8242 H2Oリテイル 2021-07-28 14:00:00
中期経営計画(2021-2023年度)について [pdf]

                                                    2021 年 7 月 28 日
各 位
                                 会社名 エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社
                                       代表者名 代表取締役社長     荒木 直也
                                          (コード番号 8242 東証第 1 部)
                                         問い合わせ先 執行役員 渡 邊 学
                                               (TEL 06-6365-8120)




                  中期経営計画(2021-2023 年度)について



     当社は、中期経営計画(2021-2023 年度)を策定しましたので、以下のとおりお知らせ
いたします。



1.       中期経営計画策定の背景


         少子高齢化や人口減少などの構造的変化により、小売市場の縮小が避けられないなか、
     当社グループは、マーケットシェアを持続的に拡大するため、2005 年度から長期的な視
                     グランプリ テ ン
     点に基づいた事業構想「 G P 10計画」を策定し、取り組みを進めてきました。
                                             セカンド
         2015 年度から開始した「GP10 計画 ステージⅡ(GP10- Ⅱ )」では、「関西ドミナ
     ント化戦略」として、顧客の日常生活から非日常生活まで対応する店舗ネットワークの
     構築によるマーケットシェアの拡大を掲げ、この事業構想に基づき、2019 年度からは、
     中期経営計画「GP10-Ⅱ フェーズ2」を推進してきました。しかしながら、新型コロ
     ナウイルス感染症の拡大を契機とした急激な社会環境・消費環境の変化を受けた現状と
     今後に対する認識を踏まえ、昨年 10 月に中期経営計画を取り下げ、新たな計画の策定を
     行うこととしました。


         今回のコロナ禍により、次のように社会や生活スタイルは大きく変容を遂げています。
     ⚫    急速なデジタル化・オンライン化
          幅広い世代やジャンルで新しいライフスタイルが浸透しています。
     ⚫    生活者やビジネスパートナーとダイレクトにつながるネットワーク型社会への移行
          オンラインでのアクセス・コミュニケーションが容易になり活発化したこと、デジ
          タル・ソーシャルネイティブな若い世代が社会の大きな位置を占めるようになって
          きたこと、作り手が直接販売する D2C ビジネスが拡大していることなど、ネット
          ワーク型社会への移行が大きく進展しています。




                                   1
     ⚫    都心立地の優位性揺らぐ
          テレワークの定着で通勤や通学による毎日の人の移動が減少する一方、住まいのあ
          る地域への関心が高まり、行動半径が縮小したことで近隣店舗の利用頻度が上がっ
          ています。


         これらの環境変化に対し、
     ⚫    リアル店舗とデジタル技術を融合したビジネススタイル(OMO スタイル)構築
     ⚫    顧客とのコミュニケーションを起点とした新たなビジネスモデルへの変革
     ⚫    都心集客型からの変革と百貨店への依存度低減による、収益源の多角化とグループ
          収益構造の再構築
         に向けて、当社グループを進化させていかなければならないと考えています。


2.       グループビジョンの実現に向けて


         当社グループの強みである、お客様や地域社会とのつながり、信頼、ネットワーク、
     並びに阪急阪神両本店を軸とする強いブランド力、多彩な顧客接点と顧客基盤を活かし
     て、当社グループの基軸である「関西ドミナント化戦略」の推進と、ステークホルダー、
     とりわけ地域社会・住民との関係性を深めるサステナビリティ経営に取り組みます。
         これらを通じて、お客様のマインドシェア No.1 とマーケットシェア No.1 の同時実現
     により、グループビジョンである「「楽しい」「うれしい」「おいしい」の価値創造を通
     じ、お客様の心を豊かにする暮らしの元気パートナー        ~地域社会と、子どもたちや地
     球の未来に貢献したい~」の実現と事業成長を目指します。


