8848 レオパレス21 2019-06-21 17:30:00
外部調査委員会の中間報告書の受領に関するお知らせ [pdf]
2019 年 6 月 21 日
各 位
会 社 名 株 式 会 社 レ オ パ レ ス 21
代表者名 代表取締役社長 宮 尾 文 也
(コード番号 8848 東証第一部)
問合せ先 執行役員 新 井 清
(TEL 050-2016-2907 )
外部調査委員会の中間報告書の受領に関するお知らせ
当社は、2019 年 5 月 29 日リリース(外部調査委員会への追加調査依頼のお知らせ)のとおり、
2019 年 2 月 27 日に設置致しました外部調査委員会に対し、当社が設計等を行い他社が施工した物件
の界壁の不備及び 2019 年 5 月 29 日に当社ホームページに PRESS RELEASE として掲載した界
壁の不備について原因究明と再発防止策策定のため、調査を依頼しておりました。
本日、外部調査委員会より前記調査にかかる中間報告書を受領いたしましたので、別添のとおりお知
らせいたします。なお、中間報告書の内容につきましては、別添資料をご参照ください。
当社は、引き続き、外部調査委員会において最終的な報告に向けた調査を進めるともに、当該調査に
全面的に協力してまいります。
界壁等の施工不備につきまして、当社施工物件の所有者様、入居者様をはじめとする関係者の皆様及
び各ステークホルダーの皆様には多大なるご心配及びご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び
申し上げます。
以上
株式会社レオパレス 21 御中
外部調査委員会による
調査の状況について
2019 年(令和元年)6 月 21 日
外部調査委員会
委員長 弁護士 伊 藤 鉄 男
委員 弁護士 木目田 裕
委員 弁護士 山 本 憲 光
第1編 本調査の概要
第 1 本調査の経緯
2019 年(平成 31 年)2 月 21 日、株式会社レオパレス 21(以下「レオパレス 21」という。)
から、同社と利害関係を有しない西村あさひ法律事務所に対し、同社が過去に施工した共
同住宅において発覚した不備について、原因究明等のための調査の依頼があった。その
後、同月 27 日、レオパレス 21 の取締役会において、外部調査委員会(以下「当委員会」と
いう。)の設置が正式に決議され、同日、当委員会が設置された。当委員会は上記不備に
ついて調査を実施し、同年(令和元年)5 月 29 日、レオパレス 21 に対して調査結果の報告
を行った(以下、同年(平成 31 年)2 月 21 日の依頼に基づき、当委員会が実施した調査を
「前回調査」といい、同年(令和元年)5 月 29 日付け「施工不備問題に関する調査報告書」を
「前回報告書」という。)。その後、同年 6 月 10 日、レオパレス 21 から、当委員会に対
し、レオパレス 21 が設計等を行い他社が施工した共同住宅において発覚した不備及び同
社が施工した共同住宅において発覚した別の不備について、原因究明等のための追加調査
の依頼があった(以下、同日の依頼に基づき、当委員会が実施した調査を「本調査」とい
う。)。
第 2 当委員会の体制
当委員会は、下記 3 名の委員で構成されている。
委員長 伊藤 鉄男 (西村あさひ法律事務所 弁護士)
委員 木目田 裕 (同)
委員 山本 憲光 (同)
なお、いずれの委員も、前回調査より前にレオパレス 21 から法律事務の委任を受けた
ことはなく、本調査の受任時点において、同社との間に利害関係はない。また、委員らが
所属する西村あさひ法律事務所とレオパレス 21 との間にも、本調査の受任時点におい
て、利害関係はない。
当委員会は、本調査を実施するに当たり、西村あさひ法律事務所に所属する、いずれも
レオパレス 21 と利害関係を有しない弁護士 20 名を調査補助者として任命した。
なお、当委員会は、本調査の独立性・客観性を確保するため、日本弁護士連合会「企業
等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠し、また、日本取引所自主規制法人
「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」の「②第三者委員会を設置する場合におけ
