8554 南日本銀 2020-09-30 16:10:00
2020年3月期における経営強化計画の履行状況について [pdf]

                                                           2020 年9月 30 日
各 位
                                      会 社   名    株式会社 南日本銀行
                                     代表者名        取 締 役 頭 取 齋藤 眞一
                                     (コード番号 8554 福証 )
                                     問 合 せ 先 総合企画部 経営企画グループ
                                      電話番号      (099)226-1117(直通)



               2020 年3月期における経営強化計画の履行状況について


 株式会社 南日本銀行(頭取 齋藤 眞一)は、「金融機能の強化のための特別措置に関する法
律」に基づき、2020 年3月期における経営強化計画の履行状況をとりまとめましたのでお知らせ
いたします。


進捗のポイント
1. コア業務純益
      資金利益が貸出金利息の減少等により計画を下回ったこと等から、コア業務純益は計画を
  下回りました。


2. 業務粗利益経費率
      経費(機械化関連費用を除く)は計画を下回りましたが、業務粗利益が資金利益の減少等
  により計画を下回ったことから、業務粗利益経費率は計画未達となりました。


3. 中小規模事業者等向け信用供与の残高・比率
      顧客の事業性の把握及び理解に基づく貸出を中心に、地元への融資に積極的に取り組んだ
  ことから、中小規模事業者に対する貸出残高・比率ともに計画を達成しました。


4. 経営改善支援先割合
      前年度計上した取組先に対し、スプレッドの維持に資する顧客価値の提供に努めた結果、
  経営相談は計画を上回りましたが、創業・新事業や担保・保証に依存しない融資が計画を下
  回ったことから、経営改善支援先割合は計画を下回りました。


※進捗状況の詳細につきましては、当行ホームページの「IR情報」の「経営強化計画」に掲載
 しております「経営強化計画の履行状況報告書」
                      (2020 年6月)のP4からP6及びP25 から
 P32 をご覧ください。 https://nangin.jp/ir/management_plan/post_12.html )
             (


                                                                    以   上
経営強化計画の履行状況報告書




     2020年6月
                        < 目 次 >

1. 2020年3月期決算の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・     1
(1)経営環境・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       1
(2)決算の概要(単体ベース)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       1
  ①資産・負債の状況
  ②損益の状況
2. 経営改善にかかる数値目標の実績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       4
(1)収益性を示す指標(コア業務純益・なんぎんKPI)・・・・・・・・・・・・・・・       4
(2)業務の効率性を示す指標(業務粗利益経費率・なんぎんKPI)・・・・・・・・・・       5
3.経営の改善の目標を達成するための方策の進捗状況・・・・・・・・・・・・・・・・・       7
(1)なんぎんKPI(コア業務純益)達成に向けた取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・     7
  ①貸出の質を高めるための方策について
  ②WIN‐WIN ネット業務契約先に対するビジネスマッチングのクロスセル解放について
(2)質の高い顧客本位のWIN-WINネット業務運営に向けた精緻化・・・・・・・・・・・・・   7
  ①WIN-WINネット業務の取組み状況
  ②顧客本位の業務運営に向けた踏み込み
  ③具体的な取組み
(3)業績評価方法の見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       10
  ①ビジネスモデル修正に対応する業績評価の改定
(4)適正な収益確保に向けた取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       10
  ①中小企業・事業者向け貸出
  ②リテール戦略の再構築
(5)適正な経営資源配分に向けた取組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       14
  ①人材の適正配置
  ②人事評価
  ③店舗戦略
(6)積極的な信用リスクテイクと資産の健全化の両立に向けた取組み・・・・・・・・・・       18
  ①信用リスクテイク
  ②事業再生・経営改善支援への取組み
4.従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する
  事項の進捗状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・        20
(1)業務執行に対する監査または監督の体制の強化のための方策・・・・・・・・・・・・       20
(2)リスク管理の体制強化のための方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       20
  ①統合リスク管理に関する事項
  ②信用リスク管理に関する事項
  ③市場リスク管理に関する事項
(3)法令遵守の体制の強化のための方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   22
(4)経営に対する評価の客観性の確保のための方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・    23
(5)情報開示の充実のための方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    23
  ①四半期情報開示の充実
  ②主として業務を行っている地域への貢献に関する情報開示の充実
  ③株主への取組み(IR含む)
5.中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化、その他の主として業務を行っている
  地域における経済の活性化に資する方策の進捗状況・・・・・・・・・・・・・・・・     25
(1)主として業務を行っている地域における経済活性化に資する方策・・・・・・・・・・    25
  ①経営改善取組先企業の数の取引先企業の総数に占める割合
  ②地域における経済活性化に資する方策
(2)中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策・・・・・・・・・・・・・    29
  ①中小規模事業者に対する信用供与の残高の総資産に占める割合および
   なんぎんKPI
  ②中小規模の事業者に対する信用供与の実施体制の整備のための方策
  ③担保・保証に過度に依存しない融資の促進、その他の中小規模の事業者の
   需要に対応した信用供与の条件または方法の充実のための方策
  ④中小規模事業者等向け信用供与円滑化計画を適切かつ円滑に実施するための方策
6.剰余金の処分の方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    33
(1)配当、役員に対する報酬及び賞与についての方針・・・・・・・・・・・・・・・・・    33
7.財務内容の健全性および業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策
  の進捗状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    34
(1)経営強化計画の適切な運営管理に向けた活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    34
(2)経営の透明性確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    34
(3)内部監査態勢の強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    34
  ①内部監査部門の態勢整備
  ②監査役・監査法人との連携
  ③経営計画運営管理の適切性および有効性の検証
(4)各種のリスク管理の状況および今後の方針等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    35
  ①流動性リスク管理
  ②オペレーショナルリスクへの対応
  ③マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策
1.2020年3月期決算の概要
(1)経営環境
    当期におけるわが国経済は、消費税率引上げや自然災害の影響を背景として、消費や住宅投資
   などの内需が下落したものの、雇用や所得環境の改善がみられるなど回復基調にありました。し
   かしながら、2020 年初頭から新型コロナウイルス感染症の拡大による影響を受け、先行きの不透
   明感が強まっているものと考えられます。
    一方、地域経済におきましても、底堅く推移してきた観光や増加傾向の公共投資などもあり、
   全体としては緩やかな回復を続けてきたものの、3 月終盤から新型コロナウイルス感染症拡大の
   影響により、個人消費が弱まり観光関連が低下するなど急速に弱まりつつあります。
   このような環境のもと、当行は、
                 「WIN-WINネット業務(新販路開拓コンサルティング) を
                                            」 「本業」
  と位置付け、
       「真の顧客本位の業務運営」を目指し、
                        「地元鹿児島県を中心とした地域経済活性化へ
  の貢献」を果たしていくために、
                「経営強化計画」に掲げた各種施策に取組んでまいりました。


(2)決算の概要(単体ベース)
 ①資産・負債の状況
  主要勘定のうち、2020年3月末の貸出金は、中小企業等貸出等を中心に増強を図った結果、残高ベ
 ースで前年比21億14百万円増加し5,694億74百万円となりました。有価証券は株式及び国債の減少等に
 より前年比60億7百万円減少し、782億17百万円となりました。
  預金は、公金預金を中心に前年比133億64百万円減少し、7,346億38百万円となりました。
  純資産は、
      「その他有価証券評価差額金」の減少を主因に前年比20億58百万円減少し、411億58百万
 円となりました。


  [資産・負債の推移(表1)](単体)                                            (単位:百万円)
                  '20年3月末                             '19年9月末     '19年3月末
                    実績        '19年9月末比 '19年3月末比         実績          実績
   資産               786,571     △12,168     △12,414     798,739     798,985
     うち貸出金          569,474       6,319       2,114     563,155     567,360
     うち有価証券          78,217      △2,853     △6,007       81,070      84,224
   負債               745,413      △9,659     △10,355     755,072     755,768
     うち預金           734,638      △8,733     △13,364     743,371     748,002
     うち社債・借用金            -              -         -          -           -
   純資産               41,158      △2,508     △2,058       43,666      43,216




                                 - 1-
②損益の状況
 資金利益は、貸出金利息及び有価証券利息配当金の減少等により、前年比2億94百万円減少し130億
49百万円となりました。
 業務粗利益は、資金利益の減少等により前年比2億56百万円減少し125億20百万円となりました。
 経費は、新システム移行関連費用の増加等により、物件費が増加したものの、移行により一時的に
増加した時間外費用の減少等により、人件費は減少したことから、前年比46百万円減少の101億78百万
円となりました。
 他方、一般貸倒引当金繰入額は、前年比1億62百万円増加し、1億21百万円となりました。
 以上により、業務純益は、前年比3億73百万円減少し、22億20百万円となりました。
 また、臨時損益は、不良債権処理費用の減少等により、前年比75百万円増加し、△10億40百万円と
なりました。
 この結果、経常利益は、前年比2億97百万円減少し、11億80百万円となりました。また、当期純利益
については、前年比2億25百万円減少し、6億53百万円となりました。


 [損益状況の推移(表2)] (単体)                                       (単位:百万円)
                  '20年3月期                       '19年9月期      '19年3月期
                     実績           '19年3月期比         実績           実績
  業務粗利益                12,520           △256         6,365        12,776
  [コア業務粗利益]          [12,235]         [△321]       [6,094]      [12,556]
    資金利益               13,049           △294         6,532        13,343
    役務取引等利益             △817             △27         △449          △790
    その他業務利益               288              65          281           223
    (うち国債等債券損益)         (284)            (65)        (271)         (219)
  経費                   10,178            △46         5,228        10,224
    (うち人件費)           (5,448)         (△161)       (2,765)       (5,609)
    (うち物件費)           (4,101)           (137)      (2,128)       (3,964)
  一般貸倒引当金繰入額              121             162        △201           △41
  業務純益                  2,220           △373         1,136         2,593
  [コア業務純益]            [2,057]         [△275]         [865]       [2,332]
  臨時損益                △1,040               75           3       △1,115
    (うち不良債権処理額)        (914)           (△97)          (23)       (1,011)
    (うち株式関係損益)         (△85)           (△70)        (△13)         (△15)
  経常利益                  1,180           △297        1,139         1,477
  特別損益                  △197            △193         △43            △4
  税引前当期純利益                982           △491        1,096         1,473
  法人税、住民税及び事業税            195              63         208           132
  法人税等調整額                 132           △330            8           462
  当期純利益                   653           △225          879           878




                           - 2-
 2020年3月末の金融再生法開示債権は、前年比4億円減少し、324億60百万円となり、金融再生法開
示債権比率についても、前年比0.09ポイント低下し、5.65%となりました。
 金融再生法開示債権のうち80.78%にあたる262億20百万円については担保・保証や貸倒引当金で保
全を行っております。また、部分直接償却を実施した場合の開示債権比率は5.11%となります。


 [金融再生法開示債権比率の状況(表3)](単体)                                    (単位:百万円、%)
                '20年3月末                                    '19年9月末     '19年3月末
                    実績         '19年9月末比 '19年3月末比             実績          実績
 金融再生法開示債権          32,460               685       △400      31,775      32,860
 総与信                574,329        6,377           2,224     567,952     572,105
 金融再生法開示債権比率            5.65         0.06          △0.09       5.59        5.74


