様なサービスが低廉な料金で利用で
きる環境を整備するための方策についての検討を始めた。同研究会には、NTT ドコモも参
加しているが、NTT 持株は、携帯電話料金等のモバイル市場に関連する内容に直接関与し
ておらず、本会食において、同研究会に関連して、総務省幹部に対する便宜供与の依頼等
が行われたとは認められない。


キ    別紙 No.19 の会食について


    本会食は、2019 年 2 月 21 日、総務省幹部 k 及び総務省幹部 h と、島田明 NTT 持株代表取
締役副社長及び北村亮太 NTT 持株取締役経営企画部門長との間で行われた会食であって、1




                             17
人当たりの会食費は 33,620 円のところ、総務省側の出席者は、会費として 1 人当たり
5,000 円を支払っており、NTT グループが負担した総務省側出席者分の金額は、1 人当たり
28,620 円(合計 57,240 円)である。
    島田氏の供述によれば、本会食は、島田氏が、上記カ記載の会食において、総務省幹部
k と面識を持ったことから、北村氏と相談の上、将来の日本社会や情報通信業界の情勢に
関する意見交換等を行うべく実施したものであって、実際の会話内容もこれに沿うもので
あったとのことである。また、北村氏の供述によれば、本会食は、NTT グループ側から実
施を提案したものであって、総務省幹部 k 及び総務省幹部 h にあまり高い金額を負担して
もらうことが憚られたことから、1 人当たり 5,000 円の会費を支払ってもらうこととし、
その旨両名に事前に伝えていたとのことである。しかしながら、本会食の開催場所である
飲食店を使用するのが初めてであり、会食費がどの程度になるか事前の予想を立てにく
かったこともあり、実際の飲食代金が事前の想定よりも高額となってしまったことから、
結果として NTT グループが負担する総務省側出席者分の金額が高くなってしまったとのこ
とである。
 2016 年 4 月 1 日以降、NTT グループ経営陣と総務省幹部 k との間で行われた会食は、本
会食及び上記カ記載の会食の 2 回のみである。本会食は 2019 年 2 月に、上記カ記載の会食
は 2018 年 11 月に実施されており、両会食は時期がやや近接しているが、本会食は島田氏
が主催し、上記カ記載の会食は澤田氏が主催しており、両会食に特段の関連性はなく、偶
然重なっただけであると認められる。本会食当時、NTT 持株と総務省との間で、特段の懸
案となる事項があったわけでもない。そのほか、上記供述の信用性に疑いを差し挟む事情
は見当たらない。
 以上からすれば、本会食に関して、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便
宜供与の依頼等があったとは認められない。


ク    別紙 No.20 の会食について


    本会食は、2019 年 6 月 19 日、総務省幹部 a と、北村亮太 NTT 持株取締役経営企画部門長
他 2 名との間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費は 14,678 円のところ、総務省
幹部 a は、会費として 5,000 円を支払っており、NTT グループが負担した総務省幹部 a 分の
金額は、1 人当たり 9,678 円である。
    北村氏らの供述によれば、本会食は、NTT グループから参加した北村氏他 2 名の全員が、
それぞれ総務省幹部 a と面識があり、昨今の情報通信業界の情勢に関する意見交換等をす
べく、実施したものであって、ほとんど時間もなく近況を話した程度であったとのことで
ある。また、総務省側の出席者の会費(1 人当たり 5,000 円)は、総務省側の参加者は遅参
することが多いという理由で、当初から安めの金額を設定したものであった。総務省幹部
a は、公務のため会食終了時刻の 30 分前に会食場所となった飲食店に到着し、大幅に遅参
したとのことである。




                            18
    上記供述は、本会食に関する決裁資料の記載と矛盾するものではなく、その他上記供述
の信用性に疑いを差し挟む事情は見当たらない。本会食当時、NTT 持株と総務省との間で
は、許認可等を含め、特段、懸案となる事項がなかったこと、及び総務省幹部 a は、許認
可等に関して、直接事業者対応する立場ではなかったこと等にも照らすと、本会食に関
し、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があったとは認め
られない。
 2016 年 4 月 1 日以降、NTT グループ経営陣と総務省幹部 a との間で行われた会食は、本
会食含め合計 9 回ある。これらの総務省幹部 a との会食の回数等から直ちに便宜供与の依
頼等がうかがわれるものでないことは、下記(5)記載のとおりである。


