7519 J-五洋インテ 2020-03-04 16:00:00
調査委員会からの調査報告書受領に関するお知らせ [pdf]

                                               2020 年 3 月 4 日
 各     位
                                会 社 名    五洋インテックス株式会社
                                代表者名     代表取締役社長 梅野 拓実
                                    (JASDAQ・コード 7519)
                                問合せ先
                                役職・氏名 社長室 内藤 有紀子
                                電   話 03-6281-9861


           調査委員会からの調査報告書受領に関するお知らせ

 当社は、2020年1月15日付「調査委員会設置に関するお知らせ」で開示しましたとおり、監査
法人のレビューが未了にもかかわらず、2020年3月期第2四半期報告書を東海財務局へ提出し、か
つ、その事実について適時に開示しなかった等の不適切な行為が行われたことから、当社と利害
関係を有しない外部の専門家から構成される調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。
 本日、調査委員会より調査報告書を受領いたしましたので、下記のとおりお知らせいたしま
す。



                            記


1.調査委員会の調査概要及び調査結果
   調査委員会の調査概要及び調査結果につきましては、添付の「調査報告書(開示版)
                                        」をご
  参照ください。
   また、本報告書においては、個人情報および機密情報保護の観点から、一部該当する箇所
  につきましては、匿名化または秘匿化としておりますことをご了承ください。


2.再発防止策の実施
    当社は、本件の責任の所在を明確にするため 2020 年 2 月 13 日付(その後、2020 年 2 月
  14 日に開示を一部訂正)
              「代表取締役の異動に関するお知らせ」にて開示しましたとおり代
  表取締役が宮原雄一から梅野拓実に交代しております。
    「調査報告書」に記載された調査委員会の再発防止策に係る提言を真摯に受け止め、早急
  に再発防止策を策定いたします。具体的な再発防止策につきましては、決定次第改めてお知
  らせいたします。

      株主及び投資家の皆様をはじめ、関係者の皆様に御迷惑をおかけしておりますことを深く
     お詫びいたします。

                                                    以     上
    調査報告書(開示版)




     令和 2 年 3 月 4 日


五洋インテックス株式会社          調査委員会
                                                                目          次
   調査報告書 ...................................................................................................................................... 2
第 1 調査に至る経緯 ........................................................................................................................3
第 2 調査の概要 ................................................................................................................................3
   1.     当委員会の構成 ...................................................................................................................... 3
   2.     調査及び本報告書の目的 ...................................................................................................... 3
   3.     調査の方法 .............................................................................................................................. 3
        (1)     資料検討............................................................................................................................4
        (2)     関係者からのヒアリング ................................................................................................4
   4.     調査の限界及び前提...............................................................................................................4
第 3 調査結果 ....................................................................................................................................5
   1.     本件に関する事実関係の確認 .............................................................................................. 5
   2.     本件が生じた根本的な原因の特定 .................................................................................... 14
        (1)     コンプライアンス軽視の企業風土 ..............................................................................14
        (2)     社内の人材不足.............................................................................................................. 14
        (3)     監査法人との連携体制の欠如 ......................................................................................15
   3.     再発防止策の提言 ................................................................................................................ 15
        (1)     コンプライアンスを重視するためのコーポレート・ガバナンスの確立 ..............15
        (2)     人材不足の解消.............................................................................................................. 16
        (3)     監査法人とのコミュニケーション ..............................................................................18




                                                                       1
                                       令和 2 年 3 月 4 日
五洋インテックス株式会社   御中


                           五洋インテックス株式会社調査委員会


                           委員長     菊    池    哲    史




                           委   員   藤    村    厚    夫




                           委   員   名    井    博    明




                           委   員   戸    田    裕    典




                    調査報告書

 今般、五洋インテックス株式会社調査委員会(以下「当委員会」という)は、五洋インテ
ックス株式会社(以下「対象会社」という)から調査依頼のあった、監査法人の四半期レビ
ューが未了にもかかわらず、2020 年 3 月期第 2 四半期報告書を東海財務局へ提出し、かつ、
その事実について適時に開示しなかった等の不適切な行為につき、事実関係等を調査した
ので、その結果を下記のとおり報告する。




                       2
                         記
第1        調査に至る経緯
 対象会社は、日本取引所自主規制法人から 2019 年 12 月 23 日付及び同月 26 日付「会社
情報関係事項照会書(有価証券上場規程第 415 条 1 項に基づく照会書)と題する書面を受
領したため、同法人に対し、同書面記載の回答及び資料提出を行った。
 日本取引所自主規制法人は、上記回答及び資料提出を受けて、対象会社に対し、監査法人
の四半期レビューが未了にもかかわらず、2020 年 3 月期第 2 四半期報告書を東海財務局へ
提出し、かつ、その事実について適時に開示しなかった等の不適切な行為(以下「該当行為」
という)に関する事実等の追加報告を求めた。
 対象会社は、直ちに当委員会を設置し、当委員会に対し、該当行為に関する事実関係等の
調査を委嘱し、2020 年 1 月 15 日、当委員会の設置を IR ニュースとして開示した。
 当委員会は、対象会社からの上記委嘱を受けて調査を開始した。


第2        調査の概要


     1.    当委員会の構成
 当委員会の委員は、以下のとおり、外部専門家である公認会計士、弁護士及び対象会社の
社外取締役、社外監査役で構成される。
 委員長:公認会計士 菊池哲史(菊池哲史公認会計事務所)
 委 員:弁 護 士 藤村厚夫(藤村法律事務所)
 委 員:社外取締役 名井博明
 委 員:社外監査役 戸田裕典


