8848 レオパレス21 2019-07-31 15:00:00
外部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ [pdf]

                                                               2019 年 7 月 31 日
各     位
                                     会 社 名        株 式 会 社 レ オ パ レ ス 21
                                     代表者名           代表取締役社長 宮 尾 文 也
                                                  (コード番号 8848 東証第一部)
                                     問合せ先               執行役員      新   井   清
                                                         (TEL 050-2016-2907 )


                      外部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ


    当社は、2019 年 6 月 10 日に当社ホームページに PRESS RELEASE として掲載した「外部調査委員会へ
の追加調査依頼のお知らせ」のとおり、2019 年 2 月 27 日に設置致しました外部調査委員会に対し、当
社が設計等を行い他社が施工した物件の界壁の不備及び 2019 年 5 月 29 日に当社ホームページに PRESS
RELEASE として掲載した界壁の不備について原因究明と再発防止策策定のため、調査を依頼し、調査を
進めてまいりました。
    本日、外部調査委員会より最終の調査報告書を受領しましたのでお知らせいたします。なお、同報告
の概要は、下記のとおりです。


    当社は、今回受領した調査報告書の内容を真摯に受け止め、ステークホルダーの皆様の信頼回復に向
けて、再発防止策の実現に取り組んでまいります。
    再発防止策の内容につきましては、本日付「施工不備に関する原因及び再発防止策等について」及び
2019 年 5 月 29 日付「当社施工物件における界壁等の施工不備に関する原因及び再発防止策等につい
て」をご参照ください。


    界壁等の施工不備につきまして、物件の所有者様、入居者様をはじめとする関係者の皆様及び各ス
テークホルダーの皆様には多大なるご心配及びご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げ
ます。
                          <本件に関するお問い合わせ>


    オーナー様    フリーコール     0120-082-991 (受付:10:00-19:00 ※水曜日 10:00-18:00)
    入居者様     フリーコール     0120-911-165 (受付:10:00-19:00)
    行政関係者様 専用ダイヤル      03-5350-0134 (受付:9:00-18:00 定休日 土日祝)
    株主様      IR推進室      050-2016-2907 (受付:9:00-18:00 定休日 土日祝)
    報道機関様    広報部        03-5350-0445 (受付:9:00-18:00 定休日 土日祝)
株式会社レオパレス 21   御中




  施工不備問題に関する調査報告書
        (概要版)




                    2019 年(令和元年)7 月 31 日
                             外部調査委員会
                       委員長   弁護士   伊 藤 鉄 男

                       委員    弁護士   木目田 裕

                       委員    弁護士   山 本 憲 光
                                 目     次
第1編    本調査の概要 ·························································· 1

  第1       本調査の経緯······················································ 1

  第2       当委員会の体制···················································· 1

  第3       本調査の目的及び対象範囲 ·········································· 2

  第4       本調査の方法······················································ 2

第2編    本調査の結果判明した事実 ·············································· 3

  第1       他社施工物件問題 ·················································· 3

       1   他社施工物件問題の概要 ············································ 3
       2   他社施工物件における業務フロー ···································· 5
       3   小屋裏等界壁の施工の要否 ·········································· 8
       4   図面検証について ·················································· 9
       5   不備が生じた原因 ················································· 11
       6   レオパレス 21 における問題の早期発見の可能性についての検討 ········ 12

  第2       鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題 ····································· 13

       1   鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題の概要 ······························· 13
       2   物件調査・図面調査の結果及び本調査の方針 ························· 13
       3   ゴールドボルト及びゴールドレジデンスにおいて図面の不備・齟齬が生じた
           原因····························································· 15
       4   物件不備が生じた各類型ごとの原因 ································· 19
       5   レオパレス 21 における問題の早期認識の可能性に関する検討 ·········· 20

第3編    関係者の責任 ························································· 21

  第1       深山祐助氏及び当時の経営陣 ······································· 21

  第2       商品開発担当部署役職員及び設計担当部署役職員 ····················· 22

  第3       工事担当部署役職員 ··············································· 23

  第4       一級建築士の資格を有する従業員 ··································· 23

  第5       早期発見・対忚ができなかったことについての落ち度 ················· 23

第4編    再発防止策の提言 ····················································· 24

  第1       不備を防ぐための方策 ············································· 24




                                   - 1 -
       1   業務量を的確に見通し、それに対忚できる人員を確保し、必要な業務体制を
           構築する························································· 24
       2   社内だけでなく、施工業者も含めた情報提供・教育を実施する ········· 25
       3   適切な施工管理を実現するため、事前に詳細なシミュレーションを行い、
           チェックポイントを適切に設定する ································· 25

  第2       早期発見・早期対忚できるようにするための方策 ····················· 25

       1   リスク情報を吸い上げて、検証する仕組みを構築する ················· 25
       2   図面等の重要書類の作成者や承認手続を明確化する ··················· 26
       3   重要書類の保管・管理のルールを明確化する ························· 26

第5編    結語 ································································· 26




                                   - 2 -
第1編    本調査の概要


第 1 本調査の経緯


 2019 年(平成 31 年)2 月 21 日、株式会社レオパレス 21(以下「レオパレス 21」という。)
から、同社と利害関係を有しない西村あさひ法律事務所に対し、同社が過去に施工した共
同住宅において発覚した不備について、原因究明等のための調査の依頼があった。その
後、同月 27 日、レオパレス 21 の取締役会において、外部調査委員会(以下「当委員会」と
いう。)の設置が正式に決議され、同日、当委員会が設置された。当委員会は上記不備に
ついて調査を実施し、同年 5 月 29 日、レオパレス 21 に対して調査結果の報告を行った
(以下、同年 2 月 21 日の依頼に基づき、当委員会が実施した調査を「前回調査」といい、同
年 5 月 29 日付け「施工不備問題に関する調査報告書」を「前回報告書」という。)。その後、
2019 年(令和元)年 6 月 10 日、レオパレス 21 から、当委員会に対し、レオパレス 21 が設
計等を行い他社が施工した共同住宅において発覚した不備及び同社が施工した共同住宅に
おいて発覚した別の不備について、原因究明等のための追加調査の依頼があった(同依頼
に基づき当委員会が実施した調査を「本調査」という。)。


第 2 当委員会の体制


 当委員会は、下記 3 名の委員で構成されている。
  委員長 伊藤 鉄男     (西村あさひ法律事務所 弁護士)
  委員    木目田 裕   (同)
  委員    山本 憲光   (同)
 なお、いずれの委員も、本調査以前にレオパレス 21 から法律事務の委任を受けたこと
はなく、同社との間に利害関係はない。また、委員らが所属する西村あさひ法律事務所と
レオパレス 21 との間にも、本調査の受任時点において、利害関係はない。
 当委員会は、本調査を実施するに当たり、西村あさひ法律事務所に所属する、いずれも
レオパレス 21 と利害関係を有しない弁護士 20 名を調査補助者として任命した。
 また、当委員会は、本調査の独立性・客観性を確保するため、日本弁護士連合会「企業
等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠し、また、日本取引所自主規制法人
「上場会社における不祥事対忚のプリンシプル」の「②第三者委員会を設置する場合におけ
る独立性・中立性・専門性の確保」を踏まえて調査を行った。




                         - 1 -
第 3 本調査の目的及び対象範囲


    本調査の目的は、レオパレス 21 の 2019 年(令和元年)6 月 10 日付けプレスリリースに記
載されているとおり、①同社が設計等を行った1物件のうち、同社が土地所有者(オーナー)
から建築を請け負うのではなく、自ら発注者として施工業者に建築を発注している物件
(以下「他社施工物件」という。)で発覚した、小屋裏等に界壁を施工していない不備(以
下、かかる不備に関する問題を「他社施工物件問題」という。)、②同社が施工した鉄骨造
物件のうち、法令の規定により耐火建築物として施工すべきであった物件(以下「鉄骨耐火
建築物」という。)の一部において、界壁が建築基準法 27 条及び 61 条により求められる耐
火構造、並びに 1992 年(平成 4 年)6 月 26 日改正建築基準法 30 条の 2(現 30 条)により求
められる遮音に係る建設大臣認定2(以下「大臣認定」という。)の仕様に適合していなかった
不備(以下、かかる不備に関する問題を「鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題」という。)につい
て、事実の確認及び原因の究明を行うとともに、関係者の責任3について検討し、併せて再
発防止策の提言を行うことである。
    なお、本調査は、上記①及び②の施工不備(以下、まとめて「本件不備」ということがあ
る。)の存否についてレオパレス 21 が行っている現地調査(以下「物件調査」という。)の結
果が正確であることを前提としている。


第 4 本調査の方法


    当委員会は、①レオパレス 21 に現存する各種図面(一般図、確認申請図、施工図、施工
マニュアル等)、取締役会議事録、各種会議資料、稟議書、各シリーズの開発関係資料等
の収集・精査、②レオパレス 21 の役職員についてのデジタル・フォレンジック調査、③
関係者に対するヒアリング(32 名、合計 49 回)、④施工業者アンケート(本件不備が発覚し
た物件を施工した施工業者中の 40 社中 6 社が回答)等を行った。




1
     レオパレス 21 が設計等を外部の設計事務所等に委託する場合も含まれる。
2
     2001 年(平成 13 年)1 月以後に建築された物件の仕様には、国土交通大臣認定が適用される。
3
     本報告書は、関係者の法的責任の有無について判断するものではない。