る独立性・中立性・専門性の確保」を踏まえて調査を行った。
第 3 本調査の目的及び対象範囲
本調査の目的は、レオパレス 21 の 2019 年(令和元年)6 月 10 日付けプレスリリースに記
載されているとおり、①同社が設計等を行い他社が施工した物件で発覚した、小屋裏等に
界壁を施工していない不備(以下「他社施工物件問題」という。)、②同社が耐火建築物とし
て施工した鉄骨造物件の一部で発覚した、界壁が建築基準法 27 条及び 61 条により求めら
れる耐火構造、及び遮音に係る国土交通大臣認定1(以下「大臣認定」という。)の仕様に適合
していなかった不備(以下「耐火建築物の界壁仕様問題」という。)について、事実の確認及
び原因の究明を行うとともに、関係者の責任2について検討し、併せて再発防止策の提言を
行うことである。
なお、本調査においては、上記①及び②の施工不備の存否については、レオパレス 21
が行っている調査(以下「物件調査」という。)の結果が正確であることを前提としている。
第 4 本調査の方法
当委員会は、①レオパレス 21 に現存する各種図面(一般図、確認申請図、施工図、施工
マニュアル等)等の収集・精査、②レオパレス 21 の役職員についてのデジタル・フォレン
ジック調査、③関係者に対するヒアリング(延べ 12 名)等を行った。
第2編 現在の調査状況
第 1 他社施工物件問題
1. 問題の概要及び傾向
レオパレス 21 が設計等を行った物件のうち、同社がオーナーから建築を請け負うので
はなく、発注者として施工業者に建築を発注している物件(以下「他社施工物件」という。)
において、小屋裏等の界壁に不備があることが判明している。なお、以下では、対比のた
め、レオパレス 21 がオーナーから建築を請け負う(元請となる)物件を便宜上「自社施工物
件」ということがある。前回調査の対象物件は、いずれもレオパレス 21 がオーナーから建
築を請け負っていた自社施工物件である。
レオパレス 21 によれば、以下のシリーズの物件に他社施工物件が含まれている(括弧内
は、各シリーズの販売開始時期)。なお、現時点では正確な建築時期が判明していない物
1
2001 年(平成 13 年)1 月以前に建築された物件の仕様には、建設大臣認定が適用される。
2
本報告書は、関係者の法的責任の有無について判断するものではない。
- 3 -
件もあり、各シリーズがいつからいつまでに建築されたのか、また、不備がある物件がい
つ建築されたものなのかは今後確認予定である。
在来(1985 年(昭和 60 年))、キュービクル(1989 年(平成元年))、F2(1991 年(平成 3
年))、S 造(不明)、10TH SPECIAL(1993 年(平成 5 年))、ゴールドネイル及びニュー
ゴールドネイル(1994 年(平成 6 年))、ゴールドボルト(1995 年(平成 7 年))、2×4(不
明)、ゴールドレジデンス(1996 年(平成 8 年))、SF MAISONETTE(1999 年(平成 11
年))、コングラツィア(S 造)(2000 年(平成 12 年))、コングラツィア(木造)(2000 年
(平成 12 年))、Hybrid(2001 年(平成 13 年))、ヴィラアルタ(VA)(2006 年(平成 18
年))、重量鉄骨 FREE(不明)、L-SECtion(2014 年(平成 26 年))、MIRANDA-CLEINO(2015
年(平成 27 年))
レオパレス 21 は、1980 年代半ば頃までは、主に戸建て住宅や長屋の建売を行っていた
が、深山祐助氏がロフト付きの共同住宅の建売を思いつき、1980 年代半ば頃から共同住宅
の建売を行う事業(以下「アパート建売(分譲)事業」という。)を行うようになった。アパー
ト建売(分譲)事業とは、同社が自ら土地を仕入れ、その土地上に共同住宅を建設し、土地
と共同住宅を一体のものとして顧客に販売するというものである。かかるアパート建売
(分譲)事業において建築されたのが他社施工物件である。
前回報告書 9~10 頁に記載したとおり、レオパレス 21 は、1989 年(平成元年)9 月に販
売を開始したキュービクル以降、経験を積んだ職人を必要とせず、工場で作成した部材を
プラモデルのように組み立てることで誰にでも施工ができる規格化住宅の開発を行い、ビ
