7604 梅の花 2019-08-29 08:00:00
第三者委員会の調査報告書全文開示に関するお知らせ [pdf]

                                                  2019年8月29日
  各    位
                       会   社   名    株 式 会 社   梅     の   花
                       代 表 者 名      代表取締役社長兼COO 本 多 裕 二
                       (コード番号 7604 東証第二部)
                       問 合 せ 先      取締役執行役 管理本部長
                                                   上 村 正 幸
                       (TEL        0942-38-3440)



        第三者委員会の調査報告書全文開示に関するお知らせ


 当社は、2019年8月28日付「第三者委員会の調査報告書の受領及び今後の当社の対応に関する
お知らせ」にて開示しておりますとおり、同日、第三者委員会より、当社及び当社の連結子会社
の店舗に係る固定資産の減損処理方法に関する本社費等の会計処理について調査報告書を受領し
ておりますが、同日以降、当社の営業秘密及び個人のプライバシーの保護等の観点から必要な部
分的非開示措置について検討し、第三者委員会に意見を述べ、その結果、第三者委員会において
も必要と判断された部分的非開示措置(別紙の非開示を含みます。  )を完了いたしましたので、下
記のとおりお知らせいたします。

                      記


1.調査報告書の全文開示について
  第三者委員会の調査報告書の全文につきましては、添付をご覧下さい。

2.原因究明と再発防止策について
  第三者委員会の調査報告書には、再発防止に係る提言が行われております。当社は、それを
 真摯に受け止め、早期に原因究明と実効性のある具体的な再発防止策を策定し、取り組んでま
 いります。
  なお、具体的な再発防止策は、決定次第、改めてお知らせいたします。

3.今後の見通し
  当社は、2019年8月30日までに2019年4月期有価証券報告書を提出する予定であります。
  また、当社は、過年度(平成22年9月期から平成30年9月期まで)の有価証券報告書及び過
 年度(平成29年9月期第1四半期から平成31年4月期第1四半期まで)の四半期報告書の訂正
 報告書の提出及び過年度(平成22年9月期から2019年4月期まで)の決算短信及び過年度(平
 成29年9月期第1四半期から平成31年4月期第1四半期まで)の四半期決算短信の訂正を2019
 年8月30日までに公表する予定であります。

 株主、投資家の皆様をはじめ関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配をお掛けいたしてお
りますことを改めて深くお詫び申し上げます。

                                                        以   上
                             2019 年 8 月 28 日


株式会社梅の花   御中




               調 査 報 告 書

                (開示版)




          株式会社梅の花   第三者委員会
2019 年 8 月 28 日




      株式会社梅の花 第三者委員会



              委員長     弁   護   士   山   形   康   郎   ㊞



              委   員   弁   護   士   原       仁   志   ㊞



              委   員   弁   護   士   酒   井   辰   馬   ㊞



              委   員   公認会計士       新   川   大   祐   ㊞



              委   員   弁護士・公認会計士   岩   田   知   孝   ㊞
                                                 目        次
第1     第三者委員会による本報告書の趣意等................................. 1

 1     第三者委員会設置の端緒及び目的 ................................................................. 1
 (1)設置の端緒 ................................................................................................. 1
 (2)目的 ............................................................................................................ 1
 2     当委員会の構成 .............................................................................................. 1
 3     当委員会の運営に係る方針及び準則 ............................................................. 1
 4     留意事項......................................................................................................... 2

第2     調査担当者、調査期間及び調査方法 ................................... 3

 1     調査担当者 ..................................................................................................... 3
 2     調査期間......................................................................................................... 3
 3     調査対象期間 ................................................................................................. 3
 4     調査対象法人 ................................................................................................. 3
 5     調査方法......................................................................................................... 3
 (1)当委員会による関係者らに対するヒアリング............................................ 4
 (2)当委員会が当社から開示を受けた資料 ...................................................... 4
 (3)会計データ及び各種証憑類等の閲覧及び検討............................................ 4
 (4)デジタル・フォレンジック調査 ................................................................. 4
 (5)ホットラインの開設 ................................................................................... 7

第3     調査結果 ........................................................... 8

 1     当社に関する基本情報 ................................................................................... 8
 (1)当社の概要等 .............................................................................................. 8
 (2)当社の連結業績の推移 ............................................................................. 14
 (3)当社の単体業績の推移 ............................................................................. 16
 (4)各年度における主要な投資及び資金調達の状況 ...................................... 17
 2     本件不適切会計処理の内容 .......................................................................... 18
 (1)固定資産の減損処理の概要 ...................................................................... 18
 (2)減損会計にかかる本件不適切会計処理の認定.......................................... 22
 (3)減損損失に関する不適切な会計処理を修正することにより、派生して
          修正が必要になる事項 .............................................................................. 26
 (4)その他の不適切な会計処理 ...................................................................... 26
 3     本件不適切会計処理の当社連結財務諸表への影響 ...................................... 27
 4     本件不適切会計処理の関連事情及び本件不適切会計処理に至る経緯 ......... 27
 (1)社内業務分担とモニタリング体制 ........................................................... 27
 (2)本件不適切会計処理に至る経緯 ............................................................... 29
 (3)経営陣の関与の有無 ................................................................................. 34
 (4)モニタリングの実施状況 .......................................................................... 37

第4     原因に関する考察 .................................................. 39

 1     本件不適切会計処理を生じさせた要因 ........................................................ 39
 (1)取締役会の監督機能の低下によるガバナンス不全 .................................. 39
 (2)各店舗の業績低迷 ..................................................................................... 39
 (3)事業の急拡大に伴う部門間・会社間牽制機能の喪失 ............................... 39
 (4)運営実態における業務分担及び業務手順が不明瞭であること ................ 40
 (5)業務チェック体制の欠如 .......................................................................... 40
 (6)自浄作用の不全、コンプライアンス意識の欠如 ...................................... 41
 2     経営陣の責任 ............................................................................................... 41
 (1)総論 .......................................................................................................... 41
 (2)各論 .......................................................................................................... 41

第5     再発防止策の提言 .................................................. 46

 1     総論 .............................................................................................................. 46
 2     経営における意識改革と多様な視点の導入 ................................................. 46
 3     業務手順の整備及び組織改革 ...................................................................... 46
 4     企業風土改革、コンプライアンス意識の改革 ............................................. 47
 5     部門・子会社責任者の兼務の解消 ............................................................... 47
 6     モニタリング体制の強化 ............................................................................. 48

別紙1       ヒアリング対象関係者 ............................................ 49

別紙2       デジタル・フォレンジック対象役職員 ............................. 51
                    主な略語の一覧


             正式名称                            略語
株式会社梅の花                                 当社
A(現・代表取締役会長兼 CEO)                       A氏
B(現・代表取締役社長兼 COO)                       B氏
C(現・取締役執行役管理本部長     兼   経理部長   兼   人事   C氏
総務部長)
D(現・取締役執行役経営計画室長)                       D氏
E(現・経営計画室遊休資産活用プロジェクト部長)                E氏
F(現・経営計画室課長)                            F氏
G(現・経理課長)                               G氏
H(現・人事総務部総務担当部長)                        H氏
第1    第三者委員会による本報告書の趣意等
 1    第三者委員会設置の端緒及び目的
 (1)設置の端緒
      当社は、2019 年 4 月期の決算手続を進めるにあたり、会計監査人から、会計処
     理に関する問題点、具体的には、当社店舗に係る固定資産の減損判定関連の計算
     にあたり、本社経費を恣意的に傾斜配賦していた点(以下「本件不適切会計処理」
     という。)について指摘を受けた。
      当該指摘を踏まえ、公正性を確保しつつ事実の解明を行うため、社外の有識者
     からなる調査委員会による調査が必要であるとして、2019 年 6 月 26 日、第三者
     委員会(以下「当委員会」という。)が設置されたものである。


 (2)目的
      当委員会の目的は、以下のとおりである。
     ① 会計監査人より指摘を受けた店舗に係る固定資産の減損処理に関する事実
       関係調査及び原因究明
     ② 再発防止策の検討・提言


 2    当委員会の構成
      当委員会は、以下の委員により構成される。委員長及び各委員は、いずれも当
     社から業務を受任したことはなく、当社と利害関係を有しない外部専門家として
     選任された。
       委員長:山     形   康   郎(弁護士/弁護士法人関西法律特許事務所)
       委   員:原       仁   志(弁護士/弁護士法人関西法律特許事務所)
       委   員:酒   井   辰   馬(弁護士/酒井法律事務所)
       委   員:新   川   大   祐(公認会計士/北斗税理士法人)
       委   員:岩   田   知   孝(弁護士 公認会計士/株式会社 KPMG   FAS)


      また、当委員会は、当社に関する資料の入手やインタビューのスケジュール調
     整等の事務的作業については当社の人事総務部総務担当部長である H 氏を当委
     員会の事務局として活用した。


 3    当委員会の運営に係る方針及び準則
      当委員会は、日本弁護士連合会の定める「企業等不祥事における第三者委員会
     ガイドライン」の趣旨を最大限尊重し、その調査の独立性・中立性・客観性を担
     保するために、委員長と当社との間で締結された業務委託契約で以下の事項を合
     意し、かつ、これらの事項を完全に遵守した。


                              1
    ① 調査手続を立案・決定する権限は当委員会にあること
    ② 当委員会の成果物である調査報告書の起案権は当委員会にあること
    ③ 当社及びそれらの役職員には当委員会の調査に誠実に協力する義務があり、
     当委員会に不当な影響を与える行為が禁じられること


4   留意事項
    本調査及び本報告書は、以下の事項を前提とする点に留意されたい。
(1) 本調査は、後述第2「調査担当者、調査期間及び調査方法」のとおり、限ら
    れた期間の中で、当委員会が独自に収集した資料及び当社から入手した資料並
    びに当社の関係者等へのヒアリングに基づき、後述の本調査期間内で行われた
    ものであり、本報告書作成時までに分析、検討等した資料から確認できた内容
    のうち、本調査の目的に照らして指摘するべきであると考えられる点について
    記載しているものであって、入手した資料等から確認できた内容の すべてを網
    羅的に記載したものではないこと。
(2) 後述のとおり、入手資料については、当社から提供を受けたものであり、メ
    ールサーバや個々人のメールを独自にすべて収集し精査したものではなく、限
    定的なものであること。
(3) 本調査においては、以下の事項を前提としていること。
    ① 検討対象となった書類上の署名及び押印は真正になされたものであること。
    ② 写しとして開示を受けた書類は、いずれも原本の正確かつ完全な写しである
     こと。
(4) 本報告書は、前述(2)及び(3)のとおりの前提において作成されたもの
    であり、本調査外の資料及び関係者の供述等により本報告書と異なる事実が認
    められることを否定するものではなく、そのため、新たな事実関係が判明した
    場合には、本報告書と異なる結論に至ることもあり得ること。
(5) 本調査及び本報告書作成は、当社との関係において客観的立場においてなさ
    れたものであり、かかる立場確保のために、当社その他いかなる者も本報告書
    作成者に対していかなる権利も取得せず、本報告書作成者に対していかなる請
    求も起こさず、本報告書を証拠、資料その他主張等の根拠として使用しないこ
    と及び本報告書作成者は、当社その他いかなる者に対しても何らの義務及び責
    任を負わないこと。




