9024 西武ホールディングス 2021-03-12 15:00:00
第三者調査委員会による調査報告書受領に関するお知らせ [pdf]

                                                  2021 年3月 12 日
各   位

                          会 社 名   株式会社西武ホールディングス
                          代 表 者   取 締 役 社 長        後   藤   高   志
                                  (コード番号 : 9024        東証一部)
                          問合せ先    広   報   部   長    川   上   清   人
                                  (TEL.03-6709-3112)



          第三者調査委員会による調査報告書受領に関するお知らせ

 当社の連結子会社である西武建設株式会社(本社:埼玉県所沢市、代表取締役社長:中村 仁。以下、
「西武建設」といいます。、西武造園株式会社(本社:東京都豊島区、取締役社長:大嶋 聡。以下、
              )                                   「西
武造園」といいます。、横浜緑地株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:樋熊 浩明。以下、
            )                                     「横
浜緑地」といいます。  )および西武緑化管理株式会社(本社:埼玉県所沢市、代表取締役:平田 伸一。以
下、
 「西武緑化管理」といいます。     )では、施工管理技士をはじめとする資格取得時における実務経験不備
の疑いにつき、2020 年6月 12 日に公表し、同日以降、第三者調査委員会の調査に全面的に協力してまい
りましたが、昨日、第三者調査委員会(以下、     「委員会」といいます。
                                    )より「調査報告書」を受領し、本
日、国土交通省に「調査報告書」の内容(第三者による品質検証の結果を含みます。     )および再発防止策
等を報告しましたので、お知らせいたします。
 お客さまをはじめ関係者の皆さまに多大なるご迷惑をお掛けしておりますことを、改めて心より深く
お詫び申し上げますとともに、委員会からの提言を真摯に受け止め、再発防止を図ってまいります。

                         記

1.委員会による調査の概要

(1)委員会の調査の範囲

    ①西武建設、西武造園、横浜緑地および西武緑化管理(以下、西武造園、横浜緑地および西武緑化管
     理を合わせて「西武造園グループ」といいます。 の役職員等が取得した施工管理技士・施工技士、
                          )
     建築士および技術士の資格に関し、受検(受験)時に必要とされる実務経験に不備がなかったか

    ②仮に実務経験に不備がありながら資格を取得していたと認められる場合、その原因および背景事
     情

    ③西武建設および西武造園グループが策定した再発防止策の有効性、適切性に対する検証とその他
     の再発防止策に関する提言

    ④委員会が認定した有効でない資格取得者が専任技術者あるいは配置技術者として営業所又は工事
     現場に配置されていないかどうかを可能な限りで調査し、前者については、仮に専任技術者として
     配置されていた場合には、その解消状況の確認を行うこと、後者については、仮に配置技術者とし
     て配置されていた工事現場がある場合には、西武建設および西武造園グループが第三者評価機関
     に依頼して施工管理上の問題の有無を検証するに当たり、 第三者評価機関の選定プロセスの適
                               i)
     切性、ⅱ)第三者評価機関への検証依頼項目の適切性、ⅲ)委員会調査の終了期間までに検証を終

                         1
    えた事案については、第三者評価機関が行った検証状況に特段の問題がなかったどうかの確認

(2)調査期間
  2020 年6月 12 日から 2021 年3月 11 日までの間

(3)調査報告書の内容
  調査の結果の概要について「2」以降に記載します。詳細については添付資料のとおりです。



2.委員会による調査の結果(概要)

(1)実務経験の不備による資格不正取得者数、資格個数、現場配置数

  西武建設および西武造園グループの事務系職員(実務経験がないことが明白である者)     ・技術系職員
  による資格不正取得者の合計は 82 名(資格個数 113 個)となり、本件社内調査時(2020 年6月 12
  日付「子会社の資格取得における実務経験の不備およびそれに伴う第三者調査委員会の設置につい
  て」での公表内容)の資格不正取得者よりも 17 名(資格個数 20 個)増加しました。内訳は以下のと
  おりです(詳細は別表のとおりです)  。

  ①事務系職員による資格不正取得

    ア   西武建設について
        施工管理技士の資格についてのみ、25 名(資格個数 34 個)となり、本件社内調査時よりも4
        名(資格個数6個)増加しました。

    イ   西武造園グループについて
        西武造園では、施工管理技士の資格についてのみ、7名(資格個数 11 個)となり、本件社内
        調査時よりも1名(資格個数2個)増加しました。
        横浜緑地および西武緑化管理では、事務系職員による不正取得はありませんでした。

  ②技術系職員による資格不正取得

    ア   西武建設について
        委員会調査の範囲を 2000 年度以降に取得された資格と定めた結果、調査対象となった資格総
        数は 386 個となり、これらを全件精査した結果、委員会において、実務経験に不備があると認
        定したものは、施工管理技士の資格についてのみ、17 名(資格個数 18 個)となり、本件社内
        調査時よりも 11 名(資格個数 12 個)増加しました。

    イ   西武造園グループについて
        委員会調査の範囲を 2000 年度以降に取得された資格と定めた結果、調査対象となった資格総
        数は 356 個となり、これらを全件精査した結果、委員会において、実務経験に不備があると認
        定したものは、施工管理技士(施工技士を含む)の資格についてのみ、西武造園で 30 名(資
        格個数 47 個)、横浜緑地で1名(資格個数1個)  、西武緑化管理で2名(資格個数2個)の合
        計 33 名(資格個数 50 個)となり、本件社内調査時よりも西武造園において1名増加しました
        (一方で、委員会の調査により実務経験が確認されたことにより、本件社内調査で疑義ありと
        された他の職員の資格について疑義がなくなったため、資格個数は増減なしとなりました)     。

                                 2
 ③不適切な資格取得者が専任技術者として配置された営業所の有無とその解消状況

  施工管理技士の資格を不正に取得した職員のうち、西武建設で3名(東京建築支店・東北支店・北
  九州出張所)、西武造園グループで3名(札幌営業所・エクステリア営業所・所沢事務所)が、か
  つて、専任技術者として選任されておりましたが、別の適切な資格保有者への変更や、営業所にお
  ける事業部門の廃止などにより、いずれも違反状態は解消されており、現在、違反状態となる営業
  所はないことが確認されました。

 ④不適切な資格取得者が配置技術者として配置された工事現場の有無

   2020 年6月 12 日付「子会社の資格取得における実務経験の不備およびそれに伴う第三者調査委員
   会の設置について」のとおり、過去において西武造園グループにおいて資格不備者が3物件に現
   場技術者として配置されていたことが社内調査で確認されておりましたが、委員会により、工事
   受注実績データを用いて資格不備者(委員会により新たに判明した資格不正取得者を含む。     )の配
   置有無の調査が行われた結果、判明している上記3物件のほかにはないことが確認されました。
   なお、   後記3のとおり、  西武造園グループにおいては、上記3現場について第三者評価機関による
   品質検査を行い、品質に問題がないことを確認しており、委員会調査においても当該品質の検証
   に不合理な点は認められず、信頼できるものと判断されております。

(2)原因分析

 ①事務系職員による資格不正取得の原因、背景事情

  ア   西武建設について
      西武建設においては、当時、会社が事務系職員に資格取得を指示、推奨していたことが認めら
      れるところ、その原因、背景事情としては、「経営事項審査の評点に強いこだわりがあったこ
      と」「当時、西武建設が厳しい経営環境にあり、リストラも行われたこともあって技術者不足
        、
      に強い懸念を抱いていたこと」 「十分な確認が行われないまま証明作業が行われていたこと
                    、
      (チェック機能の不存在)、
                  」「会社および個人がともに建設業法を軽視していたこと」等が挙
      げられております。

  イ   西武造園グループについて
      西武造園グループでは、会社の指示、推奨があったことまでは認められず、
                                       「十分な確認が行わ
      れないまま証明作業が行われていたこと(チェック機能の不存在)、
                                    」「会社および個人がとも
      に建設業法を軽視していたこと」が挙げられております。

 ②技術系職員による資格不正取得の原因、背景事情

  西武建設、西武造園グループともに、
                  「受検要件を正しく理解、把握する部署がなかったこと」、
                                            「実
  務経験情報の管理が行われず、実務経験の特定が当事者任せになっていたこと」「会社および個人
                                      、
  がともに建設業法を軽視していたこと」「内部統制上の視点が欠如しており、実務経験の管理や実
                    、
  務経験の証明手続についての内部監査が行われていなかったこと」が挙げられております。

 ③2008 年になされた当社に対する内部通報とこれに対する当社および西武建設の対応状況

  委員会調査の過程で、2008 年に当社の通報窓口に西武建設における資格不正取得に関する通報が

                         3
  なされ、当社が西武建設に対し資格取得者等の調査を行うよう指示し、  以降、調査が実施されたが、
  十分な解明や抜本的対応が尽くされないまま、2012 年に調査を終了する処理がなされたことが判
  明しました。西武建設では、当該通報を契機に、事務系職員による資格不正取得については一定の
  対応を行い、以後の事務系職員による資格不正取得は行われなくなったことが確認されましたが、
  当時の不十分な対応が、以後も、西武建設および西武造園グループの技術系職員による不適切な資
  格取得が行われたことを防ぐことができなかったことにつながったと言わざるを得ない旨の指摘
  がなされております(なお、現在の当社グループ内部通報制度については後記4(3)でご説明い
  たします)。



3.資格不正取得者が配置されていた物件に対する品質検証について

  上記2(1)④のとおり、実務経験に不備のある資格保有者が配置されていた法令違反の状態とな
 った物件について、委員会調査でも、2020 年6月 12 日付「子会社の資格取得における実務経験の不
 備およびそれに伴う第三者調査委員会の設置について」にて開示した3物件であることが確認されま
 した。その施工を担当した西武造園および西武緑化管理は、西武造園が主体となり、造園工事に詳し
 い専門家である第三者評価機関に依頼し、適正な監理技術者が配置されていなかったことにより施工
 品質に問題が生じていないかどうかを検証しました。2020 年 11 月 16 日付「子会社の資格取得におけ
 る実務経験の不備に伴う第三者調査委員会による調査期間の延長等について」では、そのうち2物件
 について品質に問題ないことが確認されている旨お知らせしておりましたが、残りの1物件について
 も品質に問題ない旨の検証結果を得ております。
  なお、上記1(1)④の委嘱事項について委員会が調査をおこなった結果、西武造園により選定さ
 れた第三者評価機関および当該機関による検証については、いずれの第三者評価機関も物件の施工品
 質の検証に必要とされる資格および経験を有し、  十分な検証能力を備えているものと評価されており、
 当該第三者評価機関により行われた3物件に関する検証に不合理な点は認められず、信頼できるもの
 と判断されております。



4.再発防止策について

  西武建設、西武造園グループおよび当社においては、委員会による調査結果について真摯に受け止
 め、同種事案の再発防止をはかるため、以下に掲げる再発防止策に取り組んでまいります。また、委
 員会より頂戴しました再発防止策に関する提言につきましても真摯に受け止め、取り組んでまいりま
 す。

