8559 豊和銀 2021-09-28 16:30:00
経営強化計画の履行状況(2021年3月期)について [pdf]

                                                         2021 年9月 28 日
各     位

                                        会   社   名   株 式 会 社 豊 和 銀 行

                                        代表者名        取締役頭取    権   藤   淳

                                        (コード番号        8559       福証)
                                                    上級執行役員
                                        問合せ先        総合企画部長
                                                             浜野法生

                                        (TEL.097-534-2611)




                経営強化計画の履行状況(2021年3月期)について




     株式会社豊和銀行(取締役頭取 権藤 淳)は、
                          「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」
    に基づいて、2021 年3月期の経営強化計画の履行状況をまとめましたので、お知らせいたします。




    1. 経営強化計画の履行状況報告書
      次頁以降をご覧下さい。




                                                                 以 上



                               さいしょ
          本件に関する問合せ先   総合企画部   税所、羽田野   TEL097(534)2608
経営強化計画の履行状況報告書




    2021年6月
                      《 目   次 》

1. 2021 年 3 月期決算の概要
  (1) 経営環境                                  ・・・・・・   1
  (2) 決算の概要                                 ・・・・・・   1

2. 経営の改善に係る数値目標の実績
  (1) コア業務純益(収益性を示す指標)                      ・・・・・・   5
  (2) 業務粗利益経費率(業務の効率性を示す指標)                 ・・・・・・   5

3. 経営の改善の目標を達成するための方策の進捗状況
  (1) 地域への徹底支援                              ・・・・・・   6
  (2) お客さまの満足度向上に向けた取組み                     ・・・・・・ 16
  (3) 経営基盤の強化                               ・・・・・・ 17

4. 従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項の進捗状況
  (1) 業務執行に対する監査又は監督の体制の強化のための方策            ・・・・・・ 19
  (2) リスク管理の体制の強化のための方策                     ・・・・・・ 19
  (3) 法令遵守の体制の強化のための方策                      ・・・・・・ 24
  (4) 経営に対する評価の客観性の確保のための方策                 ・・・・・・ 25
  (5) 情報開示の充実のための方策                         ・・・・・・ 25

5. 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行っている
  地域における経済の活性化に資する方策の進捗状況
  (1) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行ってい
      る地域における経済の活性化に資するための方針                ・・・・・・ 27
  (2) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策            ・・・・・・ 27
  (3) その他主として業務を行っている地域における経済の活性化に資する方策     ・・・・・・ 28

6. 剰余金の処分の方針
  (1) 配当に対する方針                              ・・・・・・ 31
  (2) 役員に対する報酬及び賞与についての方針                   ・・・・・・ 31
  (3) 財源確保のための方策                            ・・・・・・ 31

7. 財務内容の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策の進捗状況
  (1) 経営管理に係る体制及び今後の方針等                     ・・・・・・ 32
  (2) 各種のリスク管理の状況及び今後の方針等                   ・・・・・・ 33
1. 2021 年3月期決算の概要
 (1) 経営環境
   2020 年度は新型コロナウイルス感染症に翻弄された 1 年でした。全国規模で実施された2
  度にわたる緊急事態宣言により、国内の移動ばかりでなく、海外との人やモノの往来に大き
  な制限が課せられました。新しい生活様式の行動指針でステイホーム等が勧奨され、人の動
  きが大幅に減少した結果、運輸業・観光業・宿泊業・飲食業などを中心に需要は激減し、国
  内経済は急速に悪化しました。
   このような状況を踏まえて、国や自治体により大規模な経済対策支援等が実施され、国内
  経済は最悪期を脱して徐々に回復基調にありますが、コロナ禍前の水準にはまだ復調してお
  らず、依然として先行き不透明な状況が続いております。
   金融環境につきましては、2020 年2月ごろからの新型コロナウイルス感染症の世界的な感
  染拡大の影響で、国内外の金融市場は大混乱に陥りましたが、その後の各国の政府及び中央
  銀行による迅速かつ大規模な財政・金融政策により、国際的な金融マーケットは活況を取り
  戻しました。  日経平均株価も 2021 年3月には 30 年ぶりに一時 30,000 円を突破するなど大き
  く上昇しました。しかし、感染力の強い変異株による感染が世界的に再拡大している状況に
  加え、米中通商問題など国際政治における懸念材料も多く、金融環境は引き続き不安定な状
  況が続くと思われます。
   そのような中、当行の主要な営業基盤である大分県においても、新型コロナウイルス感染
  症による国内外からの旅行客が激減した影響は大きく、主要産業である観光業・宿泊業・飲
  食業などを中心に甚大な影響を受けております。国や大分県等による大型の経済対策支援に
  より、景気は下支えされておりますが、今後の新型コロナウイルス感染症の収束の状況次第
  では、今後も厳しい経済環境は継続するものと懸念されております。


 (2) 決算の概要
   ① 資産・負債の状況
   (運用勘定)
    貸出金は、新型コロナウイルス感染症に対する地元事業者への資金繰り支援に努めた結
   果、前年度末比135億14百万円増加し、4,146億54百万円となりました。
    また、有価証券は、前年度末比42億10百万円増加し、1,044億75百万円となりました。
   (調達勘定)
     預金(譲渡性預金を含む)は、小規模事業者等でのコロナ関連資金繰り支援が予防的に
   厚めの手元流動性として残っていることに加え、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策
   である特別定額給付金や持続化給付金の交付等も影響し、 前年度末比351億29百万円増加し、
   5,663億87百万円となりました。
   (純資産)
    純資産は、前年度末比16億68百万円増加し、318億98百万円となりました。
    〔 資産・負債の状況(残高) 〕
                   (表 1)                                                  (単位:百万円)

                    2021 年 3 月末                                  2020 年 9 月末   2020 年 3 月末
                      実     績      2020 年 9 月末比   2020 年 3 月末比     実     績       実     績

     資   産             633,648      + 18,226       + 55,202         615,422       578,446

      貸出金              414,654       + 5,098       + 13,514         409,555       401,139

      有価証券             104,475       + 3,507        + 4,210         100,967       100,265




                                  - 1 -
  負   債            601,750         + 17,499     + 53,534         584,251        548,216

   預金(譲渡性預金を含む)    566,387         + 9,726      + 35,129         556,660        531,257

  純資産                  31,898        + 727          + 1,668       31,171         30,229



② 損益の状況
(業務粗利益、コア業務粗利益)
  資金運用収益は、貸出金平残の増加に伴い、貸出金利息が前年度比66百万円増加したこ
とから、前年度を98百万円上回る79億円となりました。
  一方、資金調達費用は、預金利回りの低下に伴い、預金利息が前年度比68百万円減少し
たことから、前年度を68百万円下回る1億40百万円となりました。この結果、   「資金利益」
は前年度を1億66百万円上回る77億60百万円となりました。
  また、
    「役務取引等利益」は、役務取引等収益が前年度比25百万円減少したものの、役務
取引等費用が同32百万円減少したことから、  前年度を7百万円上回る▲73百万円となりまし
た。
  「その他業務利益」は、国債等債券損益が前年度比39百万円増加したことから、前年度
を58百万円上回る▲10百万円となり、その結果、 「業務粗利益」は前年度を2億32百万円上
回る76億76百万円、「コア業務粗利益」は前年度を1億93百万円上回る76億89百万円となり
ました。
(業務純益、コア業務純益)
  営業経費は、新勘定系システムへの移行に伴う一時費用がなくなり物件費が減少したこ
とから、前年度比1億7百万円減少の63億66百万円となりました。
  その結果、 「業務純益」は前年度を3億40百万円上回る13億9百万円、「コア業務純益」
は前年度を3億1百万円上回る13億23百万円となりました。
(臨時損益)
  臨時損益は、株式等損益が前年度比4億9百万円増加したことなどから、同2億14百万
円増加の▲5億5百万円となりました。
(経常利益、中間純利益)
  以上の結果、「経常利益」は前年度比5億55百万円増加の8億3百万円、「税引前当期
純利益」は同4億47百万円増加の8億14百万円、「当期純利益」は同6億86百万円増加の
9億95百万円となりました。
(信用コスト)
  「信用コスト」は、貸出債権の売却損6億53百万円を計上したことから、前年度比2億
37百万円増加の4億12百万円となりました。
 〔 損益の状況 〕
         (表 2)                                                             (単位:百万円)
                  2021 年 3 月期                            2020 年 3 月期       2019 年 3 月期
                     実 績             2020 年 3 月期比           実 績               実 績

  業務粗利益                  7,676              + 232             7,443             7,566
  [ コア業務粗利益 ]      [     7,689 ]        [   + 193 ]       [   7,496 ]       [   7,573 ]

      資金利益               7,760              + 166             7,593             7,597
      役務取引等利益            ▲ 73                 + 7             ▲ 80              ▲ 12
      その他業務利益            ▲ 10               + 58              ▲ 69              ▲ 17
  経費(除く臨時処理分)            6,366              ▲ 107             6,474             6,453
      うち 人件費             3,365              ▲ 10              3,376             3,383




                                - 2 -
                     2021 年 3 月期                                  2020 年 3 月期             2019 年 3 月期
                        実 績                 2020 年 3 月期比             実 績                     実 績

    うち 物件費                 2,546                    ▲ 93                  2,639                2,574
  一般貸倒引当金繰入額                     -                     -                     -                    -
  業務純益                     1,309                    + 340                   968                1,113
  [ コア業務純益 ]          [     1,323 ]             [   + 301 ]           [    1,022 ]         [    1,120 ]

  臨時損益                    ▲ 505                     + 214                 ▲ 720                    6
   (うち不良債権処理額)        (         412 )       (       + 237 )           (     174 )          (      166 )
   (うち株式等損益)          (    ▲ 183 )              (   + 409 )           (   ▲ 592 )          (        0 )
  経常利益                          803                 + 555                   248                1,120
  特別損益                           10                 ▲ 108                   118                    6
  税引前当期純利益                      814                 + 447                   367                1,126
  法人税、住民税及び事業税                   17                  + 1                     15                  182
  法人税等還付税額                       -                  + 31                  ▲ 31                    -
  法人税等調整額                 ▲ 198                     ▲ 272                    73                ▲ 190
  当期純利益                         995                 + 686                   309                1,135
  (参考)信用コスト                     412                 + 237                   174                  166
 ※ 信用コスト = 一般貸倒引当金繰入額 + 不良債権処理額


③ 不良債権の状況
  2021 年3月末の金融再生法開示債権額は、危険債権が前年度末比 14 億 62 百万円増加し
た結果、同 14 億 73 百万円増加の 181 億 44 百万円となりました。また、総与信残高が同
132 億 95 百万円増加の 4,193 億 14 百万円となりました。この結果、金融再生法開示債権
比率は前年度末比 0.22 ポイント上昇の 4.32%となりました。
  なお、金融再生法開示債権のうち 75.10%にあたる 136 億 26 百万円については担保保証
等や貸倒引当金にて保全を行っております。
 〔 金融再生法開示債権比率の実績推移 〕(表 3)                                                           (単位:百万円、%)

                 2021 年 3 月末                                              2020 年 9 月末      2020 年 3 月末
                    実 績               2020 年 9 月末     2020 年 3 月末            実 績              実 績
                                           比               比

  金融再生法開示債権          18,144               + 586             + 1,473           17,557             16,670

    破産更生等債権           1,163                + 30              ▲ 140                1,132          1,303

    危険債権             16,290               + 380             + 1,462           15,910             14,828

    要管理債権                 689             + 175              + 150                 514             539

