8349 東北銀 2020-03-03 17:45:00
令和1年9月期における経営強化計画の履行状況について [pdf]

                                        令和2年3月3日

各   位
                 会 社 名   株式会社 東 北 銀 行
                 代表者名    取締役頭取 村 上 尚 登
                           (コード番号 8349 東証第一部)
                 問合せ先    経営企画部長   千 葉 泰 之
                                  (TEL.019‐651‐6161)


        令和 1 年 9 月期における経営強化計画の履行状況について



 株式会社東北銀行(頭取 村上 尚登)は、金融機能の強化のための特別措置に関する法律に
基づき、令和 1 年 9 月期における経営強化計画の履行状況をとりまとめましたのでお知らせいた
します。
 詳細につきましては、別添「経営強化計画の履行状況報告書」をご参照ください。


                                                   以 上
経営強化計画の履行状況報告書




    令和 1 年 12 月
                                       目 次

1.令和 1 年 9 月期決算の概要 ................................................................. 1
 (1) 経営環境 ................................................................................ 1
 (2) 決算の概要 .............................................................................. 1
   ①   資産・負債の状況 ...................................................................... 1
   ②   損益の状況 ............................................................................ 3
   ③   自己資本比率 .......................................................................... 5
2.中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他当行が主として業務を行っている地域にお
 ける経済の活性化に資する方策の進捗状況 .................................................... 5
 (1) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策 .................................... 5
   ①   岩手県の経済環境及び復興状況 .......................................................... 5
   ②   経営計画 .............................................................................. 8
   ③   中小規模の事業者に対する信用供与の実施体制の整備のための方策 ......................... 11
   ④   担保又は保証に過度に依存しない融資の促進その他の中小規模の事業者の需要に対応した
     信用供与の条件又は方法の充実のための方策 ............................................... 17
 (2) 被災者への信用供与の状況及び被災者への支援をはじめとする被災地域における東日本大震
     災からの復興に資する方策 ............................................................... 23
   ①   当行の体制(震災復興推進本部) ....................................................... 23
   ②   返済に関する柔軟な対応 ............................................................... 23
   ③   復旧・復興資金への対応 ............................................................... 24
   ④   復興支援住宅ローン、復興支援アパートローンによる被災者支援 ........................... 25
   ⑤   中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業等の活用支援 ................................. 26
   ⑥   東日本大震災事業者再生支援機構及び岩手(宮城)産業復興機構の活用支援 ................. 27
   ⑦   「個人版私的整理ガイドライン」の活用支援 ............................................. 29
 (3) その他主として業務を行っている地域における経済の活性化に資する方策 ...................... 30
   ①   創業又は新事業の開拓に対する支援に係る機能の強化のための方策 ......................... 30
   ②   経営に関する相談その他の取引先の企業に対する支援に係る機能の強化のための方策.......... 33
   ③   早期の事業再生に資する方策 ........................................................... 35
   ④   事業の承継に対する支援に係る機能の強化のための方策 ................................... 37
3.剰余金の処分の方針 ...................................................................... 38
4.財務の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策 ............................... 38
 (1) 経営管理に係る体制及び今後の方針 ....................................................... 38
 (2) 業務執行に対する監査又は監督の体制及び今後の方針 ....................................... 39
 (3) 与信リスクの管理(不良債権の適切な管理を含む)及び市場リスクの管理を含む各種リスク管
     理の状況並びに今後の方針 ............................................................... 39
   ①   リスク管理体制 ....................................................................... 39
   ②   統合リスク管理 ....................................................................... 40
   ③   信用リスク管理 ....................................................................... 40
   ④   市場リスク管理 ....................................................................... 41
   ⑤   流動性リスク管理 ..................................................................... 41
   ⑥   オペレーショナルリスク管理 ........................................................... 41
1.   令和 1 年 9 月期決算の概要


  (1)     経営環境
     令和 1 年度上期の国内経済は、生産に弱い動きがみられたほか輸出も米中貿易摩擦の影響で
  中国経済が減速したことなどから弱含みでの推移となりました。しかしながら、個人消費や設
  備投資は持ち直しの動きとなったほか、4~6 月期の国内総生産(GDP)を見ると実質成長率が
  前期比 0.3%増となり、 四半期連続のプラス成長となるなど全体としては緩やかな回復の動き
               3
  となりました。
     下期は、情報化関連などの設備投資が増勢を維持するほか、労働需給もタイトな状況が続き、
  所得環境も改善基調を維持していくことが見込まれております。また、消費増税については引
  き上げ幅が 2%と小幅なうえ飲食料品への軽減税率やキャッシュレス決済に対するポイント還
  元などの負担軽減措置により、個人消費も堅調に推移していくことが見込まれております。一
  方で住宅投資はマイナスに転じるとみられ、また米中貿易摩擦に伴う両国経済の減速や半導体
  需要の調整などで輸出も弱含みになることが予想されるほか生産面にもその影響が波及する
  ことも懸念されており、全体としては成長を継続するものの弱い伸びに留まることが予想され
  ております。
     このようななか、当行では平成 31 年 4 月に新中期経営計画を策定し、とうぎん VISION とし
  て「心のメイン」を掲げ、従前から培ってきたリレーションシップバンキングを重視した取引
  を行い、当行を「心のメイン」と評価していただけるお客様を増やしていくことで地域におけ
  る存在価値を高めていくこととしております。「成長予備軍とのリレーション向上」「農林水
                                        、
  産業を中心とした地域経済の活性化」、
                   「事業再生へ向けた持続的なサポート」、
                                     「営業店アクシ
  ョンプランの実践」 4 つの基本戦略のもと、
           の            中小事業者への積極的な支援に取組んでまいり
  ました。


  (2)     決算の概要


     ① 資産・負債の状況


      A   預金・譲渡性預金残高
          個人預金は前年同月比 21 億 17 百万円増加し 5,387 億 87 百万円となりましたが、法人
      預金は同 15 憶 39 百万円減少し 2,693 億 48 百万円、公金預金は同 15 億 71 百万円減少し
      247 億 6 百万円となったことから、預金等残高(譲渡性預金を含む)は同 9 億 93 百万円
      減少し 8,328 億 42 百万円となりました。




                                1
B   貸出金残高
    中小企業等向け事業性貸出金は、前年同月比 74 億 60 百万円増加し 3,191 億 93 百万円
となりましたが、大企業向け貸出残高の減少により、貸出金残高は同 32 百万円減少し
5,665 億 6 百万円となりました。


C   有価証券残高
    株式残高は、前年同月比 24 億 40 百万円減少し 62 億 12 百万円、投資信託等のその他の
証券残高は同 171 億 77 百万円減少し 370 億 71 百万円となったものの、債券残高が同 210
億 50 百万円増加し 1,525 億 71 百万円となったことから、有価証券残高は同 14 億 33 百万
円増加し 1,958 億 55 百万円となりました。


【資産・負債の状況】
                                                            (単位:百万円)
                    H30年9月末    H31年3月末       R1年9月末
                     実績            実績         実績        30年9月末比    31年3月末比
    資    産           883,050       861,046    883,524        474    22,478
        うち貸出金        566,538       571,198    566,506       △32     △4,692
          中小企業等向け
                     311,733       321,591    319,193      7,460    △2,398
          事業性貸出

       うち有価証券        194,422       177,952    195,855     1,433     17,903
    負   債            845,833       823,462    844,887     △946      21,425
       うち預金等         833,835       811,163    832,842     △993      21,679
       うち借用金           5,111         5,936        911    △4,200     △5,025
    純 資 産             37,216        37,583     38,636     1,420      1,053




                               2
【うち中小企業事業性貸出金残高の推移(業種別)
                      】
                                                      (単位:百万円)
                           H31/3 期実績     R1/9 期実績      計画始期比
              製造業               34,487       33,649       △838
             農業・林業               5,578        6,363        785
              漁業                 1,103        1,265         162
            鉱業・採石業               1,152        1,153           1
              建設業               35,951       34,323      △1,628
       電気・ガス・熱供給・水道業            21,602       23,014       1,412
             情報通信業               1,363        1,194       △169
            運輸業・郵便業              9,268        9,737         469
              卸売業               10,843       10,722       △121
              小売業               19,072       18,942       △130
            金融業・保険業              9,231       10,577       1,346
             不動産業              101,838       99,559      △2,279
             物品賃貸業               5,955        5,754       △201
       学術研究・専門サービス業                704          719          15
              宿泊業                2,900        2,988         88
              飲食業                3,727        3,811         84
           生活関連サービス業             8,102        7,527       △575
           教育・学習支援業              1,035        1,079         44
             医療・福祉              18,716       18,616       △100
            その他サービス             28,205       28,191        △14
              合計               321,591      319,193      △2,398


② 損益の状況


A   資金利益
    有価証券利息配当金が前中間期比 2 億 32 百万円減少したこと等から、資金利益は同 2
億 44 百万円減少し 47 億 85 百万円となりました。


B   役務取引等利益
    ビジネスマッチング等の法人関係役務手数料は増加となりましたが、生命保険・投資信
託等の預り資産関連手数料が減少となったこと等から、役務取引等利益は前中間期比 59
百万円減少し 5 億 44 百万円となりました。


C   コア業務粗利益
    資金利益及び役務取引等利益が減少となったことから、コア業務粗利益は前中間期比 3
億 2 百万円減少し 53 億 32 百万円となりました。




                       3
D   経費
    人件費、物件費、税金費用についてそれぞれ前中間期比 58 百万円、72 百万円、10 百万
円減少したことから、経費は同 1 億 40 百万円減少し 43 億 4 百万円となりました。


E   コア業務純益
    コア業務粗利益が前中間期比減少したこと等により、コア業務純益は同 1 億 62 百万円
減少し 10 億 27 百万円となりました。


F   債券関係損益・株式関係損益
    国債等債券損益について前中間期は損失を計上しておりましたが、当中間期は投資信託
の売却益を計上したこと等から前中間期比 3 億 90 百万円増加し、 億 14 百万円となりま
                                  1
した。また、株式等関係損益についても同 1 億 17 百万円増加し 1 億 21 百万円となりまし
た。


G   与信関連費用
    与信関連費用について前中間期は戻入益を計上しておりましたが、当中間期においては
要注意先の与信残高が増加し一般貸倒引当金繰入額が増加したこと等により前中間期比
2 億 5 百万円増加し、31 百万円となりました。


H   経常利益
    経常利益はコア業務純益が減益となったものの、国債等債券損益が増加したこと等によ
り、前中間期比48百万円増加し12億46百万円となりました。


