8559 豊和銀 2021-03-03 16:30:00
経営強化計画の履行状況(2020年9月期)について [pdf]

                                                          2021 年3月3日
各     位

                                        会   社   名   株 式 会 社 豊 和 銀 行

                                        代表者名        取締役頭取    権   藤   淳

                                        (コード番号        8559       福証)
                                                    上級執行役員
                                        問合せ先        総合企画部長
                                                             浜野法生

                                        (TEL.097-534-2611)




                経営強化計画の履行状況(2020年9月期)について




     株式会社豊和銀行(取締役頭取 権藤 淳)は、
                          「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」
    に基づいて、2020 年9月期の経営強化計画の履行状況をまとめましたので、お知らせいたします。




    1. 経営強化計画の履行状況報告書
      次頁以降をご覧下さい。




                                                                 以   上



                               さいしょ
          本件に関する問合せ先   総合企画部   税所、羽田野   TEL097(534)2608
経営強化計画の履行状況報告書




    2020 年 12 月
                      《 目   次 》

1. 2020 年 9 月期決算の概要
  (1) 経営環境                                  ・・・・・・   1
  (2) 決算の概要                                 ・・・・・・   1

2. 経営の改善に係る数値目標の実績
  (1) コア業務純益(収益性を示す指標)                      ・・・・・・   5
  (2) 業務粗利益経費率(業務の効率性を示す指標)                 ・・・・・・   5

3. 経営の改善の目標を達成するための方策の進捗状況
  (1) 地域への徹底支援                              ・・・・・・   6
  (2) お客さまの満足度向上に向けた取組み                     ・・・・・・ 14
  (3) 経営基盤の強化                               ・・・・・・ 16

4. 従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項の進捗状況
  (1) 業務執行に対する監査又は監督の体制の強化のための方策            ・・・・・・ 18
  (2) リスク管理の体制の強化のための方策                     ・・・・・・ 18
  (3) 法令遵守の体制の強化のための方策                      ・・・・・・ 23
  (4) 経営に対する評価の客観性の確保のための方策                 ・・・・・・ 24
  (5) 情報開示の充実のための方策                         ・・・・・・ 24

5. 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行っている
  地域における経済の活性化に資する方策の進捗状況
  (1) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行ってい
      る地域における経済の活性化に資するための方針                ・・・・・・ 26
  (2) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策            ・・・・・・ 26
  (3) その他主として業務を行っている地域における経済の活性化に資する方策     ・・・・・・ 27

6. 剰余金の処分の方針
  (1) 配当に対する方針                              ・・・・・・ 30
  (2) 役員に対する報酬及び賞与についての方針                   ・・・・・・ 30
  (3) 財源確保のための方策                            ・・・・・・ 30

7. 財務内容の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策の進捗状況
  (1) 経営管理に係る体制及び今後の方針等                     ・・・・・・ 31
  (2) 各種のリスク管理の状況及び今後の方針等                   ・・・・・・ 32
1. 2020 年9月期決算の概要
 (1) 経営環境
   2020 年度上期における国内の景気は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、海外
  との往来はもちろんのこと、国内においても不要不急の外出抑制等により、人の動きは大幅
  に減少し、その結果、飲食業、宿泊業を中心として需要が激減するなど、国内経済は急速に
  悪化しました。政府や自治体による経済対策支援により、企業倒産の大幅な増加等は表面化
  していないものの、感染の再拡大が懸念され、また、米中の対立等、先行きの不透明な状況
  が続いております。
   金融環境につきましては、2020 年3月に新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、全
  世界的に金融マーケットが混乱したものの、  その後の主要中央銀行や各国政府の金融・財政政
  策により、国際的な金融マーケットは落ち着きを取り戻しつつあり、日経平均株価は 23,000
  円台まで回復しました。しかし、世界的に感染拡大が止まらない状況や米中通商問題等の懸
  念材料も多く、引き続き不安定な状況が続くと思われます。
   当行の主要な営業基盤である大分県経済においても、新型コロナウイルス感染症による海
  外及び国内旅行客の激減等の影響は大きく、主力産業である観光業、宿泊業、飲食業を中心
  に重大な影響を受けております。政府や大分県等の経済対策支援により、景気の安定は保た
  れているものの、大分県経済は更なる景気の落ち込みも起こりうる、極めて不透明な状況に
  陥っております。
   このような経営環境の下、当行では、積極的に営業活動を展開するとともに、経費の適切
  な運用、業績の向上に努めた結果、2020 年9月期の業績は、以下の通りとなりました。


 (2) 決算の概要
   ① 資産・負債の状況
   (運用勘定)
    貸出金は、新型コロナウイルス感染症に対する地元事業者への資金繰り支援に努めた結
   果、前年度末比84億16百万円増加(前年同期比 +116億83百万円)し、4,095億55百万円と
   なりました。
    また、 有価証券は、前年度末比7億2百万円増加 (前年同期比 +12億27百万円) 1,009
                                                し、
   億67百万円となりました。
   (調達勘定)
    預金(譲渡性預金を含む)は、小規模事業者等でのコロナ関連資金繰り支援が予防的に
   厚めの手元流動性として残っていることに加え、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策
   である特別定額給付金や持続化給付金の交付等も影響し、前年度末比254億2百万円増加
   (前年同期比 +280億80百万円)し、5,566億60百万円となりました。
   (純資産)
    純資産は、前年度末比9億41百万円増加(前年同期比 ▲2億86百万円)し、311億71百
   万円となりました。
    〔 資産・負債の状況(残高) 〕
                   (表 1)                                                     (単位:百万円)

                    2020 年 9 月末                                 2020 年 3 月末   2019 年 9 月末
                      実     績     2020 年 3 月末比   2019 年 9 月末比     実     績       実     績

     資   産             615,422     + 36,976       + 36,526         578,446       578,896

      貸出金              409,555      + 8,416       + 11,683         401,139       397,872




                                  - 1 -
                 2020 年 9 月末                                       2020 年 3 月末    2019 年 9 月末
                   実     績         2020 年 3 月末比    2019 年 9 月末比      実     績        実     績

  有価証券              100,967            + 702          + 1,227         100,265          99,740

  負   債             584,251         + 36,035          + 36,812        548,216         547,439

  預金(譲渡性預金を含む)      556,660         + 25,402          + 28,080        531,257         528,580

  純資産                  31,171          + 941              ▲ 286        30,229          31,457



② 損益の状況
(業務粗利益、コア業務粗利益)
 資金運用収益は、貸出金利息が前年同期比8百万円減少したものの、有価証券利息配当
金が同13百万円増加したことから、 前年同期を6百万円上回る39億24百万円となりました。
 一方、資金調達費用は、預金利回りの低下に伴い、預金利息が前年同期比30百万円減少
したことから、前年同期を30百万円下回る80百万円となりました。この結果、  「資金利益」
は前年同期を37百万円上回る38億43百万円となりました。
 また、「役務取引等利益」は、金融商品の窓口販売手数料や内国為替手数料が減少し、役
務取引等収益が前年同期比54百万円減少したことから、役務取引等費用が同14百万円減少
したものの、前年同期を39百万円下回る▲73百万円となりました。
 「その他業務利益」は、国債等債券売却損益が前年同期比21百万円減少したことから、
前年同期を12百万円下回る▲6百万円となり、その結果、  「業務粗利益」は前年同期を14
百万円下回る37億64百万円、
              「コア業務粗利益」は前年同期を7百万円上回る37億71百万円
となりました。
(業務純益、コア業務純益)
 営業経費は、システムに係る費用が減少したことなどにより、前年同期比1億31百万円
減少の31億63百万円となりました。
 その結果、 「業務純益」は前年同期を1億17百万円上回る6億円、 「コア業務純益」は前
年同期を1億39百万円上回る6億8百万円となりました。
(臨時損益)
 臨時損益は、不良債権処理額が前年同期比74百万円増加したことなどから、同37百万円
減少の2億73百万円となりました。
(経常利益、中間純利益)
 以上の結果、「経常利益」は前年同期比79百万円増加の8億73百万円、「税引前中間純
利益」は同91百万円増加の8億84百万円、「中間純利益」は同1億38百万円増加の8億65
百万円となりました。
(信用コスト)
 「信用コスト」は、新型コロナウイルス感染症の影響により予想される損失に備えるた
め、業績悪化の懸念のある債務者について貸倒引当金を追加計上した結果、前年同期比74
百万円増加しましたが、貸倒実績率の低下の影響に加え、経営改善応援ファンドや販路開
拓コンサルティング業務(Vサポート)の取組みによる信用コスト抑制効果も奏功し、2
億42百万円の戻入益となりました。
 〔 損益の状況 〕
         (表 2)                                                                   (単位:百万円)
                  2020 年 9 月期                                 2019 年 9 月期        2018 年 9 月期
                     実 績               2019 年 9 月期比              実 績                実 績

 業務粗利益                   3,764                 ▲ 14                3,779              3,787
 [ コア業務粗利益 ]       [     3,771 ]           [      + 7 ]        [   3,764 ]        [   3,791 ]



                                 - 2 -
                            2020 年 9 月期                                2019 年 9 月期                 2018 年 9 月期
                               実 績                2019 年 9 月期比            実 績                         実 績

   資金利益                              3,843               + 37                      3,806                3,797
   役務取引等利益                           ▲ 73                ▲ 39                      ▲ 33                     2
   その他業務利益                            ▲ 6                ▲ 12                          6                ▲ 12
 経費(除く臨時処理分)                         3,163               ▲ 131                     3,295                3,129
    うち 人件費                           1,692               ▲ 29                      1,721                1,694
    うち 物件費                           1,235               ▲ 109                     1,344                1,205
 一般貸倒引当金繰入額                             -                   -                         -                    -
 業務純益                                  600               + 117                       483                  657
 [ コア業務純益 ]                      [     608 ]         [   + 139 ]               [     469 ]          [     662 ]
 [ コア業務純益(除く投信解約損益) ]            [     608 ]         [   + 139 ]               [     468 ]          [     658 ]

 臨時損益                                  273               ▲ 37                        311                  402
   (うち不良債権処理額)               (       ▲ 242 )         (    + 74 )           (       ▲ 316 )          (   ▲ 216 )
   (うち株式等損益)                 (          25 )         (    + 46 )           (       ▲ 21 )           (     115 )
 経常利益                                  873               + 79                        794                1,060
 特別損益                                   10               + 12                       ▲ 1                    87
 税引前中間純利益                              884               + 91                        793                1,147
 法人税、住民税及び事業税                           71               + 59                         12                  211
 法人税等調整額                             ▲ 53                ▲ 106                        53                ▲ 67
 中間純利益                                 865               + 138                       727                1,003
 (参考)信用コスト                       ▲ 242                   + 74                  ▲ 316                    ▲ 216
 ※ 信用コスト = 一般貸倒引当金繰入額 + 不良債権処理額


③ 不良債権の状況
 2020 年9月末の金融再生法開示債権額は、危険債権が前年度末比 10 億 82 百万円増加し
た結果、同8億 86 百万円増加の 175 億 57 百万円となりました。一方、総与信残高が同 81
億 39 百万円増加の 4,141 億 58 百万円となりました。この結果、金融再生法開示債権比率
は前年度末比 0.13 ポイント上昇の 4.23%となりました。
 なお、金融再生法開示債権のうち 78.27%にあたる 137 億 42 百万円については担保保証
等や貸倒引当金にて保全を行っております。
 〔 金融再生法開示債権比率の実績推移 〕(表 3)                                                                     (単位:百万円、%)