  総与信残高             419,314             + 5,155         + 13,295             414,158            406,019

  不良債権比率               4.32              + 0.09             + 0.22                 4.23            4.10

 ※ 不良債権比率 = 金融再生法開示債権残高 ÷ 総与信残高
 ※ 総与信残高には、銀行保証付私募債に係る保証債務 39 億 43 百万円を含みます。


④ 自己資本比率の状況
 自己資本額が前年度末比5億67百万円増加の306億98百万円となったことから、自己資本
比率は同0.25ポイント上昇の8.71%となりました。




                                  - 3 -
〔 自己資本比率の状況 〕
            (表 4)                                                   (単位:百万円、%)
           2021 年 3 月末                                 2020 年 9 月末    2020 年 3 月末
             実      績    2020 年 9 月末比   2020 年 3 月末比     実      績       実      績

 自己資本          30,698        ▲ 405          + 567          31,103         30,130

 リスクアセット      352,323        + 897        ▲ 3,492         351,425        355,815

 自己資本比率          8.71       ▲ 0.14         + 0.25            8.85           8.46




                            - 4 -
2. 経営の改善に係る数値目標の実績
 (1) コア業務純益(収益性を示す指標)
   2021 年3月期の貸出金は、地元中小零細企業が太宗を占める事業性貸出は計画に比べ増加
  したものの、金融機関向け貸出と地方公共団体向け貸出が計画比減少したこと等により平残
  が計画を 21 億 55 百万円下回ったことに加え、当行の平均貸出金利回りを大幅に下回る利回
  りを県から指定された実質無利子無担保融資の実行等により、利回りが計画を 0.016 ポイン
  ト下回ったことから、貸出金利息は計画を1億6百万円下回りました。
   有価証券は、平残が計画を 103 億 89 百万円上回ったことに加え、利回りが計画を 0.028 ポ
  イント上回ったことから、有価証券利息配当金は計画を 77 百万円上回りました。
   一方、預金は、平残が計画を 215 億 39 百万円上回ったものの、利回りが計画を 0.004 ポイ
  ント下回ったことから、預金利息は計画を 16 百万円下回りました。
   その結果、資金利益は計画を2百万円下回る 77 億 60 百万円となったものの、役務取引等
  利益で計画を1億8百万円上回る▲73 百万円となったことから、コア業務粗利益は計画を1
  億6百万円上回る 76 億 89 百万円となりました。
   加えて、経費が計画を2億 36 百万円下回る 63 億 66 百万円となったことから、「コア業務
  純益」は計画を3億 42 百万円上回る 13 億 23 百万円となりました。
 〔 コア業務純益の計画・実績 〕
                (表 5)                                                                    (単位:百万円)
                        2019/9 期 2020/3 期 2020/9 期                 2021/3 期             2021/9 期 2022/3 期
              始 期
                         実 績      実 績      実 績       計    画    実   績    計画比     始期比      計 画      計 画

    コア業務純益    1,120        469    1,022      608         981   1,323    +342    +203       573    1,135
  ※ コア業務純益 = 業務純益 + 一般貸倒引当金繰入額 - 国債等債券関係損益


(2) 業務粗利益経費率(業務の効率を示す指標)
   「機械化関連費用を除く経費」   が計画を2億 71 百万円下回る 50 億 40 百万円となったこと
  に加え、「業務粗利益」が計画を 93 百万円上回る 76 億 76 百万円となったことから、「業務
  粗利益経費率」は計画を 4.37 ポイント下回る 65.66%となりました。
 〔 業務粗利益経費率の計画・実績 〕
                  (表 6)                                                             (単位:百万円、%)
                         2019/9 期 2020/3 期 2020/9 期                2021/3 期             2021/9 期 2020/3 期
               始    期
                          実 績      実 績      実 績     計 画        実 績      計画比     始期比      計 画      計 画

   経費(機械化関連
               5,175      2,598    5,098    2,519    5,311     5,040    ▲271    ▲135     2,621    5,195
   費用を除く)

   業務粗利益       7,566      3,779    7,443    3,764    7,583     7,676      +93   +110     3,832    7,604

   業務粗利益経費率    68.40      68.75    68.49    66.92    70.03     65.66    ▲4.37   ▲2.74    68.39    68.31
  ※ 業務粗利益経費率 =(経費-機械化関連費用) ÷ 業務粗利益
  ※ 機械化関連費用は、事務機器等の機械賃借料、機械保守費、減価償却費等を計上しております。




                                           - 5 -
3. 経営の改善の目標を達成するための方策の進捗状況
  当行では、2019年6月に策定した「経営強化計画」において、「地元大分になくてはならない
 地域銀行」であることを目指し、 地域への徹底支援による地元経済の活性化 』を基本方針に
                  『
 据え、これを実現するための取組方針として、①「地域への徹底支援」  、②「お客さまの満足度
 向上に向けた取組み」  、③「経営基盤の強化」の3つを定めました。
  この取組方針のもと、中小企業等のお客さまを取り巻く厳しい経営環境や金融機能強化法の
 趣旨を踏まえ、引き続き、お客さまの経営改善及び成長・発展に向け、積極的な資金供給と経営
 改善支援の取組みを徹底し、地域経済の発展に貢献していくことに全力で取り組んでまいりま
 す。そして経営改善支援等の取組みを進め、  お客さまに有用な顧客価値を提供していけば、結果
 的に当行にも安定的な収益と将来にわたる健全性をもたらす「共通価値の創造」というビジネ
 スモデルを実現できると考えております。

  2020年度下期における各取組方針に基づく諸施策の進捗状況は、以下のとおりです。


 (1) 地域への徹底支援
  ① 販路開拓コンサルティング(Vサポート業務)の拡大
   イ. Vサポート業務の取組み
      2016 年 11 月のVサポート業務開始時には、下記3つの目的をその順位で整理して取
    り組みました。
      第1の目的は、お客さま(売り手)の売上を増加させることで、お客さまの経営改善
    に寄与し、その結果、債務者区分のランクアップにより当行の信用コスト増加抑制につ
    なげること。
      第2の目的は、お客さま(売り手)の売上増加に伴い、運転資金や設備資金の需要が
    創出され、当行の金融仲介(融資)に結び付けること。その際に、お客さまからVサポ
    ート業務の取組みを評価して頂ければ、過剰な金利競争に巻き込まれない融資につなげ
    ることができること。
      第3の目的は、お客さま(売り手)に売上入金実績を付与することで、あらかじめお
    約束いただいた成果報酬の手数料をいただけることにもつながること。
      Vサポート業務は上記のような3つの目的を実現するために開始しましたが、取組み
    開始後は、売り手への金融仲介(債務者区分のランクアップや質の高い貸出実行)は期
    待通りとして、新型コロナウイルス感染症対策資金(実質無利子無担保融資)が登場する
    2020 年 5 月以前は買い手への質の高い新規貸出が発生するという思いがけない成果が得
    られました。これらのお客さまについては、Vサポート業務によって、他金融機関から
    の低利の融資提案を跳ね返すだけの顧客価値が提供できたものと考えています。
      当行のVサポート業務における顧客価値提供は、Vサポート契約により売上が増加す
    る売り手のみならず、買い手となる当行のお客さまにも及んでいるところに特徴があり
    ます。  買い手となる当行のお客さまにも喜んでいただける理由は、   『Vサポート業務にお
    ける売り手』と『その商品・サービスを購入する買い手』双方の事業性評価を深掘りし
    なければ成立しないというビジネスモデル上の規律付けのもと、当行でファイナンスが
    つく・つかないに拘ることなく、売り手側の商品サービスの購買を通して買い手側の事
    業運営上の課題を解決している点にあると考えています。
      ファイナンスがつかない程度の取引による売上増加では、売り手であるVサポート契
    約先からはご評価いただけませんので、当行では、単に契約先に売上をもたらすことに
    とどまらず、持続可能な販売商流として、契約先の主要取引先となってもらえる買い手


                      - 6 -
 を厳選するという通常のビジネスマッチング等では考慮されない点にもこだわって、V
 サポート業務に取り組んでおります。

  2020 年度は、Vサポート業務を通じて培ってきたノウハウ(『各業界が抱える経営課
 題(共通の経営課題)、 』『各業界の業務フローや業務オペレーション』『
                                   、【買い手】の経
 営課題とその解決策』など)を全行員が共有できるよう『  【本業支援】課題解決提案シー
  ※
 ト 』を作成し、活用を開始しております。

  ※
   『【本業支援】課題解決提案シート』について

  ■『【本業支援】課題解決提案シート』の内容
   ① 各業界における業務フローを整理し、各フローにおけるオペレーションを細
     分化して表示。
   ② ①で細分化したオペレーションごとに、同業他社(大手企業~地元同業他
     社)の好事例等を集約。
   ③ ②で収集した対策として、提案できるVサポートの商品・サービスを紹介。

  ■『【本業支援】課題解決提案シート』による効果
  <お客さまに対する効果>
  ・同業他社の取組み事例を提供し、お客さまの取組みとの差異を可視化するこ
   とで、『自社の課題』や『必要な支援策』が明確になる。
  ・課題や必要な支援策を認識するだけでなく、その支援策に『必要な商品・サー
   ビス』や『その購入先』も提案できる。
  ・商品・サービスを利用いただくことで、買い手事業者の経営課題解決につなが
   り、Vサポート契約先にとっても、売上高が増加するだけでなく、社会的意
   義も感じられる。
  <行員に対する効果>
  ・お客さまが抱える課題が、『どの業務フロー』の『どのオペレーション』を改
   善することが必要かを理解しやすくなり、どのVサポート商品サービスをご
   紹介することが効果的かを速やかに判断できるようになる。
  ・『お客さまからの相談に対してVサポートをご紹介』といった受動的な対応か
   ら、『お客さまの課題を想像し、課題提議から解決策の提案(仮説から提
   案)』といった能動的な対応ができるようになる。
   時にこれは『お客さまも気づいていなかった課題(潜在的な課題)の解決』
   に繋がる場合もある。



ロ. Vサポート業務を通じた地域・お客さまへの貢献
  Vサポート業務については、お客さま自身が経営改善を望まれており、コスト削減や
 資産売却によらず、売上改善による経営改善を図っていきたいと考えているお客さまか
 ら優先してご契約いただいております。
  なお、Vサポートをご契約いただいたお客さまにおいては、9割弱のお客様において
 販路開拓に貢献しております。
  また、Vサポートの取組みを通じて、売り手だけでなく買い手となったお客さまへも



                  - 7 -
 顧客価値の提供を行うことができ、それが結果として新規貸出(2020 年度下期新規貸出
 実行額 9,009 百万円、2020 年度新規貸出実行額 14,348 百万円)に繋がったと考えてお
 ります。

〔 Vサポート業務の実績 〕(図表 7)                                         (単位:先数、百万円)

                                                   実績

                           2017 年       2018 年    2019 年     2020 年    2021 年
                            3 月末         3 月末      3 月末       3 月末      3 月末

 Ⅴサポート契約先数
                                22           36         41        61        81
 (累計)


 Ⅴサポート契約先への売上入金実績
                                    2        54       303        684     1,235
 (累計)


 Ⅴサポート契約先商品サービスの
                                17           75       292        565       777
 購買実績先数(累計)


 Ⅴサポート契約先ならびにⅤサポート契約先商品
                                20        1,003     1,707     11,439    25,787
 サービスの購買実績先への新規貸出実行額(累計)

 ※.V サポート業務は事業性評価に裏付けられ、中長期的に顧客価値が持続するストックビジネスであることから、各年度
   の計数管理はフローではなくストック(累計)で管理しております。