                    2
第2    調査担当者、調査期間及び調査方法
 1    調査担当者
      当委員会は、その調査を補助させるため、以下のとおり、弁護士法人関西法律特
 許事務所の弁護士並びに株式会社 KPMG FAS 所属の公認会計士及びその他の専門
 家を補助者として選任した。


            所属                         氏名等
     関西法律特許事務所          弁護士   冨田信雄、北川慎一郎、桒田       聡
     KPMG   FAS         公認会計士   見越敬夫、山口孝之、遠藤正樹        他 10 名


 2    調査期間
      2019 年 6 月 26 日から同年 8 月 27 日まで(以下「本調査期間」という。)であ
     る。


 3    調査対象期間
      本調査の対象期間については、必要性と実効性を勘案して、2009 年 10 月(2010
 年 9 月期)から 2019 年 4 月(2019 年 4 月期)までとしたが、必要に応じてそれ以
 前の期間に遡って調査を実施した。


 4    調査対象法人
      本調査の主たる対象法人は、当社であるが、当社グループのその他の法人にお
     いて関連する事実、類似する事案又は、その他不適切な事案がないかを調査する
     ため、当社連結子会社のうち以下の法人(以下「その他対象子法人」という。)
     に対しても、合理的と考えられる範囲で調査を行った。


                  会社名                         会社名
     株式会社    梅の花サービス      西日本        株式会社   梅の花サービス     東日本
     株式会社    梅の花 plus                株式会社   古市庵
     株式会社    丸平商店                    ヤマグチ水産   株式会社
     株式会社    グッドマークトレーディング           株式会社   すし半
     (丸平商店と吸収合併により 2018 年 10 月消滅)



 5    調査方法
      当委員会は、以下のとおり、関係者へのヒアリング及び当社から提供を受けた
     資料の分析・検討等の方法により、本調査を実施した。



                                 3
(1)当委員会による関係者らに対するヒアリング
      当委員会は、2019 年 6 月 27 日から同年 8 月 22 日までの間、本件の関係者
 (当社及びその他対象子法人の役職員、対象期間内に退職した当社及びその他
 対象子法人の元役職員並びに会計監査人)延べ 49 名からヒアリングを実施し
 た。その合計時間は、72 時間 1 分であり、詳細は別紙 1 のとおりである。


(2)当委員会が当社から開示を受けた資料
      当委員会は、当社に対し、随時、分析・検討等が必要となると考えた資料(当
 社の取締役会その他の会議体の議事録、社内規程類及び会計資料等)の開示を
 依頼し、その開示を受けて内容を分析・検討した。
      当委員会は、これに加えて、関係者の各ヒアリング時等に当委員会から関係
 資料の提示を求めたことにより当委員会に各関係者から提供があった資料につ
 いても分析・検討した。


(3)会計データ及び各種証憑類等の閲覧及び検討
      当委員会は、本件に関連すると合理的に考えられる合計残高試算表・総勘定
 元帳等の会計データ及び各種証憑書類等の関連資料の閲覧及び検討を行った。


(4)デジタル・フォレンジック調査
  ア    総論
       当委員会は、本調査の実施に当たって、当社の電子メールサーバ内のデー
      タ、当社関係者が使用する当社支給のパソコン及びスマートフォン内のデー
      タを保全した上で分析・検討する必要があると考え、当委員会から株式会社
      KPMG FAS に依頼し、以下の方法によってデジタル・フォレンジック調査を
      行った。


  イ    情報保全の対象とした機器等
 (ア) 対象役職員
       当委員会は、当社の社外取締役及び監査等委員を除く取締役 6 名、経理部
      門 6 名、経営計画室 3 名、執行役 6 名、子会社社長 2 名(現職及び過去 10 年
      間における在籍者のうち保全可能な者を対象として、兼務・重複となってい
      る者を除く。)を、本調査のデジタル・フォレンジック調査の対象役職員と
      した。詳細は別紙 2 のとおりである。




                         4
(イ) 保全対象データ
  当委員会は、データ保全実施前に当社に対してヒアリングを行い、上記調
 査対象役職員が業務内でコミュニケーションを取る際に発生するデータを網
 羅的に取得するためには、下記 4 つの機器・サービスからデータを保全する
 必要があると判断した。
  ① Web メール(株式会社佐賀電算センター提供 「Webwalkers」)
  ② 当社からの貸与 PC(以下「会社貸与 PC」という。)
  ③ 当社からの貸与携帯電話(スマートフォン及びガラケー。以下「会社貸
    与携帯電話」という。)
  ④ 社内ファイルサーバ(当社社内に設置されているもの)


(ウ) 保全データの規模
  本調査の保全作業で取得したデータの容量は、それぞれ合計が以下のとお
 りであった。
  ① Web メール:12.9 GB
  ② 会社貸与 PC:3.0 TB
  ③ 会社貸与携帯電話:58.9 GB
  ④ 社内ファイルサーバ:70.1 GB


(エ) 保全方法
  本調査の保全作業は、それぞれ以下の手順で実施した。
  ① Web メール
     サービス提供業者(佐賀電算センター社)に依頼し、全対象者の 2019
   年 6 月 22 日時点のバックアップデータを Thunderbird 形式に変換したデ
   ータを受領した。


  ② 会社貸与 PC
     各 対 象 者 が 使 用 す る 会 社 貸 与 PC を 停 止 し た 状 態 で DEFT ZERO
   Version 2018.2(以下「DEFT」という。)を使用し、E01 形式で、HDD の
   イメージファイルを取得した。また、HDD が暗号化されているため、
   DEFT による保全が技術的に困難と判断した PC は OS にログインした状
   態で ACCESS Data 社製 FTK Imager Lite Version 3.1.1 を使用して、E01 形
   式で、HDD のイメージファイルを取得した。




                          5
    ③ 会社貸与携帯電話
      サン電子株式会社製 UFED 4PC version 7.16.0 を使用して、各対象者が
     使用する会社貸与携帯電話データの保全を実施した。但し、この手続で
     取得できなかったコミュニケーションデータは、会社貸与携帯電話に搭
     載されているバックアップ機能により SD カードにデータをコピーした。
     さらに、この機能でも取得できないデータには、会社貸与携帯電話の画
     面をカメラで撮影し、保全を実施した。


    ④ ファイルサーバ
      2019 年 6 月 24 日時点のバックアップデータから、本調査に関連する
     部署のフォルダについてコピーを取得した。


(オ) 削除データの復元の可否
    上記データの内、削除データの復元が可能なものは、会社貸与 PC のデー
 タとなり、Opentext 社製 EnCase version 7.10.1(以下「EnCase」という。)の
 機能を利用して復元処理を行った。


ウ   保全・抽出したメールデータの分析・検討
     選別の手順
    ① Web メール
      上記手順により取得した全データを NUIX 社製 NUIX version 7.8(以下
     「NUIX」という。)を用いて重複排除処理を実施した後、メールレビュ
     ー環境である Vound 社製 Intella Connect version 2.1.1(以下「Intella」と
     いう。)に取り込んだ。


    ② 会社貸与 PC
      上記手順により取得した HDD イメージファイルを EnCase に取り込
     み、削除データの復元処理を実施後、メールの拡張子を持つファイルを
     検索し、該当するデータをすべて抽出した。抽出したデータに対して、
     NUIX で重複排除処理を実施した後、Intella に取り込んだ。


    ③ 会社貸与携帯電話
      上記手順により取得したデータのうち、コミュニケーションデータ(メ
     ール、ショートメッセージ、チャット等)に該当するものを Intella に取
     り込んだ。




                            6
    キーワードでの選定
   当委員会は、分析・検討対象を本調査に関連するものに限定するために、
  キーワードを選定し抽出を行った資料について、検討、分析を行った。


(5)ホットラインの開設
  当委員会は、2019 年 7 月 8 日から同年 7 月 19 日までの期間において、当社
 及びその他対象子法人の役職員向けのホットラインを開設し、本件及び類似の
 事象に関する情報の提供を求めた。
  なお、本件不適切会計処理に関与していた部署及び従業員が限定されており、
 退職者も含め、本件の関係者に対するヒアリングを広く実施したことから、全
 社アンケートは実施しなかった。




                     7
第3    調査結果
 1    当社に関する基本情報
 (1)当社の概要等
     ア 概要(2018 年 9 月 30 日現在)
     上場市場             東京証券取引所第 2 部
     決算日              9 月 30 日(2018 年 12 月に決算期を 4 月 30 日に変更している)
                      A 氏 5.85%、梅野久美恵 4.71%、エイチ・ツー・オー リテイリング
                      株式会社 4.67%、株式会社フジオフードシステム 4.62%、株式会社
     株主構成             梅野企画 3.03%、麒麟麦酒株式会社 2.51%、株式会社トーホーフー
                      ドサービス 1.59%、株式会社西日本シティ銀行 1.19%、梅の花社員
                      持株会 0.84%、株式会社三菱UFJ銀行 0.56%      他
     代表者              代表取締役会長     A 氏、代表取締役社長     B氏
     本店所在地            福岡県久留米市天神町 146 番地
     従業員数             154 人
                      梅の花グループは、株式会社梅の花及びその子会社 10 社並びに関
                      連会社 1 社により構成され、食と文化の融合をテーマに、外食事業
                      として、くつろぎと安らぎを提供する料理店「湯葉と豆腐の店 梅
                      の花」及び「和食鍋処 すし半」の店舗展開を行い、テイクアウト
     事業内容
                      事業として、巻寿司・いなり寿司等の販売店「古市庵」及び和総菜・
                      お弁当の販売店「梅の花」の店舗展開を行い、外販事業として、水
                      産加工品の製造販売、梅の花及び古市庵ブランド商品の販売を行
                      っている。
     会計監査人            有限責任監査法人トーマツ


     イ    適時開示情報
         本調査期間の前後における当社の主な適時開示情報は以下のとおりである。
     2007 年 10 月   株式会社古市庵及び有限会社古市庵興産の株式を 1,270 百万円で取得。
                   株式会社古市庵の事業規模(2007 年 3 月期)は、売上 9,266 百万円、総
                   資産 3,862 百万円
     2008 年 11 月   通期業績修正(2008 年 9 月期の連結予想純利益△791 百万円を△2,506 百
                   万円に減益)
                   2008 年 9 月期決算短信の発表延期
     2009 年 5 月    通期業績修正(2009 年 9 月期の連結予想純利益 38 百万円を 188 百万円
                   に増益)