     2.    調査及び本報告書の目的
 当委員会は、該当行為に関して、以下の事項を目的としている。
 a 本件に関する事実関係の確認
 b 本件が生じた根本的な原因の特定
 c 再発防止策の提言
 d その他、当委員会が必要と定めた事項
 本報告書は、該当行為の概要及び該当行為に至った原因について調査報告し、再発防止策
を提言するものである。


     3.    調査の方法
 当委員会は、以下の方法による調査を行った(以下、当委員会による調査を「本件調査」
という)
   。

                         3
          (1) 資料検討
 当委員会は、本件調査の目的を達成するため、2020 年 3 月期第 2 四半期報告書提出にあ
たって開催された 2019 年 11 月 8 日から訂正報告書が提出された同年 12 月 5 日までの対象
会社と監査法人及び対象会社内でのやり取りを示すメールその他の関連資料等の収集、分
析及び検討を行った。


          (2) 関係者からのヒアリング
 当委員会は、上記(1)の資料検討により、本件各取引についてヒアリングを行うべき人物
を選定し、協力を要請したところ、最終的に、以下の人物(敬称略)に対して、ヒアリング
を実施することができた。


〈ヒアリング実施者〉
No.        氏名               役職等            実施日
 1          甲         対象会社元代表取締役社長     2020 年 2 月 10 日
 2          乙         監査法人A統括代表社員      2020 年 2 月 12 日
 3          丙           監査法人A社員        2020 年 2 月 12 日
 4          丁           監査法人A社員        2020 年 2 月 12 日
 5          戊         対象会社元内部監査室長      2020 年 2 月 19 日
 6          己         対象会社元管理本部部長      2020 年 2 月 21 日
 7          庚        対象会社元インテリア事業部部長   2020 年 2 月 25 日
 8          辛           対象会社従業員        2020 年 2 月 25 日


     4.   調査の限界及び前提
 本報告書は、2020 年 3 月 4 日現在、当委員会が取得している情報に基づいて作成されて
いるが、本件調査には、任意調査によることの限界や、時間的制約が存在した。
 また、本件調査は、対象会社からの委嘱を受けて行われたものであり、調査報告は対象会
社に対して行われたものである。このため、本件調査の結果は、第三者に依拠されることを
予定しておらず、いかなる意味においても、当委員会は第三者に対して責任を負わない。
 本件調査は、上記 3 の方法により実施したものであり、それ以外の方法による調査は実施
していない。また、上記 3 の方法により得られた情報以外の情報をもって、検証を行ってい
ない。




                              4
第3        調査結果
     1.    本件に関する事実関係の確認
           (1)    対象会社は、JASDAQ に上場する主にカーテンを中心とした室内装飾品の
                 卸売販売事業を行っており、全国に 7 か所の事業拠点を有する。
                  対象会社の人員構成は、2020 年 1 月 1 日現在、代表取締役を含め取締役 4
                 名(うち社外取締役 2 名)
                              、監査役3名(うち社外監査役2名)、正社員42名
                 (退職予定者5名を含む)
                            、嘱託社員5名(退職予定者 1 名を含む) 業務委託
                                                、
                 7名、パート社員17名、派遣社員2名である。
           (2)    2019 年 11 月 8 日
                  対象会社は、2020 年 3 月期第 2 四半期報告を行うため、2019 年 11 月 8 日
                 に、監査法人Aと経営者ディスカッションを行った。
                  同日用いた監査法人A作成にかかる「経営者ディスカッション資料」「1.
                 2020 年 3 月期 2Q レビュー結果」に関し、
                 ○結論の表明が出来ない状況です。
                 ○追記情報
                  ・継続企業の前提:四半期レビュー報告書上は強調事項の記載を予定してお
                 ります。
                  ・正当な理由による会計方針の変更:該当なし。
                  ・重要な後発事象:現在検討中です。
                  ・重要な偶発事象:該当なし。
                  ・レビューした財務諸表の表示とその他記載内容との重要な相違 現在レビ
                                               :
                 ューを実施しております。
                 ○会計監査人の意見表明にかかる審査の状況及び結果:審査日は未定です。
                 ○四半期報告書に関する事項:継続企業の前提に関する注記の検討を予定し
                 ております。
                 ○内部統制の不備等:監査人が会計処理を判断するための情報や資料が適時
                 に入手できない状況です。社内で適時に、適切な階層に情報共有が行われる体
                 制構築をお願い致します。なお、内部統制の目的を達成するための基本要素に
                 情報と伝達が揚げられております。内部統制の目的を達成するための基本要
                 素の機能を欠くことが無いようにお願いします。
                  目的
                   ①業務の有効性及び効率性
                   ②財務報告の信頼性
                   ③事業活動に関する法令等の遵守
                   ④資産の保全

