7806 M-MTG 2020-04-07 16:00:00
東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ [pdf]
2020年4月7日
各 位
会 社 名 株 式 会 社 M T G
代表者名 代表取締役社長 松 下 剛
(コード番号:7806 東証マザーズ)
問合せ先 取締役専務CFO 吉 髙 信
( TEL. 052-307-7890)
東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ
当社は、2019年9月24日提出の「改善報告書」につきまして、有価証券上場規程第503条第1
項の規程に基づき、改善措置の実施状況及び運用状況を記載した「改善状況報告書」を本日添付
のとおり提出いたしましたので、お知らせいたします。
添付書類:改善状況報告書
以 上
改 善 状 況 報 告 書
2020 年 4 月 7 日
株式会社東京証券取引所
代表取締役社長 宮原 幸一郎 殿
株式会社 MTG
代表取締役社長 松下 剛
2019 年 9 月 24 日提出の改善報告書について、
有価証券上場規程第 503 条第 1 項の規定に基づき、
改善措置の実施状況及び運用状況を記載した改善状況報告書をここに提出いたします。
1
目 次
1. 改善報告書の提出経緯 ......................................................................................................... 3
(1) 過年度決算訂正の内容............................................................................................ 3
(2) 過年度決算短信等を訂正するに至った経緯等 ........................................................ 4
① 不適切な会計処理が発覚した経緯 ............................................................................. 4
② 不適正開示の原因となった行為の内容及び不適切な会計処理の内容 ........................ 7
③ 不適正開示の原因となった行為への全関係者の関与状況 .......................................... 8
④ 不適正開示の原因となった行為に係る認識、目的、動機等....................................... 8
(3) 発生原因 ................................................................................................................. 9
① 松下社長の経営姿勢及びコンプライアンスに関する認識 .......................................... 9
② 上場直後の公表数値の未達成は許されないとする全社的風潮 ................................... 9
③ 全グループ内で唯一希望の星であった中国への過剰な期待とプレッシャー ............ 10
④ 上司の意向に逆らえない又は上司の意向を忖度してしまう企業風土 ...................... 10
⑤ 適切な会計処理を行うための仕組みの脆弱性 .......................................................... 11
⑥ 本社管理部門の機能の軽視 ...................................................................................... 11
⑦ コンプライアンス機能の不十分性 ........................................................................... 12
⑧ 内部通報制度の周知不徹底 ...................................................................................... 12
⑨ 内部監査部門の監視機能の不十分性 ........................................................................ 13
⑩ 取締役相互の牽制・監督機能の不十分性 ................................................................. 13
2. 改善措置並びにその実施状況及び運用状況等.................................................................... 14
(1) 改善報告書記載の改善措置並びにその実施状況及び運用状況 .............................. 14
① 経営責任の明確化等 ................................................................................................ 14
② 企業風土の改革(1.(3)①及び④に対応) ............................................................ 15
③ 適切な目標値の策定・修正(1.(3)②及び③に対応) .......................................... 19
④ 適切な会計処理を行うための仕組みの強化(1.(3)⑤に対応) ............................ 20
⑤ 本社管理部門機能の独立性確保・牽制機能強化(1.(3)⑥に対応) ..................... 21
⑥ コンプライアンス体制の見直し・強化(1.(3)⑦に対応) ................................... 22
⑦ 内部通報制度の運用改善と周知徹底(1.(3)⑧に対応) ....................................... 25
⑧ 内部監査室の監視機能の強化(1.(3)⑨に対応) ................................................. 25
⑨ 取締役会及び監査等委員会の監視・監督機能の強化(1.(3)⑩に対応) .............. 26
(2) 会計監査人に対する通報の調査............................................................................ 28
(3) 改善措置の実施スケジュール ............................................................................... 30
(4) 改善措置の実施状況及び運用状況に対する会社の評価 ........................................ 30
2
1. 改善報告書の提出経緯
(1) 過年度決算訂正の内容
当社は、2019 年 7 月 12 日付「第三者委員会の調査報告書公表及び今後の対応に関するお知
らせ」にてお知らせいたしましたとおり、第三者委員会から同年 7 月 11 日付「調査報告書」を
受領し、同年 7 月 12 日に、過年度決算短信等の訂正を行い、過年度の有価証券報告書等の訂正
報告書を提出いたしました。
過年度決算短信等の訂正による連結業績への影響額については、以下のとおりです。
【過年度決算短信等の訂正による連結業績への影響額】
【2018 年 9 月期】
(第 23 期) (単位:百万円)
訂正前 訂正後 訂正額 訂正率
期間 項目
(A) (B) (B-A) (%)
売上高 60,465 58,377 △2,088 △3.5
営業利益 8,887 6,925 △1,961 △22.1
経常利益 8,882 6,936 △1,945 △21.9
通期 親会社株主に帰属 5,513 4,002 △1,511 △27.4
する当期純利益
総資産 72,122 72,223 101 0.1
純資産 59,551 58,045 △1,505 △2.5
【2019 年 9 月期】
(第 24 期) (単位:百万円)
訂正前 訂正後 訂正額 訂正率
期間 項目
(A) (B) (B-A) (%)
売上高 14,006 10,312 △3,693 △26.4
営業利益 1,275 △1,334 △2,609 ―
経常利益 1,321 △1,283 △2,605 ―
第1四半期 親会社株主に帰属 719 △1,959 △2,678 ―
する四半期純利益
総資産 69,418 68,843 △574 △0.8
純資産 60,153 55,973 △4,179 △7.0
売上高 24,690 18,212 △6,477 △26.2
営業利益 712 △4,502 △5,214 ―
経常利益 797 △4,406 △5,204 ―
第 2 四半期 親会社株主に帰属 53 △5,761 △5,815 ―
する四半期純利益
総資産 70,466 69,387 △1,078 △1.5
純資産 59,684 52,346 △7,337 △12.3
3
(2) 過年度決算短信等を訂正するに至った経緯等
① 不適切な会計処理が発覚した経緯
当社は、会計監査人である有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」といいます。)に
よる 2019 年 9 月期第 2 四半期の四半期レビューの過程で、当社の連結子会社である MTG
上海における 2019 年 9 月期第 2 四半期会計期間の特定の取引先 2 社(以下「A 社」及び「B
社」といいます。 に対する売上取引
) (以下、上記期間中の A 社との間の取引を「A 社取引」、
B 社との間の取引を「B 社取引」といいます。)の収益認識方法(一括売上認識又は消化売上
認識)について議論となりました。トーマツが MTG 上海に直接赴いて追加のレビュー手続
を実施したところ、MTG 上海が 2019 年 9 月期第 2 四半期レビュー期間中にトーマツに対し
て説明していた当該売上取引に関する会計処理の前提事実とは異なる事象が判明し、当該売
上取引に関し不適切な会計処理の疑義が生じたとして、当社は、2019 年 5 月 13 日付「当連
結子会社における不適切な会計処理の疑義の判明に関するお知らせ」と題する適時開示を行
いました。
また、当社は、その翌日である 2019 年 5 月 14 日、取締役会を開催し、第三者委員会の設
置を承認決議し、同日付「第三者委員会設置に関するお知らせ」と題する適時開示を行い、
その中で、トーマツに対して虚偽説明が行われた事実を明らかにしました。すなわち、今回
の MTG 上海における売上取引行為に係る不正の疑惑及び虚偽説明の事実を重く受け止め、
社外の専門家に依頼して徹底した調査を行う必要があると考え、速やかに社外有識者のみを
委員とする第三者委員会を設置し、類似事象の存否を含め、今回の全容解明のための事実関
係の調査を行うことを決議し、このことを適時開示いたしました。
なお、この第三者委員会の調査報告書で判明した事実は、以下のとおりです。
1) 上場と売上の陰り
当社は、2018 年 9 月期(第 23 期)に至るまで過去 10 期連続で増収し、4 期連続で増