                        2020 年 9 月末                                                2020 年 3 月末      2019 年 9 月末
                           実 績           2020 年 3 月末比      2019 年 9 月末比               実 績              実 績

 金融再生法開示債権                  17,557              + 886            + 1,155               16,670             16,401

   破産更生等債権                   1,132              ▲ 170             ▲ 467                    1,303          1,600

   危険債権                     15,910             + 1,082           + 2,864               14,828             13,046

   要管理債権                         514             ▲ 25            ▲ 1,240                    539           1,754

 総与信残高                     414,158             + 8,139       + 11,150                 406,019            403,008

 不良債権比率                       4.23             + 0.13            + 0.17                     4.10            4.06

 ※ 不良債権比率 = 金融再生法開示債権残高 ÷ 総与信残高
 ※ 総与信残高には、銀行保証付私募債に係る保証債務 39 億 71 百万円を含みます。




                                             - 3 -
④ 自己資本比率の状況
  自己資本額が前年度末比9億72百万円増加の311億3百万円となったことに加え、リスク
アセットが同43億89百万円減少の3,514億25百万円となったことから、自己資本比率は同
0.39ポイント上昇の8.85%となりました。
〔 自己資本比率の状況 〕
            (表 4)                                                    (単位:百万円、%)
           2020 年 9 月末                                 2020 年 3 月末     2019 年 9 月末
             実      績    2020 年 3 月末比   2019 年 9 月末比     実      績        実      績

 自己資本          31,103        + 972          ▲ 352          30,130          31,456

 リスクアセット     351,425       ▲ 4,389          + 248         355,815         351,177

 自己資本比率         8.85        + 0.39         ▲ 0.10            8.46            8.95




                             - 4 -
2. 経営の改善に係る数値目標の実績
 (1) コア業務純益(収益性を示す指標)
   2020 年9月期の貸出金は、事業性貸出は計画に比べ増加したものの、金融機関向け貸出と
  地方公共団体向け貸出が計画比減少したこと等により平残が計画を 59 億 13 百万円下回った
  ことに加え、大分県のコロナ感染症対応資金の利子補給前の指定金利条件が当行の中小規模
  事業者等向け貸出金利回りを大幅に下回っていた影響もあり、利回りが計画を 0.031 ポイン
  ト下回ったことから、貸出金利息は計画を1億 16 百万円下回りました。
   一方、預金は、平残が計画を 92 億5百万円上回ったものの、利回りが計画を 0.006 ポイン
  ト下回ったことから、預金利息は計画を 15 百万円下回りました。
   その結果、資金利益は計画を 60 百万円下回る 38 億 43 百万円となったことから、役務取引
  等利益で計画を2百万円上回る▲73 百万円となったものの、コア業務粗利益は計画を 58 百
  万円下回る 37 億 71 百万円となりました。
   しかしながら、経費が計画を1億 22 百万円下回る 31 億 63 百万円となったことから、「コ
  ア業務純益」は計画を 64 百万円上回る6億8百万円となりました。
 〔 コア業務純益の計画・実績 〕
                (表 5)                                                                      (単位:百万円)
                        2019/9 期 2020/3 期                 2020/9 期              2021/3 期 2021/9 期 2022/3 期
              始 期
                         実 績      実 績       計    画    実    績    計画比     始期比      計 画      計 画      計 画

   コア業務純益     1,120        469    1,022         544       608    +64     +96       981      573    1,135
  ※ コア業務純益 = 業務純益 + 一般貸倒引当金繰入額 - 国債等債券関係損益
  ※ 計画始期は通期ベースであるため、コア業務純益の始期比は 2020 年 9 月期の実績を 2 倍したものと比較しております。


(2) 業務粗利益経費率(業務の効率を示す指標)
   「業務粗利益」が計画を 65 百万円下回る 37 億 64 百万円となったものの、   「機械化関連費
  用を除く経費」が計画を1億 20 百万円下回る 25 億 19 百万円となったことから、   「業務粗利
  益経費率」は計画を 2.00 ポイント下回る 66.92%(始期比 ▲1.48 ポイント)となりました。
 〔 業務粗利益経費率の計画・実績 〕
                  (表 6)                                                                  (単位:百万円、%)
                         2019/9 期 2020/3 期                 2020/9 期             2021/3 期 2021/9 期 2022/3 期
               始    期
                          実 績      実 績     計      画   実 績       計画比     始期比      計 画      計 画      計 画

   経費(機械化関連
               5,175      2,598    5,098    2,639     2,519     ▲120    ▲137     5,311    2,621    5,195
   費用を除く)

   業務粗利益       7,566      3,779    7,443    3,829     3,764      ▲65     ▲38     7,583    3,832    7,604

   業務粗利益経費率    68.40      68.75    68.49    68.92     66.92     ▲2.00   ▲1.48    70.03    68.39    68.31
  ※ 業務粗利益経費率 =(経費-機械化関連費用) ÷ 業務粗利益
  ※ 機械化関連費用は、事務機器等の機械賃借料、機械保守費、減価償却費等を計上しております。
  ※ 計画始期は通期ベースであるため、機械化関連費用を除く経費、業務粗利益の各始期比は 2020 年 9 月期の実績を 2 倍した
    ものと比較しております。




                                            - 5 -
3. 経営の改善の目標を達成するための方策の進捗状況
  当行では、2019年6月に策定した「経営強化計画」において、「地元大分になくてはならない
 地域銀行」であることを目指し、 地域への徹底支援による地元経済の活性化 』を基本方針に
                  『
 据え、これを実現するための取組方針として、①「地域への徹底支援」  、②「お客さまの満足度
 向上に向けた取組み」  、③「経営基盤の強化」の3つを定めました。
  この取組方針のもと、中小企業等のお客さまを取り巻く厳しい経営環境や金融機能強化法の
 趣旨を踏まえ、引き続き、お客さまの経営改善及び成長・発展に向け、積極的な資金供給と経
 営改善支援の取組みを徹底し、地域経済の発展に貢献していくことに全力で取り組んでまいり
 ます。そして経営改善支援等の取組みを進め、お客さまに有用な顧客価値を提供していけば、
 結果的に当行にも安定的な収益と将来にわたる健全性をもたらす「共通価値の創造」というビ
 ジネスモデルを実現できると考えております。

  2020年度上期における各取組方針に基づく諸施策の進捗状況は、以下のとおりです。


 (1) 地域への徹底支援
  ① 販路開拓コンサルティング(Vサポート業務)の拡大
   イ. Vサポート業務の取組み
     2016 年 11 月のVサポート業務開始時には、下記3つの目的をその順位で整理して取
    り組みました。
     第1の目的は、お客さま(売り手)の売上を増加させることで、お客さまの経営改善
    に寄与し、その結果、債務者区分のランクアップにより当行の信用コスト削減につなげ
    ること。
     第2の目的は、お客さま(売り手)の売上増加に伴い、運転資金や設備資金の需要が
    創出され、当行の金融仲介(融資)に結び付けること。その際に、お客さまからVサポ
    ート業務の取組みを評価して頂ければ、過剰な金利競争に巻き込まれない融資につなげ
    ることができることになる。
     第3の目的は、お客さま(売り手)に売上入金実績を付与することで、あらかじめお
    約束いただいた成果報酬の手数料をいただけることにもつながること。
     Vサポート業務は上記のような3つの目的を実現するために開始しましたが、取組み
    開始後は、売り手への金融仲介(債務者区分のランクアップや質の高い貸出実行)は期
    待通りとして、買い手への質の高い新規貸出が発生するという思いがけない成果が得ら
    れました。これらのお客さまについては、Vサポート業務によって、他金融機関からの
    低利の融資提案を跳ね返すだけの顧客価値が提供できたものと考えています。
     当行のVサポート業務における顧客価値提供は、Vサポート契約により売上が増加す
    る売り手のみならず、買い手となる当行のお客さまにも及んでいるところに特徴があり
    ます。買い手となる当行のお客さまにも喜んでいただける理由は、     『Vサポート業務に
    おける売り手』と『その商品・サービスを購入する買い手』双方の事業性評価を深掘り
    しなければ成立しないというビジネスモデル上の規律付けにあると考えています。そし
    てこれは、当行行員の地域における役割が変わり、融資などファイナンス分野に縛られ
    ないVサポート契約先の商品・サービスに対する潜在的な買い手の事業運営(オペレー
    ション)関連分野のニーズにも対応できるようになっていることにも起因するものと考
    えています。
     当行がVサポート業務により販路開拓を支援する目的は、単に契約先に売上をもたら
    すことにとどまらず、持続可能な販売商流として、契約先の主要取引先となってもらえ


                      - 6 -
 る買い手を厳選するという目的をも併せ持っていると言えます。


ロ. Vサポート業務を通じた地域・お客さまへの貢献
  Vサポート業務については、お客さま自身が経営改善を望まれており、コスト削減や
 資産売却によらず、売上改善による経営改善を図っていきたいと考えているお客さまか
 ら優先してご契約させていただいております。
  なお、Vサポートをご契約いただいたお客さまにおいては、71 社中 58 社において販
 路開拓に貢献させて頂いております。
  また、Vサポートの取組みを通じて、売り手だけでなく買い手となって頂いたお客さ
 まへも顧客価値の提供を行うことができ、それが結果として新規貸出(2020 年度上期新
 規貸出実行額 5,338 百万円)に繋がったと考えております。

〔 Vサポート業務の実績 〕(図表 7)                                                 (単位:先数、百万円)
                                       実績                                      計画

                    2017 年   2018 年   2019 年     2020 年    2020 年     2021 年        2022 年
                     3 月末     3 月末     3 月末       3 月末      9 月末       3 月末          3 月末
Ⅴサポート契約先数
                        22       36         41       61        71         81            101
(累計)

Ⅴサポート契約先への売上入金
                         2       54       303        684       897        843         1,272
実績(累計)


Ⅴサポート契約先商品サービスの
                        17       75       292        565       661        412           472
購買実績先数(累計)

Ⅴサポート契約先ならびにⅤサポ
ート契約先商品サービスの購買実       20  1,003 1,707 11,439 16,778 3,881 5,256
績先への新規貸出実行額(累計)
 ※.V サポート業務は事業性評価に裏付けられ、中長期的に顧客価値が持続するストックビジネスであることから、各年度
   の計数管理はフローではなくストック(累計)で管理しております。


  以下、Vサポート業務で取組んだ『コロナ禍での本業支援』の事例をご紹介いたしま
 す。
  2020 年度上期には、誰もが予期せぬコロナ禍のなか、来店顧客の減少、営業時間の
 短縮や休業などにより多くの事業者が業績の悪化に直面し、当行のお客さまも大きな
 影響を受けることとなりました。
  このような状況のなかで、多くのお客さまは、事業の存続に不安を抱き、目先の資
 金繰りに追われ、コロナに対する情報も少ない中でどのような対策を講じたらよいの
 かといった課題に直面していました。
  地域金融機関として、資金繰り支援を行うことは当然のことながら、このコロナ禍
 で苦境に陥っているお客さまに対しては当行がこれまで行なってきたVサポート業務
 による本業支援を従来以上に取組む必要があると痛感いたしました。
  そこで、特にコロナ禍で大きなダメージを受けていた飲食業、宿泊業のお客さまを
 中心に、  『WITH コロナ』対策検討シートを用いた本業支援を実施いたしました。

