8586 日立キャピ 2019-07-25 16:45:00
特別調査委員会の調査報告書の受領及び公表に関するお知らせ [pdf]

                                                                           2019年7月25日
                                             会       社       名    日立キャピタル株式会社
                                             代   表       者   名   執行役社長兼 CEO 川部     誠治
                                                  (コード番号:8586・東証第一部)
                                                                  経営企画部長 浜﨑 一紀
                                             問合せ先責任者               (TEL:03-3503-2118)


           特別調査委員会の調査報告書受領及び公表に関するお知らせ

     日立キャピタル株式会社(執行役社長兼 CEO:川部 誠治/以下、当社)は、2019 年 6 月 17 日付
「特別調査委員会設置に関するお知らせ」のとおり、当社子会社である日立商業保理(中国)有限公司
における不正常取引の可能性があるファクタリング取引に関して、全容把握と抜本的な原因を究明す
るため、特別調査委員会を設置して調査を進めてまいりました。
     本日、特別調査委員会より「調査報告書」を受領いたしましたのでお知らせいたします。
     つきましては、プライバシー、機密情報保護及び法的手続き等を考慮し、部分的な非公表措置
(符号化等含む)を施しました「調査報告書(開示版)」を添付申し上げます。
     なお、本案件におきましては、損害の回復と事案の解決に向けた努力を継続してまいります。

                                         記


1.    特別調査委員会の調査結果について
       添付「調査報告書(開示版)」をご覧ください。

2.    再発防止策について
       当社は、「調査報告書」の調査結果及び特別調査委員会から受けた提言を踏まえ、良質債権の
      維持を確固たるものとするため、大口ファクタリング事業等の抜本的な見直し、さらには、
      リスクマネジメントのより一層の強化など、再発防止の徹底に努めてまいります。
       なお、特別調査委員会から受けた再発防止策に関する提言は、添付の「調査報告書(開示版)」
      に記載のとおりです。

3.    役員の処分等について
       本案件における役員の処分等につきましては、決定次第、速やかにお知らせいたします。

4.    連結財務諸表への影響について
       特別調査委員会の調査で判明した 2019 年 3 月期連結財務諸表に与える影響額は、添付の
      「 調 査 報 告 書 (開 示 版 )」 に 記 載 の と お り で す 。 当 社 は こ れ を 受 け て 、 2019 年 3 月 期 に
      約 206 億円の引当金を計上することといたしました。

5.    株主還元について
       現在、特別配当の実施を検討しており、確定次第、速やかに公表させていただきます。

     株主・投資家の皆様をはじめ、関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をおかけし、深くお詫び
申し上げます。
                                                                                 以   上
日立キャピタル株式会社     御中
                                               2019 年 7 月 25 日




                 調   査 報 告 書
                     (開示版1)




                           特   別   調   査   委     員       会



                           委員長         平   岩         孝 一 郎



                           委   員       丸   山         琢       永



                           委   員       平   尾                 覚



    本報告書は、与えられた時間及び条件の下において、可能な限り適切と考えられる調
査、分析等を行った結果をまとめたものであるが、今後、法的手続等の過程において、新
たな事実等が判明した場合には、その結論等が変わる可能性がある。また、本報告書は、
日本及び中国における裁判所、捜査当局その他の関係当局等の判断を保証するものではな
い点にも留意する必要がある。




1
     開示版においては、個人名、社名、日付及び金額等の情報は、プライバシー保護、守秘義務、機密
     情報の漏洩に伴う損失発生防止等の観点から、記号化又は非開示としている。併せて、今後、損害
     の回復をはじめ、事案の解決を図ること等が予定されていることに鑑み、必要に応じて原文からの
     修正を行っている。
第1章    調査の概要 ························································ - 1 -

  第1       調査の経緯···················································· - 1 -

  第2       本件調査の目的 ················································ - 1 -

  第3       調査の内容、方法等 ············································ - 2 -

       1   本件調査の体制 ················································ - 2 -
       2   本件調査の期間 ················································ - 2 -
       3   本件調査の方法 ················································ - 2 -

第2章    調査の前提 ······················································· - 12 -

  第1       HCF・HCL の事業概要 ·········································· - 12 -

       1   HCF の事業概要 ··············································· - 12 -
       2   HCL の事業概要 ··············································· - 13 -

  第2       HCF・HCL における業務フロー ·································· - 16 -

       1   HCF におけるファクタリングの業務フロー(概要) ················· - 16 -
       2   HCL におけるリース及びリース・バックの業務フロー(概要) ······· - 17 -
       3   HCL におけるリース債権譲渡の業務フロー(概要) ················· - 19 -
       4   HCL におけるリース資産譲渡の業務フロー(概要) ················· - 20 -

  第3       HCF におけるファクタリングに係る内部統制の概要 ··············· - 21 -

第3章    調査結果 ························································· - 23 -

  第1       HCF の調査結果・本件詐欺等の構造 ····························· - 23 -

       1   4 案件の概要 ················································· - 23 -
       2   債権の実在性 ················································· - 24 -
       3   ファクタリング業務に係る内部統制 ····························· - 25 -

  第2       HCF における本件詐欺等の関与者 ······························· - 25 -

  第3       HCL における本件詐欺等の関与者 ······························· - 26 -

  第4       HC における HCF・HCL の業務管理の状況 ························· - 27 -

  第5       HCL における類似事案の存否 ··································· - 28 -

  第6       影響額······················································· - 29 -




                                    i
第4章    本件詐欺等を防ぐことができなかった原因 ··························· - 31 -

  第1      中国におけるファクタリング事業のリスクが十分に認識されていなかったこ
          と··························································· - 31 -

  第2      オペレーショナルリスク管理態勢に強化の余地があったこと ······· - 33 -

  第3      社内規定等が、悪意ある詐欺行為等を確実に排除できる内容にはなっていな
          かったこと··················································· - 33 -

第5章    再発防止に向けた更なる強化策 ····································· - 35 -

  第1      債務者の真正な担当者との接触を確保するための措置を徹底すること- 35 -

  第2      入手した書類について真正の確認を徹底すること ················· - 35 -

  第3      HCF 従業員にファクタリングの事業リスクを理解してもらうための措置を講
          じること····················································· - 35 -

  第4      オペレーショナルリスク管理態勢を強化すること ················· - 36 -

  第5      社内規定・マニュアルを整備するとともに、必要な範囲でこれらの整備に本
          社が関与できるような体制を構築すること ······················· - 36 -




                                    ii
第1章      調査の概要


第 1 調査の経緯


    2019 年 3 月 29 日、日立キャピタル株式会社(以下「HC」という。)の取締役会において、
HC の子会社(議決権所有割合:100%)である日立商業保理(中国)有限公司(以下「HCF」とい
う。)がサプライヤーによる架空取引に巻き込まれた疑いがあることが報告された。
    当該報告を受け、HC は、2019 年 4 月 22 日に社内調査委員会(以下「社内調査委員会」とい
う。)を設置し、HCF における債権の実在性等を確認したところ、甲案件、乙案件、丙案件
及び丁案件の計 4 案件(以下、総称して「4 案件」という。)2において、債権の実在性につき疑
義が生じ、その原因として第三者による詐欺又は不正行為の嫌疑が浮上した(以下、社内
調査委員会による調査(以下「当初調査」という。)において発覚した第三者による詐欺又は
不正行為の嫌疑を総称して「本件詐欺等」という。)。さらに当初調査の過程で、4 案件のう
ち一部の案件は、HC の子会社(議決権所有割合:90%)である日立租賃(中国)有限公司(以下
「HCL」という。)が HCF に紹介したものであることが確認された。
    これを受けて、2019 年 6 月 17 日、HC は監査委員会の提言を踏まえ、より客観性・信頼
性を高めた調査を実施するために、特別調査委員会(以下「当委員会」という。)を設置し、
当委員会に対して、本件詐欺等が HC の業績に与える影響等を把握することを目的として、
HCF 及び HCL における債権の実在性並びに HCF 及び HCL の役職員の本件詐欺等への関与の有
無に関する調査(以下「本件調査」という。)を依頼した3。


第 2 本件調査の目的


    上記のとおり、本件調査の目的は、HC の業績に与える影響を把握するために必要な範囲
で、以下の事項に関する調査及び検討を行うことである。
     ・   HCF 及び HCL における債権の実在性の確認
     ・   HCF 及び HCL の役職員の本件詐欺等への関与の有無の確認
    上記調査結果等を踏まえて、当委員会は、本件詐欺等の原因・背景及び再発防止策につ
いても分析・検討した。




2
     4 案件の概要については第 3 章第 1 の 1 を参照。
3
     なお、4 案件については、当初調査及び本件調査と並行する形で、損害の回復及び事案の解決が図ら
     れているところであり、本件調査の終了日においてもこれらは継続している点を付言しておく。




                               - 1 -
第 3 調査の内容、方法等


1    本件調査の体制


    当委員会は、
     委員長   平岩孝一郎(HC 独立社外取締役)
      委員   丸山   琢永(PwC ビジネスアシュアランス合同会社 パートナー 公認会計士)
      委員   平尾    覚(西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士)
からなる。なお、丸山琢永委員及び平尾覚委員は HCF、HCL 及び HC と利害関係を有しない
委員である。
    また、当委員会は、PwC ビジネスアシュアランス合同会社(PwC グローバルネットワーク
のメンバーファームを含む)から本多守公認会計士、那須美帆子公認会計士他 47 名、西村
あさひ法律事務所から野村高志弁護士、鈴木悠介弁護士他 6 名を調査の補助者として起用
した。
    また、当委員会は、限られた調査期間の中で HC の 2019 年 3 月期決算を確定するため、
HC に社内調査委員会の構成員を含む調査事務局(以下「調査事務局」という。)を設置して調
査を実施した。
    したがって、当委員会は日本弁護士連合会の定める「企業等不祥事における第三者委員
会ガイドライン」に完全に依拠するものではないが、同ガイドラインの趣旨を十分に踏ま
えて調査手続の立案及び調査報告書の起案権を当委員会に専属させるなど、客観性及び信
頼性のある調査を実施するための体制を確保した。