益を達成し、2018 年 7 月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場いたしましたが、この最
近の増収増益は、主に日本、韓国及び中国における売上の拡大、特に、中国からの日本
及び韓国への訪問客が中国国内での転売目的で購入するインバウンド需要に支えられた
ものでした。
しかし、2018 年 9 月期の終盤において、中国の空港における代理購入者(バイヤー)
に対する税関検査の運用強化や、中国における新 EC 法が 2018 年 8 月に可決成立し、
中国国外で購入した商品を転売する個人バイヤー等は、購入国と中国での営業許可証の
取得や納税等が義務付けられることになり、中国人インバウンドの売上高が、日本及び
韓国等で大きく失速することになりました。
2) 越境 EC 事案に係る取引
中国人インバウンドの売上高が、日本及び韓国で大きく減少する見通しの下、当社は、
中国国内での需要の成長は今後も維持され、特に EC サイトの販売を中心に売上が好調
に推移できると考えたため、中国国内での売上を司る、当社の連結子会社 MTG 上海及
びその主管部署であるグローバルブランド事業本部(当時の本部長は常務取締役でした。
)
4
への期待が高まりました。
この中国国内市場への期待感が高まる状況下で、常務取締役を中心に取り組んだのが、
「越境 EC 事案に係る取引」でした。ここで、
「越境 EC 事案に係る取引」とは、当社が
日本国内で製造(製造委託)した商品を国内の C 社へ販売する取引であり、その後、C
社は中国の越境 EC サイトの運営会社へ輸出販売する商流計画となっている取引のこと
です。当該取引では、注文書を通じて売買契約は有効に成立し、商品は物理的に C 社の
外部倉庫に納品され、代金の支払も取り決めどおりに行われました。
当社は、この中国越境 EC サイト運営会社を仕向け先とする「越境 EC 事案に係る取
引」として、2018 年 9 月から同年 12 月に C 社に対し、この 4 か月間で約 42 億円の売
上を計上しました。
C
しかし、 社に販売した商品の大半が当初予定されていた中国の販売先(中国越境 EC
サイト運営会社)に販売されることはなく、最終的に当社は、2019 年 5 月 27 日、C 社
の 2019 年 9 月末時点の残存在庫の返品を受け入れるという形で合意しました。
3) 上海事案に係る取引
当社は、2018 年 11 月 13 日、2018 年 9 月期の決算公表時に、2019 年9月期の連結
業績見通し(予想)として、売上高 700 億円、営業利益 98 億円、経常利益 100 億円及
び当期純利益 63 億円と公表しました。
しかし、2019 年 9 月期第 1 四半期において逐次作成更新される予算実績及び着地管理
に関する社内経営資料においては、資料が更新されるたびに数値が落ち込む傾向がみら
れ、2019 年 1 月単月及び第 2 四半期の業績予想が赤字見通しとなりました。
当社が、上記 2)の 2018 年 9 月から同年 12 月の越境 EC 事案に係る取引で C 社に販
売した中国 EC サイト向け商品は、2019 年 2 月の出荷に至るまで EC サイト運営会社に
全く流れていかず、大量の在庫商品を抱えた C 社に対し、当社は、2019 年 1 月以降、
さらに売上をたてることはできない状況でありました。
このような状況下で、MTG 上海で取り組まれたのが、2019 年 1 月の A 社向け売上取
引と同年 3 月の B 社向け売上取引の「上海事案に係る取引」でした。ここで、「上海事
案に係る取引」とは、当社が、製造委託先で製造した商品を、当社から MTG 上海へ輸
出販売し、MTG 上海が、MTG 上海の代理販売事業を営む会社である A 社、及びアリバ
バの中国国内 EC サイトにおいて出店企業をサポートする運営代行企業である B 社へ納
品し販売する取引のことです。
4) 会計監査人への虚偽説明と社内関係者による真実の共有
MTG 上海の 2019 年 1 月の A 社向け売上取引の実
上記の上海事案に係る取引のうち、
態は、その先にいる B 社向け売上取引でした(商流は「MTG 上海→A 社→B 社」
)が、
A 社にしてみれば商品の卸先として B 社が確定しているため、A 社の従前の取引と比較
して A 社の利ざやは小さく、その反面 MTG 上海の利益率が高い取引となっていました。
また、この A 社向け売上取引は、従前の同社への売上取引と比較し高い売上総利益率と
なっていただけでなく、売上代金の回収が当初の支払条件である、2019 年 3 月末日から
5
同年 6 月末日までに回収されずに遅延しておりました。
MTG 上海の副総経理は、 社向け売上取引の高い利益率と代金回収遅延の理由を当社
A
管理部門及びトーマツ向けに説明する方法の必要性を感じ、グローバルブランド事業本
部長の常務取締役と相談のうえ、A 社からの卸先を真実の B 社ではなく銀行とし、その
銀行キャンペーンのスタートが遅れたため代金回収が遅延した、という虚偽の取引シナ
リオを考案しました。
そして、MTG 上海の副総経理は、2019 年 4 月 30 日に、MTG 本社の経営推進本部経
理部と 2019 年 9 月期第2四半期決算レビューを実施していたトーマツに対し虚偽説明
を行いました。その後、トーマツのレビュー過程で、当社経理部は、MTG 上海の A 社
向け売上取引について、繰り返し質問や取引詳細の確認を求められました。
当社では、2019 年 5 月 8 日、常務取締役及び MTG 上海の副総経理が出席のもと、社
内テレビ会議を開催し(当会議の常務取締役及び副総経理以外の出席者は、MTG 上海の
管理本部長、当社の経営推進本部長、経理部長、経理課長、グローバルブランド事業本
部グローバル管理部長及び同本部海外管理課長でした。、当会議に参加した当社内関係
)
者は、A 社の卸先がトーマツに説明済みの銀行ではなく B 社であるという真実を常務取
締役及び MTG 上海の副総経理から説明を受け、情報を共有しました。
5) 松下社長への報告並びに決算承認及び決算発表
経理部長は、トーマツに対し虚偽の説明がされていることを、当社の松下社長へ報告
しておくべきと考え、2019 年 5 月 9 日の社長説明会において、松下社長に対し、説明資
料を配布した上で口頭での報告を行いました。
しかし、この報告は、ごく短時間のものであって、虚偽説明に係る報告と同時に、売
掛金の回収が滞留した場合に売上が取り消されるリスクがある旨も併せて報告がされた
ため、松下社長の関心は、MTG 上海の副総経理がトーマツに虚偽説明を行ったという点
には向かわず、売掛金回収の滞留リスクに向かってしまいました。
当社は、2019 年 5 月 10 日開催の取締役会において 2019 年 9 月期第 2 四半期決算短
信の承認議案を諮りました。同取締役会では、売掛金の回収滞留リスクについては資料
を用いた説明がされましたが、虚偽説明の点については、資料が配られず、説明もされ
ませんでした。
監査等委員会は、同日の取締役会後にトーマツから四半期レビューの状況報告を受け、
トーマツの審査部門が、上海事案に係る取引、すなわち MTG 上海の A 社及び B 社向け
売上取引について適正な会計処理方法の判断をするために追加の事実確認が必要と考え
ていることを把握しました。そのため、監査等委員会は、経営推進本部長及び経理部長
に対し、同日 15 時に予定されていた第 2 四半期決算発表の社長記者会見の延期を提案
するとともに、記者会見を準備中の松下社長にその旨伝達するように経営推進本部長及
び経理部長に指示しました。
しかし、伝達を受けた松下社長及び経営推進本部長は、既に記者会見を直前に控えて
いたことから、トーマツから問題なく四半期レビューの結論がもらえるものと信じ、同
日 15 時から決算発表の記者会見を実施いたしました。
6
6) 決算発表後の会計監査人への真実の報告
トーマツは、当社が決算発表した後の 2019 年 5 月 13 日に、四半期レビューの手続と
して上海に赴き、A 社及び B 社の担当者から直接ヒアリングをすることとなりました。
当社の常務取締役及び経営推進本部長、並びに MTG 上海の副総経理及び管理本部長
は、2019 年 5 月 10 日、トーマツの中国での実地監査に向けた作戦会議を開き、トーマ
ツに対して行った虚偽説明のシナリオを練り直しました。また、経営推進本部長及び経
理部長は、同年 5 月 11 日、常務取締役や副総経理からの指示を受けて、同年 5 月 13 日
に予定されていたトーマツによるヒアリング対策用の A 社及び B 社担当者向け想定問答
集の準備を行いました。
2019 年 5 月 13 日の早朝、常務取締役、経営推進本部長及び経理部長は電話会議をし
ました。その電話会議の趣旨は、常務取締役及び経営推進本部長が危惧していた、A 社
の卸先が銀行ではなく、B 社であることが、デロイト上海から日本のトーマツに伝わっ
てしまうのではないかという点について、その可能性を経理部長に問うものでした。経
理部長は、トーマツに対し真実を話すよう促す意図から、常務取締役らに対し、デロイ
ト上海は MTG 上海の監査を担当する予定であるのだから、デロイト上海と日本のトー
マツは情報を共有するであろうと伝え、ここにおいて常務取締役及び経営推進本部長は、
トーマツに対し真実を話すことを決断し、同日 10 時に、経営推進本部長及び常務取締役
は、トーマツに対し真実を説明しました。
② 不適正開示の原因となった行為の内容及び不適切な会計処理の内容
1) 上海事案に係る取引(A 社取引(2019 年 1 月)の売上取引)及びその不適切な会計処理
当社の連結子会社である MTG 上海は、上海事案に係る取引として、2019 年 1 月に A
社へ商品を納品し、その納品時に売上高(2019 年 9 月期第 2 四半期:1,170 百万円)を
一括計上しました。
しかし、この一括計上した売上高(一括売上認識)については、三者間契約未成立の
A
下、 社が当初から支払期限の到来時に代金を支払う意図はなかったと考えられるため、
IFRS における収益認識の会計基準である IFRS15 号に従えば、
「契約の識別」がなされ
ず売上高を計上することはできないため、当社は、一括計上した売上高 1,170 百万円を、
不適切な会計処理として取り消す訂正を行いました。
2) 上海事案に係る取引(B 社取引(2019 年 3 月)の売上取引)及びその不適切な会計処理
当社の連結子会社である MTG 上海は、上海事案に係る取引として、2019 年 3 月に B
社へ商品を納品し、その納品時に売上高(2019 年 9 月期第 2 四半期:1,088 百万円)を
一括計上しました。
しかし、この一括計上した売上高(一括売上認識)は、IFRS15 号に従えば商品に対
する支配が B 社に移転したと評価できず、委託販売に類似した取引として会計処理され
ることになる(消化売上認識)ため、当社は、一括計上した売上高 1,088 百万円を、不
適切な会計処理として取り消す訂正を行ったうえで、B 社が商品を販売した時点で、そ
7
の販売された商品に対応する売上高を計上することといたしました。
3) 越境 EC 事案に係る取引(2018 年 9 月~同年 12 月の売上取引)とその不適切な会計処理
当社は、越境 EC 事案に係る取引として、2018 年 9 月から同年 12 月に C 社へ商品を
納品し、当社は、その納品時に売上高(2018 年 9 月期通期:1,149 百万円及び 2019 年
9 月期第 1 四半期:3,079 百万円)を一括計上しました。
しかし、この一括計上した売上高(一括売上認識)は、その取引の実質から納品時点
