8349 東北銀 2019-09-27 17:00:00
「経営強化計画」の承認について [pdf]

                                          令和1年9月27日

各   位
                   会 社 名   株式会社 東 北 銀 行
                   代表者名    取締役頭取 村 上 尚 登
                              (コード番号 8349 東証第一部)
                   問合せ先    経営企画部長   千 葉 泰 之
                                    (TEL.019‐651‐6161)


               「経営強化計画」の承認について



 株式会社東北銀行(頭取 村上 尚登)は、金融機能の強化のための特別措置に関する法律第
12 条に基づき、平成 31 年 4 月から令和 4 年 3 月を計画期間とする「経営強化計画」の申請を行
っておりましたが、本日、金融庁において計画の承認が決定されましたのでお知らせいたします。
 経営強化計画の内容につきましては経営強化計画(本編)及び経営強化計画(ダイジェスト版)
を参照願います。


                                                      以 上
経営強化計画(ダイジェスト版)
  (金融機能の強化のための特別措置に関する法律第12条)




        令和元年6月
目次


前経営強化計画の総括(一般貸出金の状況)       ………………………   1
前経営強化計画の総括(資産・負債・純資産の状況)   ………………………   2
前経営強化計画の総括(損益の状況)          ………………………   3
前経営強化計画の総括(本業支援の実績)        ………………………   4
前経営強化計画の総括(復興支援の実績)        ………………………   5
岩手県の経済・復興状況等               ………………………   6
岩手県の事業者が抱える課題の状況           ………………………   7
中期経営計画(新旧対照表)              ………………………   8
新中期経営計画全体図                 ………………………   9
新中期経営計画全体図(基本戦略、経営基盤の強化)   ……………………… 10
中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策 ……………………… 11
中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策 ……………………… 12
前経営強化計画の総括(一般貸出金の状況)
 前計画では、『一般貸出金』通期平残計画について平成31年度3,850億円以上を設定し、同年度の実績は4,290
億64百万円(計画比:440億64百万円の増加、計画始期比:600億18百万円の増加)となりました。

                                                                                               【単位:百万円】
                      H28/3期          H29/3期                  H30/3期                H31/3期            計画
                       通期平残      通期平残       前期比          通期平残       前期比        通期平残       前期比        始期比

総貸出金                   516,388    512,254   △4,134        532,871   20,617      563,208   30,337      46,820

  うち一般貸出金              369,046    376,248        7,202    402,633   26,384      429,064   26,431      60,018

   事業性                276,915    284,078     7,164       310,441    26,362     336,689    26,249     59,774

   住宅ローン                82,436     82,215        △222      82,204      △11       82,646       442        209

   消費者ローン                9,695      9,955         260       9,988        33       9,729      △259         34

  うち地公体・市場性貸出金         147,342    136,006   △11,336       130,238   △5,768      134,144      3,906   △13,198

   ※一般貸出金:地方公共団体向け貸出金及びシンジケートローン等の運用目的の大企業向け貸出金を除いた主に中小企業、個人向けの貸出金

  ≪事業性貸出金残高の推移≫                                                                                【単位:百万円】
            正常先上位以上     84,478     80,873    △3,604        88,391      7,518     83,064   △5,327      △1,413

 「成長予備軍」 正常先下位~要管理先   128,023    142,044    14,021       159,859    17,815     187,311    27,452     59,288

             個人事業主等     47,429     45,510    △1,919        47,050      1,539     51,219      4,169     3,789

            破綻懸念先以下     16,985     15,651    △1,334        15,141      △510      15,096       △45     △1,889

 事業性貸出金のうち「正常先下位~要管理先」に区分される「成長予備軍」のお客様への融資残高は計画始期比
592億88百万円増加となりました。

                                             1
前経営強化計画の総括(資産・負債・純資産の状況)
≪資産・負債・純資産の推移≫                                                    【単位:百万円】

                H28/3期                                             計画
                            H29/3期       H30/3期      H31/3期
               (計画始期)                                              始期比
資産                837,871     851,365      855,256      861,046       23,175
 貸出金              516,793     524,218      552,482      571,198       54,405
     うち中小企業       262,727     279,982      306,416      321,591       58,864
 有価証券             280,915     269,417      201,125      177,952     △102,963
負債                801,058     815,826      818,971      823,462       22,404
 預金等              778,255     795,022      807,470      811,163       32,908
純資産                36,812      35,539       36,284       37,583          771

その他有価証券評価損益         5,075       1,259        1,465        2,165       △2,910

≪信用リスク量(UL)の推移≫                                                   【単位:百万円】
                H28/3期                                               計画
                            H29/3期       H30/3期      H31/3期
               (計画始期)                                               始期比
信用リスク量(UL)          1,754       1,748        1,831       2,246           492

≪自己資本比率の推移≫
                H28/3期                                              計画
                            H29/3期       H30/3期      H31/3期
               (計画始期)                                              始期比
単体自己資本比率           9.26%        8.96%        8.34%       8.21%     △1.05ポイント
≪利益剰余金の推移≫                                                        【単位:百万円】
                H28/3期                                              計画
                            H29/3期       H30/3期      H31/3期
               (計画始期)                                              始期比
     計画                -        7,922        8,588       9,108             -
     実績             7,210       8,643        9,265      10,089          2,879
(うちその他利益剰余金)        6,726       8,061        8,586       9,315          2,589

                                     2
前経営強化計画の総括(損益の状況)
≪損益状況の推移≫                                                                     【単位:百万円】

                      H28/3期                                                     計画
                                      H29/3期          H30/3期      H31/3期
                     (計画始期)                                                     始期比
貸出金利息                       8,500             8,067       8,056       8,027        △473
有価証券利息配当金等                  1,995             2,384       2,569       2,063          68
預金利息                          385               256         137         125        △260
その他調達費用                        15                 4           0           0         △15
資金利益                       10,137            10,187      10,479       9,943        △194
役務収益                        2,137             1,972       1,911       2,047         △90
役務費用                          821               864         872         854          33
コア業務粗利益                    11,285            11,298      11,845      11,139        △146
経費                          9,392             9,364       9,128       8,828        △564
     人件費                    4,504             4,472       4,373       4,394        △110
     物件費                    4,382             4,336       4,178       3,887        △495
     税金                       504               555         575         546          42
コア業務純益                      1,892             1,934       2,717       2,310         418
債券関係損益                        442             △193       △1,606       △495         △937
一般貸倒引当金繰入額                  △158                 -           -            5         163
業務純益                        2,493             1,740       1,110       1,810        △683
株式関係損益                        228               190         334       △198         △426
個別貸倒引当金繰入額                    309                -           -          148        △161
貸出金償却                          53                85         344          28         △25
経常利益                        2,592             2,141       1,365       1,599        △993
当期純利益                       1,783             1,865       1,085       1,297        △486
本業利益(※)                       176             △351        △122          306         130
  (※)本業利益= 貸出金平残 × 預貸金利回り較差 + 役務取引等利益 - 経費

                                              3
前経営強化計画の総括(本業支援の実績)
 前計画では、『事業を営むお客様の本業の支援となる提案・助言』を本業支援と定め、計画数値を年間600件以上と
し、営業店の本業支援の取組状況の共有等を目的とした「本業支援研究会」の開催、「本業支援好事例集」の発刊や、
ローカルベンチマークを使用した事業性評価手法を実施し、「起業・創業支援」、「6次産業化支援」、「マッチング支援」、
「営業支援」、「経営改善支援」等の本業支援に取組んでまいりました。
≪前計画期間における本業支援の実績≫
            起業・創業支援       6次産業化支援      マッチング支援             営業支援        経営改善支援          合計
 H28年度              83件          19件               465件         502件         273件        1,342件
 H29年度             209件          20件               798件         941件         465件        2,433件
 H30年度             138件           6件               338件         755件         107件        1,344件

≪本業支援の事例≫
 第三セクター等経営体強化に向けた地公体への行員派遣事例                        国内最大級の大規模ソーラーシェアリング事業を支援した事例
 当行では岩手県遠野市と平成25年12月「農林水産業の活性化に関する業務推進協             平成29年12月岩手県一関市の国営開発農地を有効活用し太陽光発電と小麦・大麦
定」、平成28年3月に「地方創生の連携に関する協定」を締結し、遠野市及び市の第三セ          の栽培を両立する大規模ソーラーシェアリング事業に対する、プロジェクトファイナンスを実施し
クターと6次産業化を中心とした連携を進めてまいりました。                       ました。
 平成28年10月、遠野市が進める「第三セクターの経営体強化の取組」事業に協働して           ソーラーシェアリングとは農業委員会より農地の一時転用許可を受けたうえで農地に支柱を
取組むため、外部専門家として営業店支店長を経験し、中小企業診断士資格を保有する            立て、農業を行いながら上部空間で太陽光発電事業を行う取組です。農業事業者は通常
行員を派遣しました。                                         の農業収入に加え、売電収入や発電事業者からの営農支援金等による所得増加が期待
 平成31年3月までの派遣期間のあいだにおいて、第三セクターの経営計画3ヶ年(H28         されております。本事例は小麦・大麦の栽培と発電事業を両立させる取組を支援した事例と
~30年度)の総括と新経営計画3ヶ年計画の改善計画案を策定しております。               なっております。


       農業生産法人に対する6次産業化支援事例                          地元中小事業者と大手流通事業者とをマッチングした支援事例
 本事例のお客様は米栽培等を行う岩手県内の農業生産法人のお客様です。                  本事例のお客様は産廃処理や肥料製造を行う事業者です。お客様は有機肥料と自社
お客様から平成27年よりレストラン出店に関する相談があり、当行は出店候補地の紹介や          で蓄積された EM農法により「りんご」の無農薬栽培に取り組み、農薬・除草剤不使用の「り
店舗コンセプト等についてアドバイスを含めた本業支援を実施しました。レストランのコンセプト       んご」の量産に成功し、販路拡大を計画していました。一方、大手流通業者は、東京の同
は「地元肉牛、地元生産物を気軽に楽しめる店」であり、本件の実現に向けては、よろず支          社旗艦店舗にて、青果の取扱を開始しており、「化学合成農薬と化学肥料不使用」または
援拠点の紹介から事業計画書及び収支計画の策定、レストラン地主とのマッチング、日本           「減農薬」により栽培した地方に埋もれている食材を求めていました。
政策金融公庫との協調融資組成等による支援を実施しました。                        当行では、両社の特性とニーズを把握し、当行を仲介者とするビジネスマッチングにより両社
 そのような支援を実施した結果、平成29年10月にレストランが開店となりました。地域のお       を引き合わせし、大手流通業者の旗艦店にて、本事例のお客様の良質な食材が扱われる
客様に親しまれるレストラン開店を支援した事例となっております。                    こととなりました。本事例は地元中小事業者と大手流通業者のニーズを把握し、マッチングが
                                                   成約に至った好事例となっております。