2    本件調査の期間


    当委員会は、2019 年 6 月 17 日から同年 7 月 23 日までの期間にわたり調査を行うととも
に、計 6 回にわたり、委員会を開催した。


3    本件調査の方法


(1) 当初調査の引継ぎ


    当委員会は本件調査の開始にあたり、社内調査委員会より、当初調査の手続及び調査の
状況の説明を受け理解するとともに、収集された資料等を引き継いだ。
    当委員会が当初調査より引き継いだ資料等の概要は以下のとおりである。

        社内調査委員会による調査報告書
        4 案件に係るファクタリング基本契約書、及び個別債権譲渡における債務者承諾




                           - 2 -
         書4等の各種証票類
        乙案件及び丁案件に係る再ファクタリング契約書
        債権の実在性等に関する弁護士事務所の法律意見書
        関係者インタビュー議事録
        4 案件以外の債権の実在性の検証作業内容及びその結果


    また、当委員会は、当初調査における以下の調査方法・調査結果等について検討した。
        電子メールのレビュー
        HCF 及び HCL 役職員へのインタビュー
        関連文書(与信申請書、売買契約書、発票、受領証、中国人民銀行(以下「PBOC」と
         いう。)確認証跡、売掛金譲渡通知書等)の閲覧
        HCF 職員へのアンケート調査
        原債権者及び債務者のバックグラウンド調査
        ファクタリング契約の PBOC への登録の確認


(2) HCF における債権の実在性の検証


    当委員会は、当初調査において債権の実在性に疑義が生じた 4 案件について、債権の実
在性の検証のために、上記(1)に加え、以下の調査を実施した。
        関連規定の閲覧、関連帳票の閲覧並びにインタビューによる HCF のファクタリン
         グ契約締結に係る業務フロー及び内部統制の理解
        4 案件に係るファクタリング基本契約書、及び個別債権譲渡における売掛金譲渡
         通知書等の各種証票類の閲覧
        再ファクタリング契約書の閲覧


    また、特に、当委員会は、当初調査において債権の実在性に疑義がないと結論付けられ
たその他のファクタリング案件について、その調査方法・調査結果等の適切性を検討する
ために、以下の調査を実施した。
        当初調査で実施された一部のファクタリング案件に関する与信申請書、売買契約
         書、発票、PBOC 確認証跡、売掛金譲渡通知書等の閲覧結果の査閲
        当初調査で実施された残高確認手続結果の査閲
        当初調査で実施された債権者及び債務者訪問記録の査閲




4
     HCF においては「売掛金譲渡通知書」又は「売掛金譲渡確認書」と表現される。




                            - 3 -
(3) HCL における債権の実在性の検証


ア    調査対象とした債権


    当委員会は、2019 年 3 月末時点の HCL のリース債権5のうち、相対的にリスクが高いと思
われる債権を選定し、選定した債権について実在性を検証した。
    検証の対象とした債権は、以下の 32 件である。
                                                            6
                                                 (単位:百万円)

                                              債権残高
    No.   契約番号      契約形態           担当部門
                                          (2019 年 3 月末時点)

     1    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     2    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     3    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     4    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     5    非開示      リース・バック         非開示               非開示

     6    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     7    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     8    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     9    非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     10   非開示      リース・バック         非開示               非開示

     11   非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     12   非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     13   非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

     14   非開示      リース債権譲渡         非開示               非開示

5
     HCL のリース債権には、通常のリース取引から生じるリース債権のみならず、リース・バック取引、
     リース債権譲渡取引及びリース資産譲渡取引等から生じた債権を含む。それぞれの取引の概要は、
     第 2 章第 1 及び第 2 を参照。
6
     本報告書においては、別段の定めがない限り、金額表示は 1 元=16.33 円で円換算している。




                           - 4 -
 15   非開示     リース・バック       非開示        非開示

 16   非開示     リース資産譲渡       非開示        非開示

 17   非開示     リース資産譲渡       非開示        非開示

 18   非開示     リース資産譲渡       非開示        非開示

 19   非開示     リース資産譲渡       非開示        非開示

 20   非開示     リース・バック       非開示        非開示

 21   非開示     リース債権譲渡       非開示        非開示

 22   非開示     リース債権譲渡       非開示        非開示

 23   非開示     リース債権譲渡       非開示        非開示

 24   非開示     リース債権譲渡       非開示        非開示

 25   非開示     リース・バック       非開示        非開示

 26   非開示     リース資産譲渡       非開示        非開示

 27   非開示     リース・バック       非開示        非開示

 28   非開示     リース・バック       非開示        非開示

 29   非開示     リース・バック       非開示        非開示

 30   非開示     リース債権譲渡       非開示        非開示

 31   非開示     リース債権譲渡       非開示        非開示

 32   非開示     リース債権譲渡       非開示        非開示

                                  合計   55,624



 実在性の検証にあたっては、リース債権譲渡契約(リコースあり)の場合には債権の譲渡
人であるリース会社、リース資産譲渡契約(リコースなし)及びリース・バック契約の場合
にはリース契約の借手(ユーザー)を訪問し、各種取引関連証憑を閲覧するとともに、債権
残高確認状を入手した。




                    - 5 -
イ    債権管理の状況


    当委員会は実在性の検証をするにあたり、HCL におけるリース債権管理に係る内部統制
の状況を把握するために、規定類の閲覧、担当者へのインタビュー及び証憑類の閲覧を行
い、業務フローを理解した。


(4) 関係資料の収集


 当委員会は、上記(1)から(3)記載の HCF 及び HCL の債権の実在性に関係する資料の他、
HCF、HCL 及び HC の社内規程・マニュアル、債権に関する帳簿書類、証憑類等、その他関
係する資料等を収集し、その内容を閲覧・検討した。当委員会が収集した主な資料は以下
のとおりである。


       HCF の業務フローに関する書類・規程等
       与信決裁権限規定

       (HCF)信用リスク管理の流れ

       ファクタリング取扱いガイドライン

       債権・回収管理規定

       途上与信管理規定

       社内申請事項(経伺認可権限・事務手続承認権限・サイン権限)

       銀行支払システム管理規定

       業務マニュアル

       業務フロー


       HCL の業務フローに関する書類・規程等
       日立租賃(中国)有限公司経理マニュアル

       審査・与信マニュアル

       「日立租賃(中国)有限公司」信用リスク管理規則

       与信決裁権限ガイドライン

       公共案件与信ガイドライン

       与信枠管理規定

       契約変更申請の決裁権限及び事務処理方法について

       債務者変動(リース地位継承契約)の事務処理基準

       社内申請事項(経伺認可権限・事務手続承認権限・サイン権限)




                         - 6 -
        HC の子会社管理に関する書類・規程等
        グループ会社経営管理方針

        グローバル監査規則

        内部監査規則

        内部監査実施規定

        信用リスク管理方針

        信用リスク管理規則

        審査規定集(海外子会社)海外関連会社社内与信権限基準

        審査規定集(海外子会社)海外大口申請審査規定


(5) インタビュー


    当委員会は、2019 年 6 月 26 日から同年 7 月 8 日にかけて、HCF、HCL 及び HC の関係者合
計 17 名に対して、下記のとおり、インタビューを実施した。
    インタビュー対象者を選定するにあたっては、HCF 及び HCL が組織的に本件詐欺等に関
与していた可能性の有無を確認するべく、HCF 及び HCL のマネジメント層を中心にインタ
ビューを実施した。また、HCF、HCL 及び HC の業務フローやリスク管理体制を確認するべ
く、ファクタリング業務やリース業務のフローの枢要に関与している部門の部長・経理7等
に対するインタビューも実施した。その際、候補者が既に退職している場合は、当該候補
者に準じて業務フロー等を理解していると考えられる者をインタビュー対象者として選定
した。もっとも、法的手続の支障となることを避けるために、中国法弁護士の助言も踏ま
え、HCF 及び HCL の従業員を対象としたインタビューは、本件調査の目的を達成するのに
必要な限りで、限定的に実施した。上記と同様の観点から、HCF 及び HCL の役職員らを対
象としたアンケート調査やホットラインの設置等も実施していない。




7
     有限公司における管理職




                             - 7 -
<インタビュー対象者>
        対象者                   所属・役職8            インタビュー実施日9
                   A 法律事務所
         a氏                                       6 月 26 日
                   HCF 顧問弁護士
                                                  6 月 26 日
         b氏        HC 管理職(元 HCF 管理職)
                                                   7月5日
                                                  6 月 27 日
         c氏        B 社管理職(元 HCF 管理職)
                                                   7月5日
                                                  6 月 27 日
         d氏        HCF 管理職
                                                   7月2日
                                                  6 月 28 日
         e氏        HCF 管理職
                                                   7月2日
         f氏        HCF 管理職                         7月2日
         g氏        HCF 非管理職                        7月2日
         h氏        HCL 管理職兼 HCF 管理職                7月1日
         i氏        HCL 管理職                         7月1日
         j氏        HCL 管理職                         7月1日
         k氏        HCL 管理職                         7月1日
         l氏        HCL 管理職                         7月1日
         m氏        HCL 管理職兼 HCF 管理職                7月1日

         n氏        HC 管理職(元 HCL 管理職兼 HCF 管理職)      7月2日

         o氏        HC 管理職兼 HCL 管理職兼 HCF 管理職        7月1日
         p氏        HC 管理職                          7月5日
         q氏        HC 管理職                          7月8日


(6) デジタルフォレンジック調査


ア    調査対象デバイス及び電子データの保全・受領


    当委員会は、2019 年 6 月 19 日から同月 24 日にかけて、HCF 及び HCL の関係者について、
会社貸与パーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)及び会社貸与スマートフォン(以下
「スマートフォン」という。)の電子データを保全した。また、メールサーバについて、当


8
     インタビュー実施時における人事発令上の所属及び役職。異動又は帰任した者は、括弧内に HCF 又
     は HCL 所属時の所属及び役職を記載した。
9
     いずれも 2019 年に実施した。




                               - 8 -
委員会は、当初調査にあたって HCF 及び HCL がメールサーバの管理業務を委託している会
社の情報システム担当者が抽出した電子データを引き継ぐ形で受領し、保全した。
 HCF 及び HCL の関係者ごとの保全・受領データの概要は下表のとおりである。