  ■『WITH コロナ』対策検討シートの内容
   ① 飲食業及び宿泊業における業務フローを整理し、各フローにおけるオペレーショ
     ンを細分化して表示。
   ② 情報収集を行ない、①で細分化したオペレーションごとに、同業他社(大手企業


                             - 7 -
   ~地元同業他社)で行っているコロナ対策として有効と判断されるものを集約。
 ③ ②で収集したコロナ対策として活用できる当行がVサポート業務で取扱っている
   商品・サービスを紹介。

 ■『WITH コロナ』対策検討シートによる効果
 ・同業他社の取組み事例を提供し、お客さまの取組みとの差異を可視化することで必
  要な支援策が明確になる。
 ・課題や必要な支援策を認識するだけでなく、その支援策に必要な商品・サービスや
  その購入先も提案できる。
 ・Vサポート契約先にとっても、商品・サービスを利用いただくことで、売上高が増
  加するだけでなく、   コロナ禍でダメージを受けている事業者の支援にもつながるこ
  とで社会的意義も感じられる。

 ■取組み事例
  営業店の担当者が、お取引先の飲食店に訪問した際、  「同業者がコロナ対策として既
 にいろいろと取組んでいることなので、遅れを取りたくないが、どのようなコロナ対
 策に取組めばよいかわからない。また、コロナ対策を取組んだ時に“コロナ対策にし
 っかりと取組んでいる店”としてアピールしたい。  」とのご相談を受けました。
  そこで、営業店の担当者とVサポート業務専担部署の行員がその飲食店をご訪問し、
 「飲食業向け『WITH コロナ』対策検討シート」を基にコロナ対策について協議したと
 ころ、Vサポート契約先の商材である『抗菌・消臭剤』を購入するとともに、  『コロナ
 ウイルス対策のぼり』を作成することとなりました。更に、大分市のコロナ対策に関
 する補助金についてご提案させていただきました。Vサポート契約先の商材の買い手
 となった飲食店に交付される補助金が、商流を通してコロナ禍に同様に苦しんでいた
 はずのVサポート契約先の売上増加にまで波及することになりました。

 (お客さまの声)
 「補助金を利用することで、抗菌・消毒剤の購入やのぼりの作成に係る支出を抑える
 ことができたうえに、コロナ対策に真摯に取組んでいることをアピールできて有難い。
 他の金融機関からは融資の提案はあったが、豊和銀行は、コロナ対策の相談から、商
 材の提案、さらには補助金に関することまで案内してくれた。コロナ禍の苦しい状況
 を打開するために、何か対策を講じなければと悩んでいたので、本当に助かった。」


ハ.Vサポート業務の発展
 Vサポート業務では、当行自らが新たな商流を創出する必要性があることから、お取
引先の既存商流に対する分析を行っております。既存商流を分析することで、お取引先
の事業運営の相当部分を解明することができます。このことから、「Vサポート業務は
事業性評価そのものである」との認識に至りました。また、お取引先をより深く理解す
る取組みとして、営業店行員に対しVサポート業務についての理解と浸透を図るととも
に、レベルアップに努めております。
 このような経験を経た結果、中小規模事業者特有の事業運営上の課題解決について、
販売手法などいくつかのパターンがあることを試行錯誤しながらも認識することがで
きるようになりました。
 また、Vサポート業務を推進するにあたり、契約先の事業性評価を完了し、その取扱



                 - 8 -
 商品・サービスが契約先の既存販売先にどのような顧客価値を与えていたのかなどの検
 証結果を含めた『ヒアリングシート(        「商品・サービスカタログ」』というセールスツ
                                         )
 ールを作成し、全行員で共有しております。
  さらに、その契約先の取扱商品・サービスがシステムに登録されると潜在的な買い手
 候補先が自動的にリストアップされるデータベースシステムを南日本銀行・宮崎太陽銀
 行と共同開発し、売買契約の成約や売上代金の回収までスムーズに業務を進めることが
 できるような仕組みを整備しました。
  一連の業務経験とデータベースシステムを連動させ、売り手と買い手双方のお取引先
 から必要とされる銀行となるよう努めております。
  本計画期間では、Vサポート業務の“本業”としての位置づけを明確にしていくなか
 で、1年間に 20 先、3年間で 60 先の新規Vサポート業務委託契約の締結を見込んでお
 り、2020 年度上期は 10 社(本計画期間累計 30 社)のお客さまと新たなVサポート業務
 委託契約を締結し、販路開拓の支援に着手しております。
  なお、各契約先では複数のヒアリングシートを作成しており、2020 年度上期終了時点
 で契約先累計 71 先に対してヒアリングシート合計は累計 84 件となっており、このヒリ
 ングシート単位で販路開拓案件進捗を管理しております。
  2020 年度上期は新販路件数が累計で 661 件(前期比+96 件)まで増加しております。
 これは、当行の行員において『本業として取り組むⅤサポート業務』に対する理解が着
 実に浸透し、コロナ禍で苦境に立っている事業者に対するコロナ対策提案やオペレーシ
 ョン改善といった本業支援にも取り組んでいった結果であると考えています。
  また、当行のVサポート業務への取組みについては、国立大学法人大分大学様からも
 高い評価を頂いており、     2020 年度上期には経済学部の学生約 160 名にむけてVサポート
 をテーマとした講義を3回に亘り行いました。
  そのうち1回は、実際に地元の事業者(Vサポート契約先)をゲスト講師に招き、学
 生にとっては事業者の生の声を聞く機会となりました。また、講師となった事業者も、
 普段接点の少ない若い世代の学生と議論することで、自社のビジネスモデルや事業課題
 を見つめ直す機会となり、今後の事業運営や商品開発のヒントを得ることが出来たと喜
 んで頂きました。

ニ.Vサポート業務による質の高い融資※の実現
  Vサポート業務によって、契約先(売り手)のお客さまの業況改善支援に成果が現れ
 てきていることに加え、買い手となったお客さまに対しても顧客価値(お客さまに心底
 喜んでいただける付加価値)を提供した結果、通常不十分な顧客価値提供であれば改善
 は望めない、資金調達時の金利など借入条件についても改善が図られたと評価していま
 す。
  買い手となったお客さまに対して実行される貸出は、設備投資対象を『有効利用』や
 『節税目的』で銀行が提案し、その投資額相当の大口融資を実行するといった伝統的な
 提案営業のようにも捉えられますが、契約先の取扱商品・サービスの(少額であること
 も多い)購買による事業運営改善のタイミングとは別に、事後的な通常の資金需要発生
 タイミングにおいて、当行指名で実行する貸出がほとんどであり、伝統的な提案営業に
 よる顧客価値とは全く異なる顧客価値提供に裏付けられた貸出となっています。
  2020 年9月末時点における、     Ⅴサポートに関連したお客さまへの新規融資実行金額は、
 累計で 1,150 件の 16,778 百万円となっています。
  ※.「質の高い融資」とは、お客さまにご提供した顧客価値に見合った対価をお客さまからご評価いただいて実行でき
    た貸出と当行では呼んでおります。



                      - 9 -
〔 Vサポート業務の取組み状況 〕(図表 8)                                                   (単位:百万円)

 Vサポート取組みの累計推移             2017 年        2018 年      2019 年     2020 年      2020 年
 (2016 年 11 月~2020 年 9 月)    3 月末          3 月末        3 月末       3 月末        9 月末

 Vサポートに関連したお客さまへ
                                     20       1,003      1,707   11,439       16,778
 の融資新規実行金額

   うち売り手
                                     20         414        576    1,176       1,313
   (Vサポート契約先)

   うち買い手                              0         589      1,131   10,263       15,465



 歴史的に県外企業誘致依存で、観光立地である大分県は、県外への移出移入商流に依
存する傾向が強く、その分今般の新型コロナウイルス感染拡大による商流上のダメージ
は甚大ではありますが、Vサポートによるローカル商流の活性化で地域経済の底抜けを
防ぐべく、努力していく所存です。
  “質の高い融資”に関連するVサポート業務の本質的な業務プロセスは、経営改善
支援を目的としたVサポート業務の従来の業務プロセス(契約先の営業担当責任者によ
る行員向け説明会や成功事例の全店共有なども含めた)を維持しつつ、従来絞り込んで
きた経営改善が必要と考えられるお客さまのみならず、それ以外の契約対象先との新た
な契約締結にまで拡大することで、質の高い融資の積み上げを図ってまいります。


ホ.Vサポート業務の拡大を支える業績評価の見直し
 当行では管理会計を高度化するための十分なシステム投資ができなかったことに甘
んじて、取引先セグメント別のマーケティングや計数進捗管理が旧態依然としたままで
残ってしまい、営業店の行動を支配する業績評価運営改革がこれまで後手に回ってしま
いました。ほうわビタミンローンのプライシングのリスク整合性不備を含めた全般的な
貸出の質の低下は、件数や残高だけをKPIとして、業績評価で単純に目標設定したこ
とによるものと考えております。
 Vサポート業務については、バランススコアカードの顧客の視点に該当する「僚店契
約先への売上付与」とバランススコアカードの財務の視点に該当する「Vサポート業務
によってお客さまからご評価いただいたことによる追加貸出金利息」などに因果関係を
つけた店別目標設定などを引き続き実施しております。
 Vサポート業務以外についても、市販の管理会計パッケージシステムやグループウエ
アを購入することなく、すでに保有している表計算ソフトやデータベースソフトを活用
して、業績評価運営に活用していきます。スプレッドバンキングや活動基準原価管理な
どには及びませんが、特に近年形骸化してきた自行短プラベースの利ざや管理について
は、2019 年度下期の業績評価から指標として活用しております。


へ.販路開拓支援業務における南日本銀行・宮崎太陽銀行との連携
 当行は、2018 年5月より、販路開拓支援業務に関して、南日本銀行及び宮崎太陽銀行
と業務提携を行っております。また、3行共同で業務フロー及び専用データベースシス
テムの共同化を目的とする販路開拓支援システムの開発に取り組み、   2020 年5月にシス
テムを稼動させました。
 同システムの稼動開始後は、3行それぞれの成功事例や失敗事例の情報共有化を通じ、
東南九州3県の商流や雇用の維持拡大に貢献できるよう取り組んでおります。



                                     - 10 -
② 経営改善応援ファンドによる積極的な資金供給
 「経営改善応援ファンド」は、思い描いたような経営環境になく財務状況が必ずしも芳
しくないことから資金調達と経営改善を望まれるお客さまに対して、お客さまの事業内容
や成長可能性等を適正に評価し、お客さまと一緒になって経営改善計画の策定を行い、安
定的に経営改善に必要な資金を供給するものであります。       なお、 「想定される改善内容」    「S
WOT分析」   「コンサル支援項目」「販路開拓コンサルティングの取組み」など、お客さま
の経営改善に繋がる取組方針を営業店からの申請段階で明確にすることで、事業性評価及
び経営改善計画の作成支援についての精度向上にも寄与していると考えております。
 2020 年度上期においては、実行件数及び金額は 88 件 5,289 百万円、2020 年 9 月末の残
高は 21,616 百万円となっており、2020 年9月末時点と実行時点の格付とを比較すると、
ランクアップ先が 86 先、格付け維持先が 343 先、ランクダウン先が 60 先となっており、
財務内容の維持や改善に繋がっております。
 本計画においても経営改善応援ファンドの新規実行先数を安定的に増やすというこれま
での方針を維持していくとともに、引き続きお客さまの経営改善支援として、           「経営改善応
援ファンド」に取り組んでまいります。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響により、お客さまが将来の事業継続に不安を抱
いておられることを踏まえ、お客さまが『Withコロナ』時代にあって資金繰りに追わ
れることなく本業に専念することや事業の見直し及び事業の再構築をするためのお手伝い
として、資金繰りをより安定させるために最長5年間の元金返済据置期間を設けた資金調
達手段である「ほうわ資金繰り安定化ファンド」の取扱いを 2020 年 10 月に開始する予定
です。