(1)西武建設について

 西武建設は、建設業法および本件試験制度の存在意義を再認識し、全役職員がこれらを遵守すること
 およびそのための体制を構築することが重要であると位置付け、以下に掲げる再発防止策に取り組
 んでまいります。

 ①部署の新設を伴う職員個人の工事経歴の適切な記録、管理体制の構築
  個人経歴管理の基幹となるシステムを明確化し、職員個人の工事経歴を、根拠をもって記録、管理
  できるフローを策定すると共に、2021 年4月1日付で「業務監理部」を新設し、各事業部による
  チェックに加え、新設部署によるチェックも行い、体制を強化いたします。
  具体的には、新入社員研修時、各工事に技術者として配置された時、 配置技術者に変更があった時、

                          4
   工事が竣工した時などの所定のタイミングで、各事業部等が個人経歴管理システムに工事、研修の
   内容や配置技術者の氏名、役割、従事期間等の情報を入力し、その後、新設部署が、各事業部等か
   ら回付される客観的な裏付資料に基づき、入力内容の正確性をチェックいたします。

  ②適切な受検支援、実務経験証明手順の確立
   各事業部において、上記のフローにより記録、管理された職員の工事経歴に基づき受検対象者の選
   定や指導を適切に行うと共に、実務経験の証明に必要な正しい工事経歴情報を提供する体制を構
   築いたします。
   また、各事業部および新設部署は、「受験(受検)の手引」を精読し、受検要件の改廃、変更を正
   確に把握いたします。
   さらに、実務経験の証明手続の際には、各事業部および新設部署が個人経歴管理システムの記録を
   もとに、実務経験証明書の記載を二重にチェックし、当該チェックを経なければ、試験機関に実務
   経験証明書を提出することができない体制といたします。

  ③工事経歴、実務経験証明書写しの管理徹底
   新設部署において個人経歴管理システムに入力された各職員の工事経歴の根拠資料および同シス
   テムのデータを適切に管理すると共に、業務監理部において実務経験証明書の写しを適切に管理
   することにより、万一、後に疑義が生じた場合でも追跡が可能な体制を構築いたします。

 ④建設業法をはじめとする社会規範、本件試験制度の存在意義(理由)に関する研修の実施
  入社直後、入社後1年時、昇格試験(5職級、7職級、9職級)合格時をはじめとしたキャリアパ
  スの区切りにおける研修の機会に、「建設業法をはじめとする社会規範の存在意義(理由)「本件
                                           」
  試験制度の存在意義(理由)」を再認識させる研修を階層別に実施いたします。
  加えて、新設する業務監理部が主体となり、建設業法に関する教育を定期的に実施するほか、監査
  部が主催するコンプライアンス研修時においても、法令順守をはじめとした社会規範に関する内
  容の研修を実施し、内部監査においても、建設業法をはじめとした関連法令や、社内の規程類に準
  拠し業務が遂行されているか、確認してまいります。

(2)西武造園グループについて

 西武造園グループは、建設業法および本件試験制度の存在意義を再認識し、全役職員がこれらを遵守
 することおよびそのための体制を構築することが重要であると位置付け、以下に掲げる再発防止策
 に取り組んでまいります。

 ①工事経歴の一元的な管理方法の確立
  各職員の工事履歴について、西武造園グループに共通の書式による  「資格・実務経歴書」を作成し、
  作成時のみならず、その後も継続的に各部署長のチェックを受ける体制とすると共に、年2回、西
  武造園の事業運営部(現在の「事業推進部」を、2021 年4月1日付けで「事業運営部」に名称変
  更し、資格の管理を統括いたします。)においても「資格・実務経歴書」の提出を受ける体制とい
  たします。なお、西武造園グループの各職員の「資格・実務経歴書」のデータは、西武造園の事業
  運営部で一元的に管理するものとし、今後新たに管理システムを導入いたします。

  ②受検支援体制、実務経験証明手順の確立
   西武造園の事業運営部は、職員の技術検定等の受検に関する統括管理を担当し、講習会の開催等の
   受検支援を行う体制とします。
   また、受検の申込時に行う実務経験の証明は、西武造園の事業運営部において、「資格・実務経歴

                       5
   書」データと各社の受検申込者が作成し所属部署長のチェックを受けた実務経験証明書を照合し、
   誤りがないことの確認をし、当該確認を経なければ、実務経験証明書に対する受検書類確認依頼書
   の申請(証明者のゴム印押印)を行うことができない体制といたします。

  ③建設業法をはじめとする社会規範、本件試験制度の存在意義(理由)に関する研修の実施
   新入社員研修時ほか、3年目研修、5年目研修をはじめとしたキャリアパスの区切りにおける研修
   の機会に、「建設業法をはじめとする社会規範の存在意義(理由)「本件試験制度の存在意義(理
                                 」
   由)」を再認識させる研修を階層別に実施いたします。
   加えて、事業運営部が主体となり、受検申込期間に先立つ適宜の時期に、将来の受検申込者のみな
   らず、各職員の「資格・実務経歴書」作成のチェックを担当する各部署長を対象に、建設業法に関
   する教育を実施するほか、本件試験制度に関する研修プログラムを実施いたします。また、監査部
   門においても、内部監査で、建設業法をはじめとした関連法令や、社内の規程類に準拠し業務が遂
   行されているか、確認してまいります。

(3)当社について

  現在、当社グループの内部通報制度は、通報案件の全件について、外部専門家の助言 支援を受けて、
                                        ・
  当社コンプライアンス部長が主体的に関与して調査方針の決定・調査の実施・調査結果の確認を行う
  運用体制としております。当該運用体制については、委員会から、調査方針や調査体制の判断が時の
  担当者次第に陥ることはなく、「問題なし」との事案についても多くの目で見て検証される仕組みが
  整っているとの一定の評価をいただいておりますが、 内部通報制度の重要性に今一度立ち返り、委員
  会からの提言を踏まえて、内部通報制度の検証および適正な運用により一層努めてまいります。



5.不備のあった資格の取扱い

  実務経験に不備のあった役員、社員および退職者の資格につきましては、国土交通省のご指導のも
 と、関係各位と相談の上、適時適切に対応してまいります。



6.業績に与える影響

  本件による業績に与える影響は、現時点では不明でありますが、今後、業績に重大な影響が見込ま
 れる場合は、速やかにお知らせいたします。



7.取締役報酬の自主返納等

  西武建設、西武造園グループの取締役は、かかる事態および委員会による調査結果や提言について
 重く受け止め、責任を明確化するため、下記の通り、2021 年3月の基本報酬を自主返納いたします。

(1)西武建設について

  代表取締役社長        60%を自主返納
  取締役副社長執行役員     20%を自主返納
  取締役専務執行役員      20%を自主返納

                        6
  取締役常務執行役員     20%を自主返納
  上記以外の取締役6名に対しては厳重注意

(2)西武造園グループについて

 西武造園
  取締役社長        40%を自主返納
  取締役(管理部担当)   10%を自主返納
 西武造園の上記以外の取締役7名、 横浜緑地の取締役6名、西武緑化管理の取締役6名に対しては厳
 重注意



                                           以   上



(別表)不正取得者の数




                       7
                                            2021年3月11日




西武建設株式会社   御中




                調   査   報   告       書




                        西武建設株式会社        第三者調査委員会




                                委員長     矢   田   次   男




                                委   員   吉   野   弦   太




                                委   員   松   林   智   紀




                        1
目次
第1    当委員会による調査の概要 ................................................ 8
 1    当委員会設置の経緯 ...................................................... 8
 2    当委員会の構成 .......................................................... 8
 3    当委員会の独立性及び日弁連ガイドラインへの準拠 ........................... 9
     (1) 当委員会の独立性 ...................................................... 9
     (2) 日弁連ガイドラインへの準拠 ............................................ 9
 4    委員会調査の調査実施期間 ................................................ 9
 5    委員会調査の範囲及び方法 ............................................... 10
     (1) 委員会調査の範囲 ..................................................... 10
     (2) 委員会調査の方法 ..................................................... 11
 6    本調査報告書の構成 ..................................................... 12
 7    委員会調査の限界 ....................................................... 13
第2    各社の概要,関係 ....................................................... 13
 1    各社の概要 ............................................................. 13
     (1) 西武建設 ............................................................. 14
     (2) 西武造園 ............................................................. 14
     (3) 横浜緑地 ............................................................. 15
     (4) 西武緑化 ............................................................. 15
 2    各社の相関関係とガバナンス体制 ......................................... 16
第3    施工管理技士等の資格制度とその意義 ...................................... 18
 1    施工管理技士等の制度概要 ............................................... 18
 2    施工管理技士の役割 ..................................................... 18
     (1) 専任技術者 ........................................................... 18
     (2) 主任技術者・監理技術者 ............................................... 19
     (3) 建設業者の経営事項審査 ............................................... 20
     (4) 小括 ................................................................. 21
 3    施工管理技士等の技術検定の概要 ......................................... 21
 4    技術検定の受検に要する「実務経験」等の考え方 ............................ 24
     (1) 実務経験,指導監督的実務経験の意義.................................... 24
      ア   実務経験 ........................................................... 24
      イ   指導監督的実務経験 ................................................. 25
     (2) 実務経験・指導監督的実務経験の特定と証明について ...................... 25
      ア   技術検定実務経験証明書の記載要領 .................................... 26
      イ   算入可能な期間 ..................................................... 26
      ウ   重複申請の禁止 ..................................................... 26
 5    監理技術者資格の概要 ................................................... 27
第4    建築士及び技術士の資格制度とその意義 .................................... 29
 1    建築士の資格制度とその意義 ............................................. 29
 2    技術士の資格制度とその意義 ............................................. 31
第5    事務系職員による施工管理技士の資格の不正取得状況等 ...................... 32
 1    はじめに ............................................................... 32