                                    5
       基本要素
          ① 統制環境
          ② リスクの評価と対応
          ③ 統制活動
          ④ 情報と伝達
          ⑤ モニタリング
          ⑥ IT への対応
      との記載がある。
       ただし、仮に 2019 年 11 月 14 日までにレビューが完了しなかった場合の延
      期については、対象会社に 11 月 8 日の経営者ディスカッション時に言ったこ
      とと 11 月 13 日にメールで伝えた程度で、口頭で強く言ったことはない(丙ヒ
      アリング結果)
            。
       また、同日午前 9 時 04 分の当時インテリア事業部部長である庚から各役員
      らに、取締役会の日程を 11 月 13 日午後 4 時の開催とするメールがある。
(3)    2019 年 11 月 13 日
       2019 年 11 月 13 日午後 4 時から、対象会社本店 2 階会議室において、定時
      取締役会が開かれ、第 2 四半期決算短信開示について決議された(定時取締
      役会議事録)。
       これに先立ち、       「本日の短信 IR の決議の件」
              庚が各役員らに、               として送付し
      たメールには、
            「監査法人の四半期レビューの最終結果待ちの状況です。「監
                                      」
      査法人の最終結果がもらえていないので、東証へは投げられません。」との記
      述がある。
(4)    2019 年 11 月 14 日
       庚は、2019 年 11 月 14 日午前 10 時 40 分頃、第 2 四半期報告書及び確認書
      を EDINET へ提出し、その旨を、午前 10 時 48 分、社内メールで各役員らに
      伝えた。なお、庚は、提出前に監査法人A社員の丙に電話したが通じなかった
      とするが、丙は、受けていないとする(庚及び丙のヒアリング結果)
                                    。
       庚は、同日午後 2 時頃、四半期報告書を紙ベースで印刷するに当たり、両面
      印刷で良いかを確認するために、監査法人A社員の壬に電話した際、
                                    「午前中
      に出しちゃったよ」と壬に言うと、壬に「何でですか」と言われたので、
                                      「何
      で出しちゃいけないの」と逆に壬に聞いたところ壬から、当時代表取締役の甲
      と当時管理本部部長の己からまだレビューに必要な書類が出ておらず、レビ
      ューが未了である旨を告げられた。また、その際、EDINET へアップしても何
      とかなると聞いたと壬に伝えると、壬から「じゃあ下げて下さい」と言われた
      (庚ヒアリング結果)。なお、丙によれば、レビューが完了する前に EDINET

                          6
      へ提出されたら困るので、庚にアナウンスをしようと壬の方に伝えたところ、
      壬が EDINET を見たらもう出ているということで、即座に庚に取下げを要求
      したとのことであった(丙ヒアリング結果)
                         。
       庚は、壬との電話が終わって直ぐに、甲と己に電話をし、必要資料を早く監
      査法人へ送るよう要請した(庚ヒアリング結果)
                           。
       一方、己は、14 日は、自己の会社の事務所内でゴーイングコンサーン(以
      下、
       「GC」という)にかかる資料(資金繰り表等)の作成途上にあったため、
      庚の EDINET へ提出した旨のメールを見て、あれっと思ったが、そのまま監
      査法人の壬の修正依頼に応じ作業を続けていた(己ヒアリング結果、14 日午
      後 1 時 21 分及び午後 1 時 49 分のメール)
                                 。その後、庚からの電話を受け、午
      後 4 時半くらいに作業を終えた(己ヒアリング結果、14 日午後 4 時 14 分及び
      午後 4 時 41 分のメール) ただし、
                     。     己は、庚がレビュー未了のまま EDINET へ
      提出したこと自体に対する問題意識はなく、監査法人から当日中にレビュー
      報告書が貰えれば問題はないとの認識だった(己ヒアリング結果)。
       同日午後 9 時 01 分、監査法人Aの癸から 11 月 15 日付経営者確認書が己宛
          続けて午後 9 時 42 分に内容は同一で日付のみ 11 月 14 日に
      送付され、                                   「更新」
      (癸メール本文ママ)した経営者確認書が送られてきた。
       これについて監査法人Aとしては、癸に経営者確認書を事前に対象会社に
      確認してもらう意味で、日付を入れずに送ってくれと言っていたところ、日付
      を入れて送ってしまったのではないか(乙ヒアリング結果)、癸は経営者確認
      書の作成のみで、継続企業の前提については関わっていなかったため、監査事
      務が遅れているとの認識が彼にはなく、彼の認識としては 14 日で回すという
      ことだったと思う(丙ヒアリング結果)との認識を示している。
       一方、対象会社としては、11 月 14 日付経営者確認書が来たときに、レビュ
      ーが完了し、同日付のレビュー報告書が貰えるものと思ってか、皆が、来たね
      と言って喜んでいた。自分も何となくの知識しか無かったが一連の流れから
      してこれで無事に終わったと思った(己ヒアリング結果)。
(5)    2019 年 11 月 15 日
       2019 年 11 月 15 日は、午前 10 時 54 分に、庚から役員らに対し、コーポレ
      ート・ガバナンスに関する報告書の提出に関する社内メールがある。また、
      2019 年 11 月 15 日午前 11 時 13 分に庚から監査法人A各位宛大変お世話にな
      ったとのメールがあり、これに対して壬から庚に対し、返礼のメールが 2019
      年 11 月 15 日午後 12 時 42 分に来ている。
       その後、2019 年 11 月 15 日午後 7 時 50 分に、監査法人A社員の丁から対象
           B
      会社の甲、 取締役、  C
                己、 監査役及び庚宛に、①GC に関する事項として「継

