7777 J-3Dマトリックス 2020-03-25 15:00:00
核酸製剤「TDM-812」を用いた医師主導治験の治験計画届提出のお知らせ [pdf]

                                                      2020 年 3 月 25 日

各     位


                       東 京 都 千 代 田 区 麹 町 三 丁 目 2 番 4 号
                       会  社  名 株式会社スリー・ディー・マトリックス
                       代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 岡 田 淳
                                             (コード番号:7777)
                       問 合 せ 先   取     締     役    新    井    友    行
                       電 話 番 号                        03 (3511)3440




      核酸製剤「TDM-812」を用いた医師主導治験の治験計画届提出のお知らせ

    当社が開発を進めております siRNA*1 核酸製剤「TDM-812(RPN2siRNA/A6K 複合体) (以下、
                                                         」
TDM-812)に関しまして、聖路加国際病院(院長:福井 次矢)による治療抵抗性の乳がんを対象
とした TDM-812 第Ⅰ相医師主導治験の治験計画届が 2020 年 3 月 25 日付で医薬品医療機器総合機
構(PMDA)に提出されましたことをお知らせいたします。


    本医師主導治験は、聖路加国際病院、腫瘍内科で実施されるもの(治験調整事務局:順天堂大
学医学部附属順天堂医院)で、TDM-812 を皮下の腫瘤に局所投与した際の安全性および忍容性の
評価を行い、局所投与法における推奨用量を決定することを目的とした第Ⅰ相試験*2 です。また、
これまで国立がん研究センター中央病院で実施された第 I 相医師主導治験で安全性及び忍容性が
評価された投与レベルを拡大して実施されるもので、当社は、治験薬である TDM-812 を製造し、
提供する予定です。


    治療抵抗性の局所進行・再発乳がんでは、乳房の原発巣および周囲のリンパ節などにおいて病
巣が皮膚に進展すると巨大な腫瘤を形成したり、皮膚潰瘍(皮膚の一部欠損)が生じることがあ
ります。それにより局所の疼痛・出血・悪臭・浸出液などを生じ、患者さんの生活の質(QOL)
が損なわれることが少なくありません。既存治療で対応が困難な局所病変を制御することで、患
者さんのQOLを改善できる新規治療の開発が求められています。


    TDM-812 のターゲット遺伝子である RPN2 遺伝子は落谷孝広(東京医科大学教授)らによる乳が
んの治療抵抗性に関わる分子として発見され(Nat. Med., 14: 939-948, 2008)、RNA 干渉*3(RNA
interference)という技術を用いて、RPN2 遺伝子の発現を減らす働きをする siRNA(RPNsiRNA)を
がん細胞に導入することで、乳がん細胞の増殖を抑えたり、抗がん剤への耐性を抑えられること
が分かってきました。RPN2 遺伝子は正常組織ではほとんど発現しないことから、RPN2 遺伝子を標
的とした核酸医薬はがん細胞への選択性の高い治療となることが期待されます。


    siRNA をはじめとした核酸医薬はそのままの状態では細胞内に取り込まれず、生体内で容易に
分解され、作用が発揮されないという問題があります。そのため、siRNA を分解から守り、がん
細胞内に効率よく導入する製剤化技術が重要となり、多くの企業が開発に取り組んでおります。
TDM-812 は当社基盤技術の一つである界面活性剤ペプチド*4A6K を用い、RPN2siRNA と複合体を形
成するもので、生体内で分解されにくくなり、細胞内への取り込みが促進されることで薬物送達
の課題を解決しています。また、国立がん研究センター中央病院で実施された第 I 相医師主導治
験において、臨床においても細胞内への薬剤取り込みを確認しています。


 当社は、本医師主導治験に提供される TDM-812 に関して継続した研究開発を推進していく予定
です。これらを通して、ペプチドの新しい用途可能性の探索、新規事業化に向け取り組んでまい
ります。


 なお、現段階においては、本件による本年度以降の業績予想への影響はありません。


                                                  以   上




【参考(語句説明)
        】
*1: siRNA
21-23 塩基対からなる低分子二本鎖RNAで、人工的に合成できます。細胞内に導入することで
RNA 干渉を引き起こすことができますが、単独では導入効率が低く、体内で容易に分解されるた
め、適切な製剤化が必要となります。


*2: 第Ⅰ相試験(フェーズ 1)
新しい薬をはじめて人(患者さん)に投与する段階の試験。少数の患者さんで、投与量を段階的
に増やしていき、薬の安全性と適切な投与量、投与方法を調べます。通常、標準的治療法のない
がん患者さんが対象となります。


*3: RNA 干渉
細胞内の標的とする遺伝子に対し、その塩基配列と同じ二本鎖 RNA を導入することで、特定の遺
伝子の発現が抑制される現象のこと。標的遺伝子から合成された mRNA に二本鎖 RNA が作用して、
mRNA が特異的に分解されることにより、遺伝子の発現が抑制されます。


*4: 界面活性剤ペプチド
6-10 残基程度のアミノ酸から構成されるペプチドで、 疎水性部分と電荷をもつ部分が存在する
ことにより、界面活性剤としての性質を示します。水溶液中で自己組織化されることでナノチュ
ーブを形成し、siRNA をはじめとする各種の分子と複合体を形成します。
【お問い合わせ】
 界面活性剤ペプチド A6K に関するお問い合わせ
  株式会社スリー・ディー・マトリックス
  TEL:03-3511-3440、Email:infojp@3d-matrix.co.jp


 医師主導治験に関するお問い合わせ
  順天堂大学医学部附属順天堂医院
  臨床研究・治験センター 臨床研究オペレーション統括室
  TEL:03-3814-5672、Email:jcrtc_operation@juntendo.ac.jp