7769 リズム 2019-03-12 18:00:00
特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ [pdf]
平成31年3月12日
各 位
会 社 名 リズム時計工業株式会社
代 表 者 名 代表取締役社長 樋口 孝二
(コード番号 7769 東証第一部)
問 合 せ 先 取締役常務執行役員 奥田 伸一郎
(TEL 048-643-7241)
特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ
弊社は、平成 31 年1月 16 日付「弊社中国子会社における不適切な会計処理・購買取引の疑義の解明
を目的とする特別調査委員会設置に関するお知らせ」においてお知らせしましたとおり、弊社の連結子
会社である RHYTHM INDUSTRIAL(DONG GUAN)LTD.(以下「麗声東莞」といいます。
)において不適切な会
計処理および購買取引が行われていた疑いについて、外部専門家を含む特別調査委員会を設置して、事
実関係解明のための徹底した調査を行って参りました。
本日、特別調査委員会より調査報告書を受領し、取締役会にて調査報告書(開示版)の公表を決議い
たしましたので、お知らせいたします。
記
1.特別調査委員会の調査結果
特別調査委員会の調査の結果、
麗声東莞における購買不正の事実は認められませんでした。
一方で、
標準原価操作および会計操作の事実が確認されております。詳細につきましては、添付の「調査報告
書(開示版)
」をご参照ください。なお、本報告書においては、個人情報及び機密情報保護等の観点か
ら、個人名及び会社名等につきましては、一部を除き匿名としておりますことをご了承ください。
2.調査で判明した不適切な会計処理による弊社連結業績への金額的影響
調査報告書 P45.46.第四「調査で判明した不適切な会計処理による金額的影響」に記載のとおり、
調査で判明した不適切な会計処理による弊社連結業績への影響額は、
過年度分含め合計4億 40 百万円
の損失となりました。
【本調査における各決算期への影響額】 (単位:百万円)
決算期 営業利益への影響額
第 91 期 第3四半期累計期間 △2
平成 29 年3月期 通期 -
第 92 期 第1四半期 △6
平成 30 年3月期 第2四半期累計期間 △29
第3四半期累計期間 △72
通期 △150 ①
第 93 期 第1四半期 △50
平成 31 年3月期 第2四半期累計期間 △165
第3四半期累計期間 △289 ②
決算期につきましては、弊社の事業年度又は四半期累計期間に置き換えております。
円貨換算につきましては、各決算期末日のレートで計算しております。
上記記載の影響額4億 40 百万円は、①と②の合計金額となります。
3.弊社連結業績に及ぼす影響について
弊社連結業績に与える最終的な影響額につきましては、今回の調査結果を踏まえ、麗声東莞におけ
る固定資産の減損損失の認識判定及び繰延税金資産の回収可能性の見積りに加え、今回の調査に要し
た費用などの算出を行っており、明らかになった段階で速やかに公表して参ります。
4.特別調査委員会の調査結果を受けた今後の対応方針
弊社は、
今回の調査結果を真摯に受け止め、
再発防止のための提言に沿って再発防止策を策定の上、
実行して参ります。
なお、具体的な再発防止策等、決定次第、改めてお知らせいたします。
5.今後の予定
弊社は、平成 31 年2月 13 日付「第 93 期(平成 31 年3月期)第3四半期報告書の提出期限延長申
請に係る承認のお知らせ」においてお知らせしましたとおり、第 93 期(平成 31 年3月期)第3四半
期(自 平成 30 年 10 月1日 至 平成 30 年 12 月 31 日)にかかる四半期報告書について、延長後の
提出期限であります平成 31 年3月 14 日までに、監査法人による四半期レビュー報告書を受領し提出
する予定です。
なお、
特別調査委員会の調査結果を受け、
本件以外の事象も含めた決算への影響額等を勘案のうえ、
過年度の有価証券報告書等および決算短信等についても訂正を行うかどうか判断し、その結果につき
ましては、平成 31 年3月 14 日に公表する予定です。
弊社の株主、投資家、市場関係者の皆様ならびにお取引先その他すべてのステークホルダーの皆様
に多大なご心配とご迷惑をおかけしますことを深くお詫び申し上げます。
以上
調 査 報 告 書
【開示版】
2019 年 3 月 12 日
リズム時計工業株式会社
特別調査委員会
2019 年 3 月 12 日
リズム時計工業株式会社 御中
リズム時計工業株式会社 特別調査委員会
委 員 長 西 谷 敦
委 員 駒 井 昌 宏
委 員 小 泉 裕 一
委 員 山 下 和 彦
目次
第一 調査の概要 ................................................................ 1
1 特別調査委員会設置の経緯 .................................................. 1
2 調査目的 .................................................................. 1
3 調査体制 .................................................................. 1
4 調査期間 .................................................................. 2
5 調査方法等 ................................................................ 2
第二 リズム時計工業グループの概要 .............................................. 6
1 リズム時計工業の概要 ...................................................... 6
2 麗声(東莞)の概要 .......................................................... 9
3 麗声(東莞)の業務フローの概要 ............................................. 10
第三 調査の結果判明した事実 ................................................... 22
1 判明した不適切な行為の概要 ............................................... 22
2 標準原価操作に関する不適切な会計処理 ..................................... 23
3 麗声(東莞)董事長による不適切な会計処理 ................................... 33
4 不適切な購買取引があったことは認められないこと ........................... 39
第四 調査で判明した不適切な会計処理による金額的影響 ........................... 45
第五 原因分析 ................................................................. 47
1 主観的・属人的な原因 ..................................................... 47
2 制度的・組織的な原因 ..................................................... 48
第六 再発防止策の提言 ......................................................... 53
1 主観的・属人的原因に対する対応策 ......................................... 53
2 制度的・組織的原因に対する対応策 ......................................... 54
第七 その他調査過程で発見された要改善点(購買業務フロー) ..................... 59
1 購買業務フローの不備 ..................................................... 59
2 購買管理ルール及び運用の見直し ........................................... 60
第八 総括 ..................................................................... 62
略称・用語一覧
略称・用語 正式名称
リズム時計工業 リズム時計工業株式会社
麗声(東莞) RHYTHM INDUSTRIAL (DONG GUAN) LTD.
麗声(香港) RHYTHM INDUSTRIAL (H.K.) LTD.
RPV RHYTHM PRECISION VIETNAM CO., LTD.
リズム香港 RHYWACO(H.K.) CO., LTD.
リズム USA RHYTHM U.S.A., INC.
人名 役職
A氏 麗声(東莞)専務董事製造部長
B氏 麗声(東莞)生産管理部部材管理科長
C氏 麗声(東莞)管理部財務科長
D氏 麗声(東莞)董事長
E氏 麗声(東莞)生産管理部計画科
F氏 麗声(東莞)管理部財務科
第一 調査の概要
1 特別調査委員会設置の経緯
リズム時計工業は、2018 年 11 月 5 日、同社の連結子会社である麗声(東莞)の董事長 D 氏
から資金繰りが厳しいとの報告を受けた。当該報告を契機として、リズム時計工業が社内調
査を行ったところ、麗声(東莞)における会計処理及び同社時計事業における購買取引の適切
性に疑義が生じたが、事実関係や原因の解明には至らなかった。そこで、リズム時計工業は、
新たにフォレンジックによるデータ分析及びメールレビュー、これらを踏まえた外部専門家
によるインタビュー並びに分析が必要と判断して、2019 年 1 月 16 日に特別調査委員会(以
下「当委員会」という。)を設置し、麗声(東莞)における不適切な会計処理及び購買取引そ
の他の不正又は不適切な行為の有無ないし内容等について、事実関係を明らかにするために
調査(以下「本調査」という。)を開始した。
2 調査目的
本調査の目的は、以下のとおりである。
• 不適切な会計処理及び購買取引の有無・内容を含む事実関係の解明、並びに類似取引
の有無・内容の調査
• 会計処理及び購買取引について適切性に疑義が生じた原因、並びに不適切な会計処理
及び購買取引が行われた原因の究明
• 再発防止策の提言
3 調査体制
当委員会のメンバーは、以下のとおりである。(敬称略)
委員長 西谷 敦 (弁護士 アンダーソン・毛利・友常法律事務所)
委員 駒井 昌宏 (公認会計士 PwC ビジネスアシュアランス合同会社)
委員 小泉 裕一 (取締役 監査等委員)
委員 山下 和彦 (社外取締役 監査等委員)
当委員会は、リズム時計工業及びその子会社・関連会社と利害関係のない以下の者を調査
補助者として選任し、本調査の補佐をさせた。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 10 名(うち、弁護士 3 名、外国法事務弁護士 1 名)
PwC アドバイザリー合同会社 30 名
1
4 調査期間
当委員会による調査の期間は、以下のとおりである。
2019 年 1 月 16 日から 2019 年 3 月 8 日まで
5 調査方法等
(1)調査対象期間
調査対象期間は 2015 年 4 月から 2018 年 12 月までとする。
リズム時計工業の社内調査結果による疑義の発生時期が 2016 年頃であることを考慮して、
その約 1 年前である 2015 年 4 月まで遡って調査対象期間とした。
なお、上記調査対象期間はリズム時計工業の連結決算ベースでの期間である。麗声(東莞)
の決算月は 12 月、麗声(香港)の決算月は 3 月であるため、リズム時計工業の各年 3 月末連結
決算においては、麗声(東莞)の各年 12 月末決算及び麗声(香港)の各年 3 月末決算の数字を取
り込んでいる。したがって、麗声(東莞)については、調査対象期間の開始を 2015 年 1 月とし
た。
(2)調査対象会社
本調査の実施にあたっては、 (東莞)
麗声 を主な調査対象会社として進める一方で、麗声(東
莞)の董事長による不適切な会計処理の事実が判明したことを受け、当委員会は、以下に掲げ
る麗声(東莞)及び麗声(香港)以外のリズム時計工業の在外子会社も本調査の対象として、類
似の不適切な会計処理の有無について調査した。
RHYTHM PRECISION VIETNAM CO., LTD.
KYOSHIN VIETNAM CO., LTD.
RHYTHM KYOSHIN HANOI CO., LTD.
PT. RHYTHM KYOSHIN INDONESIA
KYOSHIN INDUSTRY ASIA PTE LTD.
RHYWACO(H.K.) CO., LTD.
RHYTHM U.S.A., INC.