                           7
      続企業の前提が成立しているかどうかの検討が完了していない②当方がレビ
      ュー報告書を発行する前の 11 月 14 日に四半期報告書が提出されている。四
      半期報告書は、当方の押印済四半期レビュー報告書の日付以降に EDINET へ
      提出して戴く必要がある。この点、当方の社員会で監査契約の継続に影響する
      ほどの大きな問題となっている。 月 14 日に提出された四半期報告書につい
                     11
      ては、訂正報告書の提出が必要になる。当方が四半期レビュー報告書を御社に
      提出したら、訂正報告書の提出をお願いする、との内容のメールがある。
       このメールを送った理由につき、丙によれば、11 月 14 日に経営者確認書の
      やり取りがあったため、これは紛らわしいからいかんよということがあって、
      11 月 15 日に(監査法人の)社員が集まって即座にメールを送ろうという話に
      なったとのことであった(丙ヒアリング結果)
                          。また、乙によれば、日にちは
      定かではないとしつつ、どうするかこうするかという話はあったが、やっぱり
      バックデートはだめだよね、という話は実際社内で検討したが、きちんと時間
      軸に従って対象会社から出てきた資料を基に審査を実施し、それをもとに監
      査証明を出していくということで社内はまとまっていた。ただし、対象会社に
      は、確定的なことは何もお伝えしていない、とのことであった(乙ヒアリン
      グ)
       。
       これに対し、対象会社側では、甲は、11 月 15 日、丁からのメールが来る前
      に、乙に電話して 11 月 14 日付で出せますかと聞いたら「検討します」との答
      えだった、とする(甲ヒアリング結果)。己は、経営者確認書が送られてきた
      ときにレビューも完了したという認識だったので、丁のメールを見てどうい
      うことなんだと思った。ただ、この段階では、己は、訂正報告書の意味が全く
      分かっていなかった(己ヒアリング結果)。
(6)    2019 年 11 月 19 日
       2019 年 11 月 19 日(火)午後 7 時 23 分、己は、丁に対し、①如何なる GC
      上の懸念点が討議対象なのか、②貴事務所からの四半期報告書をお待ちしま
      す、とのメールを送っている。
       このメールにつき己は、土日で訂正報告書のことを色々と勉強し、知り合い
      からも、それはまずいよと言われたことと、丁からのメールに何も返答しない
      のはまずいと思ったから、としている。この時まで甲から何も無かったので、
      打っときますよと言って、自分の判断で送信した。ただ、いずれ甲が乙に会う
      と聞いていたので、当たり障りのない内容になったとのことである(己ヒアリ
      ング結果)
          。
(7)    2019 年 11 月 21 日
       2019 年 11 月 21 日午前 11 時、甲は、監査法人A事務所を訪問し、乙(電話

                          8
スピーカ)
    、丙、D、丁と面談を持った。
 乙によれば、
      「検討する」と言ったことは記憶にない。甲には訂正報告書を
出して下さいと言った。その際、会社が全て悪いとは言いません、我々と会社
の間でいろいろな齟齬があったと、必要があれば東証にも説明に参りますと、
だから早く出して下さいと。出すのが遅れれば遅れるほど、大変なことになり
ますよと、そういうお伝え方をした(乙ヒアリング結果)。
 丙によれば、同じようにレビュー未了のままで四半期報告書を提出してし
まった事例を甲に示し、こういう形で出して下さいと言った(丙ヒアリング結
果)
 。
 己によれば、21 日は、自分は別のコンサル先に行っているときに甲から電
話が入り、大変だと言われた。しかし甲の説明がよく分からず、分かりません
よと言ったら、電話を丙に渡したらしく、自分は直接丙と話した。丙は、取り
敢えず3つの事例ファイルを送るので、それを参考にして訂正報告書を作成
するようにと言われた(己ヒアリング結果)
                   。
 2020 年 11 月 21 日午前 11 時 24 分の丙から己への事例を添付したメールが
ある。
 己は、直ぐに自分のオフィスに戻り、訂正報告書を作ってみたが、これで良
いかどうか分からなかったので庚にメールで送り、庚が JASDAQ のロゴを付
けてくれたりして、午前中ギリギリで作成は終わった。次に東証に連絡をしな
ければならないと思ったが、甲からの指示はなかった。その後、甲に出さなく
て良くなったんですねと聞いた記憶がある。 あんなに切迫した感じで作れ
                    朝、
と言っていたのに意外だった(己ヒアリング結果)
                      。
 甲によれば、21 日にAに行ったときは、事例を出してこんな感じで訂正報
告書を出してくれと言われた。そこから己に電話して、訂正報告書を作れと指
示した。ただ、出すことは大きな話なので役員会議、経営会議を開こうと。経
営会議で GO サインが出たら、取締役会で決裁しようと思っていた(甲ヒアリ
ング結果)
    。
 甲によれば、自分は素人なので、経営会議とか取締役会で皆の意見を聞いて
正しい答えを得ようとしていただけで、訂正報告書を出さなかったことに何
ら意図はない(甲ヒアリング結果)
               。
 甲は、
   「20191121 A訪問メモ」を対象会社従業員の辛に口述して作成してお
り、その内容は、
       「本日、貴法人からの依頼により、訪問をいたしました(甲)
四半期報告書の開示に向け、これまで随時、提示すべき資料や手順等を相談し
てきた(甲)レビュー報告書の日付の変更で、訂正報告書の提出をするのはレ
アなケースと認識している(甲)11/14 付のレビュー報告書はあくまで出さな