  2020年3月末の自己資本比率は、前年比0.08ポイント低下し、8.21%となりました。


 [自己資本比率の状況(表4)](単体)                                                   (単位:%)
             '20年3月末                                       '19年9月末     '19年3月末
               実績         '19年9月末比             '19年3月末比      実績          実績

 自己資本比率          8.21            △0.23             △0.08       8.44         8.29




                                  - 3-
2.経営改善にかかる数値目標の実績
(1)収益性を示す指標(コア業務純益・なんぎんKPI)
 ①コア業務純益
  2020年3月期の貸出金の平均残高は、中小企業向け融資の残高が増加した一方、個人の不動産賃貸
 向け貸出等の減少により、前年比5億19百万円減少し、5,623億75百万円となりました。また、当行が
 取引先のお客さまへの顧客価値の提供に関する重要指標と位置付けている貸出金利回りは計画を
 0.109ポイント下回ったことから、貸出金利息は、計画に対して8億91百万円下回りました。
                                             (詳細につ
 いては、下記イ.に記載しております)預金においては、利回りが計画を0.025ポイント下回ったこと
 に加え、平均残高についても公金預金を中心として減少したことにより、預金利息は計画に対して1
 億81百万円下回りました。また、有価証券利息配当金については、計画を3億67百万円下回った結果、
 資金利益全体では計画を10億72百万円下回りました。
  役務取引等利益は、役務費用が計画を1億55百万円下回ったものの、役務収益は金融商品販売手数料
 を中心として計画を6億22百万円下回ったことから、計画を4億67百万円下回りました。
  一方、営業経費においては、人件費が計画を33百万円下回ったものの物件費は計画を1億33百万円
 上回ったことなどから、営業経費全体で計画を69百万円上回りました。
  これらにより、コア業務純益は、計画を16億5百万円下回る20億57百万円となりました。


 [コア業務純益の計画・実績(表5)]                                              (単位:百万円)
            '17/3期    '19/3期                        '20/3期
            実績(始期)     実績          計画          実績        計画比          始期比

   コア業務純益     3,651     2,332          3,662   2,057         △1,605   △1,594

  ※コア業務純益=業務純益+一般貸倒引当金繰入額-国債等債券関係損益

  コア業務純益については、長期経営計画で計画する貸出金の先数・残高をベースとして、事業性評
 価を必要とする事業者に対する貸出に注力するなど、金融仲介機能の発揮に資する取組みを実践する
 とともに、顧客本位の業務運営に徹することによって中長期的収益の向上を図る計画としております。


  イ. 貸出金利息について(管理会計システムより算出)
     貸出金利息については、計画を8億91百万円下回りました。貸出金利回りの低下を主因として、
    事業性貸出金の利息が計画を1億85百万円下回ったことに加え、アパートローン(保証会社保証
    付)や消費者ローンなどの個人向け貸出の利息も計画を7億10百万円下回ったことが要因となり
    ます。


 ②なんぎんKPI(コア業務純益)
  当行は、コア業務純益を構成する収益のうち長期経営計画をベースに計画する「重点先事業者向け
 貸出から得られる貸出金利息」を当行が目指すべき収益と位置づけ、顧客価値の提供に裏付けられた
 収益性を示す当行独自の「なんぎんKPI(コア業務純益)
                           」として、フォローアップしております。
  2020年3月期は、なんぎんKPI(コア業務純益)は、計画を3億89百万円下回る74億59百万円とな
 りました。


                                - 4-
  また、2018年9月期より従来のなんぎんKPIと併せて、地公体向け分を除外したなんぎんKPI
 の計画を本計画期間中に追加設定し、下記実績と始期比を併記するとともに、地公体向け分を除外し
 た計数による管理運用を行っています。


 [なんぎんKPI(コア業務純益)の計画・実績(表6)]                                                         (単位:百万円)
                   '17/3期      '19/3期                                 '20/3期
                  実績(始期)         実績                計画           実績            計画比           始期比

   なんぎんKPI           7,701            7,500            7,848       7,459          △389       △242

   なんぎんKPI
                     7,568            7,403            7,728       7,379          △349       △189
   (除く地公体分)
 ※「重点先事業者」は、長期経営計画で「事業性評価を必要とし地元鹿児島県の商流や雇用に貢献のある
  先」と定義する事業者のこと(一般先事業者を除く事業者)。
 ※「一般先事業者」 貸出金が
          は、   「実質消費性ローン(不動産賃貸業者、太陽光売電事業者向けの貸出金)」
  のみの事業者のこと。
 ※「重点先事業者の貸出金利息」=「重点先事業者貸出残高」×「計画(実績)利回」

(2)業務の効率性を示す指標(業務粗利益経費率・なんぎんKPI)
 ①業務粗利益経費率
   2020年3月期における機械化関連費用を除く経費は、計画を3億54百万円下回る80億35百万円とな
  りました。また、業務粗利益については、貸出金利息及び有価証券利息配当金の減少等により資金
  利益が計画を10億72百万円下回ったことから、計画を20億51百万円下回る125億20百万円となりまし
  た。
   その結果、業務粗利益経費率は、計画を6.60ポイント上回る64.17%となりました。
   今後も引き続き、中小企業等向け貸出の増強等によって資金利益の拡大を図ることで、業務粗利
  益の改善に努めていくと同時に、経費面(分子)についても、金融仲介機能発揮に支障が生じない
  ように、WIN-WINネット業務ならびにリテール部門の顧客本位の業務運営を遂行していくための必要
  な人材の確保を行いつつ、適正なコスト配分を行ってまいります。


 [業務粗利益経費率の計画・実績(表7)]                                                (単位:百万円、%)
                 '17/3 期     '19/3期                            '20/3期
                 実績(始期)       実績          計画              実績          計画比          始期比
        経費
                   8,366       8,423           8,389       8,035        △354         △331
   (機械化関連費用除く)

       業務粗利益      14,506      12,776      14,571          12,520     △2,051        △1,986
    業務粗利益経費率       57.67       65.93           57.57       64.17           6.60      6.50
  ※業務粗利益経費率=(経費-機械化関連費用)/業務粗利益
  ※機械化関連費用は、減価償却費、機械賃借料等を計上


 ②なんぎんKPI(OHR)
  業務の効率性を示す指標としては、
                 「重点先事業者の貸出金利息」を分母とし、機械化関連費用を除
 く経費を分子として業務粗利益経費率(OHR)を算定します。これに基づき算出される指標を当行

                                        - 5-
独自の「なんぎんKPI(OHR)
               」として、フォローアップしてまいります。
 2020年3月期は、機械化関連費用を除く経費は計画を3億74百万円下回ったものの、重点先事業者の
貸出金利息は計画を3億89百万円下回る74億59百万円となりました。
 その結果、なんぎんKPI(OHR)は、計画を0.54ポイント上回る107.44%となりました。


[なんぎんKPI(OHR)の計画・実績(表8)]                                    (単位:百万円、%)
                '17/3期    '19/3期                      '20/3期
                実績(始期)     実績         計画           実績       計画比       始期比
      経費
                  8,366     8,407          8,389   8,015       △374    △351
  (機械化関連費用除く)

   なんぎんKPI
                  7,701     7,500          7,848   7,459       △389    △242
   (コア業務純益)

   業務粗利益経費率      108.64    112.09     106.90       107.44      0.54   △1.20

 ※分母は「重点先事業者の貸出金利息」(なんぎんKPI(コア業務純益))とする。
  ・重点先事業者の貸出金利息=「重点先事業者貸出残高」×「計画(実績)利回」
 ※分子は「機械化関連費用を除く経費」とするが、
  ・SBK新システム移行関連費用(増員に伴う人件費、コンサル料等)
  ・顧客本位の業務運営に資する費用(リテール部門におけるWEB化費用等)については、経費実績か
   ら除くのもとする。




                                    - 6-
3.経営の改善の目標を達成するための方策の進捗状況
 (1)なんぎんKPI(コア業務純益)達成に向けた取組み
   当行は、顧客本位の業務運営に則り、投資信託の解約益や預かり資産販売に依存しない形で目指
  すべき収益として、「重点先事業者の貸出金利息」を当行独自のKPIとしてフォローアップして
  います。2020年3月期は、計画を3億89百万円下回ったことを重く受け止め、引き続き、次の取組み
  により地元中小企業を中心とした円滑な金融支援を通じて「重点先事業者の貸出金利息」の増強に
  努めてまいります。
   ① 貸出の質を高めるための方策について
    前期創設したQTシートについては、地元の金融包摂を担いながらも、他行と融資取引のある
   お客さまの約定金利の漫然とした低下の影響で、渉外担当者が主観的に考える「金融包摂にふさ
   わしい最優遇金利水準」が低下し続けることを発見したことから、満足なスプレッドを確保でき
   るに足る顧客価値提供と相関した貸出となっているか否かを見極める項目を網羅し、「貸出の
   “質”」のチェック機能を備えた新規実行貸出の質評価ツールとして活用しております。
    当期においては、全新規実行貸出について、稟議時にQTシートの作成を求め、その結果、質
   が高いとは言えない貸出実行がなお残高ベースで半分を占めることが判明し、更なる顧客価値の
   提供が必要であると総括いたしました。


   ②WIN-WIN ネット業務契約先に対するビジネスマッチングのクロスセル解放について
    当行ではこれまで、機動性に優れ、手数料を都度回収する他行並のビジネスマッチングのクロ
   スセルを、成果報酬として一括払いする一般型 WIN-WIN ネット業務との混同を回避するために、
   抑制していました。
    しかしながら、貸出金利回り低下が顕著となりはじめている要注意先上位以上の販路開拓支援
   先に対しても一定の顧客価値提供を与えていることがアンケート結果より判明したことから、当
   行自身の収益性向上を企図し、一般型 WIN-WIN ネット業務契約先事業者に対して、十分な説明責
   任を果たした上で、クロスセルを解放いたしました。2020 年3月末現在、84 先とビジネスマッ
   チング契約を締結、12 先に対して 91 百万円の売上高改善実績を計上しております。


(2)質の高い顧客本位のWIN-WINネット業務運営に向けた精緻化
   ①WIN-WINネット業務の取組み状況
    当行は、第二次経営強化計画以降、当行独自のリレバンモデルとして「WIN-WINネット業務(新
   販路開拓コンサルティング)(以下「同業務」)」に取組んでおります。
    また、第三次経営強化計画からは、
                   「事業再生型WIN-WINネット業務」に注力してまいりました。
    さらに、「売上付与」によって顧客満足を提供する同業務の役割を明確にして、その他の顧客
   満足提供に煩わされることなく同業務の推進管理に専念するため、
                                「WIN-WINネット業務部」を2017
   年7月に設置しました。
    一方、同業務に取組む上で必要な行員のスキル向上については、外部コンサルタントによるセ
   ミナーや各種研修時における説明会を実施しております。また、自主勉強会「RM統一勉強会」
   を定期的に開催しており、業界特性や事業性評価(経営課題も含む)等の理解に努めております。
    こうした取組みの結果、2020年3月末で1,005先と業務委託契約を締結中であり、売上高改善実
   績累計は72億91百万円(売上改善した契約先数は778先)となっております。また、2020年3月期