ジネスモデルについて、アパート建売(分譲)から、アパート請負建築(注文建築)事業とア
パート一括借上による賃貸事業に転換していった。他社施工物件の多くは、こうした請負
建築事業への転換以前に主に販売されていたものである。他社施工物件の販売数は、いわ
ゆるバブルの崩壊に伴い減少していき、1993 年(平成 6 年)3 月 31 日頃には他社施工物件
の販売を行っていた営業担当部署もなくなり、それ以降他社施工物件の販売数は非常に少
ないものになっていった。レオパレス 21 によると、請負建築事業への転換以後にも少し
ではあるが他社施工物件が存在する理由としては、同社がすでに保有している土地上に物
件を建築したり、同社施工物件のオーナーや他社から、ビジネス上の理由で購入した土地
上に物件を建築したり、同社が保有し自ら賃貸している物件を建て替えたりする場合等に
は、同社が発注者として施工業者に施工を委託することが行われていたからであるとのこ
とである。
物件調査によれば、不備のある物件には、界壁が施工されていないもの(A 類型)と界壁
が施工されているが不備のあるもの(B 類型)が判明しているところ、当委員会としては、
問題の重要度の差異を勘案した結果、限られた時間内で他社施工物件問題の傾向を把握
し、その原因・背景を分析するためには、A 類型を重視して検討を行うのが適切であると
判断した。
そこで、物件調査の結果(2019 年(平成 31 年)6 月 17 日時点のもの)から A 類型を抜き出
- 4 -
したものが表 1 である。
表1
判定済 A1(屋根裏小 A2(バルコニー
商品名 販売開始時期 棟数 A3(中間階層)
み棟数 屋裏全体) 廊下軒裏)
在来 1985年(昭和60年) 4400 721 56 19 36
キュービクル 1989年(平成元年) 45 13 0 1 0
F2 1991 年(平成3年) 78 10 0 0 1
S造 不明 114 57 5 1 4
10TH SPECIAL 1993 年(平成5年) 11 10 1 0 1
ゴールドネイル/ニューゴールドネイル 1994年(平成6年) 2 2 1 0 0
ゴールドボルト 1995年(平成7年) 2 2 0 0 2
2X4 不明 24 8 3 0 2
ゴールドレジデンス 1996年(平成8年) 3 2 0 0 0
SF MAISONETTE 1999 年(平成11年) 1 1 0 0 1
コングラツィア(S造) 2000年(平成12年) 27 27 7 3 1
コングラツィア(木造) 2000年(平成12年) 14 13 0 0 0
Hybrid 2001 年(平成13年) 1 0 0 0 0
ヴィラアルタ(VA) 2006年(平成18年) 8 3 0 0 0
重量鉄骨 FREE 不明 5 0 0 0 0
L-SECtion 2014 年(平成26年) 1 0 0 0 0
MIRANDA-CLEINO 2015 年(平成27年) 9 0 0 0 0
判定済み棟数:物件調査が完了し、不備の有無の判定が済んだ物件の数
A-1:小屋裏全体に界壁が施工されていない物件
A-2:バルコニー・軒裏部分の界壁がない物件
A-3:中間階の天井裏部分の界壁がない物件
なお、前回調査の対象となっているネイルシリーズ等は基本的には自社施工物件であるが、一
部、例外的に他社施工物件も存在している。
表 1 のとおり、他社施工物件の棟数も不備の件数も「在来」が圧倒的に多い。社内資料に
よれば、在来とは、レオパレス 21 がアパート建売(分譲)事業を開始した初期の頃に建築
された、規格型(パターンメイド)ではなく、土地に合わせた設計がなされた商品である。
在来には自社施工物件も存在するところ、自社施工物件と他社施工物件のそれぞれにつ
いて、不備件数・不備率をまとめると以下のとおりとなる。
表2
A類型の不備棟数
判定済み
他社施工物件/自社施工物件 棟数 A2(バルコ 不備率
棟数 A1(屋根裏小 A1、A2、A3の
ニー廊下軒 A3(中間階層)
屋裏全体) 合計棟数
裏)
他社施工物件 4400 721 56 19 36 111 15.4%
自社施工物件 968 338 7 5 8 20 5.9%
A-1:小屋裏全体に界壁が施工されていない物件
A-2:バルコニー・軒裏部分の界壁がない物件
A-3:中間階の天井裏部分の界壁がない物件
表 2 のとおり、在来について、自社施工物件と他社施工物件を比較すると、他社施工物