〔 格付・債務者区分推移表 〕
              (図表 9)                                                       (単位:先数)

           2018 年度      2018 年度        2019 年度        2019 年度         2020 年度
             上期           下期             上期             下期              上期           割合

先数累計            245             321         384                440             489   100%

     アップ         40              46             61              77              86   18%
 格
     維持         177             252         296                320             343   70%
 付

     ダウン         28              23             27              43              60   12%

 ※.経営改善応援ファンド完済先は先数から除きます。


〔 経営改善応援ファンドの実績 〕(図表 10)                                 (単位:先数、百万円)
                      2018 年度         2019 年度        2020 年度         2020 年度
                      通期実績            通期実績           上期実績            通期計画
貸出実行先数                     207            202              88             181
貸出実行金額                   7,160          7,832           5,289           7,200


③ 小規模事業者への資金供給(ビタミンローン)
 中小企業等のお客さまの増加運転資金や設備資金のニーズに円滑かつ迅速な資金供給を
行うことを目的として「ほうわビタミンローン」   (金額2百万円以上 60 百万円以下、原則
無担保、2014 年3月発売)を取組んでおり、2020 年度上期の実行は 92 先 902 百万円とな
りました。
 2020 年度上期は、新型コロナの影響により、実質無利子・無担保融資(信用保証付)等の
“資金繰り支援”  に全力投球で臨んだことを主因として、   進捗は期初より鈍いものとなり、


                                      - 11 -
先数ベースでは通期計画に対し 16.7%の進捗率となりました。
 2020 年度下期においても、新型コロナの影響は継続するものと想定されることから、お
客さまが必要とする支援は、  「資金面」での支援および地域の事業者や地域コミュニティの
「生き残り策」の構築のための支援であると考えます。その支援策の一つとしてお客さま
の小口資金ニーズに迅速に審査対応できる当商品を提案してまいります。

〔 ビタミンローンの実行推移 〕
               (図表 11)                                 (単位:先数、百万円)
                                                      2020 年      2021 年
             2018 年         2019 年     2020 年
                                                       9 月末        3 月末
              3 月末           3 月末       3 月末
                                                     (中間実績)      (通期計画)

 実行先数             358            350           414         92          548

 実行額            4,111          5,134         4,310         902       5,480



④ 事業承継、M&A支援に向けた取組み
  大分県は、企業経営者の平均年齢は上昇傾向にあり高齢化が進行する一方で、後継者が
いない企業の比率が高く、事業承継問題の深刻さが目立つ地域であり、事業承継に関する
相談が増加してきております。
  しかしながら、事業承継に係る手数料が見込みにくい比較的小規模の事業者が多いこと
から、当行では地域の商流や雇用を安定させるため、外部との連携を必要としない完全内
製化の体制を構築し、事業承継支援を行っております。
  具体的には、事業承継ニーズのある経営者の意向を踏まえたうえで、後継者不在先のM
&Aのマッチング支援、事業承継時の資金需要対応や相続対策支援等を通じて、事業承継
に関わる課題解決支援を行っており、ソリューション支援部内の「M&Aシニアエキスパ
ート認定制度」による有資格取得者により、外部に不要な協力を依頼することなく自前で
の課題解決が可能となっております。
  また、事業者自ら相談に来店されることが少ないことを考慮して、営業店に対して能動
的に動くよう促し、日常の営業活動において経営者と今後の経営体制や事業承継等につい
て対話することで、事業承継に関する潜在ニーズの掘り起こしに努めております。
  事業承継や創業に係る新たな取組みとして、  「ほうわ創業・事業承継支援ファンド」     (正
式名: 「ほうわ創業・事業承継支援投資事業有限責任組合」 を 2020 年6月 22 日に設立し、
                             )
当ファンドにより、”創業期”や“事業承継期”という資金調達が困難なタイミングにお
いて「投資」と「融資」を組み合わせた資金提供を行なうとともに、事業展開のお手伝い
や管理面の強化などを行なうことで、創業や事業承継を円滑に進めてまいります。
  2020 年度上期においては、事業承継ニーズを有するお客さまに対し、後継者不在及び組
織再編に伴う第三者へのM&A相談支援及び従業員及び親族内承継の事業承継支援として
20 件のコンサル支援を行いました。コロナ禍の影響により事業承継の相談件数が減少して
おり、第三者へのM&Aについては1件の仲介支援の実績となりました。
  深刻な事業承継問題に直面する地元大分の活性化に資するため、引き続き事業承継支援
の体制強化を行い、事業承継対策支援の取組みを行なってまいります。

〔 事業承継の実績 〕
          (図表 12)                                                 (単位:先数)
            2018 年度            2019 年度           2020 年度          2020 年度
             実    績              実績              上期実績               計画

  先     数               9                9                  1                13
 ※.当行内製化による単独支援実績(譲渡・譲受企業の先数)



                                     - 12 -
⑤ 創業・新事業を目指すお客さまへの取組み
 当行では、これまで創業や新事業を目指すお客さまに対して、事業計画等の作成支援及
び大分県や各市町など創業支援機関等の各種支援制度等に関する情報提供を通じた支援
に取り組んできたほか、創業支援融資等のファイナンス支援の取組みを強化しております。
 大分県や各市町等の創業支援機関や日本政策金融公庫と情報連携を強化することによ
り創業支援対象者に関する情報を収集するとともに、起業家育成担当としてインキュベー
ションマネージャー等の創業支援関連有資格行員等の人材育成に努め、質の向上を図って
おります。
 2020 年度上期においては、インキュベーションマネージャーの資格者2名を配置し、創
業支援の体制強化を図りました。また、創業・新事業にかかる資金需要があった 90 先に
対し資金支援を行ないました。
 創業に係る新たな取組みとして、前述の「ほうわ創業・事業承継支援ファンド」を 2020
年6月 22 日に設立しました。
 今後も、ファイナンス面に限らず、販路開拓支援、ソリューション支援などオペレーシ
ョン面での創業支援も当行では可能であることから、ファイナンスとオペレーション両面
での支援を強化し、創業・新事業進出の事業者の成長や企業価値向上及び雇用の創出につ
なげ、更なる成長に必要な資金支援に繋げてまいります。


⑥ 経営改善・事業再生が必要なお客さまへの取組み
 当行では、2006 年度以降、整理回収機構などの事業再生に関するノウハウを活用し、D
DS(資本性借入金)の導入、第二会社方式による不採算部門の切り離し、事業再生ファ
ンドやABLによるプレDIP資金の導入等、当行に従来無かった手法による事業再生に
取組んできており、融資部企業支援室にノウハウを蓄積してまいりました。
 これまで蓄積されたノウハウを活用し、抜本的な事業再生を行うことで経営改善が見込
めるお客さまに対して、大分県中小企業再生支援協議会をはじめとする地域に根差した外
部専門機関等との連携や専門家の活用により抜本的な経営改善計画の策定を支援すると
ともに、同計画に基づき、DDSやDIP資金の導入、事業再生ファンドの活用等の金融
支援を行うなど、地域内の雇用や商流など、地域経済への影響にも十分に配慮しながら、
中長期的な視点に立ったお客さまの事業再生支援を徹底して実施してまいりました。


イ. 本支店及び外部専門家等との連携による事業性評価に基づく経営改善計画の策定支
  援
  2020 年度上期においては、外部機関等の第三者的な視点や専門的知見を活用した事業
 再生支援等のコンサルティング機能の一層の発揮に努め、より実効性の高い中小企業等
 のお客さまに対する事業再生支援態勢の強化を図りました。
  なお、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたお取引先に対する資金繰り支援の一
 環として、大分県中小企業再生支援協議会においては「新型コロナウイルス感染症特例
 リスケジュール」(通称:特例リスケ)制度がスタートしました。
  当行では当該制度を活用し、緊急的な融資対応支援のほかにリスケジュールも含めた
 俯瞰的な取組も実施いたしました。
  結果として、特例リスケ制度を含む大分県中小企業再生支援協議会ならびに大分県経
 営改善支援センターの経営改善計画策定への関与は 14 先となっており、その他大分県
 信用保証協会が行っている「経営安定化支援事業」にもとづく専門家派遣として1先、



                 - 13 -
  全体で 15 先に支援を行なっております。
   加えて、医療や介護事業のお客さまに関しては、2019 年度上期から、新たに医療・介
  護専門のコンサルタントと連携を図り、より実務的な目線からの改善を図る態勢整備に
  取組みました。

 〔 2020 年度上期中に計画の着手ならびに金融機関同意を取り付けた先数〕
                                     (図表 13)
                                                    (単位:先数)
  大分県中小企業再生支援協議会           大分県経営改善支援センター              合計

     着手           同意       着手         同意
                                                           14
              7        0         0             7
  ※.同意は前年度以前に着手した先を含む



 ロ. お客さまに対し本支店一体となった日常的・継続的な関係の構築によるフォロー態勢
   の強化
   営業店と融資部企業支援室が連携して、経営改善状況のモニタリングを行い、改善計
  画の進捗確認を行っております。その中で、経営改善の進捗が芳しくないお客さまにつ
  いては「特定支援先」として選定し、より深度ある経営改善支援への取組みを行ってま
  いりました。
   「特定支援先」の対象とさせていただいたお客さまにつきましては、必要に応じて大
  分県中小企業再生支援協議会や経営改善支援センター等の外部専門機関を活用し、専門
  家等の知見及び助言を受けながら、より合理的で実現性の高い改善計画の策定支援を図
  り、地域雇用等の地域経済への影響も配慮しつつ、地域金融機関として金融仲介機能を
  十分に発揮した取組みを行ってまいりました。

 〔 特定支援先への取り組み状況 〕(図表 14)                                              (単位:先数)

    2020 年度       うち、大分県中小企業
                                                                        その他
      上期          再生支援協議会等の      大分県中小企業再          大分県経営改善支
                                                                    (経営革新機関、県保証協
    特定支援先           専門家の活用        生支援協議会            援センター
                                                                     会経営安定化支援等)

          187               14             7                    6                 1


 ハ. お客さまのライフステージに応じた抜本的な金融支援による再生支援
   融資部企業支援室では、抜本的な再生支援を検討する場合には、お客さまのライフス
  テージを適切かつ慎重に見極めたうえで、当行がコンサルティング機能を発揮し、適切
  なご提案を行えるかが重要であると考えております。
   2020 年度上期においては、経営改善を実施中で、事業承継が既に完了し、後継者に経
  営が移行しているお客さまに関して、経営者保証ガイドラインならびに同特則にもとづ
  いて旧経営者の経営者保証を解除し、現経営者がスピーディな経営と当行の円滑な融資
  支援がなされるように側面的な支援への取り組みを実施しました。


(2) お客さまの満足度向上に向けた取組み
 ① チャネルの多様化
 イ.スマホアプリの提供
   バンキングアプリの提供については、2020 年 10 月に設置したIT戦略室を中心に検