ケ    別紙 No.22 の会食について


    本会食は、2019 年 10 月 1 日、総務省幹部 l、総務省幹部 m 及び総務省幹部 n と、田村穂
積 NTT ドコモ取締役常務執行役員ネットワーク本部長他 2 名との間で行われた会食であっ
て、1 人当たりの会食費は 16,335 円のところ、総務省側の出席者は、会費として 1 人当た
り 5,000 円を支払っており、NTT グループが負担した総務省側出席者分の金額は、1 人当た
り 11,335 円(合計 34,005 円)である。
    田村氏らの供述によれば、本会食は、5G 技術等に関する意見交換の目的で実施したもの
であって、実際の会話内容も、ラグビーワールドカップにおける 5G プレサービスの状況
や、台風 15 号によって千葉方面の基地局が停電する事態になったこと等であったとのこと
である。また、会食の実施時期についても、世間から要らぬ誤解を受けぬよう、5G の電波
の割当が完了し、少なくとも半年以上は新たな電波割当がない時期を選んだとのことであ
る。
    5G の電波の割当は 2019 年 4 月に行われており、その後の追加割当は 2020 年 4 月に行わ
れている。また、NTT ドコモによる 5G のプレサービスは、2019 年 9 月から開始されてい
る。さらに、2019 年 9 月には、台風 15 号が日本に上陸し、NTT ドコモ等の携帯電話事業者
においては、停電により千葉県の携帯基地局が停波している。上記供述は、このような客
観的な事実に沿うものであり、本会食に関する決裁資料の記載と矛盾するものでもない。
その他上記供述の信用性に疑いを差し挟む事情は見当たらない。
    本会食は、NTT ドコモと総務省総合通信基盤局電波部との会食であるが、2016 年 4 月 1
日以降、NTT グループ経営陣と総務省総合通信基盤局電波部との間で実施された会食は本
会食のみであり、集中して会食が行われたといった事情もない。
 以上からすれば、本会食に関して、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便
宜供与の依頼等があったとは認められない。




                              19
コ    別紙 No.24 の会食について


    本会食は、2019 年 12 月 20 日、政務三役 O と、澤田純 NTT 持株代表取締役社長及び島田
明 NTT 持株代表取締役副社長他 1 名との間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費は
48,015 円のところ、政務三役 O は、会費として 10,000 円を支払っており、NTT グループが
負担した政務三役 O 分の金額は、1 人当たり 38,015 円である。なお、本会食において、政
務三役 O に対して手土産を渡している。
    澤田氏の供述によれば、澤田氏は、日頃から幅広い範囲の国会議員と意見交換のための
会食を実施しており、本会食もその一環として、政務三役 O と、将来の情報通信社会等に
関する意見交換等を行うべく実施したものであり、実際の会話内容もかかる意見交換で
あったとのことである。また、本会食において、政務三役 O は、会費として 10,000 円を支
払っているが、澤田氏は、NTT 持株の連結子会社が運営するクラブノックス麻布で会食を
実施するのであれば、連結決算ベースで見た場合には、実質的な NTT 持株側の負担額は原
価程度にとどまるので、メニューに記載された料金ほどには高額な飲食費にはならず、
10,000 円程度負担してもらえれば問題ないと考えていた旨述べている。
    実際、澤田氏は、衆議院参議院問わず、また、与野党問わず、国会議員と幅広く会食を
行っており、本会食もその一環であると認められ、殊更、便宜供与の依頼等をうかがわせ
る事情はない。そのほか、本件会食に関する決裁資料等に照らしても、上記供述の信用性
に疑いを差し挟む事情は見当たらない。
    なお、本会食は、クラブノックス麻布において実施されており、1 人当たりの会食費は
48,015 円と高額になっているが、その約 3 分の 2 はワイン等の酒代であった。鵜浦氏と同
様に、澤田氏も、クラブノックス麻布における会食の際は、飲み物の選択はソムリエに任
せており、ソムリエは、澤田氏が NTT 持株代表取締役社長であることから、高額のワイン
等を提供するようにしていたため、結果として、会食費が高額になっていたと考えられ
る。また、NTT グループ経営陣は、上記のとおり、クラブノックス麻布における会食で
は、実質的な NTT 持株側の負担額は原価程度にとどまると考えていた。以上のことからす
れば、会食費が高額であるからといって、直ちに NTT グループからの便宜供与の依頼等を
うかがわせるものではない。
 また、政務三役 O が政務三役を務めていた時期に、NTT グループ経営陣が政務三役 O と会
食を行ったのは本会食及び下記シ記載の会食の 2 回であったが、政務三役 O と NTT グルー
プとの間の癒着関係のようなものは認められなかった。さらに、本会食当時、NTT 持株と
総務省との間では、許認可等を含め、特段、懸案となる事項はなかった。
 以上からすれば、本会食に関して、総務省政務三役による便宜供与や NTT グループから
の便宜供与の依頼等があったとは認められない。