                                   8
2009 年 11 月   通期業績修正(2009 年 9 月期の連結予想純利益 188 百万円を△211 百万
              円に減益)
2010 年 11 月   通期業績修正(2010 年 9 月期の連結予想純利益 136 百万円を 177 百万円
              に増益)
2011 年 2 月    資産除去債務 369 百万円を第 1 四半期において特別損失に計上
2011 年 3 月    公募及び第三者割当増資手取概算 2,793 百万円(子会社投融資 1,463 百万
              円、借入金返済 1,330 百万円)
2011 年 11 月   通期業績修正(2011 年 9 月期の連結予想純利益△258 百万円を△155 百
              万円に増益)
2012 年 3 月    自己株式の取得 72 百万円。自己株式取得累計 238 百万円
2012 年 11 月   通期業績修正(2012 年 9 月期の連結予想純利益 372 百万円を 256 百万円
              に減益)
2012 年 12 月   エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社に対する第三者割当増資 637
              百万円、第三者割当による転換社債型新株予約権付社債 2,260 百万円
2013 年 11 月   通期業績修正(2013 年 9 月期の連結予想純利益 250 百万円を 41 百万円
              に減益)
2013 年 12 月   資本準備金 1,500 百万円をその他資本剰余金に振り替え
2014 年 11 月   通期業績修正(2014 年 9 月期の連結予想純利益 288 百万円を 229 百万円
              に減益)
2015 年 2 月    エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社による当社子会社化への検討
              開始の基本合意
2015 年 11 月   通期業績修正(2015 年 9 月期の連結予想純利益 257 百万円を△52 百万円
              に減益)
2015 年 12 月   エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社による当社子会社化への協議
              終了。資本・業務提携は継続。
              エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社に対する転換社 債型新株予約
              権付社債 2,260 百万円の償還のため、銀行から借入 2,400 百万円(西日本
              シティ 800 百万円、三井住友・福岡・三菱東京 UFJ 各 400 百万円、三菱
              UFJ 信託 300 百万円)
2016 年 4 月    自己株式公開買付 1,240 百万円(㈱梅野企画所有株式 520,000 株)
2016 年 6 月    西日本シティ及び福岡銀行から 6,000 百万円の資金借入(M&A 待機資金
              等)。2021 年 6 月 20 日返済期日。
2016 年 8 月    通期業績修正(2016 年 9 月期の連結予想純利益 81 百万円を 21 百万円に
              減益)




                                9
2016 年 10 月   株式会社梅の花 Service を株式会社梅の花サービス西日本(株式会社梅の
              花 Service から商号変更)と株式会社梅の花サービス東日本に分割。
              株式会社丸平商店、ヤマグチ水産株式会社、株式会社グッドマークトレ
              ーディングの株式取得(395 百万円)
2016 年 11 月   通期業績修正(2016 年 9 月期の連結予想純利益 21 百万円を 96 百万円に
              増益)。株式会社フジオフードシステムと資本業務提携。
2017 年 4 月    株式会社すし半をサトレストランシステムズ株式会社から 2,520 百万円
              で取得
2017 年 8 月    通期業績修正(2019 年 9 月期の連結予想純利益 17 百万円を 53 百万円に
              増益)
2017 年 11 月   通期業績修正(2017 年 9 月期の連結予想純利益 53 百万円を△414 百万円
              に減益)。514 百万円の減損損失計上。
2018 年 7 月    公募及び第三者割当増資手取概算 3,048 百万円(連結子会社への投融資
              1,311 百万円、生産設備・新規出店 806 百万円、短期借入金返済 931 百万
              円)
2018 年 8 月    京都セントラルキッチン竣工。投資額概算 3,100 百万円
2018 年 9 月    A 氏代表取締役会長兼 CEO、B 氏代表取締役社長兼 COO 異動
2018 年 11 月   通期業績修正(2018 年 9 月期の連結予想純利益 142 百万円を 10 百万円
              に減益)
2018 年 12 月   決算期変更(決算期末が 9 月 30 から 4 月 30 日)
2019 年 5 月    株式会社テラケン株式の 58%を AG 投資事業有限責任組合から取得


ウ    当社の業況
    当社は、レストラン「梅の花」を中心とする外食事業を運営する会社として
 発展してきた。居酒屋と高級和食店の中間に位置する業態がバブル期の好景気
 に乗って繁盛し、店舗数を増やしていったが、バブル崩壊後に外食産業全体が
 デフレに陥るようになったため、そのままの業態を踏襲することへの危機感が
 芽生え、外食だけでなく、中食や外販を含めた業態の多様化を模索するように
 なり、
   「梅の花plus」で中食を始めた後、2007年10月に価格帯が比較的低廉な株
 式会社古市庵の株式を取得し、さらに、物販事業の展開も開始した。
    また、外食においても「梅の花」より単価の低い「すし半」を取り込む等、
 M&Aを通じて、経営の多角化を行い、現在に至っている。


エ    資金事情等
    2008年9月期に古市庵買収にともなう資金調達を行い、当期の純有利子負債
 が114億円まで増加した。同時に連結売上高も大きく増加しているものの、売上


                            10
総利益率も下落している。
    この時期にリーマンショックが発生し、銀行から返済について厳しいプレッ
シャーを受け、当時は、民事再生手続の申立等法的倒産の適用の噂すら社外で
上がっていたほどであった。
    その後、2011年3月に公募及び第三者割当増資による27億円超の調達、2012年
12月にはエイチ・ツー・オー・リテイリングとの資本業務提携にともなう第三
者割当増資及び転換社債の発行による約29億円の調達等があり、2013年9月期
には47億円まで純有利子負債は減少したが、2017年9月期に西日本シティ銀行
及び福岡銀行から60億円の借入を実施している。当社は、これらの資金も用い
て、2016年10月に丸平商店グループ、2017年4月に株式会社すし半、2019年5月
には株式会社テラケンの買収を行っている。
    この結果、2019年4月期の純有利子負債は約136億円となっている。
    なお、後記(4)も参照されたい。


オ   組織体制
     本件不適切会計処理に関連する部署を中心に抜粋した 2018 年 9 月 30 日現
    在の当社の組織図は下記のとおりである。




                     11
(ア)業務分担
     本件不適切会計処理に関連する経理部経理課及び経営計画室の業務分掌並
 びに対象期間におけるそれぞれの責任者は次のとおりである。
 あ    経理部経理課
  ①         子会社の管理、指導に関する業務
  ②         決算及び税務申告に関する業務
  ③         財務諸表の作成に関する業務
  ④         会計、税務に関する業務
  ⑤         月次、四半期、年次決算に関する業務
  ⑥         帳票、証憑書類の整備保管に関する業務
  ⑦         金融情勢などの調査分析に関する業務
  ⑧         資金計画書の作成、資金の調達及び資金管理に関する業務
  ⑨         現預金の出納管理及び有価証券類の管理に関する業務
  ⑩         小切手、領収書の発行及び銀行届印の管理に関する業務
  ⑪         売掛金、立替金、仮払金等の債権管理に関する業務
  ⑫         預り金、未払費用等の債務管理に関する業務
  ⑬         店舗の経理指導に関する業務
  ⑭         関係会社の経理指導に関する業務
  ⑮         店舗の現預金の管理に関する業務
  ⑯         公認会計士監査に関する業務
  ⑰         税務申告調査に関する業務
  ⑱         銀行、証券会社、信販会社に関する業務
  ⑲         販売用ギフト券の管理に関する業務
  ⑳         その他経理に関する業務


 い    経営計画室
  ①         中長期経営計画、年度利益計画の立案及び作成に関する業務
  ②         全社予算統制に関する業務
      (i)    年度予算の分析及び進捗状況の管理
      (ii) 現状の問題提起及び助言
  ③         経営統計資料の収集及び作成に関する業務
  ④         ディスクロージャー(情報開示)、広報活動及びIR活動に関する業務
  ⑤         関係会社の管理に関する業務
  ⑥         その他社長特命事項に関する業務




                          12
 う   責任者
              経理部長                      経営計画室長
     2001.10.1~現職    C氏        2006.10.1~2010.9.30    E氏
                               2010.10.1~2013.9.30    C氏
                               2013.10.1~2015.11.23   E氏
                               2015.12.1~現職           D氏


(イ)モニタリング体制
     当社のモニタリング体制として、会計監査人の他に、内部監査室を設置し、
 内部監査を実施すると共に、監査等委員会を設置し、取締役の職務執行の組
 織的監査を実施している。


 あ    内部監査室
     内部監査室は、内部統制システム構築の基本方針に基づき、当社及びグル
  ープ会社への業務監査及び会計監査を実施し、コンプライアンス上のリス
  ク管理の継続的な内部監査を行う部署として設置されており、本社、関西及
  び関東に1名ずつの計3名の嘱託従業員で構成されている。
     また、各部門に評価対象プロセスから独立した立場の評価委員を置き、内
  部監査室の指示のもと、評価実施をサポートするものとされており、評価委
  員は内部監査室長、総務課長及び経理課長がそれぞれ兼任している。
     内部監査室は全社的な内部統制の他、決算・財務報告プロセス、販売業務
  プロセス、購買業務プロセス、在庫管理業務プロセス及びITに関する統制に
  ついてそれぞれモニタリングを行うこととされている。
     内部監査室がとりまとめた評価結果については、内部統制評価責任者で
  ある取締役執行役管理本部長が査閲する。財務諸表に重要な影響を与える
  もので、各業務プロセスレベルの対応ではなく、全社で取り組まなければな
  らないものや、システム関連の問題については、内部監査室にて是正措置の
  検討が必要なものを協議し、取締役執行役管理本部長が承認する。また、内
  部監査室は、期末に残存する不備について開示すべき重要な不備に当たる
  か否かを判定し、その結果は、取締役執行役管理本部長により承認されるも
  のとされている。


 い    監査等委員会
     監査等委員会は、常勤監査等委員1名及び非常勤の社外取締役3名から成
  る4名で構成されている。
     各監査等委員は、月に1回開催される定例取締役会及び臨時の取締役会に


                          13
           は原則として出席し、当社の経営状況等を把握していた。
              また、監査等委員会も原則として月に1回程度取締役会の前後に実施して
           いた。


          う   会計監査人
              本件不適切会計処理に関わる店舗減損会計導入時(2006年9月期決算)の
           当社会計監査人はみすず監査法人であったが、2007年9月期より現会計監査
           人である有限責任監査法人トーマツが継続的に会計監査を行っている。
              なお、未了である2019年4月期決算を除く全対象期間において、会計監査
           人からは無限定適正意見が付された監査報告書が提出されている。


    (2)当社の連結業績の推移
                                                                (単位:百万円)
          項目          2010/9       2011/9        2012/9       2013/9        2014/9
    売上高                 28,734       29,736        30,030       29,781         29,680
    営業利益                  578          703           511          377             698
    経常利益                  366          461           559          207             624
    当期純利益                 177        ▲155            256           42             230
    総資産                 18,329       19,181        18,157       19,003         19,884
    純資産                  3,454        6,011         5,989        6,648          6,878
    店舗数
    外食事業:梅の花               69              66         68           68              70
    外食事業:その他                   9           10             9        11              13
    TO事業 1:古市庵            134          138           136          133             132
    TO事業:梅の花他              26              38         43           47              46
    合計                    238          252           256          259             261


          項目          2015/9       2016/9        2017/9       2018/9        2019/4 2
    売上高                 29,411       29,399        31,395       32,648         19,500
    営業利益                  184          162           314          391             357
    経常利益                  119               61       268          271             300
    当期純利益                 ▲52               97     ▲415                11         185




1   TO 事業:テイクアウト事業。以下同じ。
2   2019 年 4 月期は決算期変更により 7 か月決算。以下同じ。


                                      14
総資産                21,160   26,819    28,422   30,637   30,478
純資産                 6,931    5,724     5,495    8,671    9,184
店舗数
外食事業:梅の花              71         72      75       75       77
外食事業:その他              15         13      25       27       28
TO事業:古市庵             133      133       131      127      127
TO事業:梅の花他             49         52      53       55       56
  合計                 268      270       284      284      288