Ⅰ 中間純利益
    中間純利益は経常利益が増益となったものの、税金費用等の増加により前中間期比63
百万円減少し9億58百万円となりました。




                         4
     【令和1年9月期における決算業績(単体)】
                                                         (単位:百万円)
                       H30年9月期      H31年3月期      R1年9月期
                          実績           実績          実績        前中間期比
      コア業務粗利益               5,634       11,139       5,332      △302
          うち資金利益            5,029        9,943       4,785      △244
          うち役務取引等利益           603        1,192         544       △59
      経  費                  4,444        8,828       4,304      △140
      コア業務純益                1,189        2,310       1,027      △162
      債券関係損益                △276         △495          114        390
      一般貸倒引当金繰入額               -             5          73         73
      業務純益                    913        1,810       1,068        155
      臨時損益                    285        △210          178      △107
          うち不良債権処理額            32          186        △20        △52
          うち株式等関係損益             4        △198          121        117
          うち貸倒引当金戻入益          195           -           -       △195
          うち償却債権取立益            12           55          21          9
      経常利益                  1,198        1,599       1,246         48
      特別損益                   △66         △150          △4          62
      当期(中間)純利益             1,021        1,297         958       △63
      利益剰余金                10,047       10,089      10,811        764


     ③ 自己資本比率
      自己資本の額は、利益の積み上げにより前中間期比 2 億 91 百万円増加し 350 億 70 百万円
     となりました。また、リスクアセットの額は、中小企業等向け事業性貸出金が増加したこと
     から同 49 億 57 百万円増加し 4,201 億 62 百万円となりました。以上のことから単体自己資
     本比率は、8.34%(同 0.03 ポイント低下)となりました。連結自己資本比率は単体自己資本
     比率の低下を主因として 8.63%(同 0.11 ポイント低下)となりました。


2.   中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他当行が主として業務を行っている地域
  における経済の活性化に資する方策の進捗状況


  (1)     中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策


     ① 岩手県の経済環境及び復興状況


      A   岩手県の経済環境
          令和 1 年度上期の岩手県経済について、公共投資は前年の復興道路工事など大型工事の
      反動から弱含みで推移し、住宅投資も持家、貸家ともにマイナス基調での推移となりまし


                                5
 た。一方で個人消費は乗用車新車登録台数が増加基調で推移し、生産活動も窯業・土石な
 どはマイナス基調となりましたが食料品や電子部品 デバイスはプラス推移となりました。
                        ・
 さらに雇用情勢も引き続き有効求人倍率が高い状況が継続しており、全体としては緩やか
 な回復の動きが継続する展開となりました。
     下期は生産活動について持ち直しの動きとなるものの、住宅や公共投資が弱い動きとな
 るほか個人商品も一進一退になるとみられており、全体としては足踏みの状況が続くもの
 と予想されております。


 B   岩手県の復興の状況(資料出所:岩手県)


【岩手県の復興計画】




【岩手県の復旧・復興事業における実績及び今後の見込】


 ■海岸保全施設(箇所数)




                      6
■復興まちづくり(区画数)




■復興道路(区間数)




■災害公営住宅(戸数)




■漁港施設(漁港数)




                7
 ■港湾施設(地区数)




 ■医療施設(施設数)




 ■教育施設(学校数)




② 経営計画
 前中期経営計画で認識した経営課題等を踏まえ、地域の中小事業者に対する積極的な支援
を推し進めるため、平成 31 年 4 月~令和 4 年 3 月までの経営強化計画の実施期間と同期間
の中期経営計画を策定しております。
 経営理念である『地域金融機関として地域社会の発展に尽くし共に栄える』ことは創業時
から続く精神であり、この理念は中期経営計画のテーマである「地域力の向上」のベースと
なるものであります。新計画ではとうぎん VISION として「心のメイン」を掲げ、当行が従
前から培ってきたリレーションシップバンキングを重視した取引を行い、当行を「心のメイ
ン」と評価していただけるお客様を増やしていくことで当行の地域における存在価値を高め


                      8
ていくこととしております。「成長予備軍とのリレーション向上」、「農林水産業を中心と
した地域経済の活性化」、「事業再生へ向けた持続的なサポート」、「営業店アクションプ
ランの実践」 4 つの基本戦略のもと、
      の            中小事業者への信用供与の円滑化及び地域における
経済の活性化を図っていく方針としております。


 ※リレーションシップバンキング

  当行が中小事業者と長期的かつ継続的な取引関係を保ち、その関係の中で蓄積された   経営能力や成

 長性等を、基準の一つとして融資判断等を行うこと

 ※成長予備軍

  当行融資格付における正常先下位から要管理先に分類されるお客様



【新中期経営計画全体図】




                     9
 【基本戦略】




【成長予備軍への信用供与の実績】
■貸出金平均残高の実績
                                                                 (単位:百万円)
               H28/3 期    H29/3 期        H30/3 期    H31/3 期    R1/9 期    計画

                                                    (計画始期)

                通期         通期             通期         通期         上期       始期比

総貸出金            516,388    512,254        532,871    563,208   566,350    3,142

うち一般貸出金         369,046    376,248        402,633    429,064   434,243    5,179

 事業性            276,915    284,078        310,441    336,689   341,749    5,060

 住宅ローン           82,436     82,215         82,204     82,646    82,844        198

 消費者ローン           9,695      9,955          9,988      9,729     9,649     △80

うち地公体・市場性貸出金    147,342    136,006        130,238    134,144   132,107   △2,037




                                    10
 ■うち事業性貸出金平均残高の実績
                                                                  (単位:百万円)
              H28/3 期     H29/3 期        H30/3 期     H31/3 期     R1/9 期    計画

                                                     (計画始期)

               通期          通期             通期          通期          上期       始期比

事業性合計          276,915     284,078        310,441     336,689    341,749    5,060

格付別

 正常先上位以上        84,478      80,873         88,391      83,064     77,562   △5,502

 【成長予備軍】
               128,023     142,044        159,859     187,311    201,337   14,026
 正常先下位~要管理先

 個人事業主等         47,429      45,510         47,050      51,219     46,928   △4,291

 破綻懸念先以下        16,985      15,651         15,141      15,096     15,922        826

業種別

 製造業            26,248      27,556         32,292      34,920     35,487        567

 漁業                 993         842            935         958     1,144        186

 鉱業・採石業             892      1,344          1,375       1,216      1,138     △78

 建設業            35,207      33,481         35,307      35,647     33,638   △2,009

 電気・ガス・熱供給業     14,893      16,518         19,154      25,011     27,349    2,338

 卸売業            13,285      12,813         12,556      11,900     11,111    △789

 小売業            22,834      22,648         22,551      22,288     21,828    △460

 金融・保険業          4,083       4,696          4,887       5,390      5,421         31

 不動産業           77,896      81,826         91,306     102,545    108,864    6,319

 個人              6,045       4,780          4,808       4,492      4,300    △192

 情報通信業           1,364       1,579          1,718       1,459      1,314    △145

 運輸・郵便業          8,011       7,914          9,217      10,234     10,188     △46

 各種サービス         61,326      63,947         69,007      74,535     74,106    △429

 農業・林業           3,837       4,132          5,328       6,093      5,860    △233



 ③ 中小規模の事業者に対する信用供与の実施体制の整備のための方策


  A    中小規模の事業者に対する信用供与の本部支援体制
      中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化に向けて、各営業店に対する本部サポート
  体制を構築するため、それぞれの部署の専門性を高めるような本部組織の構築を図り、令
  和 1 年 9 月現在「支店統括部」「地域応援部」「融資管理部」にて中小規模の事業者への
                    、      、
  資金供給、各種ソリューションの提供、経営改善支援等の本部サポートを行っております。


                                    11
    a   支店統括部における取組
        支店統括部は、営業店の営業推進支援の中心的な役割を担う部署であり、営業支援シ
    ステム(KeyMan)を活用した預貸金等の計数状況の管理から、住宅ローンを中心とする個
    人ローンの商品開発に加え、各種金融サービス等の企画を行っております。商品の企画
    立案から始まり、広告宣伝等の商品 PR、販売状況の管理、検証まで銀行の営業推進全
    般を統括しております。また、融資審査業務を同時進行することで中小事業者に対する
    支援体制の整備を図っております。


    b    地域応援部における取組
        地域応援部は、中小事業者の本業支援を推進していくための中心的な役割を担う部署
    であり、本部渉外及び帯同訪問等による営業店サポート、営業店からの相談窓口等の業
    務等を担当しております。具体的には、事業性評価に基づく本業支援や企業のライフス
    テージに対応した経営支援を実施するための各種方策を策定し、その実行にあたっては
    営業店毎担当者を定め、営業店と協働した取組みを行っております。


    c    融資管理部における取組
        融資管理部は、経営改善・事業再生支援先企業等に対する事業計画の策定支援や、支
    援先への直接訪問によるモニタリング、各営業店への臨店指導などを通じて対象企業の
    早期改善及び再建を果たすための支援を継続して行っております。
        また、被災企業に対する支援については、東日本大震災事業者再生支援機構、 (宮
                                           岩手
    城)産業復興機構と連携し、被災企業の事業再生支援や二重ローン問題解決へ向けた営
    業店サポートを行っております。両機構の対象とならない事業者で、且つ債権者間調整
    を必要とする中小事業者については外部の専門的なノウハウを活用するべく「中小企業
    再生支援協議会」と連携を強化し、再生支援へ向けた営業店支援態勢の整備を図ってお
    ります。


B       融資管理体制の整備
    当行では、スピードを重視した顧客本位の業務運営によるトップライン収益の向上を目
的として、平成 30 年度より営業推進部署である支店統括部が審査機能を担う体制とし、
営業推進及び融資審査を行ってまいりました。その結果、経営計画に掲げた一般貸出金は
増加し、特にも「成長予備軍」のお客様(正常先下位~要管理先)の貸出金残高は大幅な
増加となりました。一方で岩手県内の中小事業者の状況をみますと、労働力不足、販路の
減少等から経営に影響が出ているお客様も見受けられ、信用リスクの増加も懸念されてい
るところであります。
    本計画におきましても「成長予備軍」の中小事業者へ積極的にリスクテイクしていくこ
ととしており、信用リスクの抑制に向けて、ランクダウン防止への支援、及び事業再生支


                       12
援の必要性が増すことから、平成 31 年 4 月より破綻懸念先及び一部特定の正常先・要注
意先の案件審査担当部署を支店統括部から融資管理部へ移管し審査態勢の見直しを実施
いたしました。具体的には「3 億円超の新規案件」「破綻懸念先」「重点管理先」の案件
                        、      、
については、融資管理部にて審査を行うこととし、対象先の情報収集や調査分析、協議の
内容・密度について向上を図ってまいりました。
    また、令和1年10月からは、リスクの高い案件の審査に加え、審査に時間を要すること
が多い担当役員決裁以上の案件を融資管理部に移管したほか、条件変更(期限・回収方法・
その他)の稟議についても融資管理部に移管し、企業審査(信用格付・自己査定)を通し
た中間管理を継続する態勢に変更しております。