                            - 2 -
第2編     本調査の結果判明した事実


第 1 他社施工物件問題


1    他社施工物件問題の概要


(1) 問題の概要


    他社施工物件において、小屋裏等界壁に不備があることが判明している。以下では、対
比のため、レオパレス 21 がオーナーから建築を請け負う(元請となる)物件を便宜上「自社
施工物件」ということがある。
    レオパレス 21 は、2018 年(平成 30 年)4 月 27 日及び同年 5 月 29 日にレオパレス 21 が
公表した、自社施工物件において小屋裏等において界壁を施工していない不備(以下、か
かる不備に関する問題を「小屋裏等界壁問題」という。)の発覚を受け、同年 4 月以降、全
ての自社施工物件を対象とする調査(全棟調査)4を実施していたところ、当該調査の過程に
おいて、自社施工物件だけでなく、他社施工物件においても小屋裏等に界壁が施工されて
いない不備が存在することが発覚した。当委員会の前回調査は自社施工物件を対象とする
ものであったが、本項は他社施工物件を対象するものである。


(2) 他社施工物件の概要


    レオパレス 21 は、1973 年(昭和 48 年)に不動産仲介業を主たる事業として営業を開始
し、1981 年(昭和 56 年)に戸建て住宅の建売を開始後、1984 年(昭和 59 年)からアパート
建売(分譲)事業を行うようになった。アパート建売(分譲)事業とは、同社が自ら土地を仕
入れ、施工業者に発注を行ってその土地上に共同住宅を建築し、土地と共同住宅を一体の
ものとして顧客に販売するというものである。かかるアパート建売(分譲)事業において建
築されたのが他社施工物件である。
    このアパート建売(分譲)事業は成功し、年々規模を拡大していった。他社施工物件のう
ち在来の各年の年間の竣工数は、1985 年(昭和 60 年)は 52 棟、1986 年(昭和 61 年)は 170
棟であったが、1988 年(昭和 63 年)には 956 棟となり、1990 年(平成 2 年)には 1,009 棟ま
で増加した。販売数が増えるにつれ、よりビジネスを効率化することが意識され、前回報
告書 9~10 頁で述べたとおり、レオパレス 21 は、1989 年(平成元年)9 月に販売を開始し
たキュービクル以降、経験を積んだ職人を必要とせず、工場で作成した部材をプラモデル
のように組み立てることで誰にでも施工ができる規格化住宅の開発を行うようになった。


4
     前回報告書 2 頁参照。




                              - 3 -
    その後、いわゆるバブル崩壊により土地の仕入れが困難になったり、レオパレス 21 と
して共同住宅の建築費用が重い負担になると、レオパレス 21 は、それまでのアパート建
売(分譲)事業から、アパート請負建築(注文建築)事業とアパート一括借上による賃貸事業
へとビジネスの軸足を転換していった。他社施工物件のうち在来の施工数は、1991 年(平
成 3 年)には 742 棟だったが、1992 年(平成 4 年)には 45 棟となり、1993 年(平成 5 年)に
は 6 棟のみとなった。そのため、他社施工物件の多くは 1992 年(平成 4 年)頃までに建
築・販売されたものである。


(3) 問題の傾向


    物件調査によれば、不備のある物件には、界壁が施工されていないもの(A 類型)と界壁
が施工されているが不備のあるもの(B 類型)が判明しているが、当委員会としては、限ら
れた時間内で他社施工物件問題の傾向を把握し、その原因・背景を分析するため、A 類型
を重視して検討を行った。
    物件調査の結果(2019 年(令和元年)7 月 24 日時点のもの)によれば、他社施工物件の 9
割以上(4,745 棟中 4,400 棟)が在来であり、不備があった物件の 8 割近く(142 棟中 110
棟)が在来である。このように他社施工物件の棟数も不備の件数も在来が圧倒的に多く、
他社施工物件問題はほとんど在来についての問題であるといえる。
    在来とは、レオパレス 21 がアパート建売(分譲)事業を開始した初期の頃から建築され
ている、在来工法5の木造物件を指しており、特定のシリーズの名称ではない。在来の他社
施工物件 4,400 棟について、A 類型の不備の件数及び不備率を竣工時期を見ると、1985 年
(昭和 60 年)の不備率は 50.0%(判定済み64 棟中 2 棟)、1986 年(昭和 61 年)の不備率は
42.1%(判定済み 19 棟中 8 棟)、1987 年(昭和 62 年)は 27.4%(判定済み 95 棟中 26 棟)で
あるが、その後は 10%程度となり、1994 年(平成 6 年)以降は、不備の件数は 0 となって
いる。
    また、在来には他社施工物件だけでなく自社施工物件も存在するところ、在来の自社施
工物件について、A 類型の不備の件数及び不備率をみると、1985 年(昭和 60 年)は 25.0%
(判定済み 4 棟中 1 棟)、1986 年(昭和 61 年)は 33.3%(判定済み 15 棟中 5 棟)と高いもの
の、1987 年(昭和 62 年)以降はおおむね 7%から 14%と、それ以前の 2 分の 1 から 3 分の
1 程度まで低下している。1985 年(昭和 60 年)から 1993 年(平成 5 年)までの在来の他社施
工物件と自社施工物件の不備率を比較すると、1987 年(昭和 62 年)は、他社施工物件の不
備率(27.4%)が自社施工物件の不備率(7.1%)に比べて特に高いが、それ以外は同じよう
な傾向となっている。


5
     前回報告書用語表 2 頁参照。
6
     物件調査が完了し、不備の有無の判定が済んだ物件。




                             - 4 -
2    他社施工物件における業務フロー


    上記 1(2)のとおり、他社施工物件の多くは、1992 年(平成 4 年)頃以前に建築・販売さ
れていたものである。
    アパート建売(分譲)事業において土地の購入を担当していた仕入担当部署や他社施工物
件の販売を行っていた営業担当部署がなくなった 1993 年(平成 5 年)頃以前の具体的な業
務フローは、下記(1)ないし(7)のとおりである。


(1) 土地の仕入れ


    仕入担当部署が、不動産業者から入手した情報に基づき、共同住宅の用地として利用で
きそうな土地を見つけると、設計担当部署が作成したラフプラン(当該土地に建てられそ
うな共同住宅の形状や部屋数が分かるよう間取りや外観を記載した手書きの資料)を踏ま
えて、利回りを算定し、賃貸物件として合理的な収支となりそうであれば、土地の所有者
から共同住宅の用地を取得した。


(2) 企画・設計


    次に設計担当部署が、確認申請図を作成し、また場合によっては施工図も作成し、それ
らの図面を工事担当部署や営業担当部署に提供していた。建築確認申請は、レオパレス 21
に所属する建築士の資格を有する従業員が7、設計者として、建築士の資格に基づき行って
いた。
    レオパレス 21 がビジネスの軸足を請負建築事業に転換し、規格化住宅の建築を請け負
うようになる以前は、設計担当部署が参照すべきマニュアル等は存在せず、設計担当部署
が個々の物件ごとに一から図面を作成していた。物件ごとに毎回一から図面を作成してお
り、業務の統一化がなされておらず、確認申請図以外にどのような図面を作成するか、そ
の図面にどのような記載をするかは、個々の担当者の判断に委ねられていた。当委員会が
図面を確認した限り、図面の記載方法は必ずしも統一されておらず、図面に記載する事項
は担当者によってまちまちであった(界壁に関する図面の記載については下記 4 参照。)。




7
     他社施工物件の図面には、ミヤマ一級建築士事務所、ミヤマホーム一級建築士事務所等の名義で作
     成されたものも存在する。株式会社ミヤマとミヤマ一級建築士事務所等は実質的に一体として運営
     され、ミヤマ一級建築士事務所等は実質的には株式会社ミヤマの建築部門の一部署であったと思わ
     れる。




                         - 5 -
(3) 施工


    工事担当部署は、施工業者の業務量等を勘案した上で、施工業者に対し、物件の施工を
依頼する。施工業者が依頼を受諾した後、レオパレス 21 は施工業者との間で物件の建築
請負契約を締結していた。その際、工事担当部署は、設計担当部署から受領した確認申請
図及び施工図を施工業者に渡していた。
    レオパレス 21 が起用した当時の施工業者の中には、共同住宅の建築の経験がない又は
乏しい事業者もいた。
    自社施工物件では、レオパレス 21 がオーナーから物件の建築を請け負っていたため、
同社の社員が主任技術者(又は監理技術者。以下同じ。)となっていたが、他社施工物件に
おいては、レオパレス 21 は発注者であり、施工業者が請負人であるため、自社施工物件
とは異なり、施工業者の担当者が主任技術者となっていた。
    レオパレス 21 がビジネスの軸足を請負建築事業に転換していき、規格化住宅の請負建
築を開始する以前は、界壁の施工に必要な資材も含め、施工に必要な資材は基本的に施工
業者が自ら調達していた。
(4) 施工状況の確認・検査


    他社施工物件においては、レオパレス 21 は発注者であり、施工業者が請負人であった
が、レオパレス 21 の工事担当部署が、主に工程管理を目的とした施工状況の確認や検査
を行うこととなっていた。
    具体的には、週に 1 回程度、工事担当部署が施工現場を訪問し進捗を確認するほか、①
配筋検査、②上棟検査、③木工事完了検査、④竣工検査及び⑤キューブ検査8を行うことと
なっていた。①配筋検査、②上棟検査、③木工事完了検査、④竣工検査(④竣工検査及び
⑤キューブ検査は竣工時に同時に行われる。)は、それぞれレオパレス 21 が施工業者に建
築請負代金の分割支払いを行うタイミングともなっており、レオパレス 21 は、施工業者
から検査依頼書の提出を受け、施工現場の写真等を貼付した検査記録表を作成させ、その
確認をするとともに、施工現場で進捗を確認することにしていた。
    しかし、当時、検査の際に施工現場を訪問しない、又は訪問するとしても頻度が少な
く、現場への滞在時間も短いなど、施工状況の確認や検査が十分に行われていたとはいえ
ない状況であった。その一番の理由は、工事担当部署の人員が不足していたことにある。
特に、1988 年(昭和 63 年)から 1991 年(平成 3 年)まで、レオパレス 21 においては、施工
物件数が年間で 700~1,100 件に達していたが、これに対して、建築士資格を有する者で
工事課に在籍していた者は 3~16 名にとどまっており、工事担当部署全体の人員も 9~36
名にとどまっていた。これらの人員の中には新入社員も含まれており、実際に十分な検査


