7777 J-3Dマトリックス 2019-07-26 15:00:00
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いる新規ホウ素薬剤に関する特許登録のお知らせ [pdf]

                                                 2019 年 7 月 26 日

各    位
                     東 京 都 千 代 田 区 麹 町 三 丁 目 2 番 4 号
                     会   社   名   株式会社スリー・ディー・マトリックス
                     代 表 者 名     代 表 取 締 役 社 長   岡    田         淳
                                            (コード番号:7777)
                     問 合 せ 先     取    締     役   新 井 友 行
                     電 話 番 号                         03 (3511)3440


         ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いる新規ホウ素薬剤に関する
                     特許登録のお知らせ

    当社の自己組織化ペプチドと、臨床使用実績のあるホウ素薬剤(BSH)からなる新規ホウ素薬剤に
関して、岡山大学保有の日本国特許が登録となった旨を岡山大学発ベンチャー企業の株式会社粒子
線医療研究所から報告を受けましたので、お知らせいたします。


    本特許は国立大学法人岡山大学の基本特許であり、当社はその実用化に向け共同研究を行ってお
り、当社自己組織化ペプチド技術をドラッグ・デリバリー・システム*1 として活用した、ホウ素中性
子捕捉療法(BNCT*2)に関する特許です。また、株式会社粒子線医療研究所と当社の間では、BNCT
の海外での実用化に係る相互支援の覚書を締結しております。


    BNCT は、中性子線とホウ素薬剤が衝突することで細胞を攻撃するエネルギーを発生するため、
既存の放射線治療や粒子線治療に比べて人体へのダメージが小さい利点がありますが、いかに標的
のみにホウ素薬剤を集積するかが課題となります。ホウ素薬剤 BSH は過去に臨床で使われた実績が
あるものの、当時は薬剤を標的のがん細胞に効果的に送達することができず、十分な治療効果を得る
ことができませんでした。本新規ホウ素薬剤は、当社自己組織化ペプチド技術をドラッグ・デリバリ
ー・システムとして用いることで、臨床使用実績のある BSH をがん細胞中に効果的に送達して蓄積
するという特長を持ち、動物実験にて薬剤ががん細胞に到達していることが確認されています。ホウ
素薬剤ががん細胞に取り込まれた後に中性子線を照射することで、薬剤が取り込まれたがん細胞の
みを集中的に攻撃できる革新的なホウ素薬剤となります。


    現在までに開発された他のホウ素薬剤では1分子あたりのホウ素含有率が低く、中性子線照射中
も大量のホウ素薬剤を投与し続ける必要があり、標的としたいがん細胞以外の人体への影響が大き
いため、適用に限界がありました。本新規ホウ素薬剤はがん細胞への集積性が極めて高いため正常細
胞への影響が少なく、患者への繰り返し適用が可能であり、また上記ホウ素含有率が高く投与薬剤量
も少なくできると見込まれ、がんの根治までの治療が期待できます。


    本新規ホウ素薬剤を用いた日本国内での BNCT の臨床開発は、岡山大学中性子医療研究センター
が主導しますが、当社としましては、現在でも日本がリードしている BNCT の開発加速への協力を
通じ、その世界展開に寄与してまいります。


 なお、本件による2020年4月期の通期業績への影響はありません。2019年6月14日公表の中期経
営計画に影響が生じる場合は内容を精査した段階で速やかに公表させていただきます。
                                              以   上




【参考(語句説明)
        】
*1:ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)
薬剤を効果の発揮させたい臓器・組織に送達することや、細胞内への取り込みを促進するような働き
を付与することで、薬剤の効果を最大限に発揮させようとするためのシステムのこと。当社では、自
己組織化ペプチドの持つ特性を DDS に応用しています。


*2:ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)
中性子とホウ素原子(10B)が衝突することで起こる大きなエネルギーをもつ放射線を利用し、それ
によって周囲のがん細胞を攻撃するものです。BNCT で照射する中性子線は人体へのダメージが非
常に小さく、放出された放射線はホウ素原子の近傍にのみ作用するため、あらかじめホウ素原子を薬
剤として人体に投与し、がん細胞に集中的に取り込むことで、がん細胞のみを集中的に標的とした治
療法となります。がんの周囲の正常組織への副作用の少ない、「切らずに治す」がん治療となること
が期待されています。