  以下、Vサポート業務で取組んだ『コロナ禍での本業支援』の事例をご紹介します。
   ご紹介する事案は、大分市内店舗に勤務する2年目行員(渉外経験1年)による
  初めての新規創業融資における取組みであります。

  【取引経緯の概要】
   ✓ 大分市内にて運営されているサービス付き高齢者向け住宅(定員 22 床)
   ✓ 商圏内には競合施設が 17 施設(平均稼働率 93.6%、平均介護度 3.15)ある
     が、商圏内の 65 歳以上の高齢化率は年々上昇傾向(20 年7月時点では高齢化
     率 24.8%)であり、同商圏にとって、介護施設は今後さらに無くてはならな
     いモノとなっていくことが予想されていた。
   ✓ しかし、本施設は前代表者の不正受給を理由に、存続の危機にさらされてお
     り、『入居者へのサービスの提供』や『従業員の雇用』などの継続性に同施設
     に関る多くの人が不安を感じていた。  (結果、営業譲渡となる)
   ✓ そこで、現代表者が一念発起し、同施設の営業譲渡を受け、事業再生を目指す
     こととなった。
   ✓ 現代表者は、介護業界に 25 年間携わり、業界知識や実務経験は申し分ないも
     のの、サービス付き高齢者向け住宅等の施設運営に対する経験はなく、金融機
     関からの資金調達の経験もなかったことから、会計事務所が当行を融資の相談
     相手として紹介。

    このような背景から、施設運営を開始したものの、いざ事業を開始すると多くの
   課題に直面することとなりました。




                       - 8 -
【お客さまが直面した課題】
  既存入居者の流出に伴い、新たな入居者の確保が必要となり、以下の課題が発生
 しました。
 ① 施設の修繕(新たな入居者を確保するには『臭い』『汚れ』などがひどい)
 ② サービスの拡充
 ③ 事業内容の拡大(デイサービス事業の開設)

【Vサポートによるご支援】
  資金相談を受けるなかで、上記のような課題を共有し、以下のようなVサポート
 支援をご案内しました。

 ① 『室内クロス洗浄』『定期メンテナンス』
            、
     設備修繕に多額の費用を投資することが出来ない中、『張替えが不要な室
    内クロスの洗浄』や『車のショールームのメンテナンスも手掛けるクオリテ
    ィを持った近場のビルメンテナンス業者(隣支店のお取引先)』をご紹介、
    コスト面も含めた課題解決策を提案。
     サービス面にもコスト面にもご評価頂き、入居者の入退去が発生する都度
    ご利用頂いているなど、継続商流の創出にも繋がっています。

 ② 『入居者の衣類洗濯代行サービス』
     入居者の衣類の洗濯を職員が行っていたが、『職員の手間』や『返却間違
    いなどのクレーム防止』の観点から業務改善(アウトソース)を提案。
     入居者の満足度向上は勿論、職員の方々も『洗濯にかかる業務負担が大幅
    に削減され』『介護サービスに費やせる時間が増えた』ことに喜んで頂いて
          、
    います。(結果的には職員の定着率向上に繋がると期待される)

 ③ 『補助金を活用した送迎用車輌の購入』
     補助金の申請期限が迫る中、福祉車輌を得意とした自動車販売業者と連携
    することで、迅速な商談を実現させ、補助金を活用した購入を実現。

 ④ 『Vサポート以外の支援』
     外部専門家との連携として、社会保険労務士の紹介。

【お客さまの声】
  今回、新規事業を設立した背景には、当施設が前々経営者の時代に私が従業員と
 して働いていた施設であったこともあり、  『地域にとっても必要なこの施設』をな
 くしてはいけないとの思いが強かったからです。
  私自身は業界経験 25 年あり、業務経験も業界知識も持ち合わせていると思って
 いましたが、いざ経営者として事業を運営するとなるとそれだけでは上手くいか
 ず、他業種(人)との繋がりの重要さを痛感しました。
  それは、豊和銀行さんとの出会いが一番の例だと思っています。
  会計事務所を通じて資金相談をしたのが豊和銀行さんでした。相談当初は、若い
 担当行員(A行員)さんが色々質問をしてくるので、融資の判断をする上で聞かれ
 ているのだろうと思い、疎ましさも感じました。


                - 9 -
    しかし、A行員は私の困りごとに対し解決策の提案を行ってくれました。それは
  『銀行で提供できる解決策(融資、リース、補助金など) 』のみならず『私の悩み
  事を解決してくれるであろう業者の紹介(私自身だけでは出会うことが無かったで
  あろう業者の方々) 』にまで及んでいました。正直このような情報は、融資をして
  もらうのと同じくらい大変有難かったです。
    『何か困ったこと』や『今後取り組みたいこと』がある際には、まずA行員に相
  談するようにしています。
    今では、A行員と『悩み事』を共有し、『解決を図っていく』ことを繰り返し、
  事業基盤も安定し、サービス付き高齢者向け住宅は満床、デイサービスも稼働率約
  90%となっています。
    金融機関との取引は初めてでしたが、私にとっての銀行は『事業運営のパートナ
  ー』のようなイメージとなっており、豊和銀行さんとは今後も末永くお取引してい
  きたいと思っています。

 【担当行員の声】
   入行 2 年目(渉外経験1年未満)で融資経験が乏しい中、初めての新規事業融資
  ということもあり戸惑っていました。
   私が『初めての融資で戸惑っている』ように、お客さまも『新規の創業で戸惑っ
  ているのでは』との上司のアドバイスを受け、まずはお客さまの『困りごと(課
  題)』に向き合ってみようと思いました。
   私が入行した頃には、当行は『Vサポート』を本業として既に取り組んでおり、
  そのノウハウは1年目から見聞きする機会が多かったことが功を奏し、お客さまに
  『お困りごとをお聞きすること』また『その解決策の提案を行うこと』には何の抵
  抗(不安)もなく取り組めました(  『お客さまの“ありがとう”につながる』と理
  解していた為)  。
   また、行内で共有されている『  【本業支援】課題解決提案シート』を活用するこ
  とで、お客さまの『課題』に対して、  『的確な課題解決策』を迅速に提案できたこ
  とが、お客さまとの距離を縮めるきっかけとなったと思います。
   Vサポートを取り組むことで、お客さまの『強み・弱み』を共有してもらえ、結
  果的にはお客さまのことを良く知ることにつながり(これは経験が浅い融資業務で
  も役に立ちました)  、良好な関係性を築くことができました。


ハ.Vサポート業務の発展
 Vサポート業務では、当行自らが新たな商流を創出する必要性があることから、お取
引先の既存商流に対する分析を行っております。既存商流を分析することで、お取引先
の事業運営の相当部分を解明することができます。このことから、
                             「Vサポート業務は事
業性評価そのものである」との認識に至りました。また、お取引先をより深く理解する
取組みとして、営業店行員に対しVサポート業務についての理解と浸透を図るとともに、
レベルアップに努めております。
 このような経験を経た結果、中小規模事業者特有の事業運営上の課題解決について、
販売手法などいくつかのパターンがあることを試行錯誤しながらも認識することがで
きるようになりました。
 また、Vサポート業務を推進するにあたり、契約先の事業性評価を完了し、その取扱
商品・サービスが契約先の既存販売先にどのような顧客価値を与えていたのかなどの検



                 - 10 -
証結果を含めた『ヒアリングシート(        「商品・サービスカタログ」』というセールスツー
                                         )
ルを作成し、全行員で共有しております。
 さらに、その契約先の取扱商品・サービスがシステムに登録されると潜在的な買い手
候補先が自動的にリストアップされるデータベースシステムを南日本銀行・宮崎太陽銀
行と共同開発し、売買契約の成約や売上代金の回収までスムーズに業務を進めることが
できるような仕組みを整備しました。
 一連の業務経験とデータベースシステムを連動させ、売り手と買い手双方のお取引先
から必要とされる銀行となるよう努めております。
 本計画期間では、Vサポート業務の“本業”としての位置づけを明確にしていくなか
で、1年間に 20 先、3年間で 60 先の新規Vサポート業務委託契約の締結を見込んでお
り、2020 年度下期は 10 社(本計画期間累計 40 社)のお客さまと新たなVサポート業務
委託契約を締結し、販路開拓の支援に着手しております。
 2020 年度下期は新販路件数が累計で 777 件   (前期比+116 件)まで増加しております。
これは、当行の行員において『本業として取り組むⅤサポート業務』に対する理解が着
実に浸透し、コロナ禍で苦境に立っている事業者に対するコロナ対策提案やオペレーシ
ョン改善といった本業支援にも取り組んでいった結果であると考えています。
 また、当行のVサポート業務への取組みについては、国立大学法人大分大学様からも
高い評価を頂いており、      2020 年度上期に引き続き、2020 年度下期も経済学部の『ベンチ
ャー実践論』にてVサポートをテーマとした講義を3回に亘り行いました。
 なお、2020 年度の講義を受講された経済学部の学生の中には、金融業に関心を持って
くれた方もおり、   2021 年度新入行員として当行に入行するといった想定外の実績も生み
出されました。
 金融業界を目指す学生達にも、Vサポート業務が『当行と他金融機関の差別化要因』
として認識され始めており、リクルートにおいても好影響を与えているものと考えてい
ます。


ニ.Vサポート業務の拡大を支える業績評価の見直し
 当行では管理会計を高度化するための十分なシステム投資ができなかったことに甘
んじて、取引先セグメント別のマーケティングや計数進捗管理が旧態依然としたままで
残ってしまい、営業店の行動を支配する業績評価運営改革がこれまで後手に回ってしま
いました。ほうわビタミンローンのプライシングのリスク整合性不備を含めた全般的な
貸出の質の低下は、件数や残高だけをKPIとして、業績評価で単純に目標設定したこ
とによるものと考えております。
 Vサポート業務については、バランススコアカードの顧客の視点に該当する「僚店契
約先への売上付与」とバランススコアカードの財務の視点に該当する「Vサポート業務
によってお客さまからご評価いただいたことによる追加貸出金利息」などに因果関係を
つけた店別目標設定などを引き続き実施しております。
 Vサポート業務以外についても、市販の管理会計パッケージシステムやグループウエ
アを購入することなく、すでに保有している表計算ソフトやデータベースソフトを活用
して、業績評価運営に活用していきます。
 スプレッドバンキングや活動基準原価管理などには及びませんが、特に近年形骸化し
てきた自行短プラベースの利ざや管理については、2019 年度下期の業績評価から指標と
して活用しております。




                    - 11 -
② 経営改善応援ファンドによる積極的な資金供給
 「経営改善応援ファンド」は、思い描いたような経営環境になく財務状況が必ずしも芳
しくないことから資金調達と経営改善を望まれるお客さまに対して、お客さまの事業内容
や成長可能性等を適正に評価し、お客さまと一緒になって経営改善計画の策定を行い、安
定的に経営改善に必要な資金を供給するものであります。       なお、 「想定される改善内容」  「S
WOT分析」   「コンサル支援項目」「販路開拓コンサルティングの取組み」など、お客さま
の経営改善に繋がる取組方針を営業店からの申請段階で明確にすることで、事業性評価及
び経営改善計画の作成支援についての精度向上にも寄与していると考えております。
 2020 年度下期においては、実行件数及び金額は 74 件 2,392 百万円、2021 年3月末の残
高は 21,372 百万円となっております。また、2021 年3月末時点では実行時点の格付と比
較すると、ランクアップ先が 95 先、格付け維持先が 354 先、ランクダウン先が 70 先とな
っており、新型コロナウイルス感染拡大に直面しましたが、従前と変わらず財務内容の維
持や改善に繋がっております。
 本計画においても、引き続きお客さまの経営改善支援として「経営改善応援ファンド」
に取り組み、新規実行先数を安定的に増やしていくというこれまでの方針を維持してまい
ります。