※重点管理先

 定例的なモニタリングにより経営実態を適切に把握したうえで、経営改善計画作成等の経営支援から、

抜本的な事業再生、経営改善支援や本業支援、廃業支援等に、積極的に関与する中小事業者



    【中小事業者の支援の流れ】




C   店別営業戦略(「営業店 PL」「アクションプラン」
                  、          )の策定
    当行の営業基盤である岩手県は国内でも有数の面積を誇り、地理的・気候的・歴史的に
様々な特徴を有しており、51 店舗の営業商圏、出店の経緯・歴史、地域シェア、市場環
境等、取り巻く環境等は異なっております。
    地域社会が抱える問題も地域毎に異なっておりその問題を認識し自律的かつ地域社会
との協働を図りながら地域問題の解決や地域としての価値を創造していくための力であ
る「地域力」を向上させていくことが求められております。
    従来は、営業店の業容等に応じて均質的な営業展開を行っておりましたが、地域特性に
応じたきめ細かい積極的な支援を目的とした中長期的営業店経営計画「店別営業戦略」を
決定し、各戦略に基づき、営業店ごとに地域力の向上に繋がる取組をしてまいりました。


                     13
    「店別営業戦略」を基本として、営業店収益の向上を目的とした年度計画を「営業店
PL」として定め、その達成に向けた具体的な行動として「アクションプラン」を策定して
おります。さらに今年度からは、「アクションプラン」に中小事業者の企業価値向上に繋
がる、中長期的な本業支援の実施を組み入れることにしております。
    店別営業戦略は、
           「営業店 PL」の全店合計が当行の PL となり、各営業店の「アクショ
ンプラン」の実践が、当行の持続可能なビジネスモデル「中小事業者への積極的な支援」
に結びついております。
    また、
      “地域力の向上”をテーマとする新中期経営計画の完遂、そして『地域金融機関
として地域社会の発展に尽くし共に栄える』経営理念に繋がる取組となるよう、今後にお
いても適宜その手法等について見直しを実施し、中小規模の事業者に対する信用供与の円
滑化、本業支援の深化に努めてまいります。




D   事業性評価体制の確立
    平成 27 年 7 月に中小事業者に対する円滑な資金供給に向け、担保、保証に過度に依存
することなく、事業性を評価した本業支援・金融支援を行うことを目的として事業性評価
を導入しております。
    事業性評価の更なる進化に向け、平成 29 年 4 月に事業性評価シートの改定を行い、平
成 30 年 3 月には、経済産業省の策定したローカルベンチマークを活用することで、中小
事業者と積極的に対話を重ね、同じ目線で事業内容の理解をより深められる体制としまし
た。
    また、当行が使用するローカルベンチマークでは、事業者と課題を共有し協働で課題解
決を図ることで更なる成長を支援する為、独自の「ソリューション提案シート」を策定し
事業性評価手法の改定を行っております。
    ローカルベンチマークを活用した事業性評価シートの作成数は、令和 1 年 9 月末で 413
先となり、取引先事業者(個人事業主を含む)の約 4.7%となっております。
    今後も、融資判断を担保や保証に過度に依存することなく、取引先事業者の商品力、技


                       14
術力、成長可能性などを分析する「事業性評価」に基づいて、企業価値向上に向けた金融
支援・本業支援に努め、積極的に中小事業者の支援に取組んでまいります。


【事業性評価(ローカルベンチマークから本業支援の概念図)】




E    人材育成
    中小規模の事業者に対する信用供与の実施に向けて、中小企業診断士の養成、本業支援
の深化へ向けた渉外課長研修の開催、農林水産業に係る専門資格者の養成、外部機関との
連携を通じた人材育成、その他各種研修を実施し、コンサルティング機能を発揮できる人
材の育成を行っております。


    a   中小企業診断士の養成
        中小企業の経営支援をはじめとした積極的な金融機能仲介を発揮するための人材を
    養成する一環として中小企業診断士の養成に取組んでおり、当行の令和 1 年 9 月末の中
    小企業診断士は 12 名となっております。
        今後においても、中小企業の経営支援に向けて、公募選抜等を活用し、資格保有者の
    増員、養成に向けて取組んでまいります。


    b   農林水産業に係る専門資格者の養成
        当行では日本政策金融公庫の農業・林業・水産業の各経営アドバイザー制度を通じ、
    地域産業である農林水産業の経営コンサルティング支援に係る有資格者を養成してい
    ます。
        当アドバイザー制度は「農林水産業の特性を理解した専門家から、税務、労務、マー
    ケティングなどについてのアドバイスを受けたい」という経営者の要望を受け、経営へ
    の総合的なアドバイスを実践できる人材を育成するため、日本政策金融公庫が平成 17


                       15
    年 2 月に創設したものであり、当行では平成 20 年以降、資格取得者の養成に取組んで
    まいりました。
        令和 1 年 9 月末現在、農業経営アドバイザー16 名、林業経営アドバイザーならびに
    水産業経営アドバイザーが各 1 名在籍しており、日常の業務を通じて地域の農林水産業
    者の経営支援に取組んでいます。
        当行では、中期経営計画において地域産業・企業の活性化支援に向けて地域の特性で
    ある農林水産業を起点として、地域産業の創出、成長へ向けた支援に取組むこととして
    おり、今後も農林水産業の業務特性を理解し、コンサルティング機能を発揮できる人材
    育成を図るため、上記アドバイザー有資格者の養成に努めてまいります。


    c    外部機関との連携を通じた人材育成
        東日本大震災事業者再生支援機構、岩手(宮城)産業復興機構の各機構を活用した再生
    支援の件数は、令和 1 年 9 月末までの累計で 112 先となっております。これらの案件に
    ついては、融資管理部が中心となり、外部コンサルタント等の様々な専門能力を有効活
    用し、営業店とともにお客様を訪問しております。今後の収支見込みの検討や再建のた
    めの資金対応を含めた具体的な計画策定等を協議しており、各機構との連携を通じ再生
    支援案件に対するスキル向上につながっております。
        この他、事業計画の策定等が必要なお客様に対しては、「中小企業再生支援協議会」
    や「よろず支援拠点」等を紹介しつつ、その事業計画の策定過程において営業店及び本
    部も関わることにより専門家のノウハウを吸収する機会となっております。


F       中小規模の事業者に対する信用供与の実施状況を検証するための体制
    中小規模の事業者に対する信用供与の実施状況を検証するための体制として、半期ごと
に開催する支店長会議において施策及び各種計画数値の徹底を図っております。また、営
業店長または渉外課長を対象に地域ごとに開催する「グループ会議」等で進捗状況の管理
を行っております。取組結果については、営業店業績評価、支店長人事評価シート等評価
を行い、営業店・行員のモチベーション向上に努めております。


    a   取締役会・常務会
        取締役会は原則毎月 1 回、常務会は原則毎週開催しております。取締役会には社外監
    査役 3 名を含む監査役 5 名、常務会には常勤監査役 2 名が出席し、ガバナンス強化に努
    めております。社外取締役については独立役員 2 名を選任し、第三者の客観的かつ中立
    的な視点を取入れた経営管理態勢としております。中小規模の事業者への信用供与を含
    む中期経営計画に基づく業務計画書においては期中及び期末において進捗状況を常務
    会に付議し、取締役会に報告することで、進捗状況の確認並びに以後の改善策・推進策
    等をチェックする体制としております。


                          16
    b   支店長会議
        全営業店長及び本部の部室長を対象に半期ごとに「支店長会議」を開催し、中期経営
    計画、単年度業務計画、重要施策についての徹底を図っております。令和 1 年度上期に
    おいても 1 回開催し、会議終了後には店格グループ毎の分科会を開催しております。


    c    グループ会議
        全営業店の営業店長または渉外課長を対象として、施策及び各種計数の進捗状況等を
    確認することを目的に営業店を地域ごとにグループとして区分けのうえ、「グループ会
    議」を実施しております。令和1年度は渉外課長を対象に8月に5会場にて開催を行って
    おります。会議では、営業推進施策の周知、また、重点支援先への取組みや本業支援の
    深化についての考え方の徹底を図っております。


    d   営業店業績評価
        当行では地方公共団体向け貸出金及び資金運用を目的とした市場性貸出を除く、主に
    中小企業、個人からなる貸出金を「一般貸出金」と定義し、一般貸出金利息収入への配
    分を高くした営業店業績評価としております。
        また、中期経営計画において「成長予備軍」「本業支援」に注力することを掲げてお
                            、
    り、令和 1 年度営業店業績評価については同項目への評価を高めるような評価体系とし、
    成長予備軍への支援、本業支援に対する取組強化を図っております。


    e   支店長人事評価シート
        顧客との長期的なリレーションのプロセスを評価するために平成 28 年度より「支店
    長人事評価シート」を導入し、事業性評価、与信管理、人事管理等の評価を行っており
    ます。
        平成 31 年 4 月に新中期経営計画がスタートし、その計画達成に向けて支店長の活動
    プロセスを評価に反映できるよう「支店長人事評価シート」の改定を実施しております。
    具体的には「営業店アクションプランの履行状況」「成長予備軍への取組状況」「重点
                           、            、
    支援先に対する取組状況」等の中期経営計画に掲げた基本戦略について評価項目を設け、
    その取組みのプロセスを重視した評価を行っております。


④   担保又は保証に過度に依存しない融資の促進その他の中小規模の事業者の需要に
対応した信用供与の条件又は方法の充実のための方策


A       重点支援先への支援
    当行では従前より「中小事業者への積極的な支援」のもと、“地域力の向上”の一助と


                         17
なるような取組みを実践してまいりました。そのなかで、事業者の抱える課題は様々であ
り、解決に至るまでには時間を要し、短期的な支援よりも中長期的な支援が数多く必要で
あることが把握されました。また、取組みの成果や結果については定性面のみならず定量
的に効果を検証して本業支援の有効性についてデータの蓄積を行い、営業店と共有しなが
ら当行全体のレベルアップすることが必要であると認識しました。
 そのようななか、本計画の基本戦略に「成長予備軍とのリレーション向上」を掲げ、中
小事業者の「企業価値」向上に繋がる、中長期的な本業支援の実施を組み入れ、当行を『心
のメイン』と感じる中小事業者を増やすこととしております。
 その方法として、
        「重点支援先」に対し、リレーションシップバンキングにより「企業
価値」の向上を図ってまいります。
 「重点支援先」の定義は、成長予備軍に該当し、経営者と関係性を構築できる中小事業
者で、当行取引有無やメイン・非メインは問わず、当行の本業支援を必要とし、当行が主
体的に意思を持って応援したい先となります。
 また「企業価値」の定義は、営業利益と減価償却費及び人件費を合算したものとなりま
す。
 基本的な支援の流れとしては、事業性評価を実施し、金融支援の短期継続融資を行い、
時間的な猶予を確保する中で本業支援に取組み、キャッシュフローを改善し、「重点支援
先」のランクアップを図ってまいります。
 具体的には、営業店にて対象先を選定し本部との協議で「重点支援先」の決定をします。
その後、事業性評価(ローカルベンチマークを活用)を実施したうえで、事業性評価ミー
ティングにて、ブラッシュアップを行い、
                  「企業価値」向上に繋がるソリューション提案
シートを策定し、実行に向けた営業店と本部の役割分担を決め、連携・支援してまいりま
す。また、定期的に「重点支援先」と営業店・本部の三者にて、「企業価値」向上の実現
に向けて、営業推進会議を開催し取組み状況等を確認してまいります。
 本部では本業支援の成果と深化の度合いを検証する為に、「重点支援先」のモニタリン
グを実施します。モニタリング項目は、対象先の債務者区分及び融資残高、金利等とし、
実行比率の向上やプロセスを評価してまいります。