                                               4
前経営強化計画の総括(復興支援の実績)
≪復旧・復興資金の実行実績≫                                                                     【単位:件、百万円】
                                               前計画期間
          当初計画期間                                                                     震災後累計
        (H23年度~H27年度)      H28年度               H29年度              H30年度
         件数      金額       件数     金額           件数       金額       件数        金額       件数         金額
 事業資金
         2,470   52,756    207   5,126         87      1,789       45      801      2,809     60,472
 (運転)
 事業資金
           754   25,796    68    2,335         45      1,262       26     1,324      893      30,717
 (設備)
  住宅
           284    5,823    110   2,020         73      1,213       36      866       503       9,922
  ローン
 消費者
           109     583     29       339            0        0        0         0     138        923
  ローン
  合計     3,617   84,960    414   9,821         205     4,264      107     2,991     4,343    102,036

≪各機構の活用実績≫                                                                                  【単位:件】
                                              H28年4月~
                          H28年3月末                                    累計             新規融資対応額
                                               H31年3月
 東日本大震災事業者再生支援機構                     52                     3               55                21億円
    岩手産業復興機構                         42                     2               44                11億円
    宮城産業復興機構                         13                     0               13                 3億円
       合計                           107                     5              112                35億円
≪リファイナンスによる各機構からのExit支援の実績≫
                            岩手                  宮城                東日本大震災
                                                                                        合計
                          産業復興機構              産業復興機構            事業者再生支援機構
   リファイナンス支援先数                   12件                     0件              7件                   19件
   リファイナンス支援金額               589百万円                    0百万円          491百万円             1,080百万円

 前計画期間において、機構を活用したお客様のなかには当初事業計画を上回って業況が好調に推移している方も見ら
れましたが、コベナンツ条項により経営の自由度が制限されている場合もありました。そのようなお客様の機構債権を完済し
て事業再生を完了させたいという需要にお応えし、リファイナンスによる各機構からのExit支援を行い、早期の事業再生完
了に取組んでまいりました。

                                          5
岩手県の経済・復興状況等

                          ■ 岩手の被災・復興の状況
公共工事請負金額の推移 【単位:億円】



                          1. 災害公営住宅                【平成30年12月末現在】

                               完成          工事中          工事前

                                 5,517戸          23戸          12戸


                          2. 防災集団移転促進事業            【平成30年12月末現在】

                              計画団地数        工事中          造成完了

                                    88地区         2地区        86地区


                          3. 土地区画整理事業              【平成30年12月末現在】

                              計画団地数        着手済          造成完了
新設住宅着工戸数の推移 【単位:戸】
   (水色は沿岸12市町村)                     19地区         9地区        10地区




                           【主なトピックス・経済状況等】
                           ・宮古・室蘭フェリー航路の開設
                           ・東北自動車道と釜石を結ぶ東北横断自動車道の開通
                           ・三陸鉄道のリアス線としての一貫運行開始
                           ・震災から約8年が経過し、被災地域の土地区画整理事業
                           は概ね完成
                           ・住宅、店舗建設も進み新しい街の姿も
                           ・県内経済は、公共工事等の復興需要が下支え




                      6
岩手県の事業者が抱える課題の状況
≪岩手県「被災事業所復興状況調査」の内容≫

岩手県にて定期的に沿岸12市町村の事業者を対象に復旧・復興状況についての調査を実施

■ 業種別にみた現在抱えている課題の状況(平成30年8月現在)

   建設業           水産加工業           製造業               卸売小売業         飲食・サービス業          その他

 設備資金    8.5%   設備資金   19.4%   設備資金   24.1%       設備資金   10.7%   設備資金   14.8%   設備資金   17.2%

 運転資金   18.3%   運転資金   36.6%   運転資金   25.3%       運転資金   23.6%   運転資金   20.9%   運転資金   22.9%

 二重債務    6.5%   二重債務   17.2%   二重債務   10.3%       二重債務   10.1%   二重債務   11.2%   二重債務     7.8%

 雇用確保   54.2%   雇用確保   40.9%   雇用確保   42.5%       雇用確保   18.9%   雇用確保   36.7%   雇用確保   37.5%

 販路喪失   37.9%   販路喪失   29.0%   販路喪失   54.0%       販路喪失   73.3%   販路喪失   52.0%   販路喪失   50.0%

 材料調達   32.0%   材料調達   67.7%   材料調達   39.1%       材料調達   24.5%   材料調達   26.0%   材料調達   16.7%

 業績悪化   35.3%   業績悪化   38.7%   業績悪化   40.2%       業績悪化   45.9%   業績悪化   26.0%   業績悪化   32.3%

 適地物件           適地物件           適地物件               適地物件           適地物件           適地物件
         6.5%          4.3%            3.4%              5.3%           3.6%             7.3%
  確保             確保             確保                 確保             確保             確保

 後継者    21.6%   後継者    9.7%    後継者    18.4%       後継者    24.2%   後継者    30.1%   後継者    22.9%

 その他    13.1%   その他    7.5%    その他    11.5%       その他    8.8%    その他    10.2%   その他    16.7%



 売上の減少や人手不足などの厳しい経営環境に直面するなかで、経営改善や事業再生、販路の開拓、生産性の向
上等、震災からの復興を模索する中小事業者が多数存在する状況にあります。


                                              7
中期経営計画(新旧対照表)

                  前計画                                             新計画

                                                    ■計画期間
                                                     平成31年4月~令和4年3月(3年間)
                                                    【テーマ】
                                                    “地域力の向上”
                                                     ~「復興」と「地域経済活性化」への貢献~
                                                    【とうぎんVISION】
                                                     『心のメイン』
                                                    【ビジネスモデル】
                                                     中小事業者への積極的な支援
                                                    【基本戦略】
                                                    1.成長予備軍とのリレーション向上
 各種計画数値の達成、中小事業者向け貸出金の増加に                           2.農林水産業を中心とした地域経済の活性化
ついては成果と捉える一方で、融資について、取組みやすい
                                                    3.事業再生へ向けた持続的なサポート
業種に偏り、地域の中小事業者の企業価値向上に直接結
びつかなかった側面もあったことから、「地域力の向上」につい                       4.営業店アクションプランの実践
て真に追求していくことを新計画の課題として認識。
                                                     正常先下位から要管理先に区分されるお客様を『成長予備軍』と
■計画数値の達成状況                                          し、成長予備軍のお客様を中心に当行が従前から培ってきたリレー
         計画       H29.3期    H30.3期    H31.3期        ションシップバンキングを重視した支援を行い、当行を『心のメイン』と評
 一般預金   8,000億円
                                                    価していただけるお客様を増やし、またお客様の企業価値の向上を図
  平残         以上
                  7,729億円   7,909億円   8,021億円       ることで、「地域力の向上」を真に追求していきます。
一般貸出金   3,850億円
                  3,762億円   4,026億円   4,290億円
 平残          以上                                     ■計画数値(令和4年3月期)
  コア      17億円
                  19.3億円    27.1億円    23.1億円         ● 本業利益      5億円以上
 業務純益       以上
                                                     ● 連結自己資本比率  8%以上
 本業支援   年間600件
                   1,342件    2,433件    1,344件
  件数       以上


                                                8
新中期経営計画全体図
                                                               令和2年は
                                                  経営理念         創業70周年

                                       「地域金融機関として地域社会の発展に尽くし共に栄える」


                                                 中期経営計画
                                                 ″地域力の向上″


                                                 ビジネスモデル

                                                  基本戦略


                                                   各営業店

                                                営業店アクションプラン


                                                 『心のメイン』

                                                中小企業のお客様
 経営数値目標【2022年3月期】
                         ●本業利益・・・有価証券関連収益を加味しない、預貸金業務、役務
                         取引等業務から得られる利益とし、以下の算式により算出します。
 本業利益           5億円以上       貸出金平残 × 預貸金利回り較差 + 役務取引等利益 - 経費

 連結自己資本比率       8%以上
                             H28.3期    H29.3期     H30.3期       H31.3期
   計画期間                       1.7億円    △3.5億円     △1.2億円         3.0億円
2019年4月   ~   2022年3月(3年間)
                         9
新中期経営計画全体図(基本戦略、経営基盤の強化)

  「基本戦略」                  「基本戦略」概略
 成長予備軍との        事業性評価をレベルアップし、成長予備軍をメインターゲットと した取引基盤の
 リレーション向上        拡大を図る
                 ⇒当行が本気で応援したい中小事業者の企業価値向上を図って いく
農林水産業を中心とした     基幹産業である農林水産業への中長期的なサポート
 地域経済の活性化        ⇒六次産業化へ向けた売上拡大・販路拡大支援

                再生計画の策定支援、外部専門機関の活用
 事業再生へ向けた
                 ⇒EXIT・事業再生に向けたノウハウの提供
 持続的なサポート
                各地域のマーケットに即したアクションプランのPDCAを回し、営業店PLを向上
営業店アクションプランの     させる
    実践           ⇒営業店による主体的な立案とそれを支える本部体制の構築


「経営基盤の強化」               「経営基盤の強化」概略
人材育成、評価方法
   の刷新          本業支援に向けた行員個々の能力向上と行員の意識改革
                 ⇒店格の設定、評価方法の変更による将来を担う人材の育成
 アライアンス・ITを
中心とした業務効率化      業務の効率化により営業へのリソースを確保
                 ⇒他金融機関との連携、フィンテックを含むIT投資
全員営業体制の構築
                営業店担当役員、本部、営業店による密な連携
                 ⇒決裁態勢を含む担当役員・本部による営業店支援体制の構築

                          10
中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策
■ 重点支援先への支援

 前計画期間において中小事業者の抱える課題の解決に向けては中長期的な支援が必要であることを把握し、取組み
の成果を定性的のみならず、定量的に効果を検証し、本業支援の有効性についてのデータを蓄積していくことの必要性を
認識しました。
 本計画期間においては「重点支援先」に対し、リレーションシップバンキングにより「企業価値」の向上を図ってまいります。

                     重点支援先への支援実施フロー

                                                対象先の選定
       「重点支援先」
                         ○事業性評価の実施
 成長予備軍に該当し、経営者とグリップ可能な   営業店にて対象先の事業性評価(ロカベン)を実施
                         経営課題解決・企業価値向上に向けて実施する本業支援について「ソリューション提案シート」へ落とし込み
中小事業者で、当行取引有無やメイン・非メイ
ンは問わず、当行の本業支援を必要とし、当行    ○本業支援ミーティング開催
が主体的に意思をもって応援したい先        営業店・支店統括部・地域応援部の三者で「本業支援ミーティング」を実施
                         「ソリューション提案シート」の本業支援内容についてブラッシュアップを行い、対象先の企業価値向上(直近決算での企
                         業価値を基準とする)に向けたソリューション、役割分担(営業店・地域応援部)を決定

       リレーションシップ
         バンキング           ○対象先との面談(グリップ)
                         本業支援をスタートするにあたり対象先と面談を実施(営業店・必要に応じて地域応援部帯同)、ミーティングを踏まえて
                         抽出された経営課題やソリューション、本業支援の内容、定期的な営業推進会議の開催等について対象先と確認・共有する