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件の方が不備率が 3 倍程度高い。
2. 他社施工物件における業務フロー
前述のとおり、他社施工物件の多くは、請負建築事業への転換以前に販売されていたも
のである。アパート建売(分譲)事業を始めるに当たって、従前の戸建て住宅や長屋の建売
の事業において、設計や工事を担当していた者がそのまま共同住宅の設計や工事を担当す
ることになった。他社施工物件においては、レオパレス 21 が共同住宅の企画・設計を
行っていたが、顧客との契約締結は、共同住宅の建設開始以後となるため、共同住宅の設
計やデザイン等に関しては顧客の意向は反映されない。レオパレス 21 においては、自ら
共同住宅を建設できるような体制とはなっていなかったため、同社は、実際の建設は施工
業者に委託していた。その当時の具体的な業務フローは、以下のとおりである。
(1) 土地の仕入れ
他社施工物件については、自社施工物件とは異なり、レオパレス 21 が土地を取得する
というところから始まる。
仕入担当部署が、まず、共同住宅の用地として利用できそうな土地を探し、利用できそ
うな土地を見つけると、設計担当部署に、当該土地に建てられそうな共同住宅の形状や部
屋数を記載したラフプランを作成するよう依頼する。仕入担当部署は、当該ラフプランを
踏まえて、賃貸物件として合理的な収支となりそうであれば、土地の所有者から共同住宅
の用地を取得する。
(2) 企画・設計
本店の設計担当部署は、物件の商品プランの企画及び設計を行っていた。具体的には、
確認申請図を作成し、また場合によっては施工図も作成し、それらの図面を本店の工事担
当部署に提供する。建築確認申請は、レオパレス 21 に所属する建築士の資格を有する従
業員が3、設計者として、建築士の資格に基づき行っていた。
レオパレス 21 がビジネスモデルを請負建築事業に転換し、物件がシリーズ化される以
前は、マニュアル等も存在せず4、商品開発担当部署も 1988 年(昭和 63 年)頃まで存在しな
3
ミヤマ一級建築士事務所等の名義で作成された図面も存在する。前回報告書 24 頁で指摘したとお
り、レオパレス 21 と「株式会社レオパレス 21 一級建築士事務所」は実質的に一体として運営されて
おり、それと同様に、当時の株式会社ミヤマとミヤマ一級建築士事務所等も実質的に一体として運
営されていたと思われるが、今後確認を要する。
4
ただし、これまでのヒアリング結果によれば、施工上の注意点等をまとめたファイルが存在してい
たとの話もあり、今後、そのようなファイルを入手の上、確認する予定である。
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かったことから、設計担当部署が個々の物件ごとに一から図面を作成していた。また、物
件によっては、設計担当部署が、確認申請図とは別に施工図も作成することがあったが、
物件ごとに毎回一から図面を作成していたため、業務の統一化がなされておらず、確認申
請図以外にどのような図面を作成するかは、個々の担当者の判断に委ねられていた。当委
員会が図面を確認した限り、図面の記載方法も必ずしも統一されておらず、図面に記載す
る事項は担当者によってまちまちであったことが窺われる。
(3) 施工
本店の工事担当部署は、施工業者に物件の施工を依頼する。
自社施工物件では、レオパレス 21 がオーナーから物件の建築を請け負っていたため、
同社の社員が主任技術者(又は監理技術者。以下同じ。)となっていたが、他社施工物件に
おいては、レオパレス 21 は発注者であり、施工業者が請負人であるため、自社施工物件
とは異なり、施工業者の担当者が主任技術者となっていた。
レオパレス 21 がビジネスモデルを請負建築事業に転換していき規格化住宅を販売する
以前は、界壁の施工に必要な資材も含め、施工に必要な資材は基本的に施工業者が自ら調
達していた。
(4) 施工状況の確認・検査
他社施工物件においては、レオパレス 21 は発注者であり、施工業者が請負人であるた
め、施工について責任を持つのは施工業者である。しかし、レオパレス 21 の工事担当部
署は、主に工程管理を目的とした施工状況の確認や検査を行うこととなっていた。