3.       長期事業構想 2030


         当社グループは、根本的なビジネスのあり方を見つめ直し、2030 年に向けて、既存事
     業の再建・磨き上げ、新市場への展開、新事業モデルへの挑戦を軸とする長期事業構想
     を策定いたしました。
         グループの目指すビジネスモデルを新たに「コミュニケーションリテイラー」と設定
     し、デジタル技術とリアル店舗を融合したお客様とのダイレクトなコミュニケーション
     を重ねることで継続的な強くて深い関係を築き上げ、それをベースにさまざまな商品や
     サービスを提供しビジネス化していくことで、お客様に「楽しい」「うれしい」「おいし
     い」生活をお届けし、地域とともに成長し続けていきたいと考えています。
         そして、ターゲットとするお客様を「富裕層」「スモールマス」「マス」の3つの性格
     に分類し、次に掲げることに取り組む方針です。




                              2
     ⚫    百貨店事業の再建
          コスト構造改革を進めると同時に、デジタルを活用した OMO の推進と、阪神梅田
          本店建て替え開業、神戸阪急と高槻阪急のリモデルを軌道に乗せることにより、「楽
          しさ No.1」の百貨店として、営業利益 150 億円以上の規模を着実で安定的に持続す
          ることができる事業体を目指します。
     ⚫    食品事業の「第二の柱」化
          業務の徹底的な見直しと生産性向上への取り組み、イズミヤ・オアシスの業務統合
          に伴うコスト削減や原価率低減を図ることで、営業利益 100 億円をコンスタントに
          稼ぎ出すことができるよう、改革を進めます。
     ⚫    商業施設運営を着実に
          ショッピングセンターとビジネスホテルを中心に、営業利益 30 億円程度を確保すべ
          く、投資と運営の合理化を進めます。
     ⚫    新市場への展開
          店舗商業における新しい市場への機会拡張として、10 年後には 30 億円の利益を生
          む事業とするべく、まずは 2021 年 4 月に開業した寧波阪急事業を確立し、阪急う
          めだ本店と連携して、寧波・浙江省の富裕層・アッパー層に向けたハイエンドコン
          テンツ・ジャパンコンテンツの提供や、EC、関連事業を展開していきます。
     ⚫    新事業モデルへの挑戦
          これまで培ってきた関西の市場と顧客基盤を活かして事業モデルを拡張する挑戦と
          して、顧客サービス事業に取り組みます。マスマーケットで広く利用される食を中
          心としたオンライン軸のサービスコンテンツ開発や宅配事業の強化、リアル店舗と
          の連携、株式会社ローソンや大阪府などアライアンスによるネットワークづくりを
          通じて、関西エリアでの新たなサービス事業化を目指します。そこで得られた顧客
          データと開発した機能をプラットフォーム化し、B2B ビジネスに展開することで、
          すべてを合わせて営業利益 30 億円を超える事業に育てていきたいと考えています。
     ⚫    インフラ開発
          コミュニケーションリテイラーの実現を支えるものとして、IT 基盤の整備、デジタ
          ル技術を活用した OMO スタイルの確立、グループ顧客データ基盤の構築を行い、
          社会や住民の「絆」づくりにより地域に貢献します。


         2030 年には「グループアクティブ顧客」数 1,000 万人、営業利益 300~350 億円、
     ROE 6~7%を目標とし、以上の取り組みを進めていきます。


4.       長期事業構想 2030 における新・中期経営計画の位置づけ


         2021 年度から 2023 年度の中期経営計画においては、コロナ前の営業利益水準への回
     復を目標に、




                               3
     ⚫    百貨店事業の再建のため、コスト構造改革、OMO スタイルの確立
     ⚫    食品事業の「第2の柱」化のため、SM 事業の再構築、製造事業との一体的運営、
          アライアンスによる事業力強化
     ⚫    将来の成長のための事業開発着手として、寧波阪急一番店化と関連ビジネス開発、
          オンラインを軸にした顧客サービス事業の立ち上げ・拡張
     ⚫    基盤となる IT・デジタル化の推進
         を重点項目と定め、長期事業構想実現に向けて取り組みを推進します。
         次期3ヵ年(2024 年度から 2026 年度)では、コロナ前の営業利益水準を上回り、収
     益源の多角化達成を目指します。