8
     賃貸物件としての適切性を検査するものである(前回報告書 31 頁参照。)。




                          - 6 -
ができる者はわずかであった。ある工事担当部署の従業員によれば9、当時、各工事担当部
署の従業員は 1 人当たり 30~40 件ほどの工事現場を担当しており、1 日に 6 箇所から 7 箇
所の工事現場を訪問する必要があったとのことであり、1 つの工事現場の確認に割ける時
間は、1 週間に 1 度、5 分程度と極めて短時間であったとのことであった。この点、別の
工事担当部署の従業員によれば、十分に施工状況の確認や検査を行うとすれば、同時並行
で担当できる現場の数は 3 物件程度、年間でも 10~15 件程度であるとのことであり、明
らかに人員が不足している状況にあった。


(5) 工事監理


    設計担当部署には建築士の資格を有する従業員が配置されており、それらの建築士の資
格を有する従業員は、工事監理者として、建築士の資格に基づき、工事監理を行うことと
なっていた。しかし、設計担当部署の従業員は多忙であり、工事監理者が自ら建物の施工
現場に赴き工事監理を行うことはあまりなかった。また、工事監理者でない設計担当部署
の従業員が施工現場を訪問することがあったが、その結果は必ずしも工事監理者に報告さ
れておらず、設計担当部署の他の従業員を通じた工事監理もほとんど行われていなかっ
た。さらに、工事監理者は、工事担当部署から上記(4)の施工状況の検査の際に撮影され
た施工状況等の写真の共有を受けたり、口頭にて施工状況等について報告を受けたりする
こともあったが、上記(4)のとおり、工事担当部署が多忙であったこともあり、工事担当
部署から写真が送付されてこない場合も多く、工事担当部署を通じた工事監理もあまり行
われていなかった。また施工状況等に関する情報共有を受けたとしても、工事監理者は、
建物の仕上がりが想定と大きくずれていないか等を確認するにとどまっており、当該情報
を基に建物の施工状況が設計図書どおりとなっているかの確認はほとんど行っていなかっ
た。このように、工事監理は非常に不十分なものにとどまっていた。
    工事監理が非常に不十分なものにとどまっていた理由としては、設計担当部署に建築士
の資格を有する従業員が不足していたことがある。当時のレオパレス 21 においては、設
計担当部署は図面の作成と建築確認申請業務に専念することとされており、人員配置もそ
れを前提としたものとなっていた。そのため、設計担当部署に工事監理を行うことが可能
なほどの人員がいなかった。特に、1988 年(昭和 63 年)から 1991 年(平成 3 年)まで、レオ
パレス 21 においては、前述のとおり施工物件数が年間で 700~1,100 件に達していたが、
これに対して、建築士資格を有する者で設計担当部署に在籍していた者は、4~25 名にと
どまっていた。この点、ある建築士資格を有する者によれば、十分に工事監理を行うとす
れば、補助者がいたとしても同時並行で担当できる現場の数は 5 物件程度、年間でも 15~
20 件程度であるとのことであり、明らかに人員が不足している状況にあった。


9
     本報告書において、ヒアリングにおける発言者の所属部署は本件不備発生当時のものとしている。




                        - 7 -
(6) 営業活動及び不動産の売却


    レオパレス 21 がアパート建売(分譲)事業を開始した初期の頃は、建築確認が取れた
後、建築が完了するまでの間に、顧客との間で不動産販売契約を締結していた。しかし、
その後、いわゆるバブルの崩壊に伴い、顧客が契約締結に慎重となり、物件の建築が完了
する前に不動産販売契約を締結することは少なくなっていった。1991 年(平成 3 年)頃に
は、物件の建築が完了し、顧客が物件の見学を行った後に不動産販売契約を締結するよう
になった。
    営業担当部署は、直接物件の設計や施工に関与することはなかった。しかし、顧客から
物件の完成時期を早めてほしい等の要望があった場合には、営業担当部署の役職員は、工
事担当部署に対して工期を短縮するよう要求を行うことがあった。


(7) 物件の引き渡し


    物件の建築が完了すると、工事担当部署は、施工業者から物件引き渡しを受けていた。
物件の引き渡しは、通常、施工業者が最終の請求書を出す際に、レオパレス 21 を訪問し
て物件の鍵等を渡すことによって行われていた。引き渡しに当たって、工事担当部署の役
職員が施工現場を訪問したり、施工状況を改めて確認したりすることは行われていなかっ
た。これは、建築の完了の時点で、顧客との間で不動産売買販売契約が締結されている場
合も、そうでない場合も、同じであった。
    また、建築の完了の時点で、顧客との間で不動産売買販売契約が締結されている場合、
顧客から要望があれば、営業担当部署が顧客を現地に案内することもあった。しかし、顧
客のほとんどは投資目的等のために物件を購入しており、自ら居住するわけではないた
め、顧客が現地を訪問するということは稀であった。


(8) 規格化住宅の提供開始後における業務フロー


    レオパレス 21 がビジネスの軸足をアパート建売(分譲)事業から請負建築事業に転換し
ていった以後は、他社施工物件と自社施工物件とで業務フローに違いはなく、他社施工物
件においても前回報告書 18 頁以下に記載した業務フローとなっていた。


3    小屋裏等界壁の施工の要否


(1) レオパレス 21 における扱い


    設計担当部署の従業員及び工事担当部署の従業員は、いずれも、ネイルシリーズの開発




                       - 8 -
より以前の段階において小屋裏等界壁の施工が不要であるといった議論がなされた記憶は
なく、少なくとも他社施工物件(建売)については、小屋裏等界壁は当然に必要であったと
述べている。そして、下記 4(2)のとおり、図面検証の結果、記載方法は図面によってまち
まちではあるものの、A-1 の不備が判明している物件のうち図面が保存されていた 66 棟全
ての図面に小屋裏等界壁を施工する旨が記載されており、かつ、下記 4(3)のとおり、レオ
パレス 21 の工事担当部署が作成した施工マニュアルにおいても、小屋裏等界壁を施工す
る旨が記載されている。
    これらの事情に照らすと、設計担当部署及び施工担当部署のいずれにおいても、小屋裏
等界壁の施工は必要であるとされていたものと考えられる。
    また、仕入担当部署及び営業担当部署においては、設計や施工に直接関わることがな
く、建築についての知識も関心もなかったとのことであり、仕入担当者及び営業担当者は
小屋裏等界壁の施工の要否について明確な意識を持っていなかったものと考えられる。


(2) 施工業者における扱い


    当委員会によるヒアリングにおいて、当然小屋裏等に界壁を施工する必要があった旨述
べる施工業者の担当者がいた。また、施工業者に対するアンケートの結果において、回答
した全ての施工業者が、当時において小屋裏等界壁の施工は必要であったと回答してい
る。ただし、当委員会によるヒアリングにおいて、レオパレス 21 から共同住宅の建築の
注文を受ける以前は、戸建て住宅の建築しか請け負ったことがなかったため、当初は小屋
裏等界壁の施工の要否に関する知識がなかったと思う旨述べた施工業者の担当者もおり、
共同住宅の施工の経験が乏しい施工業者においては、当初は小屋裏等界壁の施工の必要性
を明確には認識していなかったことがうかがわれる。


4    図面検証について


(1) 図面検証の概要


    当委員会は、レオパレス 21 から提供を受けた、2019 年(令和元年)7 月 24 日時点の物件
調査の結果を基準として図面検証を実施した。レオパレス 21 の物件調査結果によれば、
同調査の対象となった物件のうち、合計 797 棟で他社施工物件問題の不備が認められた。
しかし、それら 797 棟全ての物件について限られた時間内に図面を検証することは困難で
あったため、当委員会は、特に小屋裏全体に界壁が施工されていない類型(A-1 類型)を重
視して検討を行うこととした。
    当委員会は、これまでに A-1 の不備が判明している 70 棟の他社施工物件の図面につき
レオパレス 21 における保存の有無を確認し、図面が保存されていなかった 4 棟を除く 66
棟の図面の検証を行った。




                          - 9 -
 図面は、①確認申請図、②施工図、③①と②のいずれに分類されるのか不明であるも
の、の 3 種類に分類されるが、当委員会は、図面が保存されていた 66 棟に関して、現存
する全ての種類の図面を検証の対象とした。