                         ○本業支援の実施
                         「ソリューション提案シート」に則り、営業店・地域応援部が連携し本業支援を実施

      「企業価値の向上」          進捗状況をKeyManのPDCAシートにて管理




企業価値の定義                  ○営業推進会議の開催
                         対象先・営業店・地域応援部の三者で「営業推進会議」を開催し、本業支援の取組状況や成果について対象先と確認し合い

 営業利益+減価償却費+人件費         ながらPDCAを回す



                                          対象先の「企業価値の向上」の実現



                              11
中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策
■ 店別営業戦略、「営業店PL」の策定・実行                                                                      ■ 融資審査態勢の整備

 各営業店では店別営業戦略を基本として年度計画を「営業店                                                                 前計画期間において貸出金残高が増加し
PL」として定め、その達成に向けた具体的な行動として「アクションプ                                                           た「成長予備軍」への更なる金融支援をしつ
ラン」を策定してまいります。各営業店のアクションプランの実践によ                                                            つ、信用リスクの抑制に向けて「3億円以上の
る「営業店PL」の全店合計が当行全体のPLとなります。                                                                 大口新規」、「破綻懸念先」 、「重点管理
                                                                                            先」の案件については支店統括部から融資
                            営業店アクションプランの記載事例
                                                                                            管理部にて審査を行う態勢に変更し審査の
                                                                                            向上を図ってまいります。
                                                               店番
               2019年度 アクションプラン                                支店名
                                                                                            ※重点管理先
                                                              支店長名
                                                                                            定例的なモニタリングにより経営実態を適切に把握したうえで、
◆アクションプラン                                                                                   経営改善計画作成等の経営支援から、抜本的な事業再生、
                                                                         記入例
※営業店PLを達成する為の取組、基本戦略の取組を策定願います。                                                             経営改善支援や本業支援、廃業支援等に積極的に関与する
※KeyManの訪問頻度表を使用する場合は,取組NoをKeyManのアクションプランフラグNoに統一願います。
                                                                                            中小事業者
                                                                推進手法              モニタリング
NO     取組         ターゲット      推進項目        目標        リスト数
                                                          (誰が、いつまでに、どうやって)          方法


                                        実行金額      A5~C2                            KeyMan
1
                                                                                            ■ 営業店「店格」の設定
     貸出金利息収入     成長予備軍        金融支援                            金利2.5%以上
                                        純増100M     50先                            訪問頻度表

                                                                                   KeyMan
2    貸出金利息収入    ○○地区新規先       金融支援      6先獲得        50先    10M平均 金利2.5%以上
                                                                                  訪問頻度表


3    貸出金利息収入     ○○行取引先       金融支援
                                        実行金額
                                        純増100M
                                                    30先    ○○支店閉店に伴う獲得
                                                                                   KeyMan
                                                                                  訪問頻度表      一般貸出金残高、取引先顧客数、事業
4
      役務収入
      資産形成
                 正常上位先
                 地域内職域
                              余資運用
                               積投等
                                          5M
                                         20件
                                                  A1~A4
                                                   50先
                                                             職場セミナー開催
                                                                                   PDCA一覧
                                                                                  課題・宿題一覧
                                                                                            先数等を参考に「店格A」~「店格C」及び個
                            マッチング支援                                                PDCA一覧
                                                                                            人店に店格を区分し、店格を設定することで
5     役務収入        メイン先                    5M       100先       三方よしの取組

                                                                                            支店長職の職責と処遇の整合性を図り、キャ
                             事業承継                                                 課題・宿題一覧



                                                                                            リアパスを明確化させ、モチベーションの向上を
                              ロカベン                                                 PDCA一覧
6    本業支援の深化     重点支援先
                             グローリング
                                          3先        3先       モニタリング継続
                                                                                  課題・宿題一覧


7    本業支援の深化
                農林水産事業者
                事業再生支援先
                            アグリビジネス
                             再生支援
                                          2先        2先
                                                             ビジネスマッチング
                                                              モニタリング継続
                                                                                   PDCA一覧
                                                                                  課題・宿題一覧   図ってまいります。
◆期末の振り返り




                                                                             12
      経営強化計画
(金融機能の強化のための特別措置に関する法律第 12 条)




         令和元年6月
                                     目 次


1.前経営強化計画の総括 ..................................................................1
 (1) 経営環境 ............................................................................1
 (2) 資産負債の状況 ......................................................................2
 (3) 損益の状況 ..........................................................................5
 (4) 利益剰余金・うちその他利益剰余金の状況 ..............................................7
 (5) 自己資本比率の状況 ..................................................................7
 (6) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化における実績 ................................7
 (7) 被災者への信用供与の状況及び被災者への支援における実績 .............................11
 (8) 地域における経済の活性化における実績 ...............................................14
2.経営強化計画の実施期間 ...............................................................16
3.中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他の当行が主として業務を行っている地
 域における経済の活性化に資する方策 .....................................................16
 (1) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他主として業務を行っている地域にお
     ける経済の活性化に資するための方針 .................................................16
 (2) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策 ...............................25
 (3) 被災者への信用供与の状況及び被災者への支援をはじめとする被災地域における東日本
     大震災からの復興に資する方策 .......................................................34
 (4) その他主として業務を行っている地域における経済の活性化に資する方策 .................39
4.協定銀行による株式等の引受け等に係る事項 .............................................47
5.収益の見通し .........................................................................48
 (1) 収益見通しの概要 ...................................................................48
 (2) 自己資本比率の見通し ...............................................................49
6.剰余金の処分の方針 ...................................................................49
7.財務内容の健全性及び業務の健全かつ適切な運営の確保のための方策 .......................50
 (1) 経営管理に係る体制及び今後の方針 ...................................................50
 (2) 業務執行に対する監査又は監督の体制及び今後の方針 ...................................51
 (3) 与信リスクの管理(不良債権の適切な管理を含む)及び市場リスクの管理を含む各種のリ
     スク管理の状況並びに今後の方針 .....................................................51
8.機能強化のための前提条件 .............................................................54
1.   前経営強化計画の総括
  当行は平成 24 年 9 月、東日本大震災で被災した地域・中小事業者に対し、面的に金融仲介機
能を維持・強化することを目的として、金融機能の強化のための特別措置に関する法律に基づく
経営強化計画を策定し、国の資本参加 100 億円による財務基盤の強化を背景に、中小事業者への
円滑な資金供給や地域経済の活性化に努めてまいりました。平成 28 年 4 月~平成 31 年 3 月を計
画期間とする経営強化計画の実績は以下のとおりとなりました。


  (1)   経営環境
     前経営強化計画(平成 28 年 4 月~平成 31 年 3 月)策定時の経営環境におきましては、消費
  増税に伴う反動減が一巡し、緩やかな景気回復の動きが期待されており、中国経済、米国経済
  の経済指標をみると底堅く推移していたこと等から、金融環境のひっ迫が景気の腰を折るとの
  懸念は和らいでおり、金利、為替、株価の見通しについては計画策定初年度の水準が継続する
  ものと予想しておりました。
     前述の予想に対しまして、計画期間中におきましては、平成 28 年 6 月以降英国の EU 離脱選
  択に伴う円高・株安が進行し景気の減速懸念が高まりましたが、下半期以降は米国で大方の予
  想を覆して誕生したトランプ政権に対する経済政策への期待が高まったことから、ドル高・円
  安、株高の方向に推移しました。さらに、平成 29 年度上期の国内経済はアジア向けを中心に
  輸出が持ち直し、雇用・所得環境の改善等から個人消費も持ち直しの動きが続きました。
     平成 29 年度下期には衆議院総選挙において与党が議席定数の 2/3 以上を確保するなど当面
  の経済財政政策に大きな変更がなかったことなどから、緩やかな回復基調が継続する展開とな
  りました。平成 30 年度上期も緩やかな回復基調が継続しましたが、下期以降は米中貿易戦争
  の影響や企業成長率の大幅鈍化が想定されたことから、景気後退局面に入る可能性をマーケッ
  トが示唆する展開となり、株安、金利低下が進行し、内外の経済環境に不透明感が広がる状況
  となっております。
     このような市況環境のなか、平成 31 年 3 月期の日経平均株価は当初予想した水準を上回る
  推移となりました。一方で金利、為替については、計画期間中に上下値動きがあったものの、
  平成 31 年 3 月期については当初予想した水準と同程度となりました。




                            1
【各種指標】
            H28/5             H29/3 期                     H30/3 期                     H31/3 期

            実   績    前 提       実   績    前提比      前   提     実   績    前提比      前   提     実   績    前提比

 無担保コール

  翌日物       -0.054   -0.054   -0.060    △0.006   -0.054   -0.068    △0.014   -0.054   -0.060    △0.006

   (%)

  TIBOR3M
             0.062   0.062     0.057    △0.005   0.062     0.069     0.007   0.062     0.069     0.007
   (%)

  10 年国債
            -0.120   -0.120    0.065     0.185   -0.120    0.045     0.165   -0.120   -0.095     0.025
   (%)

為替(ドル/円)
            110.94   110.94   112.19      1.25   110.94   106.25    △4.69    110.94   111.00    △0.94
  (円)

 日経平均株価
            17,234   17,234   18,909     1,675   17,234   21,454     4,220   17,234   21,205     3,971
  (円)



(2)   資産・負債の状況


 ① 貸出金残高
  貸出金残高は、農業・林業、電気・ガス・熱供給・水道業、不動産業、医療・福祉業等が
 増加したことで、計画始期比 544 億 5 百万円増加し、5,711 億 98 百万円となりました。
  うち中小企業事業性貸出金は、震災以後、様々な復旧・復興資金に積極的に対応し、さら
 に前計画より「起業・創業支援」「6 次産業化支援」「マッチング支援」「営業支援」「経
                、         、        、     、
 営改善支援」等の本業支援に積極的に取組んだことにより計画始期比 588 億 64 百万円増加
 し 3,215 億 91 百万円となりました。震災直後はがれき処理や復旧工事に係る運転資金、そ
 の後、事業再建へ向けた設備復旧に伴うグループ補助金のつなぎ資金、また、自然エネルギ
 ーへの需要が増加したことに伴う再生可能エネルギー関連貸出等、地域の事業者の復旧・復
 興から成長へ向けた資金ニーズに対し、積極的な支援を行ってまいりました。


 ② 預金等残高
  個人預金は、計画始期比 234 億 57 百万円増加し、5,368 億 47 百万円となりました。法人
 預金も震災復興関連資金(復興工事代金等)により企業の手持ち資金が増加したこと等から、
 同 152 億 66 百万円増加し 2,644 億 54 百万円となりました。公金預金は同 58 億 17 百万円減
 少し、98 億 60 百万円となりました。以上のことから預金残高は同 329 億 8 百万円増加し、
 8,111 億 63 百万円となりました。