【各年度における経営の動向等】
  年度                         経営の動向等
2010/9    販売強化策として、DMの徹底や顧客CTIシステムを利用した管理と対応
          を行い、顧客満足度の向上を図った。
          物流部門では、川崎物流センターと神埼物流センターを立ち上げ、社内
          在庫商品を圧縮し、管理費を削減した。
2011/9    東日本大震災の発生により、店舗の一時休止や計画停電による首都圏店
          舗の営業時間短縮に加え、消費マインドの冷え込みにより来客数が減少
          し、一時的に売上高及び営業利益に影響を及ぼしたが、通期では回復し
          た。
          資産除去債務会計基準の適用により当期純損失を計上した。
          新株式発行及び株式売出しにより純資産が2,741百万円増加した。
2012/9    財務体質の強化を目的として、投資を抑制し、有利子負債の圧縮 に努め
          た。
2013/9    物流コストの削減を目的として、佐賀県神埼市の物流センターを福岡県
          久留米市の久留米セントラルキッチン横に移転・併設した。
          11月にエイチ・ツー・オー リテイリング株式会社と資本・業務提携契約
          を締結し、新株式の発行により純資産が636百万円増加した。
2014/9    利益率向上策として、人件費の適正化、物流の見直し、広告宣伝費の抑
          制等に取り組みコスト削減に努めた。
2015/9    外食事業では、消費税増税時の値上げ影響で来店客数が減少し、売上高
          が減少した。
          店舗出店時の一時費用の増加、原材料の価格高騰による粗利益の悪化、
          物流センター移設による費用の増加により営業利益が減少した。
          店舗退店等に伴い固定資産除却費用等が発生したことにより当期純損失
          を計上した。



                            15
2016/9     熊本地震の発生による消費マインドの停滞に伴い、九州地区既存店売上
              が減少した。
           自己株式の取得により純資産額が1,240百万円減少した。
2017/9     ㈱すし半の完全子会社化により売上高が増加した。
           梅の花福井店等に係る減損損失の計上により当期純損失を計上してい
              る。
           期首に㈱丸平商店、ヤマグチ水産㈱、㈱グッドマークトレーディングの
              3社を完全子会社化し、4月に㈱すし半を完全子会社化した。
2018/9     大阪府北部地震、西日本豪雨、台風上陸等自然災害に伴う一部店舗の休
              業があったものの、㈱すし半子会社化の影響により通期に亘り売上高、
              営業利益が増加した。
           店舗退店等に伴い減損損失の計上等により当期純損失を計上した。
           新株式発行及び自己株式の処分により純資産が3,066百万円増加した。


 (3)当社の単体業績の推移
                                                               (単位:百万円)
         項目        2010/9        2011/9        2012/9         2013/9        2014/9
売上高                    11,443       11,388        11,356        11,433        11,283
営業利益                      116            249            59             82            55
経常利益                      101            265            52             16            84
当期純利益                       79           280            11            ▲1             41
総資産                    19,147       16,435        15,377        16,868        17,545
純資産                     4,461        7,453         7,186         7,795         7,802


         項目        2015/9        2016/9        2017/9        2018/9         2019/4
売上高                    11,485      11,625        11,982        12,584           7,695
営業利益                    ▲18               15            21      ▲80            ▲100
経常利益                        30            49            90      ▲47             ▲76
当期純利益                   ▲36           183         ▲76          ▲167                  77
総資産                    19,393      25,144        26,783        29,364          29,264
純資産                     7,933       6,828         6,930         9,945          10,380




                                    16
 (4)各年度における主要な投資及び資金調達の状況
    年度                       投資及び資金調達等の状況
2011 年 3 月    公募及び第三者割当増資 2,793 百万円
2012 年 3 月    自己株式の取得 72 百万円。自己株式取得累計 238 百万円
2012 年 12 月   エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社に対する第三者割当増資 637
              百万円、転換社債型新株予約権付社債 2,260 百万円を発行。
2015 年 12 月   エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社に対する転換社債型新株予約
              権付社債 2,260 百万円の償還のため、銀行借入 2,400 百万円(西日本シテ
              ィ 800 百万円、三井住友・福岡・三菱東京 UFJ 各 400 百万円、三菱 UFJ
              信託 300 百万円)
2016 年 4 月    自己株式公開買付 1,240 百万円(梅野企画所有株式 520,000 株)
2016 年 6 月    西日本シティ及び福岡銀行から 6,000 百万円の資金借入(M&A 待機資金
              等)。2021 年 6 月 20 日返済期日
2016 年 10 月   株式会社丸平商店、ヤマグチ水産株式会社、株式会社グッドマークトレ
              ーディングの株式取得(395 百万円)
2017 年 4 月    株式会社すし半をサトレストランシステムズ株式会社から 2,520 百万円
              で取得
2018 年 7 月    公募及び第三者割当増資 3,048 百万円(連結子会社への投融資 1,311 百万
              円、生産設備・新規出店 806 百万円、短期借入金返済 931 百万円)




                               17
2   本件不適切会計処理の内容
(1)固定資産の減損処理の概要
    ア    減損会計の制度概要
        固定資産の減損処理とは、収益性の低下により投資額の回収が見込めなく
    なった場合に、固定資産の帳簿価額と回収可能価額とを比較し、回収可能価
    額が帳簿価額を下回っている場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額す
    る会計処理をいう。
        固定資産の減損処理は、2005年4月1日以後開始する事業年度から適用され
    た「固定資産の減損に係る会計基準」(企業会計審議会が 2002年8月に公表)、
    及び企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」
    (企業会計審議会が2003年10月に公表)
                        (以下あわせて「固定資産の減損に係
    る会計基準等」という。)に準拠して実施される。固定資産の減損処理の主な
    流れは、以下のとおりである。


         ①固定資産のグルーピング


                               兆候なし        減
         ②減損の兆候の把握                         損
                                           不
                 兆候あり                      要
         ③減損損失の認識の判定
                              帳簿価額<将来 CF
                 帳簿価額>将来 CF

         ④減損損失の測定



         減損会計では、減損損失を認識するかどうかの判定と減損損失の測定にお
        いて行われる単位としての資産グループを決定する(以下「グルーピング」
        という。)。資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのキャッシ
        ュフローから概ね独立したキャッシュフローを生み出す最小の単位で行う。
        様々な事業を営む企業における資産のグルーピングの方法を一義的に示すこ
        とは困難であり、実務上は管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の単
        位等を考慮してグルーピングの方法を定めることになる。外食業界では、通
        常、店舗別に投資意思決定を行い、損益管理がなされていることから、1 店
        舗を 1 資産グループとすることが多く、同社においても、個別の「店舗」を
        減損損失の認識及び測定を行う単位である「資産グループ」としている。




                         18
イ    減損の兆候の把握
     減損の兆候とは、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す
    事象のことで、減損の兆候がある場合には、当該資産又は資産グループにつ
    いて、減損損失を認識するかどうかの判定を行う。
     「固定資産の減損に係る会計基準等」では、減損の兆候を示す事象の例示
    の一つとして、下記が挙げられている。
        資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又は
         キャッシュフローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、
         継続してマイナスとなる見込みであること


     ここで、「営業活動から生ずる損益」は、営業上の取引に関連して生ずる
    損益であり、これには、当該資産又は資産グループの減価償却費や本社費等
    の間接的に生ずる費用が含まれる。また、実務上管理会計上の損益区分に基
    づいて把握されることから、同社においては個別の店舗単位で把握されてい
    る。
     また「継続してマイナス」とは、おおむね過去 2 期がマイナスであったこ
    とを指す。例えば、前期と当期以降の見込が明らかにマイナスとなる場合な
    ども該当するものと考えられる。また、新規出店後まもない店舗については、
    出店後一定の期間の営業損益の実績が出店の意思決定時に策定した事業計画
    に照らして、著しい乖離があった場合、減損の兆候があると判定される。


     また、その他の減損の兆候を示す事象の例示として、店舗の閉店の意思決
    定の事実及び経営環境の著しい悪化の事実、並びに資産グループの市場価格
    が帳簿価額から 50%程度以上下落している事実等が認められる場合、減損の
    兆候があると判定される。
        資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該
         資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じ
         たか、あるいは、生ずる見込みであること
        資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が
         著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること
        資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したこと


     個別店舗単位の損益を算定する際には、個別店舗に帰属する直接費及び全
    社費用等の間接費が含められる。間接費については費用の性質に応じて、売
    上高・人員数等の合理的な配賦基準により、関連する各個別店舗へ配賦され
    る。


                    19
     主な直接費 及び間接 費 の内訳及び 主要な間 接 費の配賦基 準につい て は下
    記のとおりである。


    (主な直接費及び間接費の内訳)
             主な直接費            主な間接費等
      売上原価(材料費等)          本部人件費
      店舗人件費               本社減価償却費
      店舗減価償却費             セントラルキッチン損益
      店舗光熱水道費        等    (以下「CK損益」という。)
                          購買物流費     等


    (主要な間接費の配賦基準)
      主要な間接費等             配賦基準
      本部人件費      店舗売上高及び店舗人員数
      本部減価償却費    店舗売上高及び店舗人員数
      CK損益       店舗売上原価
      購買物流費      店舗売上原価




ウ    認識・測定
(ア)減損損失の認識
     兆候判定の結果、減損の兆候ありと判定された店舗について、減損損失の
    認識判定を行い、店舗から得られる割引前将来キャッシュフローの総額が店
    舗の固定資産の帳簿価額を下回る場合に減損損失を認識する。
     ここで、割引前将来キャッシュフローの見積にあたっては以下の内容を考
    慮している。


(イ)割引前将来キャッシュフロー
    将来キャッシュフローの見積もりに際しては、取締役会等の承認を得た中
 長期計画、経営環境など外部要因に関する情報や予算等の内部情報を参照す
 ることが通常である。しかしながら、本調査には遡及修正という性質がある
 ため、2019 年 4 月期までは実績数値を使用し、2020 年 4 月期以降については
 2014 年 9 月期から 2018 年 9 月期の 5 年間の実績に基づく平均キャッシュフ
 ローを使用する。2019 年 4 月期については、決算日の変更を行っており、会
 計期間が 7 カ月となること、単純に 12/7 倍にする年換算を行った場合も、12



                         20
  月の繁忙期等の季節変動の影響を排除できず、キャッシュフローが実態より
  良化する可能性があるため、2019 年 4 月期は平均キャッシュフローには使用
  しないこととしている。
      割引前将来キャッシュフローは店舗ごとに、営業損益+減価償却費-設備
  投資(実績の固定資産増加額)で算定するものとする。


 (ウ)主要な資産
      主要な資産は、キャッシュフロー生成にとって重要な構成資産であるもの
  として、原則として、店舗は建物及び構築物とし、物販店は固定資産グルー
  プすべて(主に器具備品(ショーケース等)とそれに付随する建物附属設備)
  とする。


 (エ)残存耐用年数期間のキャッシュフロー
       残存耐用年数は、主要な資産について、固定資産台帳における取得日から
      対象期までの経過月数から耐用年数(月数)を控除し、それを店舗ごとに加
      重平均して算定する。


 (オ)減損損失の測定
       減損損失を認識すべきであると判定された店舗について、店舗の固定資産
      の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を特別損失として減損損
      失を計上する。当社では、償却資産については回収可能性をゼロ、非償却資
      産は時価を回収可能価額としている。


  エ    過去の減損実績
       当社の減損処理に関する実績の推移と主要な内容は以下のとおりである。
                                                        (単位:百万円)
      項目         2010/9     2011/9       2012/9       2013/9       2014/9
【連結損益計算書項目】
減損損失                  21             3        30           29           56
店舗閉鎖損失                17             -            -            -        20
【連結貸借対照表項目】
有形無形固定資産           12,978     13,188       12,429       12,793       13,369