では日本基準における収益の実現(認識)が認められず、委託販売に類似した取引とし
て会計処理されることになる(消化売上認識)ため、当社は、一括計上した売上高 4,228
百万円を、不適切な会計処理として取り消す訂正を行ったうえで、C 社が商品を販売し
た時点で、その販売された商品に対応する売上高を計上することといたしました。
③ 不適正開示の原因となった行為への全関係者の関与状況
越境 EC 事案に係る取引を開始したのは、当社の No.2 であり、グローバルブランド事業本
部長で、MTG 上海の董事長でもあった常務取締役でした。
また、越境 EC 事案に係る取引において、売上返品に相当する PO(発注書・注文書)の発
行等に直接関与していたのは、グローバルセールス&マーケティング部長及び MTG 上海の
副総経理でしたが、彼らが指示を仰いでいたのも、いずれも常務取締役でした。
さらに、上海事案に係る取引と会計監査人への虚偽説明は、MTG 上海の副総経理が主導し
ましたが、このことが社内で問題として取り上げられ、正されなかったのは、むしろそれを
本来諌めなければならない副総経理の上司であった常務取締役が積極的に指示・加担したか
らに他なりません。
当社管理部門の経営推進本部長及び経理部長らは、当社 No2の権限を有する常務取締役か
らの指示を受け、また、売上目標値を堅持する必要があり、目標値の下方修正は容易ではな
かったことから、これに加担し、会計監査人に露呈しないように画策しました。当社管理部
門の経営推進本部長及び経理部長は、相応の専門知識及び経験を有し、不祥事に関する経理
処理が会計基準に反している可能性や、会計監査人に対する虚偽説明が誤った会計処理を招
き、ひいては正しくない会計数値が開示されるに至ることは熟知していました。それにもか
かわらず会計監査人に虚偽説明を続けようとしたのは、後述する当社管理部門の脆弱性の他、
いわばトップに近しい者からの指示であったということが大きい要素でした。
なお、経理部長については、他の者からの要請を受けて、会計監査人に対する虚偽説明の
想定問答集を作成するなどしていた反面、虚偽説明を知って間もない段階からこれを正すべ
きと考えて、松下社長に報告するとともに進言を試み、上司に対して会計監査人に正しいこ
とを説明するべきであると数次にわたって進言し、最終的には常務取締役に虚偽説明を翻意
させて会計監査人に対して真実を説明させるべく動機づけを与えました。
④ 不適正開示の原因となった行為に係る認識、目的、動機等
越境 EC 事案に係る取引を開始し主導した常務取締役は、当社の海外事業全体の最高責任
者であり、松下社長と同年輩で創業期とその後の発展を支えた社内の古参メンバーの1人で
8
す。また、常務取締役及び MTG 上海の副総経理は、いずれも社内で経営幹部たる地位にあ
りましたが、取引において納品をなせば、その時点で売上を計上でき、それによる売掛金が
後日回収されさえすれば問題ない、という誤った理解の上に立って、自らが売上計上のメル
クマールになると考えた納品の時期を早めることにより、必達目標とする売上数値を達成し
ようとしました。
すなわち、それは、上場直後の日本及び韓国での売上失速という当社を取り巻く外部市場
環境の悪化への危機感の下、あくまで必達売上目標値を何とか堅持したいという思いが強す
ぎるあまり、不適切な方法で売上数値を画策したものでした。
また、上海事案に係る取引とトーマツへの虚偽説明は、常務取締役及び MTG 上海の副総
経理が相談し実行しました。これも越境 EC 事案に係る取引と同様に、取引において納品を
なせば、その時点で売上を計上でき、それによる売掛金が後日回収されさえすれば問題ない、
という誤った理解の上に立って、必達目標とする売上数値を達成し、虚偽説明により当社管
理部門及びトーマツを納得させ乗り越えようとしたものであり、必達売上目標値を何とか堅
持したいという思いが強すぎる中、不適切な方法で画策したものでした。
(3) 発生原因
① 松下社長の経営姿勢及びコンプライアンスに関する認識
松下社長は、経営目標数値について、主に前年対比でどの程度成長するかという観点を重
視し、また、上場に際して開示した業績見込みにかかる公表値を重視し、これを下回ったら
証券市場から信頼を失いかねないという強いプレッシャーを受けていました。
また、経営会議や取締役会等の場において、松下社長からは、各本部が自ら約束した経営
目標は必達すべきものとの発言があり、現に経営目標と実際の着地見込みとの間に生ずる差
異や数字の変更については松下社長から質問がなされ、厳しい目が向けられていました。
松下社長のこのような経営姿勢は、公表値を絶対視し、公表値を堅持したり、少なくとも
大きく乖離しないことに腐心するあまり、目先の目標達成のためには手段を選ばず無理な売
上計上に走るという幹部らの行為の素因をなしたものといえます。また、松下社長は、証券
市場への誠実性を正しく理解せず、公表数値を頑なに重視する松下社長の経営姿勢を常務取
締役ら経営幹部が過度に顧慮し、忖度したことが、本件につながったものといえます。
さらに、松下社長は、前述のとおり、本社管理部門との会議の場で、トーマツに対する虚
偽説明の端緒となる説明を受けていたにもかかわらず、これを看過しておりました。また、
第三者委員会調査報告書も指摘しておりますように、松下社長は、2019 年2月頃、売上の下
落を食い止めるべく、第三者をして香港に会社を設立させ、自らの私財を投じて同社に当社
の商品を買い取らせるというスキームを考案することで、当社の売上を上げようと考えた事
実もありました(実行には至りませんでした)。このように松下社長のコンプライアンスに関
する意識が低かったことが、今回の不適正開示の一因といえます。
② 上場直後の公表数値の未達成は許されないとする全社的風潮
当社は、1996 年の設立以来、約 10 年前にリコール問題が生じた一時期を除き、順調に増
収し右肩上がりの急成長を続けたものの、2018 年9月期終盤の頃よりその成長に鈍化が見え
9
始め、
そのような中で、2018 年 7 月に東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たしました。
ところが、上場を果たした直後、2019 年 1 月の新 EC 法施行を見越した、日本国内及び
韓国国内での売上は失速し、また、これに先立つ 2018 年 9 月頃からの中国の税関の取締り
強化等も相俟って、当社の商品売上の見込みについて、大きな変化の兆しが意識されるよう
になりました。越境 EC 事案に係る取引は 2018 年 9 月から開始されており、この売上下落
の流れを押し止めようとし始めた時期と符合しています。
当社は、前述の通り、リコール問題が発生して以来、社内での目標値の下方修正をしたこ
とがなく、2009 年に ReFa を市場に投入して以降 10 年間、売上面において一貫して成長を
遂げてきたため、2018 年 9 月期終盤の成長が鈍化しているにもかかわらず公表数値の達成に
邁進しました。
また、上場直後から 2019 年 9 月期第 2 四半期の初め頃までの時期、発表した公表数値を
達成して証券市場の信頼を維持しようと意識していた社内には、簡単に下方修正できないと
の雰囲気が漂っていました。
それでも外部環境の変化には抗いかねる中、2019 年 9 月期に入った後、公表数値に比し
て売上が相当程度落ち込んだ状況下において、越境 EC 事案に係る取引に代わって何とか売
上の失速を食い止めようとして、2019 年 1 月及び 3 月に、上海事案に係る取引を実行しまし
た。
以上のとおり、上場直後の公表数値の未達成は許されないとする全社的風潮が、今回の不
適切会計を助長することになったものと考えております。
③ 全グループ内で唯一希望の星であった中国への過剰な期待とプレッシャー
当社の最近の業績は、中国に大きな比重がありました。当社の商品は一般消費者が使用す
る商品であるため、人口世界一の中国に大きな比重が置かれましたが、その反面、中国の市
場動向の影響を大きく受けることになりました。
しかし、それでもなお、当社においては、人口の多い中国はまだまだ売上増が見込める世
界でほぼ唯一の魅力的な市場とみなしており、実際、2018 年 9 月期終盤以降も、中国のみが
比較的高い売上高を堅持していました。その結果、グループ全体の売上維持のためにも、当
社グループ成長の象徴でもあり、最後の砦として期待された中国に大きな期待が寄せられて
いきました。常務取締役は、他の事業本部等の公表数値に比しての売上数値の落ち込みをカ
バーすべく、中国について、現場が無理な売上目標と考える水準にまで高い売上目標値を設
定し、自らの部署を追い込んでいき、副総経理らは、無理をして売上目標達成に向け奔走し
ていました。
すなわち、全グループ内で、この当時、唯一の希望の星であった中国への過度の期待と多
額の売上目標値の設定 達成へのプレッシャーが、
・ 不適正開示につながる一因でありました。
④ 上司の意向に逆らえない又は上司の意向を忖度してしまう企業風土
越境 EC 事案に係る取引において PO の発行を指示したのはグローバルセールス&マーケ
ティング部長であり、上海事案に係る取引を画策したのは MTG 上海の副総経理でしたが、
その両名とも、上司であり、当社海外グループの最高責任者であった常務取締役から具体的
10
な指示を受けたり、相談をしながら、上記業務を行っておりました。
また、MTG 上海の副総経理がトーマツに対し虚偽の説明を行った事実を、常務取締役及
び副総経理から 2019 年 5 月 8 日開催の社内会議で知らされた管理部門関係者らは、常務取
締役からの意向を受けて、真実の共有があった後もそれに逆らえず、本来のあるべき姿から
逸脱してしまいました。
⑤ 適切な会計処理を行うための仕組みの脆弱性
今回の不適切な会計処理は、いずれも商品販売取引に係る収益認識時期が不適切であった
というものです。
ここ数年、会計業界では収益認識に係る論点を整理することがトピックスとなっており、
当社においても海外子会社については IFRS が適用されることから、一定の関心はありまし
た。
IFRS15 号等では、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時に収益を認識するという考
えに立っており、この支配の移転に係る認識は、契約内容によって異なる場合も多く、単に
商品を納品し、代金回収の見込みがあれば収益を認識できるとは限りません。
当社経理部においても、単純に全ての取引が、納品時イコール売上計上時(納品時の一括
売上認識)とは限らない点を認識しておりましたが、越境 EC 事案に係る取引及び上海事案
に係る取引に関与した者は、納品時の一括売上認識について当社経理部や会計監査人との議
論に発展することを回避するために、不都合な情報となるであろう取引の内容や契約条件に
ついて、適時・適切に情報共有を行っていませんでした。そのため、当社経理部は、適時に
当該状況を正しく認識することが出来ずに、今回の不適切な会計処理に至りました。
また、不適切な会計処理が行われた取引に共通する特徴の一つとして、他の販売取引に対
して明らかに多額な売上が計上されていることが挙げられます。当社経理部は、前述のとお
り正しい会計処理を検討するために必要な取引の概要や契約条件等の情報共有がなされてい
なかったものの、少なくとも月次経営分析の過程で、その異常な取引の存在を認識すること
はできたものと考えております。しかし、当該異常な取引に係る収益認識について議論が生
じ得ることを当社経理部は認識できておらず、収益認識会計基準が厳格化 複雑化する中で、
・
自社のビジネスがどのような影響を受けるかについての感度は必ずしも十分ではありません
でした。すなわち、事業部門の役員の下で統制が機能しない状況下において、第2線である