(2) 図面検証の結果


 図面検証の結果、記載方法は図面によってまちまちであるものの、上記 66 棟全ての図
面に小屋裏等界壁を施工する旨の記載がなされていることが確認された。具体的には、表
1 のとおり、32 棟で矩計図の住居部分等に小屋裏等界壁の記載を示すハッチングなどが記
載され、小屋裏等界壁を施工する旨記載されていたこと、57 棟で X-X 断面図にハッチング
などが記載され、小屋裏等界壁を施工する旨記載されていたこと、26 棟で Y-Y 断面図に
ハッチングなどが記載され、小屋裏等界壁を施工する旨記載されていたこと、32 棟で仕上
表ないし仕様書の界壁部分の欄に「界壁は屋根裏まで達する」と記載され、小屋裏等界壁を
施工する旨記載されていたこと、9 棟でその他の図面に小屋裏等界壁を施工する旨記載さ
れていたことが確認された。
 なお、2019 年(令和元年)6 月 21 日付けの当委員会作成の「外部調査委員会による調査の
状況について」においては、小屋裏等界壁を施工する旨の記載がなされた図面が存在しな
い物件が 5 棟存在するとしていたが、その後の図面検証及びヒアリング調査の結果、これ
ら 5 棟のうち 1 棟については、レオパレス 21 の物件調査により界壁が施工されていたこ
とが判明し、他方、これら 5 棟のうち 4 棟については、前回調査において検証の対象とし
ていなかった平面図や矩計詳細図などに小屋裏等界壁を施工する旨の記載がなされている
ことが判明した。


表1
A-1の不備が判明し                                  仕上表ないし仕様書の
           矩計図の住居部分等に X-X断面図に小屋裏 Y-Y断面図に小屋裏            その他の図面に小屋
ている物件のうち図                                   界壁部分の欄に、界壁
           小屋裏等界壁を施工す 等界壁を施工する旨 界壁等を施工する旨              裏界壁等を施工する旨
面が保存されていた                                   は屋根裏まで達すると
           る旨記載されている物件 記載されている物件 記載されている物件              記載されている物件
     棟数                                      記載されている物件
     66         32         57         26         32         9

      複数の図面に小屋裏等界壁を施工する旨が記載されている物件については、それぞれの項目で計

     上している。そのため、A-1 の不備が判明している物件のうち図面が保存されていた棟数である 66

     棟よりも、各項目の合計棟数の方が多くなっている。


(3) 施工マニュアルにおける記載


 レオパレス 21 から提供を受けた 1988 年(昭和 63 年)5 月付け及び 1990 年(平成 2 年)2
月付けの施工マニュアルには、いずれも、界壁について、「尚、上部は小屋裏迄、下部は
土台下端迄とし、全て縦張りとする」との記載がなされており、また、「屋根裏まで達す
る」という文字とともに界壁が屋根裏まで達した図が記載されている。かかる記載は、小




                             - 10 -
屋裏等界壁の施工が必要であることを記載したものと認められる。


5    不備が生じた原因


    上記 2 のとおり、他社施工物件においては、①仕入担当部署が土地を仕入れ、②設計担
当部署が図面を作成し、③工事担当部署が施工業者に施工を発注していた。そして、④レ
オパレス 21 からの発注に基づき施工業者が施工を行っており、レオパレス 21 では、⑤工
事担当部署が施工状況の確認や検査を行うこととされ、⑥設計担当部署の建築士の資格を
有する従業員が工事監理を行うこととされていた。こうした物件は、⑦営業担当部署が販
売を行っていた。物件の建築が完了すると、⑧工事担当部署が施工業者から物件の引き渡
しを受けていた。
    まず、②設計担当部署に関しては、上記 4(2)のとおり、同部署が作成した図面上は小屋
裏等界壁の施工が必要である旨が記載されていることは認められる。しかし、図面の記載
方法はまちまちであり、ハッチングや文字によって小屋裏等界壁が明確に記載されていな
い図面もあったことから、図面の記載が分かりにくい場合があったものと思われる。
    また、③工事担当部署に関しては、同部署が施工業者に施工を発注する段階において、
工事担当部署は設計担当部署から受領した図面の内容を精査しておらず、図面を施工業者
に渡す際に、図面の読み方について説明を行ったり、施工業者に対し、施工上の注意点を
説明するための説明会を開催したりするといったこともなかった。
    さらに、⑤工事担当部署による施工状況の確認や検査及び⑥設計担当部署の建築士の資
格を有する従業員による工事監理は非常に不十分なものであった。上記 2(4)のとおり、工
事担当部署による施工状況の確認や検査については、検査の際に施工現場を訪問しない、
訪問するとしても頻度が少ない、現場への滞在時間も短いなどの問題があり、十分には行
われていなかった。そして、上記 2(5)のとおり、工事監理は、工事監理者自ら行うことは
あまりなく、設計担当部署の他の従業員や工事担当部署からも十分な報告や情報共有を受
けていなかった。また、⑧物件の引き渡しの段階においては、竣工の時点で、工事担当部
署が竣工検査を行い、それを踏まえて必要な手直し等が行われているということが前提と
なっていたが、前述のとおり検査は十分には行われていなかった。
    他方、④施工業者の施工に関し、上記 3(2)のとおり、施工業者の中には、レオパレス
21 から共同住宅の建築の注文を受ける以前は、戸建て住宅の建築しか請け負ったことがな
かったため、当初は小屋裏等界壁の施工の要否に関する知識がなかったと述べている者も
いるように、施工業者側の知識や経験も不十分だった。
    以上に対し、①仕入担当部署及び⑦営業担当部署は、設計や施工に直接関わることがな
かったことから、仕入れや販売の方法等が他社施工物件問題の原因になったとは考えにく
い。
    また、当委員会によるヒアリングにおいて、30 年以上前においては、建築業界全体とし
て現在ほど法令遵守の意識が高くなかったことが根本的な原因であると述べる者が存在し




                      - 11 -
ている。施工業者のアンケートにおいて当時と現在では法令遵守の意識が違う点を指摘し
ているものもあり、当時、今より法令遵守の意識が低い施工業者も少なからず存在してい
たと思われる。
    また、上記 1(2)のとおり、レオパレス 21 がビジネスの軸足をアパート建売(分譲)事業
から請負建築事業に転換した以後も他社施工物件における不備は存在している。その原因
は、自社施工物件であるネイルシリーズ及び 6 シリーズにおける小屋裏等界壁問題につな
がった原因が、おおむね当てはまると考えられる。具体的には、①当時のレオパレス 21
において、「走りながら考える」との状況の下、経営危機からの脱却と請負建築事業の拡大
が最優先され、新シリーズの開発が相次ぐなど繁忙を極める中で、商品開発担当部署等
に、法令遵守・品質確保や支店への適切な図面・マニュアル送付等に必要な人的リソース
が手当てされていなかったこと、②同様に、支店の設計や工事の担当部署においても、人
員が乏しい反面で業務過多となっており、工事担当部署では 1 人で数十件の現場を持って
いたことなど、施工管理が非常に不十分であったこと、③工事監理者となる建築士が少数
の特定者に偏っており、抱えている物件数が非常に多かったことなど、工事監理業務も非
常に不十分であったこと等を、原因として挙げることができる。


6    レオパレス 21 における問題の早期発見の可能性についての検討


    当委員会のヒアリングにおいて、レオパレス 21 の複数の従業員が、「1988 年(昭和 63
年)頃、レオパレス 21 の物件の入居者が小屋裏を伝って他の入居者の居室に侵入し窃盗に
及んだという事件があり、その際、レオパレス 21 では小屋裏等界壁が施工されていない
物件があることを認識し、一斉点検を行ったことがある」旨述べている。しかし、その後
も不備のある物件があることやそれ以前に施工された物件の不備が改修されていないこと
等からすれば、通常「一斉」点検と称する場合に想定されるような網羅的な点検が行われた
とは考えられず、実態としては狭い範囲で限られた点検が行われたに過ぎなかったものと
推測される。レオパレス 21 は、この出来事の際に、網羅的かつ確実に不備を発見できる
ような適切な方法で、文字どおりの「一斉」点検を行うべきであった。
    前回報告書 67 頁以下等でも述べているように、レオパレス 21 においては、品質問題に
関するリスク情報が関連部署等に水平展開されるリスク感知体制の不備、経営陣を含む役
職員のリスク感度の欠如、個別の物件レベルでの施工不備の問題へと矮小化してしまおう
とする事なかれ意識があった。同じことは、この 1988 年(昭和 63 年)当時の窃盗事件をめ
ぐる対忚についても等しく当てはまると考えられる。




                        - 12 -
第 2 鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題


1     鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題の概要


     レオパレス 21 は、小屋裏等界壁問題の発覚を受け、2018 年(平成 30 年)4 月以降、全て
の自社施工物件を対象とする調査(全棟調査)10 を実施していたところ、2019 年(平成 31
年)2 月 25 日に調査を実施した物件において、当該物件は鉄骨耐火建築物であるにもかか
わらず、界壁が、当該物件について採用された耐火構造の界壁に係る仕様に適合していな
いことが発覚した。そこで、レオパレス 21 は、同月 26 日、国土交通省に上記内容を報告
し、図面調査及び物件調査を開始することとした。


2     物件調査・図面調査の結果及び本調査の方針


(1) 物件調査の結果


     鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題が発覚した後に、レオパレス 21 は、同社が施工した鉄
骨耐火建築物 2,295 棟の全てを対象として物件調査を進めているところである。現在にお
いても物件調査は継続中であるが、2019 年(令和元年)7 月 18 日時点で、616 棟について完
了している。このうち界壁が大臣認定の仕様に適合していないこと(以下「物件不備」とい
う。)が認められた物件は、合計で 129 棟である。
     現時点で判明している物件不備の主たる類型は、以下のとおりである。


      ①    平ラス11が施工されていない類型
          ゴールドボルト及びゴールドレジデンスの一部の物件において、その構造リストで
      は、耐火構造の界壁の仕様として、大臣認定「W1035」(厚さ 12mm 以上の石膏ボードを 2
      枚重ね、さらにその下に平ラスを重ねることが求められる仕様)を採用し、これに準
      拠する旨が記載されていたにもかかわらず、実際には、石膏ボードの下に平ラスが施
      工されていなかった。
      ②    誤った面材が施工されている類型
          ゴールドレジデンス、コングラツィア等において、その構造リストに記載された大
      臣認定が定める仕様とは異なる面材が界壁に施工されていた。各物件において、構造
      リストに記載された大臣認定の種類は様々であるが、いずれの大臣認定においても、