5.       全社戦略
     (1) 新事業モデルへの挑戦
          当社グループの強みである、これまで積み重ねてきたお客様や地域との強いつなが
         り・信頼を活かし、IT・デジタルと既存リアル店舗やサービスを融合・活用した、関
         西圏 1,000 万人の「グループアクティブ顧客」獲得に向けたサービス事業の開発に着
         手します。
          まず、百貨店・食品スーパーなどの既存事業の枠組みにとらわれず、多くの生活者
         が頻度高く利用する、地域生活に密着したオンライン機軸のサービスを開発します。
         当社グループの知見を活かすことができる「食」領域からスタートし、当社グループ
         やアライアンスパートナーの既存店舗商業と連携して相乗効果を追求、さらにサービ
         ス領域を拡大して、1,000 万人の生活者と常時つながり密接にコミュニケーションで
         きる関係を構築します。
          次に、新規サービスを通じたつながりや生活者データ、さまざまなサービス機能か
         らなる顧客データ/サービス基盤を構築し、決済・ポイント・配送・コミュニケーショ
         ン・分析・マーケティング機能と合わせたプラットフォーム機能の提供、あるいは顧
         客データ基盤を活用した広告やマーケティング分析など新規サービスの提供によるB
         2Bビジネスの創出を目指します。
          これらの実現のために、今後、デジタルのメガプレイヤーや決済・物流などの事業
         者、各種専門家・企業、スタートアップやベンチャーとのパートナーシップを強化し、
         生活者だけでなく地域企業・店舗にとって価値のある新たなサービスを開発・提供し
         続ける事業モデルを構築していきます。


     (2) IT・デジタル化の推進
          既にワークスタイル変革や業務の電子化を通じた生産性向上、OMO 施策など既存
         ビジネスのデジタル化による価値創造の取り組みを加速させている一方で、これまで
         IT に十分な投資ができていない状況のなか、3ヵ年で 260 億円を投資して、次のとお
         り DX に向けた新たな IT 基盤の構築と現システムのリスク・課題対応とを両輪で推進




                              4
 します。
  ➢   コミュニケーションリテイラーへの進化に向けた基盤づくり
      グループ顧客データ基盤の構築、グループの EC/OMO 基盤の構築、デジタル
      接客ツールの整備など既存プラットフォーム強化による OMO 化試行に取り組
      みます。
  ➢   業務改革の加速
      ワーク環境を再構築することで柔軟な働き方を実現すると同時に、本社オフィ
      ス面積を 40%削減し、ゼロトラストモデルを目指したネットワーク整備、セ
      キュリティ強化など IT 基盤を刷新します。BPR やクラウド型サービス導入に
      よる生産性向上に向け、まずは百貨店社員全員に配布したスマートフォンを徹
      底的に活用し、統合された情報提供基盤を通じ営業でのコミュニケーションや
      教育・研修を効率化し、契約書・伝票など手続きのペーパーレス化や業務標準
      化に取り組みます。
  ➢   システムリスク・課題への対応
      これまで十分に投資できていなかった、POS や MD システムなど各事業で使用
      しているシステム基盤の再整備、特にグループでの共通化に取り組みます。
  また、DX に向けた IT 基盤を構築し運用するための外部からの人材確保、OJT など
 を通じた社内デジタル人材の育成を強化し、2021 年 4 月より「IT・デジタル経営委員
 会」を設置して、全体を統制しながら DX を推進していきます。


(3) アライアンス
  ➢   株式会社ローソンとの包括業務提携
      両社の経営資源とサービスの融合により、関西ドミナントエリアで新しいサー
      ビスや事業開発を推進します。最初の取り組みとして、2021 年 7 月 26 日より
      順次、アズナス全 98 店をローソンブランドへ転換し、 2021 年度下期には百貨
      店 EC 商品のローソン店頭での受け取りを始めます。また、 両社間で店舗開発、
      商品・物流、マーケティング、データ活用・新サービス開発、サステナビリ
      ティの5つの部会を設け、クイックウィンと中長期の連携確立を進めます。
  ➢   ニュージーランドの Imagr Limited、東芝テック株式会社との共同開発
      2021 年 4 月より画像認識 AI カート実用化に向けた実証実験を開始し、食品スー
      パーにおけるスマートショッピングと店舗運営効率化の取り組みを推進します。
  今後も、事業パートナー、決済、物流、スタートアップなどとのアライアンスを強
 化し、新たな価値提供モデルの構築を目指します。