本社管理部門は子会社を含むグループ内において収益認識に係るリスクについて発見的統制
を機能させる必要がありましたが、そのような機能は十分に発揮されませんでした。
⑥ 本社管理部門の機能の軽視
当社グループでは、日本国内外を問わず、一定の与信リスクが発生する取引やひな形以外
の特殊な契約書による取引の開始においては、当社の経営推進本部事業管理部が主管する稟
議システムの決裁が必要とされていましたが、不適正開示の原因となった取引では、本来必
要となる当稟議システムの決裁プロセスを適切に経ることはなく、また、不適正開示の原因
となった取引以外の取引でも当プロセスを逸脱しているケースが多く見受けられました。
また、前述のとおり、越境 EC 事案に係る取引及び上海事案に係る取引に関与した者は、
11
経理部が正しい会計処理を検討するために必要な取引の概要や契約条件等の情報共有を、適
時・適切に経理部へ提供していませんでした。
これらが放置された要因としては、常務取締役を中心として、社内承認手続よりも売上計
上を優先することを容認してきたことによるものと考えております。
実際に、海外子会社において、本社承認前や契約締結前に取引を開始したことが発覚した
際に、グローバルブランド事業本部内でも問題になりましたが、結局、始末書の提出につい
て議論されたもののうやむやに終わった経緯があり、グローバルブランド事業本部は社内手
続きを軽視する傾向が見られました。
経理部や事業管理部などの当社管理部門は、いわゆる「第2線」として、「第1線」の統
制に対する牽制すべき役割を担うべきものですが、これらは軽視又は無効化され、今回の不
適切会計処理事案においては、十分に機能することはありませんでした。
⑦ コンプライアンス機能の不十分性
コンプライアンスについては、社長直轄のコンプライアンス委員会が常設として設置され
ており、半年に1回、報告を行う形で開催されていました。また、国内外の従業員にコンプ
ライアンスブックが配布され、定期的にアンケートによって、コンプライアンスに関する意
識調査等も行っていました。
しかしながら、コンプライアンス委員会は、年に2回定期開催されるのみで、コンプライ
アンス関連規程の取締役会付議の決議、年間のコンプライアンス活動計画の決定と活動結果
の報告及び内部通報があった事案の共有等が中心となり、具体的なコンプライアンス上の課
題について議論し、改善策を指示するようなところまで掘り下げることができておりません
でした。委員長である松下社長からは、一部の役職員に対して何か問題があれば遠慮なく言
って欲しい、という呼びかけがなされていたものの、全役職員に向けてコンプライアンスに
関する情報発信がなされたことはありませんでした。加えて、コンプライアンスブックも、
従業員にどの程度理解されていたかは定かではない状況であり、また、会計上の知識や不正
防止のためのコンプライアンスの教育研修等が事業部門に対して十分に行われておらず、コ
ンプライアンス機能が十分に機能していたとはいえません。
⑧ 内部通報制度の周知不徹底
当社では、内部通報に関して、当社の国内外の従業員から社内の通報受付窓口及び専門業
者に委託した社外通報受付窓口を通じて通報を受け付ける制度が存在し、実際に、従業員等
からは年に 10 数件程度の通報が寄せられていました。しかし、当社の内部通報規程には、通
報対象として、法令違反行為、不正行為、不適切な行為等が定められているものの、その具
体例は記載されておらず、今回のような不祥事がその対象となっていることを想起できた者
はほとんどいなかった可能性があります。
また、2019 年 9 月期中に当社が実施した当社グループ従業員に対するアンケートによれ
ば、国内従業員で内部通報規程が整備されていることを知っている者は 70%にとどまり、さ
らに、そのうち利用方法を知っている者は 47%に過ぎませんでした。海外従業員に至っては、
内部通報規程が整備されていることを知っている者が 43%に過ぎませんでした。
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したがって、当社では、不適正開示の原因となった取引について、従業員らが不審を感じ
ても通報できる体制が整っていなかったと言わざるを得ません。
⑨ 内部監査部門の監視機能の不十分性
当社の内部監査部門は、新しい内部監査室長が、2019 年 3 月 1 日に当社に入社して以来、
チェックリストを作成した上での資料ベースでの監査体制へ移行している最中であり、内部
監査部門が、未だ十分には機能していない状況でした。
すなわち、本来は、内部監査室により、国内外グループ会社や当社事業部に対して、十分
な深度と頻度を有した内部監査を実施していれば、本件の兆候の端緒発見につながり、より
早期に対応することが可能なはずでした。しかしながら、これまでの内部監査室の監査内容
は、日常業務の執行監査及び労務監査を中心とした業務監査に主眼を置いており、会計コン
プライアンスに重点を置いた会計監査の深度に欠けておりました。また、本件が発生した
2019 年 5 月時点では、各事業部や子会社に対して年に 1 回のみ業務監査を実施しており、特
に海外グループ会社の事業執行に関しては、1年4か月以上往査の間隔が開く等、十分な監
査モニタリングが実施できておりませんでした。
⑩ 取締役相互の牽制・監督機能の不十分性
当社の組織構造においては、事業本部制を採用しており、各事業本部は担当役員(取締役
又は執行役員)が本部長となり、業務を執行しておりますが、役員本部長が、他の事業本部
の業務執行を含む、重要な経営判断に関し、会社法で期待されている、取締役相互の監視機
能及び牽制機能を必ずしも十分に発揮していたとは言えません。
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2. 改善措置並びにその実施状況及び運用状況等
(1) 改善報告書記載の改善措置並びにその実施状況及び運用状況
① 経営責任の明確化等
【改善報告書に記載した改善策】
1) 関与・加担した役職員の適正な処罰
当社は、今回の事態の重大性と経営責任を厳粛に受け止め、本件に直接関与した当社
の常務取締役、経営推進本部長、MTG 上海の副総経理、及び他の役職員に対して、以下
の人事的措置を図りました。
2019 年 7 月 12 日付で取締役を辞任したい旨の申し出があり、
常務取締役より、
当社はこれを受理し、2019 年7月 12 日付、
「第三者委員会の調査報告書公表及び
今後の対応に関するお知らせ」にて公表いたしました。
経営推進本部長より、2019 年 7 月 12 日付で辞職したい旨の申し出があり、当
社はこれを受理いたしました。
MTG 上海の副総経理より、
2019 年 7 月 15 日付で辞職したい旨の申し出があり、
当社はこれを受理いたしました。
本件に関与した他の役職員につきましても、その役職、関与の程度、行為の悪質
性、情状等を総合的に考慮し、社内規程に基づき厳格な処分(厳重注意)を行い
ました。
2) 取締役報酬の自主返上
2019 年7月 12 日付、
「第三者委員会の調査報告書公表及び今後の対応に関するお知ら
せ」にて公表いたしましたとおり、当社は、第三者委員会の調査結果を踏まえ、企業と
して重大な責任があることを深く反省するとともに、今回の事態の重大性について厳粛
に受けとめ、その経営責任を明確にするため、以下のとおり、当社各取締役が報酬を自
主的に返上することといたしました。
代表取締役 : 月額報酬の 100%(1 年分)
取締役 : 月額報酬の 20%(3 ヶ月分)
取締役監査等委員: 月額報酬の 10%(1 ヶ月分)
なお、今後の当社及び子会社の役員の採用と内部登用にあたっては、コンプライアン
ス意識をはじめとする人物評価を慎重に行ってまいります。
【実施・運用状況】
経営責任の明確化等として、改善報告書に記載した上記の改善策、すなわち 1) 関与・加
担した役職員の適正な処罰及び 2) 取締役報酬の自主返上に関しましては、基本的に 2019 年
11 月までに実施済みです。
なお、2) のうち代表取締役報酬の 100%自主返上(1 年分)については、2020 年 7 月役
員報酬分まで現在も毎月、自主返上中です。
当社及び子会社の役員の外部採用又は内部登用にあたっては、外部採用の場合は、レファ
レンスチェックを実施することとし、また、内部登用の際は、取締役会への役員候補者の上
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程議案資料の中で、人事本部長が過去の人事評価表等を再確認し、候補者のコンプライアン
ス意識の適否について評価コメントすることとしました。
すなわち、外部採用の際は、役員候補者の前職での実績・勤務状況等に偽りがないかを前
職の上司・関係者等に確認する手続である、レファレンスチェックを実施することとし、そ
のチェック項目にコンプライアンス意識の確認項目を織り込むこととしました。また、これ
らの当社及び子会社の役員登用手続のルール変更については、それぞれ 2020 年 1 月 23 日及
び同年 2 月 18 日開催の取締役会で、当社及び子会社の職務権限表等の関連規程を改定し、
その所定手続を明確化しました。
実際、2019 年 12 月 25 日開催の定時株主総会及び取締役会で取締役専務及び取締役監査
等委員(常勤)に選任可決された、吉高信氏及び大畠豊氏を外部採用の候補者とする際は、
当規程制定に先行して当チェックを実施し、本人のコンプライアンス意識に問題がないこと
を確認しました。
また、当社は、2020 年 1 月 23 日開催の取締役会で、株式会社 EVERING を新規子会社
として 2020 年 2 月 5 日付で設立し、この子会社の取締役を当社及び当社グループ内部から
登用することを決議しましたが、人事本部長が取締役候補者の過去の人事評価表等を再確認
し、コンプライアンス意識の適否についての評価コメントを 2020 年 2 月 18 日開催の取締役
会に報告しました。
② 企業風土の改革(1.(3)①及び④に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
今回、松下社長の経営姿勢が、上司の意向に逆らえず、上司の意向を忖度する企業風土を
醸成し、本件を助長する一因となったことが明らかになりました。また、上場直後の環境変
化による急激な業績変調の中、上場後の公表数値を下回れないという過度のプレッシャーに
より、リスキーシフト現象を引き起こし、組織全体が誤った結論への同調に向かったとの指
摘を第三者委員会より受けました。当社全役員は、これらを真摯に受け止め、危機に直面し
た際も、売上・利益追求以上にコンプライアンスを重視した経営を行い、上司の意向に忖度
することのない企業風土に改革します。
また、役員向けコンプライアンス研修を 2019 年 8 月から開始しており、全役員の意識改
革を実現してまいりますが、この役員向け研修には松下社長も参加し、原点に立ち返る意味
合いで、例えば 2019 年 8 月 22 日に開催した研修は、外部講師として弁護士をお招きし、
「取
締役の責任」をテーマとして開催いたしました。今後の研修テーマ設定も、全役員共通のテ
ーマを選択すると共に、松下社長に直接関わる内容を企図して参ります。
当社は、コンプライアンス重視の経営を明確化する観点から、2019 年 9 月に、当社全役
員それぞれからコンプライアンス重視を謳った所定の「誓約書」の提出を受けました。また、
2019 年 10 月 17 日に開催するコンプライアンス委員会にて、当社全役職員が遵守すべき「コ
ンプライアンス憲章」を制定いたします。このコンプライアンス憲章は、企業活動を行う上
で全役職員が遵守すべき当社の企業倫理をシンプルに明解に示す予定であり、より具体的な
行動指針については既存のコンプライアンスマニュアルで示して参ります。