10
      前回報告書 2 頁参照。
11
      平ラスとは、鋼板をエキスパンデット状に切り伸ばした状態の製品を指す。大臣認定「W1035」では、
      「平ラス F700」(旧称:平ラス 3 号)と呼ばれる種類の平ラス(JIS 規格番号:JISA5505)を使用する必
      要がある。




                               - 13 -
      強化石膏ボード12の施工が求められているにもかかわらず、2 枚張られた面材の両方
      又は一方について、強化石膏ボードではない通常の石膏ボードが用いられていたり、
      大臣認定の仕様上求められる厚さを下回っていたりする不備があった。


(2) 図面調査の結果


     レオパレス 21 は、同社が施工した鉄骨耐火建築物 2,295 棟の構造リスト及び内部仕上
表を調査し、構造リスト及び内部仕上表 13が保存されている場合には、構造リストに記載
された大臣認定番号を特定した上で、当該大臣認定の仕様と、構造リスト及び内部仕上表
に実際に記載された仕様との整合性を確認した(以下「図面調査」という。)。レオパレス 21
による図面調査は、基準日現在、対象となる鉄骨耐火建築物 2,295 棟全てについて完了し
ている。このうち、レオパレス 21 による物件調査によって、物件不備が認められた物件
129 棟について、図面調査の結果をまとめたものが表 2 である。


表 2 物件不備が認められた物件の図面調査結果
                                            不備及び
        商品名      不備及び齟齬   不備のみ       齟齬のみ          図面なし   合計
                                            齟齬なし
      ゴールドボルト       0       0         0      24      4     28
     ゴールドレジデンス     18      13         0      23     10     64
        その他         0       0         0      33      4     37
        合計         18      13         0      80     18    129


     表 2 のとおり、物件不備が認められた物件(129 棟)のうち、図面に不備14又は齟齬15が認
められた物件は 31 棟あり、これらは全て、ゴールドレジデンスの物件であった。物件不
備が認められたゴールドレジデンスは 64 棟であるが、その物件の図面が存在する 54 棟の
うち 31 棟で図面に不備又は齟齬が見つかった。他方、ゴールドボルト、ニューゴールド
レジデンス、コングラツィア、S 造、ロイヤルレジデンス、ヴィラアルタ、ヴィラスペリ
オ及びプロフィードについては、物件不備が認められたものの、図面には不備、齟齬のい
ずれも認められなかった。
     なお、実際に、図面調査によって発見された「不備」及び「齟齬」の概要は、以下のとおり
である。

12
      強化石膏ボードとは、石膏ボードの芯材部分に無機繊維材料を混入したものを指す。通常、石膏
      ボードよりも高い耐火性能を有することから、耐火構造、準耐火構造、防火構造の建築物の材料と
      して使用される。
13
      2,295 棟のうち、124 棟は、構造リスト及び内部仕上表が現存せず、仕様が不明であった。
14
      レオパレス 21 によれば、「図面に不備がある」とは、当該物件について作成された構造リストと内部
      仕上表の一方又は両方について、その記載が大臣認定に適合しない仕様となっていることを指す。
15
      レオパレス 21 によれば、「図面に齟齬がある」とは、当該物件について作成された構造リストと内部
      仕上表の記載に齟齬があることを指す。




                            - 14 -
      ①   図面調査によって発見された「不備」
           ゴールドレジデンスの一部の物件において、構造リストでは、耐火構造の界壁
          として、大臣認定「W1045」(厚さ 15mm 以上の強化石膏ボードを 2 枚重ね張りする
          仕様)に準拠する旨記載されているにもかかわらず、同構造リストの別の箇所及
          び内部仕上表には、界壁の具体的な仕様として、厚さ 12.5mm 又は 15mm の通常の
          石膏ボードを 2 枚重ねて張る旨記載されていた。すなわち、本来、耐火性能の高
          い強化石膏ボードの施工が求められているのに、強化石膏ボードではない通常の
          石膏ボードを使用する旨記載されているという不備があり、さらに、厚さが
          12.5mm と記載された物件については、本来使用されるべき厚さ 15mm を下回って
          いるという不備があった。
      ②   図面調査によって発見された「齟齬」
           ゴールドレジデンス並びに MIRANDA シリーズ、CLEINO シリーズ及び LEO NEXT
          シリーズ 16 のいずれかに属するモデル(以下、総称して「3 シリーズ商品」とい
          う。)の一部の物件では、同一物件の図面であるにもかかわらず、構造リストと
          内部仕上表とで、界壁の仕様について異なる内容が記載されていた。例えば、
          ゴールドレジデンスの物件においては、構造リストでは、界壁に、厚さ 15mm の
          面材を 2 枚重ねて張る旨記載されているのに対し、内部仕上表では、界壁に、厚
          さ 12.5mm の面材を 2 枚重ねて張る旨記載されていた。また、問題となる 3 シ
          リーズ商品の物件においては、構造リストには厚さ 12.5mm の面材を 2 枚重ねて
          張る旨記載されているのに対し、内部仕上表には厚さ 15mm の面材を 2 枚重ねて
          張る旨記載されていた。


3     ゴールドボルト及びゴールドレジデンスにおいて図面の不備・齟齬が生じた原因


(1) 耐火仕様の決定経緯等


     ゴールドボルトにおける耐火構造の界壁に係る仕様の決定経緯に関する客観的資料は、
本調査において一切発見されなかった。もっとも、耐火構造の界壁の仕様に係る大臣認定
番号が記載された一般図としての構造リストが作成されているところ、これらの一般図に
は、決裁者として A 氏又は B 氏の承認印が押印されている。この点、ゴールドボルト開発
当時の商品開発課は、深山祐助氏の直轄組織と位置付けられており17、深山祐助氏の下で
ゴールドボルトの開発が行われていたが、当時の開発関係者である C 氏、B 氏及び A 氏に

16
      ただし、MIRANDA シリーズ及び CLEINO シリーズの販売が開始された 2015 年(平成 27 年)4 月以降に
      着工された物件に限る。
17
      前回報告書 19 頁




                                - 15 -
対するヒアリングによっても、ゴールドボルトの耐火構造の界壁の仕様の決定に関して、
当時の社長であった深山祐助氏ほかの取締役が直接関わっていたという事情は伺われな
かった。さらに、前回報告書における小屋裏等界壁問題は、深山祐助氏から示された切妻
型の置屋根を用いるアイデアが端緒となり生じたものであり 18、また、界壁発泡ウレタン
問題19及び外壁仕様問題20も、同氏が発案した発泡パネルが端緒となり生じたものであった
が21、今回の鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題においては、耐火仕様のゴールドボルトを開
発することに関して、深山祐助氏ほかの取締役が何らかのアイデアを示したというような
事情は認められなかった。これらのことからすると、耐火構造の界壁の仕様は、商品開発
課において決定されていたものと認められる。
     ゴールドレジデンスにおける耐火構造の界壁に係る仕様は、ゴールドボルトと同様に、
商品開発課が決定していた。この点、ゴールドレジデンスの一般図としての構造リストの
中には、決裁者として、A 氏、B 氏及び C 氏の承認印が押印された図面が存在する。当時
の商品開発課においては、建築物の構造ごとに担当者が定められており、界壁などの主要
構造部を耐火構造、準耐火構造又は防火構造とするために、どのような仕様とするかの検
討は、当該構造部の担当者が行うこととなっていた。そのため、ゴールドレジデンスにつ
いても、耐火構造の界壁に係る仕様として、どの大臣認定を採用するかは、当時の商品開
発課における界壁の担当者が検討した上で、最終的に、A 氏又は B 氏に報告し、同人らの
了解を得て決定していた。
     なお、ゴールドレジデンスの開発時点に関しても、ゴールドボルトの開発時点と同様、
深山祐助氏が商品開発課に深く関与していたが、当時の開発関係者である A 氏、B 氏及び
C 氏に対するヒアリングによっても、深山祐助氏ほかの取締役が、耐火構造の界壁の仕様
の決定に直接関わっていたという事情は伺われなかった。また、ゴールドボルトと同様、
耐火仕様のゴールドレジデンスを開発することに関して、深山祐助氏ほかの取締役が何ら
かのアイデアを示したというような事情は認められなかった。


     レオパレス 21 による図面調査の結果によれば、ゴールドボルト及びゴールドレジデン
スの一般図のうち、耐火構造の界壁に係る仕様が記載された主な構造リスト及び内部仕上
表は、商品開発課での作成日によって、表 3 のとおり、7 種類に分けられる。なお、表 3
の No.2 までがゴールドボルトであり、No.3 以降がゴールドレジデンスである。

18
      前回報告書 40 頁
19
      2019 年(平成 31 年)2 月 7 日にレオパレス 21 が公表した、同社施工物件において界壁の断熱材とし
      て設計図書に記載されたグラスウール又はロックウールではなく、硬質ポリウレタンフォームが使
      用されていた不備に関する問題(前回報告書 2 頁)。
20
      2019 年(平成 31 年)2 月 7 日にレオパレス 21 が公表した、同社施工物件において天井部の施工仕上
      げが設計図書に記載された国土交通省告示の仕様に適合していなかった不備に関する問題(前回報告
      書 2 頁)。
21
      前回報告書 79 頁及び 116 頁