                             - 14 -
 討しております。なお、窓口の来店を不要とした個人インターネットバンキングの申込
 みに続き、スマートフォン等を活用した来店不要ローン(Web 完結型ローン)を 2020 年9
 月に導入するなど、まずはバンキングアプリに搭載するコンテンツの充実を図ってまい
 ります。

ロ.WEB完結型ローンの導入
  個人向けフリーローンについて、   インターネット(Web)を利用し来店が不要となる、
 WEB完結型ローンを 2020 年9月に導入しました。
  これまで当行のホームページでローンのお申込みをいただいた場合でも、ご契約手続
 きのためにご来店が必要でしたが、本サービスの開始により、スマートフォンやパソコ
 ンによる操作のみで、お申込みからご契約まで書類を記入することなく、すべてのお取
 引が完結できるようになりました。


ハ. オープンAPIへの対応
  事業組合システムバンキング九州共同センター(以下、  「SBK」という。 )に加盟す
 る九州・沖縄地区第二地方銀行共同の取組みとして、2020 年度上期中にソリマチ株式会
 社、SBIビジネス・ソリューションズ株式会社、株式会社ミロク情報システム、株式
 会社マネーフォワード、マネーツリー株式会社、弥生株式会社、   freee 株式会社、
 株式会社Zaimなどとの正式連携またはスクレイピング連携を開始しました。
  今後も電子決済等代行業者との連携・協働に際しては、システム共同先との連携を図
 り、お客さまサービス向上に繋がる新しいサービスの提供を検討してまいります。


② お客さま目線に立った取組み
イ. ほうわホルトホールプラザの機能拡充
  当プラザでは、平日に時間が取れないお客さまのために、土日祝日に各種ローンや資
 産運用・相続・年金・保険のご相談を専門スタッフがお受けしております。
  2020 年度上期は、店舗の特性を活かし、営業店からの顧客紹介活動を実施した結果、
 銀行休業日を中心に 116 件の来店があり、営業店事務負担の軽減と共に様々な商品のク
 ロスセルの機会創出につながりました。また営業店窓口で時間を要する相続事務につい
 て受付を代行する体制を整え、当プラザを相談窓口とする案内をホームページに掲載し
 ました。
  当プラザの 2020 年度上期の実績については、フラット 35 の取扱額が3億 43 百万円で
 あり、全行取扱額4億円の約8割強を占め、普通預金口座開設は 110 件開設するなど、
 営業店業務の軽減に貢献しました。当プラザの活用を一段と促進することで、各種ロー
 ンや金融商品販売の推進に係る営業店の業務負担を軽減してまいります。


ロ.店舗の整備・美化
  お客さまに安心してご利用していただけるように新型コロナウイルス感染防止対策
 として、飛沫防止パネルや手指消毒液の営業店窓口への設置や、カウンター等の定期的
 な清掃などを実施しました。
  また、老朽化した津久見支店の建替工事に着手しました。新店舗は災害に強い店舗を
 目指し、お客さまの満足度の高い店舗となることと考えております。




                    - 15 -
(3) 経営基盤の強化
 ① 業務の効率化
  イ. 営業店に対する本部のサポート強化
    各営業店のマネーアドバイザー(MA)や若手行員のスキルアップのため、個別勉強
   会を実施しました。また、女性の渉外行員の増加および今後の体制を踏まえ、同じ立場
   にある行員との交流懇談会を開催し、モチベーションアップ(メンタルケアを含めた)
   を実施しました。資産運用渉外(上級MA)が単独でお客さまへコンサルティング提案
   を行なうことでお客さまの多様なニーズにお応えできる体制が構築されています。
    営業店の渉外行員の負担を軽減するため、金融商品等の販売担当者を本部付にし、役
   割を明確にするという施策につきましては、人選を含め本部関係部署との協議を続けて
   おります。


  ロ. 業務改善に向けての継続的な取組み
   a. 現場の意見を踏まえた継続的な取組み
      2020 年度上期は、限られた人材でより効率的な業務運営を行っていくため、現場の
    意見を踏まえた継続的な改善活動を「業務改善委員会」   (委員長:頭取)のイニシアチ
    ブのもと、実施いたしました。
      また、融資業務の効率化に係る外部コンサルティングの提言を受け、融資業務プロ
    セスの見直しを図りました。今後も、業務プロセスの見直しやIT化等により、預金
    業務等を含め、より一層の効率化を進め、取引先への顧客価値の提供及び収益性の向
    上に結び付けてまいります。

   b. スピード感のある融資に向けた取組み
      当行では、融資稟議における必要書類の簡素化や融資手続きの見直しなど営業店の
    融資事務負担の軽減を図るなど、更なる融資業務のスピードアップに向けた取組みと
    して、みずほ情報総研株式会社と融資業務BPRに関するコンサルティング契約を締
    結し取組んでまいりました。
      その中で「融資業務プロセスの見直し」「融資関連帳票の見直し」の観点から取組み
    改善を図ってまいりました。
      今後も、営業店がよりお客さまと接する時間を増やし、十分なコンサルティング機
    能が発揮できる体制整備につなげ、地域金融機関としてより一層の円滑な資金供給に
    努めてまいります。


 ② 人材育成の強化
   「地域への徹底支援、地元経済の活性化、地域への貢献」を実践し続けるためには、行
  内における人材の育成強化を図る必要があるため、以下の施策を実践しました。
  イ. 行員の顧客価値提供能力の向上
   a.管理職層の専門性向上(特に中小企業等への支援のための融資スキル、事業性評価、
     本業支援、M&A・事業承継)、マネジメント力・育成力の向上を図る取組みを行い
     ました(支店長経営塾、新任支店長研修など)。

   b.若手行員の早期戦力化のため、実践力強化を図る集合研修等を実施したほか、これま



                      - 16 -
  で実施している各種行内トレーニー制度(留学先:融資部、ソリューション支援部、
  証券国際部金融商品監理室)等の充実を図りました。

 c.「共通価値の創造」を実践するための専門性向上、Vサポート業務を含む本業支援等
   の提案力強化を図るための集合研修等を強化し、行外研修(第二地方銀行協会、業者
   等主催)のTV会議システムを活用した講座を積極的に受講しました。また地域貢献
   実践のための資格者(中小企業診断士、宅地建物取引士、FP技能士等)を養成する
   取組みを実施いたしました。

ロ.複数の職務が行える人材の育成
  人材の適正配置に向けた取組みの一つとして、希望職務調査や営業店基準人員の見直
 しを実施し、今後の適正な人員配置やジョブローテーション、女性の更なる活躍推進に
 活用していくことを組織決定しました。これに従い、ジョブローテーションの一環とし
 て、2020 年度の新入行員より原則1年間は預金業務に固定する取り組みを開始いたしま
 した。また、女性行員の融資・渉外力向上に向けた育成(融資能力向上研修への参加、
 トレーニーへの参加や資格・検定試験の受験管理の取組み等)に取り組みました。


③ 人材の確保、人材の活躍推進に向けた取組み
イ. 女性の活躍のステージ拡大
  2019 年度に実施した希望職務の調査を基に、人員配置や今後のジョブローテーション
 に活用していくこととしております。
  また、本計画期間中は女性行員の融資・渉外力向上に向けた育成(   「財務分析セミナ
 ー」をインターバルで実施したほか、トレーニーや資格・検定試験の受験管理の取組み
 等)に取組んでおります。

ロ.シニア層の活躍のステージ拡大
  シニア層の活躍推進・活用に向けて、本計画期間中に、定年後再雇用後の処遇・呼称
 の見直しを行いました。
  今後も役職定年制度(現在 58 歳)の見直しや定年後再雇用のルールの見直しを継続
 して検討してまいります。

ハ.働き方改革に向けた取組み
  ES向上に向けた「ライフ・ワーク・バランス」実現に向けた取組みとして、本計画
 期間中に、半日休暇の導入や、永年勤続者に対するリフレッシュ休暇の内容充実を図り
 ました。また、2020 年度上期には、福利厚生面の充実を目的とし、福利厚生アウトソー
 シングサービスに加入いたしました。




                  - 17 -
4. 従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項の進捗状況
 (1) 業務執行に対する監査又は監督の体制の強化のための方策
   業務執行に対する監査又は監督の体制を強化するため、      2016 年6月以降は社外取締役2名
  (非常勤)を選任し、取締役会の監督・牽制機能の強化を図っております。
   加えて、社外常勤監査役1名の就任(2006 年 10 月)、監査役会付行員の配置等を通じ、監
  査役会の機能強化も図っております。
   今後とも、現体制を維持し、経営管理態勢の強化に努めてまいります。


 (2) リスク管理の体制の強化のための方策
  ① 統合的リスク管理体制強化、RAF(リスクアペタイト・フレームワーク)体制構築のための方策
    当行では、従前より経営体力の範囲内で各リスクカテゴリー・各業務部門にリスク資本
   を配賦し、その範囲内でリスクテイクを行うことにより健全性の確保を図るとともに、限
   られた経営資源を効率的に活用し、収益性の向上を目指しております。
    その中で、信用リスク管理については、地元の商流や雇用を支える地元事業者へのリス
   クテイクによる貢献が求められていることを認識し、地元分については一定のリスクテイ
   クを許容するとともに、  リスク資本を確保する観点から地元以外のリスクを抑制するなど、
   地域経済の活性化を強く意識したリスク管理方針としております。また、リスク資産毎に
   指標であるVaR、EL(期待損失)  、UL(非期待損失)を計測して、地元と地元以外を
   分別して管理するとともに、配賦したリスク資本と対比することにより、リスク量をコン
   トロールしております。
    また、2020 年3月の取締役会にてリスクアペタイト・フレームワーク(RAF)を導入
   することを決議し、2020 年4月1日付で『リスクアペタイトの基本方針』と『リスクアペ
   タイト規程』を制定しました。これまで実施してきた統合的リスク管理によるリスク量管
   理や資本配賦運営を継続しつつ、  内外環境や経営戦略を考慮したリスクテイク方針を定め、
   リスクアペタイトの範囲内に収まるようリスクをコントロールしながら収益を確保し、事
   業計画の達成とポートフォリオの適切性の確保を目指します。
    RAF運営の対象とするリスクカテゴリーは計量化可能なリスクカテゴリーとしており
   ます。2020 年度は、事業性融資(地公体・個人ローン・破綻懸念先以下を除いた貸出金)
   の「信用リスク」と有価証券の「価格変動リスク」を対象とし、それぞれのリスクカテゴ
   リーでリスクテイク方針を定め、様々な角度で分析してリスクテイクの状況や収益実績等
   をモニタリングし、その結果をPDCAサイクルにつなげる体制を整備しております。
    特に、信用リスク(事業性融資)に対しては、  「Vサポート業務や経営改善応援ファンド
   を活用してリスクの高い先の業況改善に取組み、付加価値を提供することで適正な金利水
   準を維持し、収益を確保しつつ共通価値の創造につなげる」とのリスクテイク方針とし、
   中小規模事業者への徹底支援の姿勢や地域金融機関としての役割・存在意義等を前面に押
   し出した内容とするとともに、あらゆる機会を通じて全職員に周知しております。




                       - 18 -
〔 信用リスク(地元向け事業性融資) 〕
                   (表 15)                                                     (単位:先、百万円)
                   2019/3 期        2019/9 期        2020/3 期        2020/9 期        (2019/3 期比)