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上司の意向に逆らえない又は忖度してしまう企業風土の改革にあたっては、今後、予想外
の環境変化や危機に直面した場合であっても、売上・利益追求に偏重することなく、コンプ
ライアンスを重視した経営を遵守するために、ベンチャー企業であるゆえの代表取締役主導
の経営体制からの脱皮を図り、多様な意見を尊重する経営体制へ変革してまいります。
この一環として、当社は、2019 年 9 月 1 日付で、大田嘉仁氏及び吉高信氏をそれぞれ会
長及び管理特別顧問として招聘しました。大田嘉仁氏は、京セラ株式会社にて取締役、京セ
ラコミュニケーションシステム株式会社にて代表取締役会長を務め、日本航空株式会社では
専務執行役員として同社の再建に貢献されました。吉高信氏は株式会社ファーストリテイリ
ングの CFO をはじめとして複数の大手企業で CFO の経験があります。経験豊かな二人が経
営に参画することで、企業統治を強化し、松下社長への権力集中を防ぎます。また、同月か
ら大田会長、松下社長、吉高管理特別顧問のトップ 3 名の経営陣を中心に、経営企画室を事
務局として、経営戦略会議をスタートいたしました。この会議では、主に当社における全社
的な経営課題を議論し、多様な意見を尊重した経営判断を行うことで、コンプライアンス重
視のバランスの良い経営を推進してまいります。
さらに、当社は、多様な人材、異なる意見を吸収し、役員と現場の役職員との双方向のコ
ミュニケーションを充実させることに努め、経営に反映できる企業風土を目指してまいりま
す。
【実施・運用状況】
2019 年 8 月以降、以下のとおり、全ての役員(取締役及び執行役員)向けの研修を実施
し、全役員のコンプライアンス意識の改革を図っております。
NO 研修開催日 研修講師 研修テーマ
1 2019 年 8 月 22 日 外部弁護士 取締役の責任 事例紹介
2 2019 年 9 月 19 日 外部弁護士 社会(弁護士)から見た今回の不祥事
3 2019 年 10 月 17 日 外部弁護士 インサイダー取引規制と適時開示の重
要性
4 2019 年 11 月 19 日 外部公認会計士 第三者委員会報告書の会計処理に係る
指摘についての考察
5 2019 年 12 月 16 日 当社取締役 監査法人への内部通報事案について
6 2020 年 1 月 23 日 当社取締役 内部統制と全社的リスクマネジメント
監査等委員
7 2020 年 2 月 18 日 外部弁護士 パワーハラスメントについて
(注)2020 年 3 月の役員向けコンプライアンス研修については、会計監査人である PwC 京
都監査法人に講師を依頼し「MTG の内部統制について(仮題)」をご講義いただくことを
決定しておりましたが、新型コロナウイルスの影響により開催を見送りました。
なお、2020 年 4 月以降に、同内容の当研修を開催する予定です。
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当社は、2019 年 9 月に、コンプライアンス重視の経営を明確化する観点から、全取締役
(但し、取締役監査等委員を除く)及び全執行役員(以下、「全役員」と言います。)それぞ
れからコンプライアンス重視を謳った所定の「誓約書」の提出を受けましたが、2019 年 12
月 25 日開催の定時株主総会で取締役の異動が生じておりますので、改めて全役員から「誓約
書」の提出を受けました。
当社は、2019 年 10 月 17 日開催のコンプライアンス委員会にて、当社の全役職員が遵守
すべき「コンプライアンス憲章」を制定し、全役職員が企業活動を行う上で遵守すべき当社
の企業倫理をシンプルに明文化し、また、その具体的な行動指針として「コンプライアンス
「コンプライアンス憲章」は、2019 年 10 月に新設し
マニュアル」を位置づけました。また、
た当社社内ポータルサイト内のコンプライアンスのページに掲示し、また、2020 年 2 月に全
グループ社員に配布したコンプライアンス・カードに記載し、その周知を図りました。
当社は、2019 年 12 月 25 日開催の定時株主総会及び取締役会にて、下表のとおり、既存
の取締役の松下剛(代表取締役社長)、井上祐介及び本島一に加え、新任の取締役として、大
田嘉仁(取締役会長)、吉髙信(取締役専務)、米澤和芳及び髙橋昭夫(社外取締役)が、ま
た、新任の取締役監査等委員として、大畠豊、井関新吾及び清水綾子が、新たに選任可決さ
れました。
氏名 新任・再任 役職
お おた よし ひと
大田 嘉仁 新任 取締役会長
まつした つよし
松下 剛 再任 代表取締役社長
よしたか まこと
吉髙 信 新任 取締役専務 CFO
いのうえ ゆう すけ
井上 祐介 再任 取締役
もとじま はじめ
本島 一 再任 取締役
よねざわ かずよし
米澤 和芳 新任 取締役
たか はし あ きお
髙橋 (独立社外) 新任
昭夫 取締役
おおはた ゆたか
大畠 豊 (独立社外) 新任 取締役監査等委員(常勤)
い ぜき しん ご
井関 新吾(独立社外) 新任 取締役監査等委員
し みず あ やこ
清水 綾子(独立社外) 新任 取締役監査等委員
この結果、当社は、多様な意見を尊重する経営体制への変革及び企業統治の強化を図り、
また、上場企業の経営者を含む経験豊かな経営者が加わり、独立社外取締役の比率も 40%へ
と向上しました。取締役会においても、大田取締役会長の他社での経営実績、米澤取締役の
海外事業展開の実績、髙橋取締役の証券実務、大畠監査等委員のリスク管理、井関監査等委
員の財務・会計の知見及び清水監査等委員の企業法務全般の知見を反映した、自由闊達で建
設的な議論・意見交換がなされており、多様な意見を尊重した経営体制への変革、企業統治
の強化が推進されていると考えております。
2019 年 9 月以降、大田嘉仁(取締役会長)、松下剛(代表取締役社長)及び吉髙信(取締
役専務)の 3 名の経営陣で構成する経営戦略会議をスタートしており、下表のとおり、主に
全社的な経営課題を議論し、多様な意見を尊重した経営判断を通じ、コンプライアンス重視
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の経営を推進しております。
経営戦略会議 実施日 主な議題
第一回:2019 年 9 月 4 日 コンプライアンス経営強化、コーポレートガバナンス強化、
新事業計画、資本政策と資金調達政策、社外取締役の候補
第二回:2019 年 9 月 24 日 コーポレートガバナンス強化、社外取締役の候補、キャッシ
ュマネジメント、役員の株式売買におけるインサイダー条項
第三回:2019 年 10 月 22 日 コーポレートガバナンス強化、社内目標値・社外公表値につ
いて、事業の選択と集中、災害時の CSR 対応
第四回:2019 年 11 月 21 日 コンプライアンス経営強化、決算発表・株主総会への今後の
対応、社外公表値の現状共有、社内目標値の再設定
第五回:2019 年 12 月 10 日 コンプライアンス経営強化、今期最新着地の共有、表彰制度
について、プロジェクトの進捗状況の共有
第六回:2020 年 1 月 21 日 コンプライアンス経営強化、今期最新着地の共有、ウォータ
ーサーバー事業譲渡案件について、新規プロジェクトの進捗
状況の共有
第七回:2020 年 2 月 21 日 再発防止・改善措置の進捗報告、新規人事制度について、株
主総会について、新規プロジェクトの進捗状況の共有
第八回:2020 年 3 月 24 日 改善状況報告書についての進捗報告、新型コロナの影響から
のリカバリープラン、株価対策、海外事業戦略、新型コロナ
防疫対策と BCP について
当社は、役員と社員の双方向のコミュニケーションの充実強化を図るため、2019 年 7 月
に全グループ社員(派遣社員を含む)向けに実施したウェブ形式のアンケート結果(1,050
名)から多様な意見、異なる意見を経営に反映し、2019 年 12 月 27 日開催の全社方針発表
会(注)において、下表のとおり、経営陣が策定した改善のためのアクションとスケジュー
ルを全グループ社員向けに報告しました。
(注)「全社方針発表会」とは、外部会場に全グループ社員が集結して、又は、本社と他の拠
点をテレビ会議システムでつなぐ等して、MTG グループの全社員に向けて、経営陣から経営
方針等を伝達し、ベクトルを一致させることを目的とした、四半期毎に開催する会議です。
重点項目 詳細内容 進捗状況
コンプライアン 経営陣のコンプライアンス経営の宣誓と率先垂範 2019 年 9 月実施
ス経営と MTG 役員向けコンプライアンス研修(毎月)MTG フィロソ 2019 年 9 月開始
フィロソフィ フィの実践のためのリーダー勉強会(月2回) 2019 年 12 月開始
(注1)
大田会長、松下社長、吉高専務の集団指導体制 2019 年 9 月開始
ガバナンス 上場企業役員経験者の外部採用 2019 年 12 月実施
役員体制 取締役刷新、役員の見直し 2019 年 12 月実施
目標値と公表値の策定・修正プロセスの改善 2019 年 8 月開始
管理体制 セルイン情報(注2)よりセルスルー情報(注3)を 2019 年 8 月開始
重視した計画プロセス
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全社的な経費削減活動 2019 年 8 月開始
本部管理部門の機能強化(グループ会社を管理監督す 2020 年 2 月実施
る「グループ会社管理室」の新設等)
人事評価の改善と役員・管理職の見直し 2019 年 11 月実施
公正な評価 人事制度の見直し 2020 年 3 月告知
福利厚生の改善(年間休日数の増加) 2019 年 10 月開始
働く環境 ビジネスカジュアルの実施 2019 年 10 月開始
朝礼の改善 2019 年 10 月開始
会長との膝詰対話を目的とした活性会(月2回) 2019 年 9 月開始
その他
透明性の高い情報共有(全社朝礼とウェブ掲示板) 2019 年 9 月開始
(注1)「MTG フィロソフィ」とは、MTG グループの役員及び従業員の一人ひとりがもつべ
き人生や仕事に対する指針です。当社では、今後、MTG グループがグローバルに成長発展を
遂げ素晴らしい会社グループになっていくために、そして MTG グループ役職員の一人ひと
りが素晴らしい人生を歩んでいくために、MTG フィロソフィを素直に学び、体得し、実践し
ていくことが何よりも大切であると考えています。
(注2)「セルイン情報」とは、当社が卸先に販売した数量・売上情報のことです。
(注3)「セルスルー情報」とは、卸先が消費者に販売した数量・売上情報のことです。
以上のような改善措置の実施により、当社は、企業風土の改革に関して、風通しの良いコ
ンプライアンス重視の企業風土へ、徐々に良い成果が現れてきているものと認識しておりま
す。
③ 適切な目標値の策定・修正(1.(3)②及び③に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
適切な目標値の策定と修正を実行するために、当社のグループ経営における目標値の策
定・進捗管理・修正プロセスを見直し、現場の実態を軽視した過度な目標値の設定を防止す
る体制を構築します。
これまで、事業本部の目標値管理は経理部門が行っていましたが、上場直後の公表数値の
必達に拘る全社的風潮の下で、その妥当性の検証が十分な精度を持って行われていたとは言
えませんでした。
目標値の策定プロセスにおいては、各事業本部での収支予測後に、それらの裏付けとなる
数値資料を使い、商流別に事業展開している事業本部と商流を超えてブランド別の商品開発