      項目         2015/9     2016/9       2017/9       2018/9       2019/4
【連結損益計算書項目】




                             21
 減損損失                   2         77     515       73      168
 店舗閉鎖損失                35         21       3         -        -
 【連結貸借対照表項目】
 有形無形 固定資産          14,394   14,276    16,822   18,826   19,133


【各年度における店舗減損の状況等】
  年度                              店舗減損の状況等
 2010/9    新宿髙島屋6百万円、川崎ラゾーナ4百万円、恵比寿三越3百万円他を減損処理。
 2011/9    仙台セルバ 3 百万円を減損処理。
 2012/9    チャイナ西の丘23百万円他を減損処理。
 2013/9    おしとり西の丘19百万円他を減損処理。
 2014/9    花小梅お茶の水ワテラス 53 百万円を減損処理。
 2015/9    横手(土地)1 百万円を減損処理。
 2016/9    ラミート 67 百万円、チャイナチャイナ 7 百万円を減損処理。
 2017/9    六角庵70百万円、青山店54百万円、福井店311百万円、春日店71百万円を減損処理。
           有形無形固定資産は、2017年9月期は丸平、すし半の子会社化により簿価が増加した。
 2018/9    姫路店35百万円、西梅田27百万円、古市庵千葉ペリエ8百万円を減損処理。
           2018年9月期における有形無形固定資産の増加 は京都CKの新設及び新規出店による
           もの
 2019/4    大阪工場関連94百万円、食のつむぎささしま49百万円を減損処理。


 (2)減損会計にかかる本件不適切会計処理の認定
     ア     発覚の経緯
           本件不適切会計処理は、2019 年 4 月期の監査の過程において、会計監査人
          の指摘により発覚した。
           当社では、各期の決算手続の中で減損の兆候の有無を判定するため「店舗
          別損益」を作成し会計監査人に提示をしている。2019 年 4 月期の監査におい
          て、会計監査人は、当社から受領した「店舗別損益」を確認する際、少額の
          黒字となっている店舗が多数存在している点に疑義を抱くに至った。
           そこで会計監査人の担当者が「店舗別損益」の根拠資料である「減損の兆
          候シート」について改めて検算したところ、本社費、本部費等の配賦計算の
          基礎となる間接費(CK 利益や購買物流費等)金額が財務会計数値と一致し
          ないこと、配賦基準(店舗売上高や店舗人員数)に従って算出されるべき数
          値の一部が実態とは異なる数値で修正入力されていること等の異常が発見さ




                             22
    れ、減損回避のための不正な操作が行われたのではないかとの疑念が生じる
    こととなった。


イ    経理操作の実態
(ア)経理操作の主体
     「店舗別損益」及び「減損の兆候シート」は、当社経営計画室の F 氏が作
    成を担当していた。F 氏は、上記会計監査人の指摘に対し、赤字店舗を減ら
    す目的で間接費の配賦計算の不正操作を行っていたことを認めた。なお、
                                    「減
    損の兆候シート」の様式は F 氏の前任である E 氏により作成され、2009 年 9
    月期から使用されていた。F 氏は、経営計画室に異動になった 2010 年頃、前
    任である E 氏から当該資料の作成方法について引き継ぎを受けていた。


(イ)減損会計に関する職務分掌
     経営計画室の本来的業務は店舗別予算の作成及び進捗管理であったが、減
    損会計における業務フローにおいて店舗別損益情報が基礎資料となる関係で、
    経理・決算業務の一部である減損会計関連資料の作成が経営計画室の職務と
    されていた。F 氏は 2010 年に経営計画室に配属されて以降現在に至るまで、
    経営計画室の本来的業務を行う傍ら、減損会計に関する資料作成についても
    分担していた。


(ウ)「店舗別損益」及び「減損の兆候シート」作成フロー
     当社における部門別(店舗別及び間接部門別)損益に関する基礎情報は、
    基幹業務システム GLOVIA(以下「GLOVIA」という。)から出力される。
    GLOVIA には、各店舗からのレジ情報、給与システムの人事関連情報、購買
    システムにおける購買情報等が、夜間バッジで集計されている。
     「減損の兆候シート」が作成される際、まず、富士通(GLOVIA のシステ
    ムベンダー)作成のマクロ・プログラムにより、GLOVIA の出力データがエ
    クセルシートにダウンロードされ、配賦前店舗別・部門別損益数値が作成さ
    れる。
     その後、一旦、社内基準に従った正規の配賦計算が行われ、実態に基づく
    「減損の兆候シート」が作成されるが、この時点では、減損の兆候判定の対
    象となる店舗数が多数になるため、対象店舗を減少させる目的で、本社費等
    の配賦計算についての不正操作が検討されることになる。
     不正操作は、本社費等配賦後で営業赤字となった店舗について、配賦金額
    (間接費又は配賦基準)を修正し営業黒字とする形で実施される。 当社の配
    賦計算方法は M&A による事業拡大及びグループ内組織再編の実行等の内部


                     23
     環境の変化に伴って年々複雑化しており、経営実態に合わせて間接費集計区
     分・配賦基準は構造的に階層化されていた。さらに各階層間の論理的な連関
     はスプレッドシートの関数(「IF 関数」、「SUMIF 関数」等)が複雑に組み
     合わされて記述されており、正確性の検証のためには、スプレッドシートの
     操作に知見を有する者によるシート解析を行う必要があった。
       こうした複雑な計算構造を背景に、不正操作は慎重な配慮とともに実行さ
     れた。具体的には、多重化された計算構造の最下層に存在する配賦割合算定
     基礎数値を本来あるべき数値よりも減額し、特定の店舗に対する配賦金額を
     故意に減額させる操作が確認されている。ただし、配賦金額の修正方法につ
     いては決まったやり方があるわけでなく、様々な調整が試行錯誤的に実行さ
     れていた。
       こうした操作が行なわれた結果、2 期連続営業損失により減損の兆候判定
     に該当することになった店舗数が実態よりも減少した状態で最終の「店舗別
     損益」及び「減損の兆候シート」が確定し会計監査人に提出されることにな
     った。F 氏により作成された「不正操作後対象店舗数」と本調査により明ら
     かとなった「実態対象店舗」の比較結果は下記のとおりであり、多くの店舗
     が減損の兆候判定から意図的に除外された結果となっている。




                                                        (単位:店)
             項目         2010/9    2011/9   2012/9   2013/9   2014/9
    ① 不正操作後対象店舗数 3           46       35       33       30       38
    ② 実態対象店舗数   4           117      102      108      104       96
    ③ 差異(②-①)                71       67       75       74       58


             項目         2015/9    2016/9   2017/9   2018/9   2019/4
    ① 不正操作後対象店舗数             50       63       48       54       49
    ② 実態対象店舗数                89      113      113      119      116
    ③ 差異(②-①)                39       50       65       65       67




3 会社から会計監査人に提示された各期の「減損の兆候シート」において、 2 期連続営業損失を計
上している店舗数。以下同じ。
4 今回の調査により再計算した各期の「減損の兆候シート」において、 2 期連続営業損失を計上し

ている店舗数(催事等除く)。以下同じ。


                       24
ウ    修正方針及び修正概要
     本件不適切会計処理は、2009 年 9 月期から使用された「減損の兆候シート」
    の不正操作によるものであり、本委員会では、当初、2009 年 9 月期以降の期
    間を対象として、本件不適切会計処理の影響金額算定を検討した。しかしな
    がら、当社の運用ではデータ保存期間が 10 年とされているため、2009 年 9
    月期の影響金額を試算するための基礎的な情報がすでに廃棄されていること
    が判明した。こうした物理的な制約を考慮して合理的な試算が可能な影響額
    算定期間の始期を 2010 年 9 月期とすることとした。
     本調査では、前記不正操作の内容を把握・検討した上で、当社の実態をよ
    り正確に表現する配賦基準、配賦計算を検討し、減損の兆候の再判定を行っ
    た。当該再判定の結果、減損の兆候ありと判定された店舗に関しては、当社
    が従前から採用していた基準、手法に本委員会の見解を加味して、減損の認
    識、測定計算を実施している。




                     25
      エ    修正金額
           本調査の結果、修正がすべき金額として算定された連結財務諸表に与える
          影響金額は以下のとおりである。
                                                             (単位:百万円)
           勘定科目     2010/9        2011/9       2012/9        2013/9        2014/9
      【連結損益計算書上の修正金額】
      減損損失               413            246             64        113               44
      減価償却費                  -          ▲60        ▲68           ▲72           ▲79
      固定資産除売却損               -           ▲1        ▲11            ▲4            ▲1
      【連結貸借対照表上の修正金額】
      有形固定資産等          ▲405           ▲457        ▲439          ▲474          ▲408
      閉店損失引当金            ▲7                7             -             -             -


      勘定科目            2015/9          2016/9     2017/9        2018/9        2019/4
      【連結損益計算書上の修正金額】
      減損損失               148            256         172               45      1,335
      減価償却費             ▲75             ▲84        ▲85           ▲87           ▲47
      固定資産除売却損           ▲6              ▲2         ▲0            ▲2                 -
      【連結貸借対照表上の修正金額】
      有形固定資産等          ▲461           ▲630        ▲715          ▲671        ▲1,958


    (3)減損損失に関する不適切な会計処理を修正することにより、派生して修正が
          必要になる事項
      本調査の結果、減損損失に関する修正結果は上記のとおりであるが、当該修正
     に伴って、個別財務諸表における関係会社投融資の評価及び繰延税金資産の回収
     可能性等派生的な修正事項が生ずることになる。ただし、当該派生的修正事項は、
     本調査の目的に直接的な関連を有しないことから本報告書では記載対象としてい
     ない。


    (4)その他の不適切な会計処理
      当委員会では、当社及びその他対象子法人について裁量的発生高分析及び M-
     Score 分析 5を実施し、不正の兆候の有無について検討を行ったが、問題となる事
     項は発見されなかった。



5   大城直人「不正会計の早期発見に関する海外調査・研究報告書」2014 年 8 月


                                 26
   3    本件不適切会計処理の当社連結財務諸表への影響
   減損損失に関する修正及びかかる修正に伴い、影響額は以下のとおりである。
                                                                      (単位:百万円)
           項目               2010/9       2011/9       2012/9       2013/9       2014/9
売上高                                  -            -            -            -             -
営業利益                                 -          62         70           72               73
経常利益                                 -          62         70           72               72
親会 社 株 主に 帰 属 する 当 期 純利 益     ▲355          ▲85            39         ▲32                79
純資産合計                         ▲355         ▲440         ▲401         ▲433         ▲368


           項目               2015/9       2016/9       2017/9       2018/9       2019/4
売上高                                  -            -            -            -             -
営業利益                             85             85         86           88           69
経常利益                             85             85         86           88               69
親会 社 株 主に 帰 属 する 当 期 純利 益      ▲32         ▲172          ▲86            33       ▲1,166
純資産合計                         ▲401         ▲573         ▲659         ▲626        ▲1,792