                                        2
 2    事務系職員による不正取得の調査結果概要 .................................. 33
     (1) 西武建設について ..................................................... 33
     (2) 西武造園グループについて ............................................. 34
 3    事務系職員による資格取得が行われた経緯及びその状況(西武建設について) .. 35
     (1) 資格を取得した事務系職員のヒアリング状況について ...................... 35
     (2) 事務系職員による資格取得への西武建設の関与の状況等 .................... 38
     (3) 事務系職員による資格取得が積極的に指示,推奨された原因,背景事情 ...... 41
      ア    経営事項審査の評点に強いこだわりがあったこと ........................ 41
      イ    当時,西武建設が厳しい経営環境にあり,リストラも行われたこと ........ 42
      ウ    十分な確認が行われないまま証明作業が行われていたこと(チェック機能の不存
          在) ................................................................. 43
      エ    会社及び個人がともに業法である法を軽視していたこと .................. 44
      オ    類似の不正取得が業界内で広範に行われていた可能性があること .......... 45
 4    事務系職員による資格取得が行われた経緯及びその状況(西武造園について) .. 46
     (1) 資格を取得した事務系職員のヒアリング状況について ...................... 46
     (2) 事務系職員による資格取得への西武造園の関与の状況等 .................... 47
     (3) 事務系職員による資格取得が行われた原因,背景事情 ...................... 48
      ア    十分な確認が行われないまま証明作業が行われていたこと(チェック機能の不存
          在) ................................................................. 49
      イ    会社及び個人がともに業法である法を軽視していたこと .................. 49
第6    西武HDに対する内部通報とこれに対する西武HD及び西武建設の対応状況 .... 50
 1    内部通報の概要 ......................................................... 50
     (1) 委員会調査により過去の内部通報の事実を把握した経緯 .................... 50
     (2) 2008年通報の内容 ..................................................... 50
 2    2008年前後の西武HD等における内部通報制度の概要等 ...................... 51
     (1) ホールディングス体制以前の内部通報制度等 .............................. 51
     (2) 西武HD設立後の内部通報制度と,西武HDグループにおける通報処理手順 .. 51
      ア    西武HD下の内部通報体制の概要 ...................................... 51
      イ    西武HD及び西武建設における内部通報処理手順 ........................ 52
 3    2008年通報に対する実際の対応状況 ....................................... 55
     (1) 西武HDの初期の対応状況 ............................................. 55
     (2) 西武建設における調査等の対応状況 ..................................... 55
     (3) 西武HD及び西武建設のコンプライアンス部による定例会議の状況 .......... 60
     (4) 西武HDにおける終了処理の状況 ....................................... 63
     (5) 以後の西武建設における取扱い ......................................... 64
     (6) 小括 ................................................................. 64
 4    2008年通報に対する対応上の問題点 ....................................... 65
     (1) 西武HDにおける「必要性」判断のあり方 ................................ 66
     (2) 西武HDにおける調査方針指示のあり方 .................................. 67
     (3) 西武建設における調査方針指示及び調査のあり方 .......................... 67
     (4) 西武HD及び西武建設における結果報告受領時の対応のあり方 .............. 68
     (5) 西武HDにおける内部通報に対する終了処理のあり方 ...................... 69

                                         3
     (6) グループ会社間における同種問題の共有のあり方 .......................... 70
     (7) 検討や判断等の意思決定過程の記録化のあり方 ............................ 71
     (8) 小括 ................................................................. 71
第7    技術系職員を含めた施工管理技士等の資格取得状況等 ........................ 72
 1    本件社内調査の概要 ..................................................... 72
     (1) 本件社内調査のきっかけ ............................................... 72
     (2) 本件社内調査の方法,範囲 ............................................. 72
     (3) 本件社内調査の結果 ................................................... 73
 2     技術系職員を含めた実務経験の具備状況に関する委員会調査の方法,範囲について
     の考え方及び枠組み ....................................................... 73
     (1) 事務系職員についての調査方法,範囲.................................... 74
     (2) 技術系職員について ................................................... 74
     (3) 補充ヒアリング及び再調査希望の申立制度について ........................ 81
 3    西武建設についての委員会調査の結果 ...................................... 82
     (1) 事務系職員についての委員会調査の結果 .................................. 82
     (2) 技術系職員についての委員会調査の結果 .................................. 83
     (3) 技術系職員の実務経験不備の主な理由.................................... 84
      ア    受検に必要な実務経験ではない,別の種別の実務経験を申請したこと ...... 84
      イ    他部署での業務の際に関わった工事を実務経験として申請したこと ........ 85
      ウ    研修期間中も実務経験があると申請したこと ............................ 85
      エ    その他 ............................................................. 85
     (4) 再調査希望申立ての有無及び結果 ....................................... 86
 4    西武造園グループに関する委員会調査の結果 ................................ 86
     (1) 事務系職員についての委員会調査の結果 .................................. 86
     (2) 技術系職員についての委員会調査の結果 .................................. 87
     (3) 技術系職員の実務経験不備の主な理由.................................... 88
      ア    研修期間の研修を実務経験としたこと .................................. 88
      イ    複数の種別の受検において同じ実務経験を重複して使用したこと .......... 89
      ウ    上記ア及びイのような理由なく,実務経験期間が不足しているもの ........ 89
     (4) 再調査希望申立ての有無及び結果 ....................................... 90
 5    技術系職員による資格の不適切な取得に至った原因,背景事情 ................ 90
     (1) 資格取得奨励制度の概要 ............................................... 91
      ア    西武建設について ................................................... 91
          (ア) 資格手当 ......................................................... 91
          (イ) 人事上の評価 ..................................................... 91
          (ウ) 合格者への検定料の支給 ........................................... 91
          (エ) 勉強支援 ......................................................... 91
      イ    西武造園グループについて ........................................... 92
          (ア) 資格手当 ......................................................... 92
          (イ) 合格者への検定料の支給 ........................................... 93
          (ウ) 工事責任者会議での合格対策協議.................................... 93
          (エ) 勉強支援 ......................................................... 93

                                        4
     (2) 実務経験情報の管理状況と証明手順の概要 ................................ 93
      ア    西武建設について ................................................... 93
          (ア) 実務経験の管理状況 ............................................... 93
          (イ) 実務経験証明手順 ................................................. 94
      イ    西武造園グループについて ........................................... 95
          (ア) 実務経験の管理状況 ............................................... 95
          (イ) 実務経験証明手順 ................................................. 96
     (3) 技術系職員の受検の動機 ............................................... 97
      ア    西武建設について ................................................... 97
      イ    西武造園グループについて ........................................... 99
     (4) 実務経験の証明手続に関する内部統制状況 ............................... 101
      ア    業務執行部門による統制状況 ........................................ 101
      イ    内部監査部門及び監査役監査による統制状況 ........................... 102
     (5) 西武建設らにおいて技術系職員が実務経験不備のまま不適切な資格取得に至った原
      因,背景事情 .......................................................... 102
      ア    西武建設について .................................................. 102
          (ア) 受検要件を正しく理解,把握する部署がなかったこと ................. 103
          (イ) 実務経験情報の管理が行われず,実務経験の特定が当事者任せになっていたこ
           と ................................................................ 103
          (ウ) 会社及び個人がともに業法である法を軽視していたこと ............... 104
          (エ) 内部統制上の視点の欠如 .......................................... 104
      イ    西武造園グループについて .......................................... 105
          (ア) 受検要件を正しく理解,把握する部署がなかったこと ................. 105
          (イ) 実務経験情報の管理が行われず,実務経験の特定が当事者任せになっていたこ
           と ................................................................ 106
          (ウ) 会社及び個人がともに業法である法を軽視していたこと ............... 107
          (エ) 資格支援制度の活発化 ............................................ 107
          (オ) 内部統制上の視点の欠如 .......................................... 107
第8    当委員会のホットラインを通じて寄せられた情報等への対応状況 ............. 108
 1    情報提供の概要 ........................................................ 108
     (1) 投書Aの概要 ........................................................ 109
     (2) 投書Bの概要 ........................................................ 109
     (3) 投書Cの概要 ........................................................ 110
      ア    期間計算方法について .............................................. 110
      イ    バーチャートの信ぴょう性について ................................... 110
 2    投書Aで提供された情報への対応状況 ..................................... 110
 3    投書Bで提供された情報への対応状況 ..................................... 111
 4    投書Cの指摘及び提供された情報への対応状況 ............................. 113
     (1) 期間計算方法について ................................................ 113
     (2) バーチャートの信ぴょう性について .................................... 114
第9    不適切な資格取得者が専任技術者として配置された営業所の有無とその解消状況,配
     置技術者として配置された工事現場の有無と施工の再検証 ..................... 115

                                        5
 1    専任技術者として配置された営業所の有無とその解消状況 ................... 116
 2    配置技術者として配置された工事現場の有無 ............................... 117
     (1) 西武建設について .................................................... 118
     (2) 西武造園グループについて ............................................ 119
     (3) 検証結果について .................................................... 119
 3    対象物件の検証方法 .................................................... 120
 4    第三者評価機関の選定に対する当委員会の評価 ............................. 121
     (1) 物件1について ....................................................... 121
     (2) 物件2について ....................................................... 122
     (3) 物件3について ....................................................... 122
 5    第三者評価機関による検証に対する当委員会の評価 ......................... 124
     (1) 検証項目の抽出 ...................................................... 124
      ア    物件1について ..................................................... 125
      イ    物件2について ..................................................... 126
      ウ    物件3について ..................................................... 127
     (2) 第三者評価機関による検証結果 ........................................ 128
      ア    物件1について ..................................................... 128
      イ    物件2について ..................................................... 128
      ウ    物件3について ..................................................... 129
 6    小括 .................................................................. 129
第10       西武建設らの暫定的再発防止策の評価と当委員会による更なる提言 ......... 130
 1    再発防止策に関する当委員会の関わり方 ................................... 130
 2    西武建設らが策定した暫定的な再発防止策の概要 ........................... 130
     (1) 西武建設について .................................................... 130
      ア    部署の新設を伴う職員個人の工事経歴の適切な記録,管理体制の構築 ..... 131
      イ    適切な受検支援,実務経験証明手順の確立 ............................. 131
      ウ    工事経歴,実務経験証明書写しの管理徹底 ............................. 131
     (2) 西武造園グループについて ............................................ 132
      ア    工事経歴の一元的な管理方法の確立 ................................... 132
      イ    受検支援体制,実務経験証明手順の確立 ............................... 132
      ウ    資格及び試験制度に関する研修の実施 ................................. 133
 3    西武建設らの暫定的再発防止策に対する評価と当委員会の提言 ............... 133
     (1) 再発防止のあり方についての当委員会の基本的な考え方 ................... 133
      ア    問題の本質をとらえ,的確に解決するものであること ................... 133
      イ    屋上屋を架すような再発防止策としないこと ........................... 134
      ウ    新たな仕組みや制度を導入した場合に生じ得る新たな不正の可能性にも配慮すべ
          きこと .............................................................. 134
      エ    故意過失を問わず,不正事例は生じ得るという前提で,事後チェックの実効性を
          高める工夫をこらすこと .............................................. 135
      オ    不正事例の端緒を得た場合に,調査の「方法」と,結果確認の「方法」を慎重に
          検討し,真実発見に近づく工夫をこらすこと ............................. 135
     (2) 西武建設らの暫定的再発防止策に対する評価と当委員会の提言 ............. 136

                                        6
      ア    西武建設らの暫定的再発防止策は,一応,問題の直接的な原因をとらえたもので
          あること ............................................................ 136
      イ    重複したチェック体制の実効性について慎重に検討すべきこと ........... 137
      ウ    事業に活かせる有用な仕組みとして運用する工夫をすべきこと ........... 138
      エ    実務経験の記録,管理制度が導入されると,記録,管理の場面での不正や過誤が
          生じ得ることに配慮すべきであること ................................... 139
      オ    法令に対する意識の改革を行い,指定試験機関とのコミュニケーションをとりな
          がら受検要件の正しい理解を持ち続けること ............................. 140
      カ    「現場を知る」内部統制を徹底すべきこと ............................. 142
      キ    不正の疑いの端緒を得た場合の的確な調査対応方針を確立,検証すべきこと 143
第11       委員会調査の終結に当たり ............................................ 147