                              - 16 -
表 3 一般図における構造リスト及び内部仕上表の記載
                   構造リスト記載の
No.    作成日                     構造リストに記載された仕様             内部仕上表に記載された仕様
                    大臣認定番号
 1    1995/1/21      W2025    珪酸カルシウム板(12mm+12mm)重ね貼り     珪酸カルシウム板㋐12下地
 2    1995/11/2      W1035    石膏ボード(12.5mm+12.5mm)重ね貼り      石膏ボード㋐12.5下地
 3    1996/4/19      W1035    石膏ボード(12.5mm+12.5mm)重ね貼り   石膏ボード㋐12.5mm重ね貼り下地
 4    1996/5/27      W1045     石膏ボード(15mm+15mm)重ね貼り      石膏ボード㋐12.5mm重ね貼り下地
 5    1996/11/8      W1045     石膏ボード(15mm+15mm)重ね貼り      石膏ボード㋐15mm重ね貼り下地
 6    1996/11/18     W1045     石膏ボード(15mm+15mm)重ね貼り      石膏ボード㋐15mm重ね貼り下地
 7    1997/1/31      W1045     強化石膏ボード(15+15)重ね貼り        強化石膏ボード㋐15 重ね貼り下地



(2) 構造リスト・内部仕上表に不備又は齟齬が生じた原因等


    レオパレス 21 が物件の建築に際して作成する図面は、本店の商品開発課が作成する一
般図並びに支店の設計担当部署が作成する確認申請図及び施工図の 3 種類に大別され、各
図面に構造リスト及び内部仕上表が含まれている。このうち、本調査においては、耐火建
築物の具体的仕様が決定される一般図と、実際にそれに基づいて建築物が施工される施工
図が重要であることから、以下、一般図及び施工図それぞれの構造リスト及び内部仕上表
について不備又は齟齬が生じた原因等について述べる。


ア     一般図に含まれる構造リスト・内部仕上表に不備又は齟齬が生じた原因等


(ア) 大臣認定「W1035」を採用した構造リスト・内部仕上表について


 上記表 3 記載のとおり、ゴールドボルトにおける 1995 年(平成 7 年)11 月 2 日付けの一
般図(表 3No.2)及びゴールドレジデンスにおける 1996 年(平成 8 年)4 月 19 日付けの一般
図(表 3No.3)では、構造リスト上では、大臣認定「W1035」に準拠する旨記載され、本来、厚
さ 12mm 以上の通常の石膏ボードを 2 枚重ね、さらにその下に平ラスを重ねる仕様であっ
た。しかし、これらの構造リストの別の箇所及び内部仕上表では、界壁の具体的な仕様と
して、厚さ 12.5mm の通常の石膏ボードを使用することのみが記載されており、その下に
平ラスを重ねることまで記載されていなかった。
    当委員会によるヒアリング等の結果、大臣認定「W1035」を採用した構造リスト及び内部
仕上表において、通常の石膏ボードの下に平ラスを重ねる旨まで記載されなかった理由と
しては、当時、建築関係法令に関する知識に乏しかった担当者が、大臣認定「W1035」につ
いて、その仕様をきちんと確認しなかったために、平ラスを張る必要性に思い至らず、通




                                      - 17 -
常の石膏ボードを重ね張りするだけで仕様を満たすと誤解していたと考えられる22。


(イ) 大臣認定「W1045」を採用した構造リスト・内部仕上表に関する不備及び齟齬について


     上記表 3 記載のとおり、ゴールドレジデンスにおける 1996 年(平成 8 年)5 月 27 日付け
の一般図(表 3No.4)では、構造リスト上では、大臣認定「W1045」に準拠する旨記載され、本
来、厚さ 15mm の強化石膏ボードを 2 枚重ねる仕様であった。しかし、同構造リストの別
の箇所及び内部仕上表では、いずれにも、界壁の具体的な仕様として、単に「石膏ボード」
と記載され、強化石膏ボードではない通常の石膏ボードを施工する旨記載される不備が
あった。また、内部仕上表の方には、面材の厚さが 15mm を下回る 12.5mm と記載された点
でも不備があった。
     さらに、界壁の具体的な仕様として、内部仕上表において面材の厚さが 12.5mm と記載
されている一方で、構造リストでは面材の厚さが 15mm と記載されており、同じ界壁の仕
様に関する記載であるにもかかわらず、面材の厚さに関する記載が異なる齟齬もあった。
     当委員会によるヒアリング等の結果、図面作成担当者が、建築関係法令に関する知識に
乏しかったため、大臣認定「W1045」の具体的な仕様を誤解した可能性がある。
     また、齟齬が生じた原因としては、図面作成担当者が、大臣認定「W1035」を前提とした
一般図(表 3No.3)を基に、大臣認定「W1045」を前提とした一般図(表 3No.4)を作成する際
に、構造リストについては、「W1045」が求める面材の正しい厚さ(15mm)へと修正したもの
の、内部仕上表については、修正を失念したものと考えられる23。
     さらに、本来、若手社員の作成した図面の内容をチェックするはずの上長も、深山祐助
氏の指示を受けて行われた、短いスパンでの商品開発などに忙殺されていたため、その内
容を十分にチェックできず、図面の不備又は齟齬を見過ごしたまま承認していた。


イ     施工図に含まれる構造リスト・内部仕上表に不備又は齟齬が生じた原因等


     当委員会による調査の結果、支店の設計担当部署が、商品開発課から、一般図として、
不備や齟齬等のある構造リスト及び内部仕上表を受領し、不備や齟齬等に気が付くことな

22
      大臣認定の定める界壁の仕様は、面材や充填剤に関する事項だけではなく、下地材の種別、寸法や
      施工時の間隔、留め付けに用いるねじ、釘の寸法等も定めているところ、構造リスト及び内部仕上
      表は、界壁を含む主要構造部の仕様について、概要を一覧化して記載した図面であり、各構造部を
      構成する資材等の全てが記載される性質のものではない。そのため、レオパレス 21 が大臣認定
      「W1035」を採用した構造リスト及び内部仕上表に、平ラスの施工が必要である旨を記載していなかっ
      たことをもって、その記載に不備があると評価することはできない。もっとも、大臣認定「W1035」が
      定める仕様の詳細がどのようなものであるのかについて、商品開発課が支店及び施工業者に対して
      情報の提供をしていた事実は認められず、その点で適切さを欠いていたことは明らかである。
23
      一般図の記載から、耐火構造の界壁に係る仕様であることを示す上では、内部仕上表よりも構造リ
      ストの方が重要な意味を持つ。




                           - 18 -
く、そのまま施工図に使用したことにより、施工図に含まれる構造リスト及び内部仕上表
にも不備や齟齬等が引き継がれてしまったものと考えられる。


4    物件不備が生じた各類型ごとの原因


    上記 2(1)のとおり、物件調査の結果、別表記載の物件不備が認められた。以下では、上
記 2(1)で述べた物件不備の主な類型ごとに、図面の不備及び齟齬が与えた影響も踏まえ
て、物件不備の発生原因について検討する。


(1) 平ラスが施工されていない類型


    大臣認定「W1035」において平ラスの施工が求められているにもかかわらず、実際の物件
には施工されていない結果、界壁が耐火構造となっていない類型の物件不備が発生した最
大の原因は、商品開発課において、大臣認定「W1035」の内容を正しく理解せず、平ラスの
施工が必要であることを十分に認識しないまま一般図を作成し、その結果、支店の設計担
当部署において、平ラスの施工が必要である旨が記載されていない施工図を作成した点に
あると考えられる。
    また、当委員会が、本調査の過程で、平ラスが施工されていない類型の不備が生じた物
件の注文書を確認したところ、その注文書には、そもそも注文の対象となる資材として平
ラスが印字されていなかった。施工業者において、注文書に印字された種類の資材のみを
施工すれば足りると考えることも無理ならざる側面があり、かかる注文書の記載不備も、
平ラスが施工されなかった原因の 1 つとなっている可能性がある。


(2) 誤った面材が施工されている類型


    大臣認定において定められた種類又は厚さに適合しない面材が施工された結果、界壁が
耐火構造を満たさない仕様となっている類型の物件不備の原因の 1 つは、レオパレス 21
が作成した図面に不備が存在し、施工業者が、不備のある施工図に基づいて物件を施工し
たことにあると思われる。そして、上記 3 のとおり、本店の商品開発担当部署が、ゴール
ドレジデンスの一部について作成した一般図に含まれる構造リスト及び内部仕上表には不
備が存在していたことからすると、上記 3(2)イのとおり、施工業者が参照していた施工図
の不備は、一般図に発生した不備が、施工図に含まれる構造リスト及び内部仕上表にも波
及したことにより生じたものと考えられる。すなわち、物件不備が生じたことに関する根
本的な原因は、本店の商品開発担当部署が、不備のある一般図を作成したことにある。
    一方で、図面には不備も齟齬も存在しないにもかかわらず、誤った面材が施工されてい
る物件も存在する。この場合の物件不備の直接的な原因は、施工業者が、レオパレス 21
が正しく作成した構造リスト及び内部仕上表の内容をよく確認せず、又は読み誤った結