<保全・受領データ対象者一覧>
        所属
 No.             氏名         PC     メールサーバ   スマートフォン
        (注 1)


  1      HCF     c氏         ●        ●         ●

  2      HCF     e氏         ●        ●         ●

  3      HCF     b氏         -        ●         -

  4      HCF     r氏       ●(注 2)     -         ●

  5      HCF     f氏         ●        ●       ●(3 台)

  6      HCF     s氏         ●        ●       ●(2 台)

  7      HCF     g氏         ●        ●       ●(2 台)

  8      HCF     t氏         ●        ●       ●(2 台)

  9      HCL     i氏         ●        ●         -

  10     HCL     l氏         ●        ●         -

  11     HCL     m氏         ●        ●         -

  12     HCL     j氏         ●        ●         -

  13     HCL     u氏         ●        ●         -

  14     HCL     v氏         ●        ●         ●

  15     HCL     w氏         ●        ●         ●

  16     HCL     x氏         ●        ●         ●

  17     HCL     y氏       ●(注 2)     -         -

  18     HCL     z氏         ●        ●         ●

  19    HCL      aa 氏       ●        ●         ●

  20    HCL      ab 氏       ●        ●         ●

       HCL/HCF    他       42 名      41 名      8台




                        - 9 -
                           合計      61 名         59 名          26 台

      (注 1)退職者及び帰任者については、在職時の所属を記載している。
      (注 2)r 氏及び y 氏は既に退職しているが、在職時に使用していた会社貸与 PC を保全した。


イ     PC 及びメールサーバのデータのプロセス及びレビュー10


     保全した PC のデータについては、可能な限り消去データの復元を行った。その後、上記
保全・受領データ対象者一覧のうち、No.1~20 の対象者をレビュー対象者として選定し
た。レビュー対象者の選定に際しては、上記(5)記載のインタビュー対象者の選定と同様、
HCF 及び HCL のマネジメント層、ファクタリング業務やリース業務のフローの枢要に関与
している部門の部長・経理等を中心に選定するとともに、4 案件の引き合い、与信審査、
契約締結、回収等の業務に関与した者も対象とした。選定した者のデータについては、
デ ー タ ベ ー ス 化 処 理 を 施 し た 上 で 、 MS Word フ ァ イ ル 、 MS Excel フ ァ イ ル 、 MS
PowerPoint ファイル、PDF ファイル等について、調査用レビュープラットフォームである
「Relativity」へのアップロード作業を実施した。メールサーバのデータについては、保全
データについて直接データベース化処理を施した上で、アップロード作業を実施した。
     調査用レビュープラットフォームにアップロードした PC 及びメールサーバの電子データ
総数は 29 万 8,281 件であり、そのうちキーワードを用いて絞り込みをかけた 3 万 5,091 件
について査読、レビューを実施したほか、その他情報に基づきドキュメント検索・レ
ビューを行った。


ウ     スマートフォンのデータの取り扱い


     上記保全・受領データ対象者一覧のうち、No.5、6、7、8、14、15、16、18、19、20 の
対象者をレビュー対象者として選定した。レビュー対象者の選定に際しては、上記(5)記
載のインタビュー対象者の選定と同様、HCF 及び HCL のマネジメント層、ファクタリング
業務やリース業務のフローの枢要に関与している部門の部長・経理等を中心に選定すると
ともに、4 案件の引き合い、与信審査、契約締結、回収等の業務に関与した者も対象とし
た。選定した者について、具体的には、テキストメッセージを主な対象とし、抽出した
データをレビューした。スマートフォンから抽出したテキストメッセージについては、調
査用レビュープラットフォームにアップロードすることなくレビューを実施する方法を採
用した。




10
      調査目的への関連性の有無を区分する作業を含む。




                                - 10 -
(7) 類似事案の有無に関する調査


 本件詐欺等は、HCF におけるファクタリング取引で発生したことから、当初調査におい
て、HCF の 2019 年 4 月末時点において残高のある全てのファクタリング債権について実在
性の検証が行われた。当委員会は、上記(1)(2)記載のとおり、当初調査の結果を引き継い
だ上で、HCF におけるファクタリング債権の実在性を検証した。
 次に、HCL のリース債権についても類似事案の可能性を検討し、上記(3)記載のとおり、
実在性の検証を行った。
 なお、第 2 章で詳述するとおり、HCL を含むリース子会社のリース債権にはリース、リー
ス・バック、リース債権譲渡等から生ずる債権が含まれる。このうちリース債権譲渡取引
について、債権を買い取るという点においてはファクタリング取引に類似するが、リース
債権についてはリース物件が存在しその存否を確認していること、原債権者は過去に取引
のあるリース会社等であり過去の取引等を踏まえた原債権者の与信を検討した上で取引が
行われている等、本件詐欺等が発生した HCF におけるファクタリング取引の与信の状況と
は異なるため、HCL 以外のリース子会社については類似事案の有無に関する調査の対象外
とした。
 さらに、本件詐欺等の背景には、HCF が新規の取引先に対して債務者の信用力を重視し
た大口のファクタリング取引を行っていたことが挙げられる。中国以外でファクタリング
取引を行っている海外子会社のファクタリング事業の規模及び経営環境やビジネスモデル
等は HCF と大きく異なり、HCF 及び HCL のマネジメントが他の海外子会社の役員を兼務して
いる状況でもないことから、類似事案の有無に関する調査の対象外とした。




                      - 11 -
第2章    調査の前提


第 1 HCF・HCL の事業概要


1    HCF の事業概要


(1) 事業内容


    HCF は、ファクタリングに関する事業を専門的に行っている会社である。
    ファクタリングとは、債権者が債務者に対して有する売買代金債権など(以下「ファクタ
リング債権」という。)を第三者に譲渡し、第三者が、譲り受けた債権を管理し、債務者か
ら回収する金融サービスのことであり、この第三者のことを、一般的にファクターとい
い、HCF はファクターとして事業を行っている。


                     【関係図:ファクタリング】


                     ファクタリング債権

            債権者                    債務者


       リコース

                           管理・回収
            ファクター
             (HCF)




    ファクタリングにおける、主な事業リスクは、①債務者の資力不足等により、譲り受け
た債権を回収できないリスク(債務者の信用リスク)、及び②債権者・債務者間の売買契約
等が存在しないなどの理由によって、ファクタリング債権が実在しないリスク(ファクタ
リング債権の実在性に関するリスク)である。
    ファクター及び債権者は、ファクタリング契約において、「債権者がファクターに対し
てファクタリング債権を譲渡した後、債務者が債務不履行に陥った場合には、債権者が、
債務者に代わって売買代金債権等の支払責任を負う」旨合意することがある。当該合意に
基づいてファクターが債権者に対して償還請求を行うことを、一般的にリコースという。
    ファクターは、①債務者から債権譲渡に関して「異議なき承諾」を得ることができた場
合、債務者から直接債権の回収を図る(代金の流れ:債務者⇒ファクター)。一方、②債務
者から債権譲渡に関して「異議なき承諾」を得ることができない場合、若しくは「異議なき




                         - 12 -
承諾」を取得しない場合、ファクターは、債権者を介して債務者から債権の回収を図る(代
金の流れ:債務者⇒債権者⇒ファクター)。①の場合は、債務者の信用リスクが重視さ
れ、②の場合は、債権者の信用リスクが重視されることとなる。HCF は、基本的に、債務
者から債権譲渡に関して「異議なき承諾」を得ることとしており、HCF が手掛ける案件とし
ては、①が圧倒的に多い11。
     なお、ファクターは、ファクタリングによって取得した債権の全部又は一部を、さら
に、別のファクタリング事業者に譲渡することがある(以下「再ファクタリング」とい
う。)。


(2) HCF の設立経緯・事業の変遷


     元々、中国では、ファクタリング事業は、銀行等の金融機関にのみ認められていたが、
中国政府は、銀行から借り入れるだけの信用力を有しない中小企業の資金調達を促進する
べく、上海等における税制上・雇用上の優遇措置を備えた金融特区に限定して、銀行等の
金融機関以外によるファクタリング事業を解禁した。これを受け、日立キャピタルグルー
プにおける新たな事業モデルの展開を目的として、2013 年 8 月、HCF が設立された。
     当初、HCF は、日立グループの各企業のサプライヤーを主な取引先としてファクタリン
グ事業を展開していたが、日立グループ向けの事業は伸び悩んだ。そこで、HCF は、2016
年頃から、中国の一部の優良企業を債務者とする売掛金についてファクタリングを提供す
る方針を採用し、その後、徐々に優良企業を債務者とするファクタリング事業を拡大して
いくこととなった。


2     HCL の事業概要


     HCL は、リース、リース・バック、リース債権譲渡及びリース資産譲渡等に関する事業
を専門的に行っている会社である。


(1) リース


     リースとは、特定の物の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物の借手(レッシー)に対
し、一定期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、対価としてリース料を支
払う取引をいう。
     リースにおける、主な事業リスクは、レッシーの資力不足等によりリース料の回収がで
きないリスク(レッシーの信用リスク)である。


11
      HCF のファクタリング契約にも債権者に対するリコースは付いているものの、債権者の信用力は予備
      的に把握しているにすぎず、回収可能性は主に債務者の信用力によって判断されていた。




                          - 13 -
                   【関係図:リース】


                リース物件の使用収益権
       レッサー                    レッシー
        (HCL)                  (ユーザー)
                    リース料



(2) リース・バック


 リース・バックとは、特定の物の所有者がリース会社に当該物を売却した後、売却先で
あるリース会社との間で、当該物について賃貸借契約(リース契約)を締結し、元の所有者
が当該物をそのまま使用し続ける取引をいう。
 リース・バックには、①元々レッシーが所有する物を、レッサーに売却する場合と、②
リース・バック契約を締結するにあたり、レッシーがサプライヤーから新たに物を購入
し、これをレッサーに売却する場合がある。
 リース・バックにおける、主な事業リスクは、リースと同様の①レッシーの資力不足等
によりリース料の回収ができないリスク(レッシーの信用リスク)に加えて、②リース物件
が実在しない、又はリース物件がサプライヤーからレッシーに譲渡されていないリスク
(物の実在性に関するリスク)が存在する。