                                        7
第1   当委員会による調査の概要

1    当委員会設置の経緯

     西武建設株式会社(以下「西武建設」という。),西武造園株式会社(以

 下「西武造園」という。),横浜緑地株式会社(以下「横浜緑地」という。)

 及び西武緑化管理株式会社(以下「西武緑化」という。)(以下,西武建設,

 西武造園,横浜緑地及び西武緑化を総じて「西武建設ら」といい,西武造園,

 横浜緑地及び西武緑化を合わせて「西武造園グループ」という。)は,施工

 管理技士又は施工技士の資格を保有する役職員(退職者を含む。以下,退職

 者を含め「役職員等」ともいう。)の一部において,これら資格の技術検定

 を受検するに当たり,受検に必要な一定の実務経験を有していないにもかか

 わらず,有しているものとして申告し技術検定を受検し,これら資格を取得

 するなどしていた不正事案(以下「本件不正」という。)が発覚したため,

 事実関係等の社内調査(以下「本件社内調査」という。)を実施し,2020年

 (令和2年)6月12日,その結果概要を国土交通省に報告した。

     西武建設は,かかる事態の重要性に鑑み,同日,西武建設らと利害関係の

 ない外部の弁護士からなる第三者調査委員会を設置し,事案の徹底調査,原

 因の究明及び再発防止策の提言を委任することとした。


2    当委員会の構成

     当委員会の構成は,次のとおりである。

      委   員   長   矢田   次男   (のぞみ総合法律事務所   弁護士)

      委       員   吉野   弦太   (同上)

      委       員   松林   智紀   (同上)

     また,当委員会は,当委員会が調査(以下「委員会調査」ともいう。)を

 実施するに当たり,以下の各弁護士を調査補助者として従事させた。

      調査補助者       川西   拓人   (のぞみ総合法律事務所   弁護士)

      調査補助者       安田   栄哲   (同上)

      調査補助者       鈴木   和生   (同上)

                            8
      調査補助者    當舎   修    (同上・ただし2020年(令和2年)10月

                             31日まで)

      調査補助者    大畑   駿介   (同上)

      調査補助者    金森   四季   (同上)

      調査補助者    福塚   侑也   (同上)


3   当委員会の独立性及び日弁連ガイドラインへの準拠

(1) 当委員会の独立性

     当委員会の委員3名,調査補助者及び所属する法律事務所は,いずれも

    日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」

    (以下「日弁連ガイドライン」という。)に準拠して選任されており,委

    員会調査以前に西武建設らから法律事務の委任を受けたことはなく,西武

    建設らとの間に利害関係はない。


(2) 日弁連ガイドラインへの準拠

     当委員会は,委員会調査の独立性,客観性を確保するため,当委員会の

    運営,委員会調査の実施,調査報告書の作成等について,可能な範囲にお

    いて日弁連ガイドラインに準拠している。


4   委員会調査の調査実施期間

    2020年(令和2年)6月12日から2021年(令和3年)3月11日までの間

    なお,当初は概ね3~4か月程度の調査期間を予定していたが,新型コロナ

ウイルスの感染拡大状況やそれに伴う政府方針により調査方法や対応可能時

間に制約があったこと,後述するとおり,委員会調査は,①事務系職員によ

る意図的な不正取得問題の解明と,②西武建設らと協働しながら資格保有者

の実務経験をできる限り客観的資料に基づいて検証することの大きな2つの

テーマがあり,後者の実務経験の内容及び期間の検証に相応の時間を要した

ことから,委員会調査の実施期間を延長した。

                         9
5   委員会調査の範囲及び方法

(1) 委員会調査の範囲

     当委員会は,西武建設からの委任を受け,

    ① 西武建設らの役職員等が取得した施工管理技士・施工技士,建築士及

      び技術士の資格に関し,受検(受験)時に必要とされる実務経験に不

      備がなかったか

    ②仮に実務経験に不備がありながら資格を取得していたと認められる場

     合,その原因及び背景事情

    ③以上のような問題に対して西武建設らが策定した再発防止策の有効性,

     適切性に対する検証とその他の再発防止策に関する提言

    を委員会調査の範囲とした。

     また,特に施工管理技士の場合,その資格保有者は,建設業法(以下

    「法」という。)上,営業所に置くべき専任技術者を務めることができる

    とされ,また,請け負った工事現場に配置されるべき主任技術者又は監理

    技術者を務めることができるとされており,仮に実務経験に不備があり,

    不適切に施工管理技士の資格を取得している者が配置されていた場合には,

    特に後者の場合,当該工事の施工管理の適切性に疑義が生じ得る。そこで,

    西武建設らは,仮に施工管理技士の資格取得が不適切であった者が主任技

    術者又は監理技術者として配置されている(た)工事現場がある場合には,

    既に行われた施工管理が適切であったかについて,専門の第三者(以下

    「第三者評価機関」という。)を選定して施工管理上の問題の有無を検証

    することとした。そのため,当委員会は,

    ④当委員会が認定した有効でない資格取得者が専任技術者あるいは配置

     技術者として営業所又は工事現場に配置されていないかどうかを可能

     な限りで調査し,前者については,仮に専任技術者として配置されて

     いた場合には,その解消状況の確認を行うこと,後者については,仮

     に配置技術者として配置されていた工事現場がある場合には,西武建

     設らが第三者評価機関に依頼して施工管理上の問題の有無を検証する

                    10
     に当たり,i)第三者評価機関の選定プロセスの適切性,ⅱ)第三者

     評価機関への検証依頼項目の適切性,ⅲ)委員会調査の終了期間まで

     に検証を終えた事案については,第三者評価機関が行った検証状況に

     特段の問題がなかったどうかの確認を行うこと

 についても,追加的に委員会調査の範囲に加えた。


(2) 委員会調査の方法

 ア    委員会調査が対象とした資格取得時期は,古くは2000年(平成12年)

     度にまで遡ることとなり,西武建設らの企業再編に伴うデータシステム

     の改廃もあって,デジタルフォレンジック手法の有効性が乏しいと認め

     られたため,電子データの確認のほか,できる限り紙媒体の資料の収集

     に努めた。

 イ    また,施工管理技士などの資格の受検(受験)要件である実務経験の

     有無を確認するに当たり,本件社内調査では,迅速性を優先し資格を保

     有する役職員等の自己申告に基づいて一次的判断を行ったが,当委員会

     では,公平性,正確性の観点から,より客観性を担保するため,できる

     限り西武建設らに残された施工状況に関する客観的資料に基づいて資格

     保有者の実務経験を再整理し,これを全件,当委員会が評価することと

     した。

     その上で,当委員会が実務経験に不備があると認定した資格取得者に

  対しては,再調査希望を申し立てる機会を設け,申立てがあった者によ

  る主張の当否について,当委員会にて改めて判断を行った。


 ウ    また,実務経験不備のまま受検(受験)することについての個人の動

     機,組織的関与の有無,不正の原因,背景事情等を解明するため,西武

     建設らの役職員等に対するヒアリングを実施した。

     ヒアリング対象者は,別紙1のとおり,合計90名に及ぶが,新型コロ

  ナウイルスの感染状況を踏まえ,web方式で実施した。

                    11
    エ    さらに,実務経験の不備事案に限らず,西武建設らにおける他の不適

        切事案の存否に関する幅広い情報収集を行うため,当委員会は,2020年

        (令和2年)7月,当委員会への直接の情報提供を可能とするホットライ

        ンを設置し,西武建設らの全役職員に情報提供を呼びかけた。



6   本調査報告書の構成

    委員会調査は,以上の調査範囲及び方法に基づいて行われたが,その結果

を記した本調査報告書では,

    ① 西武建設及び西武造園グループ各社の概要を概観し(後記第2・13ペ

        ージ)

    ② 委員会調査による検証対象となった施工管理技士及び施工技士(以下

        「施工管理技士等」という。)の資格制度とその意義(後記第3・18

        ページ),建築士及び技術士の資格制度とその意義(後記第4・29ペ

        ージ)について,それぞれ述べた上で

    ③ 主に西武建設において,過去,事務系職員による施工管理技士資格の

        不正な取得が行われたこと及びその原因や背景事情を明らかにし(後

        記第5・32ページ)

    ④ 上記③の不正に関し,株式会社西武ホールディングス(以下「西武H

        D」という。)に内部通報がなされ,西武HD及び西武建設が対応し

        た状況及びその問題点を明らかにし(後記第6・50ページ)

    ⑤さらに,上記③,④の問題とは別に,西武建設及び西武造園グループに

        おいて2000年(平成12年)度以降に取得された施工管理技士等,建築士

        及び技術士の資格全数について,必要とされる実務経験を有していたか

        否かを検証した結果と,認められた不適切な取得事例が生じた原因や背

        景事情を明らかにし(後記第7・72ページ)

    ⑥ 次いで,当委員会が設置したホットラインを通じて提供のあった情報

        について,当委員会の対応状況を明らかにし(後記第8・108ページ)


                       12
     ⑦ 以上の委員会調査の結果,施工管理技士の資格取得に不備が認められ

      ると結論づけた資格保有者が専任技術者あるいは配置技術者として選

      任されていた営業所又は工事現場について,前者については違法状態

      の解消状況を,後者については,事後的に第三者評価機関が行った施

      工管理上の問題点の有無の検証に対する当委員会の評価を明らかにし

      (後記第9・115ページ)

     ⑧最後に,西武建設らが既に実施し,あるいは策定した暫定的な再発防止

     策に対する当委員会の評価を明らかにするとともに,別途,当委員会か

     らの再発防止に関する提言を述べることとする(後記第10・130ペー

     ジ)。


7    委員会調査の限界

     当委員会による調査は,調査対象会社及び役職員等の任意の協力のもとに

 行われる調査であること,西武建設らにより開示された資料等から得られた

 情報に依拠しているところ,20年以上前の時期をも調査対象とする結果,収

 集し得た客観的資料が限られたものであったといわざるを得ないこと,また,

 これを補うヒアリングの結果も,記憶の減退等から十分なものとまではいえ

 ないこと,さらに,新型コロナウイルスの感染状況にかんがみ自ずと調査手

 法にも制約があったこと等の限界があったことをあらかじめ断っておく。

     当委員会の事実認定は,上記のような限界のもとでの調査結果に基づくも

 のであり,当委員会に開示され又は当委員会が収集したもの以外の関係資料

 等が存在し,役職員等へのヒアリングで得られた情報の中にも事実と異なる

 内容が含まれている可能性も否定できず,仮に,後日そのような事実が発覚

 した場合,当委員会の事実認定及び検証,評価結果は変更される可能性があ

 る。


第2   各社の概要,関係

1    各社の概要

                      13
(1) 西武建設

  西武建設は,西武HDの100パーセント子会社である西武鉄道株式会社

 (以下「西武鉄道」という。)の100パーセント子会社であり,西武HD

 の連結子会社である。

  西武建設は,法第3条第1項第2号に基づく国土交通大臣による特定建設

 業の許可を受けて,土木,建築等の建設工事に関する請負,受託等の事業

 を営んでいる。

  西武建設の現在の組織体制は,事業部門として,土木事業部,建築事業

 部,リノベーション事業部,戸建事業部があり,そのほかに総務部,管理

 部,経理部,情報システム部,企画部,原価管理部,安全環境品質部,購

 買部,監査部等がある。

  西武建設では,施工管理技士の技術検定に向けて勉強会や外部講習の受

 講案内を行うなど資格取得のために会社が積極的に関わっており,その業

 務の中心となるのは各事業部門内にある工務部であるが,技術検定の要件

 である実務経験の証明は,総務部が行っている。


(2) 西武造園

  西武造園も,西武鉄道の100パーセント子会社であり,西武HDの連結

 子会社である。

  西武造園は,法第3条第1項第2号に基づく国土交通大臣による特定建設

 業の許可を受けて,造園,土木,建築等の建設工事に関する請負,受託等

 の事業を営んでいる。

  西武造園の現在の組織体制は,事業部門として,営業部,東日本統括支

 店内に営業一部,営業二部,工事部等,東日本管理運営事業部,西日本統

 括支店内にみどり環境部,管理運営部等があり,そのほかに監査部,管理

 部,経営企画部,事業推進部(2021年(令和3年)4月から「事業運営部」)