                            20
サ    別紙 No.26 の会食について


    本会食は、2020 年 6 月 4 日、総務省幹部 p 及び総務省幹部 c と、澤田純 NTT 持株代表取
締役社長及び北村亮太 NTT 持株取締役経営企画部門長との間で行われた会食であって、1 人
当たりの会食費は 48,165 円のところ、総務省側の出席者は、会費として 1 人当たり 10,000
円を支払っており、NTT グループが負担した総務省側出席者分の金額は、1 人当たり 38,165
円(合計 76,330 円)であり、このほか、総務省幹部 p 及び総務省幹部 c に対して手土産を渡
している。また、総務省側出席者に、1 名分のタクシーチケットが渡された。
    澤田氏の供述によれば、本会食は、澤田氏が、2020 年 1 月、新年の挨拶のために総務省
を訪問した際、総務省幹部 p から意見交換をしたいとの申出を受け、業務時間中はなかな
か時間が取れないこともあり、将来の情報通信社会の姿はどのようなものか等に関する意
見交換を実施すべく、設定したものであり、実際の会話内容もこれに沿うものであったと
のことである。総務省幹部 p の申出から本会食の実施まで時間が空いているのは、新型コ
ロナウイルス感染症の感染拡大による影響があり、申出からすぐに設定することができな
かったためとのことである。また、本会食において、総務省幹部 p 及び総務省幹部 c は、
会費として 1 人当たり 10,000 円を支払っているが、このような会費設定にした理由につい
て、澤田氏及び北村氏は、上記コ記載の会食について述べたのと同様に、NTT 持株の連結
子会社が運営するクラブノックス麻布で会食を実施するものであり、連結決算ベースで見
た場合には、実質的な NTT 持株側の負担額は原価にとどまる等と述べている。
    この点、澤田氏は、上記オ及びカの会食のように、NTT 持株代表取締役社長就任時に、
社長就任の挨拶も兼ねて総務省幹部と意見交換のための会食を実施している。また、澤田
氏は、国会議員等とも意見交換のための会食を実施している。このように、澤田氏は、
NTT グループの経営等に活かすべく、幅広く意見交換を行っており、本会食もその一環と
して実施されたものと認められ、特段不自然な点はなく、そのほか本会食に関する決裁資
料等に照らしても、上記供述の信用性に疑いを差し挟む事情は見当たらない。
    なお、本会食においては、1 人当たりの会食費は 48,165 円と高額になっているが、本会
食もクラブノックス麻布において実施されており、高額となっている理由は上記コ記載の
会食と同様に、ワイン等の酒代のためであった。
    2016 年 4 月 1 日以降、NTT グループ経営陣と総務省幹部 p との間で行われた会食は本会
食のみであり、また、NTT グループ経営陣と総務省幹部 c との間で行われた会食は 2 回ある
が、そのうち 1 人当たりの負担額が 1 万円を超える会食は本会食のみである。
    本会食が実施された 2020 年は、NTT 持株による NTT ドコモへの TOB や、NTT ドコモによ
る携帯電話料金の値下げ等が行われていたが、下記(3)及び(4)記載のとおり、これらの事
項に関し、総務省幹部等による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があった
とは認められない。
    以上からすれば、本会食に関して、総務省幹部による便宜供与や NTT グループからの便
宜供与の依頼等があったとは認められない。