及びマーケティング活動を展開しているブランド本部(ReFa 本部及び WELLNESS ブラン
ド本部)との間で、適切に協議を行ったうえで、本社管理部門(経営推進本部及び経営企画
室)でも検証を行ってまいります。特に、検証プロセスにおいては、セルスルー情報(卸先
が消費者に販売した数量・売上情報)を最重要指標とすることにより、実需に応じた計画で
あるかを確認します。また、その検証結果を目標値の承認時に取締役会に説明報告する等に
より、目標値の検証の深化を図り、目標値の合理性を高める取り組みを行ってまいります。
目標値の進捗管理プロセスにおいては、市場の変化、顧客の嗜好、政府の政策を加味した、
市場分析、外部環境分析により、目標値と実績値の乖離要因を客観化し、実績値の進捗管理
を行うことといたします。
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目標値の修正プロセスにおいては、経営会議で目標値と実績値との乖離要因や修正後の目
標値の妥当性と確度について、適切に検討を行ってまいります。
これらの結果、事業実体に即し、かつ、市場実態に合う目標値の設定と業務遂行を行い、
コンプライアンス違反の誘発を防ぐ、目標値の策定管理体制を構築してまいります。
【実施・運用状況】
2020 年 9 月期の目標値の策定プロセスでは、商流別に営業展開している事業本部が収支
予測をした後、商流を超えてブランド別の商品開発及びマーケティング活動を展開する、ブ
ランド本部(ReFa 本部及び WELLNESS ブランド本部)との間で、適切に協議・検討を行
い、商品開発及びマーケティング活動と営業活動の摺合せを実施しました。すなわち、既存
商品については過去の実需をベースとし、また、新商品についてはブランド本部の新商品計
画及びそのマーケティング計画に基づく類似商品等を参考として、事業本部とブランド本部
で摺合せ・検討を行い、目標値を策定しました。
2020 年 9 月期の目標値の検証プロセスでは、各事業責任者が市場分析・外部環境分析を
行い、その事業計画を取締役及び執行役員に説明し、役員がその収支予測の適切性を検証す
るプロセスを導入し、実施しました。また、事業本部の目標値の検証としては、本社管理部
門の経営企画室が各事業本部と協議 検討を行い、
・ セルスルー情報を最重要指標と位置付け、
実需に応じた計画値になっているかを確認しました。
2020 年 9 月期の公表値につきましては、経営企画室が中心となり、直近のセルスルー情
報に基づいた実態に対応しているか、将来の業績リスクを加味しているかを再度検証した上
で、2019 年 12 月 9 日開催の臨時取締役会に報告し、承認を得ることで、公表値の合理性の
確保を図りました。
公表値の進捗管理プロセスについては、毎月の経営会議の業績説明報告資料のフォーマッ
トを見直し、通期着地予測値と公表値の比較差異を明示したうえで差異要因の分析結果を経
営会議に報告することで、毎月の公表値の進捗管理を行っています。また、四半期に一度の
頻度で、経営企画室が各事業本部と協議・検討を行い、直近のセルスルーの実績値と公表値
の乖離をリスク要因として明確化し、市場の変化、顧客の嗜好及び各国政府の政策等を加味
した市場分析・外部環境分析の実施により進捗管理を行うこととし、2020 年 9 月期の第 1
それぞれ 2019 年 11 月上旬及び 2020 年 2 月上旬に実施しました。
四半期及び第2四半期は、
公表値の修正プロセスについては、経営計画管理規程において、公表値(通期業績予想値)
の修正ルールを明文化し、毎月の経営会議での進捗管理を行っており、最終的な公表値の修
正は取締役会で決議します。
④ 適切な会計処理を行うための仕組みの強化(1.(3)⑤に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
当社では、当社グループ全体の会計を適切なものとするため、子会社の利益・人員の規模
の大小を勘案したうえで、会計監査人、監査役等及び会計責任者の配置を見直します。
当社の全事業本部の各担当役員本部長は、経理部が検討確認すべき重要な会計取引情報を
適時、適切に経理部へ提供する責任役割を担い、また、経理部は、その適切な会計処理の判
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断を、必要に応じ会計監査人へ相談・協議し、決定する責任役割を担う、という経理会計の
役割分担体制を、2019 年 9 月に当社の全事業本部の各担当役員本部長から提出を受ける「誓
約書」に明記いたします。この結果、当社の全役員は、上場会社の情報適時開示義務の重要
性を再認識し、その役割を適時、適切に果たすことで、適切な決算経理体制が再構築できる
ものと考えております。
また、当社経理部は、当社及び当社子会社の既存の経理規程が、適切かつ網羅的に制定運
用されているか確認を行い、当社子会社が採用している会計方針の周知徹底を図るとともに、
上場会社として適切な会計処理の知識の理解を深めるために、各子会社の会計責任者等への
教育研修の強化を図ってまいります。
さらに、当社経理部では、月次経営分析の過程で大口取引をプロアクティブに認識し、収
益認識に係る情報の収集と慎重な検討を行ってまいります。
【実施・運用状況】
当社は、当社グループ会社の利益・人員規模や今後の事業展開を総合的に考慮した結果、
当社子会社のうち MTG 上海については会計監査体制をより強固にすべきと判断し、会計監
査人を PwC 上海事務所に変更することを検討しており、現状、PwC と監査契約の条件交渉
を行っているところです。
当社は、2019 年 12 月 25 日開催の定時株主総会後、役員全員から「誓約書」の提出を受
けましたが、その「誓約書」においては、決算開示の役割分担体制を明確化しました。すな
わち、当社の全事業本部の各担当役員は、経理部が検討確認すべき重要な取引情報を適時、
適切に経理部へ提供する責任と役割を担い、また、経理部所管の担当役員は、その適切な会
計処理の判断を行うため必要に応じ会計監査人へ相談・協議し、決定する責任と役割を担う
ことを「誓約書」に明記しました。
当社経理部は、会計に関する教育研修の要諦は、会計に関するトップの考え方が重要であ
るという考えに基づき、2020 年 1 月 15 日に開催された「現法責任者会議」にて、各海外子
会社の代表者に対して研修を行いました。また、経理部の子会社担当者と現地法人の会計責
任者とは四半期決算単位で面談を実施し、決算処理に関わる会計課題の共有と会計処理方法
の検討を行うことにより、会計処理の理解を深めています。
当社経理部では、月次で各事業本部別に主要取引先を抽出し、主要取引先との営業取引内
容を経営会議に報告しています。また、当社経理部は、四半期決算単位で、売上 2 億円以上
の得意先かつ特定月に多額の売上計上、又は当期の新規取引先で特定月に多額の売上計上を
行った得意先について、その営業取引が発生した理由と妥当性を営業担当者にヒアリングし、
不適切な売上等になっていないかを確認しています。
⑤ 本社管理部門機能の独立性確保・牽制機能強化(1.(3)⑥に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
本社管理部門が、各事業本部から独立性を確保するとともに、グループ会社に対し適切に
牽制機能を発揮できるように、グループ会社管理体制の強化を図ってまいります。
本社管理部門の一部である法務部においては、新規取引や既存契約条件の変更を行う場合、
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契約内容の重要度とリスク度に応じ決裁権がエスカレーションするルールを 2019 年 8 月か
ら導入することで、契約書管理のモニタリング体制の強化を図っておりますが、その他のグ
ループ会社管理体制の具体的な強化策については、現在検討中であり、策定次第実行してま
いります。
【実施・運用状況】
本社管理部門の一部である法務部においては、新規取引や既存契約条件の変更を行う場合、
契約内容の重要度とリスク度に応じ決裁権がエスカレーションするルールを 2019 年 8 月か
ら導入し、契約書管理のモニタリング体制の強化を図りました。具体的には、本社で既に導
入済みの稟議システムによる契約書審査を、国内外の各グループ会社へも導入し、職務権限
表で規定した一定金額以上の売掛金もしくは買掛金が発生する契約書締結に際しては、本社
の法務部の事前チェックが入る仕組みを導入しました。マクレア(英国子会社)
、MTG 深圳
(中国子会社)及び MTG FORMAVITA(国内子会社)の 3 社については現時点では稟議シ
ステムが未導入となりますが、他のグループ会社同様に職務権限表で規定されたエスカレー
ションによる契約審査をアナログ的に実施しております。稟議システムが未導入だった理由
については、マクレア社および MTG 深圳は重要な契約の締結頻度が低かったためであり、
MTG FORMAVITA は 2020 年 2 月に新たに当社のグループ会社になったためです。当該 3
社については 2020 年 4 月末までに稟議システムを導入します。
本社経理部では、海外グループ各社より、2019 年 10 月分から毎月、月次試算表や仕訳帳
などの月次連結パッケージを適時入手し、また、入手した試算表等をもとに、貸借対照表及
び損益計算書の各勘定科目について、対前月比で増減分析を検討し、その増減要因を海外グ
ループ会社に確認しています。
また、当社は、2020 年 1 月 23 日開催の取締役会で、グループ会社管理の専属部署として
「グループ会社管理室」を同年 2 月 1 日付で当社本社管理部門である経営推進本部直下に新
設することを決議しました。現状、グループ会社管理室長は、海外グループ各社を所管する
グローバル事業本部のグローバル推進部長を兼任していますが、当該兼任者の主たる評価責
任者を経営推進本部長とし、また、経営推進本部経理部の海外子会社の経理担当者をグルー
プ会社管理室の兼任者とすることを、2020 年 2 月 18 日開催の取締役会で決議しました。こ
れらにより、グループ会社管理室に海外グループ各社の重要な取引情報が集まり、経営推進
本部経理部との連携協力により、グループ会社に対する牽制機能に関し実効性ある組織とし
ました。なお、今後、グループ会社管理室長は、兼任体制から専任者へ変更する予定です。
⑥ コンプライアンス体制の見直し・強化(1.(3)⑦に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
2019 年 7 月 18 日開催の取締役会において、法務知的財産担当取締役をコンプライアンス
統括責任者として任命し、その直下にコンプライアンス専任部署としてコンプライアンス推
進室を 2019 年 8 月 1 日付で設置しました。このコンプライアンス推進室は、今回の事案を
受けて策定した、不適切な取引や会計処理の再発防止策の実行を推進することを役割として
おります。
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コンプライアンス委員会につきましては、社長を委員長とし、監査等委員を含む全役員が
委員に、外部弁護士を外部委員とする体制や、関連規程の改廃及び年間のコンプライアンス
活動計画の決定等の従前の役割には変更はありませんが、会議頻度を以前の年 2 回から月次
定例開催といたします。コンプライアンス委員会の機能強化のために、2019 年9月にコンプ
ライアンス委員会内に、コンプライアンス統括責任者を実行委員長とする「実行委員会」を
設立しました。この実行委員会は、コンプライアンス委員会が決定した活動計画に基づきコ
ンプライアンス施策全般を実行する役割を担っております。