 等がある。

  西武造園では,施工管理技士の技術検定に向けて勉強会や外部講習の受

                 14
 講案内を行うなど資格取得のために会社が積極的に関わっており,その業

 務の中心となるのは事業推進部であるが(事業推進部は,2020年(令和2

 年)4月1日に「工務部」から名称変更した部署である。前身の「工務部」

 は,2000年(平成12年)まで「工務設計部」の名称で設置されていたが,

 その後廃止され,2008年(平成20年)4月1日から始まる第59期事業年度に

 再度設置された。),施工管理技士の受検要件である実務経験の証明は,

 管理部が行っている。


(3) 横浜緑地

  横浜緑地は,西武造園の100パーセント子会社であり,西武HDの連結

 子会社である。

  横浜緑地は,法第3条第1項第2号に基づく神奈川県知事による特定建設

 業の許可を受けて,造園,土木,とび・土木工事等の事業を営んでいる。

  横浜緑地の現在の組織体制は,管理部,造園事業部,管理運営事業部に

 分かれており,管理部は,その業務の一部を西武造園に委託するほか,社

 内の総務にかかる業務を担当し,造園事業部は,営業,入札,設計,工事

 に関する業務を担当し,管理運営事業部は,収支計画や事業所の運営管理

 業務等を担当している。

  施工管理技士の受検要件である実務経験の証明は,管理部が行っている

 が,受検の取りまとめ(受検者名簿の作成,受検者に対する勉強会等に関

 する業務を含む。)は,同社に代わって西武造園の事業推進部が行ってい

 る。


(4) 西武緑化

  西武緑化も,西武造園の100パーセント子会社であり,西武HDの連結

 子会社である。

  西武緑化は,法第3条第1項第2号に基づく国土交通大臣による特定建設

 業の許可を受けて,造園,土木,とび・土木工事等の事業を営んでいる。

                  15
     西武緑化の現在の組織体制は,管理課,営業部,造園部に分かれており,

    管理課は,業務の一部を西武造園に委託するほか,社内の総務にかかる業

    務を担当し,事業部門として,営業部や造園部が営業企画等や工事等に関

    する業務を担当している。

     施工管理技士の受検要件である実務経験の証明は,管理課が行っている

    が,受検の取りまとめ(受検者名簿の作成,受検者に対する勉強会等に関

    する業務を含む。)は,同社に代わって西武造園の事業推進部が行ってい

    る。


2   各社の相関関係とガバナンス体制

(1) 西武建設は,1941年(昭和16年)11月に設立され,後述する本件不正が

    行われ始めたと認められる2000年(平成12年)頃は,株式会社コクド及び

    西武鉄道がそれぞれ50パーセントの西武建設株式を保有する株主であった。

     しかし,2004年(平成16年),西武鉄道の有価証券報告書等に,株主に

    関し事実に反する記載があることが明らかとなったことに端を発し,西武

    鉄道が同年12月に上場廃止となった。

     これを契機として西武グループの再編が行われることとなり,その結果,

    2006年(平成18年)2月,持ち株会社として西武HDが設立され,以後,

    下図のとおり,西武建設及び西武造園が西武鉄道の100パーセント子会社

    に,その西武鉄道は西武HDの100パーセント子会社に再編された。




                    16
(2) 現在,西武HDは,グループ会社について,「直接管理会社」,「間接

 管理会社」等の区分けによりガバナンス体制を構築しており,西武建設は

 「直接管理会社」と位置付けて,西武建設が特定の事項を決議する際には

 西武HDに付議又は報告することを義務付ける形で,他方,西武造園,横

 浜緑地及び西武緑化は「間接管理会社」と位置付けて,西武造園について

 は,2009年(平成21年)以降西武建設がガバナンス上,管理する会社とな

 り,横浜緑地及び西武緑化については,西武造園がガバナンス上,管理す

 る会社となり(これにより西武建設が間接的に横浜緑地及び西武緑化につ

 いてもガバナンス上の管理会社となる。),それぞれ特定の事項を決議す

 る際には,上記のガバナンス上,管理する会社に付議又は報告することを

 義務付ける形で,西武HDを頂点とする統一的なガバナンス体制を構築し

 ている(資料1~3)。

 なお,西武建設の職員については,西武造園及び西武緑化への出向や,

退社後に西武造園,西武緑化,横浜緑地への移籍が行われるなど,グルー

                 17
     プ間での人事交流がある。


第3   施工管理技士等の資格制度とその意義

1    施工管理技士等の制度概要

     施工管理技士等とは,施工技術の向上を図るため,建設業者の施工する建

 設工事に従事し又はしようとする者に与える資格として法が創設した資格制

 度であり,法第27条第1項に基づいて実施される技術検定に合格した者に付

 与される国家資格である。

     施工管理技士等は,従事する専門業務ごとに建設機械施工,土木施工管理,

 建築施工管理,電気工事施工管理,管工事施工管理,電気通信工事施工管理,

 造園施工管理の7種類につき,それぞれ一級及び二級に区分されている(法

 第27条第5項,建設業法施行令(以下「施行令」という。)第34条第1項,第

 2項)。

     法の委任を受けた施行令は,施工管理技士等の技術検定を行うに当たり,

 一級及び二級ごと,また専門業務の種別ごとに一定の実務経験を要求してい

 るところ(施行令第36条第1項,第2項),近年は,建設産業の若手入職者が

 減少し,技術者の高齢化が進んでいることに鑑み,一定の要件下における必

 要な実務経験年数の短縮(2014年(平成26年)度以降),二級学科試験の受

 検可能期間の前倒し(2016年(平成28年)度以降),二級学科試験の年2回

 化(2018年(平成30年)度以降)等の措置を講じ,若手技術者の確保を図っ

 ている。他方,技術検定の公正かつ適正な実施を確保するため,2015年(平

 成27年)度以降については,不正の手段によって技術検定を受け,又は受け

 ようとした者に対して,合格の決定を取り消し,又はその技術検定を受ける

 ことを禁止することができることとされている(施行令第40条)。


2    施工管理技士の役割

 (1) 専任技術者



                    18
       法第3条第1項第1号の一般建設業の許可及び同項第2号の特定建設業1の許

      可を得るためには,それぞれ,その営業所ごとに一定の資格又は経験を有

      する専任技術者を置かなければならない(法第7条第2号,第15条第2号)。

       これは,建設業に関する営業の中心は各営業所にあるところ,建設工事

      に関する請負契約の適正な締結及びその履行を確保するためには,各営業

      所に専任の技術者を置く必要があるとされたことによる。

       そして,その許可を受けようとする建設業の種類に応じた施工管理技士

      の資格を有する者(一級,二級を問わない。)であれば,一般建設業の許

      可にかかる専任技術者の資格を満たす者として取り扱われ(法第7条第2号

      ハ,建設業法施行規則(以下「施行規則」という。)第7条の3第2号),

      一級施工管理技士の資格を有する者であれば,特定建設業の許可にかかる

      専任技術者の資格を満たす者として取り扱われる(法第15条第2号イ,昭

      和63年6月6日建設省告示第1317号)。


     (2) 主任技術者・監理技術者

       また,建設業者は,請け負った建設工事の施工に関し,当該工事現場に

      おける建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者(主任技術者)を置

      かなければならず,発注者から直接,建設工事を請け負った特定建設業者

      は,当該建設工事の施工のために締結した下請契約の請負代金額が法第3

      条第1項第2号の政令で定める金額以上になる場合,当該工事現場における

      建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者(監理技術者)を置かなけ

      ればならない(法第26条第1項,第2項)。

       これは,建設工事の適正な施工を確保するという法の目的を十分に達成

      するためには,建設業者がその請け負った建設工事を施工する工事現場に,



1
    建設業のうち,その営業にあたって発注者から直接請け負う一件の建設工事につき,その工事の全部又
は一部を,下請代金の額が4000万円以上(許可を受けようとする建設業が建築工事業(法第2条第1項,別
表第1)である場合は6000万円以上。施行令第2条)となる下請契約を締結して施工しようとするものを
「特定建設業」といい,それ以外のものを「一般建設業」という。