                                           2
 ③ 有価証券残高
     有価証券残高は、計画期間中にマイナス金利政策の導入により国債金利が低下していった
 ことから、主に外国債券を投資対象とした投資信託(以下、
                           「外債投信」という。
                                    )の残高を
 増加させました。その後、平成 28 年 11 月、米国大統領選挙の結果等を受け、米国・欧州の
 金利上昇により、外債投信については評価損を大きく抱える状況となりました。評価損の拡
 大抑制に向けて、外債投信の損失処理を実施し、残高を大幅に減少させております。結果、
 有価証券残高は計画始期比 1,029 億 63 百万円減少し、1,779 億 52 百万円となりました。
     有価証券については、投資環境や市場動向を考慮しながら効率的・機動的な運用に努め、
 今後も残高の大幅な積み増しは行わない方針としております。


 ④ 借入金・社債
     借入金残高は、計画始期比 54 億 90 百万円減少し、59 億 36 百万円となりました。


 ⑤ その他有価証券評価損益
     その他有価証券の評価損益は、金融市場の変動の影響等を受け、計画始期比 29 億 10 百万
 円減少し、21 億 65 百万円となりました。


【資産・負債・純資産の推移】                                            (単位:百万円)
               H28/3 期実績    H29/3 期     H30/3 期     H31/3 期      計画
               (計画始期)         実績          実績          実績        始期比
資産                837,871    851,365     855,256     861,046      23,175
 貸出金              516,793    524,218     552,482     571,198      54,405
      うち中小企業      262,727    279,982     306,416     321,591      58,864
 有価証券             280,915    269,417     201,125     177,952    △102,963
負債                801,058    815,826     818,971     823,462      22,404
 預金等              778,255    795,022     807,470     811,163      32,908
      うち個人預金      513,390    523,437     533,148     536,847      23,457
      うち法人預金      249,188    257,454     263,983     264,454      15,266
      うち公金預金       15,677     14,130      10,338        9,860    △5,817
 借入金               11,426     10,237        5,218       5,936    △5,490
純資産                36,812     35,539      36,284      37,583         771


 その他有価証券
                    5,075       1,259       1,465       2,165    △2,910
      評価損益




                                  3
【うち中小企業事業性貸出金残高の推移(業種別)
                      】                                   (単位:百万円)


             H28/3 期実績    H29/3 期       H30/3 期     H31/3 期     計画
             (計画始期)         実績            実績          実績        始期比

   製造業           28,416      31,456        31,707      34,487     6,071

  農業・林業           3,545       4,622         5,744       5,578     2,033

    漁業            1,199         970           869       1,103      △96

  鉱業・採石業          1,470       1,259         1,340       1,152     △318

   建設業           38,458      38,536        41,486      35,951    △2,507

電気・ガス・熱供給・
                  9,772      11,235        16,558      21,602    11,830
   水道業

  情報通信業           1,403       1,766         1,647       1,363      △40

 運輸業・郵便業          7,036       7,278         9,255       9,268     2,232

   卸売業           12,695      12,350        11,752      10,843    △1,852

   小売業           18,978      19,846        19,724      19,072          94

 金融業・保険業          9,517      10,126         8,866       9,231     △286

   不動産業          74,017      79,085        88,094     101,838    27,821

  物品賃貸業           5,587       6,099         6,070       5,955         368

  学術研究・
                    980         972           772         704     △276
 専門サービス業

   宿泊業            2,458       3,035         3,695       2,900         442

   飲食業            3,831       3,846         4,149       3,727     △104

生活関連サービス業         7,242       8,835         8,732       8,102         860

 教育・学習支援業         1,029       1,171         1,245       1,035          6

  医療・福祉          12,666      14,123        18,635      18,716     6,050

 その他サービス         22,318      23,361        26,017      28,205     5,887

    合計          262,727     279,982       306,416     321,591    58,864




                                    4
(3)   損益の状況


 ① 資金利益
  貸出金利息は、平成 28 年 2 月にマイナス金利政策が導入されたこと等により新規貸出実
 行金利が低下し、平成 29 年 3 月期は前年度比大幅な減少となりました。以後、計画期間中
 において貸出金利回りは低下したものの、貸出金残高の増加が寄与し、貸出金利息は概ね横
 ばいで推移しました。その結果、計画始期比では 4 億 73 百万円減少し、80 億 27 百万円と
 なりました。有価証券利息配当金は、市況動向を考慮しながら有価証券残高を縮小させたも
 のの、銀行子会社からの配当金が増加したことから同 68 百万円増加し 20 億 63 百万円とな
 りました。また、預金利息は同 2 億 60 百万円減少し、1 億 25 百万円となりました。
  以上のことから、資金利益は同 1 億 94 百万円減少し、99 億 43 百万円となりました。


 ② 役務取引等利益
  役務収益は、個人のお客様を中心とした資産運用相談業務、法人のお客様を中心としたビ
 ジネスマッチング業務、為替手数料等の役務手数料の見直し等に取組んだものの、計画始期
 比 90 百万円減少し、20 億 47 百万円となりました。役務費用は同 33 百万円増加し 8 億 54
 百万円となりました。
  以上のことから、役務取引等利益は同 1 億 24 百万円減少し、11 億 92 百万円となりまし
 た。


 ③ コア業務粗利益
  コア業務粗利益は、資金利益、役務取引等利益が減少したこと等から、計画始期比 1 億
 46 百万円減少し、111 億 39 百万円となりました。


 ④ 経費
  経費は、計画期間以前から 90 億円台で推移してきましたが、計画期間中に基幹システム
 の償却が終了し、また、業務の効率化、店舗政策による営業店の集約、システム関連の事務
 委託費の見直し、外部コンサルティング会社導入による既存経費の見直し等、経費削減に取
 組んでまいりました。その結果、
               人件費は計画始期比 1 億 10 百万円減少し 43 億 94 百万円、
 物件費は同 4 億 95 百万円減少し 38 億 87 百万円、税金は同 42 百万円増加し 5 億 46 百万円
 となりました。
  以上のことから、経費は同 5 億 64 百万円減少し、88 億 28 百万円となりました。


 ⑤ コア業務純益
  コア業務純益は、資金利益が減少したものの経費が減少したこと等から計画始期比 4 億
 18 百万円増加し、23 億 10 百万円となりました。


                           5
     ⑥ 債券関係損益、株式関係損益
      債券関係損益、株式関係損益ついては、金融市場の変動が大きいなか、その他有価証券評
     価損益やポートフォリオの改善に努め、計画期間において外国債券を投資対象とした投資信
     託、株式等の損失処理を進めてまいりました。


     ⑦ 与信関連費用
      与信関連費用については、計画期間において概ね 2 億円を下回る水準で推移しました。


     ⑧ 経常利益・当期純利益
      経常利益・当期純利益については計画始期比それぞれ 9 億 93 百万円、4 億 86 百万円減少
     し、15 億 99 百万円、12 億 97 百万円となりました。


 【損益状況の推移】                                                      (単位:百万円)
                 H28/3 期                                                  計画
                             H29/3 期        H30/3 期       H31/3 期
                (計画始期)                                                   始期比
貸出金利息               8,500       8,067          8,056         8,027        △473
有価証券利息配当金           1,995       2,384          2,569         2,063             68
預金利息                  385          256            137           125       △260
その他調達費用                15               4             0              0     △15
資金利益                10,137     10,187         10,479         9,943        △194
役務収益                2,137       1,972          1,911         2,047         △90
役務費用                  821          864            872           854            33
コア業務粗利益             11,285     11,298         11,845        11,139        △146
経費                  9,392       9,364          9,128         8,828        △564
 人件費                4,504       4,472          4,373         4,394        △110
 物件費                4,382       4,336          4,178         3,887        △495
 税金                   504          555            575           546            42
コア業務純益              1,892       1,934          2,717         2,310         418
債券関係損益                442       △193         △1,606          △495         △937
一般貸倒引当金繰入額          △158               -              -              5     163
業務純益                2,493       1,740          1,110         1,810        △683
株式関係損益                228          190            334        △198         △426
個別貸倒引当金繰入額            309              -              -         148       △161
貸出金償却                  53              85         344               28     △25
経常利益                2,592       2,141          1,365         1,599        △993
当期純利益               1,783       1,865          1,085         1,297        △486


                                  6
(4)   利益剰余金・うちその他利益剰余金の状況
 経営強化計画期間中におきまして、当初計画した当期純利益を上回る実績を毎期計上したこ
とにより、利益剰余金、うちその他利益剰余金についても計画数値を上回って推移しておりま
す。


【利益剰余金の推移】                                            (単位:百万円)
             H28/3 期                                          計画
                          H29/3 期    H30/3 期    H31/3 期
            (計画始期)                                           始期比
      計画                     7,922      8,588      9,108
      実績          7,210      8,643      9,265     10,089        2,879


【うちその他利益剰余金の推移】                                       (単位:百万円)
             H28/3 期                                          計画
                          H29/3 期    H30/3 期    H31/3 期
            (計画始期)                                           始期比
      計画                     7,340      7,908      8,330
      実績          6,726      8,061      8,586      9,315        2,589


(5)   自己資本比率の状況
 平成 24 年 9 月に震災復興に向けた 100 億円の国の資本参加を受け入れたことにより、平成
25 年 3 月期の単体自己資本比率は 10.42%となりました。以後、計画以上の当期純利益を計上
し、利益剰余金が積み上がりましたが、その後に劣後ローン、劣後債の返済 62 億円を行った
こと及び、中小企業事業性貸出金を中心に貸出金が増加したことに伴いリスクアセットの額が
増加したことにより、平成 28 年 3 月期の自己資本比率は 9.26%となりました。
 前経営強化計画期間中におきましても、利益剰余金は積み上がりましたが、地域の事業者の
本業支援・資金供給に積極的に取組み、中小企業事業性貸出金が計画始期比 588 億 64 百万円
増加したことから、リスクアセットも計画始期比 679 億 32 百万円増加し、4,184 億 12 百万円
となりました。
      その結果、
          平成 31 年 3 月期の自己資本比率は計画始期比 1.05 ポイント低下し、
8.21%となりました。


【自己資本比率の推移】                                           (単位:百万円)
             H28/3 期                                          計画
                          H29/3 期    H30/3 期    H31/3 期
            (計画始期)                                           始期比
      計画                     9.25%      9.18%      9.11%
      実績          9.26%      8.96%      8.34%      8.21%   △1.05 ポイント



(6)   中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化における実績
 平成 28 年 4 月~平成 31 年 3 月までの中期経営計画では、地域が成長力を維持していくため
には、地域産業や個々の中小事業者の活力向上が不可欠であるとの思いから、当行が企業価値