                   18
【重点支援先への支援実施フロー】

                                           対象先の選定


○事業性評価の実施
営業店にて対象先の事業性評価(ロカベン)を実施
経営課題解決・企業価値向上に向けて実施する本業支援について「ソリューション提案シート」へ落とし込み



○本業支援ミーティング開催
営業店・支店統括部・地域応援部の三者で「本業支援ミーティング」を実施
「ソリューション提案シート」の本業支援内容についてブラッシュアップを行い、対象先の企業価値向上(直近決算での企
業価値を基準とする)に向けたソリューション、役割分担(営業店・地域応援部)を決定



○対象先との面談(グリップ)
本業支援をスタートするにあたり対象先と面談を実施(営業店・必要に応じて地域応援部帯同)、ミーティングを踏まえて
抽出された経営課題やソリューション、本業支援の内容、定期的な営業推進会議の開催等について対象先と確認・共有する



○本業支援の実施
「ソリューション提案シート」に則り、営業店・地域応援部が連携し本業支援を実施
進捗状況をKeyManのPDCAシートにて管理



○営業推進会議の開催
対象先・営業店・地域応援部の三者で「営業推進会議」を開催し、本業支援の取組状況や成果について対象先と確認し合い
ながらPDCAを回す



                              対象先の「企業価値の向上」の実現




【重点支援先モニタリングシート】
【重点支援先】本業支援の深化(モニタリング状況)                                                                       基準月:2019/9/30時点

    顧客ID              顧客名                                                               店番

 直近決算期                 業種                                                               店名


    選定事由


                                                                                                   【単位:千円、%】

      決算期                              (基準期)            (1年後)            (2年後)                (3年後)
                             前期比           前期比                  前期比      前期比     基準期比          前期比    基準期比
企業価値
     営業利益
     減価償却費
     人件費
有利子負債額
     東北銀行
     A銀行
     B銀行
     その他
格付
            月末残高
貸出残高
            平均金利

            月末残高
     商業手形
            平均金利

            月末残高
     手形貸付
            平均金利

            月末残高
     証書貸付
            平均金利

            月末残高
     当座貸越
            平均金利

     起業創業支援
 本 営業支援
 業
   マッチング支援
 支
 援 経営改善支援
     6次産業化支援
金融支援
※    基準値は2019年3月末現在の直近決算値とする。各指標値は、各年度の決算月の値。             ※ 平均金利は月末残高との加重平均により算出。
※    企業価値 = 営業利益 + 原価償却費 + 人件費。KeyMan財務情報(公表)数値。          ※ 本業支援件数は、PDCAシートの登録件数。各年度の実施内容2件まで表示。
※    有利子負債はKeyMan銀行取引明細の割引を除く「長期/短期」借入額の合計値。




                                                   19
【支援事例 1】
業績改善へ向けた「重点支援先」への金融支援事例
 本事例のお客様は、泌尿器科、脳神経外科の専門病院として開業した地域医療機関
です。
 東日本大震災以後、地域人口の減少による業績の悪化や、常勤医師の高齢化、医師
不足等の課題を抱えておりました。当行は地域医療の維持に向けてお客様とともに経
営改善計画を策定し、循環器内科の新設、オペ室の改装、長期的な資金繰りに基づく
資金調達、IT 活用による業務効率化や安全性の確保、他の地域病院との連携等の検討
を行ってまいりました。その結果、改善に向けた各種効果が十分見込めることから、
診療科新設のための設備資金対応、新設科が軌道に乗るまでの運転資金対応、資金繰
り改善までの時間的猶予を確保するための資金対応を実施いたしました。
 今後におきましても、計画進捗モニタリングを行い、当病院の企業価値向上に向け
た本業支援を行っていくこととしております。本事例は地域医療の維持に寄与する取
組みとなった事例となっております。



【支援事例 2】
リファイナンスによる重点支援先への金融支援事例
 本事例のお客様は、創業 40 年を超える東北地方を中心とした運送業を営むお客様
です。
 お客様は業務拡張を目指すなか、多額の設備投資を行い、売上高は増加したものの、
固定費の負担も増加しました。また、原油高騰による燃料費の増加、東日本大震災の
影響を受け、収益状況が悪化し、資金繰りも圧迫している状態となりました。そのた
め、当行では東日本大震災事業者再生支援機構を活用した事業再生支援に取組んでま
いりました。改善計画に則った事業運営により再生計画 5 期すべてにおいて計画を上
回って業績が推移し、債務超過の解消にも目途が立ちました。そのような状況のなか、
お客様はメイン行との関係性に不安を持ち、当行では事業の方向性等様々な相談に乗
ってまいりました。
 当行では、お客様の業況を鑑み、機構からの Exit 可能と判断し、金融債務の長短
バランス見直しを含めた資金繰り改善策を協同で策定、新事業改善計画書が第三者認
定機関の承認を得て、新計画書を基に金融支援としてリファイナンス資金の対応を行
いました。今後においては、本業支援を実施し、お客様の企業価値向上に向けた取組
を行ってまいります。本事例は、従業員の雇用維持、地場企業の永続的発展につなが
る事例となっております。




                 20
B   経営者保証に関するガイドラインへの対応
    平成 25 年 12 月 5 日に公表された「経営者保証に関するガイドライン」
                                          (以下、
                                             「ガイド
ライン」という。
       )を踏まえ、内部基準の見直しを実施し、新規の無保証融資や保証契約
の解除等に取組み、被災企業を含む中小規模の事業者への円滑な資金供給に取組んでまい
りました。
    今後も引き続きガイドラインに則して、中小規模の事業者の経営状況等を勘案し、経営
者保証に過度に依存しない融資の促進を図るとともに、保証契約締結の際や保証債務の整
理の申出において誠実な対応を行ってまいります。


【「経営者保証に関するガイドライン」の活用状況の実績】
                                                             (単位:件)
                    H29 年度      H29 年度    H30 年度    H30 年度     R1 年度
        項   目
                      上期          下期        上期        下期        上期

     新規に無保証で融資した
                     704         795       906       821        892
          件数
 経営者保証の代替的な手法として
                      4           0         4         1          0
    ABL を活用した件数
      保証契約を解除した
                     106         166       106        89        72
          件数
      保証債務整理の成立
                      0           0         1         0          0
          件数
 新規融資に占める経営者保証に依
                    18.90%       20.42%    23.78%   22.29%    24.18%
    存しない融資の割合


C   各種ビジネスローン
     中小事業者に対する円滑な資金供給や環境保全への取組みを金融面から積極的に支
    援していくために、利便性の高い各種ビジネスローンの開発に取組んでおります。平成
    26 年上期には地域活性化に取組む事業者に対して積極的な支援を目的とした事業性融
    資商品「とうぎん雇用拡大支援ローン(人増繁盛)「とうぎん創業支援ローン(起業の
                          」
    とびら)」の取扱いを開始しております。また、
                         「ビジネスローン 1000」については、
    新規先や復旧・復興需要にスピーディな対応をすることを目的に商品内容を改定し「と
    うぎん復興ビジネスローン 2000」として取扱いを行っております。また、
                                       「とうぎん医
    療・介護ローン」では、
              「はるかプラン(運転資金・設備資金)」「みらいプラン(開業資
                                 、
    金)」「きずなプラン(賃貸用医療介護福祉施設等の設備資金)」の 3 つをラインアップ
       、
    し、医療・介護事業者への資金供給を行っております。
     各種ビジネスローンについては、お客様のニーズに対応するよう商品性の見直し、商
    品開発を検討し、中小規模の事業者への円滑な資金供給に努めてまいります。




                           21
【各種ビジネスローンの実行実績】
                                              (単位:件、百万円)
                                       震災後~令和 1 年 9 月末
              商品名
                                 取扱件数         実行金額        残高
    とうぎん復興ビジネスローン 2000          2,035 (62) 14,987 (399)   1,726
    とうぎんエコ・ローン                     79 (3) 6,673 (313)     4,321
    とうぎん農業ローン「アグリビジョン」             31 (1)     150  (6)       16
    とうぎん創業支援ローン「起業のとびら」            89 (8)     289 (24)      161
    とうぎん雇用拡大支援ローン「人増繁盛」            32 (0)     440  (0)      138
    医療・介護ローン「はるかプラン」               61 (3) 5,060 (72)      4,478
    医療・介護ローン「みらいプラン」                8 (1)     490 (59)      402
    医療・介護ローン「きずなプラン」               14 (0) 2,294    (0)    2,097
         ※(   )内は平成31年4月~令和1年9月の実績



D    短期継続融資への取組
    当行では、事業性評価に基づき中小事業者の CF 改善、継続的なモニタリングによるリ
レーション強化へ向け、平成 29 年 7 月より短期継続融資の積極的な取組みを行ってまい
りました。本取組みは、自己資本の脆弱な中小事業者への事業性評価を実施したうえで、
事業継続に必要な運転資金を疑似資本の性格を持つ短期資金で金融支援し財務改善及び
資金繰り改善を図ることを目的としております。加えて、継続的な面談による実態把握を
行うことでリレーションの強化を図っております。
    特にも、成長予備軍に対しては本業支援による経営改善等の企業努力の成果がでるまで
には相応の時間を要することから、短期継続融資を時間的な猶予を確保する為の金融支援
と位置づけ活用しております。さらに、平成 30 年 9 月にはプロパー短期継続融資「グロ
ーリング」の取扱いを開始し、令和 1 年 9 月末の実績は 51 件 2,144 百万円となっており
ます。
    本計画期間におきましても、成長予備軍を中心に短期継続融資を積極的に活用し、中小
事業者へ信用供与の円滑化を図ってまいります。




