9142 JR九州 2020-05-11 15:20:00
株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ [pdf]
2020 年5月 11 日
各 位
会社名 九州旅客鉄道株式会社
代表者名 代表取締役社長執行役員 青柳俊彦
(コード番号:9142 東証第一部、福証)
問合せ先 広報部 TEL(092)474-2541
株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ
当社は、当社の株主(以下「提案株主」といいます。)の代理人である Fir Tree Capital
Management L.P.より、2020 年6月 23 日開催予定の第 33 回定時株主総会(以下「本定時株主
総会」といいます。)における議案について株主提案(以下「本株主提案」といいます。
)を行う旨
の書面(以下「本株主提案書面」といいます。
)を受領しておりましたが、本日の当社取締役会に
おいて、本株主提案について反対することを決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいた
します。
Ⅰ.本株主提案の内容及び理由
1.議題
(1) 定款一部変更(収益、EBITDA、NOI 及び鑑定 NOI 利回りの開示)の件
(2) 取締役(監査等委員である取締役を除く)1名選任の件
(3) 取締役(監査等委員である取締役を除く)1名選任の件
(4) 取締役(監査等委員である取締役を除く)1名選任の件
2.議案の要領及び提案の理由
別紙2に記載のとおりです。なお、本株主提案書面の該当記載を原文のまま掲載したも
のです。
(注)以下、上記1.(1)の議題に係る株主提案を「定款変更株主提案」と、上記1.(2)
の議題に係る株主提案を「取締役選任株主提案①」 1.
と、 (3)の議題に係る株主提案を「取
締役選任株主提案②」と、1.(4)の議題に係る株主提案を「取締役選任株主提案③」と
いいます。
Ⅱ. 本株主提案に対する当社取締役会の意見
1.定款変更株主提案について
(1) 定款変更株主提案の概要
定款変更株主提案は、現行の定款に以下の条文を新設することを提案するものです。
「第 41 条 当会社は、1年に1回以上、当会社のコーポレート・ガバナンスに関する
報告書の提出日の前 1 か月以内に、当会社が保有する一切の居住用及び商業用不動産に
係る収益、EBITDA、NOI(Net Operating Income)及び鑑定 NOI 利回りを開示するも
のとする。当会社が、その成長戦略の追求に関連して借入れまたは株式発行による資金
調達を行おうとする場合も同様とする。これらの開示に際し、当会社は、成長戦略に関
する資本支出の全てについて詳述した一覧を提供する。
」
1
(2) 当社取締役会の意見
取締役会としては、定款変更株主提案に反対いたします。
(3) 反対の理由
当社の取締役会は、株主・投資家の皆様に対する情報開示の重要性を深く理解してお
り、株主・投資家の皆様からのご意見、そして不動産事業の外部環境や事業の状況も踏
まえながら、開示の更なる充実を常に検討しております。最近では、2019 年3月に公表
した「JR 九州グループ中期経営計画 2019-2021」に合わせて、当社グループの成長戦略
でもある不動産事業の財務指標の明確化を目的としてセグメント区分の見直しを行い、
「不動産・ホテルセグメント」に組み替えました。また、①当該セグメントに内在する
事業の収益構造が異なることから、当該セグメントを不動産賃貸業、不動産販売業、ホ
テル事業の三つのサブセグメントに分け、決算及び業績予想を公表することで、事業の
特性に合わせた開示の拡充、②不動産事業における成長投資について当社グループの成
長戦略に合わせて三つのカテゴリーに分けた上で期待利回りの考え方を説明、③当社グ
ループの駅ビル開発を中心とするまちづくりに関して実績を踏まえた公表資料を作成、
④ホテル事業の稼働率や ADR(客室単価)
、賃貸マンションの入居率といった、サブセ
グメントの特性に合わせた公表をするなど、当社は 2016 年 10 月に上場して以来、株主・
投資家の皆様との対話を進めながら、開示拡充の歩みを止めずにまいりました。
一方、定款変更株主提案が求めている開示は、当社グループの不動産事業を REIT(不