〔 格付・債務者区分推移表 〕
              (図表 8)                                                    (単位:先数)

            2018 年度    2018 年度   2019 年度    2019 年度     2020 年度      2020 年度
              上期         下期        上期         下期          上期           下期           割合

 先数累計           245        321       384         440           489         519       100%

      アップ        40         46        61          77            86           95      18%

 格付   維持        177        252       296         320           343         354       68%

      ダウン        28         23        27          43            60           70      14%

 ※.経営改善応援ファンド完済先は先数から除きます。


〔 経営改善応援ファンドの実績 〕(図表 9)                                         (単位:先数、百万円)

            2018 年度      2019 年度     2020 年度      2020 年度        2020 年度          2020 年度
            通期実績         通期実績        上期実績         下期実績           通期実績             通期計画


 貸出実行先数          207         202            88            74          162             181

 貸出実行金額        7,160       7,832       5,289           2,392         7,681          7,200



 新型コロナウイルス感染症の影響により、お客さまが将来の事業継続に不安を抱いてお
られることを踏まえ、お客さまが『Withコロナ』時代にあって資金繰りに追われるこ
となく本業に専念することや事業の見直し及び事業の再構築をするためのお手伝いとして、
資金繰りをより安定させるために最長5年間の元金返済据置期間を設けた資金調達手段で
ある 「ほうわ資金繰り安定化ファンド」 の取扱いを、  「経営改善応援ファンド」    とは別途 2020
年 10 月に開始いたしました。
 2020 年度下期においては、実行件数 133 件、実行額 2,876 百万円の資金繰り支援を行い
ました。引き続き本取り組みを通じてお客さまが資金繰りに追われることなく、本業に専
念できる環境を提供してまいります。



                                   - 12 -
〔 資金繰り安定化ファンドの実績 〕
                 (図表 10)                         (単位:先数、百万円)

                             2020 年度
                             下期実績


 貸出実行先数                                   133

 貸出実行金額                                  2,876



③ 小規模事業者への資金供給(ビタミンローン)
 中小企業等のお客さまの増加運転資金や設備資金のニーズに円滑かつ迅速な資金供給を
行うことを目的として「ほうわビタミンローン」   (金額2百万円以上 60 百万円以下、原則
無担保、2014 年3月発売)を取組んでおり、2020 年度下期の実行は 84 先 936 百万円とな
りました。
 2020 年度下期は、上期と同様に新型コロナウイルス感染拡大の影響により、資金繰り支
援ニーズは大きかったものの、本ローンのターゲット層のお客さまでも新型コロナウイル
ス感染対応資金(実質無利子無担保融資)で資金調達を希望されるお客さまが多かったこ
とから、進捗は期初より鈍いものとなり、先数ベースでは通期計画に対し 32.1%の進捗率
となりました。
 2021 年度上期においても、新型コロナウイルス感染症の影響は継続するものと想定され
ることから、お客さまが必要とする支援は、  「資金面」での支援および地域の事業者や地域
コミュニティの「生き残り策」の構築のための支援であると考えます。その支援策の一つ
としてお客さまの小口資金ニーズに迅速に審査対応できる当商品を提案してまいります。

〔 ビタミンローンの実行推移 〕
               (図表 11)                                   (単位:先数、百万円)
          2018/3   2019/3       2020/3                    2021/3
           実績       実績           実績              計画       実績        計画比

 実行先数       358        350          414            548        176    ▲372


 実行額      4,111      5,134        4,310          5,480      1,838   ▲3,642




④ 事業承継、M&A支援に向けた取組み
 大分県は、企業経営者の平均年齢は上昇傾向にあり高齢化が進行する一方で、後継者が
いない企業の比率が高く、事業承継問題の深刻さが目立つ地域であり、事業承継に関する
相談が増加してきております。
 しかしながら、事業承継に係る手数料が見込みにくい比較的小規模の事業者が多いこと
から、当行では地域の商流や雇用を安定させるため、外部との連携を必要としない完全内
製化の体制を構築し、事業承継支援を行っております。
 具体的には、事業承継ニーズのある経営者の意向を踏まえたうえで、後継者不在先のM
&Aのマッチング支援、事業承継時の資金需要対応や相続対策支援等を通じて、事業承継
に関わる課題解決支援を行っており、ソリューション支援部内の「M&Aシニアエキスパ
ート認定制度」による有資格取得者により、外部に不要な協力を依頼することなく自前で
の課題解決が可能となっております。
 また、事業者自ら相談に来店されることが少ないことを考慮して、営業店に対して能動
的に動くよう促し、日常の営業活動において経営者と今後の経営体制や事業承継等につい


                                  - 13 -
て対話することで、事業承継に関する潜在ニーズの掘り起こしに努めております。
  事業承継や創業に係る新たな取組みとして、  「ほうわ創業・事業承継支援ファンド」     (正
式名: 「ほうわ創業・事業承継支援投資事業有限責任組合」 を 2020 年6月 22 日に設立し、
                             )
当ファンドにより、”創業期”や“事業承継期”という資金調達が困難なタイミングにお
いて「投資」と「融資」を組み合わせた資金提供を行なうとともに、事業展開のお手伝い
や管理面の強化などを行なうことで、創業や事業承継を円滑に進めてまいります。
  2020 年度下期においては、事業承継ニーズを有するお客さまに対し、後継者不在及び組
織再編に伴う第三者へのM&A相談支援及び従業員及び親族内承継の事業承継支援として
21 件のコンサル支援を行いました。コロナ禍の影響により事業承継の相談件数が減少して
おり、第三者へのM&Aについては2件の仲介支援の実績となりました。
  深刻な事業承継問題に直面する地元大分の活性化に資するため、引き続き事業承継支援
の体制強化を行い、事業承継対策支援の取組みを行なってまいります。

〔 事業承継の実績 〕
          (図表 12)                                       (単位:先数)
          2018 年度   2019 年度   2020 年度   2020 年度   2020 年度   2020 年度
          通期実績      通期実績      上期実績      下期実績      通期実績      通期計画

  先   数         9        9          1         2         3        13

 ※.当行内製化による単独支援実績(譲渡・譲受企業の先数)



⑤ 創業・新事業を目指すお客さまへの取組み
 当行では、これまで創業や新事業を目指すお客さまに対して、事業計画等の作成支援及
び大分県や各市町など創業支援機関等の各種支援制度等に関する情報提供を通じた支援
に取り組んできたほか、創業支援融資等のファイナンス支援の取組みを強化しております。
 大分県や各市町等の創業支援機関や日本政策金融公庫と情報連携を強化することによ
り創業支援対象者に関する情報を収集するとともに、起業家育成担当としてインキュベー
ションマネージャー等の創業支援関連有資格行員等の人材育成に努め、質の向上を図って
おります。
 2020 年度下期においては、営業店担当者及びインキュベーションマネージャーの資格者
による起業に伴うコンサル支援を行い、創業・新事業にかかる資金需要があった 101 先に
対し資金支援を行ないました。
 また創業に係る取組みとして、前述の「ほうわ創業・事業承継支援ファンド」を 2020 年
6月 22 日に設立し、これまでに4先に対して資金調達支援を行いました。
 今後も、ファイナンス面に限らず、販路開拓支援、ソリューション支援などオペレーシ
ョン面での創業支援も当行では可能であることから、ファイナンスとオペレーション両面
での支援を強化し、創業・新事業進出の事業者の成長や企業価値向上及び雇用の創出につ
なげ、更なる成長に必要な資金支援に繋げてまいります。


⑥ 経営改善・事業再生が必要なお客さまへの取組み
 当行では、2006 年度以降、整理回収機構などの事業再生に関するノウハウを活用し、D
DS(資本性借入金)の導入、第二会社方式による不採算部門の切り離し、事業再生ファ
ンドやABLによるプレDIP資金の導入等、当行に従来無かった手法による事業再生に
取組んできており、融資部企業支援室にノウハウを蓄積してまいりました。
 これまで蓄積されたノウハウを活用し、抜本的な事業再生を行うことで経営改善が見込
めるお客さまに対して、大分県中小企業再生支援協議会をはじめとする地域に根差した外


                                - 14 -
部専門機関等との連携や専門家の活用により抜本的な経営改善計画の策定を支援すると
ともに、同計画に基づき、DDSやDIP資金の導入、事業再生ファンドの活用等の金融
支援を行うなど、地域内の雇用や商流など、地域経済への影響にも十分に配慮しながら、
中長期的な視点に立ったお客さまの事業再生支援を徹底して実施してまいりました。
 特に新型コロナウイルス感染症の影響を受けているお客さまについては、資金繰り支援
を継続しながら経営状況等の実態把握を行いことでお客さまにあった金融支援を実施で
きる態勢で取り組んでおります。
イ. 本支店及び外部専門家等との連携による事業性評価に基づく経営改善計画の策定支
   援
  2020 年度下期においては、  外部機関等の第三者的な視点や専門的知見を活用した事業
 再生支援等のコンサルティング機能の一層の発揮に努め、より実効性の高い中小企業等
 のお客さまに対する事業再生支援態勢の強化を図りました。
  その中で、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたお客さまに対する資金繰り支援
 の一環として、2020 年度より大分県中小企業再生支援協議会においては「新型コロナウ
 イルス感染症特例リスケジュール」(通称:特例リスケ)制度がスタートしたことから当
 行では、当該制度を活用したリスケジュールを積極的に対応し、お客さまの資金繰り安
 定化を図る取組を実施しております。
  結果として、  2020 年度下期においては特例リスケ制度を含む大分県中小企業再生支援
 協議会ならびに大分県経営改善支援センターの活用による経営改善計画策定への関与
 は9先となり、その他大分県信用保証協会が行っている「経営安定化支援事業」や地元
 金融機関出資ファンドによる再建計画策定などにて 10 先、全体で 19 先に経営改善計画
 の策定支援を行なっております。

〔 2020 年度下期中に計画の着手ならびに金融機関同意を取り付けた先数〕
                                    (図表 13)
                                          (単位:先数)

                                          保証協会ほか
       中小企業再生支援協議会      大分県経営改善支援センター               合計
                                        経営安定化計画策定

       着手      同意       着手        同意      計画策定
                                                    19
        5       0         1        3       10

 ※.同意は前年度以前に着手した先での 2020 年度下期中の同意を含む



ロ. お客さまに対し本支店一体となった日常的・継続的な関係の構築によるフォロー態勢
   の強化
  営業店と融資部企業支援室が連携して、経営改善状況のモニタリングを行い、改善計
 画の進捗確認を行っております。その中で、経営改善の進捗が芳しくないお客さまにつ
 いては「特定支援先」として選定し、より深度ある経営改善支援への取組みを行ってま
 いりました。
  「特定支援先」の対象となったお客さまにつきましては、必要に応じて大分県中小企
 業再生支援協議会や経営改善支援センター等の外部専門機関を活用し、専門家等の知見
 及び助言を受けながら、より合理的で実現性の高い改善計画の策定支援を図り、地域雇
 用等の地域経済への影響も配慮しつつ、地域金融機関として金融仲介機能を十分に発揮
 した取組みを行ってまいりました。




                         - 15 -
 〔 特定支援先への取り組み状況 〕(図表 14)                       (単位:先数)