                           22
     【短期継続融資(グローリング)の活用事例】




(2) 被災者への信用供与の状況及び被災者への支援をはじめとする被災地域における東日
     本大震災からの復興に資する方策


① 当行の体制(震災復興推進本部)
 平成 23 年 5 月に震災復興推進本部を設置し、本部各部・営業店が被災地域の現状、課題
等について共通認識をもって取組む体制を構築してまいりました。震災復興推進本部におい
て、「震災復興推進本部活動報告書」を作成し、毎月定例的に報告を行ってまいりました。
 今後も引き続き「震災復興推進本部活動報告書」にて復旧・復興資金の実行実績、各機構
の活用状況、被災地域の現状等、定例的にモニタリングを行い、被災地域の状況把握に努め
てまいります。


② 返済に関する柔軟な対応
 当行は、震災による甚大な被害状況を踏まえ、返済猶予の申出が「震災に伴う理由である
こと」かつ「約定弁済を停止(据置)することに妥当性があること」に該当するものと判断
した場合には、約定弁済を一時停止する取扱いを迅速に実施してまいりました。また、震災
の影響を受け、約定弁済の履行に支障をきたしている事業者や個人のお客様からの融資条件
の変更について適切に対応してまいりました。
 震災関連の約定弁済の一時停止については、被災者ニーズが収束しているため、新規相談
案件が発生する可能性は低いと想定しておりますが、条件変更については、経済情勢の変化
等により、再度条件変更の申出も想定されます。被災事業者の経営状況のモニタリング等を
通じ、外部機関とも連携を図りながら柔軟な対応を行ってまいります。


 A   事業性融資のお客様
     事業性融資のお客様について、震災後から令和 1 年 11 月までに約定弁済の一時停止を


                       23
 累計 370 件/138 億 26 百万円実施しました。お客様との個別面談や事業再生計画の策定支
 援などを通じ、一時停止先は既に解消されております。また、1,093 件/192 億 8 百万円の
 融資条件変更に応じ、条件変更への弾力的な対応を行ってまいりました。


 B   住宅ローンのお客様
     住宅ローンのお客様について、約定弁済の一時停止を累計 196 件/18 億 80 百万円実施
 しました。お客様の現状・実態把握に努め、令和 1 年 11 月現在で約定返済が一時停止と
 なっているのは 1 先となりました。また、75 件/9 億 16 百万円の融資条件変更に応じ、条
 件変更への弾力的な対応を行ってまいりました。


【約定弁済一時停止実績、融資条件変更実績】
                                                            (単位:先、百万円)
                         H23 年 3 月~R1 年 11 月                R1 年 11 月末一時停止先

               約定弁済一時停止実績              融資条件変更実績

                先数         金額         先数           金額        先数       金額

     事業性融資        370      13,826      1,093       19,208         0        0
     住宅ローン        196       1,880          75         916         1        0
 消費者ローン等             7           6             0        0         0        0
      合計          573      15,712      1,168       20,124         1        0


③ 復旧・復興資金への対応
 東日本大震災の発生直後から積極的に金融支援に取組み、復旧・復興資金については、震
災後から令和 1 年 11 月までに 4,392 件/1,043 億 61 百万円実行しました。また、震災によ
る被害が甚大であった地域の営業店を被災店(宮古・宮町・釜石・大船渡・高田・南気仙沼・
石巻支店の 7 ヶ店)と定義し、同地域への復旧・復興資金の融資実行は令和 1 年 11 月までに
2,129 件/599 億 95 百万円となりました。


 A   事業資金
     震災直後から、「とうぎん復興ビジネスローン 2000」
                               、信用保証協会保証付融資制度、
 被災者の負担軽減に繋がる自治体等による利子補給制度も活用しながら、復旧・復興の段
 階に合わせ、被災者の要望に応じた支援を行ってまいりました。
     平成 31 年 4 月から令和 1 年 11 月までの運転資金の実績は 27 件/19 億 14 百万円、設備
 資金の実績は 13 件/1 億 83 百万円であり、合計 40 件/20 億 97 百万円となりました。震災
 初年度をピークに復旧・復興資金のニーズは減少傾向にありますが、復興事業に係る建設
 業等の運転資金、土地造成事業や社屋設備資金等の需要は継続していることから、引き続
 き積極的な対応を行ってまいります。

                                 24
 B    個人向けローン
     震災直後から、特別金利のマイカーローン、復興支援住宅ローン等を活用しながら、個
 人のお客様の要望に応じた支援を行ってまいりました。
     平成 31 年 4 月から令和 1 年 11 月までの個人ローンの実行実績は 9 件/2 億 28 百万円と
 なりました。住宅建設需要についてはピークアウト感がありますが、津波による被害が甚
 大であった沿岸部を中心に引き続き積極的な対応を行ってまいります。


【復旧・復興資金の実行実績】
                                                                    (単位:件、百万円)
            前計画期間まで           平成 31 年 4 月~
                                                           累計               うち被災店
          震災後~平成 31 年 3 月     令和 1 年 11 月

           件数       金額        件数             金額       件数        金額        件数      金額

事業資金
            2,809    60,472        27        1,914    2,836      62,386    956    26,525
(運転)

事業資金
              893    30,717        13         183      906       30,900    614    23,924
(設備)

     住宅
              503    9,922         9          228      512       10,150    444    8,676
    ローン

    消費者
              138      923         0              0    138         923     115      868
    ローン

     合計     4,343   102,036        49        2,325    4,392     104,361   2,129   59,995



④    復興支援住宅ローン、復興支援アパートローンによる被災者支援
 住宅再建支援および賃貸住宅着工によるインフラ整備のため、平成 24 年 3 月に発売しま
した復興支援住宅ローン『未来飛行』
                、復興支援アパートローン『日あたり良好』により、
被災者支援を行ってまいりました。復興支援住宅ローンは、お客様から保証料をいただかな
い商品として通常の住宅ローンよりも金利を引き下げて取組みを行い、令和 1 年 9 月までに
359 件/83 億 35 百万円の融資を実行しております。
                             復興支援アパートローンにおきましても、
通常のアパートローンよりも金利を引き下げて取組みを行い、
                           令和 1 年 9 月までに 114 件/52
億 77 百万円の融資を実行しております。
 住宅ローン、アパートローンともにピークアウト感はありますが、沿岸被災地を中心に本
部・営業店が連携を密にし、積極的な支援を行ってまいります。




                                        25
【復興支援住宅ローン・復興支援アパートローンの実績】
                                                                 (単位:件、百万円)
           前計画期間まで         平成 31 年 4 月~
                                                       累計            うち被災店
         震災後~平成 31 年 3 月    令和 1 年 9 月

          件数       金額      件数            金額       件数        金額      件数    金額

    復興
             351   8,135        8         200      359      8,335   303   6,964
住宅ローン

    復興
             114   5,277        0             0    114      5,277    89   4,018
AP ローン



⑤   中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業等の活用支援
 震災からの復旧復興を目指すお客様に対して、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事
業等の活用を案内するのみでなく、補助金が交付されるまでのつなぎ融資や自己負担部分へ
の融資を支援しております。
 平成 31 年 4 月から令和 1 年 9 月までの、中小企業等グループ施設等整備補助事業に関す
る補助金つなぎ融資の実績は 2 先/53 百万円、また、令和 1 年 9 月までの累計は 85 先/85
億 45 百万円、自己負担部分への融資対応実績は 20 先/12 億 61 百万円となっております。
 また、漁業者団体や水産加工流通業者等の復興を支援するための水産加工場施設整備事業
等を活用されるお客様への対応を行い、水産加工場施設整備事業に関する補助金つなぎ融資
の実績は令和 1 年 9 月までの累計で 8 先/23 億 10 百万円、自己資金部分への融資対応は 6
先/3 億 48 百万円となっております。
 中小企業等グループ施設等整備補助事業等に関する、補助金つなぎ融資の取扱いは続いて
おり、震災復旧復興に向けた施設整備支援等を今後も継続して参ります。また、水産加工場
施設整備事業等に関する、補助金つなぎ融資についても同様であり、地元企業の成長や地域
雇用の拡大といった、被災地域の活性化支援も続けて参ります。




                                    26
  【支援事例 3】
  グループ補助金を活用した銀鮭養殖事業を営むお客様への支援事例
   本事例のお客様は、地域の生産者の協力を得て、養殖銀鮭の生産においてトップラ
  ンナーの地位を築いてまいりました。しかし、東日本大震災において養殖施設が壊滅
  的な打撃を受け、さらに福島原発事故による風評被害で輸出の販路も絶たれてしまい
  ました。
   この状況を打開するためには従前の銀鮭をより多く生産するビジネスモデルでは
  難しく、差別化された品質の銀鮭を生産し付加価値を高める必要がありました。その
  ため、お客様は、県の協力のもと養殖用銀鮭について地理的表示保護(GI)の認定を
  受けましたが、保管倉庫が無く、機会損失が多い状況でした。そこで、これらの課題
  を解決するためグループ補助金を活用した事務所倉庫建設を計画いたしました。
   当行では、復興支援としてグループ補助金のつなぎ資金融資による支援を行いまし
  た。本事例はグループ補助金を活用したお客様への支援に加え、地場産品ブランド化
  構築の一助として、地域経済活性化に繋がった事例となっております。



⑥ 東日本大震災事業者再生支援機構及び岩手(宮城)産業復興機構の活用支援
 東日本大震災事業者再生支援機構及び岩手(宮城)産業復興機構を活用し、過大な債務を背
負い被災地域において事業の再生を図ろうとする事業者に対して、二重債務を解決するため
の支援を行っております。
 令和 1 年 12 月末において、東日本大震災事業者再生支援機構を活用し、支援・買取が決
定したお客様は 55 先となっております。また、岩手産業復興機構を活用し、支援・買取が
決定したお客様は 44 先、宮城産業復興機構を活用し、支援・買取が決定したお客様は 13
先となっております。
 今後も、新規の相談案件はもちろんのこと、機構を活用したのち、経営再建計画が当初計
画通り進まない事業者への各機構と連携した経営相談を強化することで事業者の経営改善
支援・事業再生支援に努めてまいります。
 一方、機構を活用したお客様のなかには、東日本大震災の発生後 8 年 9 ヶ月が経過し、当
初事業計画を上回って業績が好調に推移しているお客様もおります。機構債権については、
DDS 化等により金利負担が低減されている等のお客様にとっては有益なものもある一方で、
コベナンツ条項等により経営の自由度が一定程度制限されている場合もあります。そのよう
なことからも、業績が好調に推移しているお客様においては、その後のモニタリングの中で
早期に機構債権を完済し、事業再生を完了したい等のニーズも存在します。引続き、モニタ
リングによるお客様との対話を継続し、早期に事業再生の完了がなされるよう支援に努めて
まいります。




                    27
【各機構の活用実績】
                                                                   (単位:件)
                     ~平成 31 年       平成 31 年 4 月~                    新規融資
                                                       累計
                       3 月末         令和 1 年 12 月                      対応額

