8697 JPX 2020-11-30 15:10:00
システム障害に係る業務改善命令及び責任の所在の明確化について [pdf]

                                            2020 年 11 月 30 日
各 位
                    会 社 名 株 式 会 社 日 本 取 引 所 グ ル ー プ
                    代表者名 取締役兼代表執行役グループ CEO 清田 瞭
                    (コード 8697 東証第一部)
                    問合せ先 広報・IR部長               宮司 和幸
                    ( T E L   ( 0 3 ) 3 6 6 6 - 1 3 6 1)




       システム障害に係る業務改善命令及び責任の所在の明確化について




 先般のシステム障害により、投資者の皆様をはじめとする関係者の皆様に多大なご迷惑をお
掛けしましたことを改めて深くお詫び申し上げます。

 本日、当社・株式会社日本取引所グループ(以下「JPX」という。)と当社子会社の株式会社
東京証券取引所(以下「東証」という。)は、先般のシステム障害に関し、下記1.のとおり、
金融庁から業務改善命令を受けました。また、下記2.のとおり、責任の所在の明確化を行う
ことといたしました。

 当社グループは、今般の業務改善命令を厳粛かつ真摯に受け止め、システム対応と総点検の
実施をはじめ、確実に売買停止をするための手段の拡充や、市場停止及び再開に係るルールの
整備等も含めて、迅速かつ適切な回復策を拡充すべく、
                        「レジリエンス(障害回復力)」も重視
し、再発防止に全力を尽くしてまいります。

                         記

1.金融庁からの業務改善命令について

 本年 10 月 1 日、東証の売買システムにおいて障害が発生した。これを契機として、東証の全
ての取引の開始が不可能となり、その後も取引が再開できないまま、終日、全面的に停止した。

 東証においては、平成 30 年 10 月のシステム障害の発生を契機に各種の対応策を講じてきた
にもかかわらず、再びシステム障害が発生し、取引開始から取引時間が終了するまでの間、全
ての取引が停止に至ったことは、金融商品取引所に対する投資者等の信頼を著しく損なうもの
であると認められる。

 本件に関し、東証に対しては、発生原因等について、また、東証の親会社である JPX に対し
ては、グループ全体のシステムの信頼性向上に対する認識、課題及びその解決に向けた対応の
方針について、本年 10 月 2 日付で報告書の提出を求め、同月 16 日、東証及び JPX より金融庁


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に対し報告がなされた。

 金融庁では当該報告及び立入検査等を通じて発生原因等を確認したところ、本件事案は、直
接的には、障害が発生した機器の製品上の不具合が原因となって発生したものであるが、障害
が発生した機器の自動切替え機能の設定に不備があったことや、売買再開に係る東証のルール
が十分でなかったことなどが認められた。

 以上のことから、東証及び JPX に対し、以下の行政処分が行われた。



【Ⅰ.東証に対する業務改善命令(金融商品取引法第 153 条前段)】

 1. 以下の(1)~(4)の事項を含め、東証が本件事案等を踏まえて本年 10 月 16 日までに報告
  した各種の再発防止策及びその後に策定した再発防止策に関し、その内容及びこれらを実
  施するスケジュールなどについて、あらためて報告のうえ、迅速かつ確実に実施すること。

  (1)   東証と業務委託先は、システムの仕様と機器の製造元から提供されたマニュアルと
    が相違していたために機器の故障時に別系統への自動切り替えが行われない設定とな
    っていたことを把握していなかった。
        このため、東証は、既存の機器設定の再確認や更なる手動切替え手順の確認などによ
    り機器の故障時に確実かつ迅速に別系統への切り替えができる方策に取り組むことは
    当然として、システムにおいて使用する機器等に仕様変更が行われた際の確認プロセス
    を見直すこと(業務委託先に対し見直しを求めることを含む。。
                               )
  (2)   売買を通常の方法で停止させるために複数の手段を準備していたが、いずれも故障
    が発生した機器の正常稼働を前提としていたため、通常の方法によらずに売買を停止せ
    ざるを得なかったことが当日中の売買再開の大きな支障となった。
        このため、東証は、今回障害の発生した機器に依存しない売買停止機能を開発するこ
    とは当然として、システム内の依存関係全般について点検を行い、取引の継続に重要な
    役割を果たす機能については特定箇所の故障が当該機能の停止に及ばないようにする
    ための方策に取り組むこと。
  (3) これまで、通常の方法によらない形で売買停止に至った場合において、当日中に売買
    を再開するとの事態を十分に想定していなかったため、東証と取引参加者との間で障害
    発生時に注文受付を制限するルールや売買停止までに受け付けた注文の取扱いについ
    てのルールが未整備であった。
        この結果、取引参加者においては、システム対応や顧客対応に係る態勢整備が不十分
    となっておりテストや訓練なども行われていなかった。
        また、売買再開に係る明確なルールが定められていなかったことも障害発生当日中の
    売買を再開することの大きな支障となった。
        このため、東証は、投資者等の保護や利便性の確保、安定した市場運営など取引所の
    果たすべき役割に関する様々な観点を踏まえ、通常の方法によらずに売買停止を行うケ
    ースも想定し、明確で実効的な注文の受付停止ルールや売買再開ルールの整備を行い、
    取引参加者も含めたテストや訓練を実施すること。



