9318 アジア開発キャピタル 2021-03-10 14:51:00
前中期経営計画(2018年8月14日発表)の振り返り [pdf]

                                                                              2021 年 3 月 10 日
 各    位
                                                    会 社 名   アジア開発キャピタル株式会社
                                                    代表者名     代表取締役社長          アンセム ウォン
                                                                              ANSELM WONG
                                                    (コード:9318     東証第 2 部)
                                                     問合せ先    社長室長    野寄 秀和
                                                             IR 推進執行役員        山内 沙織
                                                    (TEL.03-5534-9614)


                  前中期経営計画(2018 年 8 月 14 日発表)の振り返り



     当社グループは、2020 年 3 月期まで 14 期連続して経常損失を計上しており、2021 年 3 月期第 3 四半期連結
 決算において 320 百万円の営業損失を計上し、財政状態の改善および収益力の強化が経営の最重要課題となっ
 ております。現在まで大幅な損失を計上している中、2020 年 10 月 6 日に発行済株式数の 2.3 倍に相当する大
 規模な第三者割当増資を実施しました。これにより、株式の希薄化を招き、全株主にご迷惑をおかけすること
 となりました。
     当社は、前述の増資を実施したことに加え、2020 年 9 月 29 日に経営陣の刷新を行い、同年 12 月 24 日に社
 長の交代及び執行役員の就任を行うとともに、事業の総点検を実施してまいりました。
     それを受け、新経営陣は 2018 年 8 月 14 日に策定された中期経営計画の実現が困難と判断し、株主様の信頼
 を回復すべく、計画値未達の原因について、下記のとおり振り返り、今後については実現可能なリバイバルプ
 ラン及び新たな中期 3 ヵ年経営計画を本年 3 月中旬までに発表する予定です。


                                           記


     1.2018 年 8 月 14 日発表の中期経営計画について
     当社が 2018 年 8 月 14 日に発表した中期経営計画の数値計画とその達成状況は以下の通りです。


 表)中期経営計画数値(2018 年 8 月 14 日発表)と実績の比較                                          (単位:百万円)

                       連結売上高                    連結営業利益                     連結経常利益
              計画値      実績値       達成率     計画値        実績値     達成率    計画値         実績値      達成率
2019/3(注 1)    2,403     1,630   67.8%    △418       △843     -      △419        △847       -
     2020/3    4,156     1,055   25.3%         81    △522     -          51      △802       -
     2021/3   5,000~      463      -     350~        △320     -    300~          △313       -
               5,200    (注 2)             400       (注 2)            350       (注 2)

(注 1)2019 年 3 月期計画値は通期連結業績予想数値
(注 2)2021 年 3 月期第 3 四半期の数値



                                           1
  事業別の計画値と実績値との差異実態については以下の通りです。


(1)質金融及び古物買取販売事業
  当該事業の計画値と実績値の乖離は以下の通りです。


  当初の売上計画として 2019 年 3 月期が 1,570 百万円、2020 年 3 月期が 2,358 百万円、2021 年 3 月期が
3,000 百万円を想定したのに対し、実績の売上は 2019 年 3 月期が 1,329 百万円(△241 百万円)(以下、括弧
内の数値は計画値と実績値の乖離を示します。、2020 年 3 月期が 573 百万円(△1,785 百万円)
                     )                               、2021 年 3
月期第 3 四半期が 170 百万円(△2,830 百万円)にとどまりました。


表)質金融及び古物買取販売事業売上高の計画値と実績値
                                                              (単位:百万円)

                            質金融及び古物買取販売事業売上高
                計画値                     実績値                達成率
 2019/3         1,570                   1,329               84.6%
 2020/3         2,358                    573                24.3%
 2021/3         3,000                     170(注)             5.7%
(注)2021 年 3 月期第 3 四半期の数値