                          19
 当該工事について一定の施工実務の経験または一定の資格を有する者を置

 いて工事の施工の技術上の管理を行わせることが必要であるとされたこと

 による。

  そして,施工管理技士の資格を有する者(一級,二級を問わない。)で

 あれば,主任技術者の資格を満たす者として取り扱われ(法第26条第1項,

 第7条第2号ハ),一級施工管理技士の資格を有する者であれば,監理技術

 者の資格を有する者として取り扱われる(法第26条第2項,第15条第2号

 イ)。


(3) 建設業者の経営事項審査

  さらに,国又は地方公共団体等が発注者であり,かつ,工事1件の請負

 代金の額が500万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあっては,

 1500万円)以上のものを発注者から直接,請け負おうとする建設業者は,

 発注者と請負契約を締結する日の1年7か月前の日の直後の事業年度終了の

 日以降に,その経営に関する客観的事項についての審査(以下「経営事項

 審査」という。)を受けていなければならない(法第27条の23第1項,施

 行令第44条,施行規則第18条の2)。

  経営事項審査は,工事規模,施工技術の程度等に差異がある個別的な建

 設工事の適正な施工を確保するため,各建設工事の発注者が,その建設工

 事の規模,要求される技術的水準等を勘案し,それに見合う能力を有する

 建設業者を選定するための審査であり,建設業者の企業力を的確に把握す

 るため,経営の健全性,経営の規模,技術的能力等を別個に審査し,数値

 により評価されるものである。

  施工管理技士の資格を有する者は,許可を受けた建設業の種類別の技術

 職員の数として,その等級に応じ加点評価事由の対象となる(法第27条の

 23第2項第2号,施行規則第18条の3第2項第1号,平成20年1月31日国土交通

 省通知国総建第269号)。

  加えて,国や地方公共団体における公共工事の入札については,工事の

                  20
    契約の種類ごとに入札に参加するため必要な資格が定められ,入札に参加

    を希望する建設業者が定められた資格を有するかどうかを審査しなければ

    ならないとされているところ(予算決算及び会計令第72条第1項,第2項,

    第95条第1項,第2項,地方自治法施行令第167条の5第1項,第167条の11第

    2項),そのうちの客観的事項の審査につき経営事項審査の評価点数が利

    用されることとされている。その得点に応じて,入札に参加できる工事の

    規模,等級が異なり,高得点であるほどより大きな規模,より高い等級の

    工事の入札に参加する資格が認められる(官庁営繕部工事請負業者選定要

    領(平成31年3月20日国営管第408号)第2の第2号等参照)。


(4) 小括

     以上のとおり,施工管理技士の資格は,それ自体は技術者の技術の向上

    を図る目的で定められた国家資格であり,直接的には工事への就業制限な

    どの法的効果は定められていないものの,入札や契約締結時の建設業者の

    客観的な技術力の評価根拠となったり,契約の締結や工事の施工管理の適

    正を確保するために営業所や工事現場に配置することが求められる専門職

    の地位に就くことができることから,実務上は,企業の受注活動や施工業

    務に重要な影響を及ぼすものといえる。

     したがって,施工管理技士等の技術検定を受けようとする技術者にも,

    これを雇用する企業にも,こうした同資格制度の持つ法的,実務的な意義

    が十分に理解される必要がある。


3   施工管理技士等の技術検定の概要

    施工管理技士等の技術検定は,法第27条の2第1項に基づき,国土交通大臣

により指定された指定試験機関によって実施されている。具体的には,土木

施工管理,管工事施工管理,造園施工管理,電気通信工事施工管理について

は一般財団法人全国建設研修センターが,建築施工管理,電気工事施工管理

については一般財団法人建設業振興基金が,建設機械施工については一般社

                     21
     団法人日本建設機械施工協会が,それぞれ指定試験機関として各技術検定を

     実施している。

      施工管理技士等の技術検定は,その種別及び級別を問わず,学科試験及び

     実地試験によって行われる(法第27条第2項)。学科試験は,択一式又は択

     一式と記述式の併用による筆記試験であり,実地試験は,建設機械の操作等

     の実技試験や施工図の作成等実地における応用能力などを判断する筆記試験,

     口述試験等で構成されている。

      そして,技術検定試験の受検資格は,施行令において,以下のように定め

     られている(ただし,下線部は当委員会によるものである。)。


     【一級施工管理技士資格】
      ⮚   次のいずれかにあたる者(施行令第36条第1項)

          ① 学校教育法による大学を卒業した後受検しようとする種目に関し

           指導監督的実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験を有する者

           で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの

          ② 学校教育法による短期大学又は高等専門学校を卒業した後受検し

           ようとする種目に関し指導監督的実務経験1年以上を含む5年以上

           の実務経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修

           めたもの

          ③ 受検しようとする種目について二級の技術検定に合格した後同種

           目に関し指導監督的実務経験1年以上を含む5年以上の実務経験を

           有する者

          ④ 国土交通大臣が上記①ないし③に掲げる者と同等以上の知識及び

           経験を有する者と認定した者2


2
    学歴,検定又は資格試験への合格と,それらに応じた「実務経験」「指導監督的実務経験」「専任の主
任技術者としての実務経験」及び「専任の監理技術者による指導を受けた実務経験」が定められている
(昭和37年11月1日建設省告示第2755号)。例えば,高等学校を卒業した者で在学中に国土交通省令で定
める学科を修めた者については,受検しようとする種目に関し指導監督的実務経験1年以上を含む10年以上
の実務経験が必要とされる。

                         22
     【二級施工管理技士資格】
      ⮚       学科試験(施行令第36条第2項第1号イ,第2号イ)

              当該学科試験が行われる日の属する年度の末日における年齢が17歳以

              上の者
      ⮚       実地試験

          ‣   二級建設機械施工(施行令第36条第2項第1号ロ)

               次のいずれかにあたる者

               ①   学校教育法による高等学校による実業学校を含む。又は中等教

                   育学校を卒業した後受検しようとする種別に関し2年以上の実務

                   経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めた

                   もの

               ②   学校教育法による高等学校又は中等教育学校を卒業した後建設

                   機械施工に関し,受検しようとする種別に関する1年6月以上の

                   実務経験を含む3年以上の実務経験を有する者で在学中に国土交

                   通省令で定める学科を修めたもの

               ③   受検しようとする種別に関し6年以上の実務経験を有する者

               ④   建設機械施工に関し,受検しようとする種別に関する4年以上の

                   実務経験を含む8年以上の実務経験を有する者

               ⑤   国土交通大臣が上記①ないし④に掲げる者と同等以上の知識及

                   び経験を有する者と認定したもの3


          ‣   二級土木施工管理,二級建築施工管理,二級電気工事施工管理,二

              級管工事施工管理,二級電気通信工事施工管理,二級造園施工管理

              (施行令第36条第2項第2号ロ)

               次のいずれかにあたる者

               ①   学校教育法による高等学校又は中等教育学校を卒業した後受検

                   しようとする種目に関し3年以上の実務経験を有する者で在学中


3
    学歴と,それに応じた「実務経験」が定められている(平成27年12月16日国土交通省告示第1196号)。

                             23
                 に国土交通省令で定める学科を修めたもの

             ②   受検しようとする種目に関し8年以上の実務経験を有する者

             ③   国土交通大臣が上記①又は②に掲げる者と同等以上の知識及び

                 経験を有するものと認定した者4


    4   技術検定の受検に要する「実務経験」等の考え方

        このように,一級及び二級の施工管理技士等の技術検定を受検するために

     は,いずれも一定年数の「実務経験」や「指導監督的実務経験」が必要とさ

     れている。


     (1) 実務経験,指導監督的実務経験の意義

            法及び施行令には,「実務経験」及び「指導監督的実務経験」(以下,

        合わせて「実務経験等」ともいう。)の定義はないが,受検する者に対す

        る受検案内を記載した各種別,各級の2020年(令和2年)度版「受験の手

        引」(建設機械施工については「受検の手引」)によると,「実務経験」

        及び「指導監督的実務経験」は,次のようなものとされている(資料4)。


        ア   実務経験

            実務経験とは,各種別における工事の施工に直接的にかかわる技術上

        のすべての職務経験をいう5。

            具体的には,受注者(請負人)として施工を管理,指揮,監督した経


4
    学歴,検定又は資格試験への合格と,それらに応じた「実務経験」が定められている(平成27年12月16
日国土交通省告示第1197号)。
5
    建設機械施工については定義が異なっており,実務経験とは,建設工事の実施にあたり,建設機械を適
確に操作するとともに,建設機械の運用を統一的かつ効率的に行うために必要な技術上のすべての職務経
験をいう(令和2年度2級建設機械施工技術検定試験「受検の手引」10頁参照)。その具体例としては,工
事の請負者側の技術者として,建設機械による施工の管理,指導若しくは監督した経験(補助者としての
経験を含む。),工事の発注者側の技術者として,施工の監督をした経験(補助者としての経験を含
む。),建設機械の運転者若しくは運転助手として,工事の施工に従事した経験をいうものとされてい
る。