               うち、大分県中小                         その他
   2020 年度下期   企業再生支援協議                       (経営革新機
                          大分県中小企業   大分県経営改善
    特定支援先      会等の専門家の活                       関、県保証協会
                          再生支援協議会   支援センター
                   用                          経営安定化支援
                                                等)
      189         10            5      4         1



 ハ. お客さまのライフステージに応じた抜本的な金融支援による再生支援
   融資部企業支援室では、抜本的な再生支援を検討する場合に、お客さまのライフステ
  ージを適切かつ慎重に見極めたうえで、当行がコンサルティング機能を発揮し、適切な
  ご提案を行えるかが重要であると考えております。
   2020 年度下期においては、ライフステージが衰退期を迎え経営改善の進捗がままなら
  ないとされる法人のお客さまの連帯保証人となっている個人のお客さまから、所有資産
  と弁済能力を表明していただき、保証履行できる範囲内にて保証解除し検討するなど
  「経営者保証ガイドライン」に準拠する対応を図り、当該お客さまがその後のリスター
  トができるよう側面的な支援にも取り組んでまいりました。


(2) お客さまの満足度向上に向けた取組み
 ① チャネルの多様化
 イ.スマホアプリの提供
   2020 年 10 月に設置したIT戦略室を中心に、複数の機能やサービスをスマートフォ
  ンを通じて手軽に利用できる『バンキングアプリ』の提供について検討しております。

 ロ.WEB完結型ローンの導入
   2020 年9月にWEB完結型ローンの取扱いを開始しました。2020 年度下期には、126
  件 103 百万円のローン申込みがあり、うち 29 件 12 百万円が実行されました。
   なお、126 件のうち 79 件が当行でローン取引のないお客さまからの申込となってお
  り、ローン顧客の新規獲得手段となっています。今後は、さらにオートローン等の目的
  型WEB完結型ローンの導入を検討し、来店できない(あるいは来店したくない)お客
  さまのニーズに対応してまいります。


 ハ. オープンAPIへの対応
   2020 年度上期に電子決済等代行業者と締結したAPI連携は、残高照会、取引明細照
  会を可能とした参照系APIにとどまっています。そのため今後は、API接続を銀行
  ビジネスにどのように活かし収益化に繋げるかが課題であり、APIを活用した新しい
  サービスの提供を検討していく必要があると考えております。


 ② お客さま目線に立った取組み
 イ. ほうわホルトホールプラザの機能拡充
   当プラザでは、平日に時間が取れないお客さまのために、土日祝日に各種ローンや資
  産運用・相続・年金・保険のご相談を専門スタッフがお受けしております。



                       - 16 -
    2020 年度下期は、店舗の特性を活かし、営業店からの顧客紹介活動を実施した結果、
   銀行休業日を中心に 191 件の来店があり、営業店事務負担の軽減と共に様々な商品のク
   ロスセルの機会創出につながりました。
    当プラザの実績については、平準払い保険の受付が 148 件で全店受付件数 228 件の6
   割強を、フラット 35 の取扱額が2億 27 百万円で全行取扱額2億 90 百万円の約8割を、
   また普通預金口座開設は 90 件開設するなど営業店業務の軽減に寄与しました。当プラ
   ザの活用を一段と促進することで、各種ローンや金融商品販売の推進に係る営業店の業
   務負担を軽減してまいります。


  ロ.店舗の整備・美化
     お客さまに安心してご利用していただけるように新型コロナウイルス感染防止対策
   として、飛沫防止パネルや手指消毒液の営業店窓口への設置や、カウンター等の定期的
   な清掃などを実施しました。
     老朽化した津久見支店は災害に強い店舗として 2021 年6月に新築移転いたします。
     また、職場環境改善の一環として女性職員が利用するトイレの洋式化を実施しました。
   26 店舗の改修を行い、全店舗の女性職員用トイレの洋式化が実現いたしました。


(3) 経営基盤の強化
 ① 業務の効率化
  イ. 営業店に対する本部のサポート強化
    各営業店のマネーアドバイザー(MA)や若手行員のスキルアップのため、研修や個
   別勉強会を実施しました。また、営業店の渉外行員の負担を軽減するため、金融商品等
   の販売担当者を本部付にし、役割を明確にするという施策につきましては、人選を含め
   本部関係部署との協議を行い、2021 年度下期、段階的に実施してまいります。お客さま
   へコンサルティング提案を行なうことができ、多様なニーズにお応えできる体制を構築
   いたします。


  ロ. 業務改善に向けての継続的な取組み
    2020 年度下期は、限られた人材でより効率的な業務運営を行っていくため、現場の意
   見を踏まえた継続的な改善活動を「業務改善委員会」  (委員長:頭取)のイニシアチブの
   もと、実施いたしました。
    今後も、業務プロセスの見直しやIT化等により、融資・預金業務等を含め、より一
   層の効率化を進め、取引先への顧客価値の提供及び収益性の向上に結び付けてまいりま
   す。


 ② 人材育成の強化
   「地域への徹底支援、地元経済の活性化、地域への貢献」を実践し続けるためには、行
  内における人材の育成強化を図る必要があるため、以下の施策を実践しました。
  イ. 行員の顧客価値提供能力の向上
   a.管理職層の専門性向上(特に中小企業等への支援のための融資スキル、事業性評価、
     本業支援、M&A・事業承継)、マネジメント力・育成力の向上を図る取組みを行い
     ました(支店長経営塾、新任支店長研修など)。




                      - 17 -
 b.若手行員の早期戦力化のため、実践力強化を図る集合研修等を実施したほか、これま
   で実施している各種行内トレーニー制度(留学先:融資部、ソリューション支援部、
   証券国際部金融商品監理室)等の充実を図りました。

 c.「共通価値の創造」を実践するための専門性向上、Vサポート業務を含む本業支援等
   の提案力強化を図るための集合研修等を強化し、行外研修(第二地方銀行協会、業者
   等主催)のTV会議システムを活用した講座を積極的に受講しました。また地域貢献
   実践のための資格者(中小企業診断士、宅地建物取引士、FP技能士等)を養成する
   取組みを実施いたしました。

ロ.複数の職務が行える人材の育成
  人材の適正配置に向けた取組みの一つとして、希望職務調査や営業店基準人員の見直
 しを実施し、今後の適正な人員配置やジョブローテーション、女性の更なる活躍推進に
 活用していくことを組織決定しました。これに従い、ジョブローテーションの一環とし
 て、2020 年度より原則新入行員は預金業務、2年目行員は融資業務とする取り組みを開
 始いたしました。
  更に、キャリアアップ・プログラム(新入行員及び2年目行員のジョブローテーショ
 ン及びその指導カリキュラム)を策定し、2021 年度よりその取組みを開始します。


③ 人材の確保、人材の活躍推進に向けた取組み
イ. 女性の活躍のステージ拡大
  2019 年度に実施した希望職務の調査を基に、人員配置や今後のジョブローテーション
 に活用していくこととしております。
  また、女性の融資・渉外力向上に向けた育成(  「財務セミナー」を2回のインターバル
 で開催したほか、融資 能力向上研修、新任渉外(候補者)研修、トレーニーへの参加
 や資格・検定試験の受験管理の取組み等)に取り組みました。

ロ.シニア層の活躍のステージ拡大
  シニア層の活躍推進・活用に向けて、本計画期間中に、定年後再雇用後の処遇・呼称
 の見直しや役職定年後(現在 58 歳)の処遇の見直しを一部行いました。

ハ.働き方改革に向けた取組み
  ES向上に向けた「ライフ・ワーク・バランス」実現に向けた取組みとして、本計画
 期間中に、半日休暇の導入や、永年勤続者に対するリフレッシュ休暇の内容充実を図り
 ました。また、2020 年度下期には、育児や介護を行う労働者が子の看護休暇や介護休暇
 を柔軟に取得できるよう、時間単位での取得ができるよう、規程を改正しました。




                  - 18 -
4. 従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項の進捗状況
 (1) 業務執行に対する監査又は監督の体制の強化のための方策
   業務執行に対する監査又は監督の体制を強化するため、      2016 年6月以降は社外取締役2名
  (非常勤)を選任し、取締役会の監督・牽制機能の強化を図っております。
   加えて、社外常勤監査役1名の就任(2006 年 10 月)、監査役会付行員の配置等を通じ、監
  査役会の機能強化も図っております。
   今後とも、現体制を維持し、経営管理態勢の強化に努めてまいります。


 (2) リスク管理の体制の強化のための方策
  ① 統合的リスク管理体制強化、RAF(リスクアペタイト・フレームワーク)体制構築のための方策
    当行では、従前より経営体力の範囲内で各リスクカテゴリー・各業務部門にリスク資本
   を配賦し、その範囲内でリスクテイクを行うことにより健全性の確保を図るとともに、限
   られた経営資源を効率的に活用し、収益性の向上を目指しております。
    その中で、信用リスク管理については、地元の商流や雇用を支える地元事業者へのリス
   クテイクによる貢献が求められていることを認識し、地元分については一定のリスクテイ
   クを許容するとともに、  リスク資本を確保する観点から地元以外のリスクを抑制するなど、
   地域経済の活性化を強く意識したリスク管理方針としております。また、リスク資産毎に
   指標であるVaR、EL(期待損失)  、UL(非期待損失)を計測して、地元と地元以外を
   分別して管理するとともに、配賦したリスク資本と対比することにより、リスク量をコン
   トロールしております。
    また、2020 年3月の取締役会にてリスクアペタイト・フレームワーク(RAF)を導入
   することを決議し、2020 年4月1日付で『リスクアペタイトの基本方針』と『リスクアペ
   タイト規程』を制定しました。これまで実施してきた統合的リスク管理によるリスク量管
   理や資本配賦運営を継続しつつ、  内外環境や経営戦略を考慮したリスクテイク方針を定め、
   リスクアペタイトの範囲内に収まるようリスクをコントロールしながら収益を確保し、事
   業計画の達成とポートフォリオの適切性の確保を目指します。
    RAF運営の対象とするリスクカテゴリーは計量化可能なリスクカテゴリーとしており
   ます。2020 年度は、事業性融資(地公体・個人ローン・破綻懸念先以下を除いた貸出金)
   の「信用リスク」と有価証券の「価格変動リスク」を対象とし、それぞれのリスクカテゴ
   リーでリスクテイク方針を定め、様々な角度で分析してリスクテイクの状況や収益実績等
   をモニタリングし、その結果をPDCAサイクルにつなげる体制を整備しております。
    特に、信用リスク(事業性融資)に対しては、   「コロナ禍の新常態においても、Vサポー
   ト業務や経営改善応援ファンドを活用してリスクの高い先の業況改善に取組み、付加価値
   を提供することで適正な金利水準を維持し、   収益を確保しつつ共通価値の創造につなげる」
   とのリスクテイク方針とし、中小規模事業者への徹底支援の姿勢や地域金融機関としての
   役割・存在意義等を前面に押し出した内容とするとともに、あらゆる機会を通じて全職員
   に周知しております。




                       - 19 -
〔 信用リスク(地元向け事業性融資) 〕
                   (表 15)                                               (単位:先、百万円)
                   2019/3 期    2019/9 期    2020/3 期    2020/9 期   2021/3 期   (2019/3 期比)

先数                     4,951       4,972       5,028      5,271      5,507           556

  破綻懸念先以下                342         341         349        355        346             4

  正常先+要注意先             4,609       4,631       4,679      4,916      5,161           552

      地公体                 19          19          19         20         20             1

      事業性              4,590       4,612       4,660      4,896      5,141           551

       地元以外              321         327         345        353        356            35