                         - 7-
   においては、売り手が重点先事業者となるビジネスマッチング契約を84先と締結し、販路開拓支
   援に努めております。


[WIN-WINネット業務の実績推移(表9)]                                   (単位:先、百万円)
              項 目         '17/9       '18/3    '18/9    '19/3    '19/9       '20/3
             契約先合計         1,639       1,612    1,254    1,239    1,097       1,089
  契約        業務委託契約締結先      1,639       1,612    1,254    1,239    1,033       1,005
         ビジネスマッチング契約先             -       -        -        -        64          84
          売上高改善実績累計        5,091       5,595    6,166    6,651    7,050       7,382
            業務委託契約締結先      5,091       5,595    6,166    6,651    6,974       7,291
         ビジネスマッチング契約先             -       -        -        -        76          91
  成約
        売上改善した契約先数累計         621         672      717      747      776         790
            業務委託契約締結先        621         672      717      747      768         778
         ビジネスマッチング契約先             -       -        -        -            8       12
 ※ビジネスマッチング契約先については、売り手が重点先事業者となる先。


  イ.WIN-WINネット業務を活かした地方創生への取組みについて
   地方創生には、地元中小企業が強くなり、安定した雇用が創出されることによる定住人口の増加
  に加え、地域資源を活用した観光分野の情報発信による交流人口の増加が必要であると考えており
  ます。そのためには、本業として取組んでいるWIN-WINネット業務を活用した地域事業者の安定的な
  トップラインの拡大を図るとともに、域外への情報発信にも積極的に取組んでまいります。
   また、商談会参加も難しい鹿児島県の取引先のお客さまの商品サンプルを保管して、積極的に首
  都圏の販売見込先等に紹介できるように、東京支店に業務用冷蔵庫を常設しております。
   当期の県外への売上高改善実績(鹿児島県内のWIN-WINネット業務契約先の鹿児島県外店舗での売
  上高改善実績)は、12件4百万円となりました。


  ロ.地方創生への取組みについて
   鹿児島県内の12自治体に有識者メンバーとして参加しております。また、「空家対策事業に関わ
  る業務連携協定」や「地方創生に係る相互協力及び連携に関する協定」(包括連携)を締結し、移
  住者向けローン等の商品を提供しております。今後も本支店一体となって地方創生への取組みを行
  ってまいります。


  ハ.豊和銀行及び宮崎太陽銀行との販路開拓支援分野における業務提携
   2018 年5月、3行が地盤とする九州南東部(鹿児島、大分、宮崎県)の面的地域経済活性化への
  貢献を目的として、
          「(3行による)お取引先事業者の販路開拓支援分野における業務提携」を締結
  いたしました。
   2020 年3月までに、計 15 回(web 会議・打合せ含む)にわたり、3行による販路開拓に関するシ
  ステムの共同開発会議を行い、同分野でのビジネスモデルの難易度に相応しい「業務フロー・ノウ
  ハウの共有」「システムの共同利用」及び「県境を越えた新販路情報の共有」を有効且つ効率的に
       、


                           - 8-
 機能させるためのシステムの要件定義などの協議・準備を進めてまいりました。当システムについ
 ては現在構築中であり、上記対応を踏まえたシステム更改を予定しております。
  今後も、
     「自力では売上が増加しない商品・サービスを抱えて悩む各行のお取引先事業者の売上改
 善に寄与する」という本提携趣旨の具現化に向け、協議・準備を引き続き進めてまいります。


②顧客本位の業務運営に向けた踏み込み
 WIN-WINネット業務が契約先から個々のニーズへ対応した業務委託契約を受けているマーケットイ
ン型業務であるという原点に立ち返り、質の高い「顧客本位の業務運営」を実現して、より実効性あ
る取組みとしていくため、ビジネスモデルの修正・精緻化に取組んでまいりました。
 具体的には、同業務は当行独自のリレバンモデルとして取組んできましたが、当行が初めて取組むマーケ
ットイン型業務という難易度の高さに加えて、行内において同業務に関する拡大解釈や類似業務との混同も
みられたことから、手間のかからない類似業務に注力することで「顧客本位の業務運営」に逆行することのな
いように、同業務及び類似業務の定義を明確化しました。これによって、当行の営業推進にかかる企業風土
の改善を図ることも企図しております。


③具体的な取組み
  本計画において中心施策として取組む「事業再生型WIN-WINネット業務」の実効性を高めるために、
 下記のような具体的な取組みを実施しております。
 イ.地域経済活性化支援認定店制度
  WIN-WINネット業務は契約先との業務委託契約により受託しているコンサルティング業務である
 ことに鑑みて、当行の同業務への取組みが不芳な場合は、当行の同業務の実績が低迷するだけでな
 く、それぞれの契約先ニーズに応じて業務委託を行った契約先に対してベストプラクティスのコン
 サルティングとなっていないことになり、顧客本位の業務運営が損なわれることが懸念されます。
  その対応策として、特に「事業再生型WIN-WINネット業務」への取組みが良好な店舗を「地域経済
 活性化支援認定店」として開示する一方で、取組みが不芳な店舗は対応能力が著しく不足する店舗
 として認定せず、行内の業績評価上のペナルティにとどまらず、適切なパブリックプレッシャーの
 もとに、対応能力改善インセンティブを付す制度を導入いたしました。2018年3月末は、「事業再
 生型WIN-WINネット業務」の対応能力が著しく不足する店舗である「非認定店」を2ヶ店選定し、遂
 行能力の改善に向けたサポートを実施致しました。その結果、2018年9月末基準以降、「事業再生
 型WIN-WINネット業務」の定着が図られており、全店が「認定店」となっております。
  地域経済活性化認定店制度については、全店が認定店となっている状態が継続していることを踏
 まえ、2019年度上期より運用を一旦休止しており、当期も再開しませんでした。


ロ.事業性評価プロセスの改定と商品サービス別ヒアリングシートの作成
  事業再生型WIN-WINネット業務を遂行するためには、高い事業性評価能力が不可欠であるために、
 鳥の目の事業性評価ともいえる「取引先事業者の事業性を大局的にとらえる事業性評価」だけでは
 なく、虫の目の事業性評価である「商品サービスに関する事業性の問題点」を深掘りできる商品サ
 ービス別ヒアリングシートを導入しました。これは同時に商品サービスの販売用カタログとしても
 活用し、これを全店に展開することで当該案件の推進を全店で支援できる態勢を整備しております。
  また、これまでのWIN-WINネット業務への取組みにおいて判明した改善すべき案件取扱事務(案件

                       - 9-
  承認手続き、案件交渉経過の記述、入金エビデンス確認)を厳格化しています。
   加えて、顧客満足に繋がる継続的な売上付与を実現するために、膨らみすぎた契約先数の適正化
  も進め、2020年3月末までに、実質的に未稼働と判断される契約先509先に対し、合意解約406先、
  業務停止49先、売上高改善23先の計478先の対応を行ったことなどにより、2017年9月末に1,639先
  あった契約先数は1,005先となりました。


(3)業績評価方法の見直し
 ①ビジネスモデル修正に対応する業績評価の改定
  イ.現行業績評価制度の課題と今後の方針
   本計画では、これまで曖昧であった各種定義の明確化、これに基づき中長期的収益を上げられる
  適正なポートフォリオの構築を目指すとともに、WIN-WINネット業務についても質の高い顧客本位を
  実現する業務としてビジネスモデルを修正しました。
   しかしながら、これまでの業績評価制度は短期的な実績向上に偏重した評価方法となっており、
  長期経営計画やモデル修正後のWIN-WINネット業務運営で求められる評価方法との齟齬が生じてい
  る部分もみられたため、2017年9月にこれに沿った適正な見直し・変更を行いました。
   具体的には、業績評価制度全体について、最上位規程である「業績評価規程」を新たに制定し、
  これまでの業績評価4部門(「収益」「基盤」「業容」「WIN-WINネット業務」)における各担当部
  署の責任及び計画の策定根拠に関する事項を明文化するとともに、業務計画策定から業績表彰店舗
  の決定までを取締役会で協議・決定することでガバナンスの効く態勢としました。
   これにより、これまでの短期的な財務会計上の計数を単純に手分けして追わせるような形式を見
  直し、顧客本位の業務運営や事業性評価をより重視するなど、営業現場が中長期的視点から経営方
  針に即した行動が取れることを目指してまいります。
   また、当行独自の“なんぎんKPI(中小規模事業者等向け貸出残高=重点先事業者残高)”についても、
  不適切な実績の混在を防止するため、2017年度下期の業績評価より、重点先事業者の先数や残高の増加
  内容を十分に精査した上で評価を実施しております。2019年度上期は、質の高い貸出推進の重要性を踏
  まえて、安易な残高拡大を抑止するような管理指標を導入いたしました。
   なお、毎期実施している業務管理表彰(旧名称)についても、2018年度より、名称を「業務品質
  表彰」に改め、業績評価表彰とは別の観点から、RM行動指針(RM行動指針については2018年6
  月履行状況報告書ご参照)に基づく営業店における業務運営の品質向上を評価することとしており
  ます。
   2019年度下期からは顧客価値の提供から中長期的な収益(共通価値の創造)の増加に繋げること
  を目的とした表彰基準への見直しを行いました。具体的には表彰対象項目として「業容」を削除し、
  「WIN-WINネット業務」項目を1次判定、
                       「収益」項目を2次項目、
                                  「基盤」項目を3次判定としまし
  た。
   今後も、当行のビジネスモデルを営業店が遂行するインセンティブにつながる表彰基準とするべ
  く、見直しを図ってまいります。


(4)適正な収益確保に向けた取組み
 ①中小企業・事業者向け貸出
  「中小企業・事業者向け貸出」にかかる戦略については、地域経済活性化に対する貢献度合いを勘

                          - 10-
案した分別管理ルールに基づき、地域の雇用や商流に関わりながらも厳しい経営環境におかれた事業
者に対して、事業性評価を重視した貸出を行っていくことを基本方針として取組んでおります。
 具体的には、不動産賃貸専業や太陽光売電専業などに対する貸出については実質消費性貸出として
分別管理し、その他の事業性評価を要する事業者向け貸出にこれまで以上に注力し、特に厳しい経営
環境におかれた事業者に対しては、事業性評価を重視した中小口での貸出を積極的に行うほか、事業
再生型WIN-WINネット業務を活用した本業支援を全行挙げて取組んでおります。
 また、当行は貸出先数の増加を伴う形での「中小企業・事業者向け貸出」の増加に努めております
が、重点先事業者が他行からの肩代わりや対話機会を持つことなく約定完済によって自然に減少して
いくことも懸念されます。これらに対応するため、貸出金残高の減少先やリレーションが希薄になっ
ている先を「アラーム先」として認識し、対話の頻度及び濃度を高めていく活動を展開してまいりま
した。その結果、事業所貸出先数については、前期比増加に転じました。
 併せて、WIN-WINネット業務により事業性評価を定着させることで「中小企業・事業者向け貸出」増
加へと繋げていく方針です。


 イ.地域シェアの向上と事業所貸出先数の増加
  当行の鹿児島県内における預貸金シェア及び事業所貸出先数の推移を見ますと、2019年3月末現
 在、預金シェアは6.7%(2018年3月末比±0ポイント)、貸出金シェアは10.1%(2018年3月末比
 △0.2ポイント)となっております。
  事業所貸出先数は、2020年3月末現在、7,998先となっており、今後も取引先事業者のお客さまの
 支援に加えて、地域経済発展に繋がる成長産業向け貸出にも注力することで資金需要の創出に努め
 てまいります。
  貸出シェアについては、当行では一般先向け貸出として積極的には取組んでいないアパートロー
 ンの影響除去に苦慮しますが、WIN-WINネット業務及び経営支援活動による資金需要創出に努め、重
 点先事業者を中心とした取引先数の増加や重点先ベースでの正味の地域シェアの拡大を図ってまい
 ります。