  東日本大震災事業者再生支援機構              55                 0           55      21 億円

     岩手産業復興機構                  44                 0           44      11 億円

     宮城産業復興機構                  13                 0           13       3 億円

        合計                    112                 0         112       35 億円



【リファイナンスによる各機構からの Exit 支援の実績】
                                                      東日本大震災
                      岩手               宮城
                                                      事業者再生          合計
                    産業復興機構          産業復興機構
                                                       支援機構

   リファイナンス支援先数             13 件             1件              9件          23 件

   リファイナンス支援金額       989 百万円            2 百万円          575 百万円     1,566 百万円



   【支援事例 4】
    機構買取債権の一括返済による事業再生完了支援事例
     本事例のお客様は、地域に水揚げされる魚介類等を主原料とする水産加工業を営ん
    でおりましたが、東日本大震災により工場等が流出する等の甚大な被害を受けまし
    た。工場再建に伴い、いわゆる二重ローンの状態となった為、産業復興機構による債
    権買取支援を受け事業再生を図りました。
     その後、度重なる原料の不漁等の厳しい事業環境におかれながらも、事業再生計画
    の達成に向け、新商品の開発や販路回復等の懸命な企業努力及び関係機関の本業支援
    等により収支が改善してきておりました。
     一方、機構による支援期間中においては、契約上、一定程度経営の自由度が制限さ
    れていることもあり、お客様は機構買取債権の一括返済の検討を開始いたしました。
     当行では、お客様からの相談を受けて、同社の業績のみならず、地域の中核企業と
    しての地域貢献度等も十分に考慮し、従前からのメイン行として取引金融機関等の取
    りまとめを行い、リファイナンス資金の対応を行いました。本事例は、買取債権につ
    いて機構へ一括返済を行い、事業再生が完了した支援の事例となっております。




                         28
  【支援事例 5】
   機構買取債権の一括返済による事業再生完了支援事例
    本事例のお客様は、沿岸地域において水産加工業を営んでおりましたが、東日本大
   震災により、事務所、加工場等の全ての営業用資産が流出する等、甚大な被害を受け
   ました。さらに、代表者も震災による津波に巻き込まれ、お亡くなりになるなど人的
   被害も甚大なものでありました。
    一時は廃業も検討しておりましたが、事業承継および生産設備再建に伴い、二重ロ
   ーンを解消する為に東日本大震災事業者再生支援機構による債権買取支援等を受け、
   事業再生を図りました。その後、事業再生計画に基づき復興を進めておりましたが、
   途中、売上の大半を占める大口先との契約が途切れることとなり、計画の見直しを迫
   られる事態となりました。
    そのようななか当行では、自社製品の製造販売への方向転換を主とする事業計画の
   再策定支援を実施し、
            「フードセレクションへの参加」「ふるさと納税返礼品として
                           、
   の売込み」、生産効率改善の為の「モノづくり補助金申請支援」等、伴走型の本業支
   援を行ってまいりました。その結果、販路が拡大され、事業展開の再構築にも目処が
   つきました。
    機構による支援期間中においては、契約上、一定程度経営の自由度が制限されてい
   ることもあり、事業者は機構に対する一括返済の検討を始め、当行では、事業者から
   の相談を受けて、リファイナンス資金の対応を行い、機構への一括返済を実施、事業
   再生が完了した支援の事例となっております。



⑦ 「個人版私的整理ガイドライン」の活用支援
 当行では、東日本大震災で被災されたお客様に対して、生活再建に向けた積極的な支援を
行っております。なかでも、個人版私的整理ガイドラインを活用した二重債務問題の解決に
力を入れてきており、令和 1 年 12 月までの累計で、債務整理開始の申出が 39 件、うち弁済
計画案が示された 30 件(うち当行が決裁権限者となるものは 18 件)すべてについて債務整
理が決定し、本制度を活用して債務整理を行ったお客様に対して、新たな住宅資金の供給を
行った事例も出てきております。
 また、防災集団移転促進事業について、土地買上代金の全額を債権に充当してもなお債務
が残る場合であっても、当該抵当権の解除に応じる対応を行うなど、復興に向けた柔軟な対
応を行っております。
 今後については、変化する被災地のニーズに対応するべく、それぞれのお客様に合った支
援策の提案・実行を行ってまいります。また、本制度を活用して債務整理を行ったお客様へ
の住宅資金の対応、ガイドラインの周知及び利用促進についても、ポスターやパンフレット
を活用し、引き続き積極的に取組んでまいります。


                      29
(3)       その他主として業務を行っている地域における経済の活性化に資する方策


 ① 創業又は新事業の開拓に対する支援に係る機能の強化のための方策


  A    アグリビジネス支援


      a   ビジネスマッチングの強化
          当行では、一層の農林水産事業者の成長・発展を図り、地域経済の活性化に向けて中
      長期的な伴走型本業支援に取組むこととしております。具体的にはアグリビジネスに取
      組んでいる事業者に対する売上拡大や 6 次産業化(商品企画・開発)に対し、ビジネス
      マッチングの取組みを強化して支援を実施しております。
          商品等登録件数、マッチング件数それぞれの件数について増加傾向となっており、ビ
      ジネスマッチングを強化した取組みが浸透してきている状況にあります。
          ビジネスマッチングは、成約してお客様の売上増加に寄与するまで時間を要す取組み
      であることから、支援先数の増加を図るとともにモニタリングを通じて継続的な伴走支
      援として取組んでまいります。


  【ビジネスマッチングモニタリングの状況】
                                 R1/1Q             R1/2Q
      アグリ 16 業種融資取引先数                    1,624 先           1,608 先
      アグリ 16 業種融資残高              30,434 百万円        31,912 百万円
      商品等登録件数                               3件               13 件
      マッチング件数                               5件               30 件
      マッチング成約件数                                0              1件
      マッチング成約高                                 0                 0
      マッチング手数料                                 0                 0
      6 次産業化(商品化)着手件数                       2件                2件
      6 次産業化(商品化)件数                            0                 0
          ※商品登録件数:営業店にて“売りたい”“仕入れたい”“製造を依頼したい”等のニーズを顧客
                             、      、

           から「とうぎんビジネスマッチングサービス申込書」を徴求し行内イントラネットワークに登録

           した件数

          ※マッチング件数:ニーズに対し他の営業店が対応して自店の顧客に紹介した件数



      b   ファンドを活用した長期伴走型支援
          当行では、長期的な安定資金を必要としている事業者に対する資本性資金提供の他、
      出資者の連携による「経営面へのコンサルティング」「販路拡大等の伴走型支援」を行

                            30
い、事業者の成長を促すことを目的とし、平成 31 年 2 月に「とうぎん・もりしんアグ
リ投資事業有限責任組合(呼称:“とうぎん・もりしんアグリファンド”」を設立して
                                 )
おります。
    令和 1 年 9 月までに、 5 回の経営支援委員会を GP および LP と開催し、
                  計                            ファンド候
補先に係る要件の確認や出資・配当についての意見交換を行っております。また、候補
先の抱える課題解決に向けて、各 GP・LP におけるノウハウを提供しながら、経営支援
委員会で議論しています。
    今後、各候補先の事業計画が固まり次第、出資に向けた検討を重ね、お客様の企業価
値向上を目的として、積極的なハンズオン支援に取組んでまいります。


c   各種商談会を活用した販路拡大支援
    当行では、地域のお客様に最適な商談会等ビジネスマッチングの機会を提供し、売上
や販路拡大の支援に取組んでおります。
    平成 29 年より参画している地方銀行フードセレクションでは、地方の事業者が首都
                                  「
圏を中心とした販路の拡大に取組む絶好の機会」ととらえ、出展企業毎に支店担当者を
配置し当行独自のサポートに取組んでおります。今年度も 11 社の事業者が参加し、各
支店担当者は「お客様の事業や商品の特徴・特性」を理解した上で商談会にてサポート
を実施し、商談会終了 1 年間を目途に、売上拡大に向けた伴走型の支援に取組んでいく
こととしております。
    今後も各種商談会を通じた販路拡大・売上拡大支援に、お客様に寄り添って取組んで
まいります。


    【令和 1 年度の商談会の実績】
                                      地方銀行
       商談会名    いわて食の大商談会                           沖縄大交易会
                                   フードセレクション

       開催地         盛岡市                 東京都           沖縄県

              岩手県、岩手県産(株)、         フードセレクション       沖縄大交易会
       主催団体
                 県内金融機関            実行委員会(各地銀)       実行委員会

       開催日       令和 1 年 6 月          令和 1 年 9 月    令和 1 年 11 月

                 バイヤー:181 社        バイヤー:13,412 名    バイヤー:305 社
       開催規模
                   出展者:101 社         出展者:1,031 社     出展者:345 社

     当行誘致先数         19 社                11 社           3社




                              31
    【支援事例 6】
    若者の就農機会を創出するアグリビジネスへの支援事例
     本事例のお客様は、東日本大震災の影響による急速な人口減少に加え、様々な地域
    産業が衰退していくなか、新農業の創成・地産地消・地域活性・地域雇用・6 次産業
    化をテーマに、若者が集い魅力ある会社として地域貢献できる企業を創り上げたいと
    いう想いで地元有志により設立された企業です。
     お客様の事業は、稲作事業、オリーブ栽培事業、苔栽培事業となっております。稲
    作事業は、農業認定者法人を目指し、担い手事業に参入、日本ブランドとして海外輸
    出も視野に入れながら事業展開を目指しております。オリーブ栽培事業は、当地域の
    産学官を巻き込み「北限のオリーブ」として実証事業が進められ、ブランド化を目指
    しており、オリーブオイルとして 5 年後を目途に出荷・販売を見込んでおります。苔
    栽培事業は、労力の小さい農業として、県が栽培を実験している事業で、高齢化する
    農業従事者の事業転換が見込まれております。すべての事業に共通し、地域雇用や地
    域創生を目的とした新分野への取組みであります。
     当行ではお客様の事業を支援するため、日本政策金融公庫と連携・協力し、協調融
    資による設備・運転資金の供給を行っております。本事例は若者の就農機会を創出し
    地域力の向上に繋がるアグリビジネスでの創業支援事例となっております。




B    医療・介護ビジネス支援


    a「とうぎん医療・介護ローン」による支援
     当行では、平成 26 年 5 月より「とうぎん医療・介護ローン」の取扱いを開始し、医
    療・介護事業者へ必要な資金を円滑に提供することで支援を行ってまいりました。「と
    うぎん医療・介護ローン」では、
                  「はるかプラン(運転資金・設備資金)、
                                    」「みらいプラ
    ン(開業資金)、
           」「きずなプラン(賃貸用医療介護福祉施設等の設備資金)」の 3 つをラ
    インアップしています。
     医療・介護に関する需要は、高齢化率の上昇により増加が見込まれており、今後も引
    き続き施設整備が求められています。当行では、「とうぎん医療・介護ローン」を通じ
    医療介護事業者へ円滑な資金供給を行い、令和 1 年 9 月末時点の残高は 69 億 78 百万円
    となっております。
     当行では、引き続き「とうぎん医療・介護ローン」を通じ、金融機関として地域にお
    ける医療・介護事業に対する支援を積極的に取組んでまいります。