                               7
向上に向けた支援を積極的に行うことで、お客様の成長・発展に繋がり、雇用が増加し、地域
の活性化に繋がるという好循環を形成するため、
                     「“地域力の向上”~地域の中小事業者の企業
価値向上をお手伝いします~」をテーマに掲げ、『事業性評価に基づく金融支援・本業支援』
                                         、
『「復興」から「成長」へ向けた支援』『地域産業・企業の活性化支援』の 3 つの基本戦略の
                 、
もと、中小規模の事業者への本業支援・金融支援に取組んでまいりました。
 実施体制の整備については営業推進担当部署を「地域応援部」 1 部が担っておりましたが、
                             の
平成 30 年 3 月に本部組織機構の改定を実施し、
                         「地域応援部」「支店統括部」「資産運用コン
                                、      、
サルティング部」 3 部体制とし、
        の        それぞれの専門性を高めるような営業推進態勢の整備を図
っております。各営業店においても平成 27 年度より「店別営業戦略」を策定、平成 30 年度か
らは営業店収益の向上を目的とした「営業店 PL」
                       、およびその達成に向けた具体的な手段とな
る「アクションプラン」を策定し、各営業店の特性を考慮した営業推進態勢の整備に努めてま
いりました。


 ① 本業支援件数の実績
  本計画では、『事業を営むお客様の本業の支援となる提案・助言』を本業支援と定め、計
 画数値を年間 600 件以上とし、
                 「起業・創業支援」「6 次産業化支援」「マッチング支援」
                          、         、        、
 「営業支援」「経営改善支援」等の本業支援に取組んでまいりました。具体的な本業支援の
       、
 取組みとしては事業者の経営課題抽出方法の訓練、僚店の取組状況の共有等を目的とした
 「本業支援研究会」の開催、本業支援の事例を各営業店が共有可能な「本業支援好事例集」
 の発刊等の取組みを行ってまいりました。また、本業支援を実施するためには、事業者の事
 業の内容をよく理解することが必要であり、平成 27 年 7 月に「事業性評価シート」を導入
 し、平成 30 年 3 月には、事業者との「対話」を通じて事業者の課題を共有し、事業者と協
 働での課題解決を図ることで事業者の成長を支援することを目的にローカルベンチマーク
 を使用した事業性評価手法の導入を実施しております。
  以上のような取組等を行い、各期間の本業支援の実績は平成 28 年度が 1,342 件、平成 29
 年度が 2,433 件、平成 30 年度が 1,344 件の実績となっております。中小事業者への本業支
 援の取組内容については営業支援システム(KeyMan)に情報の蓄積・共有を行う態勢を整備
 し、平成 28、29 年度の本業支援の実績については、取組みの意識づけ・定着化を図ったこ
 とで実績は増加しました。平成 30 年度は中小事業者へ「中長期的な伴走支援への取組み」
 を行うことで件数から質へ本業支援の取組みを強化したため、取扱実績は前年度対比減少と
 なりました。事業承継支援について「営業支援」の 1 項目として取組みを行い、平成 30 年
 度の実績は、具体的に事業承継計画の策定などに着手した件数が 38 件、外部専門家と連携
 して計画を進めている件数が 8 件の実績となっており、少しずつではありますが中長期的な
 本業支援の取組みも成果として表れ始めております。




                        8
【平成 28 年度からの本業支援の実績】
          起業・創業        6 次産業化             マッチング                 営業             経営改善
                                                                                                     合計
           支援             支援               支援                   支援              支援
 H28 年度     83 件               19 件             465 件               502 件          273 件             1,342 件
 H29 年度     209 件              20 件             798 件               941 件          465 件             2,433 件
 H30 年度     138 件              6件               338 件               755 件          107 件             1,344 件


 ② 一般貸出金平残の実績
  本業支援件数に加え、中小事業者への信用供与の円滑化に向けて、地方公共団体向け貸出
 金及びシンジケートローン等の運用目的の大企業向け貸出金を除いた貸出金について『一般
 貸出金』と定義し、中小事業者、個人への貸出に対する取組強化を図ってまいりました。本
 計画では、
     『一般貸出金』年度平残計画について平成 31 年 3 月期において 3,850 億円以上を
 設定し、同年度の実績は計画比 440 億 64 百万円増加、計画始期比では 600 億 18 百万円増加
 し、4,290 億 64 百万円となりました。地域の中小事業者、個人へ積極的に資金供給できた
 ものと評価しております。
  中小事業者への信用供与の円滑化に取組むにあたり、正常先下位~要管理先に区分される
 お客様を『成長予備軍』とし、特にもそのようなお客様への金融支援・本業支援に努めてま
 いりました。成長予備軍のお客様への平成 31 年 3 月期の事業性貸出金平均残高については
 計画始期比 592 億 88 百万円増加し、1,873 億 11 百万円となりました。


【貸出金平均残高の実績】                                                                             (単位:百万円)
                    H28/3 期           H29/3 期                 H30/3 期              H31/3 期              計画

                     通期          通期        前期比             通期        前期比        通期       前期比           始期比

総貸出金                 516,388    512,254    △4,134         532,871     20,617   563,208     30,337       46,820

うち一般貸出金              369,046    376,248         7,202     402,633     26,384   429,064     26,431       60,018

 事業性                 276,915    284,078         7,164     310,441     26,362   336,689     26,249       59,774

 住宅ローン                82,436    82,215          △222      82,204        △11    82,646         442          209

 消費者ローン                9,695     9,955              260    9,988          33    9,729        △259            34

うち地公体・市場性貸出金         147,342    136,006    △11,336        130,238    △5,768    134,144       3,906     △13,198




                                                9
【うち事業性貸出金平均残高の実績】                                                       (単位:百万円)
               H28/3 期        H29/3 期             H30/3 期             H31/3 期         計画

                通期         通期       前期比        通期       前期比        通期       前期比       始期比

事業性合計           276,915   284,078    7,164    310,441   26,362    336,689   26,249    59,774

格付別

  正常先上位以上        84,478    80,873   △3,604     88,391    7,518     83,064   △5,327    △1,413

  【成長予備軍】
                128,023   142,044   14,021    159,859   17,815    187,311   27,452    59,288
  正常先下位~要管理先

  個人事業主等         47,429    45,510   △1,919     47,050    1,539     51,219    4,169     3,789

  破綻懸念先以下        16,985    15,651   △1,334     15,141    △510      15,096       △45   △1,889

業種別

  製造業            26,248    27,556    1,309     32,292    4,736     34,920    2,628     8,673

  漁業                993       842    △151         935        93       958        23     △35

  鉱業・採石業            892     1,344       452     1,375        31     1,216    △158        324

  建設業            35,207    33,481   △1,726     35,307    1,826     35,647       341      440

  電気・ガス・熱供給業     14,893    16,518    1,625     19,154    2,636     25,011    5,857    10,118

  卸売業            13,285    12,813    △472      12,556    △257      11,900    △656     △1,385

  小売業            22,834    22,648    △186      22,551       △97    22,288    △262      △546

  金融・保険業          4,083     4,696       613     4,887       191     5,390       503    1,307

  不動産業           77,896    81,826    3,930     91,306    9,480    102,545   11,239    24,649

  個人              6,045     4,780   △1,265      4,808        27     4,492    △315     △1,553

  情報通信業           1,364     1,579       215     1,718       139     1,459    △260          95

  運輸・郵便業          8,011     7,914       △96     9,217    1,303     10,234    1,017     2,223

  各種サービス         61,326    63,947    2,621     69,007    5,060     74,535    5,528    13,209

  農業・林業           3,837     4,132       295     5,328    1,195      6,093       765    2,255



  ③ 公的資金の活用状況
   国の資本参加を受け入れた平成 24 年 9 月以降、金融機能強化法の趣旨を踏まえ、公的資
 金を活用した東日本大震災からの復興 再生に繋がる事業再生支援や成長予備軍を中心とし
                  ・
 た地域の中小事業者への積極的な信用供与に努めてまいりました。
   平成 31 年 3 月基準の地元向け信用リスク量(UL)は成長予備軍を中心とした信用供与に
 努めた結果 22 億 46 百万円、計画始期比では 4 億 92 百万円増加しており、岩手県を中心と
 する地域に相応なリスクテイクを行ってまいりました(当行の地元の定義は東京を除く営業
 店を構える地域としております)。
   これに抜本的な事業再生支援の取組みである東日本大震災事業者再生支援機構、岩手(宮


                                     10
 城)産業復興機構、地域経済活性化支援機構を活用した支援による債権放棄額 37 億 42 百万
 円、個人版私的整理ガイドラインを活用した支援による債務免除額 3 億 94 百万円と自己資
 本でカバーすべき破綻懸念先Ⅲ分類対する未引当部分 23 億 34 百万円を加算すると 87 億 16
 百万円となり受け入れた公的資金については地域のために活用させていただいております。


【信用リスク量(UL)の推移】                                           (単位:百万円)
               H28/3 期                                        計画
                          H29/3 期    H30/3 期    H31/3 期
              (計画始期)                                         始期比
 信用リスク量(UL)       1,754      1,748      1,831      2,246       492


(7)   被災者への信用供与の状況及び被災者への支援における実績
 東日本大震災の発生以後、岩手県の復興計画と歩調を合わせ、お客様の被災状況を的確に把
握し、約定弁済の一時停止、復旧・復興資金による金融支援、各機構の活用による支援等につ
いて積極的に取組んでまいりました。
 約定弁済の一時停止については、平成 31 年 3 月末現在、ほぼ全ての一時停止案件の手続き
が完了しております。また、約定弁済の履行に支障をきたしている事業者や個人のお客様へ迅
速な対応を行い、平成 31 年 3 月末までに累計で 1,168 件/201 億 24 百万円の条件変更を行っ
ております。この取組みにより、返済に関しての柔軟な支援について、貢献が図られたものと
評価しております。
 復旧・復興資金については、震災直後から積極的な取組みを行い、平成 31 年 3 月までに事
業性資金で 3,702 件/911 億 89 百万円、住宅ローン及び消費者ローンで 641 件/108 億 46 百万
円、合計 4,343 件/1,020 億 36 百万円の金融支援を実施しました。うち被災店での融資実行実
績も 2,109 件/581 億 21 百万円となっており、東日本大震災の被害が甚大であった地域の復
旧・復興に貢献ができたものと評価しております。
 東日本大震災により自力での再建が困難な事業者に対しては、東日本大震災事業者再生支援
機構、岩手産業復興機構、宮城産業復興機構の活用を検討し、二重債務問題の解決に対応して
まいりました。平成 31 年 3 月までの各機構の活用実績は、東日本大震災事業者再生支援機構
55 先、岩手産業復興機構 44 先、宮城産業復興機構 13 先の支援・買取実績となっております。
 また、個人に対しては、「個人版私的整理ガイドライン」の周知や利用について相談会など
を通じて案内してまいりました。この結果、平成 31 年 3 月までの債務整理開始の申出件数は
39 件、弁済計画案が示された 30 件のうち、当行が決裁権者となる 18 件全てに同意し、債務
整理が決定しております。


 ① 約定弁済を一時停止した実績
  お客様の約定弁済については平成 31 年 3 月末までに 573 先/157 億 12 百万円の一時停止
 を行いました。一時停止を行ったお客様には個別の面談や事業再生計画の策定支援等を通じ
 てお客様の現状・実態把握に努め、条件変更等の手続きを行っております。条件変更や、事