トップ自らコンプライアンスにコミットするために、当社グループの全役職員が参加した、
2019 年8月1日に臨時開催した全社方針発表会の場において、コンプライアンス統括責任者
から本件不適切会計処理の概要説明と再発防止策についての説明を発信するとともに、松下
社長が自らの言葉で、コンプライアンスを重視する経営姿勢を明言いたしました。これを皮
切りに、今後、全役職員に向けてトップメッセージを繰り返し発信していく予定であり、ま
ず 2019 年 9 月 19 日開催のコンプライアンス委員会で、松下社長のトップメッセージを確認
し、当社及び子会社全社に発信いたしました。
また、役員向けコンプライアンス研修を 2019 年 8 月から開始し、全役員の意識改革を実
現してまいります。この役員向け研修については、既に 2019 年 8 月 22 日及び同年 9 月 19
日に、外部講師として弁護士をお招きし、
「取締役の責任」及び「社会(弁護士)から見た今
回の不祥事」をテーマとして開催いたしましたが、今後も同年 10 月 17 日、同年 11 月 19 日
及び同年 12 月 16 日に開催予定で、外部講師とテーマを協議中ですが、法律面の扱いだけで
なく上場会社としての会計開示面のテーマも織り込む予定です。
さらに、当社の海外グループ会社を含む全役職員に対しては、e-ラーニングを利用したコ
ンプライアンス研修を毎年実施しておりましたが、今後の研修内容には、本件の不適切取引
や不適切会計の事例等を含めることで、会計知識教育及び不正防止の強化を図ってまいりま
す。具体的には、まず階層別研修を 2019 年 10 月から 2020 年 3 月までの期間に実施する予
定で、管理職者(部課長)に対しては、経理財務、法務、労務をテーマに講義形式で実施し、
管理職以外の者には、e-ラーニングを用いて業務に関連する規程やルールを中心とした研修
及びテストを実施いたします。この他、2020 年 4 月から同年 9 月までの期間には、部門別の
研修を実施する予定で、当社の事業本部ごとの業務分掌を踏まえ、必要な法律知識の習得を
目的とした、e-ラーニング研修を実施いたします。
【実施・運用状況】
当社は、2019 年 7 月 18 日開催の取締役会において、法務知的財産担当取締役をコンプラ
イアンス統括責任者に任命し、その直下にコンプライアンス専任部署としてコンプライアン
ス推進室を 2019 年 8 月 1 日付で設置しました。当社は、不適切な取引や会計処理の再発防
止策の実行プロジェクトを立ち上げ、当プロジェクトにおいて、人事関連、経理関連、目標
計画、経営組織変革、管理体制強化、内部統制関連、コンプライアンス研修及び内部通報の
各委員長を任命し、コンプライアンス推進室は、プロジェクト事務局として、各委員会が担
う再発防止の改善策の実現支援や進捗管理を行ってきました。
代表取締役社長を委員長とするコンプライアンス委員会は、2019 年 8 月以降、以前の年 2
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回の開催頻度から月次定例開催に変更しました。また、2019 年 9 月に、コンプライアンス委
員会内に、コンプライアンス統括責任者を実行委員長とする、コンプライアンス実行委員会
を設立しました。コンプライアンス実行委員会では、コンプライアンス委員会で決定された
活動計画に基づき、下表のとおりコンプライアンス活動計画の実行推進のための個々の施策
の決議及び当委員会への報告を実施しました。
コンプライアンス実行委員会 主要議題
第一回:2019 年 10 月 10 日 【決議事項】
① コンプライアンス憲章の制定
② コンプライアンスマニュアルの改定
第二回:2019 年 12 月 12 日 【決議事項】
① コンプライアンス推進担当の取組み課題
② コンプライアンス委員選任の件
【報告事項】
(1)内部通報サマリー報告
(2)コンプライアンス・トップメッセージ発信の件
第三回:2020 年 3 月 10 日 【決議事項】
① 内部通報規程の改定
② コンプライアンス推進担当の上期目標評価
【報告事項】
(1)次回コンプライアンス委員会の件
(2)コンプライアンス研修の進捗報告
当社は、2019 年 8 月 1 日に臨時開催した全社方針発表会の場において、コンプライアン
ス統括責任者から本件不適切会計処理の概要説明と再発防止策について説明するとともに、
代表取締役社長が、自らの言葉で、コンプライアンスを重視する経営姿勢を明言しました。
また、2019 年 9 月以降、コンプライアンス重視を謳った社長トップメッセージを 2019 年 9
月、12 月に発信し、また、2019 年 10 月、11 月及び 2020 年 1 月、2 月には、他の各役員が
同様の役員メッセージを発信し、それらのメッセージを 2019 年 10 月に新設した当社ポータ
ルサイト内のコンプライアンスのページに掲示しております。
役員向けコンプライアンス研修については、上記 2.(1)②に記載したとおり実施し、全役員
のコンプライアンス意識の改革を図りました。また、当社グループの全社員に対しては、2020
年 1 月から 3 月に e-ラーニングを用いた階層別研修を実施し、管理職者(部課長)及び管理
職以外の社員向けに、それぞれの階層に応じた業務に関連する規程やルールに関する研修及
びテストを実施しました。
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⑦ 内部通報制度の運用改善と周知徹底(1.(3)⑧に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
当社グループの全役職員が参加した、2019 年8月1日開催の臨時方針発表会において、
内部通報制度が不祥事予防の要諦であり、不適切会計を含むコンプライアンス問題全般の通
報を受け付ける窓口であること、及び法令等に基づき通報者を保護する体制がとられている
ことを、コンプライアンス統括責任者である取締役から当社及び子会社の全役職員に直接発
信し、周知徹底を図りました。
また、2019 年 9 月 19 日開催の取締役会で、役員を含む不適切行為を通報できる体制を強
化するために、経営陣から独立した弁護士事務所を外部通報受付窓口とする内部通報制度の
設置を承認決議し、その運用を開始いたします。
【実施・運用状況】
当社は、2019 年 8 月 1 日開催の臨時方針発表会において、内部通報制度が不祥事予防の
要諦であり、不適切会計を含むコンプライアンス問題全般の通報を受け付ける窓口であるこ
と、及び法令等に基づき通報者を保護する体制がとられていることを、コンプライアンス統
括責任者の取締役から当社グループの全役職員に直接発信し、周知徹底を図りました。
また、当社は、2019 年 9 月 19 日開催の取締役会において、外部通報受付窓口を、専門業
者から弁護士事務所に変更し、経営陣からの独立性を高めた内部通報制度への変更を承認決
議し、2019 年 11 月からその運用を開始しました。
この結果、前期(2019 年 9 月期)の内部通報の実績は、臨時方針発表会での周知前(2019
年 7 月以前)の 10 ヶ月間の通報件数が 12 件でしたが、周知後(2019 年 8 月以降)の 2 ヶ
月間で 11 件へと増加しました。また、顕名での通報件数が、周知前の 10 か月間で 12 件中 3
件だったものが、周知後は 2 ヶ月間で 11 件中 4 件へと変化しました。なお、内部通報を受
けた情報を調査したところ、重大な不正につながる事実は存在しませんでした。
当期(2020 年 9 月期)の内部通報の実績は、2020 年 2 月末までの時点で 13 件であり、
その内、外部通報受付窓口への通報件数は、3 件でした。なお、当内部通報の調査の結果は、
経営に重大な影響を及ぼす事案はございませんでした。
前掲しました全グループ社員に配布した「コンプライアンス・カード」には、内部通報の
方法や連絡先などを掲載しておりますので、認知度の向上と活用する土壌の開拓は進んだも
のと認識しています。
⑧ 内部監査室の監視機能の強化(1.(3)⑨に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
従来の業務監査に加え、会計コンプライアンス面を重視した会計監査を実施することで、
会計不正に対して内部監査の深度を改善してまいります。
具体的には、適正な取引契約と会計処理のチェック検証を目的とした会計監査を実施し、
特に子会社においては、決算書の内容チェックに基づき売掛金等の不正リスクに対応すると
ともに、決裁権限に関しては、稟議書や取締役会議事録等を確認し、不備が認められた場合
には記録を残し、適切な決裁手続を促してまいります。また、必要に応じ、その内部監査の
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結果は、常勤監査等委員や会計監査人へ連携報告し、彼らと緊密な連携及び情報共有を図っ
てまいります。
内部監査室の人員については、社内異動により増員に努め、また、公認会計士等の外部専
門家のアウトソーシングの活用も検討し、海外子会社については、年1回だった監査頻度を、
2020 年 9 月期においては MTG 上海については年4回に増加し、海外事業の重点監査を実施
してまいります。
【実施・運用状況】
内部監査室は、2019 年 5 月から同年 9 月まで、2019 年 12 月及び 2020 年 2 月の 3 回に
わたり、当社及び子会社の営業部門に対し、売掛金等の不正リスクを監査対象項目とし、稟
議書及び決裁権限等の所定手続の有無や適切性を監査しました。この内部監査の結果、内部
統制や規程に対する運用不備、売掛金未回収及び書類の不備等が発見されましたが、発見さ
れた不備等に関しましては、被監査部門に改善報告書を提出させ、半年後を目安に実施する
フォロー監査にてその改善状況を確認する予定です。内部監査結果は、内部監査室長から常
勤監査等委員取締役に、適宜、報告により情報共有しており、また会計監査人に対しては、
2019 年 8 月 27 日、同年 9 月 18 日、2020 年 1 月 20 日及び同年 2 月 14 日に報告・情報共有
しており、監査等委員会及び会計監査人との連携を図りました。
内部監査室の人員は、2019 年 8 月から 1 名増員し 2 名体制としておりますが、2020 年 4
月 1 日付の人事異動にて内部監査室に 1 名増員しました。これにより内部監査室の人員は、
2 名体制から 3 名体制となりました。なお、当社では、外部の監査法人からの内部監査業務
のアウトソーシングの活用を打診・検討しましたが、監査法人からはアウトソーシング(外
注業務)ではなくコンサルティング業務の提案を受けたため、社内の人員増(人事異動)に
て対応することといたしました。
海外子会社に対する内部監査に関しては、MTG 上海について、2019 年 11 月から同年 12
月までの間に書面監査を実施するとともに、2020 年 1 月に海外現地往査を実施し、主として
最近状況の確認インタビュー、労務管理状況、情報セキュリティ管理、契約管理、債権管理
及び支払状況を対象とした内部監査を実施しました。MTG 上海に対する内部監査の実施結果
は、軽微な不備は見受けられましたが、前回(2019 年 4 月)往査時の契約管理・債権管理の
不備状況は大きく改善されていることを確認できました。MTG KOREA Co., Ltd 以下
( 「MTG
KOREA」といいます。 については、2020 年 1 月に海外現地往査を実施し、主として労務
)
管理、契約管理、債権管理、支払管理、在庫及び返品状況を対象とした内部監査を実施しま
した。 MTG KOREA に対する内部監査の実施結果は、軽微な不備が散見されましたが、重