また、購買取引については、その適切性に疑義が生じた麗声(東莞)時計事業部のほか、同
社の他の事業部(接続端子事業部、プレシジョン事業部及び電子事業部)も本調査の対象と
するとともに、在外子会社も本調査の対象として、不適切な購買取引がないかについて調査
した。
2
(3)調査方法
当委員会は、①麗声(東莞)、麗声(香港)、リズム時計工業及び同社の在外子会社、並びに
それらの関係者から開示された会計データ、購買データ及びそれらの関連証憑、社内規程そ
の他の関連資料の分析及び査閲、②リズム時計工業、麗声(東莞)及び在外子会社の役職員に
対するインタビュー、③電子メールのレビュー、④麗声(東莞)、麗声(香港)及びリズム時計
工業の在外製造子会社の役職員を対象としたホットラインの設置、⑤麗声(東莞)、麗声(香港)
及びリズム時計工業の在外子会社の役職員に対するアンケートのほか、⑥一般に入手可能な
公開情報の閲覧等に基づき本調査を実施した。
本調査の具体的な手続は、以下のとおりである。
ア 不適切な購買取引の有無の検証に係る購買データ、会計データ及びそれらの関連証
憑、社内規程その他の関連証憑の分析並びに査閲
調査対象期間における現預金及び主材料購買額の増減、売上の推移や購買に係る業務フロ
ーの変遷、並びに事前のリズム時計工業による社内調査結果に鑑み、2017 年 11 月から 2018
年 10 月までの期間の麗声(東莞)の時計事業部の主材料に係る購買データ等の分析を中心に
調査を行った。具体的には、通常主材料(後記第二、3(2)アで定義する。)について作
成されている部品表により、2017 年 11 月から 2018 年 10 月までの期間に購入すべき部品量
の理論値を計算して、実績値と比較する手法を採用した。なお、上記の部品表は通常主材料
のみが含まれており、塗料等(後記第二、3(2)アで定義する。)は基本的には含まれて
いない。したがって、塗料等については前年同期である 2016 年 11 月から 2017 年 10 月まで
の期間との増減分析を中心に調査を行った。また、入庫データに反映されている購買取引が
適切な手順を経て行われたかを確認するために、複数の購買取引をサンプルで選定し、関連
証憑の査閲を行った。
さらに、上記の調査結果を補完するために、2017 年 11 月から 2018 年 10 月までの期間の
購買額及び売上構成比率の前年同期との比較及び分析、並びに生産数量、金額及び製造現場
における人員の稼働状況の推移等についても分析を行った。
イ 不適切な会計処理に係る会計データ及びそれらの関連証憑、社内規程その他の関連
資料の査閲並びに検討
(ア) 標準原価操作
麗声(東莞)で用いられていた原価計算方法、及び調査期間における原価計算に係る業務フ
ローを理解するとともに、あるべき標準原価の特定又は算出を行った。次に、麗声(東莞)で
用いられていた標準原価とあるべき標準原価の比較を行い、標準原価操作による各勘定科目
への影響額の算出を行った。
3
(イ) 会計操作
麗声(東莞)に同様の手口による操作が行われていないかという観点で、速報と確報の差額
の検証、連結パッケージと麗声(東莞)の財務諸表との比較、異常な仕訳のレビューを行った。
ウ リズム時計工業及び麗声(東莞)の役職員に対するインタビュー
当委員会は、本調査の目的達成のために必要な情報又は認識を有している可能性が認めら
れる関係者のうち、本調査の過程で特に重要であるとされた合計 70 名(延べ数)に対してイ
ンタビューを実施した。
エ 電子メールのレビュー
当委員会は、本調査の目的達成のために必要な情報又は認識を有している可能性が認めら
れるリズム時計工業及び麗声(東莞)の関係者の法人貸与のパソコンデータ並びにメールサー
バに保存されているメールデータの保全収集を実施し、削除ファイルの復元や重複の排除を
含む収集データの下処理を実施したうえで、調査対象期間及び本調査に関連するキーワード
による絞込を行い、合計 21 名の総数 163,965 件のメール及び添付ファイルに対してレビュー
を実施した。
オ ホットラインの設置
当委員会は、不適切な会計処理及び購買取引、並びに類似事案の存在の有無に関する情報
を収集するために、当委員会を宛先とするホットラインを設置した。不適切な取引の疑義が
生じた麗声(東莞)がリズム時計工業の在外製造子会社であることに鑑み、ホットラインの対
象者は、麗声(東莞)及び麗声(香港)のほか、リズム時計工業のベトナム及びインドネシアの
在外製造子会社の全役職員とした。設置期間は、麗声(東莞)及び麗声(香港)については 2019
年 1 月 23 日から 2019 年 1 月 31 日まで、在外製造子会社については 2019 年 1 月 25 日から
2019 年 1 月 31 日までとした。なお、法人貸与の電子機器又はメールアドレスを有しない麗
声(東莞)の役職員向けには、麗声(東莞)敷地内の掲示板を通じて周知を行った。
結果として、設置したホットラインに対する情報提供は 1 件もなかった。
カ 役職員に対する不正又は不適切行為に係るアンケートの送付及び回収
当委員会は、上記インタビュー及びホットラインによる情報収集の実施後に、類似案件調
査に係る網羅性を担保する目的で、不適切な会計処理及び購買取引、類似事案の存在の有無
並びにこれらへの関与の有無について、麗声(東莞)の管理職以上の役職員 51 名、並びに麗声
(香港)、リズム香港、並びにベトナム、インドネシア及び米国の在外子会社(製造子会社の
4
ほか、販売子会社を含む。)の常勤役員 17 名に対して確認を求めるために、アンケートを
2019 年 2 月 22 日以降に送付し、対象者全員から回収した。なお、KOREA RHYTHM LTD.は、リ
ズム時計工業の在外販売子会社の一つであるが、資本関係及び人的関係に照らし、他の在外
子会社に比べてリズム時計工業の関与が小さいことから、アンケートの対象とはしなかった。
結果として、アンケートによる新たな不正又は不適切な行為の発見はなかった。
キ 麗声(東莞)の時計事業部以外の事業部及びリズム時計工業のその他の在外子会社に
係る会計データ分析及びインタビュー等の実施
当委員会は、麗声(東莞)の時計事業部以外の事業部、及びリズム時計工業の麗声(東莞)以
外の在外子会社における類似の不適切な事案の有無を確認するために、在庫データ及び購買
データ等の分析、社長及び経理部門長へのインタビュー、並びに業務プロセスの確認等を行
った。
アンケート ホットライ インタビュ 購買データ
の実施 ンの設置 ーの実施 の分析
RHYTHM PRECISION VIETNAM CO., LTD. ● ● ● ●
KYOSHIN VIETNAM CO., LTD. ● ● ●
RHYTHM KYOSHIN HANOI CO., LTD. ● ● ●
PT. RHYTHM KYOSHIN INDONESIA ● ● ●
KYOSHIN INDUSTRY ASIA PTE LTD. ●
RHYWACO(H.K.) CO., LTD. ● ● ●
RHYTHM U.S.A., INC. ● ● ●
注:アンケートの実施:在外子会社すべてを対象に実施した。
ホットラインの設置:在外製造子会社を対象に実施した。
インタビューの実施:時計事業に関係する子会社を対象にした。
購買データ分析の実施:重要性の観点から影響度の小さい KYOSHIN INDUSTRY ASIA は除外した。
(4)調査の前提事項及び留意事項
本報告書は、麗声(東莞)において生じた不適切な購買取引又は会計処理の疑義に関し、当
委員会が 2019 年 1 月 16 日から 2019 年 3 月 8 日の期間で実施した調査の結果を報告するもの
である。本調査は強制的な調査権に基づくものではなく、関係者の任意の協力に基づくもの
である。また、本調査の過程で入手した関係資料が全て真正かつ完全な原本又は正確な写し
であることを前提としている。本報告書の記載は、本調査の過程で判明した事項に限定され
ており、調査期間末日以降に発覚した事実、又は本調査の過程で確認できなかった資料もし
くは事実が存在する場合には、本報告書に反映されていない可能性がある。
5
第二 リズム時計工業グループの概要
1 リズム時計工業の概要
(1)リズム時計工業の基本情報
リズム時計工業の基本情報は、以下のとおりである。
会社名 リズム時計工業株式会社
本店所在地 埼玉県さいたま市大宮区北袋町一丁目 299 番地 12
設立日 1950 年 11 月 7 日
資本金 123 億 7,284 万円(2018 年 6 月 20 日現在)
決算日 3 月 31 日
代表者名 代表取締役社長 樋口 孝二
事業内容 時計事業、接続端子事業、プレシジョン事業、電子事業、その他事業
(当社グループ)
従業員数 連結 3,067 名、単体 230 名(2018 年 3 月 31 日現在)
(2)リズム時計工業の組織
リズム時計工業の組織図(2019 年 2 月 1 日現在)は、以下のとおりである。
組 織 図 取 締 役 会 監査等委員会
ガ バ ナ ン ス 委 員 会
社 長 経 営 会 議
コ ンプラ イア ンス推 進室 内 部 監 査 室
管 理 本 部 時 計 事 業 部 電 子 事 業 部
営 業 本 部
企 業 先 時 マー 技 品 東 大 開 営 電 生
術
行 計 ケ 質 子
生 京 阪
テ
画 務 開 企 産 保 発 業 開 産
ィ
管 支 支
発 画 ン 証 発
グ 理
部 部 部 部 部 部 部 店 店 部 部 部 部
6
(3)リズム時計工業のコーポレート・ガバナンスの概要
リズム時計工業は、2018 年 6 月 20 日開催の定時株主総会をもって、会社法上の機関設計
を、監査等委員会設置会社とした。同社のコーポレート・ガバナンスの体制は、下図のとお
りである。
株 主 総 会
選任・解任 選任・解任 選任・解任
連携
監査・監督
経 取締役会 監査等委員会 会計監査人
営
監
督 連携
機 ガバナンス委員会
能 内部監査室
代表取締役 コンプライアンス推進室
業
経営会議
務
執 監査 会計監査
行
機
能 執行役員
各(事業)部門・グループ会社
リズム時計工業は、関係会社管理規程に基づき、管理本部・企画部が窓口となって、グル
ープ会社管理を行っている。また、関係会社取締役会規程に基づき、リズム時計工業(本社)
の決裁事項と各グループ会社の決定事項とを区分している。
内部統制システムに関しては、リズム時計工業は、コンプライアンス全体を統括する組織
として、コンプライアンス推進室を設置するとともに、「リズム時計グループ コンプライア
ンス マニュアル」を、日本語その他の各グループ会社が所在する国又は地域の言語で作成
している。また、リズム時計工業グループ内における法令もしくは定款その他の社内規程に
違反する行為、又は不正行為による不祥事の未然の防止及び早期発見を図るため、内部通報
制度が設けられ、社内外に相談窓口を設置している。さらに、モニタリング体制としては、
内部監査室が、監査計画に基づき、リズム時計工業グループにおける業務執行が法令及び社
内規程に適合しているかどうかの監査を実施している。
7
リズム時計工業グループ会社のうち、海外では麗声(東莞)及び RPV が内部統制報告制度
(J-SOX)の対象となっている。
このような内部統制システムが実効性のあるものとして適切に構築されていたか、また、
有効に機能していたかについては、本調査によって判明した事実関係を踏まえて、後記第五
2(3)で述べる。
(4)リズム時計工業の連結子会社の概要
リズム時計工業の連結子会社の名称、住所、資本金又は出資金の金額、主要な事業、リズ
ム時計工業の議決権の保有割合、及びリズム時計工業と各社との関係については、下表のと
おりである。
議決権の
主要な事業の
名称 住所 資本金又は出資金 所有割合 関係内容
内容
(%)
役員の兼任
プレシジョン
東北リズム株式会社 福島県会津若松市 300 百万円 100 資金を貸付
事業
当社の機械、金型を製造
プレシジョン 100 役員の兼任
株式会社プリテック 群馬県館林市 10 百万円
事業 (100) 資金を貸付
役員の兼任
リズム協伸株式会社 東京都港区 257 百万円 接続端子事業 100
資金を貸付
役員の兼任
資金を貸付
リズムサービス株式会社 茨城県筑西市 50 百万円 その他 100
当社のクロックの修理及び
製品管理・物流業務を受託
埼玉県さいたま市 役員の兼任
リズム開発株式会社 20 百万円 その他 100
大宮区 当社のクロックを販売
役員の兼任
RHYTHM U.S.A.,INC. Atlanta U.S.A. 8,200 千米ドル 時計事業 100
当社のクロックを販売
Kowloon 役員の兼任
RHYWACO(H.K.)CO.,LTD. 26,000 千香港ドル 時計事業 100
Hong Kong 当社のクロックを販売
時計事業
Kowloon プレシジョン 100 役員の兼任
RHYTHM INDUSTRIAL(H.K.)LTD. 22,000 千香港ドル
Hong Kong 事業 (15) 当社製品の製造販売
電子事業
時計事業
役員の兼任
RHYTHM PRECISION VIETNAM Hanoi プレシジョン 100
20,000 千米ドル 資金を貸付
CO.,LTD. Vietnam 事業 (25)
当社製品の製造
電子事業
時計事業
接続端子事業
RHYTHM INDUSTRIAL 100 役員の兼任
Guang Dong China 112,842 千香港ドル プレシジョン
(DONG GUAN)LTD. (53) 当社製品の製造
事業
電子事業
Ho Chi Minh City 100
KYOSHIN VIETNAM CO.,LTD. 4,000 千米ドル 接続端子事業 役員の兼任
Vietnam (100)
Burlington Square 100
KYOSHIN INDUSTRY ASIA PTE LTD. 500 千シンガポ-ルドル 接続端子事業 役員の兼任
Singapore (100)
Hanoi 100
RHYTHM KYOSHIN HANOI CO., LTD. 5,000 千米ドル 接続端子事業 役員の兼任
Vietnam (100)
Jakarta 100
PT.RHYTHM KYOSHIN INDONESIA 18,000 千米ドル 接続端子事業 役員の兼任
Indonesia (51)
※ 「議決権の所有割合(%)」欄の(内書)は、間接所有である。また、資本金は、登録資本金の額を記載している。
8
2 麗声(東莞)の概要
(1)麗声(東莞)の基本情報
麗声(東莞)の基本情報は、以下のとおりである。
会社名 RHYTHM INDUSTRIAL (DONG GUAN) LTD.