                               11
業環境及び生活環境の改善に伴う約定弁済の再開、保険金等による繰上げ完済により、平成
31 年 3 月末現在で約定弁済が一時停止となっているお客様は 1 先となっております。


② 融資条件変更の実績
 東日本大震災の影響を受け、約定弁済の履行に支障をきたしている事業者や個人のお客様
の融資条件の変更の相談について、震災直後から弾力的な対応を迅速に行い、平成 31 年 3
月末までに事業性融資 1,093 件/192 億 8 百万円、
                              住宅ローン 75 件/9 億 16 百万円、
                                                   合計 1,168
件/201 億 24 百万円の返済条件の変更に応じております。


③ 復旧・復興資金の融資実績
 東日本大震災の発生直後から、積極的な金融支援に取組み、復旧・復興資金については当
初計画期間(平成 24 年 9 月~平成 28 年 3 月)の平成 28 年 3 月までに 3,617 件/849 億 60
百万円を融資実行しております。前計画期間(平成 28 年 4 月~平成 31 年 3 月)の平成 28
年 4 月~平成 31 年 3 月においても、継続して復旧・復興資金等の金融支援に取組み、726
件/170 億 76 百万円の融資実行を行い、累計では 4,343 件/1,020 億 36 百万円となりました。
当初計画期間においては設備資金・運転資金の不足、二重債務の負担といった金融支援のニ
ーズの割合が高い状況にあり、復旧・復興の金融支援に積極的に取組んでまいりましたが、
前計画期間では、事業者のニーズが雇用・労働力の確保、販路の喪失、原材料価格の高騰、
後継者の育成等へと変化し、復旧・復興支援による金融支援に加え、事業者の成長へ向けた
金融支援、さらにはビジネスマッチング等を活用した本業支援へも積極的に取組んでまいり
ました。震災による被害が甚大であった沿岸部の被災店においては復旧 復興資金について、
                                ・
平成 31 年 3 月までの累計で 2,109 件/581 億 21 百万円の融資実行となりました。




                            12
【復旧・復興資金の実行実績】                                               (単位:件、百万円)
                            前計画期間
           当初計画期間
                            H28 年 4 月~                  累計               うち被災店
         震災後~H28 年 3 月
                            H31 年 3 月
         件数       金額       件数             金額       件数        金額        件数      金額

 事業資金
          2,470   52,756    339           7,716    2,809      60,472    952    25,001
 (運転)

 事業資金
           754    25,796    139           4,921     893       30,717    607    23,802
 (設備)

  住宅
           284     5,823    219           4,099     503       9,922     435    8,448
 ローン

 消費者
           109      583         29          340     138         923     115      868
 ローン

  合計      3,617   84,960    726           17,076   4,343     102,036   2,109   58,121



 また、平成 24 年 3 月より、復興に向けた商品として復興アパートローン、復興住宅ロー
ンの発売を行い、被災地域のアパート、住宅建設需要にお応えし、平成 31 年 3 月までにそ
れぞれ 114 件/52 億 77 百万円、351 件/81 億 35 百万円の融資実行となりました。


④ 各機構の活用実績
 過大な債務を背負い、被災地域において事業の再生を図ろうとする事業者に対して、二重
債務を解決するために各機構を活用した支援を実施しております。平成 31 年 3 月末までに、
東日本大震災事業者再生支援機構 55 先、岩手産業復興機構 44 先、宮城産業復興機構 13 先、
合計 112 先の支援・買取実績となっております。
 前計画期間においては、機構を活用したお客様において、東日本大震災の発生から約 8
年が経過していることもあり、当初事業計画を上回って業績が好調に推移している事例も散
見されました。機構債権については、DDS 化等により金利負担が低減されている等、有益な
ものもある一方で、コベナンツ条項等により経営の自由度が一定程度制限されている場合も
あります。早期に機構債権を完済し、事業再生を完了したいと考えているお客様のニーズに
応えて、リファイナンスによる各機構からの Exit 支援を実施し、 件/10 億 80 百万円の支
                                 19
援実績となっております。


⑤ 個人版私的整理ガイドラインの活用実績
 個人のお客様の二重債務問題の解決へ向けては「個人版私的整理ガイドライン」を活用し
た支援に取組み、平成 31 年 3 月までの債務整理開始の申出件数は 39 件、弁済計画案が示さ
れた 30 件のうち、当行が決裁権限者となる 18 件全てに同意し、債務整理が決定しておりま
す。

                                     13
(8)   地域における経済の活性化における実績
 当行が営業基盤をおく岩手県は、広大な面積と世界有数の三陸漁場を活かし、全国と比較し
て従来から農林水産業が盛んな地域となっております。当行では平成 17 年よりアグリビジネ
スに取組むなど、地域の農林水産業の活性化に努めております。前計画期間では、農林水産業
を起点として加工や販売のみでなく、物流、建設、サービス業といった様々な関連業種に商流
を派生させることを目指し、事業性評価の実施によって中小事業者の商流を把握し、課題を共
有したうえで、本業支援に取組み、中小事業者の成長・発展に寄与してまいりました。本業支
援については、セミナーの開催、ビジネスマッチング機会の提供等、地域の事業者の課題解決
へ向け、様々な取組みを行いました。このような取組みが一過性のものとならないよう継続し
てお客様の本業支援に関わってまいります。
  今後も多様な情報の提供を行っていくことは必要と考えており、事業性評価等を通じた金融
支援・本業支援を実施することで、イベントの提供にとどまることなく、個々のお客様に深く
関わり、地域の活性化に繋がるような支援態勢の強化に努めてまいります。


      【地域における経済の活性化における支援事例 1】
      第三セクター等経営体強化に向けた地公体への行員派遣事例
       当行では岩手県遠野市と平成 25 年 12 月「農林水産業の活性化に関する業務推進協
      定」、28 年 3 月に「地方創生の連携に関する協定」を締結し、遠野市及び市の第三セ
      クターと 6 次産業化を中心とした連携を進めてまいりました。
       平成 28 年 10 月、遠野市が進める「第三セクターの経営体強化の取組」事業に協働
      して取組むため、外部専門家として営業店支店長を経験し、中小企業診断士資格を保
      有する行員を派遣しました。
       平成 31 年 3 月までの派遣期間のあいだにおいて、第三セクターの経営計画 3 ヶ年
      (H28~30 年度)の総括と新経営計画 3 ヶ年の改善計画案を策定しております。




                        14
【地域における経済の活性化における支援事例 2】
農業生産法人に対する 6 次産業化支援事例
 本事例のお客様は米栽培等を行う岩手県内の農業生産法人のお客様です。
 お客様から平成 27 年よりレストラン出店に関する相談があり、当行は出店候補地
の紹介や店舗コンセプト等についてアドバイスを含めた本業支援を実施しました。レ
ストランのコンセプトは「地元肉牛、地元生産物を気軽に楽しめる店」であり、本件
の実現に向けては、よろず支援拠点の紹介から事業計画書及び収支計画の策定、レス
トランの地主とのマッチング、日本政策金融公庫との協調融資組成等による支援を実
施しました。
 そのような支援を実施した結果、平成 29 年 10 月にレストランが開店となりました。
地域のお客様に親しまれるレストラン開店を支援した事例となっております。



【経済の活性化における支援事例 3】
国内最大級の大規模ソーラーシェアリング事業を支援した事例
 平成 29 年 12 月、岩手県一関市の国営開発農地を有効活用し、太陽光発電と小麦・
大麦の栽培を両立する大規模ソーラーシェアリング事業に対するプロジェクトファ
イナンスを実施しました。ソーラーシェアリング事業へのプロジェクトファイナンス
としては東北地方では初の取組みとなります。
 ソーラーシェアリングとは農業委員会より農地の一時転用許可を受けたうえで農
地に支柱を立て、農業を行いながら上部空間で太陽光発電事業を行う取組みです。農
業事業者は通常の農業収入に加え、売電収入や発電事業者からの営農支援金等による
所得増加が期待されております。
 本事例は小麦・大麦の栽培と発電事業を両立させる取組みを支援した事例となって
おります。




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       【地域における経済の活性化における支援事例 4】
        地元中小事業者と大手流通事業者とをマッチングした支援事例
         本事例のお客様は岩手県内で産廃処理や肥料製造を行う事業者です。お客様は自社
        製造の有機肥料と自社で蓄積された EM 農法により「りんご」の無農薬栽培に取り組
        み、農薬・除草剤不使用の「りんご」の量産に成功し、販路拡大を計画していました。
        一方、大手流通業者は平成 29 年 7 月より、東京の同社旗艦店舗にて、青果の取り
        扱いを開始しており、「化学合成農薬と化学肥料不使用」または「減農薬」により栽
        培した、地方に埋もれている良質な食材を求めていました。
         当行では、両社の特性とニーズを把握し、当行を仲介者とするビジネスマッチング
        により両社を引き合わせ、大手流通業者の旗艦店店頭にて、本事例のお客様の良質な
        食材が扱われることとなりました。
         本事例は地元中小事業者と大手流通業者のニーズを把握し、マッチングが成約に至
        った好事例となっております。


2.   経営強化計画の実施期間
  当行は、
     「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」第 12 条第 1 項の規定に基づき、平
成 31 年 4 月(計画始期)から令和 4 年 3 月(計画終期)まで経営強化計画を策定、実施いたし
ます。


3.   中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他当行が主として業務を行っている地域
における経済の活性化に資する方策


  (1) 中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化その他主として業務を行っている地域に
       おける経済の活性化に資するための方針


     ① 岩手県の経済環境
      当行の営業基盤である岩手県は、東北地方北部に位置し、面積は北海道に次ぎ、全国第 2
     位の 15,278 ㎢を有しております。平成 31 年 2 月 1 日現在の県全体の人口はおよそ 123 万人
     で、震災前の平成 23 年 3 月 1 日と比較し、およそ 9 万人の減少となり、特に津波による被
     害が大きかった沿岸 12 市町村では、約 3 万 5 千人(-12.9%)の減少となりました。
      岩手県の経済状況は、東日本大震災により甚大な被害を受けたことから、震災直後から沿
     岸被災地を中心に復興需要が県内経済を下支えしておりました。公共工事請負額は平成 22
     年度が 1,654 億円だったものが、震災復興関連工事が本格化するに連れて、平成 26 年度は
     震災後最大の 5,167 億円とピークを迎え、その後は前年を下回る水準で推移したものの、平
     成 30 年度も 4,386 億円となっており、依然として高水準の発注が続いております。新設住
     宅着工戸数も、
           平成 22 年度 5,228 戸だったものが平成 24 年度以降は沿岸被災地の住宅再建、