       地元              4,269       4,285       4,315      4,543      4,785           516

            正常先        2,998       2,977       2,933      2,928      3,046            48

            要注意先       1,271       1,308       1,382      1,615      1,739           468

与信額                 340,248     328,278     333,159     343,498    349,743         9,495

  破綻懸念先以下            17,328      16,964      18,364      19,152     19,182         1,854

  正常先+要注意先          321,838     311,314     314,794     324,346    330,561         8,723

      地公体            39,940      38,431      36,272      35,550     33,821       ▲6,119

      事業性           281,898     272,882     278,522     288,796    296,740        14,842

       地元以外          47,865      41,355      44,277      46,386     46,004       ▲1,861

       地元           234,033     231,528     234,245     242,410    250,736        16,703

            正常先     171,845     170,185     168,416     159,976    161,459      ▲10,386

            要注意先     62,188      61,342      65,829      82,433     89,277        27,089

リスク量(VaR)(地元)          6,878       5,442       5,754      5,221      5,643       ▲1,235

            正常先        2,311       1,865       1,895      1,437      1,417         ▲894

            要注意先       4,567       3,577       3,859      3,784      4,226         ▲341

EL(期待損失額)              2,982       2,230       2,363      2,098      2,281         ▲701

       地元以外              417         285         321        295        352          ▲65

       地元              2,565       1,945       2,042      1,803      1,930         ▲635

            正常先          862         666         672        496        485         ▲377

            要注意先       1,703       1,278       1,369      1,307      1,445         ▲258

UL(非期待損失額)             5,014       4,009       4,297      3,977      4,390         ▲624

       地元以外              701         512         584        559        677          ▲24

       地元              4,313       3,497       3,713      3,418      3,713         ▲600

            正常先        1,449       1,198       1,223        941        932         ▲517

            要注意先       2,864       2,298       2,490      2,478      2,781          ▲83




                                - 20 -
② 信用リスク管理体制強化のための方策
イ. 与信ポートフォリオ管理
  当行は、これまで通り、クレジットポリシーに基づき適切に信用リスクの把握・管理
 に努めるとともに、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたお客さまに関してもモニ
 タリング態勢を継続し実態把握を進めながら適切に信用リスクを把握してまいります。


ロ. お客さまの実態把握
  融資部企業支援室と営業店が協働で経営改善支援を継続しているお客さまに関して
 は、Vサポート業務を通じてトップラインの改善が図るようにサポート活動を実施して
 おります。
  Vサポート業務を通じて入手する事業活動関連の情報を経営改善支援に活用しなが
 ら、更にお客さまの業況改善につなげてまいります。
  2020 年度下期においては、  融資部企業支援室と営業店が協働で経営改善支援を継続し
 ているお客さま(特定支援先)11 先に対して合計で 21,061 千円の売上が確保され、ト
 ップラインの改善に繋がりました。
   なお、当該のお客さま 11 先においてはVサポート業務の実施後、2021 年3月末まで
 に累計で 141,930 千円の売上実績が確保されております。


ハ. ストレステストの実施
  当行は、  これまで親会社への名寄せによるグループ合算、   地価下落による保全率低下、
 景気後退により格付悪化した建設・不動産業や、貸出金が増加傾向にあった「個人によ
 る貸家業」や「医療・福祉業」の格付悪化による影響を定期的に計測し、影響の度合い
 を検証してまいりました。また、シナリオ毎に明細単位でEL理論値を算出し、その構
 成比から店別のULを計測しており、店別・地域・業種別に算出したデータを蓄積し、
 ポートフォリオの適正管理や信用リスク管理に活用しております。
  2020 年9月、2021 年3月に実施したストレステストでは、新型コロナウイルス感染
 症の影響が大きい宿泊業・飲食業の業況悪化を考慮し、インタレスト・カバレッジ・レ
 シオが 100%未満で赤字の先の格付悪化をシナリオに加え、影響度合いを計測してAL
 M/リスク管理協議会に報告しております。
  今後とも、このような取組みを通じて地元ULを可視化し、地域経済の活性化に資す
 る地元の事業者への適切なリスクテイクに努めてまいります。


ニ.不良債権の適切な管理のための方策
  お客さまの業績低迷が確認された場合、早期に営業店と融資部企業支援室が連携して、
 経営改善の実現可能性を確認し、さらに踏み込んだ抜本的な事業再生を行うことにより、
 経営改善が見込めるお客さまに対しては、外部専門機関・専門家等と連携して、抜本的
 な経営改善計画を策定し「ほうわ経営改善応援ファンド」による融資支援、DDSの導
 入、資本参加、事業再生ファンドの活用、債権放棄の実施などの金融支援を実施してお
 ります。
  また、事業の存続を徒に長引かせることが却って経営者の生活再建に悪影響を及ぼす
 恐れがある場合には、融資部企業支援室と外部専門機関等の連携により、債権整理を前
 提とした再起に向けた方策を検討するなど、お客さまの状況に応じたソリューションの
 提供に努めてまいりました。



                   - 21 -
〔 債権放棄の状況 〕
          (表 16)                                              (単位:百万円)
              事業再生に向けた支援目的の債権処理                    破綻処理等          債権処理合計額
      年度
               債権放棄         DDS 他       計(A)       バルク処理(B)         (A+B)

    2013/下期           0             0          0           98                 98

    2014/上期           0             0          0           464               464

    2014/下期        1,006            0     1,006            289              1,295

    2015/上期           0             0          0           76                 76

    2015/下期         426             0      426             126               552

    2016/上期         545         584       1,129         3,844               4,973

    2016/下期         572             0      572          1,628               2,200

    2017/上期        1,160            0     1,160            283              1,443

    2017/下期         552             0      552          1,299               1,851

    2018/上期           0             0          0              0                0

    2018/下期         347             0      347             146               493

    2019/上期         211             0      211             146               357

    2019/下期         224         289        513             234               747
    2020/上期           91            0        91               7                98

    2020/下期           0             0          0           267               267
    累計(新法での
                   5,134        873       6,007         8,907           14,914
   公的資金注入後)


③ 市場リスク管理体制強化のための方策
イ.基本方針
  新型コロナウイルス・ワクチンの接種が本格的に始まったことや、コロナ危機に対応
 した世界各国による金融緩和政策や経済対策が継続的に打ち出されたことなどで、2020
 年度下期の世界経済は回復期待が強まりました。この流れを受けて、国内株式市場では
 海外市場の株高の動きと相まって、2月に日経平均株価が約 30 年半ぶりに3万円の大
 台を突破しました。一方、長期金利は3月期末が接近するにつれて、日銀の金融緩和政
 策の点検が意識され、一時的に+0.1%を超える局面もありました。
  このような環境下、有価証券運用については運用施策や運用基準に則り、各種マーケ
 ット動向を十分吟味し、個別銘柄の購入に当たってはきめ細かい選定を行いました。
  引き続き、市場リスク管理部門(総合企画部リスク管理グループ)では、モニタリン
 グ指標として債券保有状況、金利リスク量(100BPV、IRRBB)、リスク量の自己
 資本に対する割合の計測結果を月次でALM/リスク管理協議会に報告し、債券の金利
 リスク管理の強化を図っております。また、金利上昇等のマーケット動向による保有有
 価証券の評価損益の状況を適時把握し、必要な場合には「有価証券に係る金利急騰時の
 アクションプラン」に基づき、証券国際部と総合企画部との部門間協議を開催して対策
 を協議するなど、マーケットの急激な変化にも即座に対応する態勢を構築しています。
 債券以外についても、エクイティ商品(主に株式や投信)の価格変動リスクを十分認識
 したうえで、個別銘柄の評価損益の状況を日次で把握するとともに、相場急変時等にお
 いては上記と同様に証券国際部と総合企画部との部門間協議を開催して対策を協議し
 ています。


                           - 22 -
 なお、2020 年度下期の価格変動リスクへの資本配賦額は上期と同額の 25 億円とし、
慎重な運用方針を継続しました。
 また、有価証券リスク量拡大の抑制に向けたポートフォリオ見直し(保有銘柄の入替
等)を行ったほか、含み損の拡大防止に向けたロスカットを実施しました。
 2021 年3月末の有価証券の含み損益はネットで+763 百万円と、2020 年9月末▲89
百万円、同 12 月末+219 百万円と比較して含み益が増加基調にあります。
 保有有価証券の評価損益の把握に関連しては、引き続き、市場リスク管理部門が日次
で有価証券時価情報を取得し、フロントが作成する時価情報と突合することで評価損益
やロスカットポイント等の妥当性の検証を行うことでフロントへの牽制を図っていま
す。


ロ.リスク管理方針
 市場リスク管理については、VaRや 100BPV、IRRBB、評価損益等を計測し、
市場リスク部会、ALM/リスク管理協議会等において経営陣に報告し、協議する態勢
としています。   VaR計測モデルについては、モデルの有効性検証のために定期的にバッ
クテストを実施し、市場リスク部会、ALM/リスク管理協議会に報告しています。
 一方で、VaRを用いた統合的リスク管理においては、市場リスク管理上、VaRによ
るリスク計測に限界があることから、それを補完する目的で各種のストレステストを実
施しており、   その結果を市場リスク部会、ALM/リスク管理協議会に報告しています。
また、2020 年3月より各種ストレステストの結果については、半期ごとの投資計画の策
定時における想定リスク量算出に活用することとしています。
 足元、市場金利が低位で推移するなか、当行の有価証券ポートフォリオ上の構成比率
が最も大きい債券の金利リスク管理については、   「金利急騰時のアクションプラン」 に基
づき、市場金利の動きを日次でチェックするとともに、トリガー抵触時には速やかに証
券国際部と総合企画部との部門間協議を行ない、市場リスク部会およびALM/リスク
管理協議会に報告する態勢としています。債券投資にあたっては、投資対象銘柄の残存
年数は 10 年物までとし、残存年数の長期化の抑制に努めています(2021 年3月末 4.4
年)。
 また、金利変動以外においても、保有する有価証券の価格変動リスクや当該発行体の
信用リスクなど様々なリスクが増大・顕在化することが予想される、もしくは増大・顕
在化した場合には、すみやかに証券国際部と総合企画部にて部門間協議を行い、市場リ
スク部会およびALM/リスク管理協議会に報告、協議する態勢としています。
 なお、期中の市場取引や運用については、ALM/リスク管理協議会にて承認された
「資金運用施策」および「有価証券等運用基準」に基づいて実施しています。


ハ.IRRBB基準への対応
  IRRBBの指標であるΔEVEは月次、ΔNIIは四半期ごとに算出し、月次開催
される市場リスク部会およびALM/リスク管理協議会に報告しております。
  2020 年3月にALMシステムをマイナス金利が許容できるよう仕様変更したことで、
2020 年2月末基準より、下方パラレルシフトのΔEVEが最大となっておりましたが、
半期ごとのコア預金リスクインデックスの見直しにより、要求払預金の平均残存期間が
短くなった影響を主な要因として、   2021 年3月末基準では上方パラレルシフトのΔEV
Eが最大となっています。なお、自己資本の 20%以内には十分収まっております。