   4    本件不適切会計処理の関連事情及び本件不適切会計処理に至る経緯
        当委員会が、関係者に対するヒアリング、各種議事録等の開示書類の検討、デ
     ジタル・フォレンジックの結果、ホットラインによる情報提供、公開情報等を通
     じて認定した本件不適切会計処理に関連する事情、経緯等は以下のとおりである。
   (1)社内業務分担とモニタリング体制
       ア     業務分担
              当社の業務分掌規程には、店舗減損処理に関する業務を行う部署について、
           明確に規定されていないところ、決算業務に関する業務は経理部経理課の分
           掌業務として記載がされており、現に決算業務の大部分及び会計監査人との
           調整連絡窓口は経理部経理課が担当していた。
              もっとも、実務上、店舗減損に関する資料の作成や会計監査への対応につ
           いては経営計画室が、固定資産の会計処理については総務部総務課が、それ
           ぞれ担当していた実態がある。
              このうち固定資産の会計処理については、2013 年までは経理部経理課の業
           務であったが、当該処理の担当者が総務部総務課へ異動するタイミングで経
           理部経理課に人員補充がされなかったといった事情から担当者が総務部総務




                                           27
    課に異動後も同課において業務を行うとの見直しがされており、事実上業務
    分掌の一部が変更されている。
     店舗減損の処理についても、減損判定に必要な利益計画策定業務との親和
    性は認められるものの、当該業務を担える人材が経営計画室にしかいないと
    の理由から事実上経営計画室が担当することとなっていた。
     なお、経理課担当者は、会計監査人との調整連絡窓口業務は担うものの、
    店舗減損の内容について経営計画室と協議や確認をすることはなかった。
     このことから、社内規程上は、決算処理は一次的には経理課の職務であり、
    固定資産についてはその取得及び処分に係る事務作業を総務部総務課が反映
    し、店舗減損についてはその判定に必要となる利益計画策定等の業務を経営
    計画室が補助する業務分担が想定されていると考えられる。
     しかし、実際は、属人的な業務分担がなされており、部門単位で明確に業
    務分担及び責任を配分する体制がとられていなかったと認められる。


イ   内部監査
     ヒアリングによれば、内部監査室の実質的な業務は各店舗に往査しての業
    務フローのチェックと現金の取扱確認に留まっていたとのことである。
     内部統制評価の報告書は書類ベースでの確認に終始しており、所定の書類
    が整備されていることを確認して作成されている。
     また、内部統制の評価結果を査閲する内部統制評価責任者は取締役執行役
    管理本部長とされているが、管理本部長は経理部長及び人事総務部長を兼務
    しており、経理部門、総務部門と管理本部、内部監査の実務上の責任者を1人
    が兼任している状態となっていた。


ウ   監査等委員会
     監査等委員会は主に業務監査を行っており、近年は常勤の監査等委員を中
    心に社内規程類の実態との乖離を整合させるための見直しを進めていた。
     監査等委員としては、会計監査は基本的に会計監査人が担っていると認識
    しており、年に1回、会計監査人からの監査計画及び監査結果の報告を受け、
    当該報告内容の確認を行っていた。


エ   会計監査人
     会計監査人は、決算月の中旬を目安に当社と決算打合せを行い、当該年度
    に問題となり得る決算上の論点等を整理した上で、個別に往査を実施し監査
    業務を行っている。
     また、会計監査人は、毎年度の会計監査における重点監査事項として「固


                     28
     定資産の減損処理の妥当性」を挙げており、当該監査事項には店舗減損に対
     する監査も含まれていた。たとえば、2018年9月期決算に係る監査結果報告書
     においては、
          「減損会計適用に関するポリシーの確認、減損判定関連の基礎資
     料(スプレッドシート)のロジック及び計算式の検討並びに基礎データとの
     照合、減損の兆候の判定表入手及び判定の妥当性の検討(中略)を実施しま
     した」との記載が認められる。


(2)本件不適切会計処理に至る経緯
 ア   本件不適切会計処理の開始
     本件不適切会計処理は、2009年9月期決算において、当時の経営計画室長であ
 ったE氏により初めて行われた。


 (ア)開始時期の認定と操作の概要
      当委員会が2008年9月期以前に本件不適切会計処理が行われていなかった
     と判断した理由(及び2009年9月期に本件不適切会計処理が始められたと判断
     した理由)は、2008年9月期以前には、店舗減損業務はE氏と当時経営計画室
     係長であったG氏の2名で行っていたところ、G氏は、不適切な処理は行わず
     に減損兆候シートを作成し、会計監査人に提出していたと述べており、現に、
     2006年9月期決算や2008年9月期決算では相当程度の店舗減損実績が存在した
     こと、E氏自身も、初めて本件不適切会計処理を行ったときに、G氏の関与は
     なく、自身が単独で店舗減損処理を担当していたと記憶していると述べてい
     ること、実際にも、2009年9月期において本件不適切会計処理が行われた痕跡
     が下記のとおり認められたことによる。
      2009年9月期決算において、会計監査人に提出された資料では営業損失店舗
     数は135店となっているが、本調査による是正後の兆候判定シート上の営業損
     失店舗数は173店となり、赤字店舗が拡大する結果となっている。遡及修正と
     いう調査制約があるため、本件不適切会計処理の影響排除のみが上記の営業
     損失店舗数の拡大要因となった訳ではなく、依拠するデータ・計算方法の違
     い(本調査では保存期間を経過し廃棄されたデータについては合理的な代替
     手段を採用しているし、配賦計算手法について当委員会としてより適切な手
     法と判断した場合、過去の計算方法を変更している部分がある。)が拡大要
     因に含まれてはいるものの、本件不適切会計処理によって営業損失店舗数が
     減少した可能性は否定しえない。
      なお、本調査では、2009年9月期の数値については、2010年9月期の減損兆
     候判定を行うための前提資料として店舗別営業損益数値のみを補正対象とし
     ている。前述のとおり、2009年9月期の減損損失金額を試算するための基礎的


                      29
 な情報の多くは廃棄済みとなってしまっているため、本調査において合理的
 な試算が可能な影響額算定期間の始期は2010年9月期としている。


(イ)本件不適切会計処理の開始の背景と契機
  当時当社専務であったB氏は2009年9月期決算にあたって、前年度に大きな
 赤字決算を行ったこともあり、2期連続で巨額の赤字となることは免れたいと
 の意向を示していた。その背景事情として、本件不適切会計処理を開始した
 当時の当社は、2007年10月の古市庵買収にともなう金融負債の増加、2008年
 9月期の連結当期純損失20億円超の計上に加え、2009年9月期の決算もリーマ
 ンショックによる景気後退及び営業外費用の計上によってV字回復とはいか
 なかったため、日本政策金融公庫からの借入によって前年の危機的状況は既
 に脱していたものの、前年に銀行から「貸し剥がし」を受けた直後でありい
 まだ銀行への不信感が強く、赤字決算となった場合の銀行対応への警戒感が
 あったものと考えられる。
  一方、会計監査人との店舗減損にかかる協議においては、「固定資産の減
 損に係る会計基準等」が導入されて数年経過したこともあって、判定基準や
 利益計画が厳正に捉えられるようになり、減損兆候のある店舗におけるその
 後の利益計画に関して、会計監査人から利益計画の実現可能性及び当社作成
 に係る次年度以降の事業計画との整合性についても精査され、減損処理不要
 と判断されるためには合理的かつ具体的な根拠を示すことが必要と なりつつ
 あった。
  そのような状況下でE氏が2009年9月期の減損兆候対象店舗を試算したとこ
 ろ、想定よりも多数の対象店舗が存在することが判明した。E氏は、当初、巨
 額の赤字決算を免れるため監査上許容される範囲において損失発生を抑制し
 たいというB氏の意向を受け、可能な限り店舗減損が少額となるよう作業を
 進めていたところ、2010年9月期の事業計画を保守的に作成していたことから、
 多数に上った減損兆候対象店舗のすべてに利益が増加する利益計画を作成す
 ると全体の事業計画において見込む来期の利益を超えてしまうという矛盾が
 生じざるを得ない状況となった。当時は、銀行から強い返済圧力を受けた直
 後で、一般従業員さえも当社の存続を危ぶむような状況にあったことから、
 E氏においても、巨額赤字を免れたいというB氏の意向に沿って何とか減損金
 額が少額となるよう、やむを得ず、本社経費の配賦を調整して対象店舗を減
 らしたり、赤字幅を少なくしたりするという本件不適切会計処理に及んだ。


(ウ)B 氏の関与の有無
  E氏は、本件不適切会計処理を実行するにあたって、あらかじめB氏に各店


                 30
舗の損益状況を報告して、上記のとおり、減損を避けることが困難な状況で
あることを相談したと記憶しており、かつ、その報告の際、減損兆候を調整
して会計監査人と協議したい旨B氏に伝えたことを記憶していると述べるが、
さらに踏み込んで、当該調整の具体的方法・内容等について詳細に説明・報
告し、又は、相談したことまでは記憶していないとのことである。E氏は、か
かる相談・報告を経て、B氏の了解を得たものと考え、本件不適切会計処理を
実行に移した。
 これに対して、B氏は、E氏が2009年当時に上記のような相談・報告を行っ
たと説明していることについて、当時の職掌や業務執行状況に照らし、E氏が
そのような説明をしているのであれば、かかる相談・報告を受けたのであろ
う、としてその可能性を否定しないものの、その相談・報告の内容等につい
ては全く記憶していない。ただ、B氏は、自ら進んで本件不適切会計処理を行
うよう指示したことを否定するのはもちろん、E氏から本件不適切会計処理
を行う旨の相談・報告を受けたと仮定して、これを了承したであろう可能性
を完全に否定する。
 そのため、減損兆候の調整につき了承を得たものと考えたE氏の認識と、不
適切な処理を行うと知らされれば了承することはないとする B氏の認識とに
齟齬が生じている。
 E氏は、本件不適切会計処理について説明する意図があったとしても、本社
経費の配賦を恣意的に調整するといった操作の具体的内容や、当該操作の前
後で各店舗の損益や減損兆候対象店舗数がどのように変化するかといった詳
細までは言及しなかった可能性が高く、E氏に物事を明確には表現しない傾
向があったこと(ヒアリング時においてもE氏に同様の傾向がうかがわれた)
も認められる一方で、B氏においては、E氏が、店舗減損処理について苦労し
ている状況はあるものの、何らかの手を尽くして減損が生じないよう特段の
努力を払う旨を報告したものと受け取ったものと認められる。このようにB
氏にはE氏が意図していた本件不適切会計処理の「不適切性」に関する部分が
正確に伝わっていなかったことが両者の認識に齟齬が生じた原因と考えられ
る。
 すなわち、B氏としては、E氏から店舗減損処理に関して苦境に立たされて
いる旨の状況を知らされたものの、あくまでE氏が会計監査人と協議して、会
計監査人からの了解が得られる範囲内で可能な限り対処する旨の報告である
と理解して、当該対処につき了解したものと考えられ、一方、E氏は、これを
自らが意図する調整に対する「了承」と受け取ったものとも考えられる。B氏
としては、「会計監査人との協議を通じて理解を得た上での減損処理」とい
う決算の前提作業については当然のことと考えていたため、特にかかる正当