                           24
 験,設計者等による工事監理の経験,発注者側における現場監督技術者

 等としての経験(これらの職務の補助者としての経験を含む。)をいう

 ものとされる。

    その上で,各種別,各級の「受験(受検)の手引」には,「実務経験」

 として認められる工事種別,工事内容,「実務経験」として認められな

 い工事種別,工事内容等が具体的に示されており,例えば,工程管理,

 品質管理,安全管理等を含まない単純な労務作業等や工事現場の事務,

 営業の事務,着工前の設計者等による設計,計画,調査の業務など各種

 工事の施工に直接的にかかわらない業務については,「実務経験」には

 含まれないとされている。


イ    指導監督的実務経験

    指導監督的実務経験とは,現場代理人,主任技術者,工事主任,設計

 監理者,施工監督などの立場で,部下や下請けに対して工事の技術面を

 総合的に指導監督した経験をいい,受注者の立場における経験のほか,

 発注者側の現場監督技術者等として総合的に指導,監督した経験も含む

 とされる。


(2) 実務経験・指導監督的実務経験の特定と証明について

    上記(1)(24ページ)のとおり,技術検定の受検要件となっている実務

経験等は,各種別,各級で必要とされる年数が定められ,受検の申込みに

当たり,実務経験の内容,年数等を申込時の勤務先の代表者等が署名押印

して作成する技術検定実務経験証明書を指定試験機関宛に提出する必要が

あるとされている。

    その一方で,法令上,実務経験の内容や必要年数の特定方法等について

は明記されておらず,指定試験機関が合理的な裁量の範囲内で定めるもの

と解される。

    この点に関して,以下の3点は,当委員会が資格要件の具備状況を判断

                  25
するに当たり重要であることから触れることとする。


ア   技術検定実務経験証明書の記載要領

    実務経験については,「受験(受検)の手引」に示された工事種別,

工事内容,従事した立場等の中から該当するものを選択して記載し,従

事した期間を年月で記載する必要がある(資料4・16~17ページ参照)。

    また,指導監督的実務経験については,より詳細に,工事名,発注者,

工事工期,指導監督的実務経験の内容を記載することが求められ,その

経験年数を年月で記載する必要がある(資料4・16~17ページ参照)。


イ   算入可能な期間

    実務経験等は,指定日現在で記載するのを原則とする。

    しかし,指定日以降,実際の技術検定実施日までの数か月間に更に実

務経験等を積む見込みであり,これを算入することで必要な実務経験を

満たすことができる見込みである場合には,技術検定実施日の前日まで

の実務経験を算入することが可能である。

    なお,技術検定実施日前日までの実務経験等の見通し期間も算入する

ことができる旨が「受験(受検)の手引」に明示されるようになったの

は,いずれの種目及び級においても,2015年(平成27年)度の技術検定

以降のことである(資料5・6ページ,資料6・6ページ参照)。


ウ   重複申請の禁止

    受検しようとする技術検定の種別ごとの実務経験については,1つの

工事期間内に申請が可能な工事種別は原則として1件であり,複合的な

一式工事の施工に従事した場合又は同じ工期内に種別の異なる複数の現

場の施工に従事した場合は,同一期間内における実務経験を重複して申

請することは認められない(以下「重複禁止要件」という。)。

    なお,重複禁止要件が「受験(受検)の手引」に明示されるようにな


                 26
        ったのは,一級・二級土木施工管理,一級・二級造園施工管理,一級・

        二級管工事施工管理,二級建築施工管理及び二級電気工事施工管理につ

        いては,2009年(平成21年)度の技術検定以降,一級建築施工管理,一

        級電気工事施工管理及び一級・二級建設機械施工については,2010年

        (平成22年)度の技術検定以降のことである(資料7・8ページ,資料

        8・8ページ,資料9・5ページ参照,資料10・5ページ参照)。


    5   監理技術者資格の概要

        上記2(2)(19ページ)のとおり,発注者から直接,建設工事を請け負っ

     た特定建設業者は,当該建設工事の施工のために締結した下請契約の請負代

     金額が法第3条第1項第2号の政令で定める金額以上になる場合,大規模な下

     請工事に当たって下請負人を適切に指導,監督するため,当該工事現場にお

     ける建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる者,すなわち監理技術者を

     配置しなければならないとされる。

        法第26条第2項により定められる監理技術者となることのできる者につい

     ても,以下のとおり,一定の場合には実務経験が要件とされているが,委員

     会調査の結果,西武建設らにおける監理技術者は,いずれも一級施工管理技

     士又は一級建築士の資格取得をもって監理技術者となったものであり,これ

     に代えて実務経験を有することをもって監理技術者の資格を取得した者は認

     められなかったため,本項では簡潔に概要を記載するにとどめる。

     【当該工事にかかる建設業が指定建設業以外の工事の場合】

         法第15条第2号イに該当する者

         法第27条第1項の規定による技術検定その他の法令の規定による試験で

         許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるもの

         に合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする

         建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者6

         法第15条第2号ロに該当する者

6
    平成14年3月29日国土交通省告示第268号。

                              27
      ①   当該工事における建設業にかかる建設工事に関し学校教育法によ

          る高等学校若しくは中等教育学校において国土交通省令で定める

          学科を修め卒業した後5年以上の実務の経験を有する者

          または

          当該工事における建設業にかかる建設工事に関し学校教育法によ

          る大学において国土交通省令で定める学科を修め卒業した後3年以

          上の実務の経験を有する者

          または

          当該工事における建設業にかかる建設工事に関し10年以上の実務

          の経験を有する者

          または

          国土交通大臣が上記に掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技

          能を有するものと認定した者7

          であって,

      ②   請負代金の額が政令で定める金額8以上であるものに関し2年以上

          の指導監督的実務経験を有する者

     法第15条第2号ハに該当する者

      国土交通大臣が上記に掲げる者と同等以上の能力を有する者と認定し

      た者9

    【当該工事にかかる建設業が指定建設業の工事の場合】

     法第15条第2号イに該当する者

      法第27条第1項の規定による技術検定その他の法令の規定による試験で

      許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるもの

      に合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする

      建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者


7
  平成15年2月20日国土交通省告示第134号。
8
  施行令第5条の3により4500万円と定められている。
9
  平成12年12月12日建設省告示第2345号。これによって指定される者については実務経験は求められてい
ない。