  当社の現在の連結子会社である株式会社トレードセブン(以下、
                              「T7」といいます。)は、質金融及び古物買
取販売事業を行う前提で、当社から 2016 年 3 月に出資を行い、35%の株式を取得し持分法適用関連会社とい
たしました。この出資と同時に、優良な質事業を行う前提で、当社から T7 に対し7億円の貸付を実施いたし
ました。しかしながら、数日後に T7 は 7 億円全額を A 社 1 社に対して質貸付を実行しておりました(以下、
「本債権」といいます。。当時、当社の現代表取締役アンセム ウォン(以下、
           )                       「アンセム」といいます。
                                              )は、
本債権は質貸付という形態であるため返済期限がなく、かつ、貸付の対象担保は A 社の株式であり実質的には
無担保に近いという事実を認識しており、それを問題視しておりました。その後、アンセムは本債権の元金の
回収を関係者に対し再三にわたり促しましたが、上述のとおり本質貸付は返済期限がない貸付であることもあ
り、長期にわたり回収に至っていない状況が続いておりました。
  一方、本来はコア事業となるべき質業及び古物買取販売事業においては、2017 年 11 月 30 日の当社 100%子
会社化以来、既存店はこれまで収益力向上に努めてきました。また、2018 年 4 月に銀座店を開業、これを皮切
りに、当初、各事業年度に 1~2 店舗の新規出店も計画しておりました。しかしながら、昨今のフリマアプリ
「メルカリ」などの業界での台頭、2019 年の消費税増税に伴う消費低迷、 2020 年以降の新型コロナウイルス
感染症拡大による訪日外国人客数の極端な減少、インバウンド需要の消失、また店舗の一時閉店等の影響も大
きく受けたこともあり、事業規模の面でも収益性の面でも事業として成り立たせることができませんでした。
2019 年には、M&A を通じた事業基盤の拡大と営業キャッシュ・フローの獲得を目的とした、2019 年 3 月 11 日
付適時開示資料「中古ブランド品買取事業の会社分割(吸収分割)による承継に関する基本合意書締結のお知
らせ」および 2019 年 4 月 25 日付適時開示資料「中古ブランド品買取事業に係る当社子会社の会社分割(吸収
分割)による承継の中止に関するお知らせ」のとおり、店舗戦略ノウハウのある複数の事業会社の買収も検討
                                    2
いたしましたが、当社筆頭株主である新鴻基有限公司 SUN HUNG KAI & Co. LIMITED グループ(以下、「SHK グ
ループ」といいます。
         )より、上述の質貸付 7 億円の元金回収が T7 の事業の中で最優先であるとの強い指摘が
あり、当該質貸付 7 億円の元金回収がない限り、当社への出資は実施できないと回答があり、当社は必要な買
収資金の調達を実施できず、これらの買収を断念いたしました。
  こうした経緯を踏まえ、上述の T7 による7億円の本債権を返済期限のない質貸付債権から返済期限のある
債権担保貸付に変更するべく、貸金業を営む当社連結子会社の株式会社アライド・ビジネス・ファイナンス(現
アジアビジネスファイナンス株式会社)
                 (以下、
                    「ABF」といいます。)の 2020 年 10 月に実行したリファイナン
スにより、本債権を T7 から ABF へ移管し、多少なりとも元金の保全性を高めました。しかし、移管後の本債
権も返済期限が最長 10 年と設定されており、債権回収が引き続き困難である状況には変わりなく、現在に至
るまで元金の全額回収の目途が立っておりません。
  当社の現経営陣は、こうした一連の状況を鑑み、これ以上 T7 の存在意義は皆無であり、一日でも早く出血
を止めるべく、昨年末より事業売却も試みましたが実現せず、本年 3 月末をもって事業清算・撤退する運びと
なりました。
  本件撤退が 2021 年 3 月期連結業績に与える影響につきましては現在精査中であり、判明次第開示いたしま
す。