               31
    な手続を踏むようE氏に明示しなかったとしても不思議ではなく、他方、E氏
    の意図していた調整については、具体的にその方法、内容、会計ルールとの
    適合性の有無等をB氏が確認しなかったことから、E氏は、B氏がこれらをす
    べて理解して了解したものと解釈して、本件不適切会計処理に及んだ可能性
    が否定できない。
     B氏は、E氏からの相談・報告を受けた時点で、その内容をより具体的かつ
    詳細に聞き取っていれば、E氏が意図する会計処理が不適切なものであるこ
    とを知ることができ、あるいは、E氏と会計監査人とのやり取りの内容を具体
    的に把握し、どのような協議を行ったかを確認していれば、E氏による本件不
    適切会計処理に気付き得たにもかかわらず、これを怠ったとの落ち度は指摘
    されるべきであるものの、本件不適切会計処理の事実を認識していたとまで
    認められるかというと、これを認めるに足る証拠は確認できなかった。
     そして、実際に、E氏が本件不適切会計処理を行った減損兆候シートを会計
    監査人に提出して協議に臨んだところ、配賦に関する操作の指摘を受けるこ
    となく、操作後の数値を前提に会計監査人と協議して減損を回避することが
    できた。その結果、B氏は、本件不適切会計処理の内容を確認する機会のない
    まま、E氏が実施した対処が会計監査人にも認められるもので、それによって
    減損が生じなかったものと認識・理解したものと考えられ、他方、E氏も、そ
    の後、これを正すことなく、後述するF氏への引継ぎを行うこととなった。


(エ)組織的関与の有無
     当委員会は、その他の当社取締役及び従業員も含めた組織的関与について
    も調査を行ったが、後述のとおり、本件不適切会計処理は、基礎データとの
    照合や再計算等の検証作業を行うことで発見しうるもので、本件不適切会計
    処理開始時においては特に複雑な作業を行っているとは考えられないところ、
    そのような露見し得る処理を、組織的に検討・計画して行っていたとはおよ
    そ考え難いことから、本件不適切会計処理の開始時にE氏以外に当該処理を
    認識していた役職員はいなかったものと認められる。


イ   本件不適切会計処理の継続
    その後、2010年9月期以降も2019年4月期決算において会計監査人から指摘を
受けるまで本件不適切会計処理は継続的に行われていた。
    当初の店舗減損処理の担当者であったE氏は2010年8月1日に経営計画室係長
として異動してきたF氏に減損兆候シートの作成を含む店舗減損処理業務につ
いて引継ぎを行い、自らは同年10月1日に内部監査室室長に異動している。この
際、本件不適切会計処理である本社経費の配賦調整についてもその具体的手法


                    32
を含めF氏に引継ぎを行っている。E氏の後任として2010年10月1日に経営計画
室長に就任したC氏に対して、E氏が本件不適切会計処理を引き継いだ事実は認
められなかったものの、C氏自身は減損についてはできるだけ減らす方針を有
していた。なお、B氏は、当社の業績が一時陥っていた危機を脱したうえ、もと
もと経営においてはキャッシュフローを重視し、店舗の存続に関しては専ら閉
店するか否かに関心を寄せていたことから、C氏が経営計画室長に就任して以
降は、積極的に店舗減損処理に関わることはなくなり、2011年9月期以降、店舗
減損に関する実質的な判断は経理も担当するC氏に任せるようになっていた。
また、店舗減損の実行についてはC氏が実質的に判断し、最終決裁をB氏に求め
ていたが、B氏がそれに対して具体的検証を求めたり、意見したりしたことはな
く、決裁は形式的なものであったと認められる。それ以外にC氏又はF氏がB氏
に店舗減損の具体的処理について報告や相談を行っていた証跡は認められない。
B氏も、本件不適切会計処理を認識していなかったことから、店舗減損処理への
関心もなかった。
 このように、F氏はE氏からの引継ぎを受けて継続的に本件不適切会計処理を
行っていたと認められる。その背景には、E氏の後任であるC氏からのできる限
り減損を少額としたいという意向がある一方で、店舗減損処理業務の軽視によ
る経理課のチェック不足、会計監査人による看過といった状況の継続が認めら
れる。なお、かかる状況は本件不適切会計処理が発覚する2019年4月期決算の時
期まで存在していたものと考えられる。
 F氏はたびたび決算には直接関係しない営業担当者に対して、店舗減損処理
に関連して利益計画策定を依頼するメールにおいて「他にも減損兆候店舗はあ
ったものの調整している」との趣旨の記載をしているものの、メールを受け取
った従業員は「調整」の内容について、特段の関心を払うこともなく、不適切
なものとも考えず、放置された状態が継続することとなっていた。
 このようにF氏のメールには減損兆候を調整していることを示唆している記
載が認められるものの、明確な本件不適切会計処理についての経営陣又は上司
からの指示を受けて行ったものであるとまでの言及はされていない。F氏は、決
算業務の責任者であるC氏から店舗減損に関する方針(可能な限り店舗減損は
出さない)について指示を受けていたが、その指示が本件不適切会計処理を行
ってでも減損は避けなければならないとの意味を含む指示であったとまでは考
えられない。その他、利害関係のない第三者による文書やメール、供述、会議
体の議事録及び報告書等において経営陣又は上司が明示又は黙示にF氏に対し
て本件不適切会計処理を指示していたことを示唆する証拠も認められなかった。
 以上のとおり、2011年9月期以降、当社から本件不適切会計処理に関する指示
があったと認めるに足る証拠はなく、F氏は、E氏からの引継ぎ及び当社の減損


                 33
 金額を可能な限り少額としたいという方針を通じて本件不適切会計処理の実施
 を当社の指示と解して継続していたものと考えられる。
     なお、経理課長であり、会計監査人との調整連絡窓口となっているG氏は、2
 015年ないし2016年頃には店舗減損の処理に関して何らかの操作がされている
 のではないかとの違和感は持っていたとのことである。しかし、自らの担当外
 の業務に積極的に関わることを避けていたことから、具体的な不正操作の内容
 について調査や報告をすることはなかった。
     このように決算業務の担当者である経理課長が決算処理に違和感を持ってい
 たとしても、他部署業務であれば関与を避けていたことは、当社においてセク
 ショナリズムと担当外業務への無関心が蔓延していた証左といえる。このこと
 は、経理課に限るものではなく、F氏が利益計画の提出を求めていた営業担当者
 に関しても店舗減損処理自体を軽視していた傾向があり、同様にF氏が行って
 いる「調整」に関心を払わず、人員不足や業務多忙を理由に積極的な関与を避
 けようとしていたことが認められる。


(3)経営陣の関与の有無
 ア   A 氏の関与
     A氏は、本件不適切会計処理への関与を否定している。
     A氏は、当社の創業者であり、2018年9月までは社長の役職にもあり、当社の
 経営全般を担う責任者であった。
     ところが、A氏は店舗運営やサービスについての関心は強かったものの、財務
 会計に関する知見はあまりなく、数字面は従来からB氏(現社長)に任せていた
 ことが認められる。また、近年は自身の健康状態の悪化も重なり、 当社の経営
 についてはB氏から、又は取締役会で報告を受けるにとどまり、当社の経営に積
 極的に関与していない状況にあった。
     以上のことからすると、A氏が本件不適切会計処理を指示したとはいえず、そ
 の事実を認識していたとも認められない。


 イ   B 氏の関与
     B氏は、本件不適切会計処理を指示したことや本件不適切会計処理の認識が
 あったことを否定している。
     B氏は2001年に入社して以降、当社の実質的な経営判断の中核を担っており、
 2018年9月に社長に就任する以前から事実上の社長とみなされていた。当社の財
 務状況についても相当な詳細にわたって把握しており、少なくとも本件不適切
 会計処理が開始された2009年には2期連続の大幅な赤字は免れたいとの意向を
 示していたことは認められる。


                    34
    既に認定したとおり、E氏は、本件不適切会計処理の開始にあたって、店舗減
損を避けることが難しいことについてB氏に相談しており、B氏は、同年の減損
処理に関して、E氏が会計監査人との協議において何らかの対処をする旨の報
告を受けていた。しかし、B氏が、本件不適切会計処理の方法、内容、会計ルー
ルとの適合性等について具体的にE氏から説明を受けたり、自ら確認したりし
ていた形跡は見受けられず、本件不適切会計処理を認識していたとは認められ
ない。
    ただ、B氏は、E氏からの相談・報告に対して店舗減損の対処方針を具体的に
確認していれば、本件不適切会計処理を知り得たのであり、本件不適切会計処
理を知っていれば、その実行を未然に防ぎ又は早期に是正する立場にいたこと
は明らかである。また、E氏に対して明確に会計ルールを遵守すること、会計監
査人ときちんと協議して対処することなどを指示していれば、E氏も本件不適
切会計処理の実行には至らなかった可能性が高い。しかし、実際には、B氏は、
かかる確認や指示を怠ったため、本件不適切会計処理を把握できず、店舗減損
処理の担当がE氏からF氏に交代して以降は、店舗減損に関する実質的な判断を
C氏が担うこととなったこともあり、B氏がその事実を把握しないまま本件不適
切会計処理が漫然と継続されることとなった。
    以上のことからすると、B氏が本件不適切会計処理を指示したと認めるに足
る証拠はなく、また、B氏が本件不適切会計処理の事実を認識していたとまでは
認められない。しかし、本件不適切会計処理の開始時において大幅な赤字を免
れるようにとのB氏の意向がE氏による本件不適切会計処理の実行に影響を及
ぼしたことは否定できないうえ、E氏からの相談・報告を受けた際、E氏が行お
うとしている対処の具体的内容や手法を確認していれば、本件不適切会計処理
が実行に移されようとしていることを把握し、かつ、自らがその実行を制止し
得る立場にあったにもかかわらず、これを怠ったため、漫然と本件不適切会計
処理が実行され、その後10年以上にわたる本件不適切会計処理の継続という結
果を招いたものと言わざるを得ない。


ウ   C 氏の関与
    C氏は本件不適切会計処理の指示や認識を否定している。
    C氏は、管理本部長、人事総務部長及び経理部長を兼任しており、2010年10月
から2015年12月までは経営計画室長も兼任していた。また、内部統制評価責任
者も担当している。2017年4月以降はすし半の代表取締役にも就任している。
    決算に関する業務は経理部経理課の職掌であり、C氏は店舗減損を含む決算
処理の責任者の立場にあった。
    また、C氏は、従業員に対して、損益が厳しく減損のおそれがある店舗におい


                    35
て業績改善のための対策を求めるなど可能な限り減損処理が必要とならないよ
う対応する意向を有していた。しかし、会計監査人から減損対象候補として指
摘を受けていない店舗であっても、自らの判断で業績の回復が見通せないとし
て減損を指示することがある一方で、減損兆候のある店舗については F氏に一
任して利益計画を作成して可能な限り減損処理が必要とならないよう対応する
ように指示するだけで具体的な減損兆候シートの作成や利益計画の策定につい
ては無関心であるなど、店舗減損処理ルールに基づく減損処理を軽視していた
ことが認められる。
    以上のことからすると、C氏が本件不適切会計処理を指示したと認めるに足
る証拠はない。また、C氏が本件不適切会計処理の事実を認識していたとまでは
認められない。しかし、決算処理の責任者であるにもかかわらず、F氏の業務に
ついて軽視又は関与に消極的な姿勢が認められ、減損処理を少額としたいとい
う企業風土を醸成し、各従業員にプレッシャーを与える結果となっていた点で、
本件不適切会計処理について間接的な影響を及ぼしたことは否定できない。


エ   D 氏の関与
    D氏は、本件不適切会計処理への関与を否定している。
    D氏は当社とエイチ・ツー・オーリテイリング株式会社との資本業務提携をき
っかけに2013年に経営計画室部長として当社に出向し、2015年12月にはE氏の
後任として取締役執行役経営計画室長に就任している。当社においては主に予
算策定等に関与しており、F氏の直属の上長である。しかし、本件不適切会計処
理の発覚以前はF氏が店舗減損業務に従事していることすら認識しておらず(そ
のこと自体が職責を果たせていないという意味での問題は有するものの)、F氏
においても、当該業務についてはC氏が責任者であると認識していた。
    また、2017年10月には古市庵代表取締役COOに就任以降は、古市庵の社長と
して大阪での業務が中心になっている。
    以上のことからすると、D氏は、本件不適切会計処理に関与していないし、そ
の事実を認識していたとも認められない。