(4) 新市場への展開 中国浙江省・富裕層
  寧波阪急は 2021 年 4 月、百貨店の強みと SC の強みを併せ持つ中国初の「体験型デ
 パートメントモール」として、「ハイエンド&高感度ファッション」「上質で楽しい食




                        5
      スタイル」「体験とエンターテインメント」「ジャパンコンテンツ」の4つの柱で開業
      しました。開業後は 6 月までの目標を 6 割上回る順調なスタートとなっています。
       将来展開としては、寧波阪急事業を確立したうえで、寧波阪急を拠点に EC や高級
      食品スーパー、サービス事業など関連事業を開発し、阪急うめだ本店との商品・コン
      テンツの連携、顧客連携、越境 EC への取り組みを通じて、高い経済力・購買力を持
      つ中国浙江省の富裕層・アッパー層に向けたビジネス展開による新市場での顧客開拓
      を図ります。


6.    事業戦略
     (1) 百貨店事業の再建
       百貨店業界はかねてより売上規模の縮小が続き、新型コロナウイルス感染拡大によ
      る緊急事態宣言下で長期休業を余儀なくされ、近年業界を下支えしてきた訪日外国人
      によるインバウンド消費も大幅に減少しています。消費スタイルと価値観の変化はめ
      まぐるしく、ニューノーマルの生活様式定着により、さらに厳しい事業環境が継続す
      ると見られます。
       価値観の多様化やデジタル化の浸透、地球環境保全への関心の高まりなど、劇的に
      変化する時代だからこそ、「お客様の暮らしを楽しく、心を豊かに、未来を元気にす
      る楽しさ No.1 百貨店」をビジョンに、次のことに取り組みます。


       ➢   OMO スタイルの確立
           Web カタログの充実やオンラインコミュニケーションの強化、デジタル接客
           ツールの整備に加え、月間売上 1 億円を突破したリモートショッピングサービ
           ス「Remo Order(リモオーダー)」など、リアルとデジタルを融合した新たな
           購入プロセスの開発と提供に取り組みます。リモオーダーによる売上は年間 50
           億円ペースへ引き上げます。
           また、阪急阪神両本店の名物催事に Web セミナーや EC を組み合わせた拡張、
           デパ地下ケーキ宅配「阪急のケーキ宅配」「CAKE LINK」「TOKYO CAKE
           DIARY」など強みを活かした新たなサービスの展開、EC のラインナップ拡充
           や動画配信による魅力の最大化など、独自性の高いコンテンツ開発とリアル・
           デジタルによる相乗効果を発揮します。
           EC とリモオーダーによる売上は 2020 年度の 84 億円(前年比 186%)から、3
           年後に 3 倍となる 250 億円の売上を目標とします。
       ➢   新ロジスティクスセンター開設(2021 年秋)
           さらなる OMO スタイルの推進に向け百貨店の物流センター機能を集約し、自
           動倉庫や自動搬送機などを活用して物流効率や在庫オペレーションを大幅に改
           善し、よりすばやい物流を実現することで店頭在庫の流動性や EC の利便性を
           高めサービス向上につなげていきます。




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  ➢   阪神梅田本店、再建店舗への重点投資
      2021 年秋、阪神梅田本店は「毎日が幸せになる百貨店」をストアコンセプトに
      建て替えグランドオープンします。2021 年度以降 150 億円を投じ、「食の阪神」
      の魅力を最大化すべく面積を拡張し、店舗全体でスモールマスマーケットをと
      らえた共感型コンテンツを開発、「ナビゲーター」が顧客とともにコンテンツの
      魅力を発見・発信・コミュニケーション・ショッピング化するファンコミュニ
      ティ型百貨店として、リアルとデジタルを融合した OMO スタイルのモデル店
      舗を構築します。
      神戸阪急は都市型百貨店としての標準的な MD の充実に加え、神戸らしさの
      エッセンスを取り入れた特徴的なフロアを構築します。高槻阪急は新しい郊外
      型百貨店モデルとして、百貨店と SC のベストミックスを目指します。両店で
      100 億円の投資(2022 年度・2023 年度)を予定しています。
  ➢   コスト構造改革
      デジタル化や BPR による生産性向上を通じて組織・体制を再構築し、業務の見
      直しや内製化により業務委託・人材派遣など外部経費を削減、活動方針を再定
      義して宣伝費・出張費・時間外手当などを継続的に見直し、2019 年度比で 25
      億円のコストを削減します。
      加えて 2021 年度は、緊急事態宣言を受けた全館休業に伴い 25 億円の緊急コス
      ト圧縮を行います。