                             21
シ    別紙 No.28 の会食について


    本会食は、2020 年 9 月 1 日、政務三役 O と、澤田純 NTT 持株代表取締役社長及び島田明
NTT 持株代表取締役副社長他 1 名との間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費は
45,870 円のところ、政務三役 O は、会費として 10,000 円を支払っており、NTT グループが
負担した政務三役 O 分の金額は、1 人当たり 35,870 円である。なお、本会食において、政
務三役 O に対して手土産を渡している。
    澤田氏の供述によれば、本会食も、上記コ記載の会食と同様、日頃から行っている国会
議員との意見交換のための会食の一環であり、政務三役 O と、将来の情報通信社会等に関
する意見交換等を行うべく、実施したものであって、実際の会話内容もこれに沿うもので
あったとのことである。また、澤田氏は、本会食における会費設定の理由についても、上
記コ記載の理由と同様である旨述べている。
    上記コ記載のとおり、澤田氏は、日頃から多くの国会議員と幅広く会食を行っており、
本会食もその一環であると認められること等に照らし、上記供述の信用性に疑いを差し挟
む事情は見当たらない。また、政務三役 O が政務三役を務めていた時期に、NTT グループ
経営陣が政務三役 O と会食を行ったのは本会食及び上記コ記載の会食の 2 回であるが、上
記コ記載のとおり、これらの会食において、何らかの便宜供与の依頼等はうかがわれな
い。さらに、本会食は、新内閣発足(2020 年 9 月 16 日)の直前に実施されており、当時は政
務三役 O の総務省政務三役からの退任も想定される状況にあったことからすれば、そのよ
うな時期に会食を行うことによって、政務三役 O に対し、何らかの便宜供与の依頼等を行
うとは考え難い。
    なお、本会食の 1 人当たりの会食費は 45,870 円と高額のところ、本会食もクラブノック
ス麻布にて実施され、高額となった理由はワイン等の酒代のためであった。
    本会食が実施された 2020 年は、NTT 持株による NTT ドコモへの TOB や、NTT ドコモによ
る携帯電話料金の値下げ等が行われていたが、下記(3)及び(4)記載のとおり、これらの事
項に関し、総務省幹部等による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があった
とは認められない。
    以上からすれば、本会食に関して、総務省政務三役による便宜供与や NTT グループから
の便宜供与の依頼等があったとは認められない。


ス    別紙 No.29 の会食について


    本会食は、2020 年 9 月 14 日、政務三役 Q と、澤田純 NTT 持株代表取締役社長他 1 名との
間で行われた会食であって、1 人当たりの会食費は 24,046 円のところ、NTT グループが負
担した政務三役 Q 分の金額は、1 人当たり 24,046 円である。なお、本会食において、政務
三役 Q に対して手土産を渡している。




                             22
     澤田氏の供述によれば、本会食も、上記コ記載の会食と同様、澤田氏が日頃から行って
いる国会議員との意見交換のための会食の一環として、将来の情報通信社会等に関する意
見交換等を行うべく、実施したものであって、実際の会話内容もこれに沿うものであった
とのことである。
     上記コ記載のとおり、澤田氏が日頃から国会議員と幅広く会食を行っていたこと、政務
三役 Q が政務三役を務めていた時期に、NTT グループ経営陣が政務三役 Q と会食を行ったの
は本会食のみであること等に照らし、上記供述の信用性に疑いを差し挟む事情は見当たら
ない。また、本会食は、新内閣発足(2020 年 9 月 16 日)の直前に実施されており、当時は政
務三役 Q の総務省政務三役からの退任も想定される状況にあった。そのような時期に会食
を行って、政務三役 Q に対し、何らかの便宜供与の依頼等を行うとは考え難い。
     本会食が実施された 2020 年は、NTT 持株による NTT ドコモへの TOB や、NTT ドコモによ
る携帯電話料金の値下げ等が行われていたが、下記(3)及び(4)記載のとおり、これらの事
項に関し、総務省幹部等による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があった
とは認められない。
     以上からすれば、本会食に関して、総務省政務三役による便宜供与や NTT グループから
の便宜供与の依頼等があったとは認められない。