                 【関係図:リース・バック】

                    物の売却

       レッサー        代金の支払       レッシー
        (HCL)   リース物件の使用収益権    (ユーザー)


                    リース料



(3) リース債権譲渡


 リース債権譲渡とは、レッサーがレッシーに対して有するリース料の支払請求権(以下
「リース料債権」といい、ファクタリング債権と併せて「原債権」という。)を第三者に譲渡
し、第三者が、譲り受けたリース料債権を管理し、レッシーから回収する取引をいう。
 第三者は、レッシーが債務不履行に陥った場合には、リース債権の譲渡人であるレッ




                      - 14 -
サーに対して、レッシーに代わってリース料を支払うように請求する権利(リコース)を有
することがある。
     リース債権譲渡における、主な事業リスクは、①レッシーの資力不足等により譲り受け
たリース料債権を回収できないリスク(レッシーの信用リスク)、及び②レッサーとレッ
シー間のリース契約が実在しないなどの理由によって、リース料債権が実在しないリスク
(リース料債権の実在性に関するリスク)である12。
     また、リコース付きの場合、第三者(HCL)は、レッシーの信用リスクに代えて、レッ
サーの信用リスクを負うこととなる。


                       【関係図:リース債権譲渡】


             リース債権譲渡対価          リース物件の使用収益権

     第三者                                   レッシー
                リース料     レッサー
     (HCL)                                 (ユーザー)
                                    リース料

               リコース


(4) リース資産譲渡


     リース資産譲渡とは、リース料債権のほかに、レッサーがリース契約に基づきレッシー
にリースしている物を第三者に譲渡する取引であり、当該第三者は、レッサーとしての地
位を譲り受けるとともにリース資産を管理し、レッシーから直接、又はレッサー経由で間
接的にレッシーからリース料を回収する。
     なお、第三者とレッサーとのリース資産譲渡契約の条件にもよるが、第三者はレッサー
に対してリコースを有しないことがあるところ、HCL のリース資産譲渡では、レッシーの
債務不履行の場合においてレッシーに代わってレッサーに対してリース料を支払うように
請求する権利(リコース)が第三者に付与されないため、HCL ではリース資産譲渡に取り組
むにあたり、リース資産の譲渡人であるレッサーを厳選し、かつレッシーの信用力も調査
している。
     リース資産譲渡における、主な事業リスクは、①レッシーの資力不足等により譲り受け
たリース料債権を回収できないリスク(レッシーの信用リスク)、及び②レッサーとレッ
シー間のリース契約やリース契約の目的物が実在しない、又は第三者にリース契約の権利
やリースの目的物が移転していないリスク(リース契約やリースの目的物の実在性に関す


12
      この他、リース料債権が第三者に移転していない、又は対抗要件が具備されていない若しくは第三
      者に劣後するといったリスクも考えられるが、HCL のリース債権譲渡では、ほとんどの場合において
      このようなリスクはリコースによってレッサーの信用リスクに収斂しているため、ここでは詳細は
      割愛する。




                           - 15 -
るリスク)がある。


                       【関係図:リース資産譲渡】


                       リース物件の使用収益権

     第三者        譲渡対価                   ※資産譲渡に伴い移転
                                                     レッシー
     (HCL)               レッサー
             リース資産譲渡                                 (ユーザー)


              リース料                       リース料




第 2 HCF・HCL における業務フロー


    HCF 及び HCL における業務フローの概要は、下表のとおりである。


1    HCF におけるファクタリングの業務フロー(概要)


      業務区分         担当部署                         概要

                               ・日立グループや日系企業への営業は、市場推
                                 進課が担当している。それ以外の中国系企業
                                 等への営業は、HCL の営業部門が担当してい
                                 る。
                               ・債権者・債務者の基礎情報(資本関係、会社構
      引き合い         市場推進課
                                 成、その他インターネット上の情報など)を収
    (マーケティング)     HCL の営業部門
                                 集する。
                               ・債権者・債務者から与信資料(債権者・債務者
                                 間の基本契約書、営業許可書、直近 3 年間の
                                 財務諸表など)を収集し、企画開発課に提出す
                                 る。




                              - 16 -
                                 ・与信資料を基に与信の可否及び与信額を判断
                                  する。
                     企画開発課
                                 ・与信額によって、経営企画部長、総経理、日
       与信審査          日本本社
                                  本本社、董事会の承認が必要となる。
                      董事会
                                 ・HCL が HCF に保証をする場合13は、HCL の審査
                                  プロセスの承認が必要となる。

                      運営課        ・契約書を作成する。

                     市場推進課       ・債権譲渡実行時に必要となる書類(注文書、発
       契約締結
                   HCL の営業部門      票、出荷リスト、検収書、債権譲渡承諾書な
                     企画開発課        ど)を収集し、運営課に提出する。

      債権譲渡実行          運営課        ・債務者に付与されている与信枠を確認する。

        支払           財務総務課       ・債権者に送金を行う。

                     財務総務課       ・債務者からの入金状況を確認する。
        回収
                                 ・債権回収が滞った場合には、回収措置を講じ
                      運営課
                                  る。


2     HCL におけるリース及びリース・バックの業務フロー(概要)


       業務区分          担当部署                      概要
                                 ・日立グループ、日系企業及び新規分野への営
                                  業は、戦略事業発展部が担当している。それ
                                  以外の中国系企業等への営業は、営業部門が
                                  担当している。
                     営業部門        ・レッシーの基礎情報(資本関係、会社構成、そ
       引き合い
                  (戦略事業発展部を       の他インターネット上の情報など)を収集す
     (マーケティング)
                      含む)         る。
                                 ・大口審査会に提出し、引合経緯、会社概要、
                                  取組意義、利回り等を発表し、董事長、総経
                                  理、営業本部総監、信用管理部長の合議によ
                                  り取組可否の承認を得る。


13
      HCL が HCF に紹介した案件等、HCL と HCF の協働案件においては、HCL が HCF に対して保証を行うこ
      とになっていた。




                               - 17 -
                  ・レッシーから与信資料(営業許可書、直近 3 年
                    間の財務諸表、リース物件に関する書類など)
                    を収集し、信用管理課に提出する。

                  ・与信資料を基に与信の可否及び与信金額を判
                    断する。なお、○元を下回る場合には、営業
        信用管理課
                    部門長での確認・承認で足りる。
与信審査    日本本社
                  ・与信金額によって、信用管理部長、総経理、
        董事会
                    董事長、日本本社、董事会の承認が必要とな
                    る。

        業務支持課     ・契約書を作成する。
契約締結
        法務部       ・契約書の内容を確認する。

                  ・現地を訪問し、リース物件の検収を行う。
                  ・リース・バックの場合、レッシーから物件リ
                    ストを取得し、当該リストを基に検収を行
検収     資産債権管理課
                    う。
                  ・検収結果をまとめた報告書を作成し、業務支
                    持課に提出する。
                  ・与信条件が整っていることを確認した後、認
        信用管理課       可連絡票にサインし、業務支持課に提出す
                    る。

支払                ・必要書類(認可連絡票、検収報告書など)が
        業務支持課       揃っていることを確認し、資金課に支払を指
                    示する。

        資金課       ・レッシー又はサプライヤーに送金を行う。

                  ・債務者からの入金状況を確認する。
回収     資産債権管理課    ・債権回収が滞った場合には、回収措置を講じ
                    る。




                 - 18 -
3    HCL におけるリース債権譲渡の業務フロー(概要)


      業務区分        担当部署                   概要
                             ・日立グループ、日系企業及び新規分野への営
                               業は、戦略事業発展部が担当している。それ
                               以外の中国系企業等への営業は、営業部門が
                               担当している。
                             ・レッサー・レッシーの基礎情報(企業登記情
                               報、インターネット上の情報など)を収集す
                  営業部門         る。
      引き合い
                (戦略事業発展部を    ・大口審査会に提出し、引合経緯、会社概要、
    (マーケティング)
                   含む)         取組意義、利回り等を発表し、董事長、総経
                               理、営業本部総監、信用管理部長の合議によ
                               り取組可否の承認を得る。
                             ・レッサー・レッシーから与信資料(レッサー・
                               レッシー間のリース契約書、営業許可書、直
                               近 3 年間の財務諸表など)を収集し、信用管理
                               課に提出する。

                             ・与信資料を基に与信の可否及び与信金額を判
                               断する。なお、○元を下回る場合には、営業
                 信用管理課
                               部門長での確認・承認で足りる。
      与信審査        日本本社
                             ・与信金額によって、信用管理部長、総経理、
                  董事会
                               董事長、日本本社、董事会の承認が必要とな
                               る。

                 業務支持課       ・契約書を作成する。
      契約締結
                  法務部        ・契約書の内容を確認する。

                             ・与信条件が整っていることを確認した後、認
                 信用管理課         可連絡票にサインし、業務支持課に提出す
                               る。
       支払
                             ・必要書類(認可連絡票など)が揃っていること
                 業務支持課
                               を確認し、資金課に支払を指示する。

                  資金課        ・レッサーに送金を行う。




                            - 19 -
                             ・レッサーからの入金状況を確認する。
       回収       資産債権管理課      ・債権回収が滞った場合には、主としてレッ
                               サーに対して回収措置を講じる。


4    HCL におけるリース資産譲渡の業務フロー(概要)


      業務区分        担当部署                   概要
                             ・日立グループ、日系企業及び新規分野への営
                               業は、戦略事業発展部が担当している。それ
                               以外の中国系企業等への営業は、営業部門が
                               担当している。
                             ・レッサー・レッシーの基礎情報(企業登記情
                               報、インターネット上の情報など)を収集す
                  営業部門         る。
      引き合い
                (戦略事業発展部を    ・大口審査会に提出し、引合経緯、会社概要、
    (マーケティング)
                   含む)         取組意義、利回り等を発表し、董事長、総経
                               理、営業本部総監、信用管理部長の合議によ
                               り取組可否の承認を得る。
                             ・レッサー・レッシーから与信資料(レッサー・
                               レッシー間のリース契約書、営業許可書、直
                               近 3 年間の財務諸表など)を収集し、信用管理
                               課に提出する。