                        - 11-
[鹿児島県内預貸金シェアの推移(表10)]                                                                (単位:%、億円)
           '13/3末        '14/3末        '15/3末           '16/3末        '17/3末         '18/3末      '19/3末
            実績            実績               実績            実績               実績          実績          実績
当行貸出金シェア       11.1          11.2             11.1          11.0           10.6         10.3        10.1
県内貸出残高       40,897       42,104           43,880          45,634         46,973      48,381      49,652
当行預金シェア          6.5            6.6           6.7            6.8            6.7          6.7         6.7
県内預金残高       86,278       88,085           89,745          90,612         93,466      95,189      96,612
                                                            (出所:金融マップ(金融ジャーナル))


[事業所貸出先数の推移(表11)]                                                                             (単位:先)
           '15/3末      '16/3末     '17/3末        '18/3末       '18/9末       '19/3末      '19/9末     '20/3末
            実績          実績            実績           実績         実績            実績         実績         実績
事業所貸出先数     7,786       8,154         8,172        8,267       8,261        7,882       7,936      7,998
 うち鹿児島県内    6,860       7,185         7,209        7,309       7,285        6,939       7,038      7,089
 うち鹿児島県外      926         969          963           958            976        943         898       909


  ロ.収益管理態勢強化による収益力向上への取組みについて
   2010年4月の収益管理システム導入後、高度化を図るシステム更改を実施しており、取引先別・
  事業別には及びませんが、属性別・部店別・業種別・格付別などの各セグメントでの収益の可視化
  が可能となりました。WIN-WINネット業務契約先と未契約先の利回り差や信用VaRのセグメント別
  での算出(地元・重点先事業者)など、本システム等の活用により、中長期的視野に立った収益力
  向上を図ってまいります。
   今後、鹿児島県全体でも、貸出金利息は、減少していく傾向が継続するものと想定されますが、
  上記の多面的かつ詳細な分析に基づく、小口分散・中小企業支援を中心としたビジネスモデルの構
  築を図ることで、地域金融機関としての役割を果たしてまいります。


 ②リテール戦略の再構築
  2019年6月、営業推進部門における更なる“お客さま本位の業務運営”かつ効率的業務運営とフィ
 ンテック等の新たな業務への適切な対応を企図し、「リテール戦略部」を新設しました。
  その一方で、当地では少子高齢化や大都市圏への人口流出が続く中、人口動態における高齢者比率
 も高まっており、これまで以上にライフプランやエピソード等希薄化したコミュニティの繋がりを復
 元しうる各種情報を適切な情報管理の下に活用した上で、当行とのリレーションの強化を図っていく
 ことが重要であると考え、「高齢者取引熟知率向上運動」を展開しております。
  この地道な「高齢者取引熟知率向上運動」が、調達基盤の要となる年金取引の安定及び金融商品販
 売におけるニーズ取得の増加に繋がったと考えており、今後も、高齢化が進む当地では「地縁・血縁」
 を生かしたきめ細かい金融サービスの提供を実施してまいります。ここでいう熟知率とは、70歳以上
 の高齢者で一定の預金残高以上の先のうち、不測の事態に連絡が可能な家族・親族を本人に確認し、
 把握している先の割合をいいます。




                                           - 12-
イ.高齢化進展への対応
 鹿児島県内の人口動態では、将来、人口が大きく減少することが予想されますが、高齢者層は一
定割合を維持することから、適切なリレーションを維持していれば、個人預金の吸収に大きな変化
はないものと考えております。
 しかしながら、高齢化が進む中で「地縁・血縁」といった地域コミュニティの希薄化と若年層の
人口流失等を要因に独居高齢者の増加も予想され、預金調達基盤の脆弱化が危惧されます。こうし
た中、当行では高齢者の生活背景を含めて熟知する活動を展開しており、地域・家族との接点にな
ることでより強固な調達基盤の構築を図っております。


ロ.若年層顧客への対応
 若年顧客層は高齢者層とは異なり、非対面や利便性を重視する傾向があることから、非対面チャ
ネルの強化・充実を図っております。具体的には、スマホで銀行窓口と同様のサービスを提供すべ
く、2017年5月に「なんぎんスマホアプリ」、2018年3月には、スマホで住宅ローンの申込みを勤
労層で来店が難しいお客さまが「いつでも」「どこでも」アプローチできるチャネルを開設しまし
た。
 また、フィンテック対応として、電子決済等代行業者との連携を最優先に、マネーフォワード、
マネーツリー、freee、Zaim、弥生、ソリマチ、SBIビジネス・ソリューションズ等の
7社とAPI連携し、それぞれの業者が持つ新しい金融サービスを利用いただける環境を整えまし
た。今後も、こうした新しい金融サービスをお客さまにご利用頂けるように積極的に対応してまい
ります。


ハ.預り資産
 2017年8月に策定しました『「お客さま本位の業務運営」に関する基本方針』の定着に向け、お
客さまのニーズや利益に真に適う取組みをより一層実践していくため、金融商品の販売知識やコン
サルティング能力を一定以上有した行職員を「資産運用アドバイザー」として認定・育成する「金
融商品行内認定制度」を新設し、認定者と本部専門員を中心に、より親身にお客さまの資産運用相
談を受けられる体制といたしました。
 また、金融商品ニーズはあっても、銀行窓口に「行けない・行かない」というようなお客さま(若
年・勤労層)に対しては、ネット証券と連携し幅広い商品ラインナップの中から自由に選択できる
環境を構築したことで、様々な商品の提供が可能となりました。今後も非対面チャネルの拡大に取
組み、お客さまの利便性向上に資するサービス提供に努めるとともに、丁寧な説明・アドバイス等
が求められる窓販においては、本部専門員によるサポートの強化を図り、お客様本位の業務運営の
更なる定着化を図っていきたいと考えております。
 取組み状況の「見える化」の観点から公表している、お客さま本位の業務運営の「比較可能な共
通KPI(2019年3月末実績)」では、76.7%のお客さまが運用損益率でプラスとなり、公表した
主要行・地域銀行の中でも良好な結果となりました。
 こうした取組みについては、一定の成果が挙がったものと考えていますが、更なる「お客さま本
位の業務運営」に向けて取組んでまいります。




                     - 13-
  ニ.個人預金
   個人預金の残高は、2020年3月末現在5,280億円となり、前年比約10億円の減少となりました。定
  期性預金については、高利回り商品などによる過度な獲得を実施していないことなどから、前期比
  176億円の減少となりましたが、流動性預金については、年金振込や給与振込の獲得に注力したこと
  などにより、166億円増加しました。
   今後もお客さまのニーズにマッチし、喜ばれる商品をタイムリーに提供することで安定した預金
  調達基盤の構築に努めてまいります。


[個人預金残高実績(表12)](国内)                                                             (単位:百万円)
             '17/3期        '18/3期         '18/9期        '19/3期         '19/9期        '20/3期
              実績             実績            実績            実績             実績            実績
 個人預金残高       517,250        529,900       530,302        529,115       532,562        528,080
    内流動性残高    150,358        162,624       166,990        174,798       180,382        191,441
    内定期性残高    366,892        367,276       363,311        354,316       352,180        336,639
 ※外貨預金含む


(5)適切な経営資源配分に向けた取組み
 ①人材の適正配置
  当行はこれまでに、WIN-WINネット業務に注力できる態勢を整備するため、営業現場のサポートに資
 する本部機構改革や人事異動を実施してまいりました。
  2017年7月、これまで同業務における役割に応じて配置していた部署を統合して、「WIN-WINネット
 業務部」を新設し、更に営業推進部門について更なる“顧客本位の業務運営”を図るため、2019年6
 月にサービスの対象顧客ごとに「事業者向け営業推進部門」と「個人等向け営業推進部門」の2部門
 制とする営業本部を設置しWIN-WINネット業務部と営業推進部門を統合・再編しました。事業者向けは
 WIN-WINネット業務部、個人等向けはリテール戦略部が担当し、両部門それぞれが専門性を高めるとと
 もに、協働して営業推進上有効な企画及び施策を打ち出していくことにより、営業店の業績向上を目
 指していく態勢としています。


  また、新勘定系システムへの移行のために一時的に増加した本部人員の一部を営業店に再配置して
 おりますが、採用環境が厳しいこともあり2019年4月は39名の新規採用に留まっているため、営業店
 人員を大幅に増やすには至っていません。次年度以降も計画的な採用を続け適正人員の確保に努める
 とともに、顧客本位の業務運営に向けた人材育成を行ってまいります。


   [従業員数の推移(表13)]                                                                   (単位:人)
             '15/3      '16/3   '17/3     '18/3      '18/9   '19/3     '19/9      '20/3
                                                                                          前年比
              実績        実績      実績         実績        実績       実績        実績        実績
   期末従業員数      896        892       907        916     943       911      931       905       △6
    行員         621        631       645        658     688       660      684       660        0
    嘱託・パート     275        261       262        258     255       251      247       245       △6



                                       - 14-
 [従業員数の内訳(表14)]                                                             (単位:人)

              '15/3   '16/3   '17/3   '18/3      '18/9   '19/3   '19/9   '20/3
                                                                                 前年比
              実績      実績      実績       実績        実績      実績       実績      実績
     期末行員数      621     631     645        658     688     660     684     660     0
     (うち本部)     127     123     128        151     148     140     135     139    △1
  (うち営業店)       494     508     517        507     540     520     549     521     1
 従業者(行員+臨時)     896     892     907        916     943     911     931     905    △6
     (うち本部)     237     229     242        267     268     260     256     255    △5
  (うち営業店)       659     663     665        649     675     651     675     650    △1


イ.「女性」の活躍促進
 当行では、女性の働きやすい環境構築や育児を行う職員の仕事と家庭の両立サポートに努め、育
児休暇の積極的取得を進めたこと等により、2020年3月末時点で18名の女性行員が育児休暇を取得
中であり、今後も増加する見込みです。
 また、女性の能力を積極的に経営に反映できる職場環境の整備にも努めており、女性活躍推進法
を踏まえ掲げた「能力開発の促進により2020年3月までに役席者の女性割合を35%まで引き上げる」
目標については、2020年3月末時点で37.5%となりました。現在は管理職を増やす段階にあり、今
年度は支店長を2名任命しました。積極的に活躍の場を広げ、融資・渉外・本部専門職などの経験
を積むことにより将来の管理職への登用に繋げてまいります。


ロ.従業者の多能化
 内勤行員の渉外担当者への係替えによる多能化は、10年以上前より実施済みであり、採用段階で
説明していることから、不本意な係替えによるES低下のようなことは生じないようになっておりま
す。
 また、渉外行員や内務行員においては、WIN-WINネット業務を中心とした事業者へのコンサルティ
ング業務や基盤取引拡大・資産運用相談を中心としたリテール部門など役割の明確化を図り、全員
営業態勢に努めております。


ハ.人材育成について
 当行の職員の年齢構成において、入行5年以内の若年行員やパート行員の割合が増加しており、
各業務分野に関する基本業務や専門知識の習得に向けた研修カリキュラムを整備するなど、教育体
制の充実を図っております。
 また、本計画における「WIN-WINネット業務」及び「RM(リレーションシップ・マネージャー)
行動指針」について、全行員が認識する必要があると考えており、各階層別研修における必須のカ
リキュラムとして取り入れ、業務の内容や成功事例の共有化を図っております。