具体的には、週に 1 回程度、工事担当部署の担当者が施工現場を訪問し進捗を確認する
ほか、①配筋検査、②上棟検査、③木工事完了検査、④竣工検査及び⑤キューブ検査5を行
うこととなっていた。①配筋検査、②上棟検査、③木工事完了検査、④竣工検査(④竣工
検査及び⑤キューブ検査は竣工時に同時に行われる。)は、それぞれレオパレス 21 が施工
業者に建築請負代金の分割支払いを行うタイミングともなっており、レオパレス 21 は、
施工業者から検査依頼書の提出を受け、施工現場の写真等を貼付した検査記録表を作成さ
せ、その確認をするとともに、施工現場で進捗を確認することとなっていた。しかし、当
時、工事担当部署の人員が不足していたこともあり、検査の際に施工現場を訪問しないな
ど、施工状況の確認や検査が十分に行われていたとはいえない状況であった。
5
賃貸物件としての適切性を検査するものである(前回報告書 31 頁参照)。
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(5) 工事監理
レオパレス 21 に所属する建築士の資格を有する従業員は、工事監理者として、建築士
の資格に基づき、工事監理6 を行うこととなっていた。しかし、上記(4)の施工状況の確認
や検査と明確に区別して工事監理が行われていたのか否かは不明であり、少なくとも、工
事監理として、図面どおりの施工がなされているかとの視点での確認は十分に行えていな
かった。
(6) 営業活動及び不動産の売却
支店の営業担当者は、銀行や損害保険会社等への営業を行い、図面等を示して物件の説
明を行い、節税や投資を目的としたアパート物件の購入を検討している顧客を紹介しても
らっていた。レオパレス 21 がアパート建売(分譲)事業を開始した初期の頃は、物件の施
工を開始した後、施工が完了するまでの間に、顧客との間で不動産販売契約を締結してい
た。しかし、その後、いわゆるバブルの崩壊に伴い、不動産の価格が下落したことで、顧
客が契約締結に慎重となり、物件の施工が完了する前に不動産販売契約を締結することは
少なくなっていった。1991 年(平成 3 年)頃には、物件の施工が完了し、物件の見学を行っ
た後に不動産販売契約を締結するようになった。
(7) 規格化住宅販売開始後における業務フロー
上記 1 のとおり、レオパレス 21 がビジネスモデルを請負建築事業に転換していき規格
化住宅を販売するようになった以後も、レオパレス 21 が発注者として施工業者に施工を
委託する場合がある。これは主にレオパレス 21 がすでに保有している土地に物件を建築
したり、同社施工物件のオーナーや他社から、ビジネス上の理由で購入した土地上に物件
を建築したり、レオパレス 21 が保有し自ら賃貸している物件を建て替えたりする場合で
ある。
これらの場合、自社施工物件とは異なり、施工業者の担当者が主任技術者となるという
違いがあるが7、それ以外の業務フローは前回報告書 18 頁以下に記載した業務フローと大
きく異なるところはない。
6
建築士法第 2 条第 8 項の「工事監理」、すなわち、原則として、建築士の義務でもあり、建築士のみ
に認められた権限でもある、設計図書と工事の照合及び確認作業のことを指す(前回報告書 34 頁参
照)。
7
他には、労働者災害保険や火災保険等への加入、竣工後の引渡証明書や登記書類の作成手続等が異
なると思われる。
- 8 -
3. 小屋裏等界壁の施工の要否についてのレオパレス 21 の認識
レオパレス 21 の担当者は、ネイルシリーズの開発より以前の段階において小屋裏等の
界壁の施工が不要であるといった議論がなされた記憶はなく、少なくとも他社施工物件
(建売)については、小屋裏等の界壁は当然に必要であると認識していたと述べている。こ
の点、1988 年(昭和 63 年)頃、レオパレス 21 の物件の入居者が小屋裏を伝って他の入居者
の居室に侵入し窃盗に及んだという事件があり、その際、レオパレス 21 では小屋裏等界
壁が施工されていない物件があることを認識し、一斉点検を行った。その際に、小屋裏等
界壁が施工されていない物件があることに驚き、小屋裏等界壁が必要であるという認識を
新たにするとともに、工事担当部署には小屋裏等界壁が確実に施工されるよう社内で注意
があった。かかる出来事によって、レオパレス 21 は、遅くともその時点で他社施工物件