(2) 食品事業の「第2の柱」化
  食品スーパー業界は、高齢化や共働き世帯の増加を背景に加工・調理品の需要が増
 え、コロナ禍のステイホームによる内食需要の高まりも追い風になり、売上規模は拡
 大しています。
  当社グループでは、生活スタイルの変化で食の価値が見直されていることを受け、
 食品事業を「第2の柱」に育てていきます。
  食品事業全体での一体的運営と、SM 事業の標準化と運営力再構築を強力に推進す
 る全社プロジェクトを組成し、仕入・オペレーション・本部組織など SM3社の運営
 機能統合、標準化とチェーンオペレーション運営力の再構築による生産性向上と収益
 力アップ、デリカ・ベーカリー・プロセスセンターなど製造と販売の一元化を遂行し
 ます。
  併せて、2021 年度から 2023 年度の 3 年間で 30 億円を投じて 70 店舗を改装し、商
 圏に応じた店舗フォーマットへの転換を行います。IT・デジタルを活用した新しい価
 値の提供と効率化にも取り組み、セミセルフレジ・AI カートなどによるスマート
 ショッピングと省人化を推進し、アプリや宅配事業などデジタルを活用した顧客との
 コミュニケーションを強化していきます。
  また、2021 年 7 月 28 日に、株式会社万代との包括業務提携基本合意を締結し、両




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 社の規模を活かした共同調達と運営力の相互活用により、事業力を強化していきます。


(3) 商業施設事業
  新規開設の SC との競合にさらされ、コロナ禍でテナントの退店や出店意欲の減退
 が見られますが、当社グループが保有する商業不動産は郊外立地が主で、食品・ド
 ラッグストアなどの日常品を中心としたテナント構成であることから、業績への影響
 は比較的軽微です。
  当社は不動産賃貸ではなく、施設の運営で収益をあげていくことを明確にするため、
 2021 年 4 月に、株式会社エイチ・ツー・オー アセットマネジメントの保有資産を各事
 業会社に分割し、「不動産」セグメントを改め、SC およびビジネスホテル運営で構成
 する「商業施設」セグメントに変更しました。グループにおける将来的な活用の見通
 しが立たない不動産は資産効率向上のため整理を進め、運営を継続する施設は魅力的
 な店舗づくりと合理的な運営体制を構築していきます。
  イズミヤ GMS の SC 化は、直営売場の縮小効率化と「ココカラファイン+イズミ
 ヤ」ほかテナント導入の推進により、全 36 店舗の対応を 2021 年度中に完了し、2020
 年度からの2年間で SC への転換と不採算店舗の整理により 20 億円の利益改善を見込
 んでいます。引き続き業務の標準化や施設管理業務の見直しなど運営の効率化を進め
 ます。
  また「「人」と「地域」がつながる近隣型商業施設へ」との方針のもと、地域コ
 ミュニティ拠点「イズミヤゆいテラス河内長野」
                      (イズミヤ河内長野店 4F)
                                   、子どもや
 保護者の支援拠点「子ども LOBBY」
                   (イズミヤ門真店 3F)の2つの公民連携施設を開
 設しました。今後も店舗ごとにそれぞれの地域に合った取り組みを行い SC の魅力を
 最大化することで、地域との「絆」活動を推進し集客力向上につなげます。
  ビジネスホテルのアワーズイン阪急を運営する大井開発は、収益改善のため新 PMS
 (Property Management System)導入による省人化と低コスト運営を進め、法人営業
 の強化や新しいニーズをとらえたプラン提案により稼働率の向上を図ります。