                             ・与信資料を基に与信の可否及び与信金額を判
                               断する。なお、○元を下回る場合には、営業
                 信用管理課
                               部門長での確認・承認で足りる。
      与信審査        日本本社
                             ・与信金額によって、信用管理部長、総経理、
                  董事会
                               董事長、日本本社、董事会の承認が必要とな
                               る。

                 業務支持課       ・契約書を作成する。
      契約締結
                  法務部        ・契約書の内容を確認する。

                             ・与信条件が整っていることを確認した後、認
                 信用管理課         可連絡票にサインし、業務支持課に提出す

       支払                      る。

                             ・必要書類(認可連絡票など)が揃っていること
                 業務支持課
                               を確認し、資金課に支払を指示する。




                            - 20 -
                資金課      ・レッサーに送金を行う。

                         ・レッサー経由でレッシーから支払われるリー
                            ス料の入金状況を確認する。
     回収       資産債権管理課
                         ・債権回収が滞った場合には、主としてレッ
                            シーに対して回収措置を講じる。


第 3 HCF におけるファクタリングに係る内部統制の概要


 HCF におけるファクタリング契約に係る内部統制の概要は、下表のとおりである。


業務                                              責任
     統制名称               統制内容                          頻度
区分                                              部署

            入手した与信資料に基づき与信申請書を記入し、承認
            に回す。与信申請書に必要な資料は下記のとおりであ
            る(顧客から提供された資料には社判が必要)。
            ・顧客押印済の営業許可書、税務登記証、組織機構             市場推
             コード証の写し(“三証合一”が完成した会社は更            進課
     与信申請                                             不定期
             新した営業許可書だけ提出する)                    企画開
            ・法定代表人の ID カード或いはパスポートの写し           発課
            ・直近 3 年間の財務諸表の写し又は信用調査報告書
            ・案件申請サマリーシート
            ・S&P 結果(公共及び金融を除く)

            与信申請は下記の権限により承認される。
            ・○元以下:
与信
              HCF 営業部・企画部→HCF 経営企画部長→HCF 総経
審査
              理決済
            ・○元以下(債務者:日立グループ限定):
              HCF 営業部・企画部→HCF 経営企画部長→HCF 総経
              理決済
            ・○元未満:                              企画開
     与信承認                                             不定期
              HCF 営業部門→HCF 経営企画部→HCF 総経理→HC 本   発課
              社決済
            ・○元以上:
              HCF 営業部門→HCF 経営企画部→HCF 総経理→HCF
              董事長→HC 本社決済
            ・HCF 純資産○%超(設定当時○元):
              HCF 営業部門→HCF 経営企画部→HCF 総経理→HCF
              董事長→HC 本社決済→HCF 董事会決議




                        - 21 -
業務                                            責任
     統制名称                   統制内容                    頻度
区分                                            部署
               顧客は「売掛金譲渡申請書」及び対象取引の資料をス
               キャンして HCF に交付(送付)する。最終的にこれらを
               受領した運営課は下記のような資料を審査する。
               ・注文書
               ・発票(入手できる場合、国家税務総局全国増値税発
     売掛金譲       票検査平台で発票真実性の確認を行う)
                                              運営課   不定期
     渡の承認      ・出荷リスト及び検収書
               ・照合リスト
               ・開票情報表及び一般納税資格証明 (初回のみ)
契約
締結             全部揃わない場合は、発票或いは検収書を入手する必
               要がある。
     債務者に
               関連資料の審査が完了した後、運営課が「売掛金譲渡       運営課
     よる売掛
               通知書」を準備し、企画開発課及び営業担当部署が債       企画開   不定期
     金譲渡の
               務者を訪問し、通知書に押印することを要求する。        発課
     確認
               運営課が PBOC のシステムで債権者の登記状況を確認
               し、二重譲渡がないことを確認し、譲渡登記する。そ
     PBOC 登記                                  運営課   不定期
               の後登記した証憑を印刷して、「PBOC 转让登记查询没
               有问题」の章を押印する。

               運営課が「支払申請表」を記入し、下記資料とともに財
債権             務総務課に提出する。
譲渡   支払申請      ・売掛金譲渡確認書                      運営課   不定期
実行             ・PBOC 登記
               ・ファクタリング契約書


               ネットバンキングの使用者は「支払申請」と「支払承認」     財務総
     送金権限                                           不定期
               両方の権限を併せ持つことはできない。             務課

               財務総務課がネットバンキングで入金状況を確認し、
回収             入金がある場合、実際の入金状況に基づき、売掛金の
                                              財務総
               消込処理をする。契約条件どおり「債権者返済」、「債
     入金処理                                     務課    日次
               務者返済」或いは「間接返済」になっているかどうかは
                                              運営課
               運営課が確認し、相違があれば月次の経営会議にて報
               告する。




                           - 22 -
第3章     調査結果


第 1 HCF の調査結果・本件詐欺等の構造


1    4 案件の概要


    第 1 章第 1 記載のとおり、当初調査の結果、HCF の取り扱ったファクタリング取引のう
ち、4 案件につき、債権の実在性に疑いがあり、甲案件、丙案件、丁案件については詐欺
の被害に遭った可能性があることが判明した。その概要は以下のとおりである。


(1) 甲案件


    甲案件は、2018 年に実行された、債権者を C 社、債務者を D 社とする売掛金債権に係る
2 者間リコース付通知・承諾有売掛ファクタリング契約である。
    甲案件は、HCL の営業担当者が、他社から紹介された案件であり、D 社は HCF にとって新
規の取引先であった。HCF は、ファクタリング契約締結に際して、C 社が D 社と締結したと
される契約書等の証憑類を確認し、債権の実在性があると判断した。また、HCF の担当者
は、D 社を訪問し、D 社の責任者を自称する人物から売掛金譲渡通知書を取得したり、支払
承諾書に D 社の押印及び同人の署名を得るなどした。
    しかし、その後、HCF が別のルートからアポイントメントを得て D 社の別の人物と面談
した結果、従前面談した人物(上記の D 社の責任者を自称する人物)は実は D 社の責任者で
はなかった(本物の D 社の責任者とは別人であった)ことが判明し、また、HCF が収集した
証憑類はいずれも偽造されたものである可能性があり、実際には取引実態がなかった可能
性があることが明らかになった。


(2) 乙案件


    乙案件は、2018 年に実行された、債権者を E 社及び F 社、債務者を G 社とする売掛金債
権に係る 2 者間リコース付通知・承諾有売掛ファクタリング契約である。
    HCF は、他社の紹介を契機に、G 社を債務者とする本案件の獲得に至っており、G 社は
HCF にとって新規の取引先であった。HCF は、本案件のファクタリング契約締結に際して、
E 社及び F 社と G 社との契約書等の証憑類を確認し、債権の実在性があると判断した。
    その後、HCF は、G 社の責任者を自称する人物と面談や電話等でやり取りをしたが、この
人物が実際には G 社の責任者本人ではなかったことが疑われている。HCF は、その後 G 社を
訪問して残高確認書を取得したものの、以上の経緯を踏まえると、乙案件において、不正
常取引がなされた疑いが生じている。




                         - 23 -
(3) 丙案件


    丙案件は、2018 年から 2019 年に実行された、債権者を H 社、債務者を I 社及び J 社とす
る売掛金債権等に係る 2 者間リコース付通知・承諾有売掛ファクタリング契約である。
    丙案件は、HCL の営業担当者が、他社から H 社の紹介を受けて獲得したものであり、H 社
は HCF にとって新規の取引先であった。HCF は、本案件のファクタリング契約締結に際し
て、H 社と I 社及び J 社との契約書等の証憑類を確認し、債権の実在性があると判断した。
    その後、上記(1)記載のとおり、甲案件における債権の実在性に疑義が生じたことか
ら、HCF の担当者は、I 社において、同社の責任者を自称する人物と面談し、当該人物の名
刺及び社員証を確認した。これ以後、HCF は、H 社を通じて複数回 I 社との接触を図るなど
したが、いずれも叶わなかった。そこで、HCF の担当者が直接 I 社を訪問したところ、上
記 I 社の責任者を自称する人物が偽者であったことが判明し、HCF が H 社から受領していた
証憑類も偽造されたものである可能性があることも明らかになった。これを受けて、HCF
の担当者が J 社を訪問したところ、HCF が受領していた J 社に関する証憑類も偽造されたも
のである可能性があることが明らかになった。


(4) 丁案件


    丁案件は、2017 年から 2019 年にかけて実行された、債権者を K 社、債務者を L 社とする
売掛金債権に係る 2 者間リコース付通知・承諾有売掛ファクタリング契約である。
    丁案件は、HCL の営業担当者が、HCF に紹介した案件であり、L 社は HCF にとって新規の
取引先であった。HCF は、本案件のファクタリング契約締結に際して、K 社と L 社との契約
書等の証憑類を確認し、債権の実在性があると判断した。
    しかし、その後、HCF は証憑類に疑義があることを認識し、HCF の担当者が L 社の責任者
と面談して確認したところ、上記証憑類はいずれも偽造されたものである可能性があるこ
とが明らかになった。


2    債権の実在性


    第 1 章第 3 の 3(1)記載のとおり、当委員会が当初調査において実施された手続の検討を
行った結果、甲案件、丙案件及び丁案件について原債権が実在する可能性が極めて低いと
した当初調査の結果に特に不合理な点はみられなかった。
    乙案件については、原債権の実在性に疑義が生じているとした当初調査の結果に特に不
合理な点はみられなかった。
    なお、これらの案件は債権者と HCF の間の 2 者間リコース付通知・承諾有売掛ファクタ
リング契約となっており、「本件ファクタリング契約において法律、行政法規等の強行的
規定に違反せず、かつその他の無効事由がない場合、本件売掛債権が真実に存在するもの