ニ.人件費について
 人員配置の見直しを行い業務効率化と各人の平均残業時間を可視化したことにより時間外手当を
抑制できたことから、人件費については計画を下回りました。

                                   - 15-
 [人件費の計画・実績(表15)]                                                   (単位:百万円)
               '17/3期    '18/3期    '19/3期        '19/9期            '20/3期
                実績        実績        実績            実績       計画       実績      計画比
 人    件    費     5,433     5,506     5,609         2,765   5,481    5,448    △33
     給与          3,289     3,377     3,472         1,711   3,313    3,345     32
     賞与            705       706       719           364     695      721     26
     退職給付費用        240       211       190            88     222      177    △45
     その他         1,199     1,211     1,227           601   1,251    1,204    △47
  ※退職給付費用には勤務費用、利息費用、期待運用収益を合算したものを記載しております。


 ホ.物件費について
  SBK新勘定系システム更改関連投資やサブシステム等の機械化関連投資に加え、お客さまの利
 便性向上に向けた投資として、店舗内外の計画的な補修や看板改修、福岡支店及び宮崎支店の移転
 リニューアル等を実施しました。
  一方で、消耗品費・給水光熱費(LED照明化)・警備料等、金融仲介機能の発揮に支障のない
 範囲で、全ての費目について必要性や費用対効果を検討し継続した見直しを行っておりますが、新
 システム移行関連費用の増加などにより、2020年3月期の物件費は計画を1億33百万円上回りました。
  従来から、支出の妥当性・必要性の検証強化等に取組んでおり、また、サブシステムの必要可否
 の再検証、店舗外ATMや土地建物賃借料の見直しなどにも取組んでおりますが、当行の購買によ
 る地元事業者(地域の商流)の底支えという役割にも十分配慮しながら、今後も継続的な経費(広
 告費、消耗品費、図書費等)の見直し、適正化を図ってまいります。
  また、業務効率化による生産部門への人員の適正な配置及びCS向上を企図し、2019年5月にBPRに
 関するプロジェクトチームを組成いたしました。具体的取組みとして、現行業務(本部・営業店)
 について、頻度・濃度・必要性・収益効果等を踏まえた弾力化・簡素化・集中化・システム化など
 の見直し可能性のある業務の抽出を実施し、優先順位の高いものから具体的な対応案の策定を行い、
 実行を図っております。


[物件費の計画・実績(表16)]                                                    (単位:百万円)
               '17/3期    '18/3期    '19/3期        '19/9期            '20/3期

                実績        実績        実績            実績       計画       実績      計画比

     物件費        3,761      3,830    3,964         2,128    3,968    4,101    133


 へ.事務管理態勢の効率化
 ➢ 事務センターの機能促進による営業店事務の本部集中化
     当行では、事務管理態勢の抜本的改革を掲げ、全員営業態勢確立に向けて「営業店事務の本部
  集中化」と「各種事務規程の簡素化」に取組んでまいりました。
     営業店事務の本部集中化の取組みとしては、2019年7月に福岡支店を先行店として融資事務(実
  行)の完全集中化に向けた取組みを開始し、その取組みを9ケ店に拡大しました。その他、AT
  M機ジャーナルの本部集中管理や不渡手形オペレーション、マイナンバー(個人番号)の登録・


                                         - 16-
  管理などを実施しております。
   引き続き、事務規程・事務フローの見直し・整備を実施し、営業店・本部集中部署の更なるリ
  スク軽減と効率化の促進を図ってまいります。


 ➢ 事務量の削減(行員処理から顧客処理へのシフト)
   営業店の事務量削減のため出納事務の機械化(オープン出納機、現金バス等)とATM多機能
  化(全店に通帳繰越機能を導入)に取組んでおります。出納事務の機械化については、事務量の
  多い店舗へ段階的に導入を進めた結果、2020年3月末現在で、オープン出納機は32ヶ店、現金バ
  スは44ヶ店の設置となりました。硬貨入出金機能については、マネー・ローンダリング及びテロ
  資金供与対策の一環として、2020年3月末をもって、ATMでの現金振込、硬貨の入出金機能を停止
  しました。
   事務の削減としては、相続事務の簡素化及びATM関連業務の軽減を実施するとともに、事務
  リスクの高低を考慮し、営業店事務の効率化を図っております。
   今後もオペレーショナル・リスクの適切な管理と、営業店事務の削減・効率化を両立させてい
  く方針であります。


②人事評価
 WIN-WINネット業務によってお客さまに売上を付与することは困難で手間のかかる業務であること
から、この業務に行員のインセンティブを振り向けるように、業績重視の評価から将来的な実績向上
に繋がるプロセスを評価するように人事考課のあり方について抜本的な見直しを行っております。
 そのために、2018年4月に新たな人事考課制度規程を策定し、行員の個人評価上設定する目標につ
いても、新たに「業務別RM設定目標(達成度)」によってプロセスを評価するものへ変更しました。
 具体的には、RM行動指針に則り、営業店行員が担当する各業務別に目標を設定し、この項目に限
定した選択制としております。また各目標は、これまでのように単純な実績数値を目標とするのでは
なく、顧客本位の業務運営に基づく実績の計上に至るプロセスを目標化したものであり、その評価及
び達成難易度も高いものとなっております。
 今後も、RM行動指針に則った人材の育成のため、本部各部が連携して目標設定の妥当性を確認す
ると共に、評価者に対する教育を徹底するなど厳格な運用に努めてまいります。


③店舗戦略
 お客さまの利便性向上及び店舗ネットワークの最適化や店舗運営の効率化を目的として、老朽化し
ている店舗などのリニューアルや店舗の移転・統合ならびに運営体制の変更を行っており、2020年2
月に、安房支店と同年4月に玉名支店を店舗内店舗形態での移転統合を実施したほか、同年3月に宮
崎支店の店舗移転を行いました。
 また、運営体制の変更として、2020年1月に下甑支店、同年5月に県庁支店において昼時間休業を
導入しました。
 今後も、WIN-WINネット業務を中心とした店舗の役割を明確にした上で、リテール戦略の非対面チャ
ネル化と併せ、地域経済に与える影響を加味しながら、より顧客本位となる店舗戦略を進めてまいり
ます。
 ATM戦略については、既存ATMの利用状況や配置状況も総合的に検討した上で、スクラップア

                       - 17-
 ンドビルドを行っております。また、各地域における主要拠点を中心に営業時間・土日祝日営業の拡
 大も行っており、コンビニATMとの提携と併せて、今後もお客さまの利便性の向上に努めていく方
 針です。


(6)積極的な信用リスクテイクと資産の健全化の両立に向けた取組み
 ①信用リスクテイク
  当行は金融機能強化法の趣旨を踏まえて、公的資金を活用した抜本的な事業再生支援や地元中小企
 業への積極的な信用リスクテイクに努めており、地域経済の活性化に取組んだ結果、支援対象企業の
 従業員は11,991人となり、地元鹿児島県の雇用拡大・維持に対し、相応の貢献を果たしているものと
 考えております。当行全体の事業性融資の信用リスク(UL)は69億円、このうち地元鹿児島県では
 59億円のULとなっており、相応にリスクテイク(地元取引先で資本を使用)しています。これを公
 的資金150億円含む自己資本でカバーしており、公的資金の有効活用に繋がっているものと認識してお
 ります。
  また、公的資金注入以降の債権放棄等累計額は当行全体で176億円、このうち地元鹿児島県では債権
 放棄等累計額は144億円、うち再生支援目的は54億円となっております。


 ②事業再生・経営改善支援への取組み
  イ.経営相談
   取引先のお客さま再生支援の取組みとして、融資部経営支援室が経営相談対象先に対し、定期的
  に訪問する中で、経営改善支援を実施しております。具体的には、個社別の課題(売上拡大、経費
  削減、オペレーション改善等)を把握した上で経営指導等を行っております。
   また、自然災害などで被害を受けられた取引先のお客さまに対して、本部営業店一体となって十
  分な対応及びサポートに努めてまいります。


  ロ.事業再生
   事業再生については、外部関係機関との連携(2019年度下期7先)、経営改善支援先等に対する本
  業支援(事業再生型WIN-WINネット業務契約先の2019年度下期の売上改善実績72先約2億円、うち8先
  については、上期中に初めて売上改善実績を計上)、債務超過企業等に対する金融支援(DDS・
  DES・債権放棄等)(2019年度下期実績2先112百万円)や事業再生アドバイザーの助言等に積極
  的に取組んでおります。また、計画策定先に対する資金繰り支援等も併せて行っております。


  ハ.事業再生ファンドの活用
   2013年度発足の「九州地域活性化ファンド」やその他の事業再生ファンドを活用して、積極的に
  抜本的な事業再生支援や転廃業支援に取組んでおります。特に「九州地域活性化ファンド」は、近
  隣の豊和銀行、宮崎太陽銀行とあおぞら銀行グループにおいて業務提携を行い、様々な手法・知見
  を共有し事業再生支援に取組んでおります。
   その結果、2020年3月までのファンド活用実績は累計38件となりました。実質的な債権放棄によ
  る取引先のお客さまの抜本的な再生支援や個人の再生を目的としたものであり、当行は債権譲渡後
  も定期的にモニタリングを行い、リファイナンスの可能性や保証人の再生の進捗状況等について適
  宜確認を行っております。

                         - 18-
ニ.個社別管理スケジュールによる計画的な債権管理の徹底
各種支援活動を検討・実施しても事業再生が困難と判断せざるを得ない取引先のお客さまについ
ては、経営支援室債権管理グループが専担し、営業店と連携のもと取引先のお客さまとの面接を行
い、個社毎に債務整理や廃業に向けた協議等を実施の上、対応方針を定めております。
また、債権管理に関する重要な事項については、管理債権等の管理状況の分析に加え、雇用や商
流などの地元経済への影響も十分考慮の上、管理・回収等の具体策を協議しております。
これらで協議・検討して決定した方針を具体的にスケジュール化し、進捗状況を管理することに
よりPDCAを実践することで、計画的な不良債権の削減に努めております。




                   - 19-
4.従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項の進捗状況
(1)業務執行に対する監査又は監督の体制の強化のための方策
   経営の透明性の確保及び監督機能の強化によるコーポレートガバナンスの有効機能を目的とし
  て、2012年6月より社外取締役を導入し、現在は、社外取締役を2名、監査役については社外監査
  役3名を含む4名体制としております。
   また、更なるガバナンスの強化を図るため、2018年5月より独立役員を2名増員し、4名体制と
  しております。今後も責任ある経営体制の確立に向けて、より迅速な業務遂行が行われる体制を構
  築してまいります。


(2)リスク管理の体制強化のための方策
 ①統合リスク管理に関する事項
  当行における統合リスク管理においては、部門別(営業部門・市場部門・ALM部門)にリスク資
 本を配賦した上で、経営体力の範囲内においてリスクテイクを行い、資本配賦状況をモニタリングす
 るとともに、限られた資源を効率的に活用することで収益性の向上を図ってまいりました。
  しかしながら、金融機能強化法の趣旨を踏まえ、特に信用リスクにおいては、「地域経済活性化」
 に主眼を置いた資本配賦・リスク管理が重要であると考えることから、「地元」=「鹿児島県」と明
 確に定義した上で、UL(非期待損失)を「地元」と「地元以外」に切り分け、どの程度地元にリス
 クテイクしているのかを明確に管理する態勢をとっています。今後についても、地域金融機関として
 地元経済活性化のための必要な資本を適切に配賦し、有効に活用してまいります。