問題の少なくとも一端を認識したものと考えられるが、社内でどのような議論がなされ、
不備を防ぐためにどのような対策が行われたのかは、今後調査予定である。
4. 図面検証結果
当委員会は、これまでに A1 の不備が判明している 71 棟のうち、確認申請図及び施工図
等の図面が保存されていた 65 棟について同図面の検証を行った。かかる図面には、矩計
図、断面図、仕上表、仕様書が含まれており、矩計図は施工図として用いられ、断面図及
び仕上表又は仕様書は確認申請図として用いられたものと考えられるが、現時点では図面
の位置付けが必ずしも解明されておらず、各図面の位置付けについては今後確認予定であ
る。
その結果、以下のとおり記載方法は図面によってまちまちであるものの、上記 65 棟
中、5 棟を除き、図面には小屋裏等界壁を施工する旨が記載されていることが確認され
た。具体的には、表 3 のとおり、矩計図の住居部分等に小屋裏等界壁の記載を示すハッチ
ングが記載され、小屋裏等界壁を施工する旨記載されている物件が 30 棟、X-X 断面図に
ハッチングが記載され、小屋裏等界壁を施工する旨記載されている物件が 43 棟、仕上表
ないし仕様書の界壁部分の欄に、界壁は屋根裏まで達すると記載され、小屋裏等界壁を施
工する旨記載されている物件が 24 棟確認された。
表3
矩計図の住居部分等 仕上表ないし仕様書の
X-X断面図にハッ
に小屋裏等界壁の記 界壁部分の欄に、界壁 左記いずれの記
A類型の不備棟数 チングが記載され
載を示すハッチングが は屋根裏まで達すると 載もない物件
ている物件
記載されている物件 記載されている物件
65 30 43 24 5
複数の図面に小屋裏等界壁を施工する旨が記載されている物件については、それぞれの項目で計
上している。そのため、A 類型の不備棟数である 65 棟よりも、各項目の合計棟数の方が多くなって
- 9 -
いる。
5. 考えられる不備の原因
上記 1 のとおり、在来で比較すると、他社施工物件の方が、自社施工物件に比べ不備率
が高い。これが、他社施工物件に特有の事情に基づくものなのか確認する必要がある。
この点、ひとつの可能性としては、図面の記載が不備の原因になったことが考えられる
が、上記 4 のとおり、記載方法はまちまちであるものの、多くの図面において小屋裏等界
壁の施工が必要である旨が記載されている。そのため、これまでの調査の限りでは、図面
の記載に係る問題が不備の共通の原因となったとは考えにくい。ただし、確認した 65 棟
の図面のうち、5 棟については、小屋裏等界壁を示す記載がなく、なぜそのような物件が
あるのかについては、今後確認する必要がある。
また、可能性としては、レオパレス 21 が(図面の記載にもかかわらず)施工業者に対
し、小屋裏等界壁を施工しなくてよい旨指示・説明を行ったことが考えられるが、上記 3
のとおり、これまでのヒアリング結果によれば、レオパレス 21 の担当者は、小屋裏等の
界壁は当然に必要であると認識していたと述べているとともに、前回調査におけるゴール
ドネイル(トラス以外)と異なり、商品として小屋裏等界壁の施工は不要とする考え方が採
られていたというような事情も見当たっておらず、レオパレス 21 が施工業者に対し、小
屋裏等界壁を施工しなくてよい旨指示・説明を行ったことを示す事情は見当たっていな
い。今後、電子データの精査等を行い、この点についてさらに調査を進める必要がある
が、図面に小屋裏等界壁が必要である旨記載されており、かつ、レオパレス 21 が小屋裏
等界壁を施工しなくてよい旨指示・説明を行っていないのであるとすれば、それにもかか
わらず、なぜ小屋裏等界壁が施工されなかったのかが問題となる。図面に従った施工を
行っていない施工業者の問題や、そのことを見逃した施工状況の確認・検査及び工事監理
に問題があった可能性があると考えられる。
第 2 耐火建築物の界壁仕様問題
1. 問題の概要等
レオパレス 21 が施工した鉄骨造物件のうち、耐火建築物として施工された物件の一部
につき、建築基準法 27 条及び 61 条により耐火構造の界壁とすることが求められているに
もかかわらず、耐火構造に適合しない仕様の界壁が施工されていることが判明している。
また、その中には、耐火構造に適合しないだけでなく、遮音に係る大臣認定にも適合しな