                          28
      法第15条第2号ハに該当する者

      国土交通大臣が上記に掲げる者と同等以上の能力を有する者と認定し

      た者

     上記法第15条第2号イに該当する者については,平成14年3月29日国土交通

 省告示第268号にて,各工事種別に応じた一級施工管理技士のほか,一級建

 築士,技術士等の資格取得者が指定されている。

     なお,法第26条第4項により,監理技術者は,監理技術者資格者証の交付

 を受けているものであって,国土交通大臣の登録を受けた講習を受講した者

 の中から選任しなければならないとされている。また,監理技術者資格者証

 の有効期間は5年間とされており申請による更新が必要となるほか,監理技

 術者は5年以内に講習を受講していなければならないとされている(法第27

 条の18第4項ないし第6項,施行規則第17条の14)。


第4   建築士及び技術士の資格制度とその意義

    建築士及び技術士の資格についても,以下のとおり,実務経験が試験の受験

要件とされている又はされていたが,後述するとおり,委員会調査の結果,西

武建設らにおいて,建築士及び技術士の受験要件である実務経験に不備があっ

た者は認められなかったため,本項では簡潔に概要を記載するにとどめる。


1    建築士の資格制度とその意義

     建築士は,建築物の設計,工事監理等を行う技術者の資格を定めて,その

 業務の適正を図り,建築物の質の向上に寄与させるために,国が建築士法に

 基づいて免許を与える資格認定制度であり,公益財団法人建築技術教育普及

 センターが中央指定試験機関,都道府県が指定試験機関として建築士試験に

 関する事務を執り行っている(建築士法第15条の2,15条の6,建築士法に基

 づく中央指定登録機関等に関する省令第56条及び各都道府県知事による指

 定)。

     建築士資格は,業務の対象となる建築物の用途,規模,構造に応じて,一

                     29
     級建築士,二級建築士,木造建築士に分類され,それぞれ,以下のような一

     定の実務経験を含む所定の要件を充足することで受験資格を得ることができ,

     その者が学科試験及び設計製図試験に合格すると建築士免許を申請すること

     ができる(建築士法第4条以下)。なお,建築士法の改正により,2020年

     (令和2年)度以降の建築士試験においては,実務経験は受験資格ではなく,

     免許登録要件と変更された。


     【一級建築士受験資格】(改正前の建築士法第14条)
       ⮚   次のいずれかに当たる者

           ①   大学において国土交通大臣の指定する建築に関する科目を修めて

               卒業した者であって,その卒業後,建築実務の経験を2年以上有す

               る者

           ②   短期大学(修業年限が3年であるものに限る。)において国土交通

               大臣の指定する建築の科目を修めて卒業した者であって,その卒

               業後,建築実務に関する経験を3年以上有する者

           ③   短期大学若しくは高等専門学校において国土交通大臣の指定する

               建築に関する科目を修めて卒業した者であって,その卒業後,建

               築実務の経験を4年以上有する者

           ④   二級建築士として設計その他の国土交通省令で定める実務の経験

               を4年以上有する者

           ⑤   国土交通大臣が①ないし④に掲げる者と同等以上の知識及び技能

               を有すると認める者10


     【二級建築士試験及び木造建築士試験受験資格】(改正前の建築士法第15条)
       ⮚   次のいずれかに当たる者

           ①   大学若しくは高等専門学校において国土交通大臣の指定する建築

               に関する科目を修めて卒業した者



10
     学歴とそれに応じた実務経験が定められている(平成20年6月16日国土交通省告示第745号)。

                              30
     ②   高等学校若しくは中等教育学校において国土交通大臣の指定する

         建築に関する科目を修めて卒業した者であって,その卒業後,建

         築実務の経験を3年以上有する者

     ③   都道府県知事が①ないし②に掲げる者と同等以上の知識及び技能

         を有すると認める者

     ④   建築実務の経験を7年以上有する者

    2020年(令和2年)二級建築士試験,木造建築士試験受験要領8ページ以下

によれば,建築士試験における実務経験とは,設計図書,施工図等の図書と

密接に関りをもちつつ,建築物全体を取りまとめる,建築関係法規の整合を

確認する又は建築物を調査,評価するような業務であり,単なる写図工若し

くは労務者としての経験又は単なる庶務,会計その他これらに類する事務に

関する経験は含まないものとされている。また,この実務経験に関する具体

的な判断基準は,数次にわたり若干の改訂がされており,当該業務が実務経

験に当たるか否かは当時の基準により判定される。なお,公益財団法人建築

技術教育普及センターによれば,2020年(令和2年)二級建築士試験,木造

建築士試験受験要領8ページ以下の記載は,二級建築士及び木造建築士試験

についてのみではなく,一級建築士試験についても同様に当てはまるもので

あるとのことである。


2   技術士の資格制度とその意義

    技術士は,科学技術に関する技術的専門知識と高等の専門的応用能力及び

豊富な実務経験を有し,公益を確保するため高い技術者倫理を備えた優れた

技術者の育成を図るために,技術士法に基づき国が付与する国家資格であり,

公益社団法人日本技術士会が指定試験機関として技術士試験に関する事務を

執り行っている(技術士法第11条第1項,指定試験機関及び指定登録機関に

関する規則第26条)。

    受験者は,指定された教育課程を修了するか第一次試験に合格して修習技


                     31
 術者となった者が,以下のような一定の実務経験を含む所定の要件を充足す

 ることで,第二次試験の受験資格を得ることができ,その者が第二次試験を

 受験し合格すると技術士として登録することができる(技術士法第4条以

 下)。


 【技術士第二次試験受験資格】(技術士法第6条第2項,技術士法施行規則第

     10条)
     ⮚   次のいずれかにあたる者

         ①   技術士補として技術士を補助したことがある者で,その補助した

             期間が4年(総合技術監理部門は7年)を超えるもの

         ②   ①に掲げる者のほか,職務上の監督者の指導の下で,実務経験を4

             年(総合技術監理部門は7年)超えるもの

         ③   ①ないし②に掲げる者のほか,実務経験を7年(総合技術管理部門

             は10年)超えるもの


     技術士法第6条第2項第2号及び2020年(令和2年)度技術士第二次試験受験

 申込み案内4ページによれば,技術士試験における実務経験とは,科学技術

 (人文科学のみにかかるものを除く。)に関する専門的応用能力を必要とす

 る事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価(補助的業務を除

 く。)又はこれらに関する指導の業務をいうとされている。また,技術士第

 二次試験は機械,電気電子,化学,建設など21の技術部門に分かれて実施さ

 れるが(技術士法第4条第1項,技術士法施行規則第2条),同申込み案内5ペ

 ージによれば,受験しようとする技術部門に関連しない業務であっても,科

 学技術に関するものであれば,実務経験として算入してよいものとされてい

 る。


第5   事務系職員による施工管理技士の資格の不正取得状況等

1    はじめに

     西武建設らによる本件社内調査により,西武建設及び西武造園においては,

                          32
多くが2001年(平成13年)度以降,工事現場での実務経験が認められない事

務系の職員(採用時に技術職と事務職に分けられ,事務職は,総務,経理,

営業,支店管理等を行い,工事現場で施工管理業務等を担当することは職制

上,ない。以下では,営業担当者も含め,「事務系職員」という。)が,実

務経験があるように申請して施工管理技士の技術検定を受け,合格して不正

に資格を取得していたことが具体的に判明し,かかる不正取得状況は,当委

員会による委員会調査でも確認された。

    そして,当委員会による更なる調査により,このような事務系職員による

資格不正取得が2008年(平成20年)の内部通報により明るみになり,西武建

設が不十分ながらも一定の対処を行ったことから,以後,事務系職員による

資格不正取得は見られなくなったとの経緯も明らかになった。

    そこで,本報告書では,まず,こうした事務系職員による施工管理技士の

資格の不正取得が行われた状況(本項)と内部通報を受けて行われた対処の

状況等(後記第6・50ページ)について詳述することとする。


2   事務系職員による不正取得の調査結果概要

    まず,委員会調査の結果,最終的に特定した事務系職員による施工管理技

士の資格取得状況は,西武建設については別紙2-①,西武造園については

別紙2-②のとおりである。


(1) 西武建設について

     別紙2-①のとおり,西武建設では,

     ・1991年(平成3年)度に1名

     ・1993年(平成5年)度に1名

     ・1994年(平成6年)度に1名

    となっている。そして,その後,

     ・2002年(平成14年)度に2名

     ・2003年(平成15年)度に8名

                        33
   ・2004年(平成16年)度に10名

   ・2005年(平成17年)度に4名

   ・2006年(平成18年)度に3名

   ・2007年(平成19年)度に3名

   ・2008年(平成20年)度に1名

 が取得しており(ただし,のべ人数であり,正味の数は25人である。),

 特に2003年(平成15年)度から顕著に増え,その後は漸減し,2008年(平

 成20年)度を境にみられなくなった。

  また資格を取得した事務系職員の当時の所属は,土木事業を行う部門

 (西武建設では社内の組織再編が繰り返し行われ,名称が幾度も変更され

 ているため,本調査報告書では,断りない限り,土木事業を担当する部署

 を,便宜的に「土木事業部門」と表記する。)の者や各支店の営業担当者

 が多くを占めていると認められる。

  そして,取得された資格の種別をみると,34個の資格のうち18個が二級

 土木施工管理技士であり,11個が一級土木施工管理技士の資格であって,

 圧倒的多数となっている様子が分かる。


(2) 西武造園グループについて

  西武造園グループのうち,事務系職員による資格の不正取得が行われた

 のは西武造園のみであり,横浜緑地及び西武緑化では見られなかった。

  西武造園は,職員採用の際,出身学科や専門性等を考慮し,技術系職員

 か事務系職員かを区別して採用し,入社後の研修内容やその後の人員配置

 でも,原則として,技術系職員は現場部門を中心に,事務系職員は間接部

 門を中心に配属されているが,技術系職員が営業分野に配属されることも

 ある。

  西武造園の事務系職員のうち施工管理技士の資格を取得していた者は,

 別紙2-②のとおり,既に退職した者を含め7名(ただし,のべ人数は11

 名),取得資格数は11個であり,1986年(昭和61年)度から2008年(平成

                   34
    20年)度までの間,散発的に,一級造園又は土木の施工管理技士若しくは

    二級土木施工管理技士の資格取得が見られ,西武建設のように一時期に集

    中して増えるといった傾向はない。



3    事務系職員による資格取得が行われた経緯及びその状況(西武建設につい

    て)

(1) 資格を取得した事務系職員のヒアリング状況について

    ア    1991年(平成3年)度及び1993年(平成5年)度に資格を取得した事務系職

        員(同一職員)は,資格管理業務を所管する工務部工務課から資格を取

        得するように勧められたと説明しているが,取得者が1名であり,この

        頃,西武建設が組織的に事務系職員に資格取得を奨励していたとまでは

        認められない。


    イ    2002年(平成14年)度ないし2008年(平成20年)度に施工管理技士の

        資格を取得した事務系職員らは,当委員会によるヒアリングに対し,記

        憶の濃淡,具体性の程度に差はあれど,概要,以下のように述べており,

        複数名が,会社の経営幹部や上司らが率先して事務系職員に対しても施

        工管理技士の資格取得を指示,推奨していた様子について述べている。

        これらの説明は,多くが相当程度具体的であり,後述するとおり,これ

        に沿う社内資料も存在することから,十分に信用することができる。

         ・社長兼建築事業本部長が2002年(平成14年)頃に池袋のサテライト

          オフィスを訪れた際,個別に,土木の施工管理技士の資格を取得す

          るようにと言われた。確かこの時,土木事業本部で土木の技術者を

          増やそうという動きがあり,そのためだったのではないかと推測さ

          れる。

         ・2002年(平成14年)頃,二級施工管理技士の資格を取得すれば経営

          事項審査の点数が上がって会社のためになるという話を聞かされ,

          経営事項審査の申請業務を行う部署の管理職あるいは他部署の管理

                        35
 職から二級施工管理技士の資格取得を勧められた。

・支店長から,2003年(平成15年)2月頃,支店職員全員に対し,東京

 で開催された支店長会議の内容報告としてだったと思うが,会社と

 してサポートを行うので事務系職員は施工管理技士の資格をとれる

 ならとるようにと勧められた。支店長は,支店長会議における社長

 の話として,経営事項審査の評点を上げるため,営業,事務系職員

 も含めて資格取得を会社が奨励するとのことであった。支店長は,

 施工管理技士を増やして経営事項審査の点数を上げて他社との差別

 化を図りたい,事務系職員が専任技術者を兼ねられれば,別に専任

 技術者を雇用した場合と比べて経費が1000万円ほど削減でき,会社

 のためにもなるなどと説明していた。自分としても,資格を取得し

 て専任技術者になれれば,希望する支店からの異動もなくなるので

 はないかという思いもあった。

・2003年(平成15年)頃,支店の上司から,これから施工管理技士の

 合格率は下がるだろうし,会社が費用を負担してくれるのだから一

 緒に受検しようと誘われた。その時は不合格となったが,後に,事

 務系職員が何人も資格を取得している一覧を見て,キャリアアップ

 のためにも必要だと考えるようになり受検した。

・2002年(平成14年)末から2003年(平成15年)初頭頃,支店長と副

 支店長から,施工管理技士の資格を取得するように指示された。

・当時の職場の上司から,他の事務系職員も資格をとっているからと

 いう理由で自分も施工管理技士の資格をとるように勧められた。

・当時,部署や支店の内外を問わず,大勢の上司が施工管理技士の資

 格取得を推奨していた。2004年(平成16年)頃,社内でリストラが

 あり退職者が多くいた時期だったこともあり,技術系職員でなくて

 も建設会社として必要な資格を取得しようという雰囲気があり,上

 司からも,長年の営業経験に基づいた専門的知識を持っているのだ

 から施工管理技士の資格を取得してみたらどうだと勧められた。

               36
    ・同僚から,施工管理技士の資格をとっておいたほうがいいと勧めら

     れた。

    ・誰に指示をされたのかは覚えていないが,当時(2004年(平成16年)

     から2006年(平成18年)頃)は,上司が,「ちゃんと勉強している

     か」「試験,頑張れよ」などと声掛けをしていて,事務系職員も積

     極的に施工管理技士の資格をとるべき風潮,雰囲気があった。

    ・2006年(平成18年)頃,支店長から,専任技術者を置くことができ

     ないと営業所の閉鎖もあり得るが,資格を取れば維持できるから,

     取ってみたらどうかと言われ,希望する営業所にとどまれるのであ

     ればとの思いで受検した。


ウ    他方,資格取得を指示,奨励した人物として名前が挙がった役職員の

    多くが既に退職し(中には亡くなった方もいる。),限られた人数のヒ

    アリングとならざるを得なかった上,ヒアリングを実施することができ

    た職員等は,事務系職員に施工管理技士の資格取得を指示,勧奨したこ

    とはないなどと述べ,関与を強く否定しており,供述は激しく対立して

    いる。

    しかしながら,資格取得を指示,奨励されたと述べる職員らの説明は

相当程度具体的である上,これを裏付ける客観的資料もあって,少なく

とも西武建設が会社の方針として事務系職員に資格取得を指示,推奨し

ていたことは明らかである。


エ    ところで,施工管理技士の技術検定の申込みの際には,実務経験を証

    明するため,工事種別,工事内容,従事した立場等を実務経験証明書に

    記載することとなっているところ,ヒアリングの結果,事務系職員の中

    でも工事現場に出て事務作業に従事していた職員は,当該現場に関する

    事項を申込書に記載していた。他方,事務系職員の中で工事現場に出て

    いなかった者は,西武建設が請け負った工事一覧をコリンズ登録等で見

    て自分で適当に選んで申込書に記載したり,土木事業本部工務部の担当

                    37
    者又は業務推進室営業管理部の担当者や営業所所長から,申込者自身が

    関与したことのない工事が記載された紙を渡され,それに基づいて記載

    していた。


(2) 事務系職員による資格取得への西武建設の関与の状況等

    上記(1)(35ページ)のとおり,資格を不正に取得した事務系職員は,

西武建設の当時の社長その他の幹部,上司から取得するように指示,指導,

奨励されたと述べており,当委員会がヒアリングし得た当時の幹部,上司

らはこれを強く否定して,供述は激しく対立している。

    しかしながら,当委員会による調査の過程で発見し,収集した資料及び

これに基づくヒアリングの結果によれば,2002年(平成14年)以降,2008

年(平成20年)頃までの間,西武建設が特に土木施工管理技士の資格保有

者の減少を食い止め,経営事項審査の評点を落とさないようにするため,

社をあげて,事務系職員にも積極的に資格の取得を推奨していたと認めら

れる。

    もっとも当時の幹部はすべからく退職し,中には亡くなっている方もい

てヒアリングを実施できなかったことから,不正取得を指示する意思決定

をした際の関与者や意思決定経緯を詳らかにすることはできなかった。

    以下では,委員会調査の過程で発見,収集した,専ら土木事業部門の客

観的資料から認定できる事実関係を拾い上げ,認定可能な範囲で西武建設

の関与の状況について明らかにすることとする。

ア    2002年(平成14年)2月1日付け土木統括部土木部次長名の「平成13年

    度,1級並びに2級土木施工管理技士試験結果について」と題する書面

    (資料11)には,「土木統括部においても,経営審査における技術評価

    (通称Z点,1・2級土木施工管理技士の総数に関係)における,最高点

    である1900点を死守する為(当社は本年度の合格者を含めて1901点。19

    00点を下回ると,経営審査の評点=ランクが下がる。)にも,来年度以


                   38
    降も1・2級土木施工管理技士資格取得対策を進めていくつもりです。」

    などと記載され,また,同年3月付け(日は空欄)土木統括部土木部工

    務課名の「1級2級土木施工管理技士,試験対策についてのお願い」と題

    する書面(資料12)には,「現時点ではZ点のランクを上げる事は不可

    能ですが,下がる事は避けなければなりません。平成14年~16年度にか

    けて,1級-15名,2級-3名,その他-1名の方々の定年退職が予定されて

    います。そして17年度以降は,毎年10名平均の退職が予想されており,

    土木統括部としてこの事に対する何らかの措置が必要になってきまし

    た。」などと記載されている。

イ    そして,2002年(平成14年)4月付け(日は空欄)土木統括部土木部

    長名の「1級・2級土木施工管理技術検定試験について」と題する書面

    (資料13)には,上記のような懸念が記載された上で,「そこで,平成

    14年度は土木統括部の業務の一環として昨年から1歩進めて,1級・2級

    を含めた本試験の学科試験段階からの資格取得支援を行ないます。」と

    記載され,さらに,2級土木施工管理技士の学科試験支援の内容が記載

    された項目の中に,「・技術系でない受験者を対象とした現場見学会の

    開催。」と,また,学科試験支援のスケジュールが記載された項目の中

    に,「5月下旬   2級土木現場見学会(事務系対象)」などと記載されて

    いる。

    このことから,土木事業部門は,事務系職員には工事現場での実務経

験がないために,技術検定に合格するためには工事現場の状況を予め学

習しておく必要性を理解していたこと,すなわち技術検定では施工管理

業務等の実務経験が要求されるが,事務系職員はそれを満たしていない

ことを明確に認識していたと認められる。

ウ    また,2003年(平成15年)4月23日付け土木事業本部工務部長名の

    「営業・事務系職員の1・2級土木施工管理技士資格取得支