 ②信用リスク管理に関する事項
  イ.信用リスク管理態勢について
   全行員の融資への取組みスタンスや与信リスク管理能力の強化については、「融資の基本姿勢(ク
  レジットポリシー)」及び「信用リスク管理基準」を基本原則として定めており、各種行内研修に
  おいても周知を図っております。
   また、大口与信先については、貸出合同審議会や融資取組方針検討会等において個社別のモニタ
  リングを実施し、本部営業店一体となったリスク管理強化に努めているほか、月次で貸出金ポート
  フォリオの状況を確認し、リスクの分散に努めております。与信集中リスク是正に向けた対応強化
  策として、与信限度額の位置づけや目的について明文化し、限度額設定に係るルールを制定してお
  ります。具体的には、与信管理を厳正に行うため、一定の金額(クレジット・ライン)を具体的に
  設定し、クレジット・ラインを超える大口与信先に対しては、融資取組方針検討会に付議の上、取
  組方針や与信限度額の見直しを行うことにより、与信集中リスクの縮小に努めております。
   なお、与信限度額を超過する融資申込みに対して、限度額増額の提案があった場合の手続きを明
  確化するため、融資取組方針検討会規程を改定いたしました。


  ロ.貸出金ポートフォリオの良質化及び債務者の実態把握
   当行においては、「その他要注意先」からのデフォルトが大宗を占めていたこともあり、2012年
  4月から信用格付において「その他要注意先」を「8格A」「8格B」の2つに区分し、要注意先
  の信用リスクを細かく分析するとともに、この信用リスク度合いに応じて、決裁権限、モニタリン
  グ方法等にメリハリを付けた施策に取組んでおります。

                       - 20-
  具体的には、これまでは「その他要注意先」の一定金額部分までは支店長決裁としていましたが、
 2012年8月からは「8格B」先については全て本部決裁として融資取組みの厳格化を図っておりま
 す。
  加えて、この区分により収益管理上も「その他要注意先」の「8格A」と「8格B」は信用コス
 トに明確な差があり、「8格B」先に対する与信においては、経営改善によるランクアップや総合
 的な取引を向上させるためのインセンティブとなっており、これらの取組みに対しPDCAサイク
 ルを徹底することで貸出金ポートフォリオの良質化が図られてきているものと考えております。
  これらを踏まえて信用格付の重要性が増しており、リレーションの強化による取引先のお客さま
 の実態把握が重要と考えております。そのためには、取引先のお客さまに関心を持ち、「取引先を
 深く知る」ことで、定性情報の蓄積を行い、深度ある実態把握に基づく信用格付を実施することが
 重要であり、これを強化することを目的に、2015年7月から、借り手企業の事業内容や成長可能性
 などを適切に評価するツールとして、「事業性評価シート」を制定し、信用格付、案件審査時の提
 出を義務付けております。また、2017年10月からは、商品サービスの深掘りを行うことにより事業
 性を評価するツールとして「事業性評価シートver.2.1」を制定し、これまで722先の取引先のお客
 さまについて作成し、企業の事業性を更に深堀りすることで、販路開拓支援や経営改善支援などに
 活用しております。
  また、これまでの格付判定は定量評価が中心であったものを、2019年度上期より、事業性評価シ
 ートver.2.1を活用して、定性評価での格付判定のウェイトを高めていくこととしています。具体的
 には、これまでに作成した事業性評価シートver.2.1を取引先のお客さまとの対話ツールとして積極
 的に活用し、「自社と商品・サービスの実態を十分掴んでいるか」、「現在のライフステージの位
 置と償還能力との妥当性」、「事業の将来性の見通しとその妥当性」などを格付判定に加味するこ
 ととしました。
  更には、2019年度下期においても、2019年4月より引続き、既作成の事業性評価シートver.2.1に
 ついて格付時にシートに基づく事業性の確認や内容見直しの確認など、フォローアップを随時実施
 しております。(2019/3末時点 対象331先のうち実施済218先)


 ハ.収益管理システム活用による信用コスト意識の徹底
  収益管理における実効性向上を企図して、財務会計ベースであるプライシングガイドラインと管
 理会計上の収益を一体管理する「顧客別総合採算検討表」を2013年9月に制定しております。採算
 性の改善が必要な先について融資部でリストを作成し改善策を個社毎に営業店に策定させるなど、
 信用コストを意識させる施策に取組んでおります。
  また、案件審査時には顧客別総合採算検討表およびQTシートを活用し、採算を意識した金利設
 定となっているか確認しており、営業店の意識向上を図っております。今後も総合採算ベースの収
 益管理の精緻化・高度化を図ってまいります。


③市場リスク管理に関する事項
 市場リスクは、市場変動による保有有価証券の時価額下落により、地域金融機関が本来担うべき地
域中小企業・個人向け貸出に振り向ける信用リスク配賦余力を低下させ、経営と地域に重大な影響を
与える危険性を内包するリスクであると認識しており、今後も経営の関与を強めるとともに、市場リ
スク管理態勢の強化に努めてまいります。

                         - 21-
  イ.日常の管理体制等について
   有価証券の日々の市場リスク管理をポジション残高、評価損益、実現損益等で行うため、日次作
  成の市場リスク管理表を作成し、リスク統括部署及び監査部門への報告を行っております。また、
  アラームポイントに抵触したものは、速やかにリスク統括部署経由で担当役員に報告する体制とす
  るなど、牽制機能強化に努めております。その他、リスク量の計測を日次で行い、リスク量が当行
  の定める限度額を超過した場合には、速やかに経営陣に報告するとともに、その内容を精査し、状
  況に応じてリスク量を限度額内に収める措置をとる体制としております。2016年4月から市場環境
  急変時の対応を迅速に行うためアクションプランを制定し4度適用、2017年4月からは投信が内包
  するリスクの把握・分析やモニタリング手法の強化を図るなど、市場リスク管理態勢の更なる高度
  化を図っております。また、2019年4月からは、ファンドの金利リスク量計測への対応も行ってお
  ります。


  ロ.損失限度額について
   損失限度額は、収益計画にリスク量等を考慮した金額に設定しておりますが、銀行を取り巻く経
  営環境が厳しさを増す中で、有価証券運用におけるリスク管理を強化する流れを受けて、2018年度
  下期より同年度の年間業務純益計画の範囲内としています。この限度枠管理の運用を厳格に行うた
  め、日次モニタリングに加えて、原則四半期毎に開催されるALM委員会において、ポジション枠、
  リスク限度枠、損失限度枠の順守状況等を報告するとともに、限度額を超過した場合、もしくは超
  過の危険性が高まった場合には適切なリスク抑制措置を講じる態勢としています。


  ハ.有価証券運用における基本的スタンスについて
   有価証券運用は流動性と安全性を重視した保守的運用を基本スタンスとしており、収益性の低い
  長期国債やリスクの高い外債への投資を抑制し、価格変動リスクの高い株式や投資信託、リート等
  についても徒にポジションを積み増すことなく機動的売買をメインとするなど、市場リスクの抑制
  に努めております。今後も、統合リスク管理において付与されたリスク資本配賦額の範囲内で、当
  行の経営方針やリスク管理能力に適合した健全な有価証券運用に努めてまいります。


(3)法令遵守の体制の強化のための方策
   法令等遵守態勢の確立を経営の最重要課題のひとつと位置づけ、年度毎に策定する「コンプライ
  アンス プログラム」
     ・      を当行が取組むべき重点施策として、コンプライアンスの徹底に努めており、
  コンプライアンスの統括部署である総合企画部コンプライアンス統括室が全体をモニタリングす
  る態勢としております。
   具体的には、頭取が委員長を務めるコンプライアンス委員会を開催し、コンプライアンス統括室
  を事務局としてコンプライアンス向上への取組みについて取り纏め、報告を行っております。
   また、新入行員研修から支店長研修に至るまで、各階層別研修にコンプライアンスに関する講座
  を設定し、コンプライアンス統括室や関係各部講師による研修だけではなく、役員が講師を務める
  など経営陣自ら率先して法令等遵守態勢の強化に取組んでおります。
   その他、コンプライアンスに関する喫緊の課題や改正ルールなどを全店統一勉強会のテーマとし
  て選定し、毎月開催されるRM統一勉強会(全行職員が参加)の中で定着を図っています。

                      - 22-
   各部店には、コンプライアンスの責任者であるコンプライアンス担当者を配置し、毎月のRM統
  一勉強会実施時に行動規範・関係法令等に関する行職員の理解度チェック、日常業務における法
  令・規程等の遵守状況や不祥事未然防止の観点からの動態チェック等を実施しております。その実
  施状況に関してコンプライアンス統括室が「コンプライアンス・モニタリング実施報告書」により
  各部店の遵守状況を点検し、併せて臨店指導も実施しております。
   今後も、内部監査部門及び本部関係各部、監査役と連携し、法令等遵守態勢の強化を図ります。


(4)経営に対する評価の客観性の確保のための方策
   経営に対する評価の客観性を確保するために、大学教授、企業経営者にて構成する「経営評価委
  員会」を2009年6月に設置し、これまで計22回(年2回)開催しています。同委員会では、当行の
  経営全般に関する活発な討議がなされており、主な討議内容としては、決算状況や経営強化計画の
  実現に向けた具体的施策に関する事項に加え、営業チャネル(店舗やATM戦略、地方創生への関
  与等)や人事施策などについて討議がなされたほか、地域の現状・課題を踏まえ「WIN-WINネット業
  務」への取組みの状況等についての議論も行っております。今後も、同委員会が、当行の経営戦略
  及び方針に対する客観的な評価・助言を行うことで、経営に対する評価の客観性確保と牽制機能の
  強化に繋げてまいります。


(5)情報開示の充実のための方策
 ①四半期情報開示の充実
  決算情報等は、証券取引所への適時開示のほか、プレスリリース、ホームページへの掲載等により
 適時適切な開示を行っております。決算内容等については、決算説明資料の冒頭部分にダイジェスト
 版を付すなど、より分かりやすい開示に努めております。また、ディスクロージャー誌やミニディス
 クロージャー誌を半期毎に作成し、取引先のお客さま等にも決算情報をより分かりやすく提供できる
 ようにしており、WIN-WINネット業務をはじめとした地域経済活性化への取組み状況についても開示し
 ております。
  今後もグループ会社を含めた開示体制の更なる充実を図り、迅速かつ質の高い情報開示に取組んで
 まいります。


 ②主として業務を行っている地域への貢献に関する情報開示の充実
  当行は地域に根ざした銀行として、様々な地域貢献活動に対して積極的に取組んでおります。
  南九州地域の農業・食材を中心とした産業振興により、地域経済の活性化に寄与するため、販路開
 拓及び事業展開支援に向けた各種商談会への出展支援を行っております。
  また、2019年4月に当行主催の「なんぎんビジネスセミナー(接遇・マナー研修)(32社116名参加)
                                         」
 を開催しており、ご参加いただいた取引先のお客さまの従業員の方々から好評をいただいております。
  ボランティア活動としては、
              「天文館周辺の清掃活動」や「鹿児島マラソン」へのボランティア参加
 など、地域の活動に役職員が多数参加しております。
  こうした活動状況は、ディスクロージャー誌等で開示しており、今後も引き続き、開示内容の充実
 を図るとともに、情報開示を通じた利用者の評価を各業務に適切に反映させてまいります。