(4) その他事業
  百貨店事業の落ち込みに伴いグループ内取引が減少し、専門店業績の悪化や業務
 サービス業態の開拓余地も限られるなか、各社事業の抜本的な見直しや投資効率の向
 上、業務効率化などによる財務体質改善が急務となっています。各子会社事業におけ
 るマーケット変化や、人件費など経費効率の悪化を見据え、さらに踏み込んだ見直し
 が必要と考えています。
  各子会社は百貨店・食品など主要事業との連携・サポート体制を強化し、人材育成
 や柔軟な配置転換を通じてグループシナジーを最大限に発揮し、関西ドミナントエリ
 アにおける事業基盤をより強固なものとすべく取り組みます。マーケット変化を細か
 くとらえた事業変革を実行し、一方で IT 基盤の共通化やバックオフィス業務の集約に




                        8
      よる生産性向上をグループ全体で推進します。
       コンビニエンスストア事業においては収益改善のため、アズナス全 98 店をローソン
      ブランドへ転換し、MD の充実やオペレーション改善により、転換前に比べて 5 億円
      の利益改善を見込みます。
       また、不採算・非効率に陥っている事業がないか継続的にモニタリングを行い、必
      要に応じて整理・撤退を行います。2021 年 7 月に株式会社エイチ・ツー・オー スタイ
      ルネットの業務移管、2021 年秋に株式会社エイチ・ディ ベースモードの事業撤退、
      2022 年 3 月末までに株式会社カエトクサービスの事業撤退を行うことを決定していま
      す。


     (5) セグメント別 P/L
       業績予想の前提は次のとおりです。
       ➢   新型コロナウイルス感染症第5波の到来と緊急事態宣言の再発令を想定するも、
           店舗の臨時休業などは織り込まず、2021 年 10 月まで売上は一進一退
       ➢   百貨店事業の国内需要は 2021 年 11 月から徐々に回復すると見込む
       ➢   百貨店事業の免税売上は 2022 年度までは回復を見込まない


                             ※2021・2023 年度は総額売上高(単位:億円)
                       2019 年度    2020 年度       2021 年度    2023 年度
                        実績            実績         予想
      百貨店事業      売上高      4,732       3,478        3,900      5,300
                営業利益       115         ▲19             5       135
       食品事業      売上高      3,541       2,811        2,970      3,050
                営業利益      ▲25              42         45        62
     商業施設事業      売上高         87         633         400        450
                営業利益       (41)       (▲1)          ▲5          18
      その他事業      売上高       612          471         380        500
                営業利益       (29)       (▲27)        ▲30        ▲20
        合計       売上高      8,973       7,392        7,650      9,300
                営業利益       112         ▲44         ▲10         170




7.    サステナビリティ経営の推進


      当社は、本中期経営計画と長期事業構想 2030 をもとに、2021 年秋に発行予定の統合
     報告書において、サステナビリティ経営方針、重点テーマ(マテリアリティ)の取り組
     み方針および中長期目標を公表する予定です。それに向けて、現在グループ全体で議論




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     と取り組みを進めています。
      2021 年 4 月に「サステナビリティ経営推進委員会」を設立し、代表取締役社長が委員
     長を務め、全社挙げての取り組み推進体制を整備しています。グループビジョンを受け
     て、グループの持続的な成長へのサステナビリティ経営方針の策定、「地域の絆」「子ど
     も」「自然環境」などマテリアリティの特定とコミットメントに対して議論が進行中で
     す。
      また、気候関連課題に対する目標設定や開示の充実化に向けて、日本政府のカーボン
     ニュートラル宣言を踏まえた中長期目標や、CDP への回答を通じた気候関連課題への取
     り組みの開示について検討を進めています。
      百貨店事業および一部のテーマは食品事業において、環境対策推進プロジェクトチー
     ムを発足し、食品ロス削減、プラスチック削減、衣料品廃棄削減、什器廃棄削減など環
     境・社会関連課題に取り組んでいます。
      2021 年 7 月には大阪府と包括連携協定を締結し、子ども・教育、地域活性化、環境な
     どの分野で共同取り組みを推進しています。子ども・教育分野では、阪急うめだ本店の
     イベント「HANKYU こどもカレッジ」でのスペシャルプログラム開催など、豊かな人
     間性や健全な心身の育成への貢献、地域活性化分野では、「大阪カレーもん」の開発お
     よび販売など地域ブランド認定品の販売・プロモーション支援、環境分野では、事業
     者・消費者・行政からなる食品ロス削減ネットワーク懇話会への参画など食品流通全体
     における食品ロス削減取り組みについて協議しており、当社グループの多様な顧客接点
     を活かして地域課題へ多面的に取り組んでいきます。
      その一環として、店舗を活用した市町村との取り組みである「イズミヤゆいテラス河
     内長野」には市社会福祉協議会が移転し、多世代交流を促す多目的スペースを設置、イ
     ズミヤ門真店では市の子どもや保護者の支援拠点「子ども LOBBY」を開設しました。
     今後も地域からの信頼を強みとして、店舗と地域社会の活性化に貢献します。