い仕様となっている物件もある。
- 10 -
2. レオパレス 21 による調査の状況
(1) 図面調査
レオパレス 21 は、自社が施工した鉄骨造物件 16,809 棟について、確認申請書又は設計
図書が保存されている場合にはそれらの記載内容に基づき、確認申請書及び設計図書が保
存されていない場合には建築物の現況等に基づき、耐火建築物として施工された物件
2,295 棟を選別した。そして、レオパレス 21 は、当該 2,295 棟の構造リスト及び内部仕上
表を調査し、構造リストに記載された大臣認定番号を特定した上で、構造リスト及び内部
仕上表に記載された仕様と当該大臣認定の仕様との整合性を確認した。ほとんどの物件の
確認申請図には、構造リスト及び内部仕上表が1枚にまとめられた図面が含まれている一
方で、施工図については、内部仕上表は含まれているが、構造リストが含まれていない物
件も多い。レオパレス 21 による図面調査の結果は、以下のとおりである。
A 類型:図面に不備も齟齬もないもの 1,949 棟
8
B 類型:耐火仕様であり、図面に不備はないが齟齬があるもの 37 棟
C 類型:図面に不備があるもの9 10
64 棟
D 類型:図面上仕様が明確でないもの(そのため現地調査が必要なもの) 121 棟
E 類型:図面が保存されておらず仕様不明のもの 124 棟
11
なお、図面に不備がある 64 棟(C 類型)の全部がゴールドレジデンス の物件である。
(2) 現地調査
レオパレス 21 は、耐火建築物として施工された 2,295 棟については、全棟の現地調査
を行う予定としている。2019 年(令和元年)6 月 19 日時点では、レオパレス 21 が現地調査
を行った物件は 204 棟である。そのうち、建築基準法 27 条及び 61 条により耐火構造の界
壁とすることが求められているにもかかわらず、耐火構造に適合しない仕様の界壁となっ
8
この類型は、構造リストと内部仕上表の図面上の記載に齟齬が見られるが、そのいずれの記載に
従っても耐火構造に適合する仕様となるものである。
9
この類型は、構造リスト及び内部仕上表のいずれか一方でも、その図面上の記載が耐火構造に適合
しない仕様となっているものである。
10
図面に不備又は齟齬のある物件(B 類型及び C 類型)は、おおよそ 1995 年(平成 7 年)頃から 1998 年
(平成 10 年)頃まで又は 2015 年(平成 27 年)頃から 2016 年(平成 28 年)頃までに販売された物件であ
る。
11
ゴールドレジデンスは、1996 年(平成 8 年)頃から 2001 年(平成 13 年)頃までに販売されたシリーズ
である。
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ていた物件は 63 棟であった12。
3. これまでに当委員会が行った調査
(1) 会社による図面調査及び現地調査の結果の分析
レオパレス 21 による上記 2(2)の現地調査の結果、不備が判明した 63 棟について、上記
2(1)の図面調査の結果を対照させたところ、次のとおりであった。
A 類型: 20 棟
C 類型: 24 棟
D 類型: 7棟
E 類型: 12 棟
また、レオパレス 21 による現地調査の結果、耐火構造の界壁であることが判明した物
件のうち 7 棟は、2(1)の図面調査では図面に不備があると判定されたものであった。
この結果からすると、耐火建築物の界壁仕様問題においては、図面の不備と物件の施工
不備とは必ずしも密接に関連していない。
レオパレス 21 による図面調査の結果判明した図面の不備には様々な類型があり、現
在、当委員会において分析を行っているものの、現時点では、図面作成における規則性
(作成時期・地域等による不備の偏り等)を見出すことはできていない。
また、ゴールドボルト及びゴールドレジデンスの施工マニュアルを調査したところ、そ
れらのマニュアルのいずれにも、特定の大臣認定番号が記載された構造リストが綴られて
いるほか、ゴールドレジデンスの施工マニュアルには、1 時間耐火の性能を有する構造と
して指定する旨の建設大臣の昭和 52 年 7 月 30 日付け指定書(指定番号 W1045)が綴られて
いることから、商品開発段階では、特定の大臣認定番号を用いることが想定されていたこ