大なリスクにつながる不備は発見されませんでした。
⑨ 取締役会及び監査等委員会の監視・監督機能の強化(1.(3)⑩に対応)
【改善報告書に記載した改善策】
一定金額以上の重要な営業取引等については、職務権限規程等の関係諸規程を再検討した
うえで、担当役員本部長から取締役会へ取引詳細を報告する(新)ルールを設け、取締役会
及び監査等委員会による監視・監督機能の強化を図ってまいります。
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取締役会の上程議案の説明資料については、所定ルールに従った事前提出期限の徹底を図
り、取締役又は監査等委員会による、十分な事前検討を実施し、取締役会及び監査等委員会
による監視・監督機能の強化を図ってまいります。また、取締役会事務局が、社外役員の監
査等委員に取締役会の上程議案の説明資料を事前提供し、仮に取締役会開催前に監査等委員
から個別の質問や資料の不十分性の指摘があった場合には、議案上程の担当役員に、その旨
を連絡し、取締役会当日までに説明資料の追加準備など適切な対応を促し、取締役及び監査
等委員に対し適切に上程議案の説明資料が提供される体制を確立してまいります。
なお、監査等委員は、内部監査室及び会計監査人と各四半期レビュー及び期末監査の年4
回のミーティング以外にも適時密接な連携及び情報交換を図り、三様監査の充実強化を図っ
てまいります。
【実施・運用状況】
営業取引については、職務権限規程上、与信限度額に応じた稟議承認体系が、すでに整備
済みでしたが、その承認ルールの運用の他に、各事業部門の売上上位 5 社の取引先について
は、2020 年 2 月度の当社経営会議から担当役員本部長より売上動向の報告を行うこととしま
した。これは、主要取引先に対する売上依存度の動向を把握し、また、業務執行を担う責任
者(取締役・執行役員・本部長であり、以下「役員等」と言います。
)から、直接、報告させ
ることにより、より正しく売上動向を役員等が情報共有し、役員等による監視・監督機能を
強化するものです。すなわち、経営会議の参加者は、取締役(取締役監査等委員を含む)に
加え、業務執行の執行役員・本部長も参加するため、主要取引先の営業取引に関し、役員等
の相互の監視・監督機能が適切に果たせるものと考えています。
取締役会の上程議案の説明資料については、取締役会開催日の4営業日前までの事前提出
期限の徹底を図り、取締役又は監査等委員会による、十分な事前検討を実施し、取締役会及
び監査等委員会による監視・監督機能の強化を図りました。また、取締役会事務局は、取締
役会の上程議案の説明資料を単に事前提供するにとどまらず、仮に取締役会開催前に監査等
委員や社外取締役等から個別の質問や資料の不十分性の指摘があった場合には、議案上程の
担当役員に、その旨を連絡し、取締役会当日までに説明資料の追加準備など適切な対応を促
しました。
さらに、常勤監査等委員は、内部監査室と毎週 2 回の頻度でミーティングを行い、内部監
査報告や各事業本部に関する情報交換を図り、会計監査人とは3カ月に2回程度の頻度で監
査内容、内部通報内容及び内部統制の状況等について適時密接な連携及び情報交換を図りま
した。また、監査等委員会は、内部監査室及び会計監査人と四半期毎に会計監査結果(第 1
四半期については、2020 年 1 月 20 日及び 2 月 14 日)に共有を図り、三様監査の充実強化
を図りました。
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(2) 会計監査人に対する通報の調査
① 通報及び調査の概要
2019 年 11 月 15 日付け適時開示
「2019 年9月期 決算短信の発表延期に関するお知らせ」
にて公表いたしましたとおり、当社の会計監査人に対して、当社連結子会社である MTG
KOREA の取引先の在庫状況に関する通報がありました。当社には、2019 年 10 月 8 日に、
会計監査人より通報を受けた旨の連絡がありました。
これを受けて、当社では、当社内のメンバーに外部の専門家を加えたチームの調査によ
って通報内容の事実確認をすべきと判断し、当社及び MTG KOREA 並びに取引先の関係者
へのヒアリング、当社及び MTG KOREA の関係者に対するデジタル フォレンジック調査、
・
会計データ及び関係資料等の調査を行う等、透明性の高い実効性のある事実関係の調査を
行ってまいりました。
当社は、2019 年 12 月 9 日付け調査報告書を取りまとめ、2018 年 4 月から 2018 年 7 月
にかけて当社の事情に基づく出荷(具体的には、不合理な押込み販売とまでは言えず、営
業担当者の営業努力の結果、得意先の合意を得る形で、当初合意条件よりも出荷予定時期
を前倒しで出荷した事案)がありましたが、決算訂正の必要はないとの結論に至りました。
② 調査で判明した不備
上記調査により、以下の不備が明らかになりました。
(1) 支払条件の変更があった場面で必要な社内承認を得なかった事案がありました。
具体的には、前倒し出荷事案では、当初契約の支払条件に基づく支払期日をそのまま据
え置いたため、実質的には支払期間を延長した形になりました。このように支払条件の
変更があった場合は、当社子会社の稟議決裁ルールに基づくと事前の稟議手続が必要に
なりますが、当社子会社においてそれが行われていませんでした。
(2) 文書管理の徹底不足が散見されました。
具体的には、調査の過程で、販売先との商談記録を確認したい場面で、当然備えられて
いるはずの商談記録が存在しなかった事案が散見されました。
③ 不備の改善対応策
<計画>
当社は、上記不備に対して、以下のとおり改善計画を立てました。
(1) コンプライアンス経営の徹底(上記(2)②「調査で判明した不備」(1)及び(2)に
対する改善対応策)
当社グループ全体でコンプライアンス経営を徹底していくために、2019 年 12
月 16 日開催のコンプライアンス役員研修のテーマとして本件通報事案の概要と
課題、対策を報告することを計画しました。
2020 年 1 月 15 日に各海外子会社の代表者が一堂に会した「現法責任者会議」
で、コンプライアンスに関するセミナーを計画しました。
(2) 社内ルールの周知・徹底をはじめとする内部統制システムの再構築(上記(2)②
「調査で判明した不備」 (1)に対する改善対応策)
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当社子会社における内部統制機能強化のため、前記「現法責任者会議」で、内
部統制に関するセミナーを計画しました。
2020 年 1 月から開催されるコンプライアンス研修において、「内部統制」とい
う講座を新規に設定することを計画しました。
(3) 記録を残す文化の醸成と、文書管理の徹底(上記(2) 「調査で判明した不備」 (2)
②
に対する改善対応策)
販売活動における取引先との商談の「記録を残す」ことに関しては、社内規程
で明文化をし、ルール化することを計画しました。
商談記録を作成することが定着したら、それをどういう形で保管するのか、ル
ール化することを計画しました。
<実行>
(1) コンプライアンス経営の徹底
2019 年 12 月 16 日開催のコンプライアンス役員研修にて、本件調査を担当した
社内取締役が講師となり、
「監査法人への内部通報事案について」と題して、本
件事案の概要と課題、対策を報告しました。
2020 年 1 月 15 日に開催された「現法責任者会議」にて、
「コンプライアンス研
修」と題したセミナーを開催し、再度、コンプライアンスについて各海外子会
社の代表者に周知しました。
(2) 社内ルールの周知・徹底をはじめとする内部統制システムの再構築
2020 年 1 月 15 日に開催された「現法責任者会議」にて、「MTG グループの内
部統制について」と題したセミナーを開催し、MTG グループの内部統制の現状
とそれへの対応策について周知しました。
2020 年 1 月から開催されたコンプライアンス研修において、「内部統制」とい
う講座を新規に設定し、テキストを作成し、研修を実施しました。
(3) 記録を残す文化の醸成と、文書管理の徹底
当社は、2020 年 3 月 17 日開催の定時取締役会で販売管理規程の改定を決議し、
「取引先との商談時には必ず商談記録を取り、取引内容(特に価格・取引条件)
における商談経緯を明らかにし、記録を残さなければならない。」と明文規定し
ました。
商談記録を作成することが定着した後、2020 年 4 月より、当社は商談記録を取
引条件の決定又は変更時の稟議書への必須添付書類とすることで、商談記録が
適切な場所に保管されることを実現します。
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(3) 改善措置の実施スケジュール
→ :検討・整備、 ⇒ :実施・運用
2019 年 2020 年
改善措置項目
9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月
① 経営責任の明確化等
1) 関与・加担した役職員の適正な処罰 (注)
2) 取締役報酬の自主返上 ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
② 企業風土の改革 ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
③ 適切な目標値の策定・修正 → → ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
④ 適切な会計処理を行うための仕組み → → → → ⇒ ⇒ ⇒
の強化
⑤ 本社管理部門機能の独立性確保・牽制 → → → → → ⇒ ⇒
機能強化
⑥ コンプライアンス体制の見直し・強化 → ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
⑦ 内部通報制度の運用改善と周知徹底 → ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
⑧ 内部監査室の監視機能の強化 → → ⇒ ⇒ ⇒ ⇒ ⇒
⑨ 取締役会及び監査等委員会の監視・監 → → → → ⇒ ⇒ ⇒
督機能の強化
(注)①1)の「関与・加担した役職員の適正な処罰」は、2019 年 7 月に実施完了しております。
(4) 改善措置の実施状況及び運用状況に対する会社の評価
当社は、この度の過年度の決算短信等及び有価証券報告書等の訂正及び 2019 年 9 月期第 2 四
半期報告書の提出遅延に関しまして、株主・投資家の皆様をはじめとした関係各位に、多大なる
ご迷惑とご心配をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げますとともに、上場会社として重
大な責任があると深く反省しております。
当社は、この深い反省に立ち、このような事態を二度と起こさないように、当社グループ全役
職員が一丸となって、上記再発防止に向けた改善措置を実行してまいりました。この結果、経営
体制の変更、ガバナンス体制の強化、コンプライアンス意識の向上及び管理部門の機能強化等、
その成果が現れてきているものと評価しております。
当社は、これまで実施してきた再発防止の取り組みを、今後も定着・改善していくとともに、
会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に励み、株主・投資家の皆様をはじめとした関
係者の皆様の信頼回復に引き続き努めてまいります。
以上
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