本店所在地 中国広東省
設立日 2011 年 1 月
資本金 112,842 千香港ドル(2018 年 3 月 31 日現在)
決算日 12 月 31 日
従業員数 931 名(2018 年 3 月 31 日現在)
(2)麗声(東莞)の組織
麗声(東莞)の組織(2018 年 12 月 1 日現在)は、次の組織図のとおりである。
麗声実業(東莞)有限公司 取 締 役 会
(董事会)
組織図 経 営 会 議
社長(総経理/董事長)
副総経理
管理・生産 担当 外販営業・外販技術 担当 時計技術・時計営業 担当 管理・生産 担当
〔専務〕 〔董事〕 〔常務〕 〔専務〕
‘
管 理 部 営 業 部 外販技術部 時計技術部 品質保証部 生産管理部 部品加工部 製 造 部
人 総 財 電 営 技机 外 外 外 生 品 外 Q精 外 計 倉 通 購 部 精 精 外 銘 端 加 蒸 机 時 機 包
電 零 端
子 件 子 芯
裝 注 装 産 质 装 密
販 材 密 密 装 芯 計 器
事 務 務 脳 業 技 技 技 術 設 管 技 技 管 Q C 管 画 庫 関 買 管 金 成 成 版 子 工 着 組 組 组 装
術 術 術 電 C 部
計 理 術 術 理 理 理 型 形 形 立 立 立
科 科 科
科 科 科 科 科 科子 科 科 科 科 科 科 科品 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科 科
(3)麗声(東莞)のコーポレート・ガバナンスの概要
麗声(東莞)は、上記組織図に則ったガバナンス体制を設けている。麗声(東莞)は、同社の
ガバナンス体制に加えて、リズム時計工業グループ全体を対象とするリズム時計工業のガバ
ナンス体制にも服する。リズム時計工業のコーポレート・ガバナンスの概要は、上記1(3)
のとおりである。
9
また、上述のとおり、麗声(東莞)は、リズム時計工業の内部統制報告制度(J-SOX)の対象
子会社であり、内部監査室による業務監査を受けるとともに、年に 1 回、会計監査も受けて
いる。
(4)麗声(東莞)の事業内容
麗声(東莞)の事業内容は、以下のとおりである。
• 時計事業:
掛時計、置時計、目覚時計、設備時計、ムーブメントなどのクロック及び USB ファン、
防災行政ラジオ等の製造並びに販売。
• 接続端子事業:
タブ端子、テーピング端子及び端子台など、自動車、太陽光発電、電動アシスト自転
車及び家電製品に使用される接続端子等の製造並びに販売。
• プレシジョン事業:
産業機械、光学機器、事務・通信機器、自動車、時計等に使用される精密機器、及び
精密金型の製造並びに販売。
• 電子事業:
情報関連機器、車載関連機器及び加飾複合品などの製造並びに販売。
3 麗声(東莞)の業務フローの概要
(1)麗声(東莞)の業務フローの全体像1
ア 麗声(東莞)の顧客
麗声(東莞)の顧客には、中国国外の顧客と中国国内の顧客が存在する。中国国内の顧客と
の間では、麗声(東莞)が直接売買契約を締結するが、中国国外の顧客との間では、麗声(香港)
が売買契約を締結し、麗声(香港)がさらに麗声(東莞)と契約を締結する。なお、麗声(香港)
を介しての中国国外の顧客に対する売上げが、麗声(東莞)の全売上げの 90%以上を占める。
製品の引渡しは、上記契約に従って行われる。すなわち、中国国内の顧客については、麗
声(東莞)が製品を顧客に引き渡す。一方、中国国外の顧客については、麗声(東莞)が麗声(香
港)に製品を引き渡した後、麗声(香港)が顧客に製品を引き渡す。
1
麗声(東莞)は、2017 年 8 月まで、T 社に購買管理業務を委託していた。T 社に対する業務委託が終了
した翌月の 2017 年 9 月に、麗声(東莞)で組織改編がなされて、購買部が廃部となり、生産管理部購買
科及び同部部材管理科に移管された。本項では、現在(T 社への業務委託終了後)における業務フロ
ーを説明する。
10
代金の支払いについては、中国国内の顧客は直接麗声(東莞)に代金を支払い、中国国外の顧
客は、麗声(香港)に代金を支払って、麗声(香港)が麗声(東莞)に代金を支払う。
イ 麗声(東莞)のベンダー
(ア)契約関係及び物流関係
麗声(東莞)のベンダーには、中国国外のベンダーと中国国内のベンダーが存在する。契約
関係及び物流関係は、基本的に上記アと同様である。
(イ)代替品通関先
中国国内のベンダーには、「代替品通関先」と呼ばれるベンダーが存在する。これらのベ
ンダーは中国国内の企業であり、中国国内から直接麗声(東莞)に製品(部品)を送付する。
しかし、当該製品は、通常の麗声(東莞)の倉庫ではなく、「保税倉庫」に納品される。中国
国内から中国国内にある保税倉庫に納品する場合でも、製品が中国国外から中国国内に運ば
れた場合と同様の通関の手続が行われ、中国国外のベンダーから製品を購入した場合と同じ
取扱いになる。代替品通関先の契約締結先は、麗声(香港)である。
中国国外の顧客に販売する製品(完成品等)について、代替品通関先から購入した部品を
利用した場合、部品等の購入価格が比較的安価であるうえに、製品の販売代金についても保
税製品向けの税率の適用が認められ、税金上の優遇が受けられるため、麗声(東莞)にとって
代替品通関先を利用するメリットが大きい。
(ウ)支払関係
代金の支払いについては、中国国内のベンダー(代替品通関先を除く。 に対しては麗声(東
)
莞)が代金を支払い、中国国外のベンダー及び代替品通関先に対しては、麗声(香港)がこれら
に代金を支払う(なお、麗声(香港)からベンダー等への支払いの前に、麗声(東莞)が税関申
告書等を精査した上で麗声(香港)に代金の支払いを行う。)。
麗声(東莞)・麗声(香港)とベンダーの取引関係
契約相手方 製品送付先 支払い
① 中国国外のベンダー 麗声(香港) 麗声(香港) 麗声(香港)→ベンダー
② 代替品通関先 麗声(東莞)
同上 同上
(中国国内のベンダーの一部) 保税倉庫
③ その他の中国国内のベンダー
麗声(東莞) 麗声(東莞) 麗声(東莞)→ベンダー
(代替品通関先を除く)
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ウ 麗声(香港
香港)の業務
麗声(
(香港)は、麗声
は、麗声(香港)の銀行口座を管理し、 口座の入出金等の手続 を行うのみであ
の銀行口座を管理し、 口座の入出金等の手続を行うのみであ
の銀行口座を管理し、同口座の入出金等の手続
る。上述のとおり、
上述のとおり、麗声(香港
上述のとおり、 香港)は、中国国外の顧客、中国国外のベンダー及び代替品通関先
中国国外の顧客、中国国外のベンダー及び
中国国外の顧客、中国国外のベンダー及び代替品通関先
と契約を締結している
を締結しているものの、契約条件等を決定する権限 有しておらず、
を締結している 、契約条件等を決定する権限 有しておらず、麗声(東莞
、契約条件等を決定する権限は有しておらず、 東莞)の営
業部が、契約内容を審査し、麗声(香港)の名義で顧客と契約を締結する。
、契約内容を審査し、麗声
契約内容を審査し、麗声 )の名義で顧客と契約を締結する。
の名義で顧客と契約を締結する。また、顧客と
、顧客との間
で製品の規格・仕様等を定める
の規格・仕様等を定めるのは、麗声
の規格・仕様等を定める 麗声(東莞)の技術部である。顧客からの個別 製品の発
の技術部である。顧客からの個別製品
注については、麗声(東莞)の計画科が数量・型番・納期等の注文内容を審査し、問題がなけ
注については、麗声 計画科が数量・型番・納期等の注文内容を審査し、問題がなけ
れば受注する。ベンダーへの部品の発注についても、麗声(東莞)が決定権限を有する
受注する。ベンダーへの部品の発注についても、麗声(東莞)が決定権限を有する。
する。ベンダーへの部品の発注についても、麗声(東莞)が決定権限を有する
したがって、契約上は、麗声
したがって、契約上は、麗声(東莞)が麗声
が麗声(香港)を介して中国国外の顧客、中国国外のベ
)を介して中国国外の顧客、中国国外のベ
ンダー及び代替品通関先と取引を行っているが、その取引実態は、麗声 東莞)が直接中国国
ンダー及び代替品通関先と取引を行っているが、その取引実態は、麗声(東莞 が直接中国国
と取引を行っているが、その取引実態は、麗声
外の顧客
外の顧客等と取引を行っているの 同様である。以下の業務フローの説明では 基本的に、
を行っているのと同様である。以下の業務フローの説明では
を行っているの の業務フローの説明では、基本的に、
中国国外の顧客 と中国国内の顧客等を区別しない。
中国国外の顧客等と中国国内の顧客 を区別しない
と中国国内の顧客
(2) 部材の発注から納品まで
ア 部材の分類
顧客から注文を受けた製品を製造するため 、麗声(東莞)が中国国内及び中国国外のベン
顧客から注文を受けた を製造するため
を製造するために、麗声 が中国国内及び中国国外のベン
ダーから部材を調達する。部材には、製品 に直接使われ、製品の生産に不可欠な主要な材料
ダーから部材を調達する。部材には、製品に直接使われ、製品の生産に不可欠な主要な材料
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(ムーブメント、液晶パネル、塗料、インク等。以下「主材料」という。)と、製品に直接
使われないが、製品の生産に関係する資材(ダンボール、トレー等)及び固定資産(設備、
金型等。以下合わせて「副資材等」という。)があり、いずれも生産管理部が購買の手続を
行う。主材料の購買については、後述のとおり、ERP システムによって購買先の選定、購買
価格の管理、及び在庫の管理等が行われている。一方、副資材等については、ERP システム
による管理は行われておらず、各現場の生産部門で在庫等の管理を行っている。
また、主材料のうち、成形材料、塗料、インク等(以下「塗料等」という。)を除く通常
主材料(以下「通常主材料」という。)については、部品表(BOM)が作成され、資材所要量
計画(以下「MRP」という。)に基づき購買量が決まる。一方、塗料等については、原則、部
品表を作成しておらず、MRP が存在しない。また、通常主材料については棚卸が行われるが、
塗料等については、原則として棚卸は行われない。
部材の分類 管理方法等
部品表あり
通常主材料 棚卸する
ERP システムで管理されてい MRP あり
主材料
る(在庫等) 部品表なし
塗料等 棚卸しない
MRP なし
副資材等 ERP システムで管理されていない 棚卸しない
イ 通常主材料の発注から納品まで
(ア)部品表
麗声(東莞)技術部が、顧客と協議し、新規製品の部品表を作成する。部品表には、部品名、
生産プロセス、仕様、部品の数量等が書かれている。技術部が各関連部門と連携し、部品表
を完成させ、麗声(東莞)の社内管理システムに登録し、必要に応じて部品表を更新する。
(イ)MRP
注文が確定した後、計画科は、型番・数量・納期・製造日程等を明記する生産計画を作成
し、部材管理科に送付する。部材管理科は、生産計画及び部品表に従い、システム Mini-MRP
を利用して、部品の MRP を計算する。