                           - 24 -
ではないとしても、本件ファクタリング契約が有効と認められる可能性が大きい」との法
律意見書を社内調査委員会が入手していることも考え合わせると、原債権者に対するリ
コース債権は実在するとの当初調査の結果に特に不合理な点はみられなかった。
    その他の債権に関し、社内調査委員会は一部案件に対して与信申請書、売買契約書、発
票、受領証、PBOC 確認証跡、売掛金譲渡通知書等の文書の閲覧を行っている。また、2019
年 4 月末時点の全てのファクタリング案件に対し、①債権者に対する郵送による残高確認
手続、②債務者に対する郵送による残高確認手続、③債権者への訪問による残高確認手
続、④債務者への訪問による残高確認手続のいずれか 1 つ又は複数の手続を実施してい
る。その結果、社内調査委員会は、その他の債権の実在性は確認されたとしている。当委
員会は、社内調査委員会が入手した文書(本件調査の期間において、調査事務局が入手し
た文書を含む。)の閲覧、残高確認手続のサマリー及び訪問記録を閲覧した。その結果、
社内調査委員会が実施した手続に特に不合理な点は認められなかった。


3    ファクタリング業務に係る内部統制


    4 案件の契約実行当時における HCF のファクタリング業務に係る内部統制の整備状況を
検討するにあたり、関係者への質問及び関連規定・業務マニュアル等の閲覧を行った。そ
の結果、特段の問題は認められなかった。
    4 案件に関し、第 2 章第 3 記載のファクタリング業務に係る内部統制の運用状況につい
て、質問及び資料の閲覧等により検証を行った。その結果、各案件における運用状況に特
段の問題点は認められなかった。
    一方で、本件詐欺等を防止するに至らなかった点において、内部統制をより強化する余
地が認められる。かかる提言については、第 5 章において詳述する。


第 2 HCF における本件詐欺等の関与者


    HCF には、企画開発課、市場推進課、運営(IT)課、財務総務課の 4 つの部署がある。上
記第 2 章第 2 記載のとおり、財務総務課は、債権譲渡が実行されるまでのフローには関与
しないところ、HCF において、ファクタリングの業務フローにおける枢要を担う部門は、
財務総務課を除く、企画開発課、市場推進課、運営(IT)課であると言える。マネジメント
層のほか、これらの部門の責任者において、本件詐欺等への関与が疑われるようであれ
ば、本件詐欺等が、HCF において組織的に行われたとの嫌疑が高まることとなる。
    この点、社内調査委員会は、HCF の役職員に対するインタビュー、デジタルフォレン
ジック調査、アンケート調査及び関係資料の収集等を通じて、HCF 役職員の本件詐欺等へ
の関与の有無を調査したが、結果として、HCF の役職員が、本件詐欺等に関与しているこ
とを示す証跡は発見されなかった。この点、社内調査委員会によるインタビューは、4 案
件に何ら利害関係を有しない者が実施しており、インタビュー結果が不当に歪められるお




                        - 25 -
それはない。また、デジタルフォレンジック調査は、独立の外部の専門家を利用してお
り、結果に疑義を生じせしめるような不当な作為が介在するおそれはない。したがって、
社内調査委員会の上記調査の結果は十分に信用できるものと言える。
 また、当委員会は、上記第 1 章第 3 の 3(5)記載のとおり、改めて、HCF の役職員のうち、
n 氏、c 氏、e 氏、b 氏、d 氏、f 氏、h 氏及び g 氏を対象としてインタビューを実施した。
しかし、いずれの対象者も、自身の本件詐欺等への関与を否定するとともに、HCF の役職
員の中に本件詐欺等に関与した疑いのある者はいないと述べている。この点、当委員会
は、上記第 1 章第 3 の 3(4)(6)記載のとおり、改めて関係書類の収集及びデジタルフォレン
ジック調査を実施したが、これらの調査を通じて、HCF の役職員が本件詐欺等に関与して
いたことを窺わせる証跡は発見されなかった。
 そもそも、HCF では、上記第 2 章第 2 記載のとおり、与信審査及び債権譲渡実行の段階に
おいて、ファクタリングの実行の是非について判断している。そのため、これらの判断を
担う企画開発課及び運営課の担当者並びに決裁者をして、債権者・債務者間に取引が実在
すると誤信させることができれば、HCF 内に内通者がいなくとも、本件詐欺等を完遂する
ことが可能である。本件詐欺等の手口は非常に巧妙であり、かつ、下記第 4 章に記載した
原因も相まって、企画開発課及び運営課の担当者並びにこれらの決裁者が、取引の実在性
について誤信することも十分にあり得るところであり、HCF 内に本件詐欺等の関与者がい
ないことも、不自然とは言えない。
 なお、法的手続の支障となることを避けるために、本件調査においては、HCF 従業員全
員に対する網羅的なインタビューや、アンケート・ホットラインを活用した調査等は実施
していない。しかし、社内調査委員会及び当委員会によるインタビューやデジタルフォレ
ンジック調査等によっても、HCF の役職員が、本件詐欺等に関与していることを示す証跡
は検出されていない以上、仮に、網羅的なインタビューや、アンケート・ホットラインを
活用した調査等を実施したとしても、HCF の役職員が、本件詐欺等に関与していることを
示す証跡が検出される可能性が高いとは言えない。
 以上のことからすれば、HCF 内に本件詐欺等の関与者がいないと考えることも不合理で
はない。


第 3 HCL における本件詐欺等の関与者


 上記第 2 章第 1 の 1(2)記載のとおり、元々、HCF は、日立グループのサプライヤーを主
な取引先としてファクタリング事業を展開していたことから、HCF 唯一の営業部門である
市場推進課は、主に日立グループや日系企業を対象とした営業を担当することとされてい
た。そのため、HCF には、それ以外の中国系企業を対象とする営業部門・部隊が存在せ
ず、HCF は、HCL の営業部門や同業他社から紹介を受ける形で、中国系企業を取引先とする
案件を獲得していた。本件詐欺等が発覚した 4 案件も、HCL の営業担当者又は他社から紹
介を受けた案件であった。




                        - 26 -
 上記第 2 章第 2 の 1 記載のとおり、HCL は、HCF に案件を紹介する際、原則として、HCF
に保証を付与することとされているところ、保証の金額に応じた HCL における審査を経る
必要がある。この点、HCL は、4 案件においても、審査プロセスを経た上で、HCF に対して
保証を付与しており、かかる事情に鑑みれば、当該審査プロセスにおける承認権者の中
に、本件詐欺等に関与した者がいる可能性があると考えられなくもない。
 そこで、当委員会は、HCL の審査プロセスにおいて、HCF の案件に対する保証に関して承
認権限を有する、n 氏、i 氏、l 氏及び m 氏を対象としてインタビューを実施したが、いず
れの対象者も、自身の本件詐欺等への関与を否定するとともに、審査プロセスの承認権者
の中に本件詐欺等に関与した疑いのある者はいないと述べている。また、当委員会は、i
氏、l 氏及び m 氏に対するデジタルフォレンジック調査を実施したが、かかる調査を通じ
て、これらの者の供述を覆す内容の証跡は発見されなかった。以上のことからすれば、審
査プロセスにおける承認権者について、本件詐欺等に関与していたとの事実は認められ
ず、またそのような事実を疑わせるような事情も認められない。
 仮に、今後、4 案件を HCF に紹介した HCL の営業担当者の本件詐欺等への関与が新たに認
められたとしても、関与者が営業担当者のみである限り、HCL のマネジメント層や業務フ
ローの枢要部分の責任者までもが本件詐欺等に関与していたわけではなく、HCL 全体とし
て組織的に本件詐欺等に関与していたことにはならない。


第 4 HC における HCF・HCL の業務管理の状況


 HC の与信権限基準によれば、HCF においては、日立グループ以外との○元を超える取引
については、HC における決裁が要求されている。また、HCL においても、病院を与信先と
する案件は○元、それ以外の案件では○元を超える取引について、HC における決裁が要求
されている。HCF 及び HCL は、HC の決裁を得る必要がある場合には、大口与信申請書を作
成して HC へ回付するところ、この申請書には、取引開始の経緯、取引関与者の概要、取引
全体のスキーム等が記載されるほか、取引関与者の財務状況に関する情報も盛り込まれ
る。HC は、このような資料を確認し、金額に応じて所定の社内決裁を経て、稟議を承認す
る。具体的には、金額に応じて、資産債権管理部部長決裁、管掌執行役決裁、社長決裁に
振り分けられ、○円以上の案件が社長決裁とされている。また、社長決裁案件の場合に
は、信用リスク審議会における審査も行われる。
 HC における審査は、信用リスク管理方針及び信用リスク管理規則に則って行われる。こ
の規程は、審査において参照すべき資料等が細かく定められたものではなく、あくまで審
査の基本方針が定められたものにとどまる。また、これらの規程においては、主として関
与当事者の「信用リスク」の審査が念頭に置かれており、HC における審査実務上も、債権の
実在性が認められることを前提に、取引関与者の信用情報、取引スキームのリスク分析等
が主たる審査対象とされていた。結果として、本件で問題となった債権の実在性に関する
証跡を HC が確認することにはなっておらず、例えば、HC の審査では、ファクタリング契




                          - 27 -
約等の前提となる債権の実在性に関して、HCF において行われることになっていた注文
書、発票、検収書等の証憑類の原物を 1 つ 1 つ取り寄せて改めて確認することはなかっ
た。もっとも、HC が現地の証憑類を逐一確認することは現実的ではなく、代わりに、HCF
及び HCL に対して、証憑類に基づいて債権の実在性を確認しているか、弁護士の意見に基
づいて債権の実在性を確認しているかなどを定期的にチェックしていたことから、HC とし
てなすべき審査は行っていたものと考えられる。


    HC は、上記のとおり、HCF 及び HCL における個別案件に関する一定のチェックを実施し
ていたが、両子会社における業務の適正性をさらに確保し、本件詐欺等を防止するという
観点からは、HCF 及び HCL における案件開始時の審査内容、必要資料を定める業務マニュ
アルや審査体制の構築等により一層積極的に関与することが望ましいと考えられる。


第 5 HCL における類似事案の存否


    第 1 章第 3 の 3(3)ア記載の 32 件の債権の実在性の検証にあたっては、先述のとおり、
リース債権譲渡契約(リコースあり)の場合にはリース会社、リース資産譲渡契約(リコー
スなし)及びリース・バック契約の場合にはリース契約の借手を訪問し各種取引関連証憑
の閲覧とともに、債権残高確認状を入手した。
    当該検証に際し、HCF における本件詐欺等の存在等を考慮し、具体的には以下の手続を
実施している。