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      (4) 本年 10 月 16 日の東証より受けた報告において、東証はシステムの開発・維持に関
        する基本的な考え方について、これまでの「ネバーストップ」をスローガンとする信頼
        性向上の取り組みに加え、今後は「レジリエンス」(障害回復力)向上のための迅速か
        つ適切な回復策を拡充することとしている。
            こうした基本的な考え方の見直しを踏まえ、取り組むべき施策の洗い出しを行い、必
        要な対応を実施すること。

 2.         東証は、障害により取引が開始できず、その後も当日中に取引が再開できなかったこ
      とにより投資者等の信頼を著しく損なったことを踏まえ、市場開設者としての責任の所在
      の明確化を図ること。

 3. 上記 1.2.について、定期的に報告すること。



【Ⅱ.JPX に対する業務改善命令(金融商品取引法第 106 条の 28 第 1 項)】

 1. 以下の(1)から(3)までの事項を含め、JPX が本件障害事案等を踏まえて本年 10 月 16 日
      までに報告した各種の再発防止策及びその後に策定した再発防止策に関し、その内容及び
      これらを実施するスケジュールなどについて、あらためて報告のうえ、迅速かつ確実に実
      施すること。

      (1)   東証において、売買システムの機器の故障時に別系統への自動切り替えが行われな
        い可能性や正常に売買停止ができない可能性を踏まえた対応が行われていなかった。
            このため、東証はもちろんのこと、株式会社大阪取引所(以下「大取」という。)な
        ど各社において、システム障害の発生時にその影響を極小化する観点からシステム総点
        検及び早期復旧に向けた訓練を行わせること。
      (2) 東証において、市場運営者として、取引参加者をはじめとする市場関係者との間で十
        分にコミュニケーションをとり、あらかじめ合意したルールに基づき障害発生当日中の
        売買再開に関する意思決定を行うことができなかった。
            このため、東証はもちろんのこと、大取など各取引所において、取引参加者も含めた
        売買再開に係るルールを整備させること。
      (3) 東証におけるシステムの開発・維持に関する基本的な考え方については、これまでは
        「ネバーストップ」をスローガンとする信頼性向上が中心に置かれており、これと比べ
        て「レジリエンス」(障害回復力)向上の取組みが遅れていた。
            今般、東証は、
                  「ネバーストップ」をスローガンとする信頼性向上策に加え、
                                             「レジリ
        エンス」向上のための迅速かつ適切な回復策を拡充することとしている。
            これを踏まえ、東証はもちろんのこと、大取など各社におけるシステムの開発・維持
        に関する基本的な考え方について見直しを行わせ、 レジリエンス」
                              「        の向上を図ること。

 2. JPX の子会社である東証において、障害により取引が開始できず、その後も当日中に取
      引が再開できなかった。その結果、投資者等の信頼を著しく損なったことを踏まえ、子会
      社である取引所の管理に係る責任の所在の明確化を図ること。

 3. 上記 1.2.について、定期的に報告すること。


                            - 3 -
2.責任の所在の明確化について

 システム障害及び業務改善命令を踏まえて、以下のとおり、責任の所在の明確化を行うこと
といたします。

(JPX)

  取締役 兼 代表執行役グループ CEO        清田 瞭     月額報酬 50%減額 4 か月
  取締役 兼 代表執行役グループ Co-COO     宮原 幸一郎   辞任(11 月 30 日付)
  常務執行役 CIO                  横山 隆介    月額報酬 20%減額 4 か月

(東証)

  代表取締役社長    宮原 幸一郎   辞任(11 月 30 日付)
  執行役員       川井 洋毅    月額報酬 10%減額 4 か月

 ※ 報酬の減額は、2020 年 12 月分より実施
 ※ 長谷川高顕株式部長及び田村康彦 IT 開発部トレーディングシステム部長に対し、厳重
   注意とします。


                                                 以 上




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