先数                      4,951           4,972           5,028           5,271               320

  破綻懸念先以下                 342             341             349             355                13

  正常先+要注意先              4,609           4,631           4,679           4,916               307

      地公体                     19              19              19              20                 1

      事業性               4,590           4,612           4,660           4,896               306

       地元以外               321             327             345             353                32

       地元               4,269           4,285           4,315           4,543               274

            正常先         2,998           2,977           2,933           2,928              ▲70

            要注意先        1,271           1,308           1,382           1,615               344

与信額                   340,248         328,278         333,159         343,498            10,339

  破綻懸念先以下              17,328          16,964          18,364          19,152             1,824

  正常先+要注意先            321,838         311,314         314,794         324,346             2,508

      地公体              39,940          38,431          36,272          35,550           ▲4,390

      事業性             281,898         272,882         278,522         288,796             6,898

       地元以外            47,865          41,355          44,277          46,386           ▲1,479

       地元             234,033         231,528         234,245         242,410             8,377

            正常先       171,845         170,185         168,416         159,976          ▲11,869

            要注意先       62,188          61,342          65,829          82,433            20,246

リスク量(VaR)(地元)           6,878           5,442           5,754           5,221           ▲1,657

            正常先         2,311           1,865           1,895           1,437             ▲874

            要注意先        4,567           3,577           3,859           3,784             ▲783

EL(期待損失額)               2,982           2,230           2,363           2,098             ▲885

       地元以外               417             285             321             295             ▲122

       地元               2,565           1,945           2,042           1,803             ▲762

            正常先           862             666             672             496             ▲366

            要注意先        1,703           1,278           1,369           1,307             ▲397

UL(非期待損失額)              5,014           4,009           4,297           3,977           ▲1,037

       地元以外               701             512             584             559             ▲142

       地元               4,313           3,497           3,713           3,418             ▲895

            正常先         1,449           1,198           1,223             941             ▲508

            要注意先        2,864           2,298           2,490           2,478             ▲386




                                   - 19 -
② 信用リスク管理体制強化のための方策
イ. 与信ポートフォリオ管理
  クレジットポリシーに基づき、適切に信用リスクの把握・管理に努めるとともに、新
 型コロナウイルス感染症の影響を受けたお客さまの実態把握に関しても、モニタリング
 態勢の強化を図りながら信用リスクを適切に把握してまいります。


ロ. お客さまの実態把握
  融資部企業支援室と営業店が協働で支援を継続しているお客さまに関しては、Vサポ
 ート業務を通じてトップラインの改善を図るようサポート活動を実施しております。
  Vサポート業務を通じて入手する事業活動関連の情報を経営改善支援に活用しなが
 ら、更にお客さまの業況改善につなげてまいります。
  2020 年度上期においては、融資部企業支援室と営業店が協働で支援を継続しているお
 客さま(特定支援先)11 先に対して合計で 30,901 千円の売上が確保され、トップライ
 ンの改善に繋がりました。 (なお、当該お客さま 11 先においてはVサポート業務の実
 施後、2020 年9月末までに累計で 120,869 千円の売上実績が確保されております。)


ハ. ストレステストの実施
  当行は、  これまで親会社への名寄せによるグループ合算、地価下落による保全率低下、
 景気後退により格付悪化した建設・不動産業や、貸出金が増加傾向にあった「個人によ
 る貸家業」や「医療・福祉業」の格付悪化による影響を定期的に計測し、影響の度合い
 を検証してまいりました。また、シナリオ毎に明細単位でEL理論値を算出し、その構
 成比から店別のULを計測しており、店別・地域・業種別に算出したデータを蓄積し、
 ポートフォリオの適正管理や信用リスク管理に活用しております。
  2020 年9月に実施したストレステストでは、新型コロナウイルスの影響が大きい宿泊
 業・飲食業の業況悪化を考慮し、インタレスト・カバレッジ・レシオが 100%未満で赤
 字の先の格付悪化をシナリオに加え、影響度合いを計測してALM/リスク管理協議会
 に報告しております。
  今後とも、このような取組みを通じて地元ULを可視化し、地域経済の活性化に資す
 る地元の事業者への適切なリスクテイクに努めてまいります。


ニ.不良債権の適切な管理のための方策
  お客さまの業績悪化や延滞発生時には、営業店と融資部企業支援室が連携して、経営
 改善の実現可能性を確認し、さらに、一歩踏み込んだ抜本的な事業再生を行うことによ
 り、経営改善が見込めるお客さまに対しては、外部専門機関・専門家等と連携して、抜
 本的な経営改善計画を策定し「ほうわ経営改善応援ファンド」による融資支援、DDS
 の導入、事業再生ファンドの活用、債権放棄の実施などの金融支援を実施しております。
  また、事業の存続を徒に長引かせることが却って経営者の生活再建に悪影響を及ぼす
 恐れがある場合には、融資部企業支援室と外部専門機関等の連携により、債権整理を前
 提とした再起に向けた方策を検討するなど、お客さまの状況に応じたソリューションの
 提供に努めてまいりました。




                   - 20 -
〔 債権放棄の状況 〕
          (表 16)                                                   (単位:百万円)
                                                    破綻処理等           債権処理合計額
              事業再生に向けた支援目的の債権処理
   年度                                               バルク処理(B)          (A+B)

            債権放棄         DDS 他         計(A)
  2013/下期           0             0            0            98                  98
  2014/上期           0             0            0            464                464
  2014/下期      1,006              0       1,006             289               1,295
  2015/上期           0             0            0            76                  76
  2015/下期          426            0           426           126                552
  2016/上期          545           584      1,129          3,844                4,973

  2016/下期          572            0           572        1,628                2,200

  2017/上期      1,160              0       1,160             283               1,443

  2017/下期          552            0           552        1,299                1,851

  2018/上期           0             0            0               0                 0

  2018/下期          347            0           347           146                493

  2019/上期          211            0           211           146                357

  2019/下期          224           289          513           234                747
  2020/上期           91            0            91              7                 98
 累計(新法での公
               5,134             873      6,007          8,640            14,647
 的資金注入後)




③ 市場リスク管理体制強化のための方策
イ.基本方針
  新型コロナウイルスの感染拡大とその防止のための経済活動抑制による影響を受け
 て、2020 年度上期の世界経済は歴史的なマイナス成長に陥りました。緊急事態宣言解除
 後の夏場以降は、   財政・金融政策による景気サポートが続き、 景気の復調期待もあって、
 徐々に株式市場は堅調な動きとなりました。また、アベノミクス継承を掲げる菅新政権
 においても金融政策の急激な変更はないことから長期金利も狭いレンジでの推移が続
 くと予想されます。
  このような環境下、有価証券運用については運用施策や運用基準に則り、各種マーケ
 ット動向を十分吟味し、個別銘柄の購入に当たってはきめ細かい選定を行いました。
  引き続き、市場リスク管理部門(総合企画部リスク管理グループ)では、モニタリン
 グ指標として債券保有状況、金利リスク量(100BPV・200BPV)、リスク量の自己資本に
 対する割合(経過措置ベースと完全適用ベースの 2 パターン)の計測結果を月次でAL
 M/リスク管理協議会に報告し、   債券の金利リスク管理の強化を図っております。   また、
 金利上昇等のマーケット動向による保有有価証券の評価損益の状況を適時把握し、必要
 な場合には「有価証券に係る金利急騰時のアクションプラン」に基づき、証券国際部と
 総合企画部との部門間協議を開催して対策を協議するなど、マーケットの急激な変化に
 も即座に対応する態勢を構築しています。債券以外についても、エクイティ商品(主に
 株式や投信)の価格変動リスクを十分認識したうえで、個別銘柄の評価損益の状況を日
 次で把握するとともに、相場急変時等においては上記と同様に証券国際部と総合企画部


                            - 21 -
との部門間協議を開催して対策を協議しています。
  とくに上期半ばには、部門間協議により価格変動リスクへの配賦資本を 30 億円から
25 億円へ修正し、より慎重な運用方針としました。
  また、有価証券リスク量拡大の抑制に向けたポートフォリオ見直しや下期運用方針に
ついても協議を行ったほか、含み損の拡大防止に向けたロスカットを実施しました。
  9月末の有価証券の評価損益は、ネットで▲89 百万円と、3月末▲612 百万円、6月
末▲460 百万円から大幅に含み損を圧縮しております。
  保有有価証券の評価損益の把握に関連しては、引き続き、市場リスク管理部門が日次
で有価証券時価情報を取得し、フロントが作成する時価情報と突合することで評価損益
やロスカットポイント等の妥当性の検証を行うことでフロントへの牽制を図っていま
す。


ロ.リスク管理方針
  市場リスク管理については、VaRや 100BPV、アウトライヤー比率、評価損益等を
計測し、市場リスク部会、ALM/リスク管理協議会等において経営陣に報告し、協議
する態勢としています。VaR計測モデルについては、モデルの有効性検証のために定
期的にバックテストを実施し、市場リスク部会、ALM/リスク管理協議会に報告して
います。
  一方で、VaRを用いた統合的リスク管理においては、市場リスク管理上、VaRによ
るリスク計測に限界があることから、それを補完する目的で各種のストレステストを実
施しており、   その結果を市場リスク部会、ALM/リスク管理協議会に報告しています。
また、2020 年3月より各種ストレステストの結果については、半期ごとの投資計画の策
定時における想定リスク量の算出を行なう際に活用することとしています。
  足元マイナス金利の状態が継続するなか、当行の有価証券ポートフォリオ上の構成比
率が最も大きい債券の金利リスク管理については、    「金利急騰時のアクションプラン」
に基づき、市場金利の動きを日次でチェックするとともに、トリガー抵触時には速やか
に証券国際部と総合企画部との部門間協議を行ない、市場リスク部会およびALM/リ
スク管理協議会に報告する体制としています。債券投資にあたっては、投資対象銘柄の
残存年数は 10 年物までとし、残存年数の長期化の抑制に努めています(2020 年9月末
4.0 年)。なお、外債については、投資信託も含めて新規の投資を行なっていません。
  また、2020 年3月に生じた新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した株式・上場R
EIT市場の暴落といった価格変動リスクを伴う事象が生じた際においても、証券国際
部と総合企画部との部門間協議を行ない、市場リスク部会およびALM/リスク管理協
議会に報告する体制としています。別途、上場REITについては 2019 年 11 月より購
入時における稟議書の添付資料や市場リスク部会の報告資料の充実を図り、リスク管理
の強化に努めています。
  なお、市場取引や運用については、ALM/リスク管理協議会にて承認された「資金
運用施策」および「有価証券等運用基準」に基づいて実施しています。


ハ.IRRBB基準への対応
  IRRBBの指標であるΔEVEは月次、ΔNIIは四半期ごとに算出し、月次開催
される市場リスク部会およびALM/リスク管理協議会に報告しております。
  2020 年 3 月にALMシステムをマイナス金利が許容できるよう仕様変更したことで、
2020 年 2 月末基準より、下方パラレルシフトにおいて調達側の現在価値の増加(リスク


                 - 22 -
  量増加要因)が運用側の現在価値の増加(リスク量減少要因)を上回り、下方パラレル
  シフトのΔEVEが最大となって規制上のΔEVE比率は大幅に上昇しましたが、自己
  資本の 20%以内には十分収まっております。