                              16
災害公営住宅などの需要から大幅な増加となり、平成 30 年度も 8,496 戸となっており、震
災前と比較し、高水準で推移しております。また、岩手県の有効求人倍率は震災直後は一時
的に悪化したものの、災害復旧や自動車関連求人の増加により平成 23 年 12 月には全国の倍
率を上回り、平成 25 年 5 月には 20 年 2 ヶ月ぶりに 1 倍を超え、平成 31 年 1 月では 1.43
倍となっております。
 各経済指標をみますと、震災前比較では高水準を示しているものの、前計画期間内にピー
クを迎え、復興需要の減少、復興のバラツキがみられる状況となっております。そのような
なか平成 30 年度の岩手県経済は、企業における生産の抑制など人手不足の影響や公共投資
が弱含みとなることが懸念されましたが、全体としては緩やかな回復の動きが継続するもの
となりました。


 【岩手県の人口推移】                                                 (単位:人)
                 H23 年 3 月          H31 年 2 月     減少数        減少率
     宮古市             59,229              53,363    △5,866      △9.9%
     大船渡市            40,579              36,034    △4,545     △11.2%
     久慈市             36,789              33,994    △2,795      △7.6%
    陸前高田市            23,221              18,726    △4,495     △19.4%
     釜石市             39,399              34,748    △4,651     △11.8%
     大槌町             15,222              11,227    △3,995     △26.2%
     山田町             18,506              14,956    △3,550     △19.2%
     岩泉町             10,708               9,128    △1,580     △14.8%
     田野畑村             3,838               3,238     △600      △15.6%
     普代村              3,065               2,649     △416      △13.6%
     野田村              4,606               3,939     △667      △14.5%
     洋野町             17,775              15,579    △2,196     △12.4%
 沿岸 12 市町村合計         272,937            237,581   △35,356     △12.9%
    岩手県合計          1,326,643          1,236,818   △89,825      △6.8%




                               17
【公共工事請負金額の推移】                                          (単位:億円)
  H22 年度     H23 年度     H24 年度     H25 年度     H26 年度     H27 年度
     1,654      2,706      3,410      4,815      5,167      5,136
  H28 年度     H29 年度     H30 年度
     4,817      5,063      4,386


【新設住宅着工戸数の推移(下段は沿岸 12 市町村)】
                                                       (単位:戸)
  H22 年度     H23 年度     H24 年度     H25 年度     H26 年度     H27 年度
     5,228      5,178      8,121      9,870      9,006      8,422
       814      1,007      2,815      4,020      3,800      3,122
  H28 年度     H29 年度     H30 年度
     7,974      8,024      8,496
     2,371      2,252      1,881


② 岩手県の復興計画及び復興状況
 岩手県の「岩手県東日本大震災津波復興計画」は、計画期間 8 年【第Ⅰ期:基盤復興期間
(平成 23 年度~25 年度)、第Ⅱ期(平成 26 年度~28 年度)、第Ⅲ期:更なる展開への連
結期間(平成 29 年度~30 年度)】となっており、当行の前経営強化計画の実施期間(平成
28 年~30 年度)は、第Ⅱ期から第Ⅲ期に該当しました。第Ⅲ期には、復興事業の総仕上げ
を視野に復興の先も見据えた地域振興にも取組みながら、
                         「安全の確保」、
                                「暮らしの再建」、
「なりわいの再生」事業が行われました。宮古-室蘭フェリー航路の開設、高速道路は東北
自動車道と釜石を結ぶ東北横断自動車道の開通、三陸鉄道においてもリアス線としての一貫
運行が始まる等ハード面での復興が進みました。
 平成 31 年 3 月に「岩手県東日本大震災津波復興計画」の計画期間 8 年間が終了したこと
から、岩手県では「いわて県民計画(2019~2028)」(以下、計画という。)を策定しまし
た。計画においては 10 年間の長期ビジョンおよび長期ビジョンの実効性を確保するための
具体的な推進策である「復興推進プラン」、「政策推進プラン」、「地域振興プラン」、「行
政経営プラン」の 4 つのアクションプランが策定されました。
 「復興推進プラン」では、復興計画期間に整備が終わらなかった社会資本については早期
の整備完了が進められる計画であるほか、被災者の心のケアやコミュニティの形成支援、農
林水産業や商工業の振興など、中長期的な視点から「政策推進プラン」 「地域振興プラン」
                                や
に掲げられる施策と連携しながら実施されます。また東日本大震災の教訓の伝承に係る事業
については未来のために永続的に実施されるものとなっております。




                             18
【岩手県の復興計画】




 震災から約 8 年が経過した現在は、地域により多少の遅速はあるものの土地区画整理事業
が概ね完成し、住宅、店舗等の建設により新しい街の姿が現れてきました。また、産業の復
興おける被災事業者への再建支援は、旧債務の買取、設備復旧へのグループ補助、補助金非
対応部分への長期・無利子融資により行われてきましたが、平成 25 年頃をピークに減少し
つつあります。
 震災復興に向けた岩手県経済は、公共工事など復興需要が下支えとなっておりますが、人
口減少等から個人消費に弱く、企業の景況感もマイナスで一進一退の状況にあります。地域
の主要産業である水産加工業においては、ここ数年主要魚種の水揚げ減少による加工原材料
の高騰が経営を圧迫しているケースも見受けられ、水産加工業の不振は関連する業種へと影
響を及ぼしております。加えて、復興需要の一段落に伴う影響により地域経済全体の停滞が
懸念される状況にあります。
 このように、被災地域の産業復興は主要産業である水産業の不振と復興需要の減少が重な
ることにより、一つの曲がり角を迎える局面も想定されております。新分野への展開、販路
の開拓、生産性向上など様々な経営課題に直面しており、迅速かつ柔軟な対応が求められて
いる状況にあります。


【災害公営住宅】                               (平成 30 年 12 月)
      完成                工事中              工事前
             5,517 戸          23 戸               12 戸


【防災集団移転事業】                           (平成 30 年 12 月)
     計画団地数             工事中              造成完了
             88 地区            2 地区              86 地区




                       19
【土地区画整理事業】                          (平成 30 年 12 月)
       計画地区数           工事中             造成完了
               19 地区         9 地区              10 地区


③ 中小事業者の業況及び中小事業者が抱える課題の状況
 岩手県「被災事業所復興状況調査」では、定期的に沿岸 12 市町村の事業者を対象に復旧・
復興状況についての調査を実施しております。直近の調査において現在抱えている課題をみ
ると、「顧客・取引先の減少または販路の喪失」と回答した事業所の割合が 54.2%で最も高
く、次いで「業績の悪化」(37.0%)、「雇用・労働力の確保が困難」(32.3%)となりまし
た。震災直後は、設備資金・運転資金の不足、二重債務の負担といった金融面での課題の割
合が高い状況にありましたが、直近では、雇用・労働力の確保、販路喪失、原材料価格の高
騰、後継者の不在等の事業の本業に関わる課題に変化しております。


【調査結果(事業者の抱えている課題)】                 (平成 30 年 8 月現在)
 施設整備資金の不足                                     14.2%
 運転資金の不足                                       23.5%
 二重債務の負担                                       10.0%
 雇用・労働力の確保が困難                                  34.8%
 顧客・取引先の減少または販路の喪失                             54.2%
 原材料の価格高騰・調達困難                                 29.5%
 業績の悪化                                         37.0%
 適地・物件の確保が困難                                    5.3%
 後継者の不在                                        22.9%
 その他                                           11.3%




                       20
       建設業                    水産加工業                  製造業
設備資金            8.5%   設備資金           19.4%   設備資金         24.1%

運転資金           18.3%   運転資金           36.6%   運転資金         25.3%

二重債務            6.5%   二重債務           17.2%   二重債務         10.3%

雇用確保           54.2%   雇用確保           40.9%   雇用確保         42.5%

販路喪失           37.9%   販路喪失           29.0%   販路喪失         54.0%

材料調達           32.0%   材料調達           67.7%   材料調達         39.1%

業績悪化           35.3%   業績悪化           38.7%   業績悪化         40.2%

適地物件確保          6.5%   適地物件確保          4.3%   適地物件確保        3.4%

後継者            21.6%   後継者             9.7%   後継者          18.4%

その他            13.1%   その他             7.5%   その他          11.5%



       卸売小売業             飲食・サービス業                    その他
設備資金           10.7%   設備資金           14.8%   設備資金         17.2%

運転資金           23.6%   運転資金           20.9%   運転資金         22.9%

二重債務           10.1%   二重債務           11.2%   二重債務          7.8%

雇用確保           18.9%   雇用確保           36.7%   雇用確保         37.5%

販路喪失           73.3%   販路喪失           52.0%   販路喪失         50.0%

材料調達           24.5%   材料調達           26.0%   材料調達         16.7%

業績悪化           45.9%   業績悪化           26.0%   業績悪化         32.3%

適地物件確保          5.3%   適地物件確保          3.6%   適地物件確保        7.3%

後継者            24.2%   後継者            30.1%   後継者          22.9%

その他             8.8%   その他            10.2%   その他          16.7%




                              21
④ 経営計画
【中期経営計画新旧対照表】




A   前中期経営計画
    平成 28 年 4 月~平成 31 年 3 月までの 3 ヶ年の中期経営計画においては、中小事業者へ
の積極的な支援のビジネスモデルのもと、“地域力の向上”をテーマに『事業性評価に基
づく金融支援・本業支援』、『「復興」から「成長」へ向けた支援』、『地域産業・企業
の活性化支援』に取組み、中小事業者の信用供与の円滑化を積極的に推し進めてまいりま
した。
    平成 27 年 7 月の「事業性評価シート」導入に始まり、平成 30 年 3 月にはローカルベン
チマークを活用した事業性評価手法に改定するなど、事業者との「対話」を通じて課題を
共有し、協働での課題解決を図ることで事業者の成長を支援するため、金融支援・本業支
援に取組んでまいりました。また本業支援研究会等を開催し「事業性評価のレベル向上」
に取組んでまいりました。そのような取組みのもと、一般貸出金平残は 3,850 億円以上の
計画に対し、4,290 億円の実績となり、計画対比では 440 億円の増加、計画始期比では 600
億円の増加となりました。また、本業支援件数についても年間 600 件以上の計画に対し、
平成 28 年度 1,342 件、平成 29 年度 2,433 件、平成 30 年度 1,344 件となり、計画以上の
実績となりました。


                          22
    前中期経営計画においては、様々な取組みを行うことにより、各種計画数値の達成に至
ったことに対しては成果を認識する一方で、当行のお客様である中小事業者をみると、売
上の減少や人手不足などの厳しい経営環境に直面するなかで、経営改善や事業再生、震災
からの復興を模索する事業者がまだまだ多数存在する状況にあります。貸出金残高は増加
し、金融支援は図られましたが、貸出については取組み易い業種に偏りがある等、当行が
目指す「地域力の向上」を十分に満たすことができない側面があったことも事実であり、
「地域力の向上」について真に追求していくことが新中期経営計画の課題であると認識し
ております。
    また、前中期経営計画において認識した課題を解決し、新中期経営計画に着実に繋げて
いくために平成 30 年 3 月に㈱日本人材機構とアドバイザリー業務に関する契約を締結し
ました。アドバイザリー契約のもと、㈱日本人材機構とともに貸出金を中心とした現状分
析、分析を踏まえた課題の洗い出し、貸出先の詳細調査等を実施し、新中期経営計画にお
いても本業支援の内容をさらに深化させ、「成長予備軍」を中心とした支援により地域経
済の活性化に向けた経営計画を策定していく方向性を確認しております。