セ     結論


     以上のとおり、会食類型②については、総務省幹部が参加しているものは、当該総務省
幹部が国家公務員倫理規程第 3 条第 1 項第 6 号に違反する結果を招いたものであり、NTT グ
ループ経営陣はかかる法令違反を誘発・助長した点で、非難を免れることはできない。
     また、総務省政務三役が参加している会食についても、NTT グループ各社に対する許認
可等に関する権限を有していた総務省政務三役に対し、その在任期間中に、NTT 側の費用
負担で高額な会食を行ったものであり、国民の疑惑を招きかねないものであった。
     もっとも、会食類型②について、総務省幹部等による便宜供与や NTT グループからの便
宜供与の依頼等があったとまでは認められない。


(3) NTT ドコモによる携帯電話料金の値下げについて


     総務省は、携帯電話料金に関し、公正な競争環境の整備を通じて、携帯電話料金の低廉
化を推進してきた。このような総務省の取り組みは、2000 年代初頭から行われており、具
体的には、接続料の適正化、期間拘束等の取引条件に関する適正化、端末販売の適正化、
SIM ロック解除の推進、MNP 19の推進等の観点から、公正な競争環境を整備してきた。NTT ド


19
      Mobile Number Portability の略で、電話番号はそのままで、移転先の携帯電話会社のサービスを利
      用できる制度。




                                23
コモも、上記総務省の取り組みに応じて、2011 年 4 月に SIM ロック解除を開始し、2015 年
にはインターネット電話による SIM ロック解除の受付を開始して、2019 年 2 月には中古端
末における SIM ロック解除の対応も開始した。また、2 年定期契約等においては解約時に
解約金がかかるところ、解約金がかからない期間について、2016 年 3 月に定期契約満了月
の翌月と翌々月の 2 か月間に延長し 20、2019 年 10 月には解約金を 9,500 円から 1,000 円に
値下げした。
     携帯電話料金の値下げ 21に関しては、2018 年 10 月 3 日に、総務省が、モバイル市場の競
                 22
争環境に関する研究会            を立ち上げ、同研究会は、2019 年 4 月 23 日に中間報告を、2020
年 2 月 21 日に最終報告を行っている。2019 年 5 月には、電気通信事業法が改正され、通信
料金と端末代金の分離が義務付けられた。NTT ドコモも、2018 年 10 月、2019 年度に携帯電
話料金を 2~4 割値下げすると発表し、2019 年 6 月には、通信料金と端末代金を分離したギ
ガホ、ギガライトという新しい料金プランを開始した。また、2020 年 12 月には、ahamo と
いう新しい料金プランを発表し、2021 年 3 月から開始した。
     携帯電話料金の値下げに際し、NTT グループが総務省に事前報告等を行っていた状況
は、以下のとおりである。すなわち、NTT ドコモは、2018 年 10 月 31 日、携帯電話料金を
2~4 割程度値下げすることを発表しているが、当該値下げは、NTT 持株が同年 11 月に公表
を予定していた中期経営戦略にも影響を与えることから、同年 10 月中旬頃、澤田純 NTT 持
株代表取締役社長と吉澤和弘 NTT ドコモ代表取締役社長(当時)は、総務省を訪問し、事前
に報告を行った。また、NTT ドコモは、2019 年 4 月 15 日、ギガホ、ギガライトを発表して
いるが、通信料金と端末代金の分離を先取りした料金プランであったため、2019 年 5 月改
正の電気通信事業法への適合性確認等のため、吉澤和弘 NTT ドコモ代表取締役社長(当時)
らが、上記発表前に総務省を訪問し、事前に報告を行った。さらに、NTT ドコモは、2020
年 12 月 3 日、新料金プラン ahamo を発表しているが、キャリアメールアドレスが利用でき
なくなる等の特徴があったため、丸山誠治 NTT ドコモ代表取締役副社長らが、上記発表前
に、総務省を訪問し、事前に報告を行った。このように、携帯電話料金の値下げに関する
総務省に対する事前の報告は、NTT ドコモが単独で行っていた。NTT 持株は 2018 年 10 月中
旬頃の報告には同行したが、上記のとおり、これは公表を予定していた中期経営戦略に影
響を与える可能性があったからである。NTT ドコモによる総務省に対する報告の時期は、
NTT ドコモによる値下げの公表時期の直前であって、NTT グループ経営陣は、NTT ドコモが
総務省との間で携帯電話料金値下げの具体的内容につき協議等を行ったことはないと供述