 ④ 流動性リスク管理
  流動性リスク管理につきましては、資産・負債のポートフォリオ構成を重視し、大口入
 出金の把握、資金繰り予想、大口定期預金等の動向、LCR等を通じて流動性リスクの分
 析・評価を行い、  流動性リスク部会、   ALM/リスク管理協議会等において経営に報告し、
 協議する態勢としています。   2020 年度上期は、前年度下期より開始した公金管理の指標「大
 口預金(含むNCD)対流動性準備量比率」により、引き続き大口定期預金のフォロー・
 管理を行っています。
  また 2020 年3月末基準で所定のシナリオに基づいた流動性ストレステストを実施しま
 した。預金流出に際し、第1線準備率 10%を維持するために有価証券を売却した場合、ど
 の程度年間収益に影響を与えるかについても試算しました。
  日々の流動性リスク管理にあたっては、流動性準備量について準備率ならびにネットポ
 ジションの目標値を設置し、資金繰り・担保繰り状況等についてモニタリングを実施して
 います。また、日本銀行のマイナス金利政策に対応し、引き続き日本銀行預け金の管理を
 強化しています。


 ⑤ オペレーショナルリスク管理
 イ. オペレーショナルリスク管理に関する取組み
    オペレーショナルリスク管理に係る各議案に関し、経営陣の関与の下で、2020 年度
   上期中に、
       「新規 500 円硬貨発行に伴う出納周辺機器の改造・更改発注について」「B
   eSTAcloudハード更改における現行とのシステム構成変更について」などに
   ついて各種会議体における審議・報告を実施しております。


 ロ. サイバーセキュリティ管理に関する取組み
    安全で信頼性が高い金融サービスを提供する使命を適切に履行するために、サイバ
   ーセキュリティ管理態勢の強化に取り組むべく、2020 年度上期に「行内ネットワーク
   環境における不正通信防御対策」「SBK自行センタにおける不正通信検知対策」な
   どの対策を実施しております。


(3) 法令遵守の体制の強化のための方策
 ① コンプライアンス統括機能の充実・強化
  2020 年2月には湯布院支店で発覚した行員による流用費消事案の発生に伴い、3月に当
 局宛届出書を提出したのち、4月 17 日に公表しました。事故者については、懲戒解雇処分
 とし、経営陣を含む管理監督の責にあった関係者につきましても責任の所在を明確にし、
 厳正に処分を行いました。さらに、今回の不祥事案を踏まえ、6月5日の当局宛届出書に
 おいて、発生要因と要改善事項を提出しました。不祥事件の要改善事項はコンプライアン
 ス協議会にて進捗状況や実効性の確認を行っており、再発防止に向けた取組みを強化して
 います。




                       - 23 -
 ② マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止態勢の強化
   マネー ローンダリングおよびテロ資金供与対策
        ・                     (以下、AML/CFT」
                                 「        といいます。)
  に係る規程・マニュアル類・各種様式等の改正、改訂を行うとともに適時に各種事務の取
  扱について行内に周知するなどにより、第1線である営業店ならびに営業部門の自立的な
  リスク管理に対する独立的な牽制と、第1線への支援・指導の強化を図りました。
   さらに、AML/CFT強化の一環として、マネロン等に利用される口座の作成を水際
  で防ぐとともに、取引開始時に実効性の高い本人確認手続きを実現するため、2020 年5月
  に法人口座開設受付時の審査制を導入しました。導入に当たって4月に法人口座開設受付
  時の審査制をテーマとした職場教育訓練を全部店で実施するなど、全社的なAML/CF
  Tへの関与や理解、またリスク認識を深める取組みを行っております。
   また、勘定系システムの共同運営組織SBK加盟行にてマネロンシステムの導入を決定
  し、2020 年度中の運用開始をめざして、2020 年度上期中にシステム導入開発進捗TV会議
  を4回開催しています。


(4) 経営に対する評価の客観性の確保のための方策
  2020 年度上期は、2019 年度下期に第二地方銀行協会加盟行と共同で行いましたNPS(ネ
                   ※
 ットプロモータースコア) アンケートの結果を基に、お客さまへのフォローアップ等に取
 り組みました。今後もアンケートなどを通じ、お客さまのご要望にお応えするとともに、お
 客さまに更に一層支持される銀行を目指してまいります。
 ※.顧客ロイヤルティを測る新しい指標であり、企業に対して顧客が持つ愛着や信頼の度合いを数値として把握できるように
   した指標。


(5) 情報開示の充実のための方策
 ① 四半期ごとの情報開示の充実
   当行では、お客さま、株主をはじめとする投資家の皆さま、地域社会等から正しい理解
  と信頼を得るため、証券取引所への適時開示のほか、記者会見、プレスリリース、ホーム
  ページへの掲載等により、迅速かつ正確な四半期の財務・業績情報の提供を行っており、
  今後とも、迅速かつ充実した開示に努めてまいります。


 ② 会社情報の適時開示
   当行では、迅速かつ充実した情報開示に取組むため、大口不良債権の新規発生、不祥事
  件の発生等、本部・営業店等からの各種情報は、総合企画部において、一元管理する態勢
  としております。
   総合企画部では、各種情報が適時開示情報に該当するか否かを判断し、原則として、取
  締役会等の承認のもとに適時適切に開示しています。
   さらに、お取引先との交流会である「本店豊和会」においても適時適切に情報を開示す
  るなどのIR活動にも努めています。
   今後とも、銀行法、金融商品取引法その他の法令及び証券取引所の定める適時開示規則
  に基づき求められる情報に加え、経営の透明性を確保するため、リスク情報や部門別損益
  情報などの情報開示にも努めてまいります。


 ③ 主として業務を行っている地域への貢献に関する情報開示の充実
   当行は、地元経済の活力向上と地域の発展に貢献するため、お客さまの経営改善等や成
  長・発展に向けた経営支援、創業・新事業を目指すお客さまへの支援等の積極的に取組む


                         - 24 -
ほか、環境、金融に関する教育、文化、防犯協力、ボランティア活動への貢献など、地域・
社会貢献、CSR活動を幅広く展開しております。
 こうした取組みや活動については、ディスクロージャー誌や決算短信等にて開示してお
り、今後とも内容を充実させ、積極的に開示してまいります。




                 - 25 -
5. 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行っている地域におけ
   る経済の活性化に資する方策の進捗状況

(1) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の主として業務を行っている地域にお
   ける経済の活性化に資するための方針
   当行は、地域の中小規模の事業者等のお客さまを取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、中
  小規模の事業者等のお客さまと真正面から向き合い、コンサルティング機能を発揮し、お
  客さまの経営改善等及び成長・発展に向け、経営改善支援活動と積極的な資金供給を徹底
  することで、地域経済の活力向上と地域の発展に貢献していくことこそが、地域金融機関
  としての責務であると考えています。
   本計画においては、前述の取組方針「地域への徹底支援」に基づく諸施策を確実かつ持
  続的に実施することで、中小規模の事業者等や個人のお客さまに対して、円滑な資金供給
  に努めてまいります。


 (2) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策
  ① 中小規模の事業者に対する信用供与の実施体制の整備のための方策
    当行では、融資業務スピードアップを図るために業務効率化を目的としたコンサルティ
   ングを通じて具体的な方策の検討し、「融資業務プロセスの見直し」「融資関連帳票の見直
   し」の観点から取組み改善を図ってまいりました。
    今後も、営業店がよりお客さまと接する時間を増やし、十分なコンサルティング機能が
   発揮できる体制整備につなげ、地域金融機関としてより一層の円滑な資金供給に努めてま
   いります。

  ② 担保又は保証に過度に依存しない融資の促進その他の中小規模の事業者の需要に対応し
    た信用供与の条件又は方法の充実のための方策
    事業性評価に基づいたお客さまの多様な資金ニーズに柔軟に対応するため、無担保融資
  や、売掛債権や在庫、動産、知的財産等を担保とした融資、債権譲渡契約に担保設定した
  融資等を積極的に推進してまいりました。
    具体的には、大分県内で1年以上同一事業を営む法人及び個人事業主のお客さまを対象
  とし、原則無担保で事業資金をご融資する「ほうわビタミンローン(詳細は、11 頁 3-(1)-
  ③小規模事業者への資金供給(ビタミンローン)等に記載しております)        」やTKC会員
  の税理士・会計士等が関与する中小企業等のお客さまを対象とする原則担保不要のローン
  商品「ほうわTKCローン」3件、16 百万円、お客さまの柔軟な資金調達ニーズへの対応
  として、対外信用力の向上にも繋がり、また期日まで約定弁済のない資金調達手法にもな
  る「銀行保証付私募債(がんばろう九州私募債)     」3件、670 百万円、「銀行保証付私募債
  (ほうわ SDGs 私募債)
               」1件、50 百万円、優れた技術力を有する地域のお客さまが持つ特
  許権・商標権・実用新案権・意匠権・著作権等の知的財産権の価値を評価し、その事業価
  値に応じて必要資金を供給する「知的財産担保融資」などを活用し、中小規模事業者の多
  様な資金ニーズに応えてまいりました。


  ③ 中小規模事業者等向け信用供与円滑化計画を適切かつ円滑に実施するための方策
   【 中小規模事業者等に対する信用供与の残高の総資産に占める割合 】
     2020 年9月期は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う売上の減少等により、中小企業
    のお客さまの資金需要が強い上、政府による資金繰り支援策である実質無利子無担保融


                      - 26 -
   資も含め、    お取引先の資金繰り対応に注力した結果、 「中小規模事業者等向け貸出残高」
   は 2,698 億円(計画比+78 億円)となりました。しかしながら、小規模事業者等でのコ
   ロナ関連資金繰り支援が予防的に厚めの手元流動性として残っていることに加え、政府
   の新型コロナウイルス対策である各種給付金や貸出の増加により、       「総資産残高」は
   6,154 億円(計画比+350 億円)となったことから、「中小規模事業者等向け貸出の総資
   産に占める比率」は計画値を 1.30 ポイント下回る 43.84%となりました。
     2020 年度上期における中小規模事業者等向け同比率が未達成であったことを踏まえ、
   2020 年度下期はWithコロナを踏まえ、これまでの常識にとらわれず、個別のお取引
   先のニーズに沿った支援、真に支援を必要とするお取引先に対し、特に小口先を中心に
   顧客価値を提供することで、質の高い融資に一層注力するとともに、以下の施策を実行
   することで目標の達成を目指してまいります。
     ・コロナの影響を受けているお取引先を対象として、コロナ禍においても事業に専念
       していただけるよう、最長5年間元本据え置き可能な「資金繰り安定化ファンド」
       による支援(2020 年 10 月より開始)
     ・課題検討会の実施(店内にて個社毎に現状認識を行い、基本方針・提案内容を決定
       する)
     ・要注意先以下のお客さまへの積極的な資金供給(     「経営改善応援ファンド」
                                            「小口貸
       出」 )と事業性評価の徹底(特に年商 50 百万円以下のお客様)
     ・事業性評価能力の向上と債務者モニタリング(融資部との連携)を踏まえた「短期
       継続型融資(短コロ)   」の推進
     ・「ほうわビタミンローン」を活用した新規事業先の開拓
     ・親密事業者に対する仕入先事業者の当行紹介運動(ほうわの輪を広げよう運動)
     ・重点取引先訪問リストの作成による肩代り防止及びおまとめ提案