B   新中期経営計画
    前中期経営計画で認識した経営課題等を踏まえ、地域の中小事業者に対する積極的な支
援を推し進めるため、平成 31 年 4 月~令和 4 年 3 月までの経営強化計画の実施期間と同
期間の中期経営計画を策定しました。
    経営理念である「地域金融機関として地域社会の発展に尽くし共に栄える」ことは創業
時から続く精神であり、この理念は中期経営計画のテーマである「地域力の向上」のベー
スとなるものであります。新計画ではとうぎん VISION として「心のメイン」を掲げ、当
行が従前から培ってきたリレーションシップバンキングを重視した取引を行い、当行を
「心のメイン」と評価していただけるお客様を増やしていくことで当行の地域における存
在価値を高めていくこととしております。「成長予備軍とのリレーション向上」、「農林
水産業を中心とした地域経済の活性化」、「事業再生へ向けた持続的なサポート」、「営
業店アクションプランの実践」 4 つの基本戦略のもと、
              の            中小事業者への信用供与の円滑
化及び地域における経済の活性化を図っていく方針としております。


※リレーションシップバンキング

    当行が中小事業者と長期的且つ継続的な取引関係を保ち、その関係の中で蓄積された   経営能力や成

長性等を、基準の一つとして融資判断等を行うこと



※成長予備軍

    当行融資格付における正常先下位から要管理先に分類されるお客様




                       23
【新中期経営計画全体図】




【基本戦略】




               24
(2)       中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化のための方策


 ① 中小規模の事業者に対する信用供与の実施体制の整備のための方策


  A       中小規模の事業者に対する信用供与の本部支援体制
      中小規模の事業者に対する信用供与の円滑化に向けて、各営業店に対する本部サポート
  体制を構築するため、前経営強化計画策定当初は、
                        「地域応援部」「地域応援部地方創生
                               、
  推進室」「融資部企業経営支援室」を設置し、本部支援態勢を整備してまいりました。計
      、
  画期間中にそれぞれの部署の専門性を高めるような営業推進態勢の構築を目的に本部組
  織機構の改定を行い、平成 31 年 4 月現在「支店統括部」「地域応援部」「融資管理部」
                                、      、
  にて中小規模の事業者への資金供給、各種ソリューションの提供、経営改善支援等の本部
  サポートを行っております。


      a   支店統括部における取組み
          支店統括部は、営業店の営業推進支援の中心的な役割を担う部署であり、営業支援シ
      ステム(KeyMan)を活用した預貸金等の計数状況の管理、住宅ローンを中心とする個人ロ
      ーンの商品開発に加え、各種金融サービス等の企画を行っております。商品の企画立案
      から始まり、広告宣伝等の商品 PR、販売状況の管理、検証に至るまで銀行の営業業務
      全般を統括しております。また、一部の融資審査業務を担うことで中小事業者に対する
      支援体制の充実を図っております。


      b   地域応援部における取組み
          地域応援部は、中小事業者の本業支援を推進していくための中心的な役割を担う部署
      であり、本部渉外及び帯同訪問等による営業店サポート、営業店からの相談窓口等の業
      務等を担当しております。具体的には、事業性評価に基づく本業支援や企業のライフス
      テージに対応した経営支援を実施するための各種方策を策定し、その実行にあたっては
      営業店毎に担当者を定め、営業店と協働した取組みを行っております。


      c   融資管理部における取組み
          融資管理部は、経営改善・事業再生支援先企業等に対する事業計画の策定支援や、支
      援先への直接訪問によるモニタリング、各営業店への臨店指導などを通じて対象企業の
      早期改善及び再建を果たすための支援を継続して行っております。
          また、被災企業に対する支援については、東日本大震災事業者再生支援機構、 (宮
                                             岩手
      城)産業復興機構と連携し、被災企業の事業再生支援や二重ローン問題解決へ向けた営
      業店サポートを行っております。両機構の対象とならない事業者で、且つ債権者間調整
      を必要とする中小事業者については外部の専門的なノウハウを活用するべく「中小企業


                          25
    再生支援協議会」と連携を強化し、再生支援へ向けた営業店支援態勢の整備を図ってお
    ります。


B   融資審査態勢の整備
    前計画期間においては、スピードを重視した顧客本位の業務運営によるトップライン収
益の向上を目的として、平成 30 年度より営業推進部署である支店統括部が審査機能を担
う体制とし、営業推進及び融資審査を行ってまいりました。その結果、経営計画に掲げた
一般貸出金は増加し、特にも「成長予備軍」のお客様(正常先下位~要管理先)の貸出金
残高は大幅な増加となりました。一方で岩手県内の中小事業者の状況をみますと、労働力
不足、販路の減少等から経営に影響が出ているお客様も見受けられ、信用リスクの増加も
懸念されているところであります。
    本計画期間におきましても「成長予備軍」の中小事業者へ積極的にリスクテイクしてい
くこととしており、前計画で貸出金残高が増加した「成長予備軍」への金融支援を継続し
つつ、信用リスクの抑制に向けて、ランクダウン防止への支援、及び事業再生支援の必要
性が増すことから、平成 31 年 4 月より、破綻懸念先及び一部特定の正常先・要注意先の
案件審査担当部署を支店統括部から融資管理部へ移管し審査態勢の見直しを実施いたし
ました。具体的には「3 億円超の新規案件」「破綻懸念先」「重点管理先」の案件につい
                     、      、
ては、融資管理部にて審査を行うこととし、対象先の情報収集や調査分析、協議の内容・
密度について向上を図ってまいります。


※重点管理先

 定例的なモニタリングにより経営実態を適切に把握したうえで、経営改善計画作成等の経営支援から、

抜本的な事業再生、経営改善支援や本業支援、廃業支援等に、積極的に関与する中小事業者



    【中小事業者の支援の流れ】




                     26
C   営業店「店格」の設定
    本計画期間より、営業店に「店格」を設定し、営業推進態勢の整備を実施しております。
一般貸出金残高、取引先顧客数、事業先数等を参考に「店格 A」~「店格 C」及び個人店
に店格を区分し、店格を設定することで支店長職の職責と処遇の整合性を図り、キャリア
パスを明確化させ、モチベーションの向上を図ってまいります。


D   店別営業戦略(「営業店 PL」
                  、アクションプラン)の策定
    当行の営業基盤である岩手県は全国でも有数な面積を誇り、地理的・気候的・歴史的に
様々な特徴を有しており、51 店舗の営業商圏、出店の経緯・歴史、地域シェア、市場環
境等、取り巻く環境は異なっております。
    従来は、営業店の業容等に応じた目標の設定を行う等、本部を中心に戦略を取り纏めて
おりましたが、地域特性に応じたきめ細かい支援を行うため、平成 27 年度に中長期的営
業店経営計画「店別営業戦略」を決定し、平成 28 年度から各戦略に基づき営業店毎に地
域力の向上に繋がる取組みを行ってまいりました。
    平成 30 年度からは「店別営業戦略」を基本として営業店収益の向上を目的とした年度
計画を「営業店 PL」として定め、その達成に向けた具体的な行動として「アクションプ
ラン」を策定しております。「アクションプラン」では各営業店が注力する取組みについ
て、ターゲット・推進項目・目標・リスト数・推進手法・モニタリング方法を定め、リス
トアップを行い実践しております。
    更に平成 31 年度からは、
                 「アクションプラン」に中小事業者の企業価値向上に繋がる中
長期的な本業支援の実施を組み入れることとしております。
    店別営業戦略は、「営業店 PL」全店合計が当行の PL となり、各営業店「アクションプ
ラン」の実践が、当行の持続可能なビジネスモデル「中小事業者への積極的な支援」に繋
がる取組みとなります。
    今後においても、適宜その手法等について見直しを実施し、中小規模の事業者に対する
信用供与の円滑化、本業支援の深化に努めてまいります。


    【営業店 PL・アクションプランの概念図】




                      27
E   事業性評価体制の確立
         平成 27 年 7 月に中小事業者に対する円滑な資金供給に向け、担保、保証に過度に依存
     することなく、事業性を評価した本業支援・金融支援を行うことを目的として事業性評価
     を導入しております。
         平成 29 年 4 月に事業性評価シートの改定を行いましたが、平成 30 年 3 月には、事業性
     評価の更なる深化に向け、経済産業省の策定したローカルベンチマークを活用し、中小事
     業者と積極的に対話を重ね、同じ目線で事業内容の理解をより深めることとしました。
         また、当行が使用するローカルベンチマークでは、事業者と課題を共有し協働で課題解
     決を図ることで更なる成長を支援する為、独自の「ソリューション提案シート」を策定し
     事業性評価手法の改定を行っております。
         ローカルベンチマークを活用した事業性評価シートの作成数は、平成 31 年 3 月末で 323
     先となり、取引先事業者(個人事業主を含む)の約 3.6%となっております。
         今後も、売上や利益などの過去の実績、担保や保証の有無のみで融資の判断を行うので
     はなく、取引先事業者の商品力、技術力、成長可能性などを分析する「事業性評価」に基
     づいて、企業価値向上に向けた金融支援・本業支援に努め、積極的に中小事業者の支援に
     取組んでまいります。


    【事業性評価(ローカルベンチマークから本業支援の概念図)】




     F   人材育成
         中小規模の事業者に対する信用供与の実施に向けて、中小企業診断士の養成、農林水産
     業に係る専門資格者の養成、外部機関との連携を通じた人材育成、その他各種研修を実施
     し、コンサルティング機能を発揮できる人材の育成に努めております。




                             28
    a   中小企業診断士の養成
        中小企業の経営支援をはじめとした積極的な金融仲介機能を発揮するための人材を
    養成する一貫として中小企業診断士の養成に取組んでおります。前計画期間におきまし
    ては、新たに 2 名が資格を取得し、当行の平成 31 年 3 月末の中小企業診断士は 12 名と
    なっております。
        本計画期間におきましても、中小企業の経営支援に向けて、公募選抜等を活用し、資
    格保有者の増員、養成に向けて取組んでまいります。


    b   農林水産業に係る専門資格者の養成
        前計画期間におきましては、アグリビジネスを中心とした成長産業分野へのコンサル
    ティング機能の発揮へ向けて、農林水産業の特殊性を理解し、経営者の相談に応じるた
    めの基礎的な知識やノウハウを行員に習得させるため、日本政策金融公庫が行う「農業
    経営アドバイザー」等の資格取得に努めてまいりました。「農業経営アドバイザー」資
    格については、前計画期間内に 1 名が資格取得し、計 16 名の「農業経営アドバイザー」
    が地域の農業者の方々を支援しております。また、
                          「林業経営アドバイザー」
                                     「水産業経
    営アドバイザー」資格についても、それぞれ