MRP を確定する際、不良品率を考慮する必要があり、各製造現場が毎日不良品率を算出・
更新し、計画科がかかるデータを確認・承認して、部材管理科に報告する。部材管理科は、
Excel ファイルを作成し、Mini-MRP により算出したデータに不良品率を掛けて、最終的な MRP
を算定する。
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(ウ)購買先の選定
新規購買先選定会議制度が確立した 2013 年以降、新規購買先については、購買科が潜在的
な購買先の情報を集めて、社内で共有する。技術部・品質保証部が購買科の情報を精査し、
書類審査に合格した潜在的な購買先について現場の調査を行う。現場の調査に基づく審査に
合格した購買先が、新規購買先選定会議にかけられ、技術部・品質保証部・管理部・生産管
理部の各部署及び董事長の審査を受ける。董事長が承認した購買先の情報を、購買科が ERP
システムに登録する。
新規発注に先立ち、購買科は 2 社以上の購買先から見積りを取り、価格交渉を行うととも
に、各購買先の見積価格を ERP システムに登録する。購買先から値上げの申入れを受けた場
合、購買担当者が購買科長、生産管理部副部長及び同部部長に値上げの申入れを報告し、値
上げの合理性を判断する。
(エ)通常主材料の発注
通常主材料の個別の発注は、基本的に、ERP システムに登録されている購買先に対しての
み行う。購買科は、部材管理科が作成した通常主材料の MRP に基づき、発注数量を定める。
実際の発注数量は、最小発注数量、最小梱包単位等の制限を受ける可能性がある。購買先が
それらの最小単位を超えた発注しか受け付けないために、最小単位が MRP の数値を超える場
合には、購買科が定めた最終発注数量が MRP の数値を遥かに超えるものになる。この場合、
購買科の担当者は、発注する前に、購買科長、生産管理部副部長及び同部部長に最終発注数
量が MRP の数値と乖離している理由を説明しなければならない。
個別の発注については、原則として、購買科長、生産管理部副部長及び同部部長の承認を
要する。購買科の担当者は、承認を得た後、最終発注数量等を ERP システムに登録し、発注
書を作成する。発注書には、発注書番号、部品型番、発注数量、納期等が書かれている。
(オ)通常主材料の納品
購買先は、発注書に定めている納期に従い、倉庫に納品すると同時に、倉庫科に納品書を
引き渡す。納品書は一式三部又は四部となっており、納品書には、発注書番号、部品型番、
納品数量等が記載されている。倉庫科は、納品書を受領後、倉庫に納品された製品の数量等
を確認ないし検査する。購買科が、納品書と発注書を照らし合わせて、書面審査を行う。問
題がなければ、倉庫科及び購買科が、納品書に検印する。その後、一部の納品書が品質保証
部に、他の二部が部材管理科に送付される。残りの一部(一式四部の場合)が、記録として
倉庫科に保管される。部材管理科は、受領した書類に基づき、納品された製品の情報・数量
等を ERP システムに登録し、ERP システムによる在庫の管理等を行う。その後、部材管理科
が納品書を財務科に送付する。
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ウ 塗料等の発注から納品まで
塗料等の購買数量については、部品表が存在しないため、MRP に基づく所定購買数量の計
算ができない。各製造現場が自ら必要とする塗料等の数量を計算し、購買科に対して購買の
申請を行う。購買先の選定は、上記通常主材料の場合と同様の方法で行われる。そして、購
買科は、各製造現場の購買申請に基づき、ERP システム上で塗料等の発注書を作成する。発
注書には、発注書番号、塗料等の注文内容、発注数量、納期等が書かれている。
塗料等の納品については、上記通常主材料の場合と同様である。
エ 副資材等の購入及び納品
各部署に副資材等購入の予算が与えられており、予算内の購入申請しか認められない。
5,000 元(税抜)未満の副資材等の購入については、各部署が購買科作成の共有フォルダか
ら、副資材等の項目、単価、予算等の情報を確認し、共有フォルダに格納されている資料に
従って副資材等購入申請書を作成する。その後、各部署の科長及び部長、購買科長、生産管
理部副部長及び同部部長の承認を得て、購買科が発注する。副資材等の購買先には、購買先
選定会議の審査を経ていない購買先も含まれる。
一方、5,000 元(税抜)以上の副資材等の購入については、各部署が稟議書を作成し、董
事会及び関連部署の部長の承認を得なければならない。稟議書に基づき、各部署が購入申請
書を作成し、購買科が発注する。
副資材等の購買先は、倉庫科管理の倉庫にではなく、原則として、各部署に納品する。副
資材等については、ERP システムによる管理は行われておらず、棚卸も行われていない。
(3) 製品の製造
ア 部品の加工及び組立
麗声(東莞)には、部品加工部及び製造部がある。部品加工部は主に部品を加工し、製造部
は主として加工済みの仕掛品を組み立てる。組立後の製品が、出荷のために完成品倉庫に運
ばれて、通関科が通関の手続を行い、計画科が製品を顧客に引き渡す。
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イ 倉庫・製造現場間の部材の移動
計画科は、毎日生産計画を立て、部材管理科及び製造現場の各部署に通達する。部材管理
科は、かかる生産計画に基づき、部品及び仕掛品に関する部材配布書2を作成し、倉庫及び製
造現場に送付する。連絡を受けた倉庫科は、原材料及び仕掛品(以下合わせて「部材等」と
いう。)を製造現場の各部署に引き渡し、各部署が部材等を受け取った場合、かかる部材配
布書に捺印する。倉庫科から渡された部材等の数と部材配布書に記載した部材等の数が異な
る場合には、製造現場の各部署がその旨を部材配布書に明記する。
倉庫科と各製造現場の間で、部材配布書に基づかない部材等の引渡しも行なわれている。
この場合、倉庫科が ERP システムにログインして移転伝票を作成し、部材等を受け取った部
署が移転伝票に署名・捺印する。また、各製造現場が倉庫に部材等を返還し又は引き渡す場
合も、ERP システムにログインして移転伝票を作成し、倉庫科が移転伝票に署名・捺印する。
部材配布書及び移転伝票は最終的に部材管理科に引き渡され、部材管理科が、各伝票の数値
と ERP システム上登録されている数値が一致するかを確認する。
なお、麗声(東莞)の倉庫では、価値が高い製品等の保管場所は施錠されているが、ほとん
どの部材等の保管場所は施錠されていない。製造現場は、倉庫から部材等を受け取る際に倉
庫科の担当者がいない場合は、倉庫に置いてあるメモに、かかる部材等を受け取った旨の記
録を残して、部材等を搬出することがある。上記メモには、倉庫担当者不在の場合の出庫状
況のみならず、各製造現場・倉庫間の部材の移動、納品・返品等を含む部材等の入出庫状況
がすべて記録されている。
(4)棚卸資産管理
毎月月末、倉庫及び製造現場の各部署が棚卸を行う。帳簿上の「倉庫」勘定は、経理上の
理由で、「原材料倉庫」、「仕掛品倉庫」、「不良品倉庫」に分かれている。現場にも、部
材等を一時的に保管するための流動的な倉庫が存在する。
棚卸を行う際、部材管理科はまず棚卸票を作成し、倉庫及び各製造現場に配布する。倉庫
及び各製造現場が棚卸票に、実際保管されている部材等の品目・数量を記入して、部材管理
科に記入後の棚卸票を引き渡す。部材管理科が ERP システム上登録されている在庫の数値に
に照らして受け取った棚卸票を確認し、一致しない部材等については、差異調査書を作成し、
倉庫及び各製造現場に差異原因の調査を依頼する。倉庫及び各製造現場が在庫の数を再調査
し、入出庫のメモを確認する等により、差異原因を調査する。その後、差異調査票にかかる
調査結果を記載し、部材管理科に差異調査書を引き渡す。
2
麗声(東莞)では部材配布書のことを領料単と呼ぶ。
16
部材管理科が差異調査書を受け取り、差異原因を確認した後、差異調整を行う。課税・保
税対象の原材料は、税金申告の手続の対象であるため、差異が出ないように調整されている。
部材管理科がかかる課税・保税対象原材料については、不良品倉庫に差異分の伝票を移すこ
とにより、差異調整を行い、調整後の帳残と実残が一致する棚卸結果を財務科に報告する。
一方、仕掛品については、ERP システム上で自動的に差異調整が行われるため、不良品倉庫
を利用した調整は行われていない。部材管理科がその権限で、不良品倉庫ないし ERP システ
ムを利用した差異調整を行った後、生産管理部部長に調整を行ったことを報告していた。
なお、各製造現場に原材料が引き渡された時点で、引き渡された現物が加工等されておら
ず、購入した原材料と何ら変わらないとしても、帳簿上かかる原材料は自動的に仕掛品とし
て計上されるため、各製造現場では、不良品倉庫を利用した差異調整は行われていない。し
たがって、不良品倉庫は、原則、原材料倉庫の棚卸差異調整のために利用されていたもので
ある。
(5)決算
ア 事業計画及び見通し
毎年 2 月頃、麗声(東莞)は事業計画を作成する。事業計画には、各製品に必要な工数等の
細かいデータが記載されている。かかる事業計画が上半期の各月にブレークダウンされ、翌
事業年度上半期の各月の詳細な月次計画が決まる。
かかる計画は、後述のとおり、「X 期上/下利益計画表 DG_X 年 X 月 X 日」という書類(以
下「利益計画」という。)の中「計画」の列に記載される。そして、財務科長が毎月の決算
を行った後、「利益計画」の中の「実際」という列に、各月の決算結果及び実際の決算結果
と「計画」の差異を記載する。後述のとおり、財務科長が作成する利益計画が、速報として
董事長に報告され、さらに、確報としてリズム時計工業(本社)に報告される。
また、下半期の事業計画が毎年 8 月頃作成される。下半期の事業計画には上半期の事業計
画のように細かいデータは記載されていないが、下半期の詳細な月次計画が下半期の事業計
画に基づき作成される。
毎月、麗声(東莞)は翌月の経営状況の「見通し」を作成する。見通しは、原則として、上
記の詳細な月次計画に基づき作成されるが、翌月の売上の予想に基づき、計画の内容の調整
が行われる。また、翌月の予想労務費、材料費等により、計画の内容を微調整することもあ
る。毎月 15 日から 30 日の間に、董事長がリズム時計工業(本社)に翌月の見通しを業務報
告書の形で報告する。毎週火曜日に行われる麗声(東莞)の経営会議において、董事長が実際
の売上げの状況を確認する。
17
イ 標準原価
計画科の担当者が、毎年 4 月に ERP システムの中の前事業年度の標準原価関連のデータを
すべて削除し、2 月に確定した事業計画を ERP システムにアップロードする。また、各部署
の協力を得て、その他の必要なデータを入力する。かかるデータがすべて入力された後、ERP
システムにより自動的に各部品、仕掛品、完成品の標準原価が計算される。計画科の担当者
が、ERP システムから計算済みの標準原価シートをダウンロードして必要な調整を行った後、