  〔 中小規模事業者等に対する信用供与の計画・実績 〕(表 17)                                                 (単位:億円、%)
                   2019/9
              2019/3           2020/3             2020/9                  2021/3    2021/9   2022/3
              (始期) 実 績         実 績      計 画     実 績    計画比       始期比      計 画       計 画      計 画
   中小規模事業者
              2,530    2,511   2,573    2,620   2,698    + 78    + 168    2,641     2,664    2,687
   等向け貸出残高

   総資産残高      5,785    5,788   5,784    5,804   6,154   + 350    + 369    5,813     5,851    5,892

   総資産に対する比
              43.73    43.38   44.49    45.14   43.84   ▲ 1.30   + 0.11   45.43     45.53    45.61
   率

  ※ 総資産に対する比率 = 中小規模事業者等向け貸出残高 ÷ 総資産残高



(3) その他主として業務を行っている地域における経済の活性化に資する方策
 ① 創業又は新事業の開拓に関する支援に係る機能の充実の強化のための方策
   当行では、これまで創業や新事業を目指すお客さまに対して、事業計画等の作成支援及
  び大分県や各市町など創業支援機関等の各種支援制度等に関する情報提供を通じた支援に
  取組んできたほか、創業支援融資等のファイナンス支援の取組みを強化しております(詳
  細は、13 頁 3-(1)-⑤創業・新事業を目指すお客さまへの取組み等に記載しております)。


 ② 経営に関する相談その他の取引先の企業(個人事業者を含む)に対する支援に係る機能
   の強化のための方策
   お客さまからの経営に関する相談に対しては、お客さまのライフステージ等に応じ、お
  客さまの立場に立った最適なソリューションを提案し、お客さまと協働して実行すること


                                        - 27 -
を基本方針としております。また、お客さまへのソリューションの提案等にあたっては、
必要に応じて外部専門機関・専門家等とも連携し、お客さまの経営改善等や成長・発展を
支援してまいります(詳細は、6 頁 3-(1)「地域への徹底支援」に記載しています)
                                         。


③ 早期の事業再生に資するための方策
 早期の事業再生に資する方策として融資部企業支援室が主体となり、重点的に管理をし
ていく先を「特定支援先A」とし、営業店と協働して管理していく先を「特定支援先B」      、
加えて 2020 年度から新型コロナウイルスの影響により業況が芳しくない先について、 今後
「特定支援先A」と同程度の支援が必要と判断される先を「特定支援先C」として選定を
行い、アフターコロナに向けた経営改善支援を見据えて、お客さまの業況把握に努め、よ
り深い、より実効性のある支援につなげていく方針としております。
 なお、 2020 年度上期における「特定支援先」として経営改善支援を実施している先は 187
先となっております。(件数については下記参照)

 〔 2020 年度の特定支援先増減について〕
                      (表 18)                            (単位:先)
         2020 年度   2020 年度
                             増減             2020 年度上期中の増減理由
 管理区分     期初        上期末
          先数        先数       先数
  特定
           78        79      +1       特定支援先 B から移管
 支援先 A
  特定
           71        69      -2       特定支援先 A へ移管 1 先、完済が 1 先
 支援先 B
  特定                                  2020 年度上期中に新型コロナ禍影響に
           16        39      +23
 支援先 C                                より増加
  合計       165       187     +22


 「特定支援先A・B」につきましては、経営改善計画策定時において積極的に中小企業
再生支援協議会等の外部専門機関が関与した専門的知見による実現性の高い改善計画の策
定支援を行う態勢としております。
 また、特定支援先C」
   「       につきましては、コロナ禍における資金繰りが円滑になるように、
営業店と協働してお客さまの実情を把握し、支援協議会や日本政策金融公庫などの公的機
関とも連携しながら、特例リスケ対応やコロナ対策融資制度の利用などを実施してまいり
ました。

④ 事業の承継に対する支援に係る機能の強化のための方策
 当行では、事業承継ニーズのある経営者の意向を踏まえたうえで、後継者不在先のM&
Aのマッチング支援、事業承継時の資金需要対応や相続対策支援等を通して、事業承継に
関わる課題解決支援を行っております(詳細は、12 頁 3-(1)-④事業承継、M&A支援に向
けた取組み等に記載しております)。

【 経営改善支援等取組企業数の取引先企業総数に占める割合 】
  2020 年9月期は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い「経営相談」が計画比+97
 先となったものの、実質無利子無担保融資や給付金の影響により「担保・保証」が計画
 比▲142 先となったことから、分子となる「経営改善支援等取組企業数」は 556 先(計
 画比▲33 先)となりました。


                                   - 28 -
 一方、分母となる「取引先企業総数」は 6,616 先(計画比+89 先)となった結果、
                                           「経
営改善支援等取組企業数の取引先企業総数に占める割合」は計画値を 0.62 ポイント下
回る 8.40%となりました。

〔 経営改善支援等取組企業数の取引先企業総数に占める割合の計画・実績 〕
                                   (表 19)                                                 (単位:先、%)
                                                                                 2021/3   2021/9   2022/3
                2019/3   2019/9   2020/3                 2020/9
                                                                                 計 画      計 画      計 画
                (始期)     実 績       実績
                                           計 画     実    績    計画比        始期比
経営改善支援
                  561      546      537     589        556   ▲ 33        ▲ 5       598      607      616
等取組先数
    創業・新事業         78       80       76      82         90        + 8    + 12       84       85       87

    経 営 相 談       194      168      179     211        308    + 97      + 114      215      220      223
     うち販路開拓
     コンサルティング       1       10       10      10         10    ± 0         + 9       10       10       10

    事 業 再 生        16       16       17      16         16    ± 0        ± 0        16       16       16

    担保・保証         259      260      237     264        122   ▲ 142      ▲ 137      266      268      271

    事 業 承 継        14       22       28      16         20        + 4     + 6       17       18       19

 取引先企業総数        6,227    6,271    6,385    6,527   6,616      + 89      + 389    6,627    6,727    6,827

比          率     9.00     8.70     8.41     9.02    8.40     ▲ 0.62     ▲ 0.60    9.02     9.02     9.02



※ 比率 = 経営改善支援等取引先数 ÷ 融資取引先企業総数
※ 「融資取引先企業総数」とは、企業及び消費者ローン・住宅ローンのみの先を除く個人事業者の融資残高のある先で、
  政府出資主要法人、特殊法人、地方公社、大企業が保有する各種債権又は動産・不動産の流動化スキームに係るSP
  C、当行の関連会社、及び子会社に大会社を有する親会社を含んでおります。
※ 「経営改善支援等取組先」とは、次の5項目への取組み先です。
 1. 創業・新事業開拓支援先
 2. 経営相談支援先
 3. 早期事業再生支援先
 4. 担保・保証に過度に依存しない融資促進先
 5. 事業承継支援先




                                           - 29 -
6. 剰余金の処分の方針
 (1) 配当に対する方針
   優先株式及び普通株式の配当については、2009 年度から継続して実施しております。
   今後、前述の取組方針 ①「地域への徹底支援」、②「お客さまの満足度向上に向けた取組
  み」、③「経営基盤の強化」に基づく諸施策を確実かつ持続的に実施し、収益力を強化する
  ことで、安定した収益を確保し、内部留保の蓄積に努めつつ、安定かつ適切な配当を行って
  いく方針としております。

 (2) 役員に対する報酬及び賞与についての方針
   当行では、2003 年度から役員賞与の支給を見送っており、2005 年度からは退職慰労金の支
  給も凍結しております。
   今後も、業績を踏まえた報酬及び賞与としていく方針であります。

(3)財源確保のための方策
   2020 年9月末の利益剰余金は、中間純利益8億 65 百万円を計上したことから、2020 年3
  月末に比べ4億 54 百万円増加の 74 億 75 百万円となりました。
   今後も経営強化計画を確実かつ持続的に実行し、安定した収益を確保することで、利益剰
  余金を着実に積み上げてまいります。

   〔 長期予想 〕
          (表 20)                                              (単位:億円)

            2019/3 末   2020/3 末   2021/3 末   2022/3 末   2023/3 末   2024/3 末
             実 績        実 績        予 想        予 想        予 想        予 想

   当期純利益         11          3          5          7          8          8

   利益剰余金         70         70         74         77         81         85


            2025/3 末   2026/3 末   2027/3 末   2028/3 末   2029/3 末
             予 想        予 想        予 想        予 想        予 想

   当期純利益          9         10         11         10         12

   利益剰余金        110        135        161        186        213




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7. 財務内容の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策の進捗状況
 (1) 経営管理に係る体制及び今後の方針等
  ① 経営強化計画運営協議会による進捗管理
    経営強化計画の履行状況に関する進捗管理を行うため、2006 年 10 月に設置した「経営
   強化計画運営協議会」(議長:頭取)を週次で開催しております。
    同協議会では、毎月の損益状況等を把握し、諸施策の実施状況や半期ごとの目標に対す
   る進捗状況を確認するとともに、進捗状況に応じ、乖離要因を分析の上、対策を立案・検
   討し、営業統括部より支店長をはじめ全行員へ、中小規模事業者向け貸出及び貸出利回り
   の水準の改善等具体的な指示(例:Vサポートによる売上支援、訪問ルールの徹底、BA
   NK-Rへの入力の徹底、「経営改善応援ファンド」を中心とする地元中小規模事業者に対
   する円滑な資金供給の徹底等)を速やかに行っています。


  ② 内部監査態勢
    まず、内部監査の高度化に向けた課題に対しましては、EYアドバイザリー・アンド・
   コンサルティング㈱による監査部の外部品質評価を実施し、2019 年9月にIIA基準に基
   づく品質評価結果と高度化への提言を受けて、高度化へ向けた具体的施策に取り組んでい
   るところです。2020 年度上期にはオフサイトモニタリングマニュアル並びにリスクアセス
   メントマニュアルの策定に着手し、2021 年3月までに完了させる予定となっています。リ
   スクベース監査と戦略目標に対するコントロールの検証に有効なものにしていきます。
    次に、営業店監査では、コンプライアンス、顧客保護、業務運営、融資業務、事務管理、
   業務処理の6つのリスク管理態勢について、プロセスの有効性も含めたところでのリスク
   ベースに基づいた評価を行っています。AML/CFTにつきましてはコンプライアンス
   態勢の中でスクリーニングの実施状況等を重要項目として検証しています。また、AML
   /CFTに関する行員の浸透度合いについてアンケートやインタビューで調査し、半期毎
   に分析をしています。加えて、本部と一部営業店に跨るAML/CFTのテーマ監査も年
   1回下期に実施しており、2020 年度も下期に実施予定です。
    そして、コンプライアンス・リスク管理の高度化につきましては、金融庁より公表され
   た「コンプライアンス・リスク管理基本方針」を踏まえて「コンプライアンス基本方針」
   並びに「コンプライアンス・プログラム」が抜本的に見直され、2020 年4月1日から見直
   し後の運用が開始されました。当行のビジネスモデル・経営戦略・企業文化とコンプライ
   アンス・リスク管理は表裏一体であることを意識した法令等遵守・顧客第一主義に係る経
   営姿勢を一段と明確にした企業風土の醸成が求められる中、監査部では来年度の「監査基
   本計画」に第3線としてのコンプライアンス・リスク管理という視点を織り込み、第1線
   と第2線が適切に機能しているかを独立した立場から定期的に検証する態勢を整えてまい
   ります。
    さらに、2020 年度上期も引き続き、営業店監査で発見された問題点について、本部の当
   該関係部署が認識し適切に