動産投資信託)のような一つの完結した収益事業体として看做すものであります。しか
し、これは当社グループにおいて、不動産事業において大きな比重を占める駅ビル運営
等が鉄道事業と一体となって運営されている事実を踏まえておりません。定款変更株主
提案が求めている個別不動産ごとの財務数値や鑑定 NOI(Net Operating Income)利回
りは、鉄道事業等とのシナジーも生み出しながら事業運営を行っている当社グループの
不動産事業の実態を表す適切な指標ではなく、当社グループの不動産事業についての客
観的かつ合理的な形での開示につながるものではないと考えております。前述のとおり、
当社としてはすでに、不動産・ホテル事業を一つのセグメントとした上で、不動産賃貸
業、不動産販売業、ホテル事業に分けて各種財務数値の開示を行っているほか、関連す
る営業指標の開示も行っており、株主・投資家の皆様におけるご理解の助けとなるよう
努力しております。
現在、当社グループの事業は新型コロナウイルスの感染拡大によって深刻な影響を受
けており、当社の取締役会は現在の厳しい事業環境を乗り越えることに注力すると同時
に、当社グループの事業の状況についても適時適切な開示を心掛けております。中長期
的にも、バランスシートに対する考え方を含む財務戦略については、株主・投資家の皆
様の関心が高い分野であると認識しており、当社としても昨年6月に取締役の一員でも
ある最高財務責任者(CFO)を明確化した上で、取締役会において議論を続けながら開
示の強化に取り組んでいるところです。引き続き、株主・投資家の皆様からのご意見も
踏まえながら、開示の質向上に取り組んでいきたいと考えております。
そもそも、定款とは株式会社の組織と活動に関する根本規則です。前述のとおり、定
款変更株主提案は、あたかも当社の事業を REIT と看做すかのような定款の変更を求め
るものですが、当社グループは、鉄道事業をはじめとした運輸サービス事業に加え、不
動産・ホテル事業、流通・外食事業、建設事業などを手掛け、九州地域を中心とした持
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続可能な事業運営を使命としております。このような当社グループの使命に照らして、
定款変更株主提案が求める変更の内容は、当社の根本規則として定めるには不適切であ
ると考えております。また、一般論としても、開示に関する詳細な事項を定款に記載す
ることは、定款の趣旨に反すると同時に、定款の変更には株主総会における特別決議と
いう厳格な手続きが必要となるなど、今後の当社グループの事業運営の柔軟性を損なう
恐れのある行為であると考えております。
以上から、当社の取締役会としては、定款変更株主提案に反対いたします。
2.取締役選任株主提案①、取締役選任株主提案②及び取締役選任株主提案③(以下三つの提案
をまとめて「取締役選任株主提案」といいます。
)について
(1) 取締役選任株主提案の概要
取締役選任株主提案は、以下の取締役候補者3名を取締役(監査等委員である取締役
を除く)として選任することを提案するものです。
氏 名
取締役選任株主提案① 竹井 史代 氏
取締役選任株主提案② 元吉 大蔵 氏
取締役選任株主提案③ 長尾 佳子 氏
(2) 当社取締役会の意見
取締役会としては、取締役選任株主提案のいずれにも反対いたします。
(3) 反対の理由
当社が 2019 年3月 19 日に公表いたしました「JR 九州グループ中期経営計画 2019-
2021」を作成するにあたり、当社の取締役会においては、主力の鉄道事業と合わせて、
戦略的まちづくりを行う不動産事業における収益力強化がテーマであり、かつ戦略的な
事業ポートフォリオを形成するための適切な経営資源配分の実現が重要であるという認
識に至っております。当社の取締役会は、かかる認識に基づき、昨年の定時株主総会に
おいては不動産事業、財務及び IR の各分野に関して豊富な経験と高い見識を有する 2 名
を新たに独立社外取締役の候補者として選任することを提案し、ご承認をいただきまし
た。
その上で、当社の取締役会においては、株主利益の観点も重視しながら財務戦略や事
業戦略の見直しを行っております。特に株主・投資家の皆様からのご指摘の多かった資
本過多のバランスシート改善については、取締役の一員でもある最高財務責任者(CFO)
を明確化した上で、取締役会において最適資本構成の実現に向けた検討を行った結果と