標準原価シートを共有フォルダに保管する。標準原価シートには、部品、仕掛品、完成品の
標準原価がすべて含まれている。
4 月以降、新しい部品、仕掛品、完成品が追加された場合には、計画科の担当者が必要な
情報を ERP システムに入力することを各部署に依頼する。情報が入力された後、ERP システ
ムにより自動的に新しい部品、仕掛品、完成品の標準原価を計算し、また、一部の既存の仕
掛品の標準原価もそれに伴って変更される。計画科の担当者が、ERP システムが計算した新
しい標準原価のデータ及び、変更があったデータのみをダウンロードし、標準原価シートに
追記する。毎年 4 月に一度ダウンロードした標準原価シートを、計画科の担当者が全部ダウ
ンロードし直すことは原則としてない。
また、基本的に、毎年 4 月に作成された標準原価シートの中の完成品の標準原価は、事業
年度を通して変更されることはない。例外的に、4 月にダウンロードした標準原価シートの
元データ(例えば、工数)が間違っていることがあり、その場合は、ERP システム上データ
を修正し、修正されたデータに基づき、既存の部品、仕掛品、完成品の標準原価が変更され
る。共有フォルダに格納されている標準原価シートの編集権限は、計画科の担当者のパソコ
ンにのみ付与されている。しかし、編集権限がない者でも、当該担当者のパソコンのパスワ
ードを入手すれば、同担当者のパソコンにアクセスして、又は自分のパソコンから同担当者
のユーザー名及びパスワードを使いログインして、標準原価シートに修正を加えることがで
きる状況にあった。
ウ 棚卸後の利益の試算
棚卸の完了後、部材管理科が棚卸金額を計算する。標準原価シートに記載のない新しい部
品、仕掛品、完成品については、部材管理科の担当者が計画科の担当者に対し、標準原価の
追記を依頼する。すべての部品、仕掛品、完成品に関する標準原価が揃った時点で、部材管
理科の担当者が共有フォルダから標準原価シートを取得して、棚卸の結果(部品、仕掛品、
完成品の数)に、標準原価シートに記載されている各部品、仕掛品、完成品の標準原価をか
けて、棚卸金額を計算する。
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(※標準原価操作との関連性)
A 氏は、毎月の労務費、経費の試算額を B 氏に伝え、B 氏は労務費、経費及び部材管理科の
担当者が計算した棚卸金額に従い、当月の材料費を試算する。
材料費の試算結果が見通しに記載されている材料費より遥かに高い場合には、当月の決算
が見通しに達することができず、赤字になる可能性が高い。労務費又は経費を調整する余地
が小さいため、毎月の決算の結果を見通しに近づけるためには、棚卸金額を調整するしかな
い。かかる工夫・調整は、棚卸の漏れがないかの再確認、各製造現場に対する標準原価シー
トの元データ(使用料・工数)の調整依頼、及び標準原価シートの改ざん(後述)によって
行われていた。
エ ERP システムのロック
部材管理科が、入庫データ及び部材配布データを財務科に伝え、財務科が、それらのデー
タに基づき、棚卸数の理論値を算定する。かかる理論値と実際の ERP システム上の数値とが
一致していれば、棚卸が完了し、ERP システムが更新される。ERP システムが更新されると、
翌月の取引に関するデータを入力することが可能となり、決算当月のデータがロックされる。
オ 計算単の作成
ERP システムがロックされた後、財務科の担当者が共有フォルダから標準原価シートを取
得し、「X 月 P1 計算単」と題するファイル及びその関連資料(以下、合わせて「計算単」と
いう。)の中で、仕掛品・完成品の棚卸の数に標準原価をかける方法によって、標準原価に
基づく仕掛品・完成品の金額を計算する。「計算単」上で算出した仕掛品標準原価合計と完
成品標準原価合計の割合で、当月完成品と当月末仕掛品に原価配賦が行われる。当月完成品
に配賦される金額のほとんどが、麗声(東莞)の当月の売上原価を構成することになるため、
この配賦計算の結果が決算結果に直接影響を与えることとなる。
(ア)仕掛品について
前述のとおり、新しい部品が加えられた場合、既存の仕掛品の標準原価もそれにより影響
を受ける。そのため、計算単の中の新しい仕掛品及び既存の仕掛品の棚卸金額については、
財務科は、共有フォルダの中の標準原価シートから、すべての仕掛品の標準原価を毎月取り
直して、当月の仕掛品の棚卸の数をかけて、仕掛品標準原価を計算していた。
(※標準原価操作との関連性)
A 氏らが既存の仕掛品の部分の標準原価シートを改ざんし、かつ財務科の担当者が共有フ
ォルダから標準原価シートを取得する前に改ざん行為を完了した場合には、理論上、財務科
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の協力がなくても決算結果を見通しに近づける目的を達成することができる。一方、財務科
の担当者が標準原価シートを取得した後、標準原価シートを改ざんした場合、財務科に共有
フォルダから標準原価シートを再度取得することを依頼する必要があり、財務科の協力を求
めなければならない。
(イ)完成品について
財務科は、標準原価シートから、当月の新しい完成品の標準原価を取得し、新しい完成品
の棚卸数量をかけて、新しい完成品の完成品標準原価を計算する。一方、既存の完成品の標
準原価が事業年度を通して変更されることはないという前提に基づき、4 月以降、原則、既
存の完成品の標準原価を再度取得することはない。財務科は既存の完成品の当月完成品数量
に 4 月から使われている標準原価をかけて、既存の完成品の完成品標準原価を計算していた。
(※標準原価操作との関連性)
A 氏らが既存の完成品の部分の標準原価を改ざんした場合、改ざんの時期を問わず、財務
科に連絡し、既存の完成品の完成品標準原価の再計算を依頼しなければ、決算結果を見通し
に近づける目的を達成することはできない。
財務科標準原価シート取得
前 後
既存の仕掛品の標準原価の改ざん 理論上財務科の協力不要 財務科の協力必要
既存の完成品の標準原価の改ざん 財務科の協力必要 財務科の協力必要
カ 利益計画
財務科の原価計算会計担当者は、計算単を完成させ、完成後の計算単を会計システムの入
力担当である元帳会計担当者に送付する。元帳会計担当者は、計算単及びその他決算に必要
なデータについて会計システムに入力を行う。C 氏が元帳会計担当者による入力作業がすべ
て終えたことを確認した後、前述のとおり、「利益計画」の「実際」の列、及び「計画」と
「実際」の差異の列を作成する。かかる「利益計画」が決算結果の速報(以下「速報」とい
う。)として、董事長に送付される。その後、董事長が速報を確認し、財務科にて利益計画
修正版(以下「確報」という。)を作成し、確報がリズム時計工業(本社)に報告される。
(※標準原価操作との関連性)
当初の速報(以下「速報①」という。)が作成された後、A 氏・B 氏らにより標準原価の調
整が行われたケースが見受けられた。A 氏らの調整結果に基づき、C 氏が利益計画修正版(以
20
下「速報②」という。)を作成する。なお、速報①及び速報②は、リズム時計工業(本社)
には連絡されない。
D 氏が速報①ないし速報②の内容を確認し、確報が見通しに近づけるため、「調整」を財
務科に指示する。C 氏がかかる指示に基づき、確報を作成する。確報が後にリズム時計工業
に報告される。
(参考)標準原価操作が行われた際の決算プロセス例
D 氏が翌月の利益見通しをリズム時計工業に報告
棚卸の一次結果
計画科担当者が新型番の標準原価を標準原価シートに追記
部材管理科担当者が棚卸金額の一次結果を計算
A 氏・B 氏による利益の試算
システムがロックされる
A 氏・B 氏らによる標準原価調整
財務科担当者が標準原価シートを取得
財務科担当者が計算単の一部を作成
C 氏が速報①を作成
A 氏・B 氏らによる標準原価調整
C 氏が速報②を作成
D 氏による利益調整の指示
C 氏が確報を作成
D 氏が確報をリズム時計工業に報告
21
第三 調査の結果判明した事実
1 判明した不適切な行為の概要
(1)標準原価操作による不適切な会計処理
2017 年 8 月、9 月、11 月及び 12 月並びに 2018 年 5 月の各月次決算において、決算結果
を見通しに近づける目的で、A 氏及び B 氏が、前月の仕掛品や完成品の標準原価の数値に一
定の数字を掛けて、標準原価を操作した。
また、2018 年 6 月から 2018 年 10 月までの各月次決算において、A 氏及び B 氏は、D 氏が
リズム時計工業(本社)に報告した在庫削減の方針を受けて、仕掛品の在庫を減らすために、
前月の仕掛品の標準原価の数値に一定の数字を掛けて、標準原価を操作した。
さらに、速報における赤字の数値を改善して決算結果を見通しに近づける目的で、2017 年
3 月及び 5 月の各月次決算において標準原価を変更して、不適切な会計操作が行われたこと
が認められた。
(2)麗声(東莞)董事長による不適切な会計処理
2018 年 9 月の月次決算において、麗声(東莞)の時計事業部の収益が見通しよりも約 2,300
万円減少する見込みになったため、見通しの数値に合わせるため、D 氏が、A 氏(当時の専務
董事・生産管理部長)及び C 氏に指示して、麗声(東莞)の時計事業部において合計 117 万
4,341.87 元の利益を過大に、麗声(東莞)全体で合計 96 万 4,373.51 元の利益を過大に計上
した。
また、2016 年 4 月から 2018 年 8 月の間の複数の月次決算において、D 氏(2015 年 5 月か
ら 2018 年 3 月までは麗声(東莞)の管理部長であり、2018 年 4 月以降は麗声(東莞)董事長で
ある。)が、A 氏及び財務科に指示して、①費用の前倒し計上、及び②事業部間の利益調整
を行った。
なお、麗声(東莞)董事長による不適切な会計処理については、利益調整が行われた金額に
ついて翌月等の決算で修正処理がなされている。そのため、後記第四のとおり、2017 年(平
成 29 年)3 月期第 3 四半期(累計)では損益への金額的影響が生じているものの、2017 年(平
成 29 年)3 月期(年度)では金額的影響は生じていない。2018 年(平成 30 年)3 月期について
は、各四半期及び年度において、損益への金額的影響は生じていない。また、2019 年(平成
31 年)3 月期第 2 四半期(累計)及び同第 3 四半期(累計)ではそれぞれ会計操作による金額
的影響が生じているが、このうち、2019 年(平成 31 年)3 月期第 3 四半期については、決算発
表が延期されたため、同期の会計操作を含む金額の開示には至っていない。
22
上記(1)及び(2)の各行為の具体的内容は、下記のとおりである。なお、調査の結果、
不適切な購買取引の存在は認められなかった。
2 標準原価操作に関する不適切な会計処理
(1)標準原価操作の事実関係
ア B 氏による標準原価操作の事実関係
B 氏は、2017 年以降、共有フォルダに保管されている標準原価シートを改ざんする方法に