                  - 23 -
 ④ 流動性リスク管理
  流動性リスク管理につきましては、資産・負債のポートフォリオ構成を重視し、大口入
 出金事案の把握、資金繰り予想、公金や大口定期預金等の動向、LCR等を通じて流動性
 リスクの分析・評価を行い、流動性リスク部会、ALM/リスク管理協議会等において経
 営に報告し、協議する態勢としています。
  日々の流動性リスク管理にあたっては、流動性準備量について準備率ならびにネットポ
 ジションの目標値を設置し、資金繰り・担保繰り状況等についてモニタリングを実施して
 います。
  2020 年度下期は、   期を通じて流動性準備の目標とする第1線準備率ならびにネットポジ
 ションともにクリアしており特段の懸念はない状況を維持しています。
  前年度下期より開始した公金管理の指標      「大口預金(含むNCD)対流動性準備量比率」
 により、引き続き大口定期預金のフォロー・管理を行っています。
  さらに、   2020 年9月末基準で公金流出シナリオに基づいた流動性ストレステストを実施
 しました。  1年前と比べて預金量の増加率が融資量を上回り預貸率が低下したことに伴い、
 流動性準備が大きく改善(第1線準備率、ネットポジションが向上)し、公金流出シナリ
 オに対する耐性は前回よりも向上しています。
  また、日銀当座預け金へのマイナス金利付与対策としてコールローン、短期社債への運
 用を積極的に行い、支払利息圧縮に努めました。


 ⑤ オペレーショナルリスク管理
 イ. オペレーショナルリスク管理に関する取組み
    オペレーショナルリスク管理に係る各議案に関し、経営陣の関与の下で、2020 年度
   下期中に、
       「生体認証付鍵管理機の導入について」「BeSTAcloudハード更改
   に関わるドキュメントの制定について」などについて各種会議体における審議・報告
   を実施しております。


 ロ. サイバーセキュリティ管理に関する取組み
    安全で信頼性が高い金融サービスを提供する使命を適切に履行するために、サイバ
   ーセキュリティ管理態勢の強化に取り組むべく、   2020 年度下期は金融庁主催のサイバ
   ーセキュリティ演習「Delta Wall Ⅴ」に参加し、有事対応における行内の
   リスク管理態勢の十分性を検証しました。その他「営業店役席者に対するセキュリテ
   ィ教育」
      「行内ネットワーク環境における不正通信防御対策」      「SBK自行センタにお
   ける不正通信検知対策」   などの取組みを実施しております。   特に 2020 年度末には、足
   下のDX(デジタルトランスフォーメーション)対応と新型コロナウイルス感染拡大
   防止を目的に、リモートワーク環境の整備に取り組むことを機関決定しており、その
   実現に向けて 2021 年度中に現在のセキュリティレベルを一段と高める対策を講じる
   方針としております。


(3) 法令遵守の体制の強化のための方策
 ① コンプライアンス統括機能の充実・強化
  2020 年2月に発覚した不祥事件の要改善事項はコンプライアンス協議会にて進捗状況
 や実効性の確認を行っています。
  不祥事件の再発防止策として、行員の禁止行為に関するお客さまへの周知や所属長によ


                       - 24 -
  る抜打ち検査、抜打ち訪問等の検査方法の見直し、内部通報制度の見直し等を行うなど、
  2020 年度下期中に全ての要改善事項に着手しております。
    さらに、  不祥事件の要改善事項のうち、継続が必要な事項は 2021 年度のコンプライアン
  ス・プログラムに組み入れて、再発防止に向けた取組みを強化しています。


 ② マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止態勢の強化
   反社対応や疑わしい取引に関する業務は金融犯罪対策室が一元管理を行っており、反社
  情報の精緻化とデータの整備の向上を図っております。
   あわせて、金融犯罪対策会議を月次で開催し、疑わしい取引の届出に関する判定やAM
  L/CFTに関する個別事案の協議を行うなど、本部各部を横断的かつ機動的なAML/
  CFTを実施しています。
   さらに、AML/CFTに係る規程・マニュアル類・各種様式等の改正、改訂を行うと
  ともに適時に各種事務の取扱について行内に周知、研修や臨店指導を行うなど、第1線へ
  の支援・指導の強化を行っています。
   また、AMLシステムについては、2020 年度下期中にシステム導入開発進捗TV会議を
  6回開催。2021 年2月に業務運用テストを完了し、2021 年4月1日に運用を開始しまし
  た。


(4) 経営に対する評価の客観性の確保のための方策
  2020 年度下期は、2019 年度に行いましたNPS(ネットプロモータースコア)※アンケー
 トの分析結果を基に、行員のスキルアップについて関連部署で協議を実施しました。中でも
 若手行員の人材育成がお客さまのご要望にお応えするために必要であると判断し、      2021 年度
 上期より若手行員への研修、セミナーを実施してまいります。2021 年度は次期経営強化計画
 の策定に向けてお客さまアンケートを実施する予定にしております。今後もアンケートを通
 じてお客さまに更に一層支持される銀行を目指し改善に取り組んでまいります。
 ※.顧客ロイヤルティを測る新しい指標であり、企業に対して顧客が持つ愛着や信頼の度合いを数値として把握できるように
   した指標。


(5) 情報開示の充実のための方策
 ① 四半期ごとの情報開示の充実
   当行では、お客さま、株主をはじめとする投資家の皆さま、地域社会等から正しい理解
  と信頼を得るため、証券取引所への適時開示のほか、記者会見、プレスリリース、ホーム
  ページへの掲載等により、迅速かつ正確な四半期の財務・業績情報の提供を行っており、
  今後とも、迅速かつ充実した開示に努めてまいります。


 ② 会社情報の適時開示
   当行では、迅速かつ充実した情報開示に取組むため、大口不良債権の新規発生、不祥事
  件の発生等、本部・営業店等からの各種情報は、総合企画部において、一元管理する態勢
  としております。
   総合企画部では、各種情報が適時開示情報に該当するか否かを判断し、原則として、取
  締役会等の承認のもとに適時適切に開示しています。
   さらに、お取引先との交流会である「本店豊和会」においても適時適切に情報を開示す
  るなどのIR活動にも努めています。
   今後とも、銀行法、金融商品取引法その他の法令及び証券取引所の定める適時開示規則


                         - 25 -
に基づき求められる情報に加え、経営の透明性を確保するため、リスク情報や部門別損益
情報などの情報開示にも努めてまいります。


③ 主として業務を行っている地域への貢献に関する情報開示の充実
 当行は、地元経済の活力向上と地域の発展に貢献するため、お客さまの経営改善等や成
長・発展に向けた経営支援、創業・新事業を目指すお客さまへの支援等の積極的に取り組
むほか、環境、金融に関する教育、文化、防犯協力、ボランティア活動への貢献など、地
域・社会貢献、CSR活動を幅広く展開しております。
 こうした取組みや活動については、ディスクロージャー誌や決算短信等にて開示してお
り、今後とも内容を充実させ、積極的に開示してまいります。




                 - 26 -
5. 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行なっている地域にお
   ける経済の活性化に資する方策の進捗状況
(1) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行なっている地域に
    おける経済の活性化に資するための方針
     当行は、地域の中小規模の事業者等のお客さまを取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、中小
    規模の事業者等のお客さまと真正面から向き合い、コンサルティング機能を発揮し、お客さ
    まの経営改善等及び成長・発展に向け、経営改善支援活動と積極的な資金供給を徹底するこ
    とで、地域経済の活力向上と地域の発展に貢献していくことこそが、地域金融機関としての
    責務であると考えています。
     本計画においては、前述の取組方針「地域への徹底支援」に基づく諸施策を確実かつ持続
    的に実施することで、中小規模の事業者等や個人のお客さまに対して、円滑な資金供給に努
    めてまいります。


 (2) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策
  ① 中小規模の事業者に対する信用供与の実施体制の整備のための方策
    当行では、融資業務スピードアップを図るために業務効率化を目的としたコンサルティ
   ングを通じて具体的な方策を検討し、「融資業務プロセスの見直し」「融資関連帳票の見直
   し」の観点から取組み改善を図ってまいりました。
    今後も、営業店がよりお客さまと接する時間を増やし、十分なコンサルティング機能が
   発揮できる体制整備につなげ、地域金融機関としてより一層の円滑な資金供給に努めてま
   いります。

  ② 担保又は保証に過度に依存しない融資の促進その他の中小規模の事業者の需要に対応し
    た信用供与の条件又は方法の充実のための方策
    事業性評価に基づいたお客さまの多様な資金ニーズに柔軟に対応するため、無担保融資
  や、売掛債権や在庫、動産、知的財産等を担保とした融資、債権譲渡契約に担保設定した
  融資等を積極的に推進してまいりました。
    具体的には、大分県内で1年以上同一事業を営む法人及び個人事業主のお客さまを対象
  とし、原則無担保で事業資金をご融資する「ほうわビタミンローン(詳細は、13 頁 3-(1)-
  ③小規模事業者への資金供給(ビタミンローン)等に記載しております)     」やTKC会員の
  税理士・会計士等が関与する中小企業等のお客さまを対象とする原則担保不要のローン商
  品「ほうわTKCローン」1先、2百万円、お客さまの柔軟な資金調達ニーズへの対応と
  して、対外信用力の向上にも繋がり、また期日まで約定弁済のない資金調達手法にもなる
  「銀行保証付私募債(がんばろう九州私募債)   」5先、680 百万円、
                                     「銀行保証付私募債(ほ
  うわSDGs私募債) 」4先、350 百万円、優れた技術力を有する地域のお客さまが持つ特
  許権・商標権・実用新案権・意匠権・著作権等の知的財産権の価値を評価し、その事業価
  値に応じて必要資金を供給する「知的財産担保融資」などを活用し、中小規模事業者の多
  様な資金ニーズに応えてまいりました。


  ③ 中小規模事業者等向け信用供与円滑化計画を適切かつ円滑に実施するための方策
   【 中小規模事業者等に対する信用供与の残高の総資産に占める割合 】
     2021 年3月期は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う売上の減少等により、中小企業
    のお客さまの資金需要が強い上、政府による資金繰り支援策である実質無利子無担保融
    資も含め、  お取引先の資金繰り対応に注力した結果、「中小規模事業者等向け貸出残高」


                     - 27 -
   は 2,792 億円(計画比+151 億円)となりました。政府の新型コロナウイルス感染症対
   策である各種給付金や貸出の増加により、     「総資産残高」は 6,336 億円(計画比+523 億
   円)  となったことから、 「中小規模事業者等向け貸出の総資産に占める比率」      は計画値を
   1.36 ポイント下回る 44.07%となりました。
     2020 年度下期における中小規模事業者等向け同比率が未達成であったことに加え、
   2021 年度上期はWithコロナであることを踏まえ、これまでの常識にとらわれず、個
   別のお取引先のニーズに沿った支援、真に支援を必要とするお取引先に対し、特に小口
   先を中心に顧客価値を提供することで、質の高い融資に一層注力するとともに、Vサポ
   ートによる運転・設備資金需要喚起とあわせて以下の施策を実行することで目標の達成
   を目指してまいります。
     ・新型コロナウイルス感染症の影響を受けているお取引先を対象として、コロナ禍に
       おいても事業に専念していただけるよう、最長5年間元本据え置き可能な「資金繰
       り安定化ファンド」による支援
     ・課題検討会の実施(店内にて個社毎に現状認識を行い、基本方針・提案内容を決定
       する)
     ・要注意先以下のお客さまへの積極的な資金供給(     「経営改善応援ファンド」   「小口貸
       出」 )と事業性評価の徹底(特に年商 50 百万円以下のお客様)
     ・「ほうわビタミンローン」を活用した新規事業先の開拓
     ・親密事業者に対する仕入先事業者の当行紹介運動(ほうわの輪を広げよう運動)
     ・重点取引先訪問リストの作成による肩代り防止及びおまとめ提案

  〔 中小規模事業者等に対する信用供与の計画・実績 〕(表 17)                                                     (単位:億円、%)