                        - 19 -
果、資材の発注や施工を誤った点にあると思われる。もっとも、支店の工事担当部署は、
施工業者が施工に用いる資材や施工内容を確認し、施工業者による資材の発注や施工が、
図面どおりに行われることを管理すべき立場にあった。そのため、たとえ施工業者による
資材の発注や施工方法が図面と異なっていたとしても、支店の工事担当部署において、適
切に上記施工管理を行っていれば、例えば、構造リストや内部仕上表に記載された界壁資
材とは異なる面材が施工現場に搬入されたタイミングや、実際に施工された界壁を確認し
たタイミングにおいて、物件不備の存在を認識し、是正できた可能性があった。すなわ
ち、支店の工事担当部署による施工管理が不十分であったことも、この類型の物件不備が
発生した原因であると考えられる。この点、レオパレス 21 においては、2008 年(平成 20
年)に ISO9001 認証を取得するまでは、施工物件数に比して、支店の工事担当部署の人員
が不足しており、1 人で数十件の物件を担当させられるなどしていたため、こうした不充
分な施工管理を招いた可能性がある。
    また、レオパレス 21 が作成した図面に不備ないし齟齬があったか否かを問わず、工事
監理が適切に行われていれば、実際の施工状況と設計図書を照合し、構造リストに記載さ
れた大臣認定の内容を確認することなどにより、物件不備を是正できた可能性があった。
しかし、レオパレス 21 においては、施工管理態勢と同様、2008 年(平成 20 年)に ISO9001
認証を取得するまでは、工事監理者となる建築士が少数の特定者に偏っており、他方で工
事監理者として抱える物件数が非常に多く、工事監理態勢が事実上形骸化していたため、
こうした物件不備を発見するに至らなかったと思われる。
    一方で、レオパレス 21 は、ISO9001 認証取得前後から、工事監理態勢についても整備を
進めており、MIRANDA シリーズ及び CLEINO シリーズの開発に先立つ 2012 年(平成 24 年)以
降は、建築士による工事監理マニュアルを整備し、建築士が、各物件について工事監理報
告書を作成することとした。このような取組が、3 シリーズ商品における物件不備の発生
防止に一定の効果を有したように思われる。


5    レオパレス 21 における問題の早期認識の可能性に関する検討


    当委員会が鉄骨耐火建築物に関連するレオパレス 21 内部の稟議書を調査した結果、
ゴールドレジデンスの一物件に関する、2012 年(平成 24 年)4 月から 2013 年(平成 25 年)9
月にかけて起案された 4 通の稟議書が確認された(以下、これらの稟議を「本件稟議」、稟
議書を「本件稟議書」という。)。本件稟議書は、いずれも、設計統括部及び建築統括部の
統括部長らの決裁を経て、取締役複数名も決裁した上で、最終的には、深山英世社長(当
時)の決裁を得ている。
    本件稟議書によれば、1996 年(平成 8 年)に兵庫県で施工されたゴールドレジデンスの一
物件について、「建築主との契約は準耐火建築物」であり、「準耐火建築物として当初は設
計しておりながら、行政の指示により耐火建築物へ補正をした」ことが推測され、建築確
認も「耐火建築物(鉄骨部分耐火被覆有り)として」得ていたが、実際には「耐火建築物(確認




                         - 20 -
申請上)に有るはずの鉄骨耐火被覆が無い事について発覚し」た。発覚のきっかけは、オー
ナーの指摘であり、オーナーが建物の用途変更確認申請をするために物件を調査していた
ところ、鉄骨耐火被覆がないことが明らかになったとのことであった。
 上記物件は、耐火建築物として建築確認を経ていたにもかかわらず、実際には耐火建築
物としての仕様を満たさないものであったが、レオパレス 21 では、特定行政庁との折衝
を経て、耐火建築物としてではなく、準耐火建築物として適切な仕様となるように改修が
なされることとなった。そのため、本件稟議の過程では、ゴールドレジデンスの準耐火建
築物としての仕様がどのようなものであるか、そして、上記物件がその仕様を満たしてい
るかという観点からの検討が行われ、構造リスト及び内部仕上表に記載された界壁の仕様
が耐火建築物としての仕様を満たしているかという検討が行われるには至らなかったもの
と考えられる。そのため、レオパレス 21 が鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題を本件不備の
発覚より早期に認識していたとまでは認め難い。
 また、前回報告書で述べた小屋裏等界壁の不施工のようにオーナーからの訴訟や複数の
補修改修が相次いでいた場合とは異なり、鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題については、日
常的に多数の補修・改修に関する稟議が行われている状況において、本件稟議に着目して
これを拾い出して調査を行い、鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題を早期に発見することは、
実際には困難であったことも理解できるところである。しかしながら、当初は耐火建築物
として建築確認を経ていたにもかかわらず、施工された物件が耐火建築物としての仕様を
満たしていなかったのであるから、本件稟議の例を水平展開し、会社全体として、このよ
うな物件が施工された原因について必要な調査を行い、その究明を尽くすことが望まし
かったといえる。今後、オーナーからの個別具体的な補修要求、クレーム等を組織的に調
査・分析し、同様のクレームが一定数以上生じた場合や、クレームの要因が複数の物件に
跨がる可能性のある場合などには、それを拾い上げて適切かつ迅速に対忚ができる組織体
制や社内のルール作りを進めることが望まれる。


第3編   関係者の責任


第 1 深山祐助氏及び当時の経営陣


 自社施工物件について前回報告書で述べたのと同様、他社施工物件問題について、深山
祐助氏が、法令に違反して小屋裏等界壁を施工しなくてよい旨指示・命令した事実までは
認められない。しかし、同氏は、レオパレス 21 においてアパート建売(分譲)事業に進出
することを決定し、そのような新規事業への進出に当たっては、当然に人材も知識も社内
体制も不十分となるはずであるから、会社の現況を客観的に把握し、適法かつ適切な業務
遂行を行うことができるよう十分な人的リソースの確保や体制の整備を行うべきであっ
た。それにもかかわらず、同氏は、アパート建売(分譲)事業を始めるに当たり、従前の戸
建て住宅の建売の事業において、設計や工事を担当していた従業員にそのまま共同住宅の




                    - 21 -
設計や工事を担当させることとし、その際に従業員を大幅に増員する、従業員に対して十
分な教育の機会を提供するといった対策を執らず、図面作成を含む設計に係る体制や、検
査体制及び工事監理体制を整備すること等を怠った。鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題につ
いても、同様に、同氏は、商品開発や図面作成を含む設計に係る体制、施工管理体制、工
事監理体制の整備等を怠った。
 なお、深山祐助氏は、当委員会のヒアリングにおいて、他社施工物件問題について「建
売事業の運営は部下に任せていたため、細かい事情をよく知らない」、鉄骨耐火建築物の
界壁仕様問題については「資材の選定等は、資材担当部署と工事担当部署が決めており、
把握していなかった」などと述べる。前回報告書 116 頁でも述べたとおり、同氏の、片や
他の役職員らに指示して商品の開発を推し進めつつ、片や法令適合性や品質については知
らないという姿勢こそが、本件の各問題の根本的な発生原因の 1 つである。
 深山祐助氏を除く当時の経営陣については、前回報告書で述べたのと同様、これらの問
題について違法行為を指示・命令した事実までは認められないが、同氏をサポートし、必
要な検証や配慮について進言をし、適切な対忚が講じられるよう促したり、同氏と共に対
忚に努めるべきであった。


第 2 商品開発担当部署役職員及び設計担当部署役職員


 他社施工物件問題については、設計担当部署役職員の作成した図面には、ハッチングや
文字で小屋裏等界壁を施工すべきことが記載されていないものもあり、知識・経験の不足
している施工業者にとっては分かりにくいものとなっていた。アパート建売(分譲)事業
は、施工業者にとっても新しい試みであり、施工業者の中には共同住宅の建築に関する知
識・経験が不足している事業者もいることは容易に想像できたはずであるから、設計担当
部署役職員は、そのような施工業者にも分かりやすい図面とすべきであったのに、これを
怠った。
 鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題については、平ラスの施工が必要であった物件について
は、商品開発担当部署役職員は、大臣認定の内容を十分に確認・検討し、支店の工事担当
部署及び施工業者が平ラスの必要性を認識することができるような一般図を作成するか、
平ラスの施工が必要である旨を工事担当部署及び施工業者に説明すべきであったのにもか
かわらず、これを怠った。また、誤った面材が施工されている物件については、商品開発
担当部署が、仕様を正しく理解し、一般図に含まれる構造リスト及び内部仕上表を作成す
べきであったのに、これを怠ったため、当該一般図に含まれる構造リスト及び内部仕上表
の不備が、施工図に含まれる構造リスト及び内部仕上表にも波及してしまったものもあ
る。




                    - 22 -
第 3 工事担当部署役職員


 他社施工物件問題については、工事担当部署役職員は、施工業者の知識・経験不足の可
能性も考慮して、施工業者に対し共同住宅の建築に当たり施工上留意すべき点について必
要な説明をすべきであったのに、これを怠った。また、他社施工物件については、レオパ
レス 21 は発注者であり、施工について一次的な責任を負うのは施工業者である。しか
し、物件の企画・設計はレオパレス 21 の設計担当部署が行ったのであり、レオパレス 21
の方が施工業者よりも物件をよく理解していたものと思われるから、法的責任は別にして
も、不備を防ぐという観点からは、レオパレス 21 が適切な施工状況の確認及び検査をす
べきであったと考えられる。一方、施工業者としても、発注者であるレオパレス 21 から
提供された図面どおりの建物を建築すべき義務があり、そのために十分な施工管理を行う
べきだったのに、これを怠ったものと思われる。
 鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題については、支店の工事担当部署が、施工管理を通じ
て、平ラスが施工されているかどうか、施工業者が正しい面材を調達し施工しているかど
うかを確認すべきであったのに、十分な施工管理をせず、不備を見落とした。工事担当部
署において図面の不備や齟齬を発見・是正することは難しかったと思われるが、図面に不
備も齟齬もないにもかかわらず、施工の不備が発生している物件もあり、工事担当部署役
職員は、施工管理を通じて、図面どおりの資材の発注や施工がなされているかを確認すべ
きであった。


