7518 ネットワン 2021-03-18 16:00:00
「外部調査委員会調査報告書 ~ガバナンス・企業文化の観点から~」の受領及び開示版の公表に関するお知らせ(2) [pdf]

第 7原 因分析―視 点 4 ガバ ナ ンスか らの分析


1.は じめに

  前記第 4な い し第 6の とお り、本件案件 の発生原 因 としては、内部統制 。内部通報 。企
 業文化 の 問題 、三様監査 の 問題、過去調査 の対応 に関す る問題 が挙 げ られ る。そ して以下
 で述 べ る とお り、これ らの 問題 はいずれ も経営陣 の責任 によ り生 じた 問題 であるか ら、本
 件案件 が発生 した根本 的な責任 は経営 トップを中心 とす る経営陣 にある。
  す なわち、不 正 リス クの管 理 は経営 の重要 な課題 であるか ら、経営陣 としては、かか る
 認識 に基 づ き、自律的・継続 的に不 正 リス クの管 理 につい て対応 をす るこ とが必要 となる。
  経営陣 が不 正 リス クを適 切 に管 理す るためには、 ず、リス ク管 理体制 として の 内部統
                                ま
 制 を適切 に構 築 し、運用す ることが求 め られ る。
  そ して 、リス ク管 理 の枠組み として 、3ラ イ ンの概念 によるこ とが有効 であることは広
 く言 われてお り、経営陣 としてはかか る観 点 に留意 しつつ 、自社 の リス ク管理体制 を適切
 に構築・運用す べ きである。また、自社 の リス ク状況 は常に変動 し得 るか ら、リス ク管 理
 体制 につい ては PDCAサ イ クル を主体的 かつ 実効的に回 し、 リス ク管 理体制 を改 善 してい
 くこ とが求 め られ る。 しか し、実際 には 、経営陣は、3ラ イ ンの重要性 を十分 に認識 して
 い なか ったために、3ラ イ ンを基軸 とした リス ク管 理体制 の脆弱性 を認識 しなが ら、そ の
 是 正 のため の取組 を行 つて こなか った。 また 、PDCAサ イ クル を回す とい う 点か らリス
                                                  観
 ク管 理体 制 の改善 を図 るとい う姿勢 も十分 ではなか っ た (後 記   2)。


  また 、 業 内にいか な る不正 リス クが内在 してい るかは、自社 の業種 、
      企                                     過去 の経緯等 に
 よつ て も異 な るか ら、リス クベ ース・ アプ ロー チで リス ク管 理 を行 うに当た っては 、これ
 らの観 サ 踏 まえた リス ク管理 が必 要 となる。NOSに お いて は、そ の業種や過 去 の不正事
     点も
 案 か ら、特 に会計不 正 ヅス クについ ては十分 な注意 を払 つて管 理 をす る こ とが求 め られ
 ていた。それ に もかかわ らず、 もそ も NOSの 経営陣 は十 分 な会計 リテ ラシー を有 してい
                  そ
 た とは い えず 、実際 に会計不 正 リス クヘ の取組 が十分 であつた ともいえな い   (後 記   3)。


  さらに、役職員 が共 有す る基本的 な価値観 。理念や行動規 範 、す なわち企業文化 は内部
 統制 の仕組 み を実効性 あるもの とす るため の屋 台骨 として位置付 け られ る。そ して 、経営
 陣 の 姿勢、特 に経 営 トップ の姿勢 は この よ うな企 業文化 に大 きな影響 を与 えるもので あ
 り、 正 ヅス ク管 理 の観 点か らは、
   不                   経営 トップが役職 員 に コンプ ライア ンス につい てのメ
 ンセ   ジ を発 出 し、これ を浸透 させ る こ とによ り、あるべ き企業文化 を醸成す ることが極
 めて重要 とな る。 しか し、実際 には 、NOSの 経営 トップによるメ ッセー ジ は量 、質 ともに
 十分 な もの でな く、 コ ンプ ライア ンス につい て の メ ッセー ジを従業員 に浸透 させ るため
 の措置 を講 じて こなか った   (後 記   4)。