                  9
       い、と丙様からは言われているが、乙様からは日付を変更する余地ありのよう
       な回答もいただいており、混乱している(甲)結局、貴法人としてどうするの
       か、回答を頂きたい。
                (甲)→結果、Aからの回答待ちとなった。
                                   」というもの
       である。
        その後、丙は、甲に対し、午後 4 時 26 分のメールで、資料「●●」を徴求
       するとともに訂正報告書の開示を要求している。
        これに対し甲から丙に対し、午後 4 時 41 分のメールで、東海財務局へ送っ
       たメールの転送を行っている。
        さらに丙から甲に対し、午後 5 時 26 分に、届け出ありがとうございます、
       これを受けて最終の判断とさせていただきますとのメールがある。
(8)     2019 年 11 月 22 日
        2019 年 11 月 22 日午後 7 時 10 分、乙から甲宛の四半期レビュー報告は 11
       月 25 日を予定しているとのメールがある。
        己によれば、乙からのメールを見て 11 月 25 日付で出ることになって、甲も
       おかしいな、ってことになって、 月 25 日に集まれる人は集まりましょうと、
                     11
       そこでもう一度乙さんに会うアポイントを取りましょう、ということになっ
       た(己ヒアリング結果)
                 。
(9)     2019 年 11 月 25 日
        2019 年 11 月 25 日午前 10 時 50 分に癸から四半期レビュー報告書及び経営
       者確認書を対象会社に郵送したこと及び経営者確認書に捺印の上送り返して
       欲しいとの己宛メールがある。
        その後、2019 年 11 月 25 日午後 1 時 13 分に補足情報として経営者確認書と
       四半期レビュー報告書について、以前送ったものとの変更事項として 11 月 14
       日を 11 月 25 日に変更、強調事項について、当第 2 四半期連結会計期間を当
       第 2 四半期連結累計期間に変更した旨の癸から己宛メールがある。
        対象会社は、2019 年 11 月 25 日午後 7 時から経営会議を開き、なぜレビュ
       ー報告書が 11 月 25 日付なのかという事実確認を乙に聞くために、自分もそ
       の後北海道だったので、2019 年 12 月 2 日にアポイントを取った(甲ヒアリン
       グ結果)
          。
        ただし、丙によれば、2019 年 12 月 2 日のアポイントは、こちらから取っ
       た。訂正報告書を出してもらえないので早く出してくれ、その説明をするから
       ということで面談を持ったとのことである(丙ヒアリング結果)
                                   。
(10)    2019 年 11 月 26 日
        2019 年 11 月 26 日午後 9 時 37 分、監査法人から己宛に、監査チームの意見
       を纏め、結論として第 2 四半期報告書の訂正は必須と考える、明日 27 日まで

                           10
       に訂正報告書のドラフトを送って欲しいとするメールがある。
(11)    2019 年 11 月 27 日
        2019 年 11 月 27 日午後 5 時 06 分、甲から監査法人宛、14 日の夜に経営者
       確認書を 14 日付で送ってもらい捺印後の郵送の指示ももらい、これに従って
       会社は動いている。訂正報告書を出すか出さないかは会社判断とメールでも
       らっているが、これに変更はないのか。会社と監査法人とのコミュニケーショ
       ン不足が相当あった。何とかうまくおさめて頂けないかとの内容のメールが
       ある。
        2019 年 11 月 27 日午後 6 時 53 分、己から壬宛で、癸から 2019 年 11 月 14
       日午後 9 時 42 分に、11 月 14 日付経営者確認書が 11 月 15 日付から更新され
       て来たことで、「一連の作業、AR も含めてご対応頂けたと判断するに至って
       いるが、この点再度ご教示頂けるか、社内の対応は、それを踏まえて検討して
       回答する」との内容のメールがある。
        2019 年 11 月 27 日午後 7 時 15 分、乙から己宛、癸からの経営者確認書のメ
       ールは手続き上のミスであり、監査チーム内の連係ミスでもあった。このまま
       走ることも法人内では、時間をかけて検討もいたしておりますこと、ご理解下
       さい。結論として、最善の方策は、可及的速やかに訂正報告書を、会社が自主
       的に提出していただくということ、とのメールがある。
        乙は、このメールにつき、
                   「癸のミス」
                        「このまま走る」については自分で書
       いて意味不明だとする。ただ、
                    「結論として」と繋げているので、問題はない
       としている(乙ヒアリング結果)。
(12)    2019 年 12 月 2 日
        2019 年 12 月 2 日午前 11 時、甲は辛を同行し、監査法人Aの事務所を訪問
       した。監査法人側の出席者は、乙(電話スピーカ)
                             、丙、D、丁だった。
        丙によれば、12 月 2 日の甲とのアポは、監査法人側から取った。訂正報告
       書を出してもらえないので早く出してくれ、その説明をするからということ
       で面談を持った。甲も面談しているときは腹落ちしているようで、理解されて
       いるのかなという感じで一旦帰るが、戻ると何かが起きて違う内容が出てく
       る。12 月 2 日に乙が「検討する」と言ったというのは甲の誤解。乙は「検討
       して下さい」と言ったはず。甲がいつも社内で検討すると言うので、
                                     「じゃあ
       検討結果をお待ちします」と。そういう意味での「検討ですね」ということだ
       と思う(丙ヒアリング結果)。
        これに対し、甲に同席した辛が作成し、甲の承認を得たA監査法人訪問メモ
       によれば、・これまでの貴法人の対応についてどう考えているかを言及(甲)
       →明確な回答は得られず。
                  ・五洋が取締役会で五洋としてどうするか決議を取