(2)日本食レストラン事業
  当該事業の計画値と実績値の乖離は以下の通りです。


  当初の売上計画として 2019 年 3 月期が 413 百万円、2020 年 3 月期が 930 百万円、2021 年 3 月期が約 1,000
百万円の売上を想定したのに対し、実際の売上は 2019 年 3 月期が 77 百万円(△336 百万円)
                                                   、2020 年 3 月期
が 135 百万円(△795 百万円)
                  、2021 年 3 月期第 3 四半期が 22 百万円(△978 百万円)にとどまりました。


表)日本食レストラン事業売上高の計画値と実績値
                                                               (単位:百万円)

                               日本食レストラン事業売上高
                計画値                  実績値                   達成率
 2019/3           413                    77                 18.6%
 2020/3           930                   135                 14.5%
 2021/3          1,000                   22(注)              2.2%
(注)2021 年 3 月期第 3 四半期の数値


  2017 年に SHK グループの要請を受けて、2017 年 12 月 8 日付適時開示資料「中国におけるジャパンフードタ
ウン事業の実施に関するお知らせ」のとおり、 グループの関連会社である大洋百貨店の福州東街口店
                     SHK                      (2018
年リニューアルオープン前は武漢店、南京店と並び中国国内トップ 3 の売上達成店)に中国初のジャパンフー
ドタウン(以下、
       「JFT」といいます。
                 )を開業しました。
  開業計画当初、福州市の地下鉄 1 号線・2 号線が開通したことによる、東街口商圏の流入人口の増加を見込
んで、大洋百貨店側が約 8,500 万元(約 15 億円)をかけて全棟をリニューアルし、当社はその中のワンフロ
                                    3
ア(1,350 平米)を引き受け、1,500 万元(約 2.5 億円)の工事費をかけて JFT 事業に充当しました。
  大洋百貨東街口店が 2018 年 4 月にリニューアルオープンし、JFT も同店内に 2018 年 9 月にグランドオープ
ンいたしましたが、東街口商圏の流入人口は同線開通前の水準まで戻りませんでした。また、グランドオープ
ン後の 2019 年に入り、地下鉄 4 号線の工事が東街口付近にて段階的に再び開始され、予定外の交通遮断(人、
車、地下鉄の流動遮断)が再度実施されたことにより、JFT を含む大洋百貨店、及び周辺の百貨店等の収益に
大きなダメージが発生し、JFT についても全店舗来訪人口が当社の見込みよりも月間で大きく割り込むことと
なりました。飲食事業は人件費等の固定費が大きいため、長期的な負担には耐えられないと判断し、2019 年 9
月には本件事業縮小を実施、同年 12 月には 2020 年 3 月末までの本件事業撤退を決定いたしました。これによ
り、実績値は 3 期にわたって当初計画値を下回っております。なお、一部店舗は歩合方式のサブリースに契約
を切り替え、毎月のロイヤルティー収入を計上し、継続しております。


(3)バイオマス燃料供給事業
 当該事業の計画値と実績値の乖離は以下の通りです。


 当初の売上計画として 2019 年 3 月期が 324 百万円、2020 年度 3 月期が 711 百万円、2021 年 3 月期が約 888
百万円の売上を想定したのに対し、実際の売上は 2019 年 3 月期が 173 百万円(△151 百万円)、2020 年 3 月期
が 346 百万円(△365 百万円)
                  、2021 年 3 月期第 3 四半期が 72 百万円(△816 百万円)にとどまりました。


表)バイオマス燃料供給事業売上高の計画値と実績値
                                                             (単位:百万円)

                             バイオマス燃料供給事業売上高
                計画値                    実績値                 達成率
 2019/3           324                   173                 53.4%
 2020/3           711                   346                 48.7%
 2021/3           888                    72(注)               8.1%
(注)2021 年 3 月期第 3 四半期の数値


  マレーシアでのバイオマス燃料供給事業は、2018 年の創業以来、競合国インドネシアの輸出関税の引き下げ
などもあり、現地マレーシアでの価格的優位性が保てず、出荷数および収益の下落を余儀なくされました。2020
年には、新型コロナウイルス感染症によりマレーシア全土における活動制限令があり、仕入れ及び出荷業務が
一時停止となったことから実績値は 3 期にわたって大幅に当初計画値を下回りました。