    事前にリース会社及び借手のバックグラウンド・チェックを行い、HCL との間に特別
     な利害関係があると疑われる人物が役員として登録されていないかを確認した。
    調査対象とした債権の担当者以外の従業員とともにリース会社又は借手を訪問した。
    訪問先では、まずリース会社又は借手の担当者の氏名、所属部署、役職を身分証明書、
     名刺等で確認し、さらに、リース会社又は借手の他の従業員等に当該担当者の名前、
     所属等を確認することで本人確認を実施した。
    債権残高確認状を直接訪問先で入手することにより、リース会社又は借手が当該債務
     を認識していること、及び HCL が認識している債権残高が正確であることを確認した。
    リース会社又は借手が保有している HCL とのリース債権譲渡契約書、リース資産譲渡
     契約書又はリース・バック契約書が、HCL が保管している契約書と同一であることを
     確認した。取引関連証憑を閲覧し、債権残高確認状の回答が信頼できるものであるか
     を検討した。
    リース債権譲渡契約に関しては、対象となる原リース債権の実在性の確認も必要であ
     ることから、リース会社がリース契約締結時に行ったリース資産検収資料等を確認し
     た。




                         - 28 -
    なお、当委員会が上記手続を実施するにあたり、リース会社又は借手によっては、取引
関連証憑を改めて HCL に提示することを断るケース等があり、訪問時に取引関連証憑をす
べて入手できたわけではない。このような場合には、HCL が保有している関連証憑の検証
を追加的に行った。
    以上の手続を行った結果、本件詐欺等に類似する事象の存在を窺わせる証跡は発見され
なかった。


第 6 影響額


    当委員会は、上記第 3 章第 5 までの事実関係及び HC による会計処理の検討状況を踏ま
え、影響額を集計した。なお事実関係には以下が含まれる。


    HCF の甲案件、丙案件及び丁案件について原債権が実在する可能性は極めて低いとし
     た当初調査の結果に特に不合理な点はみられなかった。
    HCF の乙案件について原債権の実在性に疑義が生じているとした当初調査の結果に特
     に不合理な点はみられなかった。
    HCF の原債権者に対するリコース債権は実在するとの当初調査の結果に特に不合理な
     点はみられなかった。
    4 案件の契約実行当時における HCF のファクタリング業務に係る内部統制の整備状況
     を検討するにあたり、関係者への質問及び関連規定・業務マニュアル等の閲覧を行っ
     た。その結果、特段の問題は認められなかった。
    4 案件に関し、第 2 章第 3 記載のファクタリング業務に係る内部統制の運用状況につい
     て、質問及び資料の閲覧等により検証を行った。その結果、各案件における運用状況
     に特段の問題は認められなかった 。
    インタビュー及びデジタルフォレンジック調査により、HCF の役職員、並びに HCL の
     マネジメント層や業務フローの枢要部分の責任者が本件詐欺等に関与していることを
     示す証跡は発見されなかった。
    HCL において、本件詐欺等に類似する事象の存在を窺わせる証跡は発見されなかった。


    集計にあたっては、2019 年 7 月 5 日までの回収状況を考慮し、税効果及び連結時に計上
される為替換算調整勘定は考慮していない。
    以上を踏まえて 2019 年 3 月期(第 4 四半期)の税引前当期利益に与える影響額を集計し
た結果は以下のとおりである。




                         - 29 -
            案件名                        金額                  単位
甲案件                                △          非開示 千元
乙案件                                △          非開示 千元
丙案件                                △          非開示 千元
丁案件                                △          非開示 千元
合計                                 △        1,265,476 千元
為替レート                                               16.33 円/元
2019 年 3 月期(第 4 四半期)の税引前当期利益に
与える影響額                             △          20,665 百万円




                          - 30 -
第4章    本件詐欺等を防ぐことができなかった原因


 上記第 3 章第 1 の 3 記載のとおり、4 案件の契約実行当時における HCF のファクタリング
業務に係る内部統制の整備状況及び運用状況に、特段の問題は認められなかった。しかし
ながら、結果として、本件詐欺等が生じてしまったことからすれば、内部統制をより強化
する余地が認められるといえる。
 そこで、以下では、4 案件において本件詐欺等による被害を防止又は最小化できなかっ
た原因を分析するとともに、当該原因を踏まえ、第 5 章において、再発防止に向けた更な
る強化点を指摘する。


第 1 中国におけるファクタリング事業のリスクが十分に認識されていなかったこと


 上記第 2 章第 1 の 1(2)記載のとおり、当初、HCF は、日立グループの各企業のサプライ
ヤーを主な取引先としてファクタリング事業を展開していたが、かかるビジネスモデルで
は、十分な数の案件を獲得することが難しく、思うように利益を上げることができなかっ
た。そこで、HCF は、中国資本の優良企業を債務者とする売掛金についてファクタリング
を提供する方針を採用し、徐々に中国資本の優良企業を債務者とするファクタリング事業
の規模を拡大していくこととなった。
 そもそも、ファクタリング事業は、債権者から債務者の信用リスクを引き受けることで
利益を上げる事業であり、引き受けるリスクの高さに比例して、獲得できる利益が大きく
なる。この点、上記のとおり、HCF として、中国資本の企業を債務者とするファクタリン
グ事業を拡大することにより、これまでよりも HCF が抱えるリスクが大きくなる状況に
あった。
 ファクタリングの特性上、債権者は、ファクタリングによって資金調達を図ることがで
きる一方、債務者は、ファクタリングによって特段利益を享受せず、むしろ、ファクター
の訪問に対応したり、債権への支払先を変更したりしなければならないなど、一定の負担
を強いられる。そのため、ファクターは、債務者に対して、依頼や要請をしづらい立場に
置かれる。特に、ファクターにおいて、債務者と特段の付き合いがない場合には、債務者
と直接連絡を取ることは容易ではなく、債権者を介して、債務者の訪問や債務者の担当者
との面談の約束等を取り付けざるを得ない。その結果、悪意を持った債権者が、債権者と
通じた者を債務者の真正な担当者であるかのごとく仮装して面談を設定しやすい状況が生
じる。現に、甲案件や丙案件においては、債権者を介して債務者との面談を設定した結
果、債務者の真正な担当者ではなく、債権者と内通していたと思われる者との間で、面談
が仮装された。
 また、ファクタリングの実行にあたっては、債務者から、与信審査に必要となる財務諸
表及び過去の取引実績等の資料や、取引の実在性・真実性を検証するために必要となる検
収証や受領確認書等を収集する必要があるところ、特に、ファクターにおいて債務者と特




                       - 31 -
段の付き合いがない場合には、これらの資料を債務者から直接取得することは容易ではな
く、債権者を介して取得せざるを得ない場面が生じ得る。その結果、悪意を持った債権者
が、債務者から取得したかのように装って偽造した資料をファクターに渡しやすい状況が
生じる。現に、甲案件、丙案件及び丁案件においては、債権者を介して債務者に係る資料
を収集したところ、これらの資料について偽造されていた疑いが生じている。
 このように、特に、債務者と特段の付き合いがないにもかかわらず、当該債務者に対す
る債権のファクタリング案件を新しく手掛ける場合、ファクターから債務者に対して、依
頼や要請をしづらいというファクタリングの特性も相俟って、債務者の真正な担当者との
面談等が仮装されるリスクや、偽造書類を交付されるリスクが生じる。
 しかしながら、HCF の役職員の中には、「(債務者の事務所を訪問して何度も面談してい
るといった理由から)『実は、債務者の担当者ではないかもしれない。』などとは考えも
しなかった。」、「債権者を信頼しすぎており、まさか書類が偽造されているかもしれない
とは思わなかった。」と述べる者がいることからも分かるとおり、結果として、本件詐欺
等においては、HCF の役職員にとって想定外のリスクが顕在化したことが窺える。
 このように、本件で顕在化したファクタリング事業のリスクを十分に認識できなかった
背景には、上記のとおり、それまで HCF は、日立グループの各企業のサプライヤーを主な
取引先としており、扱う案件の債務者は、同じ日立グループに属する企業であったことか
ら、ファクターである HCF においては、債務者と直接のやり取りが可能な状況にあり、結
果として、債権者を介した債務者との面談設定や資料提出に伴うリスクが顕在化すること
はなかったという事情があったと考えられる。
 また、そもそも、4 案件の契約が実行された当時、中国政府によるファクタリング事業
の解禁から、さほど期間が経っていないこともあり、中国のファクタリング業界全体とし
て、中国のファクタリング事業が抱えるリスクを把握し切れておらず、また、これらのリ
スクに対処するためのノウハウが十分に集積されていなかったものと思われる。現に、中
国において他のファクタリング事業者が実行した案件において、同様の詐欺被害が相次い
で確認されているところである。
 さらに、HCF においては、ファクタリング事業を開始する上で、上海特区におけるファ
クタリング事業の規制整備にも関与した A 法律事務所に相談しながら、ファクタリング事
業の契約書等の関連証憑を整備したほか、実際に、ファクタリング事業を開始してから
も、個別案件において法的懸念が生じた場合には、顧問契約を締結している同法律事務所
に相談しながら業務を進めていたが、4 案件の契約実行当時に、HCF における取り組みが殊
更に問題視されることもなかった。
 以上の事情に鑑みると、4 案件においては、結果として、債務者の真正な担当者との面
談等が仮装されるという想定外のリスクが顕在化したが、HCF の担当者が、かかるリスク
を事前に把握しておくことは、容易ではなかったと思われる。
 もっとも、中国におけるファクタリング事業のリスクを十分に把握することができな
かった結果として、例えば、債務者との面談の場所が、債務者の建物・施設内であったこ




                    - 32 -
とに安心して、HCF の担当者において、債務者との面談時に、必ずしも、先方の社員証や
身分証明書の確認及びこれらの写しの取得まではしていなかった。また、債務者の真正な
担当者であると信じ切り、面談の後、面談の対応者が、債務者の真正な担当者であったか
否かにつき、債権者ではなく第三者を経由して債務者に問い合わせるなどの確認までは徹
底できていなかった。
     さらに、4 案件においては、偽造書類を交付されるリスクがあったが、HCF の担当者は、
かかるリスクを把握し切れないまま、書類に押されている公印やその他印影が真正なもの
であるかどうかの検証を含め、収集した資料が真正なものであるか否かの検証までは徹底
できていなかった。