                        32
② 経営に関する相談その他の取引先の企業に対する支援に係る機能の強化のための方策


A   行内イントラネットワークの有効活用
    当行では平成 28 年 4 月より、本部及び営業店が営業活動の中で把握した中小事業者の
様々なビジネス情報について、行内イントラネットワークを活用して僚店間でその情報を
共有し、販路開拓、不動産ニーズ、本業支援等のお客様同士の様々なマッチングに貢献で
きる態勢の整備に努めております。


    ■   とうぎんボード
     取引先の要望を登録し、各営業店から幅広く情報を集めて解決に向けた支援に活用し
    ている掲示板です。令和 1 年度上期の紹介件数は昨年度を超える実績となっており、と
                                           「
    うぎんボード」を活用した支援が浸透してきております。


     【活用実績】
                   登録件数          紹介件数       成約件数

        H30 年度通期          87 件      102 件          9件

        R1 年度上期           44 件      111 件          2件


    【支援事例 7】
    「とうぎんボード」を活用したマッチング支援
        A 支店では、学校給食向けの食品卸売業を営むお客様から、有機 JAS のほうれん草
    の県内仕入先を探しているという相談を受け、「とうぎんボード」を活用して情報収
    集を行っていました。
        B 支店では、経営が低迷しているほうれん草農家のお客様の経営改善を支援してお
    り、販路の拡大が急務であると認識し、「とうぎんボード」の情報を取引先に紹介し
    成約となった事例です。
        ほうれん草農家のお客様は卸売市場を主たる販売先としていますが、本件の取引単
    価は従来の倍程度の単価となり経営改善に大きく寄与しております。食品卸売業を営
    むお客様も今回の取引に満足され、来年以降の取引も確約となっております。
        本事例は、「とうぎんボード」で情報を幅広く収集した後「とうぎんビジネスマッ
    チングサービス」に移行するマッチングとなっており、今後、ほうれん草農家のお客
    様から売上高に応じた紹介手数料をいただける事例となっております。


    ■   とうぎんビジネスマッチングサービス
     取引先同士の商取引をマッチングする掲示板で、販路拡大や課題解決等、両者の本業

                           33
支援に活用しております。本サービスの提供により商談成約となった際には、取引先よ
り成功報酬として手数料をいただいております。令和 1 年度上期の「とうぎんビジネス
マッチングサービス」の実績は登録件数、紹介件数が前年度実績を既に上回って推移し
ております。


  【活用実績】
              登録件数          紹介件数         成約件数

  H30 年度通期     26 件             37 件     37 件

   R1 年度上期     31 件             55 件     12 件


 【支援事例 8】
 「とうぎんビジネスマッチングサービス」を活用したマッチング支援
  A 支店では、過去に経営が低迷していた製造業の X 社と新規取引を開始し、事業性
 評価を行う過程で洗浄効果や消毒効果のあるウルトラファインバブル水発生器の特
 許に着目、販路拡大を支援するため「とうぎんビジネスマッチングサービス」を活用
 して新たな販路を探していました。
  一方、B 支店では、養豚業のお客様の支援において、豚が夏場の肺炎等で死亡する
 ケースが多く、事故率低減が経営課題であると認識し、改善策を模索していました。
  A 支店と B 支店は両者の引合わせを行い、X 社からウルトラファインバブル水発生
 の養鶏業での事故率及び臭気等の減少の実績や効果等のプレゼンテーションが行わ
 れました。養豚業のお客様からは、多い月で 100 頭ほど死亡しており、薬剤を使わず
 に死亡率が低減するのであれば購入したいとの話があり成約となったものです。
  本事例は、両社の経営支援に繋がったほか、当行では X 社の売上代金の一部を紹介
 手数料としていただいた事例となっております。



【行内イントラネットワークの活用イメージ】


                      とうぎんボード
             とうぎんビジネスマッチングサービス




  お客様        営業店                   営業店    お客様

                   ビジネスマッチング
             販路情報・仕入先の発掘・不動産情報等

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B   地方自治体との連携
    当行では、地方創生に向けた連携協定を締結した自治体への支援や地域の活性化に繋が
るような地域特産品の開発支援、その他地域の抱える課題解決に資する取組みを通じて、
地方創生に貢献しております。
    連携協定を締結している遠野市へは、前計画期間に第三セクター等経営体強化を目的と
して行員を派遣し 3 か年の経営計画の策定支援を実施いたしました。さらに、本計画期間
では、遠野市が設置した経営改善プロジェクトに参画し、外部コンサルタントや人材紹介、
改善計画の実行支援等を実施しております。
    また、同じく連携協定を締結している洋野町へは、洋野町総合計画審議会に委員として
参画し、今後第 2 期総合戦略の策定支援を実施する予定となっております。
    今後も自治体への支援のほか、各方策に則って地域の産業を支援することで、地域経済
の活性化に取組んでまいります。


③ 早期の事業再生に資する方策


A   中小企業再生支援協議会の活用支援
    債権者間調整を必要とする事業者について、外部の専門的なノウハウを活用するべく、
中小企業再生支援協議会(以下、
              「協議会」という)を活用した支援を行っております。平
成 31 年 4 月から令和 1 年 9 月における協議会の新規相談件数は 5 先となっております。
    今後についても、当行の取引先が様々な支援を必要とする状況(事業再生、業種転換、
事業承継等)となった場合に債権者間の調整が必要となることが想定されます。協議会に
よる経営改善計画の実現可能性についての評価は、中立な立場で客観的な検証を経て行わ
れることから、結果として債権者間調整の際に求められる透明性や妥当性が高まります。
また、結果として暫定計画となった場合でも、事業者の改善に対するモチベーションを高
める効果も期待出来るものとなることから、今後も案件検討の初期段階から協議会への事
前相談を積極的に活用してまいります。


 【中小企業再生支援協議会の活用実績(相談先数の実績)】
       H28 年度                                 12 先
       H29 年度                                  7先
       H30 年度                                 12 先
      R1 年度上期                                  5先




                       35
    【支援事例 9】
    中小企業再生支援協議会を活用した介護事業のお客様への支援事例
     本事例のお客様は、グループホームやサービス付高齢者住宅等を運営する介護事業
    者のお客様です。高齢化の進展による介護事業の需要増加に応える為に事業を拡大し
    てきましたが、事業拡大の一方で経営陣のマネジメント体制が確立出来ず、相次ぐ従
    業員の退職、入居者の減少、収支悪化、連続赤字債務超過の悪循環に陥っておりまし
    た。
     結果として、金融機関への約定返済も困難な状況となり、債権者間調整が不可欠な
    状況であったことから再生支援協議会への相談にいたったものです。
     現在では、協議会主導により経営改善計画を策定し、代表者の交代、一部事業の譲
    渡等リストラ策を実行し、収支改善に向けたアクションプランに取組んでおります。
    債権者間調整が必要なお客様について、協議会を活用した支援事例となっておりま
    す。


B   地域経済活性化支援機構の活用支援
    有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている事業者の事業再生を支援するた
め、地域経済活性化支援機構(以下、
                「機構」という。)を活用した支援を行っております。
    機構は、従前からの事業再生支援に加えて、地域経済の活性化支援に係る新たな業務が
追加され、機構の関与する事業再生案件のみならず、地域金融機関やその融資先、地域金
融機関の事業再生子会社や事業再生ファンドに対する専門家派遣等を行うことができる
等、地域金融機関の事業再生をサポートする体制がとられております。
    また、改正機構法により、事業者の債務整理を行うと同時に代表者等保証人の保証債務
について一体整理を行う「特定支援業務」も追加されており、転業・廃業支援もサポート
可能な体制となっております。
    当行では、今後も機構がこれまで蓄積してきた実績やノウハウを活用し、被災地の復興
のみならず、構造不況や後継者問題等を抱え、収益改善の展望が描けない事業者に対する
対応等を検討するため、今後も機構を活用しながら事業者のライフステージに沿った支援
を行ってまいります。


C   認定支援機関としての経営支援
    当行では、平成 24 年 8 月に施行された「中小企業経営力強化支援法」に基づき平成 24
年 11 月に経済産業省より「経営革新等支援機関(以下、
                           「認定支援機関」という)」の認定
を受けました。
    認定支援機関として中小企業の経営力強化のため、中小企業施策の情報提供、補助金制
度へ関与、他認定支援機関との連携等、事業者の経営状況の分析やモニタリング等の実施
などにより中小事業者への支援態勢を整備しております。

                       36
【認定支援機関としての支援実績(令和 1 年 9 月末)】
                   制度融資          件数          金額
経営力強化保証制度                           22 件    726 百万円


                 補助金等制度名         関与件数       採択件数
ものづくり補助金                            70 件       30 件
創業・第二創業促進補助金                        13 件          7件
事業承継補助金                               3件          1件
先端設備導入計画                              8件          8件
小規模事業者活性化補助金                          4件          4件
中小企業等グループ施設等復旧整備補助金                   2件          2件
認定支援機関による経営改善策定支援事業                 15 件          5件
                    合計              115 件      57 件


     【支援事例 10】
     ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の申請を支援した事例
      当行では、排水等の環境計測・分析を行うお客様より「従業員の生産性向上や、新
     たに計測可能な分野を広げるために高性能な分析機器を導入したい」という相談を受
     け、ものづくり補助金を紹介しました。
      お客様は売上高こそ増加傾向にありましたが、従業員 1 人あたりの業務量の増加に
     よりミスや納期遅れが発生、それをカバーするための慢性的な時間外労働が表面化し
     ており、マンパワー不足への対応が課題となっておりました。当行では、高性能分析
     機器の導入が当社の課題解決につながるものと捉え、申請支援を開始しました。具体
     的にはお客様はものづくり補助金初挑戦であったことから、前年の資料を参考に申請
     書の作成指導に着手し、同時に加点項目となる先端設備等導入計画の策定支援も併せ
     て行いました。複数回の見直しやディスカッションを経て、当初は 1 ページにも満た
     なかった具体的取組み内容に関する記述を、質・量とも各段に向上させたうえで申請
     することができ、見事、採択につながりました。
      申請書の作成を通じて、お客様の「現状」と「課題」並びに「課題解決の方向性」
     についてお客様と共有することができ、補助金申請支援に留まらず、今後更なる本業
     支援につがなることが期待される支援事例となっております。



④    事業の承継に対する支援に係る機能の強化のための方策


 A   事業承継・M&A 支援
     当行では中小企業経営者の高齢化や後継者不在などの、地方における事業承継に係る問

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      題は、地域経済の衰退に直結する大きな課題との認識から、営業店・本部・外部専門機関
      等との連携により事業承継・M&A 支援を行っております。
       支援の取組みに際しては、潜在的なニーズの掘り起こしが重要であり、
                                      「代表者の年齢」
      や「財務状況」等を条件に想定される対象先を本部で抽出のうえ、営業店に還元し、本部
      の営業店担当者が帯同訪問する等、能動的なアプローチに取組んでおります。