20
      従前は満了月の翌月のみであった。
21
      2018 年 8 月 21 日、当時の官房長官が携帯電話料金について「今よりも 4 割程度下げる余地がある」と
      の発言もあった。また、2019 年 6 月 30 日には、当時の官房長官が、「携帯料金は大幅な引き下げの
      余地がある」と発言しており、同年 9 月 2 日にも改めて携帯電話料金の値下げに言及している。
22
      同研究会の目的は、情報通信を取り巻く環境の変化を踏まえ、利用者利益の向上が図られるよう、
      モバイル市場における事業者間の公正競争を更に促進し、多様なサービスが低廉な料金で利用でき
      る環境を整備するための方策について検討を行うこととされている。




                                 24
している。
 NTT ドコモによる携帯電話料金の値下げは、上記のような時系列をたどっているとこ
ろ、本件会食は、上記総務省の取り組みと同時期に行われていることから、これらの会食
と携帯電話料金の値下げとの関係が問題となる。
 この点、携帯電話料金の決定には、NTT 持株は直接関与しておらず、当時上場子会社で
あった NTT ドコモの取締役会で協議、決定されていたものである。確かに、NTT 持株は NTT
ドコモの親会社であって、NTT ドコモに対して助言・あっせんする立場にあったものであ
り、大幅な料金変更等があれば NTT グループの連結決算に重大な影響が生じる可能性があ
るため、NTT ドコモから NTT 持株に対する事前連絡等の連携はあった。しかし、2020 年 12
月までは、NTT ドコモは、NTT 持株の子会社とはいえ、上場会社として独立性を有していた
ものであり、その事業の中核の一つである携帯電話料金は、NTT ドコモが決定していたも
のであり、NTT 持株の影響力は限られていた。そのため、NTT 持株の経営陣と総務省幹部等
との会食や、NTT ドコモ以外の NTT グループ会社の経営陣と総務省幹部等の会食で、雑談
や世間話であればともかく、NTT ドコモの携帯料金をどうするかといった具体的なやり取
りがなされたとは考えられず、そのようなやり取りをうかがわせる証拠も見当たらない。
 また、NTT グループ経営陣の中には、携帯電話料金の値下げについて、総務省幹部等と
の会食で話題に出すと、総務省幹部等から具体的な注文がつき、NTT ドコモらの経営の手
足を縛ることにもなりかねないことから、わざわざそのようなことはしなかった旨説明し
ている者もいる。さらに、会食の際、話の流れで話題として出たことはあったかもしれな
いが、それは事業者の方で考えていきますと述べて、話題を変えたはずである旨述べる者
もいる。そして、本件調査の結果、これらの説明が直ちに不合理であると認めるべき証拠
等は見当たらなかった。
 加えて、総務省は、競争環境の整備について、公開性の高い手法を採っていたものであ
り、NTT グループ経営陣が総務省幹部等に対する陳情によって、総務省の政策に影響力を
行使することは容易ではなかったと思われる。すなわち、総務省には、関係法令上、個社
の携帯電話料金を直接規制等する権限がないので、個社に対する行政処分や行政指導によ
るのではなく、有識者検討会やガイドライン、法整備等を通じた競争環境の整備によって
料金の適性化・低廉化を推進するという、公開性の高い行政手法が採られてきた。具体的
には、2015 年 9 月、総理大臣(当時)から総務大臣(当時)への携帯電話料金等の家計への負
担軽減に関する指示を受け、「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」
という有識者による公開性の高い会議体が設けられた。さらに、そこでの検討結果を踏ま
えたガイドラインが設定され、携帯電話事業者がガイドラインに違反した場合には、総務
大臣が処分を決定して公表し、違反の原因や改善状況について、電気通信事業法に基づく
報告(虚偽報告等には刑事制裁もあり得る。)を求めるなどして、間接的にガイドラインの
遵守を強制し、競争環境の整備を進めるという行政手法を採ってきた。また、総務省は、
それ以降も、2017 年 12 月から 2018 年 4 月にかけて開催していた「モバイル市場の公正競争
促進に関する検討会」、2018 年 10 月から 2020 年 2 月にかけて開催していた「モバイル市場