2.現状の課題と解決策


 前述の説明の通り、既存 3 事業は計画値の大幅未達となりましたが、事業の総点検を行った結果、現経営陣
は以下の課題を認識しております。




                                   4
①    利益追求の不徹底


    業績不振である最大の理由は、経営陣の利益追求の不徹底にありました。「どんぶり勘定経営から脱却し、
企業の存在目的・上場する意義を再考し、組織が社会やコミュニティ、個人のニーズを満たす(社会貢献)原
点に回帰」という方針及び理念を組織全体(グループ全体の役員、社員)に正確に周知徹底し、会社の業績回
復の道を模索します。
    「利益」について確たる信念を持って、現在の損失を止め、不採算事業(質屋・古物買取販売事業、EC 事
業、バイオマス燃料供給事業、日本食レストラン事業)を早急に売却・清算、またはビジネスモデルチェンジ
を推進いたします。
    低収益事業の収益改善と組織のスリム化による収益構造改革を実行し、それに適応した組織の見直し・再
設計に経営資源、資金を集中いたします。利益とキャッシュ・フロー重視の方針を徹底し、ROE12%以上を目
指します。


②    危機意識の欠如


    「健全な危機感」を組織に浸透させるために、弊害又は機能していなかった役員・社員を大幅に整理し、組
織のスリム化、健全化を目指します。
    毎週の会議にてグループ全体のキャッシュポジション、財務状況を報告・共有し、各部署、各チーム単位で
成果を出していくために、各社員の週単位の PDCA サイクル確認を行い、業務を管理する立場の人材のスキル
チェックなども実施いたします。
    直近 3 ヵ月の実績である 2020 年 10-12 月期(第 3 四半期)の連結最終損益は△2.3 億円(前年同期は△2.7
億円)と赤字幅は縮小し、売上営業利益率は前年同期の△56.8%から△16.1%に改善しました。
    以上の改革により積み上げた経験は新しい事業やプロジェクトに取り組む際、大いに役立つと信じており
ます。


③    共有ビジョンや共通の長期計画の欠如


    これまで羅針盤の役割を果たす経営計画や会社方針が欠けていたため、航路が定まらず、場当たり的な燃
料補給や船員補充を行うなど、その場その時の成り行き航海のような経営でありました。この激変する荒波と
もいえる経営環境を乗り切っていくために、新たな中期経営計画の策定が必要だと認識しております。
    明確な目標を持ち、目標を定性的(質的)と定量的(数値的)にして、初めて目標を実現させるための道筋
が見えてくると考えております。定性的側面とは、会社の目指すべき方向性、将来の会社のあるべき姿といっ
た質的なことが該当する、つまり目指すべき将来の企業像であります。定量的側面とは、これらを具体的数値
に置き換えた場合、将来の目指すべき総資産、利益、ROE 等であります。これらの到達すべき目標を組織全体
で徹底的にブレインストーミング・討論し、最終的に船長の役割を担う代表取締役社長が責任を背負う覚悟を
持って組織を牽引してまいります。
    将来のプライム市場への市場変更に向けた経営理念、経営ビジョン、経営計画の策定や、現状とのギャッ
プ(乖離)を是正するための意思決定とそのプロセスが、確実かつ迅速に当社及びグループ子会社に伝わるよ
                                  5
う、「組織内コミュニケーション」改革を実行します。また、従業員向け株式報酬制度の導入により、株主様
との視点共有を進め、中長期的な業績拡大及び企業価値の向上に貢献してまいります。


3.今後の予定
 現在、リバイバルプラン及び 2022 年 3 月期から 2024 年 3 月期まで(自 2021 年 4 月   至 2024 年 3 月)を対
象とする、新たな中期 3 ヵ年経営計画を本年 3 月中旬までに策定し、発表する予定でございますので、何卒宜
しくお願い申し上げます。
                                                                     以上




                                  6