より、前月の仕掛品及び完成品の標準原価の数値に一定の数字を掛けて、標準原価を操作し
た(以下「標準原価操作 A」という。)。
前述のとおり、共有フォルダに保管された標準原価シートの編集権限は、E 氏のパソコン
にのみ付与されている。B 氏は、E 氏のユーザー名及びパスワードを無断で使用して、E 氏の
パソコンから共有フォルダの標準原価シートにアクセスして、同シートの標準原価の数値を
修正した。また、B 氏は E 氏に型番や標準原価を伝えて指示して、標準原価シートの改ざん
を行わせた。
盤点資料の月次比較、メールレビュー及びインタビューの結果によれば、B 氏が標準原価
シートを改ざんし、不適切な標準原価操作を行った事実関係は、以下のとおりである。
操作行為
No 決算月 操作時期
分類 項目数 一律にかけた数字
棚卸金額の一時的な計算結
果の判明後、F 氏が共有フォ
1 2017 年 8 月 仕掛品 2,141 1.25
ルダから標準原価シートを
取得する前まで
2 2017 年 9 月 仕掛品 10,464 1.16 同上
仕掛品 385 2
3 2017 年 11 月 2017 年 12 月 2 日
完成品 103 0.8
4 仕掛品 6,675 1.17
5 2017 年 12 月 仕掛品 1,178 1.13 2018 年 1 月 3 日
6 完成品 290 0.81
棚卸金額の一時的な計算結
果の判明後、F 氏が共有フォ
7 2018 年 5 月 仕掛品 1,458 3
ルダから標準原価シートを
取得する前まで
8 2018 年 6 月 仕掛品 111 0.52 同上
23
操作行為
No 決算月 操作時期
分類 項目数 一律にかけた数字
9 2018 年 7 月 仕掛品 44 0.45 同上
10 2018 年 8 月 仕掛品 39 0.34 同上
11 2018 年 9 月 仕掛品 32 0.5 同上
12 2018 年 10 月 仕掛品 32 0.8 同上
イ 一律に一定の数字をかけた場合以外の標準原価数値の変更
(ア)B 氏らによる不適切な標準原価操作と認められるもの
B 氏は、下表のとおり、財務科に標準原価の修正を指示した。
行為態様
No 決算月 行為時期
分類 変更された項目数
1 2017 年 3 月 仕掛品 739 2017 年 4 月 9 日
2 2017 年 5 月 仕掛品 50 2017 年 6 月 8 日
B 氏らは、2017 年 3 月及び 5 月の標準原価の変更について、製造現場に標準原価シートの
元データの再検討を依頼したところ、標準原価シートが修正されたと供述している。
しかし、元データの修正を行った場合、仕掛品のみならず、完成品の標準原価も変わるは
ずであるが、修正されたのはすべて仕掛品の標準原価である。また、2017 年 3 月以降、麗声
(東莞)で用いられていた標準原価に基づく原価配賦率と、あるべき標準原価に基づく原価配
賦率との差異が拡大している(後記(5)ウ参照)。さらに、ERP システムから出力された
ものと合理的に推定される 2016 年及び 2017 年の標準原価シートを利用し、変更後の標準原
価の数値と照合したところ、ほとんどの数値が一致していない。加えて、2017 年 3 月及び 5
月の速報①が赤字であったことから、これらの時期において、B 氏らが標準原価を変更する
インセンティブが強かったものと認められる。
上記の各事実に鑑み、当委員会は、2017 年 3 月及び 5 月の標準原価の変更は、不適切な標
準原価操作であったと認定する(以下「標準原価操作 B」といい、標準原価操作 A と標準原
価操作 B を合わせて「本件標準原価操作」という。)。
(イ)B 氏らによる不適切な標準原価操作とは認められなかったもの
行為態様
No 決算月 行為時期
分類 変更された項目数
1 2016 年 11 月 仕掛品 1,650 2016 年 12 月 7 日
24
行為態様
No 決算月 行為時期
分類 変更された項目数
2 2017 年 8 月 完成品 77 2017 年 9 月 4 日
2016 年 11 月及び 2017 年 8 月の標準原価についても、数値が変更されている。しかし、ERP
システムから出力されたものと合理的に推定される 2016 年及び 2017 年標準原価シートを利
用し、変更後の標準原価の数値と照合したところ、4 分の 3 以上の数値が一致していた。ま
た、2016 年 11 月においては、 氏らに標準原価を変更する強いインセンティブが認められな
B
い。したがって、2016 年 11 月及び 2017 年 8 月の標準原価の変更は、不適切な標準原価操作
とは認められない。
(ウ)その他の完成品について
下表のとおり、2017 年 8 月、11 月及び 12 月以外にも標準原価が変更されているが、同表
の「変更理由」記載のとおり、いずれの変更についても合理的な理由が存在する。したがっ
て、2017 年 8 月、11 月及び 12 月以外の標準原価の変更は、不適切な標準原価操作ではない
と考えられる。
No. 決算月 変更理由
1 2017 年 4 月 期首の標準原価の定期的な変更
2 2018 年 4 月 期首の標準原価の定期的な変更
本調査開始後の 2018 年 12 月初め頃、計画科長が標準原価シート上の
データが適切ではないとの指摘を受けて ERP システムから標準原価
3 2018 年 11 月
シートを再度ダウンロードし、共有フォルダに格納したため、標準原
価シート上の数値が変更された。
(エ)仕掛品について
仕掛品についても、各月の標準原価の数値が変更されていた。前述のとおり、仕掛品につ
いては、事業年度中、通常業務の一環として、標準原価を変更することがある。その場合、E
氏が ERP システム上変更されたデータをダウンロードしたうえで、標準原価シートに修正を
加えるが、これは、共有フォルダに格納されている標準原価シートの改ざんではなく、適切
な標準原価の変更である。
なお、上述のとおり、E 氏のパソコンのパスワードの管理がずさんであったため、E 氏以外
の者が同人のパソコンに侵入して、標準原価シート中の仕掛品のデータを改ざんした可能性
25
は否定できない。しかし、本調査の結果、一律に一定の数字をかけた場合以外の仕掛品の標
準原価の変更が、不適切な標準原価操作であるとまでは認められなかった。
(2)本件標準原価操作の関与者
ア 標準原価操作 A に関与した者
標準原価操作 A に関与したことが認められる者は、B 氏及び A 氏である。本調査の結果、
財務科の積極的な関与は認められず、計画科 E 氏の関与も認められなかった。また、麗声(東
莞)董事長である D 氏については、標準原価操作 A に関与していないことが認められた。
イ 標準原価操作 B に関与した者
A 氏及び B 氏につき、2017 年 3 月の標準原価操作 B に関与したことが認められる。この時
期の標準原価操作については、本調査の結果、財務科の積極的な関与は認められなかった。
なお、2017 年 5 月の標準原価操作 B については、関与者に係る客観的証拠が乏しく、関与者
の特定には至らなかった。
(3)本件標準原価操作の動機
ア 標準原価操作 A の動機
2017 年 8 月、9 月、11 月及び 12 月、並びに 2018 年 5 月における標準原価シートの改ざん
による標準原価操作は、材料費の試算結果が見通しより遥かに高く、決算が赤字になる可能
性があったことから、B 氏が A 氏と相談して、仕掛品の標準原価を上げて完成品の標準原価
を下げることにより、仕掛品の在庫を増やし、決算の結果を赤字から黒字に転じさせたもの
である。これらの標準原価の操作は、決算結果を見通しに近づけて良化させる目的で行われ
たものと認められる。
これに対して、2018 年 6 月から 2018 年 10 月までの各月次決算における標準原価操作は、
仕掛品の在庫を減らすために、前月の仕掛品に一定の数字を掛けたものである。これらの標
準原価の操作は、A 氏及び B 氏が、D 氏がリズム時計工業(本社)に報告した在庫削減方針を
達成する目的で行われたものと考えられる。
イ 標準原価操作 B の動機
2017 年 3 月及び 2017 年 5 月の標準原価操作 B は、速報における赤字の数値を改善し、決
算結果を見通しに近づける目的で行われたものと認められる。
26
(4)標準原価操作による会計上の影響
ア 麗声(東莞)時計事業部で用いられていた原価計算方法
麗声(東莞)時計事業部では、取り扱う部品、仕掛品及び完成品の数が多く、製造原価の個
別の紐づけが難しいことから、前月末仕掛品金額と実際に発生した当月総製造原価(原材料
費、労務費及び経費)の合計を、仕掛品標準原価合計と完成品標準原価合計の割合(以下「原
価配賦率」という。)で、当月完成品と当月末仕掛品に原価配賦を行っている。麗声(東莞)
時計事業部では、上述の方法で標準原価を部品、仕掛品及び完成品について設定しているが、
これらの標準原価と実際原価の差額は、当月総製造原価に含まれた後、当月完成品金額と当
月末仕掛品金額に按分されて、会計帳簿上の数字に反映されることから、原価計算方法の実
態としては、標準原価計算制度ではなく実際原価計算制度を採用しているといえる。
仕掛品標準原価合計とは、仕掛品ごとに設定された1単位あたり仕掛品標準原価に各月末
の棚卸数量が記録される「盤点資料」における実際の月末仕掛品数量を乗じることで算出さ
れた金額を集計した金額である。また、完成品標準原価合計とは、完成品ごとに設定された
1単位あたり完成品標準原価に各月の実際の当月完成品数量が記録される「計算単」におけ
る実際の当月完成品数量を乗じることで算出された金額を集計した金額である。
なお、当月完成品については、製品ごとに前月末完成品金額と当月完成品金額の合計を、
前月末完成品数量と当月完成品数量の合計で除すことで平均単価を求め、その単価を用いて
当月出庫金額及び当月末完成品金額を算出している。
27
麗声(東莞)における原価配賦計算の概要
仕掛品勘定
期首仕掛品 当月完成品
当月総製造原価
期末仕掛品
期首仕掛品金額 完成品原価配賦率 当月完成品金額
+
当月総製造原価 仕掛品原価配賦率 期末仕掛品金額
完成品標準原価合計(A)
完成品原価配賦率=
完成品標準原価合計(A)+仕掛品標準原価合計(B)
仕掛品標準原価合計(B)
仕掛品原価配賦率=
完成品標準原価合計(A)+仕掛品標準原価合計(B)
完成品標準原価合計(A)= 完成品標準原価 × 当月完成品数量
仕掛品標準原価合計(B)= 仕掛品標準原価 × 月末仕掛品数量
本件では、標準原価を操作することによって原価配賦率に影響を及ぼし、当月完成品に配
賦される金額を減少させ、仕掛品に配賦される金額を増加させることで、当月の売上に対応
する売上原価を減少させるという行為が行われていた。下グラフは、各月試算表における原
材料、仕掛品及び完成品の月末在庫金額の推移を示したものである。同グラフによると、月
末仕掛品金額が 2017 年後半から本件発覚後に修正を行った前月である 2018 年 10 月まで一貫
