7777 J-3Dマトリックス 2021-09-24 16:00:00
核酸製剤「TDM-812」を用いた医師主導治験の治験中止届提出のお知らせ [pdf]

                                                      2021 年 9 月 24 日

各     位


                       東 京 都 千 代 田 区 麹 町 三 丁 目 2 番 4 号
                       会  社  名 株式会社スリー・ディー・マトリックス
                       代 表 者 名 代 表 取 締 役 社 長 岡 田 淳
                                             (コード番号:7777)
                       問 合 せ 先 取       締     役    新    井    友    行
                       電 話 番 号                        03 (3511)3440




      核酸製剤「TDM-812」を用いた医師主導治験の治験中止届提出のお知らせ

    当社が開発を進めております siRNA*1 核酸製剤「TDM-812(RPN2siRNA/A6K 複合体) (以下、
                                                         」
TDM-812)に関しまして、聖路加国際病院(院長:福井 次矢)による治療抵抗性の乳がんを対象
とした TDM-812 第Ⅰ相*2 医師主導治験として 2020 年 3 月 25 日付に治験計画届を提出しておりま
したが、聖路加国際病院より医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験中止届が提出されましたの
で、お知らせいたします。


    本医師主導治験は、国立がん研究センター中央病院で実施された最初の第 I 相医師主導治験よ
りも高用量を投与した際の安全性及び忍容性の評価を行い、局所投与法における推奨用量の決定
を目的としておりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の広がり等の外部要因によ
り聖路加国際病院の治験審査委員会(IRB)で承認された当初の想定期間で治験が完了しない見通
しとなったことから、本医師主導治験を一旦中止する運びとなりました。


    TDM-812 のターゲット遺伝子である RPN2 遺伝子は落谷孝広(東京医科大学教授)らによる乳が
んの治療抵抗性に関わる分子として発見され(Nat. Med., 14: 939-948, 2008)、RNA 干渉*3(RNA
interference)という技術を用いて、RPN2 遺伝子の発現を減らす働きをする siRNA(RPNsiRNA)を
がん細胞に導入することで、乳がん細胞の増殖を抑えたり、抗がん剤への耐性を抑えられること
が分かってきました。さらに RPN2 遺伝子は正常組織ではほとんど発現しないことから、RPN2 遺
伝子を標的とした核酸医薬はトリプルネガティブ乳がんの中でも難治性乳がんといった予後が悪
いがん種への選択性の高い治療となることが期待されます。


    TDM-812 は当社基盤技術の一つである界面活性剤ペプチド*4A6K を用い、RPN2siRNA と複合体を
形成するもので、生体内で分解されにくくなり、がん幹細胞内への取り込みが促進されることで、
患畜の乳がんにおいて高い効果が認められており、国立がん研究センター中央病院で実施された
第 I 相医師主導治験においては、臨床における細胞内への薬剤取り込みを初めて確認しておりま
す。
 本医師主導治験について一旦中止を決定しましたが、当社は TDM-812 は界面活性剤ペプチド技
術の有用性を示す主要開発品目と考えており、早期に聖路加国際病院あるいはその他の施設での
治験再開を目指すとともに、乳がんだけでなく、RPN2 発現が確認されているその他の固形癌種へ
の拡大を目指した治験デザインへの展開も検討し、研究開発を推進して参ります。


 なお、現在公表の当期の通期業績には影響ありません。


                                                    以   上


【参考(語句説明)
        】
*1: siRNA
21-23 塩基対からなる低分子二本鎖RNAで、人工的に合成できます。細胞内に導入することで
RNA 干渉を引き起こすことができますが、単独では導入効率が低く、体内で容易に分解されるた
め、適切な製剤化が必要となります。


*2: 第Ⅰ相(フェーズ 1)
新しい薬をはじめて人(患者さん)に投与する段階の試験。少数の患者さんで、投与量を段階的
に増やしていき、薬の安全性と適切な投与量、投与方法を調べます。通常、標準的治療法のない
がん患者さんが対象となります。


*3: RNA 干渉
細胞内の標的とする遺伝子に対し、その塩基配列と同じ二本鎖 RNA を導入することで、特定の遺
伝子の発現が抑制される現象のこと。標的遺伝子から合成された mRNA に二本鎖 RNA が作用して、
mRNA が特異的に分解されることにより、遺伝子の発現が抑制されます。


*4: 界面活性剤ペプチド
6-10 残基程度のアミノ酸から構成されるペプチドで、 疎水性部分と電荷をもつ部分が存在する
ことにより、界面活性剤としての性質を示します。水溶液中で自己組織化されることでナノチュ
ーブを形成し、siRNA をはじめとする各種の分子と複合体を形成します。


【お問い合わせ】
  界面活性剤ペプチド A6K に関するお問い合わせ
    株式会社スリー・ディー・マトリックス
    TEL:03-3511-3440、Email:infojp@3d-matrix.co.jp