                            11
       る旨のメールをもらっているが、どうなったのか(D)・Aでは AR 日付を変
       えた実績がない。どうすべきか監査法人協会(原文ママ)に聞く事は可能だが、
       監査法人としてどうすべきかを言われるだけと予想されるので、聞いても無
       意味と考える(丙)
               ・仮にAが日付をこのままでよしとして、万が一、●●●
       ●●が遅れた場合、Aで情報操作が大変(乙)
                           ・結論として、このままでよい
       と判断する事は、他のクライアントとの関係があり、現状できない。お互い持
       ち帰って、どうするかを再検討したい(乙)
                          ・訂正報告書の提出は遅れるほど
       良くない点、再認識いただきたい(丙)→いつどういった回答をするのか五洋
       内部意見をまとめて、Aに連絡する事とする(甲)「仮に、Aが日付をこのま
                             ・
       までよしとして、万が一、●●●●●が遅れた場合」に関連し、●●●●●●
       進んでいるか、業績や資金繰り状況、投資家との関係等々を多く質問。
                                      ・●●
       ●●●●●で今回のようなことがないか懸念。→いずれも問題ない旨、説明
       (甲)となっている。
        この訪問につき辛は、D、丁は、直接的な回答はせず、五洋さんとしてどう
       するかは決めましたかと逆に質問する形で、●●●●●●●●●進んでいる
       のかとか、経営陣が変わってから皆さん大丈夫なんですかとか、訂正報告につ
       いて甲が話を切り出すと、回答せずに他の話を持ち出すという感じだった。乙
       は、お互い持ち帰ってと言っていた。丙はこれ以上遅れると良くないですよ、
       遅ければ遅いほど良くないということは認識して下さいねと言っていた。何
       で 2 人で言うことが違うのかと受け取った、どっちなのかと。結局、甲が内部
       意見をまとめて連絡すると言い、乙の方も検討すると言っていた、と言ってい
       る(辛ヒアリング結果)
                 。
        2019 年 12 月 2 日午後 5 時 45 分、丙から己宛「本日の社長面談について」
       という表題のメールがある。内容は、具体的に社内打合せはいつするのかの連
       絡を明日までにしてくれというものである。
(13)    2019 年 12 月 3 日
        2019 年 12 月 3 日午後 3 時 54 分、丙から甲宛に、先ほど己から 12 月 5 日
       16 時に会社として話合いをすると聞いたが、それほど時間の余裕はない、あ
       くまで事務手続上の誤りで、訂正を先延ばしする方が望ましくない、本日 17
       時までに回答をくれという内容のメールがある。
(14)    2019 年 12 月 4 日
        2019 年 12 月 4 日午前 4 時 49 分、甲から丙宛に、昨日、乙から携帯に電話
       があり、東証に一緒に行って監査法人の非の部分も話してもらえるとのこと
       だが、何の非を認めて、何について東証と一緒に来てくれてるのかを書面で欲
       しい、それをもって緊急で取締役会を開催し、判断したいという内容のメール

                          12
       がある。
        2019 年 12 月 4 日午前 7 時 17 分、乙から甲宛に、当方のレビュー報告書が
       発行されていないにもかかわらず、その確認をせず、誤って四半期開示をして
       しまったこと、当方の四半期レビュー報告書日付にて訂正報告書の開示手続
       きを怠っていることの責任は、対象会社にあること、事前の草案での経営者確
       認書のやり取りが誤解を与え、誤った開示に繋がったことの原因の一端は監
       査法人側にもあったかもしれないこと、本日午前中までに対応して欲しいこ
       ととするメールがある。
(15)    2019 年 12 月 5 日
        己によれば、12 月 5 日の朝に、確か甲ではなく E 社長室室長だったと思う
       が、突然、訂正報告書を出すので、至急東証に電話をしてくれと言われた。そ
       れで、電話をしたら滅茶苦茶怒られて、それから結局午後 10 時半までかかっ
       て訂正報告書を作成したとのことである(己ヒアリング結果)。
        2019 年 12 月 5 日午前 10 時 54 分、己から丙宛に訂正報告書内容(案)を作
       成したので、確認して欲しいとのメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午前 11 時 34 分、庚から丙に対し、己からの指示で修正版
       を送付するとのメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 1 時 18 分、庚から丙に対し、正誤表、訂正報告書、
       確認書 PDF を送る等のメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 3 時 36 分、己から丙に対し、回答の催促のメールあ
       り。本日 5 時までに EDINET での報告が必須であり、間に合わなければ監理
       ポストへの対応がありうるとの東証より指摘を受けているとのコメントあり。
        2019 年 12 月 5 日午後 4 時 18 分、丙から己に対し、適時開示書類と四半期
       レビュー報告書の修正を指示するメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 5 時 36 分、己から丙に対し、東証が丙に連絡を取り
       たいと言うので、連絡先を教えて良いかとする内容のメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 5 時 45 分、丙から己に対し、連絡先の件了承する旨
       のメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 6 時 49 分、己から丙に対し、修正した訂正報告書を
       確認して欲しいとの内容のメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 7 時 19 分、己から丙に対し、監査にかかる当取引所
       及び自主規制法人への守秘義務解除を通知するとの内容のメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 7 時 21 分、丙から己に対し、確認と、一部変更を促
       す内容のメールがある。
        2019 年 12 月 5 日午後 7 時 37 分、丙から己に対し、守秘義務解除を了解し

                          13
       た旨のメールがある。
         2019 年 12 月 5 日午後 10 時 15 分、己から丙に対し、添付ファイルが最終な
       ので、差し替えを依頼するメールがある。
         2019 年 12 月 5 日午後 10 時 33 分、丙から己に対し、内容確認し、これで進
       めて良い旨のメールがある。