とが窺われる。ところが、建築確認申請や施工図の作成段階では、それとは異なる番号の
大臣認定が構造リストで使われている物件も散見される。
(2) 当時の図面作成等に関わっていた職員に対するヒアリング
当委員会は、構造リスト及び内部仕上表の作成、登録・保存及び支店の設計担当部署へ
の送付に関わった者のヒアリングを行った。
レオパレス 21 では、CAD が導入された当初は、CAD で作成した一般図を印刷し、紙ベー
スで支店の設計担当部署に送付していた。CAD で作成された一般図が社内システムに登録
12
そのほか、建築基準法により耐火構造の界壁とすべき義務まではないものの、耐火建築物として建
築確認申請が行われていた物件(いわゆる任意耐火物件)であるにもかかわらず、耐火構造に適合し
ない仕様の界壁となっていた物件が 13 棟存在することが判明した。
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され、支店の設計担当部署がオンラインシステムを通じて入手するようになるのは、パソ
コンの CAD ソフトを導入した時点(現時点では、この時期は不明である。)であるところ、
少なくとも、ゴールドレジデンスが施工されていた頃は、未だパソコンの CAD ソフトは導
入されておらず、一般図は紙ベースで送付されていた。しかも、構造リスト及び内部仕上
表は、個別の物件ごとに内容が変わるものではないことから、商品開発担当部署が一般図
としての構造リスト及び内部仕上表を作成すると、その時点でそれらを支店に送付し、以
降は、支店の設計担当部署がそれらを原本として保管し、確認申請図を作成する都度、そ
の原本を複製して用いていたようである。
4. 考えられる不備の原因
(1) 図面の不備が生じた原因
耐火構造に適合しない仕様が構造リスト及び内部仕上表に記載されるという不備は、
ゴールドレジデンスのシリーズにのみ生じているものであるところ、これらの不備が生じ
た原因の一端は、商品開発担当部署における図面作成時の過誤及びそれを発見するチェッ
ク体制の不備にあったと考えられる。また、天井部問題と同じく13 、ゴールドレジデンス
は、他のシリーズに比べてプラン数が多かったことが、これらの不備に繋がった可能性も
ある。
このチェック体制の不備は、商品開発担当部署だけではなく、支店の設計担当部署にも
あったと考えられる。
建築確認に関しては、上記 3(1)で指摘したように、施工不備が判明した 63 棟のうち 20
棟では図面の不備が見当たらないことから、これらの物件に関しては、耐火構造に適合し
ない仕様の界壁とする意思であったにも関わらず、確認申請図上は耐火構造に適合する仕
様のものとしたとの疑いもある。
また、図面の不備に繋がった 1 つの要因として、施工マニュアルに綴られた指定書のも
のとは異なる大臣認定番号が構造リストに記載されていたことが挙げられるが、このよう
なことが生じた原因が、商品開発担当部署と支店の設計担当部署のいずれにあったのか
は、現時点では不明である。
(2) 施工の不備が生じた原因
耐火建築物の界壁仕様問題においては、施工が構造リスト又は内部仕上表に従って行わ
れている場合とそれらに従って行われていない場合の双方が存在する。
13
前回報告書 2 頁、97 頁及び 98 頁参照。
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前者の場合には、構造リスト又は内部仕上表の記載に不備があったこと、施工管理及び
工事監理においてもそれらの不備が見落とされたことが施工の不備の原因であった可能性
があると考えられる。
他方、後者の場合には、図面に従った施工を行っていない施工業者の問題や、そのこと
を見逃した施工管理及び工事監理に問題があった可能性があると考えられる。
第3編 今後の方針
当委員会の現時点における調査の状況は以上のとおりである。
当委員会としては、今後、更に調査を進め、事実関係や原因分析等を行う予定である。
当委員会は、本年 7 月下旬をめどに、本件不備の原因分析に加え、再発防止策の提言及び
関係する役員(退任した者を含む。)の責任内容の検討結果をレオパレス 21 に報告する予
定である。
以 上
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