して、昨年の定時株主総会後の 2019 年 11 月5日には株主還元方針の変更を発表したほ
か、自己株式の取得(100 億円)も決定しております。また、事業ポートフォリオの見直
しの結果として、3件の事業売却も行っております。
2020 年3月期の期末配当金についても、事業環境が急速に悪化している局面ではあり
ますが、株主の皆様に対するお約束を可能な限り守るという観点から、期初予想と同じ
1株あたり 46.5 円(中間配当金 46.5 円との合計金額 93 円)とさせて頂くことにいたし
ました。
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現在の取締役会の構成は、監査等委員ではない取締役 11 名のうち5名、監査等委員で
ある取締役4名のうち3名が独立社外取締役であり、取締役会の過半数を独立社外取締
役とすることで経営の監督の実効性を確保しております。また、昨年の定時株主総会で
選任された不動産事業、財務及び IR の各分野に知見のある独立社外取締役が有する多
様な経験や専門性に基づき、より一層、取締役会での議論が深められております。加え
て、独立社外取締役を議長とし、8名の独立社外取締役と1名の社内取締役から構成さ
れる、独立性の極めて高い指名・報酬諮問委員会を設置しております。さらに、ガバナ
ンス向上の一環として、アナリスト、機関投資家等と独立社外取締役との意見交換会を
実施するなど、取締役会の透明性向上にも取り組んでおります。このような課題認識と
取り組みは、毎年実施している取締役会評価における検証、議論に基づくものであり、
2019 年度においては、第三者機関を利用した実効性評価において成果を確認するととも
に、更なる実効性向上に向けて取締役会で議論をしております。
こうしたなか、当社の指名・報酬諮問委員会は、本定時株主総会に向け、取締役会の
多様性を含む ESG の更なる強化を求める株主・投資家の皆様のご意見も踏まえつつ、当
社グループが新型コロナウイルスの感染拡大によって深刻な影響を受けている状況にあ
ることを認識したうえで、中長期的な企業価値の向上に向けた取締役会のスキルセット
などを議論した結果、既存の取締役会構成を基礎とし、ESG 経営やダイバーシティを進
める人材を充実させることが必要であるとの考えに至りました。
当社の指名・報酬諮問委員会は、現在の取締役及び取締役選任株主提案の候補者3名
を含む複数の社外取締役新任候補者につき、複数回に亘り、その資質・実績・専門性等
を、上記の観点から検討・審議を行いました。その結果、企業経験、ESG 経営の専門性、
上場会社社外取締役経験を有する新任の独立社外取締役候補である村松邦子氏を含む会
社提案に係る取締役候補が当社の取締役として最適な候補者である旨の答申を行ってお
ります。当社の取締役会はその答申を踏まえて、これらの取締役候補を会社提案として
本定時株主総会に上程することといたしました。なお、会社提案においては、取締役の
総数は 15 名のまま変わらず、独立社外取締役は引き続き8名(独立社外取締役比率 53%)、
女性取締役は1名から2名(女性取締役比率 13%)に増加いたします。会社提案の取締
役候補者については、本日発表いたしました「役員の異動に関するお知らせ」をご参照
ください。
当社の指名・報酬諮問委員会及び取締役会は、以下に掲げる理由から、会社提案の新
取締役会体制が当社にとって最適であり、取締役選任株主提案における3名のいずれの
候補者も選任する必要はないと判断いたしました。
【新取締役会体制の十分性】
以下の観点から新取締役会体制は必要かつ十分なものであると考えております。
① 新取締役会体制は、独立社外取締役が過半数を占めると同時に、女性取締役も複数と
なり、独立性と多様性を有する構成となっていること。これにより高い監督機能を発
揮できること
② 村松氏の選任により強化される ESG 経営の知見も含め、当社に必要とされるスキル
セットを備えた多様性のある構成であり、取締役選任株主提案において指摘されて
いる不動産投資及びファイナンスについても昨年の定時株主総会において手当て済
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みで、実効性が確保されていること(スキルセットの詳細については別紙1のとおり)
【当社グループの現状を踏まえた適合性】