  加 えて、不祥事予防 の観 点か らは、経営陣 が現場 と双方 向 の コ ミュニ ケー シ ョン を取 る
 こ とによ り、現場 の実態 を適時・適切 に把 握 し、 リス クを早期発 見す る とともに、これ に

                                 105
 迅速 に対処 し、業務改善 を行 うこ とが必要 とな る。 しか し、実際 には、NOSの 経営陣は、
 必ず しも現場 の声 を十分 に把 握 しよ うとは して こなか った             (後 記   5)。


  そ の上 、経営陣 としては 、社外取締役 の監督機能 を踏 まえ、不 正 リス クに関す る社外取
 締役 の提言等 につい ては真摯 に対応す る必要が あるが 、 この点 につい ての経営陣 の姿勢
 は必ず しも十分 とはいい難 い もので あ った          (後 記   6)。


  本件案件 が発 生 した ことに 関 し、経 営陣 に内部統制 システ ム構築義務違反 がある とま
 では認 め られ ない ものの (後 記     7)、   本件案件 の発生 につい ては 、経営 トップを中心 とす
 る経営陣 に経 営責任 が ある といわ ぎるを得 ない。
  以下、詳述す る。


2.3ラ   イ ンの 重 要性 に つ い て の認 識 の 不 十分性   (リ   ス ク管理 体制 の構 築・ 運用 に係 る 「他
  人事」 の 姿勢 )


  リス ク管理 の枠組み として、 イ ンの概念によることが有効 であることは広 く言われ
                  3ラ
 てお り、経営陣 としてはかかる観点 に留意 しつつ、自社 の リスク管理体制を適切に構築 。
 運用すべ きである。また、自社 の リスク状況は常に変動 し るか ら、ジス ク管理体制につ
                               得
 いては PDCAサ イクル を主体的かつ実効的に回 し、 リスク管理体制を改善 してい くことが
 求められ る。 しか しながら、経営陣は、下記 の とお り、3ラ イ ンの重要性 を十分に認識 し
 ていなかったために、   NOSに おける 3ラ イ ン、すなわち営業部門 。    ・
                                        技術部門 購買部門 (第
 1ラ イ ン)、 管理部門 (第 2ラ イ ン)及 び内部監査部門 (第 3ラ イ ン)を 基軸 とした リス
 ク管理体制 の脆弱性 を認識 しなが ら、その是正のための取組 を行 つてこなかったのであ
 り、また、PDCAサ イクル を回す とい う観点か らリスク管理体制 の改善を図るとい う姿勢
 も十分ではなかつた。このよ うに、経営 トップを中心 とす る経営陣が、いわば 「  他人事」
 として ジス ク管理体制 の改善 のための十分な取組 を行 つてこなかつた結果、本件案件 が
 発生する一因 となった。


(1)第 1ラ イ ン・ 第 2ラ イ ンの重要性 についての認識 の不十分性


  ア.営 業部 門重視 、技術部 門・ 購 買部 門・ 管理部門軽視


    営業部 門にお いて は一 定 の 目標 達成 のプ レ ッシ ャー がかか るこ と等 は避 け られ な
   い ため、第 1ラ イ ンの うち技術部 門 。 買部 門、 び 第 2ラ イ ンで ある管 理部 門は、
                           購      及
   営業部 門 に対 して健全 な牽制 を効 かせ る こ とで リス クを管 理す るこ とが求 め られ る。
   そ のため経営陣 においては、技術部 門 。 買部門 。
                           購       管理部 門につい て 、営業部 門 との
   対等 なパ ー ト ー シ ップの も と、営業部 門 に射 し健全 な牽制機 能 を発揮 できるよ う
            ナ
   な環境 を整備 し、 また 、 そ の よ うな企 業文化 を醸成す る こ とが求 め られ る。