第 4 一級建築士の資格を有する従業員


 他社施工物件問題及び鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題のいずれについても、レオパレス
21 の社員で一級建築士の資格を有していた者が、工事監理者として、工事監理に関する業
務に従事していた。しかし、かかる担当者は、自らが施工状況を現認しなかったり、施工
状況と図面の照合をしなかったりするなど、監理の実施は不十分であった。


第 5 早期発見・対応ができなかったことについての落ち度


 他社施工物件問題については、1988 年(昭和 63 年)頃にレオパレス 21 の物件の入居者が
小屋裏を伝って他の入居者の居室に侵入し窃盗に及んだという事件があった際に、少なく
ともその対忚に当たった役職員らは、小屋裏等界壁が施工されていない物件の存在を認識
したと考えられる。それにもかかわらず、その後も他社施工物件問題及び前回調査の対象
とした小屋裏等界壁問題が発生しており、第 2 編の第 2 の 5 でも述べたとおり、深山祐助
氏を含む当時の経営陣及び建築事業部の幹部従業員らには、品質問題に関するリスク情報
が関連部署等に水平展開されるリスク感知体制の不備、リスク感度の欠如、個別の物件レ
ベルでの施工不備の問題へと矮小化してしまおうとする事なかれ意識といった問題点が




                      - 23 -
あった。
    鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題については、遅くとも 2012 年(平成 24 年)4 月に、耐火
建築物として建築確認を経ていた物件において、実際には耐火建築物としての仕様を満た
していない旨が、深山英世社長(当時)を含む取締役ら並びに設計統括部及び建築統括部の
統括部長らに報告されている。この点、日常的に多数の補修・改修に関する稟議が行われ
ている状況において、鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題を早期に発見することが実際には困
難であったとはいえ、本件稟議の例を深堀りして水平展開することが望ましかった。


第4編    再発防止策の提言


    他社施工物件問題についても鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題についても、再発防止策
は、前回調査の対象となった各問題と基本的には共通する。
    以下では、前回報告書で指摘した点に追加して、不備を防ぐための方策及び早期発見・
早期対忚できるようにするための方策について述べる。なお、以下で述べる方策の一部
は、レオパレス 21 にて再発防止策として既に検討済みの事項と項目において重複する
が、これは、レオパレス 21 にて検討済みの再発防止策が不十分であるとする趣旨ではな
く、当該重複する項目に関しては、当委員会として、本件不備の原因等に照らして具体的
方策を敷衍して指摘する趣旨である。


第 1 不備を防ぐための方策


1    業務量を的確に見通し、それに対応できる人員を確保し、必要な業務体制を構築する


    他社施工物件問題に関して、レオパレス 21 がアパート建売(分譲)事業を始めるに当た
り、従前の戸建て住宅の建売の事業において設計や工事を担当していた従業員にそのまま
共同住宅の設計や工事を担当させることとし、その際に従業員を大幅に増員するといった
対策はとられなかった。
    また、鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題については、膨大な数の商品の開発や仕様変更、
販売物件数の急速な拡大などにより、担当部署の業務量が増大したタイミングにおいて、
余裕をなくした担当者により、不備ないし齟齬のある図面が作成されたり、施工不備が見
落とされるなどしている。
    事業を行うに当たっては、必要となる業務量を的確に見通し、業務遂行のために適切な
質・量の人員を確保し、必要な業務体制とすることが重要である。特に、新規事業を始め
たり、新商品を開発するに当たっては、このことがよく当てはまる。




                         - 24 -
2    社内だけでなく、施工業者も含めた情報提供・教育を実施する


    他社施工物件問題については、施工業者の知識・経験不足が不備の一因となっており、
鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題についても、図面作成担当者の知識不足が不備の一因と
なっている。
    施工上の注意点等について、社内で情報共有を行い、教育を実施すべきであるのはもち
ろんであるが、施工業者にも適切な情報提供を行い、説明会等の機会を通じて教育を行う
ことが重要である。


3    適切な施工管理を実現するため、事前に詳細なシミュレーションを行い、チェックポ
イントを適切に設定する


    他社施工物件問題についても、鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題についても、施工管理
(施工状況の確認及び検査)が不十分であったため、不備が見過ごされた。
    形だけの施工管理ではなく、より実効的な施工管理を行うため、新商品の開発や大幅な
仕様変更の際には、事前に詳細な工程のシミュレーションを行い、どの部分に注意する必
要があるかを検討して、適切なチェックポイントの設定を行うことが有用である。このよ
うなシミュレーションに当たっては、商品開発の過程で建築される試験棟を活用すること
も一案である。
    レオパレス 21 では、新商品の開発時に、特定の施工業者に施工を行わせ、施工上の問
題点を確認するということを行っている。このような取組を、施工が可能かどうかという
視点だけでなく、どの段階で、どのようなポイントに注意して施工管理をすべきかという
視点からも行うことが考えられる。


第 2 早期発見・早期対応できるようにするための方策


1    リスク情報を吸い上げて、検証する仕組みを構築する


    他社施工物件問題については、1988 年(昭和 63 年)頃にレオパレス 21 の物件の入居者が
小屋裏を伝って他の入居者の居室に侵入し窃盗に及んだという事件があった。その際に小
屋裏等界壁が施工されていない物件が存在することを一部従業員が認識したはずである
が、結局、その後も不備はなくならなかった。
    また、鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題について、耐火建築物の仕様に関する稟議がなさ
れたが、問題を水平展開するまでには至らず、問題の認識にまでは至らなかった。
    今後は、オーナーからの個別具体的な補修要求、クレーム等を組織的に調査・分析し、
同様のクレームが一定数以上生じた場合や、クレームの要因が複数の物件に跨がる可能性
のある場合などには、それを拾い上げて適切かつ迅速に対忚ができる組織体制や社内の




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ルール作りを進めることが望まれる。


2    図面等の重要書類の作成者や承認手続を明確化する


    当委員会の調査の過程において、一般図の作成者が、図面上明らかでなく、レオパレス
21 に問い合わせたものの、すぐには分からないということがあった。一般図は、不備が発
生した場合の原因分析等のための重要な資料であるから、早期対忚のためには、その作成
者は一見して分かるようにしておくべきである。例えば、図面には、作成者が押印するこ
とを徹底し、建築法務課など確認・承認した者も押印するなどして、作成過程を後から追
跡できるようにすることが考えられる。


3    重要書類の保管・管理のルールを明確化する


    他社施工物件問題に係る資料には、レオパレス 21 に現存していないか、発見できず、
確認できなかったものも多くある。30 年以上前の古い資料が中心であるため、やむを得な
いところであるが、破棄したのであれば、破棄したことを記録しておくべきである。
    また、鉄骨耐火建築物の界壁仕様問題の調査においても、一部のシリーズにおいて開発
の意思決定に関する稟議が見当たらず、意思決定過程がすぐには分からないということが
あった。ブランドを一新するというような会社にとって重要な判断について、責任の所在
も分からないというのは問題であり、稟議書の保管・管理ルールを明確にする必要があ
る。


第5編     結語


    当委員会は、2019 年(平成 31 年)2 月に設置されてから、前回調査に引き続いて計 5 か
月間にわたり、レオパレス 21 の調査に当たってきた。この間、当委員会は、膨大な数の
図面・各種書類・電子データを精査し、延べ 218 回のヒアリングを行った。かかる調査の
結果及び再発防止策の提言は、前回報告書と本報告書で述べたとおりであり、改めて、同
社がこれを真摯に受け止め、健全な企業として生まれ変わることを切望する。
    レオパレス 21 は、本件を契機として、人々の「住」を支える不動産供給事業者としての
原点に立ち返り、会社を挙げて「価値の創造」を追求すべきである。そして、提供したい
「価値」の創造のためには何が必要かという観点から、もう一度、施工体制や業務フローを
見直し、施工水準の担保に必要十分な体制を整えることが必要である。会社としての提供
したい「価値」を明確にし、そのために必要な体制を整えることは、レオパレス 21 におい
て、不備の再発防止に資するだけでなく、一連の不備によって失った世間からの信頼を取
り戻すためにも有効であると考えられる。
    また、レオパレス 21 における一連の施工不備の問題は、レオパレス 21 にとって、入居




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者やオーナーをはじめとするステークホルダーの大切さを再認識したり、建築関係法令に
ついての知識を見直したりする非常に大きな経験となったはずである。この経験を現在レ
オパレス 21 に勤務する役職員だけのものとすることなく、会社の資産として残していか
なければならない。5 年後、10 年後、今回の一連の施工不備の問題が次第に忘れ去られ、
将来入社してくる従業員にとって昔話となり、「よく知らないが、昔、大変な時期があっ
たらしい」といった程度の認識となってしまえば、コンプライアンスのための仕組みもそ
の意図が正しく理解されず、いずれ今回と同様の問題が起こってしまう可能性がある。問
題を過去の恥として封印してしまうことなく、会社の歴史として刻み込み、例えば、毎
年、社内研修等で振り返る機会を設けるなど、一連の施工不備の問題を風化させない努力
が重要である。
 なお、レオパレス 21 においては、一連の不備物件に対する対忚が期待どおりには進ん
でいないようであるが、このような状況は、特に入居者やオーナーとの個別的な紛争につ
ながる可能性を孕んでいる。当委員会としては、レオパレス 21 がこのような状況を直視
して誠実に対忚し、場合によっては法的な解決を図るなどして、一時も早く、入居者や
オーナーを含むステークホルダーの不安や負担を解消させるよう努力することを切望す
る。


                                       以   上




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