                        - 23-
③株主への取組み(IR含む)
 当行株式への投資魅力を高め、より多くの方に中長期的に当行株式を保有していただくことを目的
として2011年3月より「株主優遇定期預金」の取扱いを開始しております。また、従来から作成して
いるミニディスクロージャー誌を活用した株主募集ツールにより、当行への理解をより深めていただ
くように努めております。
 今後も引き続き、本部・営業店のお客さま会等の充実やCSR活動の活発化、清掃活動等の地域行
事への積極的な参加などにより、お客さま・地域社会との密着度合いを高めてまいります。




                     - 24-
5.中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化、その他の主として業務を行っている地域における経
  済の活性化に資する方策の進捗状況
(1)主として業務を行っている地域における経済活性化に資する方策
 ①経営改善取組先企業の数の取引先企業の総数に占める割合


   [経営改善の取組み(表17)]                                             (単位:先、%)

                 '17/3期       '18/3期        '19/3期             '20/3期
                実績(始期)        実績            実績        計画       実績       計画比
  ①経営支援等取組先数          373          166         214      245       228     △17
      創業・新事業           91              43        66      71        60     △11
       経営相談           117              29        37      44        58       14
       事業再生            51              65        74      47        37     △10
       事業承継               2            3         5         7        9        2
       担保・保証          112              26        32      76        64     △12
     ②取引先総数          9,905     10,083        10,672   10,025   10,688      663
       ①/②           3.76%       1.64%       2.00%    2.44%     2.13%   △0.31%

  ※本計画では、経営改善支援の取組みが実質的なものとなるよう定義や評価の見直し、これに伴う計上
   方法の変更を行ったことから、計画の計数が計画始期より減少しております。そのため、本計画より
   変更する計上方法で算出した場合、計画始期(2017/3実績)の比率は1.53%となります。
  ※本計画より役務提供後1年間貸出スプレッド(率)が下がらなかった場合のみ、1年後に計画実績と
   して計上します。2017年度の実績については、実際の件数の1/2で計上しています。
  ※本計画において取組む「WIN-WINネット業務」による経営相談先数(経営改善先に対する本業支援実
   績を除く)は、第三次経営強化計画と同様計上しておりません。
  ※本表に計上する「経営改善取組先」は、以下のとおりです。
    1.創業・新事業
    (1)各種補助金・助成金の申請支援件数(申請完了件数)
    (2)融資取組み件数(融資実行件数)
       ※不動産賃貸、太陽光、ビジネスローン“HAE”等を除く。資金使途が創業・新事業のもの。
    (3)政府系金融機関(日本政策金融公庫)と協調して投融資を行った件数(投融資実行件数)
    2.経営相談
    (1)ビジネスマッチングサービス成約件数(同サービス契約後の成約件数)
       ※ただし、売り手事業者が非取引先で、買い手事業者の経営改善に資するものに限る。
    (2)技術相談会等(IT相談会等も含む)の参加企業のうち具体的な支援に取組んだ先数(大学と
        の研究等を取次いだ件数、研究等にかかる契約、技術開発・導入のための契約締結等の件数)
    (3)産業支援センター(よろず支援拠点・プロフェッショナル人材戦略拠点)等の外部関係機関と
        の連携による企業支援件数(特許申請件数、研究・技術支援等にかかる契約締結等の件数)
    3.事業再生
    (1)外部関係機関(再生支援協議会・REVIC・産業支援センター・よろず支援拠点)等との連
        携による支援先数
    (2)経営改善支援先等のランクアップ先数
    (3)経営改善支援先等に対する本業支援実績(件数)
    (4)債務超過企業等に対する金融支援(DDS・DES・債権放棄等)
    4.事業承継
    (1)融資取組みなど当行関与による事業承継・M&A支援先数
    (2)当行が提携する外部専門家等(専門機関・公認会計士・税理士・弁護士・経営コンサルタント
        等)と連携し、事業承継・M&Aの案件発掘及び問題解決等を行った先数


                               - 25-
   (3)外部専門機関または自行にて事業承継・M&Aの取組みを成立させた先数
   5.担保・保証
   (1)当行における担保・保証に過度に依存しない融資(アグリネット資金“南風育ち”・ビジネス
      ローン“いっき”・TKCローン・ふるさと活性化資金)(融資実行件数)
   (2)ABL(動産担保・債権担保等)の取組み件数(融資等実行件数)


 2017年度の経営改善取組先数については、前記の定義に基づき、実際の取組先数の1/2を計上してお
りますが、2018年度以降においては、前年度計上した取組先数のうち、役務提供後1年間貸出スプレ
ッドが下がらなかった先数を計上しております。
 前年度計上した取組先に対し、スプレッドの維持に資する顧客価値の提供に努めた結果、2020年3
月期における経営改善支援等取組先数は、計画を17件下回る228件の実績となり、経営改善支援等取組
先企業の取引先総数に占める割合についても、計画を0.31ポイント下回る2.13%となりました。
 創業・新事業支援については、創業・新事業の融資を中心に計画を11件下回る60件の実績となりま
した。経営相談については、ビジネスマッチングなどにより、計画を14件上回る58件の実績となりま
した。事業再生については、計画を10件下回る37件の実績となりました。事業承継については、事業
譲渡を行うための資金供給や事業売却の支援等を行い、計画を2件上回る9件の実績となりました。
担保・保証に依存しない融資については、計画を12件下回る64件の実績となりました。なお、スプレ
ッドの維持に実績もあり、最も効果的なWIN-WINネット業務については、経営相談の取組先数には計上
しておりません。
 経営改善取組後の不断のモニタリングを通じた深度ある対話により、顧客満足を向上させることが
重要であり、こうした地道な活動を行員一人ひとりに浸透・定着させるため、人事評価などにも反映
させております。


②地域における経済活性化に資する方策
 イ.新販路開拓コンサルティング(WIN-WINネット業務)による地域経済活性化に資する取組み方策
  当行は、これまでも地元金融機関と連携した商談会や相談会等を活用した様々な販路開拓支援を
 行ってまいりました。しかしながら、今までの取組みが十分でなかったという反省のもと、第二次
 経営強化計画より「WIN-WINネット業務」への取組みを中心施策に掲げ、事業内容(商流やオペレー
 ション)の詳細にまで踏み込むことで、取引先企業の事業運営改善に責任を持った支援活動を行っ
 てまいりました。本計画においては、「事業再生型WIN-WINネット業務」を中心として、鳥の目の事
 業性評価ともいえる「取引先事業者の事業性を大局的にとらえる」だけではなく、虫の目の事業性
 評価である「商品サービスに関する事業性の問題点」を深掘りできる商品サービス別ヒアリングシ
 ートを導入し、これを全店にて展開することで地域経済活性化に取組んでおります。
  2020年3月末の契約締結先1,005先に対する売上高支援累計実績は778先の72億91百万円(売上金
 入金ベース)を計上しています。なお、第四次経営強化計画から導入した「商品サービス別ヒアリ
 ングシート」の作成先23先に対し、売上高改善累計実績は447件の5億77百万円を計上しています。
  今後も契約先の新販路開拓支援活動を行うことで、当行取引先のお客さまの経営改善に努めてま
 いります。


 ロ.創業又は新事業の開拓に対する支援に係る機能の強化
  創業・新事業への融資取組みとして、県・市の創業支援制度の活用や信用保証協会及び㈱日本政


                        - 26-
策金融公庫等の政府系金融機関との連携強化による協調融資等による支援を行いました。また、
「2017年度補正(ものづくり・商業・サービス経営力向上支援)補助金」から「2019年度補正(も
のづくり・商業・サービス生産性向上促進)補助金」における認定支援機関としての役割も積極的
に果たし、よろず支援拠点等と連携し、補助金の申請の支援も行いました。創業時や創業間もない
事業者においては、資金調達環境は厳しい状況にありますが、円滑な資金調達や補助金申請等を支
援することで、スムーズな事業展開が可能となります。
 また、新事業にかかるサポートとして、鹿児島県の補助金制度である「地域資源活用・農商工等
連携新事業創出支援事業」の申請支援を行っているほか、かごしま産業支援センターや鹿児島大学
の技術移転機関である㈱鹿児島TLO等との産・学・官ネットワークを活用した「技術相談会」を
実施しております。「技術相談会」の具体的内容は、新商品・新技術開発・各種補助金のアドバイ
ス・コスト削減・特許取得等を検討している企業を対象に、㈱鹿児島TLOと連携して、問題解決
に向けて個社毎に相談内容を聞き取り、事業者のお客さまへの経営支援を行っております。本計画
期間においては、19社の相談対応を実施しました。
 具体的成果として、㈱鹿児島TLOとの連携による「補助金申請に係る事業計画書作成支援」「提
携先との契約書策定支援」「新商品の事業化に向けた営業支援」などが挙げられます。
 今後も創業・新事業に関わるサポートを積極的に行い、それに伴う資金ニーズにもタイムリーに
対応してまいります。


ハ.経営に関する相談その他の取引先の企業に対する支援に係る機能の強化
 事業者のお客さまに対する経営相談及び支援機能強化の観点から、経営改善が見込める当行メイ
ンの取引先のお客さまを中心に、営業店からの情報を基に本部にて支援先を選定しています。当該
支援先の選定については、営業店が経営者の考え方や現在の業況等について十分なヒアリングを行
った上で、本部において当行の支援活動に対する理解が得られること、ならびに事業再生の可能性
等の抽出基準に則り選定しています。活動内容としては、事業者のお客さまの抱える課題等の実態
を把握した上で、本部・営業店が連携し、経営に関する相談・アドバイス等を可能な限り内製化し
て実施しております。相談の内容によっては、法務・税務等資格や専門知識が必要となることから、
弁護士・税理士・公認会計士等の専門家や経営コンサルタントを紹介するなどの対応を行っており
ます。
 また、WIN-WINネット業務とは別途、当行取引先のお客さまの商品・サービスを個別にマッチング
する「ビジネスマッチングサービス」や各種商談会への誘致による販路拡大支援にも取組んでおり
ます。2019年9月には、地元金融機関で構成される「鹿児島アグリ&フード金融協議会」の構成員
として商談会を開催しており、新商品開発に繋がるニーズ収集や国内外に向けた販売ルートの開拓、
首都圏バイヤーとのネットワーク構築が図られております。


ニ.早期の事業再生に資する方策
 当行からの経営改善支援活動を積極的に受入れ、かつ事業再生が可能と判断したメインの取引先
のお客さまを主に選定し、積極的に事業再生支援活動を実施しています。
 メインとなる活動は、中小企業再生支援協議会等の外部機関との連携による事業再生であり、過
剰債務の状態にあるもののキャッシュフローを確保でき、事業再生可能と判断した取引先のお客さ
まには、債権放棄やDES・DDS等の資本性借入金を活用するなどの踏み込んだ金融支援も行っ