当社グループの事業は新型コロナウイルスの感染拡大によって深刻な影響を受けてい
ることから、当社の取締役会及び経営陣は一体となり、現在の厳しい事業環境を乗り越
えることに注力しております。そのため、金融機関や地元コミュニティとの関係、地域
経済への理解が重要となる一方、新たな投資は大幅に抑制する状況にあります。結果と
して、新規投資よりも既存の事業運営(オペレーション)が経営の中心を占めつつある
なか、取締役選任株主提案における社外取締役候補者3名の経歴、経験及び専門性等は
当社の現状に適合するものではないと考えております。また、新任の取締役の割合を取
締役会において急激に高めることが適切な時期ではないとも考えております。
なお、取締役選任株主提案においては当社子会社の過去の事件を例示して当社のガバ
ナンス体制に問題がある旨主張されていますが、当社は、2018 年 12 月 10 日プレスリ
リースにおいて公表したとおり、当社子会社における住宅ローンの融資に係る問題に関
して受領した第三者委員会の報告書の指摘を真摯に受け止めて再発防止策を講じ、以降、
これまで以上にグループのガバナンス体制の強化を徹底しております。当社は適切なガ
バナンス体制の維持・強化に向け、今後とも継続的に取り組んでまいります。
会社提案は、独立性を備えた指名・報酬諮問委員会による答申を受けて決定されたも
のであり、当社グループが現在の厳しい事業環境を乗り越え、中長期的に成長していく
ために最適な提案であると考えております。取締役選任株主提案による候補者3名のい
ずれも社外取締役として選任する必要は無いことから、当社の取締役会は、取締役選任
株主提案のいずれにも反対いたします。
以 上
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(別紙1)
取締役会のスキルセットについて
当社の取締役会は、取締役会全体のバランスに配慮しつつ、専門知識、経験等が異なる多様な
取締役候補者を選出するとともに、その機能が効果的・効率的に発揮されるよう人員の最適化を
図っております。
当社グループの運営する主要な事業の十分な知見・経験を持った社内取締役と、独立した客観
的な立場で実効性の高い監視・監督を行う社外取締役から構成するものとし、監督機能の実効性
の観点から、取締役会の過半数が社外取締役であることが適切と考えております。
また、当社の取締役会に必要な知見・経験を、九州地域を中心とした持続可能な事業運営とい
う当社の使命をまっとうする上で重要な分野として「鉄道・モビリティサービス」
「不動産・まち
づくり」
「ESG・サステナビリティ」、会社経営の観点から当社にとって重要と考えられる知識・
経験を「企業経営」
「法務・リスクマネジメント」
「財務、M&A、ファイナンス」
「人事・報酬」の
分野と定義し、これらを備えた多様性のある取締役候補者を指名することとしております。
なお、当社の事業は新型コロナウイルスの感染拡大によって深刻な影響を受けており、地域と
一体となって現在の厳しい事業環境を乗り越えることが重要な局面となっていることから、九州
への知見も重要性が増していると考えております。
上記の考え方に基づいて整理された、新取締役会体制におけるスキルセットは以下のとおりで
す。
当社が各取締役に特に期待する分野
鉄道・ 法務・ 財務、
モビリティ 不動産・ ESG・ 企業 リスク M&A、 人事・
氏名 役職等 サービス まちづくり サステナビリティ 経営 マネジメント ファイナンス 報酬
唐池 恒二 会長執行役員 ● ●
青柳 俊彦 社長執行役員 ● ● ● ●
田中 龍治 専務執行役員 ●
古宮 洋二 専務執行役員 ● ●
森 亨弘 常務執行役員 ● ● ●
福永 嘉之 上席執行役員 ●
貫 正義 (九州電力相談役) ● ● ●
桑野 和泉(女性)(玉の湯社長) ● ●
市川 俊英 (三井不動産顧問) ● ● ●
浅妻 慎司 (元関西ペイント取締役) ● ● ●
村松 邦子(女性)(ウェルネス・システム研究所代表取締 ● ● ● ●
久我 英一* 監査等委員会委員長 ●
廣川 昌哉* ● ●
井手 和英* (筑邦銀行相談役) ● ●
江藤 靖典* (日野総合法律事務所弁護士) ●
* 監査等委員である取締役
注: ハイライトは独立社外取締役
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(別紙2)