       【支援事例 11】
       エステサロンの事業譲渡の支援事例
        A 支店の中古車販売業を営むお客様より事業ポートフォリオを見直し本業に集中す
       るため、ノンコア事業であるエステサロン事業を譲渡したいという相談を受け、本部
       を中心に譲渡候補先を探していたところ、B 支店の理美容・ブライダル事業を営むお
       客様が M&A により事業拡大を図りたいとの情報を入手しました。お客様の希望する業
       種ではありませんでしたが、シナジー効果の可能性があったことから、お客様のエス
       テサロン事業の譲渡情報を提供し、M&A の成約となった事例となっております。
        お客様との日常的なリレーションのなかで取引先のニーズや課題を把握し、業種が
       お客様の要望に合わなくても、事業の拡大という目的に沿った提案を行うことができ
       たが、M&A 成約となったポイントであります。


3.   剰余金の処分の方針
     当行は、銀行業の公共性を踏まえ内部留保の充実に努めるとともに、配当につきましても安
  定的な配当を継続することを基本方針としております。令和 1 年 9 月期につきましては、普通
  株式の期末配当は 1 株あたり 25 円の配当を実施、第 1 種優先株式については約定に従った配
  当を行っております。また、当初の計画以上に内部留保の積み上げを図っており、令和 19 年
  9 月末には国の資金 100 億円を返済するための財源として利益剰余金を確保できる計画となっ
  ております。なお、当行は本計画以上に利益剰余金が積み上がった場合、国の資金について早
  期返済を行うことを検討してまいります。


4.   財務の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策


(1) 経営管理に係る体制及び今後の方針
     経営管理体制の充実は、株主の皆様をはじめとし、取引先、地域の皆様など、全てのステー
  クホルダーの方々からの厚い信頼を確立していくための最も重要な経営課題の一つであると
  認識しております。
     当行では、迅速かつ的確な意思決定と業務執行を行い、適正な監督機能を確保するため、社
  外取締役の選任と監査役会及び内部監査部門が連携し、以下の体制をとっております。
     取締役会については、原則月 1 回開催しており、経営に関わる重要事項の決定を行うととも


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に、業務の執行状況の監督を行っており、令和 1 年度上期は 6 回開催しております。社外の専
門的な見地からの意見を取入れるため、独立役員 2 名の社外取締役を含む体制とし、取締役会
において活発かつ十分な実質的な議論のもとに意思決定がなされるよう、社外役員には事前資
料配布並びに議題の事前説明を行っております。
 常務取締役以上で構成される常務会は原則毎週開催し、迅速な意思決定を行う体制を整備し、
令和 1 年度上期は 28 回開催しております。常務会は取締役会で定めた基本方針に基づく業務
執行や、常務会規程に基づく付議案件を審議するとともに、重要な銀行業務の意思決定機関と
しての機能を担っております。
 また、当行は監査役制度を採用しており、監査役会は監査役 5 名(会社法第 2 条第 16 号に
規定された社外監査役 3 名を含む。
                 )で構成されております。取締役会については監査役 5 名
が、常務会については常勤監査役 2 名が出席し、適切な提言・助言を行っております。また、
業務執行の迅速化を図るため、執行役員制度を導入しております。
 的確な経営の意思決定、決定に基づく迅速な業務執行、並びに適正な監督・監査体制の構築
を行うために、経営管理に係る体制の充実に努めてまいります。


(2)   業務執行に対する監査又は監督の体制及び今後の方針
 監査役は、監査役会で決定された監査実施計画に基づき、業務執行に関する監査実施状況や、
監査に関する重要な事項等の決議を行っております。また、取締役会への出席を通した経営状
況、営業店及び本部各部の業務執行状況、内部統制の有効性及び法令遵守状況等を監査してお
ります。
 監査役は会計監査人から、期初に監査実施計画の説明を受け、期中に適宜監査状況を聴取、
期末には監査実施状況等及び監査結果の報告を受ける等、緊密な連携を図っております。また、
内部監査部門である監査部と定期的に情報交換を行うとともに、監査部と連携し、他の管理部
門や業務部門の内部管理態勢等について深度あるヒアリングを適宜実施する等、緊密な連携を
図っております。
 また、会計監査人による外部監査は、北光監査法人と監査契約を締結し、厳正な監査を受け、
会計処理の適正化を図っております。
 なお、監査又は監督は、金融評定制度による自己評定や、業務別の監査チェックシートを活
用する体制となっており、内部監査の有効性を高めるため、適宜見直しを行っております。


(3) 与信リスクの管理(不良債権の適切な管理を含む)及び市場リスクの管理を含む各種
      リスク管理の状況並びに今後の方針


 ① リスク管理体制
  当行では業務運営上発生が予想されるリスクについて、統合的リスク管理の考え方のもと、
 取締役会がリスク管理の基本方針及びリスク管理体制を定めております。


                         39
 リスク管理の基本方針では、リスクを定量化し自己資本と対比して管理する「統合リスク
管理」と、統合リスク管理以外の手法による「その他リスク管理」とに区分しております。
前者は、資産・負債の総合管理、自己資本管理、流動性リスク管理に係る事項も含め、経営
陣と関係部で構成する ALM 委員会において管理する体制としております。後者は、リスクの
種類ごとに主管部署を明確にし、当該主管部署ごとに管理体制の堅確化に努め、リスクの顕
在化を抑制する管理体制としております。


② 統合リスク管理
 統合リスク管理については、リスクの種類ごとにリスクの顕在化により発生が予想される
損失額を統一的な尺度を用いて、統計的な方法で計測を行い、自己資本を原資として主要な
リスク(信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスク)にリスク資本を配賦して、設
定したリスク管理枠に収まるよう管理する手法としております。
 経営陣と関係部で構成する ALM 委員会では、毎期リスク管理枠の設定を行い、経営体力に
見合ったリスクテイクとなっているかを毎月確認しており、定期的にストレステストを実施
することにより、自己資本充実度の検証を実施しております。


③ 信用リスク管理
 当行の信用リスク管理については、融資規程(クレジット・ポリシー)において、信用リ
スク管理の基本方針として、信用リスク管理態勢の整備、与信審査の客観性の確保、問題債
権の管理、与信ポートフォリオ管理による与信集中の排除、信用リスクの定量的把握、適正
な収益確保等の方針を定め、実施しております。さらに、信用リスク管理規定において、目
的、定義、範囲、態勢及び役割、管理方法等を定め、適正な信用リスク管理が実現するよう
な態勢を整備し実施しております。
 与信ポートフォリオについても、四半期ごとに ALM 委員会において経営に報告し、信用リ
スク量、予測最大損失額の把握、分析を行うとともに、改善策等を指示するなどの管理を行
っております。具体的な管理手法としては、融資先支援・管理要領に基づき重点管理先を選
定し、営業店のモニタリング等を基に年 1 回、営業店と本部で取組方針協議を実施し、支援
及び管理を行っております。また、本部管理・指導が必要な先については、本部担当部署が
直接顧客訪問を実施し、経営改善計画策定等の支援・指導を行っております。
 問題債権の管理としては、営業店からの毎月 1 回の期日経過債権の報告や月例の貸出金延
滞報告により管理を強化し、条件変更による長期延滞の未然防止や問題解決に向けた取組を
図っております。実質破綻先以下の管理は、毎年 2 月末、8 月末基準日として営業店より、
債権管理報告を受け、問題解決に向けた方針協議を行い、再建支援や円滑な処理等への協力
を含めた取組を強化しております。




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 今後につきましても、信用リスク管理として、態勢を強化するとともに、管理の適正化を
図り、取組方針協議を基に、これまで以上に本部が積極的に関与し、経営改善や事業再生の
可能性が高いと見込まれる取引先を健全な企業に立て直すための支援を行ってまいります。


④ 市場リスク管理
 市場リスク管理については、市場リスクの特定・評価・モニタリング・コントロール等の
重要性を認識し、適正な市場リスク管理体制の整備・確立に向けて、リスク管理の方針及び
管理体制の整備をしております。
 具体的には、毎期、資産・負債の総合管理や自己資本管理等に関わる ALM 運営方針から保
有可能な市場リスク量を決定し、また、市場部門が当該方針に基づき検討する戦略目標につ
いて、経営陣と関係部で構成する ALM 委員会において協議を行い決定しております。ALM 委
員会では、市場部門の戦略目標について、毎期、市場運用業務等の方針を設定し、市場リス
クを管理可能なリスクに限定する中で安定的な収益を確保することを確認しており、有価証
券に関わる売買方針についても毎月確認を行っております。また、過去未確認のリスクを保
有する商品を購入する場合には、ミドル部署の承認を必要とする体制とし、フロント部署へ
の牽制を行っております。


⑤ 流動性リスク管理
 流動性リスク管理について、流動性リスクの特定・評価・モニタリング・コントロール等
の重要性を十分に認識し、リスク管理規程、ALM 運営方針、流動性リスク管理規定、市場運
用業務等の運用管理基準、業務継続計画等の規定を定めております。月次の ALM 委員会にお
いて、資金の運用・調達状況の予測に基づく中長期的な資金動向の報告を行うほか、市場運
用業務等の運用管理基準に日次・月次等の定例報告を定め、重要な事項については随時報告
する体制としております。また、業務継続計画の実効性の向上を図る目的で、年 1 回、流動
性危機時を想定した訓練を行っております。


⑥ オペレーショナルリスク管理
 オペレーショナルリスク管理については、事務リスク・システムリスク、その他オペ・リ
スク(法務リスク・人的リスク・有形資産リスク・風評リスク)の区分ごとに主管部を定め、
管理を行う体制としております。
 事務リスクについては、事務規程の整備、研修及び営業店事務指導等により、厳正な事務
取扱の定着に努めております。システムリスクに関して、当行は基幹システムの運営・管理
を外部へ委託しておりますが、新日本有限責任監査法人から委託業務に係る内部統制の状況
を把握し、その有効性の評価に利用する報告書(日本公認会計士協会監査・保証実務委員会
実務指針第 86 号「受託業務に係る内部統制の保証報告書」に基づき、受託会社監査人が提
供する保証業務)を毎年受領しモニタリングを実施するとともに、 1 回基幹システムの運
                              年


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営・管理を委託している株式会社エヌ・ティ・ティ・データに対しシステム監査を実施する
ことにより、システムリスクの顕在化防止に努めております。その他、オペ・リスクについ
ては、当該主管部署ごとに管理体制の堅確化に努め、また、内部監査の実施により、リスク
の顕在化を抑制しております。




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