して増加している。
28
(単位:千元)
在庫金額推移
40,000 月末原材料金額
月末仕掛品金額
35,000 月末完成品金額
30,000
25,000
20,000
月末原材料金額
15,000
月末仕掛品金額
10,000
5,000
月末完成品金額
0
イ あるべき標準原価
あるべき標準原価の決定に際し、以下の事項を検討した。
① 上述のとおり、2016 年に財務科から計画科へ毎月の標準原価取得業務が移管された
後、共有フォルダ上のファイルを編集することで標準原価操作が行われていること
から、直接 ERP システムから出力した標準原価の数値は信頼性が高いと判断した。
② 麗声(東莞)時計事業部では、完成品標準原価については年初に決定された標準原価
を、年度(4 月から翌年 3 月まで)を通じて原価配賦計算に用いることとなっている
ことから、あるべき標準原価の決定も同様の方法で適用することとした。なお、仕
掛品標準原価については、完成品標準原価と異なり、期中の変更を反映することと
なっているが、仕掛品標準原価についても原価操作が行われている可能性があるた
め、完成品標準原価と同様に、年初で決定された標準原価を、年度を通じて適用す
るあるべき標準原価とした。
③ ERP システム上は更新後の標準原価データしか残存しておらず、過去の標準原価デー
タが残存していないため、本件発覚後に ERP システムから出力した標準原価データ
を 2018 年 4 月から 2018 年 10 月までに適用する標準原価(以下「2018 年標準原価」
という。)とした。
④ 2015 年 4 月から 2016 年 3 月までの期間に適用する標準原価(以下「2015 年標準原
価」という。)については、財務科に ERP システムから出力した標準原価データが
残存していた。計画科業務移管前の期間であるため信頼性があると判断し、当該期
間に適用するあるべき標準原価とした。なお、2015 年 1 月から同年 3 月までの期間
についても、簡便的に 2015 年標準原価を適用した。
29
⑤ 2016 年 4 月から 2017 年 3 月までの期間及び 2017 年 4 月から 2018 年 3 月までの期間
について、 システムに入力前の年初で決定された標準原価データ等は計画科に保
ERP
管されていたが、当該データの複数項目で異常値を示していたため、当該データの
信頼性は低いと判断した。これらの期間における正常なデータが残存していないこ
とから、2015 年標準原価と 2018 年標準原価を用いて線形補間して算出した値をある
べき標準原価とした。なお、2015 年標準原価と 2018 年標準原価のどちらかに完成品
又は仕掛品が含まれていないときは線形補間することができないため、このような
場合は、例外的に 2015 年標準原価と 2018 年標準原価のどちらかを適用する等の取
り扱いとした。
以上を踏まえ、あるべき標準原価として用いる標準原価は、下表のとおりである。大半の
項目は原則を適用しているが、一部の項目については例外を適用している。
適用時期 あるべき標準原価
2015 年 1 月から 2016 年 3 月ま 原則:財務科に保管されていた ERP システムから出力した標準原価
で(2015 年標準原価) 例外:2018 年標準原価、「盤点資料」又は「計算単」における標準原価
2016 年 4 月から 2017 年 3 月まで 原則:次の計算式により算出した。
2015 年標準原価 + (2018 年標準原価 ― 2015 年標準原価) / 3
例外:2015 年標準原価、2018 年標準原価、計画課で保管されていた ERP システ
ム入力用標準原価、「盤点資料」又は「計算単」における標準原価
2017 年 4 月から 2018 年 3 月まで 原則:次の計算式により算出した。
2015 年標準原価 + {(2018 年標準原価 ― 2015 年標準原価) / 3}× 2
例外:2015 年標準原価、2018 年標準原価、計画課で保管されていた ERP システ
ム入力用標準原価、「盤点資料」又は「計算単」における標準原価
2018 年 4 月から 2018 年 10 月ま 原則:本件発覚後 ERP システムから出力した標準原価
で(2018 年標準原価) 例外:2015 年標準原価、「盤点資料」又は「計算単」における標準原価
ウ 麗声(東莞)で用いられていた標準原価とあるべき標準原価の比較
2015 年 1 月から 2018 年 12 月までの①麗声(東莞)で用いられていた標準原価に基づく原価
配賦率と、②あるべき標準原価に基づく原価配賦率を、それぞれ算出した。標準原価操作に
よる影響額算出期間については、2017 年 3 月から①と②の差異が拡大していることが読み取
れることから、2017 年 3 月から不適切な標準原価操作が行われたものと認められるので、同
時期(=本件標準原価操作の開始時期)から標準原価操作による影響額を算出することとす
る。
30
仕掛品原価配賦率月次推移
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
仕掛品原価配賦率(あるべき) 仕掛品原価配賦率(麗声(東莞))
完成品原価配賦率月次推移
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
完成品原価配賦率(あるべき) 完成品原価配賦率(麗声(東莞))
エ 標準原価操作による影響額
2017 年 3 月から 2018 年 10 月までの期間において、前月末仕掛品金額と当月総製造原価(原
材料費、労務費及び経費)の合計を、あるべき標準原価を使用して算出した仕掛品標準原価
合計と完成品標準原価合計の割合で、当月完成品と当月末仕掛品に原価配賦を行った。仕掛
品標準原価は、仕掛品ごとの1単位あたりあるべき仕掛品標準原価に各月の「盤点資料」に
おける当月末仕掛品数量を乗じることで算出した。また、完成品標準原価は、完成品ごとの
1 単位あたりのあるべき完成品標準原価に各月の「計算単」における当月完成品数量を乗じ
ることで算出した。
さらに、当月完成品については、製品ごとに、前月末完成品金額と当月完成品金額の合計
を、前月末完成品数量と当月完成品数量の合計で除すことで平均単価を求め、その単価を用
いて当月出庫金額及び当月末完成品金額を算出した。
31
麗声(東莞)が計上していた売上原価及び棚卸資産の金額と、あるべき標準原価を用いて算
出した売上原価及び棚卸資産の金額の月ごとの差異は、下表のとおりである。この結果、2017
年 3 月から 2018 年 10 月までの期間で、合計 2,449 万 2,000 元の売上原価が過少になってお
り、2018 年 10 月末時点において同額の棚卸資産が過大になっていることが判明した。
標準原価操作による影響額
(単位:千元)
売上原価 たな卸資産
売上原価 売上原価 完成品 完成品
合計 仕掛品 合計
(保税) (课税 ) (保税) (课税)
2017年3月 (405) 1 (404) (9) 0 413 404
2017年4月 (259) 78 (181) (12) 0 598 585
2017年5月 (953) 5 (948) (16) 17 1,531 1,533
2017年6月 (292) 31 (261) (16) - 1,810 1,794
2017年7月 (135) 4 (131) (7) 0 1,932 1,925
2017年8月 (1,088) (111) (1,199) (4) 0 3,128 3,125
2017年9月 (1,018) (144) (1,162) (18) 0 4,306 4,288
2017年10月 (1,275) (13) (1,288) (20) 7 5,588 5,575
2017年11月 (1,581) (6) (1,587) (345) (2) 7,508 7,162
2017年12月 (1,505) (10) (1,515) (156) (282) 9,116 8,677
2018年1月 (1,084) 171 (913) (56) (547) 10,194 9,590
2018年2月 (97) (168) (265) (94) (522) 10,472 9,856
2018年3月 (1,774) (48) (1,822) (64) (906) 12,648 11,678
2018年4月 (1,664) (447) (2,111) (18) (842) 14,650 13,789
2018年5月 (1,688) (354) (2,042) (120) (1,489) 17,440 15,832
2018年6月 (2,622) (244) (2,867) (83) (1,194) 19,975 18,698
2018年7月 (2,678) (10) (2,688) (199) (1,067) 22,653 21,387
2018年8月 (2,278) (139) (2,417) (145) (1,065) 25,013 23,803
2018年9月 (1,455) (169) (1,624) (177) (1,283) 26,887 25,428
2018年10月 118 818 936 66 (1,034) 25,460 24,492
(注)( )の数値は売上原価の過少計上を示す。
2017年3月から2018年10月まで売上原価への影響額 2018年10月時点におけるたな卸資産過大計上額
(24,492) 24,492
(5)類似案件の調査
当委員会は、麗声(東莞)の時計事業部以外の 3 つの事業部(接続端子事業部、プレシジョ
ン事業部及び電子事業部)、麗声(東莞)及び麗声(香港)以外のリズム時計工業の製造子会社
4 社及び販売子会社 2 社において、原価配賦率の操作による不適切な会計処理が行われてい
なかったかを調査した。調査の結果、上記各事業部及び在外子会社において、原価配賦率の
操作による不適切な会計処理が行われた事実は確認されなかった。
32
3 麗声(東莞)董事長による不適切な会計処理
(1)2018 年 9 月の月次決算における会計操作
ア 会計操作の具体的内容
D 氏が、2018 年 9 月及び 10 月に、A 氏(当時の専務董事・生産管理部長)及び C 氏に指示
し、以下の(ア)事業部間の利益調整及び(イ)時計事業部における利益調整により、麗声(東
莞)の時計事業部において合計 117 万 4,341.87 元、麗声(東莞)全体で合計 96 万 4,373.51
元の利益をそれぞれ過大に計上した。
(ア) 事業部間の利益調整
2018 年 6 月及び 7 月決算で、プレシジョン事業部のリズム時計工業への研修旅費として
合計 9 万 6,000 元を計上していた。2018 年 9 月決算において、当該 9 万 6,000 元を取り崩
し、その上で、費用の内部振替を示す「内部交易」の名目でほぼ同額の 10 万元を時計事業
部からプレシジョン事業部に費用の付け替えを行った。
さらに、本来時計事業部で負担すべき不還付増値税 28 万 6,000 元のうち、合計 20 万