                     - 27-
ております。
 人材派遣については、財務改善の支援サポートが必要と判断される場合など、人材の選定を行っ
た上で実施しております。
 また、2017年度より、要注意の低位先以下の事業者について、営業店と融資部が連携したモニタ
リングと経営課題等の把握を行うため、経営改善取組方針検討会を実施しております。具体的には、
ファイナンス支援を中心として、本業支援(廃業支援を含む)、経営課題解決支援の観点を取り入
れ、営業店と本部の取組方針を明確にし、実効性のある支援活動に繋げております。
 2020年3月期においても、経営改善支援先等のランクアップ・本業支援を中心に事業再生に向け
た取組みを実施しました。融資部経営支援室、WIN-WINネット業務部と営業店の連携による取引先の
お客さまへの経営改善及び売上支援の取組みにより、企業の財務内容が改善するなど、地域経済活
性化に寄与しているものと考えております。また、下期からは更なる有効性を求め、臨店方式に変
更しました。ターンアラウンド先は必要に応じ、担当審査役が取引先のお客さまへの訪問・面接を
行い事業改善につき協議を行いました。
 支援案件について継続的に中小企業再生支援協議会等の外部機関と協議するなど、経営改善計画
書策定先に対する資金繰り支援等を行っており、今後も更なる支援活動を強化してまいります。
 公的資金の受入により十分な自己資本を確保し、地域の事業者に対して円滑な資金供給を実施し
ております。加えて、地域経済は依然として厳しい状況にあり、不良債権比率も高い水準に留まる
中、破綻懸念先の引当率について、貸倒実績率に関わらず下限を設けるフロアルールやDCF法の
導入により保守的な引当を実施することも可能となりました。十分な引当の実施により、地域経済
に過度な負担をかけることがないよう、円滑な資金供給及び早期の事業再生を進めながら、今後も
引き続き地域経済を支えてまいります。


ホ.事業承継及び事業譲渡に対する強化のための方策
 過去実施した「事業承継に関するアンケート調査」の結果を踏まえ、事業者のお客さまの事業承
継のニーズに対しては、商工会議所・中小企業基盤整備機構等、外部機関との連携を図りながらア
ドバイスを行っております。
 また、今後、事業性評価に重点を置くことで、取引先の事業承継のニーズをより多く把握できる
ことが見込まれることから、積極的に外部機関や専門家との連携強化を図るとともに行内向けに事
業承継に関する研修を行うなど、相談業務にあたる行員の能力向上に取組んでまいります。


へ.担保・保証に過度に依存しない融資
 地域の中小規模の事業者に対して、事業性評価に融資審査の主眼をおいて、全行的に取組んでお
ります。また、行職員の目利き力のレベルを上げるために、事業性評価の研修や勉強会を都度実施
しております。今後も事業性評価に積極的に取組むことで、中小規模の事業者に対する円滑な資金
供給を行ってまいります。
 さらに、事業性評価に繋がるABLについても、繁殖牛や肥育牛などを担保とした畜産業者向け、
鰹節や加工野菜を担保とした卸売業者向けなど、鹿児島県産品を取扱う事業者に対して、円滑な資
金供給の一手法として活用しております。特に、農業関連については、所有不動産が農地中心とな
ることから、金融機関として担保を取得しづらいケースがありますが、ABL等を活用することで、
担保・保証に過度に依存しない資金供給が可能となっております。また、診療報酬を担保とした医

                     - 28-
  療機関向けの取組みも行っております。債権や在庫などの動産を担保とすることで、商流情報の取
  得による取引先のお客さまの業況把握や財務内容の悪化に対する早期対応が可能となるなど、取組
  みの効果は大きいものと考えております。
   なお、経営者保証ガイドラインの積極的な活用に資するため、従来保証の要否判断に使用してい
  た経営者保証確認フロー表兼判定シートを廃止し、より簡便に代替手法等を検討することができる
  ように、経営者保証チェックシートを制定しました。
   また、事業承継時に焦点を当てた経営者保証ガイドラインの「特則」が2020年4月1日より適用
  開始されることから、特則対応のチェックシート制定やリーフレット等の態勢整備を行い、適用開
  始前の同年2月12日から運用を開始しております。
   当行においては、スプレッド維持に資する顧客価値提供による効果が認められず、利回りは低下
  傾向にありますが、今後もABLや経営者保証ガイドラインの取組み事例の蓄積により、担保・保
  証に過度に依存しない融資を行ってまいります。


(2)中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策
 ①中小規模事業者に対する信用供与の残高の総資産に占める割合およびなんぎんKPI
  イ. 中小規模事業者に対する信用供与の残高の総資産に占める割合


  [中小規模事業者等に対する信用供与の計画・実績(表18)]                                     (単位:億円、%)
               '17/3 期    '19/3 期      '19/9 期               '20/3 期
               実績(始期)      実績               実績      計画      実績      計画比       始期比
    中小規模事業者
                  3,260      3,383          3,403   3,350   3,491      141     231
    等向け貸出残高

    総 資 産         7,791      7,989          7,987   7,994   7,865    △129       74
    総資産に対する
                  41.84      42.34          42.61   41.90   44.39      2.49    2.55
    比率
  (注)中小規模事業者等向け貸出とは、銀行法施行規則第19条の2第1項第3号ハに規定する別表一における中小企業等
    から個人事業主以外の個人を除いた先に対する貸出で、かつ次の貸出を除外しております。
    政府出資主要法人向け貸出及び特殊法人向け貸出、土地開発公社向け貸出等、大企業が保有するSPC向け貸出、
    当行関連会社向け貸出、その他金融機能強化法の趣旨に反するような貸出


   中小規模事業者等に対する貸出金残高は、個人貸家業や太陽光設備向けの貸出が落ち着きつつあ
  る中、お客さまの事業性の把握及び理解に基づく貸出を中心に、地元へ積極的に融資を行ったこと
  などから、計画を141億円上回る3,491億円となりました。
   中小企業又は地元事業者に対する信用供与の残高の総資産に占める割合についても、計画を2.49
  ポイント上回る44.39%となりました。
   今後も引き続き、地域経済の活性化への貢献を果たすべく、円滑な信用供与にかかる各種施策に
  対して積極的に取組んでまいります。




                                    - 29-
 ロ. なんぎんKPI(中小規模事業者等向け貸出残高)


 [なんぎんKPI(中小規模事業者等向け貸出残高)の計画・実績(表19)]
                                                                   (単位:億円、%)
                 '17/3 期    '19/3 期     '19/9 期                 '20/3 期
                 実績(始期)      実績           実績          計画      実績      計画比      始期比
  重点先事業者(中小規模事
                    2,971     3,128           3,110   3,192   3,219       27    248
  業者等向け)貸出残高

  総 資 産             7,791     7,989           7,987   7,994   7,865   △129       74
  総資産に対する
                    38.13     39.15           38.94   39.93   40.92    0.99     2.79
  比率
 (注)「重点先事業者(中小規模事業者等向け)貸出残高」は、長期経営計画で定義する「重点先事業者」に対する
    貸出のうち中小規模事業者向けの貸出残高(保証会社保証付ローンを除く)のこと。

  長期経営計画における重点先事業者の貸出残高のうち中小規模事業者等向けの貸出をなんぎんK
 PIとしてフォローアップしてまいります。
  2020年3月期は、お客さまの事業性の把握及び理解に基づく貸出を中心に、地元へ積極的に融資
 を行ったことから、重点先事業者(中小規模事業者等向け)貸出残高は、計画を27億円上回る3,219
 億円(計画始期比248億円増加)となりました。
  総資産に対する比率についても、計画を0.99ポイント上回る40.92%となりました。
  一方で、一般先事業者(不動産賃貸・太陽光売電事業者向け貸出のみの先)は計画始期比146億円
 減少するなど、事業性評価を必要とする事業者に対して適切な資金供給がなされているものと考え
 ております。


②中小規模の事業者に対する信用供与の実施体制の整備のための方策
 中小規模事業者等に対する信用供与の実施状況については、原則四半期毎に開催される「ALM委
員会」においてその履行状況をモニタリングしております。
 また、営業店長の決裁権限について見直しを実施した結果、小口融資について迅速な審査態勢とな
ったことに加え、季節資金など継続的に行われる融資についても、本部と営業店が協議の上、正式稟
議前に事前承認を行うことでスピーディな対応ができる態勢とするなど、資金ニーズにタイムリーに
対応しております。
 今後も経営相談や販路開拓支援、担保・保証に過度に依存しない資金供給を行うなどにより、地域
経済活性化に取組んでまいります。


 イ. 地域における主要業種への支援
  当行の事業者のお客さまの主要な業種としては、「サービス業」「卸・小売業」「建設業」「不
 動産業」の4つの業種が大宗を占めており、今後もこれらの業種に対して、WIN-WINネット業務を中
 心とした各種経営支援に取組んでまいります。
  「医療・介護」や「農業」においては、2020年2月、融資部内に、新たに専門性を要する事業者
 への積極的な支援を目的に、ビジネスサポートグループを新設しました。各専門分野「医療・介護」
 「農業」の担当者をそれぞれ配置することで、特定業種への円滑な資金供給に向けて、本支店での


                                      - 30-
 目利き力を高め、審査体制の強化を図ってまいります。


 ロ. 事業性評価に基づく融資への対応
  当行では、事業性評価に基づく貸出の対象先について「WIN-WINネット業務契約先のうち過去に売
 上改善実績がある先」と定義しております。
  今後については、その増加に努めるとともに、上記定義の貸出以外においても事業性評価を重視
 した貸出を拡充できる態勢を整備していく必要があると認識しております。
  今後も若手行員を中心とした目利き力強化研修の実施や「農業」「医療・介護」分野等における
 専担部署である「ビジネスサポートグループ」の活用、外部専門機関との協調による事業者のお客
 さまへの経営支援の実施などにより、行員の現場での対話力と提案力の強化を図り、業種特性の理
 解を深めることにより、事業性評価に基づく融資対応に努めてまいります。


 ハ. 新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小事業者への支援対応
  新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受け、厳しい状況が続く中小事業者に対し迅速な融資対
 応を行うために体制整備に取組んでおります。具体的には、専用の相談窓口の設置や一部の保証協
 会保証付き案件に係る決済権限を営業店長に委譲したほか、保証協会制度利用時の保証依頼前や条
 件変更(本部事前承認案件)における信用格付を事後対応または不要とすること、必要書類の簡素
 化を図ることなどにより迅速な融資対応ができる体制を整備しております。
  また、本感染症による影響を受けた事業者が条件変更を依頼しやすいよう条件変更に係る手数料
 免除も実施しており、今後も中小事業者に対するスピーディーな融資対応に努めてまいります。


③担保・保証に過度に依存しない融資の促進、その他の中小規模の事業者の需要に対応した信用供与
 の条件または方法の充実のための方策
 担保・保証に過度に依存しない融資の促進にあたっては、中小規模事業者のおかれた経営環境や商
流情報等を正確に把握することが必要であり、WIN-WINネット業務等を通じた目利きやコンサルティン
グ能力の向上、前記の動産担保融資(ABL)等融資手法についての行内研修を行うことで人材の育
成に努めております。
 今後も、事業性評価に基づき資金供給を行うことで成長性の有無にかかわらず、幅広い重点先事業
者を支援してまいります。


④中小規模事業者等向け信用供与円滑化計画を適切かつ円滑に実施するための方策
 中小規模事業者等向け貸出の増加策として、事業性評価を意識した融資の取組みを中心に、創業・
新事業の開拓に取組む事業者に対する支援に加え、
                      「WIN-WINネット業務」への取組みによって発生す
る増加運転資金や設備投資等の新たな資金需要にも適切に対応しております。また、ABL等の担保・
保証に過度に依存しない融資への取組みを行うなど、信用供与に努めております。


 イ.事業性評価シートver.2(取組方針書)の改定