                         25
の競争環境に関する研究会」など、その時々の競争環境の現状と問題点、対応策等につい
て、有識者の会議体を設けて検討してはその答申を踏まえた対応を携帯電話事業者に求め
てきた。2019 年 5 月にも、電気通信事業法を改正して、携帯電話の端末代金と通信料金の
分離を義務付け、改正法の運用状況等も上記検討会で検証するなど、個社に対する許認可
や行政指導によるのではなく、公開性の高い手法で競争環境の整備を進めることで、携帯
料金の適性化・低廉化を図ってきた。このような手法の下では、少なくとも行政指導中心
の行政手法に比べて、NTT グループにおいて、総務省幹部等への働きかけ等を通じて、総
務省をして、個社に対する行政裁量を働かせ、個別に便宜供与を得ることは容易ではな
かったと思われる。
     以上のことからすれば、本件会食に関し、携帯電話料金の値下げに関する総務省幹部等
による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼等があったとは認められない。


(4) NTT 持株による NTT ドコモの完全子会社化について


     NTT 持株は、2020 年 4 月、NTT ドコモの完全子会社化の検討を開始し、同年 9 月には NTT
ドコモに対する TOB を実施して、同年 12 月に NTT ドコモの完全子会社化を行っている。本
件会食のうち、別紙 No.26、28 及び 29 の会食は、上記期間に実施されていることから、こ
れらの会食と NTT 持株による NTT ドコモの完全子会社化との関係が問題となる。
     この点、NTT 持株による NTT ドコモへの TOB や NTT ドコモの完全子会社化は、法令上、総
務省や総務大臣の許認可等を必要とする事項ではなかった。しかし、総務省が NTT 持株や
NTT ドコモの監督官庁であって、NTT 持株による NTT ドコモの完全子会社化に伴って NTT 法
上の事業計画の変更が必要になるかどうか、また、過去の政府の考え方に、NTT 持株によ
る NTT ドコモの出資比率の引下げが含まれていたことから、総務省が NTT ドコモの完全子
会社化につき法令上の何らかの権限を有しているかどうかを事前に確認すべく 23、NTT 持株
は、以下のとおり、2020 年 7 月末から 9 月初頭まで、数回にわたって、総務省との間で事
前説明等を行った。具体的には、NTT 持株は、2020 年 7 月 30 日から、北村亮太 NTT 持株執
行役員経営企画部門長(当時)らが、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長らに対して、
事前説明を行い、2020 年 9 月初頭、NTT 持株による NTT ドコモの完全子会社化を妨げるよ
うな NTT 法や電気通信事業法上の直接的な規律はないこと、NTT ドコモの完全子会社化に
伴う公正競争上の課題については別途検討が必要になると思われることなどの回答を得
た。なお、NTT 持株は、その後も、数回にわたって、総務省幹部 i に対し、報道発表資料
や開示資料等について説明を行っている。
     このように、NTT 持株による NTT ドコモへの TOB や NTT ドコモの完全子会社化は、そもそ


23
      郵政省報道発表「日本電信電話株式会社の移動体事業の分離について(平成 4 年 4 月 28 日)」では NTT
      持株の NTT ドコモに対する出資比率を低下させる方向性が示されており、2001 年の「規制改革推進 3
      か年計画」では「NTT ドコモに対する NTT 持株会社の出資比率の引下げを含む NTT グループ内の相互競
      争の実現」が掲げられるなどしていた。