                  2019/3   2019/9   2020/3    2020/9              2021/3                2021/9   2022/3
                  (始期)      実績       実績        実績      計画      実績      計画比     始期比       計画       計画

   中 小 規 模事 業 者
                  2,530    2,511    2,573     2,698    2,641   2,792   +151    +262     2,664    2,687
   等向け貸出残高

   総資産残高          5,785    5,788    5,784     6,154    5,813   6,336   +523    +551     5,851    5,892

   総 資 産 に対 す る
                  43.73    43.38    44.49     43,84    45,43   44.07   ▲1.36   +0.34    45.53    45.61
   比率

  ※ 総資産に対する比率 = 中小規模事業者等向け貸出残高 ÷ 総資産残高



(3) その他主として業務を行っている地域における経済の活性化に資する方策
 ① 創業又は新事業の開拓に関する支援に係る機能の充実の強化のための方策
   当行では、これまで創業や新事業を目指すお客さまに対して、事業計画等の作成支援及
  び大分県や各市町など創業支援機関等の各種支援制度等に関する情報提供を通じた支援に
  取組んできたほか、創業支援融資等のファイナンス支援の取組みを強化しております(詳
  細は、14 頁 3-(1)-⑤創業・新事業を目指すお客さまへの取組み等に記載しております)。


 ② 経営に関する相談その他の取引先の企業(個人事業者を含む)に対する支援に係る機能
   の強化のための方策
   お客さまからの経営に関する相談に対しては、お客さまのライフステージ等に応じ、お
  客さまの立場に立った最適なソリューションを提案し、お客さまと協働して実行すること
  を基本方針としております。また、お客さまへのソリューションの提案等にあたっては、



                                             - 28 -
必要に応じて外部専門機関・専門家等とも連携し、お客さまの経営改善等や成長・発展を
支援してまいります(詳細は、6 頁 3-(1)「地域への徹底支援」に記載しています)
                                         。


③ 早期の事業再生に資するための方策
 早期の事業再生に資する方策として融資部企業支援室が主体となり、重点的に管理をし
ていく先を「特定支援先A」とし、営業店と協働して管理していく先を「特定支援先B」     、
加えて 2020 年度から新型コロナウイルス感染症の影響により業況が芳しくない先につい
て、今後「特定支援先A」と同程度の支援が必要と判断される先を「特定支援先C」とし
て選定を行い、アフターコロナに向けた経営改善支援を見据えてお客さまの業況把握に努
め、より深いより実効性のある支援につなげていく方針としております。
 なお、2020 年度下期における「特定支援先」として経営改善支援を実施している先は 189
先となっております。(先数については下記参照)

 〔 2020 年度下期の特定支援先増減について〕(表 18)                       (単位:先)

          2020 年度   2020 年度
                                増減
  管理区分     期初        下期末                     2020 年度下期までの増減理由
           先数        先数         先数
   特定
            78        80         +2    下期までに特定支援先 B から移管と新規追加
  支援先 A
   特定
            71        70         -1    下期までに特定支援先 A へ移管 1 先
  支援先 B
   特定
            16        39        +23    下期までに新型コロナ禍影響により増加
  支援先 C

   合計       165       189       +24



 「特定支援先A・B」につきましては、経営改善計画策定時において積極的に中小企業
再生支援協議会等の外部専門機関が関与した専門的知見による実現性の高い改善計画の策
定支援を行う態勢としております。
 また、特定支援先C」
   「       につきましては、コロナ禍における資金繰りが円滑になるように、
営業店と協働してお客さまの実情を把握し、中小企業再生支援協議会や信用保証協会、日
本政策金融公庫などの公的機関とも連携しながら、特例リスケ対応やコロナ対策融資制度
の利用などを実施してまいりました。

④ 事業の承継に対する支援に係る機能の強化のための方策
 当行では、事業承継ニーズのある経営者の意向を踏まえたうえで、後継者不在先のM&
Aのマッチング支援、事業承継時の資金需要対応や相続対策支援等を通して、事業承継に
関わる課題解決支援を行っております(詳細は、13 頁 3-(1)-④事業承継、M&A支援に向
けた取組み等に記載しております)
               。

【 経営改善支援等取組企業数の取引先企業総数に占める割合 】
  2021 年3月期は、新型コロナウイルスの感染症に伴う国や自治体による実質無利子無
 担保融資や給付金等の支援が引続き行われたことから「担保・保証」が計画比▲153 先と
 なった反面、事業支援に関する「経営相談」は計画比+172 先となり、分子となる「経
 営改善支援等取組企業数」は 641 先(計画比+43 先)となりました。


                              - 29 -
  分母となる「取引先企業総数」も 6,870 先(計画比+243 先)と計画を上回りました
が、 「経営改善支援等取組企業数の取引先企業総数に占める割合」は 9.33%(計画比+
0.31 ポイント)と計画を上回りました。

〔 経営改善支援等取組企業数の取引先企業総数に占める割合の計画・実績 〕
                                   (表 19)                                                (単位:先、%)
                                                                  2021/3
                   2019/3   2019/9   2020/3   2020/9              計 画                    2021/9   2022/3
                   (始期)     実 績       実績       実績                                        計 画      計 画
                                                       計 画     実 績     計画比       始期比
 経営改善支援等取
                     561      546      537      556      598     641       +43     +80      607     616
 組先数
      創業・新事業          78       80       76       90      84      101       +17     +23      85       87

      経 営 相 談        194      168      179      308      215     387    +172      +193      220     223
        うち販路開拓
        コンサルティング       1       10       10       10      10      10          0     +9       10       10

      事 業 再 生         16       16       17       16      16      17        +1      +1       16       16

      担保・保証          259      260      237      122      266     113   ▲153      ▲146       268     271

      事 業 承 継         14       22       28       20      17      23        +6      +9       18       19

  取引先企業総数          6,227    6,271    6,385    6,616    6,627   6,870    +243      +643    6,727   6,827

  比          率      9.00     8.70     8.41     8.40     9.02    9.33   +0.31     +0.33     9.02    9.02

※ 比率 = 経営改善支援等取引先数 ÷ 融資取引先企業総数
※ 「融資取引先企業総数」とは、企業及び消費者ローン・住宅ローンのみの先を除く個人事業者の融資残高のある先で、
  政府出資主要法人、 特殊法人、地方公社、大企業が保有する各種債権又は動産・不動産の流動化スキームに係るSPC、
  当行の関連会社、及び子会社に大会社を有する親会社を含んでおります。
※ 「経営改善支援等取組先」とは、次の5項目への取組み先です。
 1. 創業・新事業開拓支援先
 2. 経営相談支援先
 3. 早期事業再生支援先
 4. 担保・保証に過度に依存しない融資促進先
 5. 事業承継支援先




                                        - 30 -
6. 剰余金の処分の方針
 (1) 配当に対する方針
   優先株式及び普通株式の配当については、2009 年度から継続して実施しております。
   今後、前述の取組方針 ①「地域への徹底支援」、②「お客さまの満足度向上に向けた取組
  み」、③「経営基盤の強化」に基づく諸施策を確実かつ持続的に実施し、収益力を強化する
  ことで、安定した収益を確保し、内部留保の蓄積に努めつつ、安定かつ適切な配当を行って
  いく方針としております。

 (2) 役員に対する報酬及び賞与についての方針
   当行では、2003 年度から役員賞与の支給を見送っており、2005 年度からは退職慰労金の
  支給も凍結しております。
   今後も、業績を踏まえた報酬及び賞与としていく方針であります。

(3)財源確保のための方策
   2021 年3月末の利益剰余金は、2020 年3月末に比べ5億 84 百万円増加の 76 億5百万円と
  なりました。
   今後も経営強化計画を確実かつ持続的に実行し、     安定した収益を確保することで、     利益剰余
  金を着実に積み上げてまいります。

   〔 長期予想 〕
          (表 20)                                             (単位:億円)

            2019/3 末   2020/3 末   2021/3 末   2022/3 末   2023/3 末   2024/3 末
             実 績        実 績        実 績        予 想        予 想        予 想

    当期純利益        11          3          9          7          8          8

    利益剰余金        70         70         76         77         81         85


            2025/3 末   2026/3 末   2027/3 末   2028/3 末   2029/3 末
             予 想        予 想        予 想        予 想        予 想

    当期純利益         9         10         11         10         12

    利益剰余金       110        135        161        186        213




                                       - 31 -
7. 財務内容の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策の進捗状況
 (1) 経営管理に係る体制及び今後の方針等
  ① 経営強化計画運営協議会による進捗管理
    経営強化計画の履行状況に関する進捗管理を行うため、2006 年 10 月に設置した「経営
   強化計画運営協議会」(議長:頭取)を週次で開催しております。
    同協議会では、毎月の損益状況等を把握し、諸施策の実施状況や半期ごとの目標に対す
   る進捗状況を確認するとともに、進捗状況に応じ、乖離要因を分析の上、対策を立案・検
   討し、営業統括部より支店長をはじめ全行員へ、中小規模事業者向け貸出及び貸出利回り
   の水準の改善等具体的な指示(例:Vサポートによる売上支援、訪問ルールの徹底、BA
   NK-Rへの入力の徹底、「経営改善応援ファンド」を中心とする地元中小規模事業者に対
   する円滑な資金供給の徹底等)を速やかに行っています。


  ② 内部監査態勢
     第一に、内部監査の高度化に向けた課題に対しましては、2020 年度下期はEYアドバイ
   ザリー・アンド・コンサルティング㈱による外部品質評価(2019 年9月実施)の中で高度
   化提言を受けたオフサイトモニタリング並びにリスクアセスメントマニュアルを策定し、
   2020 年度1月よりオフサイトモニタリングを開始。リスクベースの監査手法の確立に向け
   た取組みをスタートさせました。
     第二に、営業店監査では、コンプライアンス、顧客保護、業務運営、融資業務、事務管
   理、業務処理の6つの管理態勢について、プロセスの有効性に趣を置いた視点で評価を行
   いました。内部監査の高度化を見据えて、本部所管部署も含めた問題の根本原因の追究と
   有効な改善提言に力を注ぎました。また、AML/CFTは最重要課題と捉え、スクリー
   ニングを初めとする取組み状況について本部所管部署も含めた検証に取組んでいます。
     第三に、コンプライアンス・リスク管理の高度化につきましては、金融庁より公表され
   た「コンプライアンス・リスク管理基本方針」を踏まえて「コンプライアンス基本方針」
   並びに「コンプライアンス・プログラム」が抜本的に見直され、2020 年4月1日から見直
   し後の運用が開始されています。当行のビジネスモデル・経営戦略・企業文化とコンプラ
   イアンス・リスク管理は表裏一体であることを意識した法令等遵守・顧客第一主義に係る
   経営姿勢を一段と明確にした企業風土の醸成が求められていることを念頭に、営業店監査
   並びに本部監査では第3線として第1線と第2線が適切に機能しているかという視点を持
   って独立した立場から検証しています。
     第四に、2020 年度下期も引き続き、営業店監査やテーマ監査で発見された問題点につい
   て、本部関係部署が根本原因を認識し、リスクを適切にコントロールする態勢が整備でき
   ているかを点検・評価した上で、当該関係部署に提言や改善要請を行っていました。これ
   までの提言や改善要請に対するモニタリング(半期に1回実施)は 2020 年 12 月に実施い
   たしました。
     第五に、継続的な専門的能力の開発・取得の課題につきましては、市場リスクや信用リ
   スク分野において、監査部員に当該業務経験者が不在な中、勉強不足も