8.    グループ本社機能の強化・再構築
     (1) IT・デジタル/人事/計画管理
       ➢   IT・デジタル
           デジタル変革を迅速に適える次世代 IT/DX 領域の構想と具体化、各種プロジェ
           クトの推進、セキュリティの強化などを目的に、外部専門技術者の登用・活用
           や社内人材育成を通じて、グループ全体の IT・デジタル化を強力に推進する体
           制を構築します。
       ➢   人事
           グループ横断での人事制度および人事マスタの整備、効率的かつ効果的な要員
           の再配置、人材育成のため、一貫した人事施策の立案と実行に取り組みます。
       ➢   計画管理
           中期経営計画や3ヵ年事業計画の進捗管理、計画に対する修正を適切に実行で




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           きる計画管理機能を構築します。


     (2) BPR 推進
        グループビジョンに掲げる価値創造のため、組織風土を改革し、成果を生み出す組
      織にすることを目的に、グループ全体で BPR を推進していきます。
        イノベーション思考への転換による意識改革と、新しい取り組みを後押しする物理
      的環境や施策の実行並びに IT の積極活用を軸とした環境改革を進め、意識と環境の改
      革により実現するアジャイルでコラボレーティブな行動改革を三本柱とし、風通しが
      良く活気にあふれ、毎日変化が生み出される企業風土を目指します。
        また、改革実施に伴う業務プロセスの見直しや標準化・集約化・デジタル化などに
      より、グループ全体の徹底した合理化と工数・コストの削減を図ります。


     (3) 本社移転
        新しい働き方の実現による価値創造、従来型ワークスタイル変革による効率化・コ
      スト削減、オフィス環境刷新による求心力・人材確保を目的として、2022 年夏を目途
      に本社オフィス移転を計画しています。
        移転先の新オフィスでは、フリーアドレスやリモートワークによる自律的で柔軟な
      働き方への変革を目指し、新たな価値を生み出すコラボレーションスペースやミー
      ティングスポット、部門・グループ・会社を越えた共創を促す機能と仕掛け、多様な
      働き方をサポートする Web 会議ブースやソロワークスペース、健康的でサステナブル
      な設備・環境を実現します。これに伴い、働き方の見直しやペーパーレス化によりオ
      フィス面積を 40%削減します。
        併せて、本社移転を契機に全社の BPR や業務集約を進め、業務を抜本的に削減し、
      スマートフォン・PC・グループウェアなど従業員への IT 装備でコミュニケーション
      コストを削減、定型業務の省力化による効率性向上を図ります。


9.    人事施策


      個人・組織のパフォーマンス最大化のためには、コスト構造に見合う生産性の高い組
     織づくりと、一人一人が個性を発揮し活き活きと自律的に働く仕組みづくりが課題であ
     ると考えています。
      生産性の高い組織づくりのために、要員ポートフォリオを策定し、ジョブの再設計や
     業務の効率化・外注業務の内製化、業態転換や統合に伴う人員再配置、経営人材の育成
     や IT など専門人材の確保・活用によりグループ全体の組織力の向上を図ります。
      自律的に働く仕組みづくりのためには、ジョブ型・複線型など人事制度の整備、タレ
     ントマネジメントによる職務・役割と個人のマッチング、女性活躍推進やシニアが活躍
     できる場の創出、健康経営などに取り組みます。




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     これらを通じて、社員一人一人と組織のパフォーマンスの両方を最大化し、グループ
 人材の流動化・活性化を目指します。