5,968.36 元を全額、プレシジョン事業部の負担として計上した。
上記時計事業部とプレシジョン事業部との間の調整により、時計事業部においては合計
30 万 5,968.36 元について利益を過大に計上し、プレシジョン事業部においては合計 20 万
9,968.36 元について利益を過少に計上した。
(イ) 時計事業部における利益調整
2018 年 9 月決算において、
従来とは異なる収益認識のタイミングにより時計事業部の
「収
入」として 52 万 4,437.84 元(60 万 8,347.90 元の売却代金から税負担相当額 8 万 3,910.06
元を控除した金額)を計上することで売上の前倒し計上を行った。また、この売上計上に
伴い、対応する売上原価である 14 万 9,282.19 元、及びリズム時計工業への外部販売技術
支援料 2 万 6,782.14 元についても計上を行った。
また、2018 年 9 月末時点において費用計上していた以下の各費用について、それぞれ取
消処理を行った。
・「修理費」5 万元
・「旅費」2 万元
・「国内員工福利費」8 万元
・「其他」20 万元
また、実際になされていない廃材の売却につき、「収入」として 17 万元(19 万 7,200 元
の売却代金から税負担相当額 2 万 7,200 元を控除した金額)を計上した。
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上記時計事業部における利益調整により、時計事業部においては合計 86 万 8,373.51 元
について利益を過大に計上した。なお、D 氏の指示の下、これらの時計事業部における利
益調整として計上された金額の同額が、翌 10 月の決算において修正の処理がされた。
イ 関与者
2018 年 9 月決算の会計操作には、D 氏の指示の下、A 氏(当時の専務董事・生産管理部長)
及び C 氏が具体的処理を行った。
ウ 会計操作を行った経緯・動機
D 氏が麗声(東莞)董事長に就任した 2018 年 4 月以降、月を追うごとに、各事業における利
益の見通しと実績との乖離が大きくなっていた。上記の 52 万 4,437.84 元の売上の前倒し計
上については、実績を改善するために行われたものである。
D 氏は、2018 年 9 月決算の見通しについて、約 1,300 万円の利益が生じる見込みであると
の報告を受け、その旨をリズム時計工業に報告した。しかし、D 氏が速報値として報告を受
けた 9 月の実績は、約 1,000 万円の赤字であった。D 氏は、見通しと実績との間にこれほど
大きな乖離があるのは何か間違いがあるはずであると考え、麗声(東莞)の責任者である A 氏
に指示し、見通しと実績との乖離について原因を調査させた。
しかし、A 氏による調査によっても上記乖離の原因は判明せず、A 氏は D 氏に対し、この乖
離について、どこかに間違いがあると思う旨報告した。D 氏は、月次決算のリズム時計工業
(本社)への報告期限が迫っていたこともあり、もはや合理的に説明することができない、
と心理的に追い込まれた結果、 氏に対し、 月決算の数値を見通しの数値に合わせてリズム
A 9
時計工業(本社)に決算報告を行うように指示した。
その後、D 氏から指示を受けた A 氏が、C 氏に指示し、9 月決算の数値を見通しの数値に合
わせるよう、上記内容の会計操作を行った。
(2)2016 年 4 月から 2018 年 8 月までの月次決算における会計操作
ア 2016 年 4 月決算及び同年 5 月決算における調整
2016 年 4 月決算において、D 氏(当時の管理部長)が、政府が推奨する省エネ監視システ
ム(ソフトウェア)の購入費用 18 万 8,000 元を、時計事業部に係る費用として前倒しで計上
した。
翌月の 2016 年 5 月決算において、D 氏(当時の管理部長)は財務科に指示して、上記 18
万 8,000 元を取り崩し、時計事業部に係る費用のマイナスとして計上した。その後、 氏は、
D
同年 6 月 8 日付けメールにて、G 氏(当時のリズム時計工業時計事業部長)に上記処理につ
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いて報告している。D 氏が、当時の麗声(東莞)董事長である H 氏ではなく G 氏に報告したの
は、2016 年 6 月に、H 氏が G 氏の後任として麗声(東莞)董事長となったところ、前 5 月決算
については G 氏が担当していたためであり、D 氏は、前董事長である G 氏に報告を行ったも
のである。
上記の取消処理が行われた費用 18 万 8,000 元は、その後、2016 年 6 月、同年 12 月及び 2017
年 4 月の合計 3 回に分けて、長期前払費用として計上された。
イ 2016 年 7 月決算及び同年 11 月決算における調整
2016 年 8 月 5 日付けメールで、D 氏(当時の管理部長)が、I 氏(同メールには、C 氏がコ
ピーされている。)に対し、2016 年 7 月決算において 10 万元の調整を行うこと、並びに具
体的な調整項目については、H 氏(当時の董事長)及び A 氏(当時の常務董事・生産管理部
長)と決定することを連絡している。実際には、D 氏が、同月決算において、時計事業部に
係る修繕費として、前倒しで 15 万元計上した。
2016 年 11 月決算において、上記前倒しの費用について、取消処理が行われた。
ウ 2017 年 2 月決算及び同年 3 月決算における調整
2017 年 2 月決算において、H 氏(当時の董事長)及び D 氏(当時の管理部長)が財務科に
指示して、(i)時計事業部の原材料費を 60 万元加算するとともに、(ii)時計事業部の販売管
理費を 20 万元減少させて、電子事業部の販売管理費を 20 万元増加させることにより、時計
事業部と電子事業部との間において調整を行った。なお、当該調整は麗声(東莞)の会計帳簿
には反映させず、リズム時計工業(本社)に毎月報告する連結パッケージ上で行われている。
2017 年 3 月決算の「利益計画」における各事業部及び全社合計の営業利益推移は次の表の
とおりである。
(単位:千元)
時計 電子 プレシジョン 端子 合計
①第 1 回速報値 △1,133 △432 △5 25 △1,545
②第 2 回速報値 △802 △432 △5 25 △1,215
①と②の差 331 0 0 0 331
③確報値 131 △206 100 25 50
②と③の差 933 226 105 0 1,264
①と③の差 1,264 226 105 0 1,595
(注)端数処理のため、各事業部の合計は合計欄の数値と一致しない。
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2017 年 3 月決算における、第 1 回速報値と第 2 回速報値の差については「2 標準原価操
作に関する不適切な会計行為」に記載のとおりである。
また、時計事業部における第 2 回速報値と確報値の差 933 千元については、前月決算にお
ける上記(ⅰ)時計事業部の材料費 60 万元を減算処理するとともに、上記(ⅱ)時計事業部
と電子事業部との事業部間調整分 20 万元を逆調整することで利益調整を行った。さらに、前
倒し計上を予定していた T 社顧問費 53 万 3,164 元については前倒し計上を取りやめた。
なお、電子事業部における第 2 回速報値と確報値の差 22.6 万元は、前月決算における上記
(ⅱ)時計事業部と電子事業部との事業部間調整分 20 万元と、前倒し計上を予定していた T
社顧問費の計上の取りやめた金額 2.6 万元の合計である。プレシジョン事業部における第 2
回速報値と確報値の差 10.5 万元は、四半期ごとに行う棚卸資産の洗い替え評価による戻しの
金額 8.1 万元と、前倒し計上を予定していた T 社顧問費の計上の取りやめた金額 2.5 万元の
合計である。(端数処理により表中の数字とは一致しない。)
エ 2017 年 5 月決算における調整
2017 年 5 月決算の「利益計画」における各事業部及び全社合計の営業利益推移は次の表の
とおりである。
(単位:千元)
時計 電子 プレシジョン 端子 合計
①第 1 回速報値 △670 △113 415 245 △123
②第 2 回速報値 27 △113 415 245 574
①と②の差 697 0 0 0 697
③確報値 139 △62 252 245 574
②と③の差 112 51 △163 0 0
①と③の差 809 51 △163 0 697
2017 年 5 月決算における、 1 回速報値と第 2 回速報値の差である時計事業部 69 万 9,000
第
元の利益調整については、上記「2 標準原価操作に関する不適切な会計行為」に記載のと
おりである。
また、第 2 回速報値と確報値の差については、C 氏によると、プレシジョン事業部から、
時計事業部に 11 万 2,000 元、電子事業部に 5 万 1,000 元の合計 16 万 3,000 元を付け替える
会計処理を行うべきところ、D 氏(当時の管理部長)の指示の下、利益調整の目的で当該会
計処理は行われなかった。これによって、時計事業部に 11 万 2,000 元、電子事業部に 5 万
1,000 元の利益改善が行われている。なお、当該会計処理について、その後の修正は行われ
ていない。
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オ 2018 年 4 月決算及び同年 5 月決算における調整
2018 年 5 月 8 日に、D 氏が、2018 年 4 月決算について、翌 5 月以降に発生が決まっている
ことを理由として、C 氏に対し、以下の費用を前倒して計上することを指示し、C 氏がこれを
行った。
・「財務科販売管理費(出向者給与)」5 万元
(D 氏の 2018 年 5 月から同年 9 月の日本出張費用 1 万元/月の前倒し計上)
・「財務科販売管理費(営業税)」10 万元
(2017 年ライセンス調整分を 4 月から 9 月に分散計上する予定であったもののうち、
10 万元の前倒し計上)
・「財務科販売管理費(修繕費)」10.1 万元
(2018 年 5 月以降に現場で発生する修繕費の前倒し計上)
翌月の 2018 年 5 月決算において、財務科が、上記前倒し計上された費用である「財務科販
売管理費(営業税)」10 万元、「財務科販売管理費(修繕費)」10.1 万元のうち 9 万 6 千元
について、取消処理を行った。また、「財務科販売管理費(修繕費)」10.1 万元のうち 5 千
元は同年 5 月に実際に発生し、「財務科販売管理費(出向者給与)」5 万元は同年 12 月に実
際に発生した。
カ 2018 年 5 月決算における調整
2018 年 5 月決算において、D 氏の指示を受けた財務科が、費用の内部振替を示す「内部交
易」の名目で時計事業部の費用のうち、5 万元を電子事業部に、10 万元をプレシジョン事業
部に付け替えた。
キ