                               26
も総務省や総務大臣の許認可等を必要とする事項ではない。むしろ、上記事項は、NTT グ
ループ内においても厳格な情報管理が実施されていたいわゆるインサイダー情報であり、
                                      24
金融商品取引法のフェア・ディスクロージャー・ルール                  もある中で、必要不可欠な範囲
を超えて、たとえ総務省幹部らに対してであっても情報共有するとは考え難い。まして
や、飲酒を伴う会食の場において、軽々に話題とすることはないと思われる。実際、NTT
持株経営陣も、ヒアリングにおいて、「ドコモの完全子会社化は非常に重いインサイダー
情報であり、また外部に漏れるとプロジェクトが立ち行かなくなりかねないものであった
ため、会食の席においても一切言及していない。」などと述べており、かかる供述の信用
性に疑いを差し挟むべき事情も見当たらない。
     以上のことからすれば、別紙 No.26、28 及び 29 の会食を含む本件会食に関し、NTT 持株
による NTT ドコモの完全子会社化に関する総務省幹部等による便宜供与や NTT グループか
らの便宜供与の依頼等があったとは認められない。
     なお、澤田氏は、2020 年 9 月 1 日に政務三役 O と、同月 14 日に政務三役 Q と会食をして
おり、NTT ドコモに対する TOB を発表する前 1 か月の間に、総務省政務三役と 2 回会食を
行っているが、上記(2)シ及びス記載のとおり、これらの会食は、澤田氏が、様々な国会
議員と行っている情報交換の一環として実施されたものであり、両者多忙な中、都合の合
う日程で実施した結果、偶然実施日が近かったとしても、不自然ではなく、そのことを
もって、便宜供与等があったとは認められない。
     また、NTT 持株による NTT ドコモの完全子会社化の狙いは、NTT ドコモが他のキャリアと
の競争で苦戦している中で、NTT コミュニケーションズ等が有するノウハウを活用し、NTT
ドコモの法人営業力を強化することや、両社が別々に行っていた研究開発を統合して NTT
グループにおける研究開発力を強化することを通じて、NTT グループのグローバルの競争
力を強化することにあった。このように、NTT 持株による NTT ドコモの完全子会社化の経
営判断は、当時の事実として、NTT ドコモによる携帯電話料金の値下げが目的であったわ
けではなかった。NTT ドコモの利益水準や経費削減の余地などを考慮すれば、完全子会社
化をしなくても携帯電話料金の値下げは可能であり、そもそも、上記のとおり、NTT ドコ
モの完全子会社化は、NTT ドコモによる携帯電話料金の値下げが目的であったわけではな
く、両者の間につながりや関係はなかった。この点、改めて両事実をめぐる時系列に照ら
してみても、携帯電話料金の値下げに関して、NTT ドコモは、2018 年 10 月、2019 年度に携
帯電話料金を 2~4 割値下げすると発表し、2019 年 6 月には、通信料金と端末代金を分離し
たギガホ、ギガライトという新しい料金プランを開始した。また、2020 年 12 月には、NTT
ドコモが、ahamo という新しい料金プランを発表し、2021 年 3 月から開始した。一方、NTT
持株による NTT ドコモの完全子会社化は、2020 年 4 月に社内の検討が始まり、同年 7 月か
ら総務省に確認を行い、同年 9 月に TOB を開始したものであって、これらは時系列として

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      上場会社等又はその役員等が、その業務に関して、取引関係者に、未公表の重要情報を伝達した場
      合には、意図的な伝達の場合には同時に、意図的な伝達でない場合は速やかに、当該情報を公表し
      なければならないというもの(金融商品取引法第 27 条の 36)。




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別個独立に進行していたものであった。以上からすれば、NTT ドコモ完全子会社と携帯電
話料金の値下げが「バーターだった」との一部の憶測には根拠がないことが認められる。


(5) その他の事情


     本件会食について、総務省幹部等による便宜供与や NTT グループからの便宜供与の依頼
等があったとは認められないことについては、以下に述べる諸事情によっても一定程度裏
付けられる。
     まず、本件会食に参加した総務省幹部等のうち、本件会食に参加した回数が最も多い者
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は、総務省幹部 a であり、参加した回数は 9 回である              。また、その次に多いのは、総務
省幹部