2.   本件が生じた根本的な原因の特定
     (1) コンプライアンス軽視の企業風土
      前項の本件事実関係の確認で記述したとおり、そもそも、本件において、監査法
                        2019 年 11 月 14 日午前 10 時 40 分頃、
     人の四半期レビューが未了にもかかわらず、
     2020 年 3 月期第 2 四半期報告書を EDINET へ提出したことは、争いのない事実で
     ある。これについては、気が付いたときに直ぐに対象会社が東証に連絡して訂正報
     告書の適時開示を行わなければならなかったものであって、仮に EDINET へ提出
     した日と同日付のレビュー報告書を、監査法人から後に取得できたとしても、これ
                      2020 年 3 月期第 2 四半期報告書を EDINET
     によりレビューが未了にもかかわらず、
     へ提出したことが補完されるものではない。
      それにも関わらず、対象会社は、役員全員が補完可能と考え、監査法人から再三
     に亘り訂正報告書を提出するよう言われながら、2019 年 11 月 14 日付のレビュー
     報告書を取得しようとしていた。特に、監査法人から 2019 年 11 月 25 日付レビュ
     ー報告書を受領しながら訂正報告書を提出した 2019 年 12 月 5 日まで、2019 年 11
     月 14 日付にバックデートしてもらえると考えていたことは、正にコンプライアン
     ス軽視の態度であり、甲のみならず会議体を構成する全員の責任である。
      このように、対象会社には、法令遵守や上場会社に求められる証券取引市場にお
     ける様々なルールへの対応を知らなかったか、あるいは軽視していた側面が多々
     窺える。このような企業風土の中、次に述べるように、十分な内部統制体制や退職
     者後継の適切な人員補充もないまま、本件調査の対象となった一連の事態を招い
     たものと思われる。
     (2) 社内の人材不足
      対象会社は、2019 年 4 月 28 日に、株主による臨時株主総会を開催し、新経営体
     制が発足して以降、2019 年 10 月 11 日付で経験豊かな管理者クラス 2 名(管理・
     経理担当)が退職した。
      後任の管理部長職として、対象会社は 2019 年 10 月 7 日付で己を採用したが、
     己は、別に自己の会社を持っていたため、週3日程度対象会社の仕事を行うとする
     業務委託契約であった(勤務場所も定まっていない)。また、己は、前職が大会社
     (年商約 250 億円、従業員約 2000 人)の経営企画室長であったため、決算の知識

                          14
     及び経験はあったが、上場企業の特に IR 関係については全く知識がなかった。
      庚は、当時、決算とは無縁なインテリア事業部にいたが、己が週 3 日程度の勤務
     でかつ IR の経験がないことを知り、人員が補充されるまでの手伝いのつもりで、
     管理担当の退職者から IR 関係のみの引継ぎを受けた。庚は、前日の 13 日に取締役
     会の決議のとおり、IR で短信を出しており、誰からも(甲、己、監査法人)レビュ
     ーが未了であるとの情報がなかったため、当然にレビューは終了しているものと
     思って 2020 年 3 月期第 2 四半期報告書を EDINET へ提出した(庚ヒアリング結
     果)。
                退職者 2 名に代わる適切な人員補充すら出来ておらず、
      このように対象会社は、
     上場企業として求められる内部統制が全く出来ていなかったことが、今回の事態
     を引き起こしたと言え、かかる事態を招いた経営責任は重いと言わざるを得ない。
     (3) 監査法人との連携体制の欠如
      庚によれば、従来、対象会社では、第 2 四半期報告書に関し、9 月に締めたら 10
     月中にはほとんどの作業が終わっており、経営者ディスカッションの段階で、まだ
     資料が出来ていないなどということはなかったとのことである(庚ヒアリング結
     果)。
      ところが本件では、開示予定の 2019 年 11 月 14 日にまだ資金繰り表等 GC に関
     する資料を己が作成中であり、監査スケジュールとして無理があったと言わざる
     を得ない。
          45
      ただし、 日ルールからすれば、2019 年 11 月 14 日が期限な訳であるから、2019
     年 11 月 14 日までにレビューが出来ない可能性があるなら、監査法人としては、そ
     の場合の対応についても説明しておく必要があると思われるのに、そこまではし
     ていないこと、レビューが完了したことは、従来から押印のあるレビュー報告書で
     はなく、電話で伝えていたことが多かったこと(乙ヒアリング結果) 2019 年 11 月
                                   、
     14 日午後 9 時 01 分に癸が己に 2019 年 11 月 15 日付経営者確認書をメールで送付
     し、41 分後の午後 9 時 42 分に 11 月 14 日付経営者確認書を送付しており、かつ、
     翌日、庚からのお世話になったとのメールに対し、監査法人側からご苦労様でした
     とのメールが打たれていることも、対象会社を混乱させる原因となったことは否
     めない。
      このように、対象会社と監査法人との連携体制の欠如も、本件が生じた根本的な
     原因の一つと考えられる。


3.   再発防止策の提言
     (1) コンプライアンスを重視するためのコーポレート・ガバナンスの確立
      株式会社の取締役は、株主から経営を委任されたものとしての責任(受託者責

                          15
任)の解除のために、説明責任(アカウンタビリティー)を負う。通常、説明責任
は、株主・投資家に対する会社の状況や財務報告を行うことを意味する。
 すべての株式会社において、取締役はその受託者責任の解除のため、株主総会
で財務報告を行い、計算書類等の承認を得ることになる。また、金融商品取引法上
の証券取引所に上場した会社(以下「上場会社」という)であれば、決算日後 3 か
月以内に有価証券報告書を、また事業年度の期間を 3 か月ごとに区分した各期間
経過後 45 日以内に四半期報告書を金融庁のシステムである EDINET によって内閣
総理大臣(金融庁、財務局を通じて)に提出する義務を負う(金融商品取引法第 24、
第 24 条の 4 の 7 第 1 項)
                   。ところが、対象会社は四半期終了後 45 日以内に四半期
報告書を提出することができなかった。
 社会の公器として存在する上場会社では、一般会社と比較して特にコンプライ
アンス(法令遵守)が求められることとなる。そしてそのコンプライアンスを維持
し、改善するための仕組みとしてコーポレート・ガバナンスを確立する必要がある。
対象会社は、上場会社において欠くことのできない財務情報(会社の財政状態・経
営成績等)の開示を、法令に基づいて適切に行うことができなかった。このことは
コンプライアンスの軽視、さらにはコーポレート・ガバナンスも確立されていなか
ったと言わざるを得ない。
 コーポレート・ガバナンスの確立は、適切な内部統制体制の整備とその有効な
運用によってもたらされる。その結果、投資家保護や資本市場の信頼性の確保の観
点から、適時適切に財務情報を開示することが可能になる。
 対象会社は上場企業として、会計監査人による内部統制監査は実施されており、
一定程度の内部統制体制の整備と運用がなされているはずであった。しかしなが
ら、実際には会計監査人の四半期レビュー報告書を受領する前に四半期報告書を
EDINET に提出してしまった。この事実は対象会社において有効な内部統制体制が
構築されていなかったことを意味する。したがって、具体的には決算・財務報告プ
ロセスにおけるいわゆる 3 点セット(業務記述書、フローチャート、リスクコント
ロールマトリックス)を見直し、特に今回の開示エラーのようなリスクに対しては、
キーコントロールを定めるべきである。また、今後開示実務の経験と能力のある人
材の確保が最優先となるが、それが困難である場合には、開示実務が属人的になら
ぬよう、開示マニュアル等を作成するとともに、開示担当者自身のセルフチェック
だけでなく、担当者以外の者や上長によるダブルチェックを行う体制を構築する
必要がある。
(2) 人材不足の解消
 2019 年 4 月に経営陣が刷新され、その後の決算及び開示実務のキーマンとなる
経験豊かな管理者クラスの従業員の突然の退職が今回の一連の問題の端緒となっ