第 2 オペレーショナルリスク管理態勢に強化の余地があったこと


     4 案件の各債務者は、いずれも各業界において一流とされる企業であり、豊富な資産を
有していた。かかる債務者の信用力を考慮して、4 案件では、初回から金額的規模の大き
な取引が実行された。
     しかし、4 案件における各債権者は、HCF にとってこれまで付き合いのない新規の取引先
であり、上記第 1 記載のような想定外の不正リスクが顕在化する可能性もある以上、債務
者の信用力の審査に偏重することなく、債権者の受入審査についてもより慎重な対応が望
まれた。すなわち、悪意ある詐欺行為等を含むオペレーショナルリスク14 が顕在化する可
能性に鑑み、例えば、初回の取引金額を限定し、取引や支払状況等を見極めつつ、徐々に
取引額を拡大して行く等の措置を講じるべきであり、このような措置を講じていれば、本
件詐欺等による被害額を縮減できた可能性があると思われる。


第 3 社内規定等が、悪意ある詐欺行為等を確実に排除できる内容にはなっていなかったこ
      と


     HCF においては、ファクタリング業務に関する社内規定やマニュアルとして、「(HCF)信
用リスク管理の流れ」、「ファクタリング取扱いガイドライン」、「業務マニュアル Ver2.0」




14
      一般的に、オペレーショナルリスクには、内部プロセス、人的要因、システム要因、その他の外生
      的要因に起因するリスクが含まれるものと考えられているが、ここでは、悪意ある第三者による詐
      欺、横領等の違法行為を意図したような行為により生じる損失など、想定することの難しい損失に
      係るリスクを指す。




                         - 33 -
15
     、「業務フロー(日本語)20180913」などが策定されている。
     しかし、社内規定やマニュアルには、ある程度、上記第 1 記載のリスクの低減化に資す
る債務者の本人確認に関するルールや契約書等の真正を確認するためのルール等が規定さ
れてはいたものの、第三者が明確な悪意の下に詐欺を働きかけてきた場合に、これを防ぎ
切るに足る程度の措置やノウハウは規定されていなかった。また、ファクタリングの実行
に際して入手すべき資料は、会社が採用しているリスク管理の方針のほか、案件・取引の
内容や、当該案件・取引における債権者・債務者の性質や協力度合い等、諸般の事情を踏
まえて決定されるものであり、これを一様に定めることまでは求められないし、現実的で
もない。もっとも、第三者が悪意をもって詐欺行為を働きかけてくる可能性があることに
鑑みれば、HCF・HCL のマネジメント層や HC と協議した上で、例えば、発票の取得を必須
とすべきか否かについてなど、入手すべき資料に関するルールを社内規定において明らか
にすることも取り得る方策の一つであったと思われる。




15
      当該マニュアルには、元々、ファクタリングを実行するには発票の取得が必須である旨が記載され
      ていたが、2017 年 6 月頃の改訂により、発票の取得が必須である旨の記載が削除されている。もっ
      とも、そもそも当該マニュアルは、HCF のある従業員が、将来の新人教育等に備えて、HCF における
      現実の審査手続を取りまとめた文書であって、HCF においてあるべき審査手続を正式に規定したもの
      ではない。当該マニュアル改訂の前後を通じて、HCF の実際の審査手続においては、発票の取得は必
      須とされておらず、こうした実態を追認する形で、当該マニュアルが改訂されたにすぎず、当該マ
      ニュアルの改訂によって、審査手続において発票の取得が必須ではなくなった結果、本件詐欺等の
      実行が容易になったという関係にはない。




                           - 34 -
第5章   再発防止に向けた更なる強化策


第 1 債務者の真正な担当者との接触を確保するための措置を徹底すること


 ファクタリングの特性上、ファクターは、債務者に対して、依頼や要請をしづらい立場
に置かれており、直接、債務者と連絡を取り合い、訪問や面談の約束を取り付けることは
容易ではない。債務者と、これまでに特段の付き合いがない場合は、尚更である。
 しかし、そのような場合であっても、まずは、債権者を介してではなく、日立グループ
や同業者を通じて、債務者との接触を試みるべきである。また、初回の訪問や面談につい
ては、債権者を通じて設定するとしても、二回目以降の訪問や面談は、債務者との直接の
やり取りを通じて取り付けることを徹底するべきである。
 債務者を訪問した際や面談をした際には、先方の社員証や身分証明書の確認を徹底する
とともに、可能な限り、これらの写しを取得することも求められる。後日、面談の対応者
において、面談した相手方が債務者における真正な担当者であったかどうかを、同業者に
確認したり、第三者を介して債務者に直接確認するなどの措置も講じるべきである。
 現に、甲案件では、債権者を介さずに別の者を通じて、再度、D 社の担当者との面談を
した結果、それまで担当者と思っていた者が、実は真正な担当者ではなかったことが発覚
しており、いずれの案件においても、このような措置を、より早期の段階で講じることが
求められる。


第 2 入手した書類について真正の確認を徹底すること


 甲案件、丙案件及び丁案件を振り返れば明らかなとおり、債権者や債務者から入手した
書類が、必ずしも真正であるとは限らず、偽造された書類が混ざり込むリスクが存在す
る。そこで、書類を確認する者は、偽造されている可能性があることを、常に念頭に置き
つつ、収集した資料が真正なものであるか否かの検証を徹底する必要がある。
 具体的には、債務者に係る資料を、債権者を介して取得した場合には、後日、債務者に
直接問い合わせるなどして、書類の真正を確認することが必要である。現に、甲案件、丙
案件及び丁案件では、債務者に書類の真正を問い合わせた結果、偽造された可能性がある
ことが発覚しており、このような確認を、より早期の段階で講じることが求められる。
 また、中国では、公印について、日本の印鑑証明制度ないしそれに類似する制度が存在
しないものの、同業他社から、債務者の公印が押されている書類を入手し、比較検証する
などして、公印の真正を確認することが望ましい。


第 3 HCF 従業員にファクタリングの事業リスクを理解してもらうための措置を講じること


 上記第 4 章第 1 記載のとおり、一部の HCF 従業員に関しては、中国におけるファクタリ




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ング事業において、債務者の担当者が真正な担当者ではないリスクや、偽造書類を交付さ
れるリスクを十分に想定できていない状況が見受けられた。この背景には、中国において
ファクタリング事業が解禁されたのは比較的最近のことであり、中国におけるファクタリ
ング事業のノウハウが、業界全体として十分に集積・共有されていなかったという事情が
あるものと思われる。
 そこで、同業他社と連携するなどして、中国におけるファクタリング事業に関する不正
事案等のリスク情報を収集し、これらの不正事案における手口等を、HCF の現場担当者と
共有するなどして、現場担当者のリスク感知能力の向上を図るべきである。また、中国に
おける金融ビジネスが内包するリスクに精通した現地スタッフを、企画開発課や運営課な
どの経理又は副経理として登用し、中国のファクタリング事業が抱えるリスクを分析させ
た上で、HCF の現場担当者に対する指導・監督役を任せることも有用であると思われる。


第 4 オペレーショナルリスク管理態勢を強化すること


 新規の取引先との間でファクタリング取引を開始する際、取引の実在性・真実性に関し
て疑義が生じるなど、稀にではあるが、不正リスクが顕在化する可能性がある。そのた
め、取引全体のリスク管理を徹底する観点からは、悪意ある第三者による詐欺、横領等の
違法行為に巻き込まれる可能性に配慮し、オペレーショナルリスク管理態勢を強化するこ
とが求められる。具体的には、新規の取引先との間でファクタリング取引を開始する際に
は、債権者の受入審査として、初回の取引金額を限定し、期日どおりの返済実績や支払条
件変更要請の頻度等をモニタリングすることで、債権者及び債務者双方の総合的なリスク
を見極めつつ、徐々に取引額を拡大するなど、オペレーショナルリスクが顕在化した際に
生じる損失を減縮するための措置を講じることが考えられる。


第 5 社内規定・マニュアルを整備するとともに、必要な範囲でこれらの整備に本社が関与
  できるような体制を構築すること


 上記第 4 章第 3 記載のとおり、HCF の社内規定やマニュアルには、債務者の本人確認に関
するルールや、契約書等の真正を確認するためのルール等が規定されてはいるものの、第
三者が明確な悪意の下に詐欺を働きかけてきた場合に、これを検知するための措置やノウ
ハウは規定やマニュアルに反映されていなかった。その結果として、債務者の本人確認や
契約書等の真否の確認が徹底されなかった可能性がある。HCF の担当者に、第三者が明確
な悪意の下に詐欺を働きかけてきたとしても、これを検知するために、債務者の本人確認
や契約書等の真正の確認を徹底させるべく、これらの確認方法等を、上記第 1 及び第 2 記
載の方策も踏まえ、再度見直した上で、社内規定やマニュアルに具体的かつ明確に規定す
ることが考えられる。
 また、発票は、税務局の増値税管理システムで一元管理されており、同システムにアク




                     - 36 -
セスすれば、入手した発票の真偽を確認することができる。その意味で、発票は、出荷リ
ストや検収証などの他の帳票に比して、取引の実在性を確認するにあたって極めて重要な
証憑といえる。この点、発票の取得を必須とするべきか、やむを得ない事情が認められる
場合には、他の帳票で代替できるとするかについては、リスク管理の在り方として選択の
余地があるものの、どちらを採用するにせよ、発票の証憑としての重要性に鑑みれば、本
社も関与する形で、方針を決定し、社内規定ないしマニュアルを整備することが望まし
い。しかしながら、HCF では、HC の関与なく、発票に関するルールが事実上形成されてい
た。そこで、今後、必要な範囲で、重要な社内規定やマニュアルの整備に HC が関与できる
よう、社内規定やマニュアルに関する決裁権限を明確し、これを周知するなど、HC の関与
を確保できるような体制を構築することが考えられる。


                                        以   上




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