オ   その他の役員関与
    その他の取締役及び執行役についても、対象期間における退任者も含め、本
件不適切会計処理の認識及び同処理への関与を否定している。
    また、上記で個別に検討したA氏、B氏、C氏及びD氏を除く取締役及び執行役
(退任者を含む。 は当社の決算業務に直接関与していないものと考えられる。
        )
    取締役会は原則として月1回開催しており、取締役及び監査等委員はこれに出
席しているが、取締役会は業績報告が主たる内容となっていた。また、四半期


                    36
 ごとの取締役会には製造本部長又は子会社社長として執行役も出席していたが、
 同様に業績報告が主たる内容となっていたと認められる。
     以上のことからすると、他の役員が本件不適切会計処理の事実を認識してい
 たとは認められない。


 カ   小括
     以上のとおりであり、本件不適切会計処理について当社の役員による組織的
 関与があった事実は認められない。


(4)モニタリングの実施状況
 ア   内部監査室によるモニタリングの実施状況
     内部監査室の主な役割はレストランや物販店などの現場における業務遂行や
 現金取扱の不正を防止することと考えられており、本社業務の監査や会計監査
 は書類チェックのみを行うものとなっていた。
     本社業務の内部監査に関しては業務範囲ではあるものの、実体的な監査は行
 われていなかったと言わざるを得ない。


 イ   監査等委員会の監査の状況
     監査等委員会は、取締役の職務の執行の監査が主な業務ではあるものの、会
 計監査人及び内部監査室と連携し、業務執行に対する実効的かつ効率的な監査
 を実行することが期待されている。しかし、会計監査は会計監査人、現場監査
 は内部監査室というような役割分担の意識から、結果として能働的な連携が行
 われていたとは認められない。
     2018年9月期には、監査等委員会が注視すべき監査項目として「営業店舗の減
 損会計適用に関わる事項と出店等の投資回収に関する事項」を挙げているもの
 の、具体的な業務としては会計監査人と当社担当者間のやり取りを確認するに
 とどまっていた。


 ウ   会計監査人による監査の状況
     会計監査人は、本社経費の配賦計算を含む店舗減損の判定にかかる当社のル
 ールを把握していたのであるから、監査重点を利益計画に絞るのではなく、E氏
 又はF氏から提供を受けた減損兆候シートについて、本社経費の総額、各店舗の
 損益等のデータを全件検算し異常点を識別した上で、E氏又はF氏に計算シート
 の提供を求める等して、証憑突合・帳簿突合を含む実在性の検証手続を精査と
 して実施していれば、本件不適切会計処理が開始されてから間もない段階で、
 同不適切処理を発見できた可能性があったことは否めない。


                     37
 よって、会計監査人において、監査上のリスク判断及び手続選択について問
題がなかったとは言えない(なお、F氏は、遅くとも2013年9月期以降は、会計
監査人に対して減損兆候判定シートをその計算シートとともに提出しているた
め、本件不適切会計処理を発見できた可能性はより高まっていたとも考えられ
るが、他方、ここ数年間は、減損兆候判定シートに係る計算式及びスプレッド
シートの構造が複雑となり、複数の計算シートを参照して店舗別損益が構成さ
れていたため、会計監査人が正確な検証を行うためには相当の工数が必要とな
っていた。 。
     )




                38
第4   原因に関する考察
 1   本件不適切会計処理を生じさせた要因
 (1)取締役会の監督機能の低下によるガバナンス不全
      創業者である A 氏を引き継いだ B 氏はオーナー経営脱却を図るため強い指
     導力を発揮していた。B 氏の強いリーダーシップは、社内改革を進める原動力
     となっていた反面、業務執行の監督を行う機関としての取締役会の監督機能の
     低下を招いていたものと考えられる。取締役会の監督機能の低下は、性悪説に
     基づく業務執行の監視・監督体制の欠如をもたらし、個々の役職員のコンプラ
     イアンス意識の低下を伴ってガバナンス機能の不全につながっていった。本件
     不適切会計処理は、E 氏が始め、F 氏がそれを引き継いで長期間同様に行って
     いたものであるが、その背景には、B 氏以外の役職員において B 氏の意向や問
     題意識に答えようとする傾向が強く、B 氏が特段問題提起しない又は重視しな
     いであろう点について積極的に具申する役職員がいないなど、B 氏の影響力の
     大きさに比して組織的に経営判断及び業務執行を性悪説の観点から監視及び抑
     止する体制が欠如していた事実が認められる。


 (2)各店舗の業績低迷
      2009年9月期の本件不適切会計処理が開始された頃、当社は、大規模なM&Aの
     実施とこれにともなう借入金返済圧力が高まっており、さらにリーマンショッ
     クによる景気後退の影響も受けて、買収後の子会社の業績改善が想定通りに進
     まず、既存店の売上も停滞したことで、当社全体の売上総利益率が低迷し、赤
     字店舗数が予想以上に多くなっていたにもかかわらず、各店舗の利益計画を描
     くことが困難な状況に陥っていた。また、このような当社の業況を受けて、従
     業員も当社の先行きに不安と懸念を持つようになり、これにB氏からの2期連続
     の大幅赤字を免れたいという意向が重なったことで、E氏としては本件不適切会
     計処理を選択せざるを得なかったことが一要因であったと推察される。


 (3)事業の急拡大に伴う部門間・会社間牽制機能の喪失
      当社は、子会社買収や店舗の新規開店により事業を拡大しており、子会社買
     収後に親会社に間接部門を集約したこと等によって本社における 業務量が増加
     し、業態の多様化による業務の複雑化も進んでいたにもかかわらず、関係会社
     管理機能を含む本社管理部門の人材育成が追い付いていなかった。
      また、業績改善を目的として本社の管理部門の人材を子会社の取締役に就任
     させているが、本社業務と兼任出向としているため、本社業務に対して十分な
     監督が果たせなくなっていった。




                       39
  さらに、1 人で複数の部門・役職を兼務することが常態化し、たとえば C 氏
 は管理本部長、経理部部長、人事総務部長、内部統制評価責任者を兼務してい
 る他、子会社 3 社の取締役を兼務している。
  このように、事業拡大により業務量が増加したにもかかわらず、 管理部門の
 人材育成が追い付かず、十分な人員配置ができなかった結果、管理職が 1 人で
 複数の部門・役職を兼務することを常態化させ、部門間での牽制機能を喪失さ
 せたものであり、本件不適切会計処理を助長した要因の一つであると言わざる
 を得ない。


(4)運営実態における業務分担及び業務手順が不明瞭であること
  当社の組織・業務分掌等に関する社内規程は整備されており、一見すれば組
 織間の業務分担及び責任は明確になっている。
  しかしながら、当社の事業規模が拡大し、決算処理を含む各種手続が複雑化
 する中で、それに対応できる人材が確保・育成されていなかった。本件不適切
 会計処理に関わる店舗減損処理も本来は経理部経理課の担当業務というべきと
 ころ、経営計画室が作成した利益計画等を確認することができる責任者が経理
 課に存在しなかったことで、経理課は店舗減損処理を経営計画室の担当業務と
 みなしている一方で、経営計画室長である D 氏は当該業務を行っているとの認
 識を有しておらず、責任の所在が曖昧になっていた。
  このように、属人的な業務の割り振りが、部門単位での監督によるガバナン
 スを困難とする事態を招いており、運営実態において部門間の業務分担及び業
 務手順が適切に整理されていなかったことが、本件不適切会計処理が長期間継
 続した要因の一つであると言わざるを得ない。


(5)業務チェック体制の欠如
  運営実態において業務分担及び業務手順が不明瞭となったこともあり、経理
 担当者が確認することなく、決算資料が会計監査人に提出されているなど、不
 正を組織的に防止するための複層的なチェック体制が欠如してい た。
  また、管理本部長が人事総務部長と経理部長を兼任しており、本来、人事総
 務部と経理部を監督すべき管理本部にその機能が期待できなかったこと、内部
 監査室は店舗等の現場における現金管理・衛生管理に関する社内ルールの監査
 に時間を割いており管理部門の法令遵守をチェックする役割を果たしていなか
 ったことが指摘できる。
  このような基本的な社内チェック体制の欠如と組織間の牽制機能の不備が、
 本件不適切会計処理を可能にし、助長した要因の一つであると指摘せざるを得
 ない。


                  40
(6)自浄作用の不全、コンプライアンス意識の欠如
        当社経営陣が、キャッシュフローを重視する経営指標を打ち出していたため、
    キャッシュに影響を与えない会計上の減損への関心が薄かったことに加え、業
    績回復の見込めない店舗は自ら退店又は減損の判断をしており、かかる判断に
    含まれない減損兆候対象店舗については会計監査人に利益計画を提示した上で
    減損の要否を交渉すればいいといった、店舗減損処理を交渉事とする傾向があ
    った。
        また、従業員においても、他部署の業務に対する関心が薄く、「他部署できち
    んとやっているはず」という楽観的な姿勢が存在していた。また、他部署での
    不正の兆候に気付いたとしても、担当外の業務に積極的に関与して余計な仕事
    を引き受けると本来の業務が回らないため、意図的に指摘や調査を行わないと
    いう組織内のセクショナリズムが広がっていた。
        このように、セクショナリズムから来る自浄作用の不全とコンプライアンス
    意識の欠如が、本件不適切会計処理を助長した要因の一つであると言わざるを
    得ない。


2   経営陣の責任
(1)総論
        当社は創業者である A 氏、A 氏を引き継いでオーナー企業脱却に向けて強い
    リーダーシップを発揮した B 氏が、他の取締役に対してそれぞれの担当業務に
    関する指揮命令をする体制をとっており、取締役会の監視機能が低下していた。
        A 氏及び B 氏以外の取締役は、自らが担当する部署以外の業務に無関心で、
    他部署の業務執行に関しても意見しないセクショナリズムというべき風潮があ
    り、そのような経営陣の態度が従業員に対しても同様の企業風土を醸成する基
    盤となった可能性がある。
        しかしながら、各取締役は会社に対して善管注意義務及び忠実義務を負って
    おり、本件不適正会計処理が担当者によって巧妙に経営陣から隠匿されていた
    事情も窺われない中では、すべての取締役に、その職務に応じた監督責任があ
    ることは否定できない。
        このことは取締役の業務執行を監督すべき立場にある監査等委員において
    も同様である。


(2)各論
    ア   B 氏の責任
        B氏には、2018年9月に社長に就任する以前から、人事及び経営について全般


                       41
的な決裁判断権があった。実際に、B氏は、各店舗の退店について実質的な判断
を行っており、銀行対応も行っていることから決算処理についても強い関心を
有していた。しかも、E氏、C氏とともに2006年9月期の店舗減損処理導入時には
本社費配賦ルールの策定に関与しており、減損兆候の判定を含む店舗減損ルー
ルについても理解があった。ただし、その後も毎年度決算において店舗減損処
理に積極的に関与していたわけではなく、基本的にはE氏やC氏などの担当者に
任せ、相談があれば受けるといった関与に留まっていた。
 既に認定したとおり、B氏は、E氏による本件不適切会計処理の開始