10. 投資計画


     投資の優先順位や投資基準を明確にして、投資効率の向上を図ります。
     優先順位の1番目は店舗・営業施設の主要投資で、阪神梅田本店、百貨店の再建店舗
 への重点投資、物流センターの統合、SM 既存店改装などに集中投資します。なお、SM
 新規出店は原則として当面凍結します。2番目は IT/DX 投資で、BPR、OMO 推進のイ
 ンフラとなる IT 基盤整備に集中積極投資します。3番目は更新投資で必要最小限の設備
 更新・営繕投資に絞り込みます。
     3ヵ年の投資額は 950 億円(2021 年度 300 億円、2022 年度 370 億円、2023 年度 280
 億円)を計画しており、明細は次のとおりです。
 ⚫    店舗・営業施設主要投資
      阪神梅田本店建て替え 150 億円、神戸阪急・高槻阪急リモデル 100 億円、百貨店新
      ロジスティクスセンター開設 75 億円、SM 既存店改装(商圏に応じた店舗フォー
      マットへの転換)30 億円
 ⚫    IT/DX 投資
      OMO、グループ顧客データ基盤、ワーク環境構築 80 億円
      POS、MD システム、情報基盤刷新ほか 180 億円
 ⚫    顧客サービス事業開発着手 10 億円


11. 財務・資金計画
 (1) 資産効率向上
      バランスシートのスリム化、資金化により財務体質の改善・安定を図ります。
      不動産は非店舗を中心に、本社ビルを含む利用効率の低い物件をすべて売却します。
     2021 年度から 2023 年度での売却物件は 15 件程度、売却益は約 300 億円を見込んで
     います。
      株式については政策保有株式を大幅に縮減し、既に 2021 年度実績で 8 銘柄を売却
     し、売却額は 94 億円、売却益は 65 億円です。


 (2) 有利子負債の削減・資金計画
      有利子負債は近年の大型プロジェクト投資と収益環境悪化により増大しており、阪
     神梅田本店建て替え、神戸阪急・高槻阪急リモデル、IT 基盤整備など大型投資案件が
     続きますが、追加借入は行わない方針です。投資キャッシュフロー水準が下がり、先
     行投資の効果などで営業キャッシュフローが増加すれば、借入の圧縮を進めます。
      キャッシュフローアロケーションについては、営業キャッシュフローと資産売却に




                               12
  よる投資キャッシュインフローによって大型案件の資金源を捻出します。
    3 カ年での営業キャッシュフローは 460 億円、資産売却などによる投資キャッシュ
  インフローは 700 億円、設備投資 950 億円を実施したうえで、フリーキャッシュフ
  ローは 200 億円超の水準を確保し、成長のための先行投資と健全な財務基盤を両立さ
  せる計画です。


12. 数値目標と重点指標(KPI)
 (1) 営業利益
    2023 年度にコロナ前の営業利益水準である 170 億円に回復、2030 年度に営業利益
  300~350 億円を目指します。
    2030 年度に向けて、百貨店事業 150 億円以上、食品事業 100 億円以上、商業施設事
  業 30 億円、寧波・浙江省事業 30 億円、顧客サービス事業 30 億円を目標とし、収益源
  多角化の実現を目指します。


 (2) ROE/ROIC
    バランスシートのスリム化と利益水準の回復により効率性を向上し、2024/3 月期に
  ROE 2%水準への回復、2031/3 月期に ROE 6~7%を目指します。


 (3) 株主還元・配当政策
    中長期にわたる適正な財務体質の構築と成長投資に必要なキャッシュフロー、事業
  年度ごとの業績を勘案しながら安定的な利益還元を行うことを基本に、親会社株主に
  帰属する当期純利益、連結純資産、連結キャッシュフローの中長期の計画から総合的
  に判断して最適な成果配分を行います。
    当期純利益水準が回復するまで、当面は1株当たり年間配当額 25 円を維持し、長期
  的には配当性向 30~40%を目指します。


 (4) 主要な指標の推移
                                                           (単位:億円)
                2018 年度   2019 年度   2020 年度      2021 年度    2023 年度
                 実績        実績            実績       予想
  営業利益              204       112         ▲44       ▲10         170
  経常利益              214       118         ▲29       ▲20         140
  ROE              0.8%     ▲5.0%    ▲10.5%         2.2%       2.6%
  ROIC             3.6%      2.0%        ▲0.8%     ▲0.2%       3.0%


                                                                 以    上




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