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たことは否めない。キーマンの退職に際しても、それまで極めて属人的に行われて
いた実務が他の従業員に適切な継承がなされないまま、未経験者によって開示実
務が行われてしまった。
 上場会社の決算及び開示実務は、経験豊富な人材によって行われる必要がある。
突然のキーマンの退職後、直ちにそのような人材を採用しようとしても求める経
験と能力を有する人材は、転職市場において人数も少なく、さらに開示実務は、会
社ごとの個別的なスキルでもあることから、即戦力となる人材を採用することは
困難である。
 内部統制体制が有効でない状況でありながら、対象会社は上場会社であるため
に決算を四半期ごとに行う必要がある。ここで即戦力となる人材を採用できず、経
験と能力を不足している者を人数合わせに採用しても、適切な実務は行えない可
能性が高い。そのような者を一人前に教育するには時間が要する上に、教育を行え
る人材が社内にそもそも存在しない。
 そこで、IPO 支援会社等に対して、一定の期間、管理部門のアウトソーシング
をし、並行して共に働く経験不足の者の能力を高めつつ、上場準備期と同様に上場
会社として当然備えるべき管理体制のアドバイスを受け、再構築を図るべきであ
る。
 さらには、今まで人材不足の解消のため重要なポジションにいる者(例えば管
理部門の責任者、内部監査室室長)については、業務委託契約ではなく、雇用契約
を締結し、その業務に専念する体制を整えることが必要である。
 近年はコーポレート・ガバナンス及びコンプライアンスの重要性が高まってお
り、監査役(会)はより大きな責務を負うこととなっている。上場会社のコーポレ
ート・ガバナンスには、取締役会・監査役(会)による経営の監督を充実させ、取
締役会・監査役(会)の株主に対する説明責任(アカウンタビリティー)が確保さ
れることが期待されている。監査役(会)の役割は、取締役の職務執行を監査する
ことにあり、名目だけの監査役では通用しない。常勤監査役、社外監査役を問わず、
ただ取締役会に出席するだけではなく、積極的に意見を述べる義務がある。上場会
社においては、会計監査は会計監査人(監査法人・公認会計士)が担うことになる
が、監査役会には会計監査人の選定やその評価を行う役目があることから、財務会
計(開示を含む)や会計監査に関する十分な知見を有する者が1名以上は選任され
るべきである。
 さらに、常勤監査役は愛知県小牧市に対象会社の本社勤務である一方、重要な
意思決定に携わる取締役は東京都にいることが多いことから、物理的にも離れて
おり適時適切に取締役の職務執行を監査する状況とは言い難い。したがって本社



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を移転する等して、常に監査できる体制を構築すべきである。
 取締役会は、業務執行に関する意思決定機関だけではなく、取締役の職務執行
を監督する機関でもある。対象会社のおいてはこの監督機関としての機能が十分
でなかったと言える。監督機能を果たすためには、取締役会の活性化を図る必要が
ある。そのために社外役員が積極的に発言する状況の整備として、取締役会の資料
を会日に十分に先立って配布されるようにすべきである。
 加えて取締役、監査役がそれぞれ期待される役割・責務を適切に果たすため、
必要な知識(例えば開示を含む決算実務や会計監査)の習得に努めるべきである。
そして、会社はその機会の提供や費用の支援をすべきである。
(3) 監査法人とのコミュニケーション
 監査法人(会計監査人)は、独立した立場で監査意見を表明するため被監査会
社から一定の精神的・外観的独立性が求められる。ただし、それは決して敵対的な
関係を意味するのではなく、一定の期間内にスムーズに決算実務、それに対する監
査実務が完了するように、両者協力すべきところは協力していく体制の下での独
立性であるものと考える。したがって、会計監査人から依頼された資料は可及的速
やかに提出し、決算実務や会計監査がスケジュール通り進行するようにお互い努
めるべきである。
 また、会社法においては、会計監査人に対し取締役の不正行為や法令違反を監
査役に報告することを求めるとともに、監査役には会計監査人に対し監査に関す
る報告を求める権限を認めている(会社法 397 条)
                         。今回の一連の問題も、監査法
人(会計監査人)及び監査役の両者が適切なコミュニケーションを図っていれば防
げた可能性もあることから、今後は定期的のコミュニケーションを図り、情報を共
有することが一層求められる。




                                   以   上




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