                                  106
        しか しなが ら、NOSで は、吉野 氏 を中心 として、営業部 門重視 、技術部 門・購 買部
      門・管 理部 門軽視 の傾 向 があ り、また、特 に管理部 門は、自らの牽制機能 に対す る意
      識 が薄 く、業務 を形式的 に こなす だけ の事務局 と化 してい る部 署 もある とされ 、この
      よ うな実態 につい ては、経営 陣 も把握 していたが 、改善 されず 放置 され てきた。
        NOSの 営業部 門重視、技術部 門・購 買部 門・管理部 門軽視 の実態 につい ては、2013
                   「
      年事案調査報告書で既 に、 個人商店的発想              (属 人的 な企業文化 )の 営業重視
                                                       とい う
      古 い企業体質が残 存 してい る こ とが明 らかにな った。                 「
                                        」との評価 が され 、また、 営業
      部門 。技術部 門・管 理 部 門 の対等 なパー ト ー シ ップ 、
                                 ナ        健全 な牽制関係 が企 業価値 を
      高 める基礎 とな る とい う意識 の浸透 を図 る共 に 、 この観 点か ら社 内 の諸制度 の 見直
       しを行 うべ きである。 との提言 が示 され ていた
                   」                       (同   42頁 )。 しか しなが ら、 これ に
                      「
      対 して取 られた対策 の内容は、 ①案件対応 プ ロセスにおける技術部門の牽制強化 EP
      事業グループにて試行 中の 案件対応 プ ロセスの標準化』に外注発注時の牽制機能を
                   『
                                 」「
      組み込み全社的な基準 として他 グループに展開する。 、 ②規程類の見直 しと運用徹
      底による管理部門の牽制強化販売プ ロセスにおける各種規程類                    (×   ×ルール、××基
      準も含む)の 内容を見直す とともに、運用面の改善を図る。 といつたものに留ま り
                                   」
       [96]、   このよ うな対策 の内容については、取締役会及び経営委員会において も報告 さ
      れていたが      [97]、   前記第 6・ 1(3)オ の とお り、営業部門・技術部門・管理部門の対等
      なパー ト ーシ ップ、健全な牽制関係が企業価値 を高める基礎 となるとい う
           ナ                                 意識 の
      浸透についての本質的な対応 は何 ら取 られて こなかつた。
       また、前記第 6・ 1(3)力 の とお り 2013年 3月 時点 の 2013年 事案に係 る再発防止
                             、
      策においては、営業部門による 「      恣意的な取引の排除」をするために、 に      「 )購 買部

      門による牽制」を行 うもの とされていたが、実際には、購買部門による牽制は十分 に
      行われていなかった。
        さらに、NOSの 取締役 の構成 を見ても、少 なくとも 2007年 6月 か ら 2019年 6月 ま
      では、管理部門出身 の取締役 としては片山氏がいたのみであつた。片山氏については、
      管理部門担当の取締役 としての業務 を牌怠 していた事実までは認め られない ものの、
      本来期待 され る役割 を十分に果た してきたかについては疑義を示す声 もあ り、経営
      陣 もこれ を認識 しなが ら特段の対応を とつていなか つたのであつて、 このことも管
      理部門軽視 の実態を助長 させていた要因の一つ といえる。 また、2019年 6月 以降、
      NOSの 取締役に管理部門出身者は存在 しない状況であつた。
        このよ うに、NOSの 経営陣は、営業部門 と技術部門・購買部門・管理部門とが健全
      な牽制関係 にないこ とに気付 きなが ら、 これ を是正す るための措置を講 じることを



96   2014年 2月 20日 及 び 同月 21日 付 け 「不正行為 に対す る再発 防止 策 実施状況報告 書」9頁 。
97   2014年 2月 21日 付 け取締役会議事録及 び同取締役 会議案書 「 不正行為 に封す る再発 防止 策』実施
                                               『
     状況報告 の件」 2014年 2月 20日 付 け経 営委員会議事録及び同経営委員会議案書 「 不正行為 に姑す
              、                                    『
     る再発 防止 策』実施状況報告 の件 」

                                   107
    してこなかつたのであ り、このよ うな状況 となったのは、経営陣が第 1ラ イ ン及び第
   2ラ イ ンの重要性に対する認識が十分でなかつたか らであると考えら る。
                                     れ


  イ.社 内における リス ク管理 の統括部署の不明確性 とジス ク管理活動の不十分を
                                           性


     前記第 4・ 3(1)の とお り、NOSに お い ては、 リス ク管 理の統 括部署 が不明確 な状況
   にあ り、また 、これ らの リス ク管 理 につい て各部 門 が主 導的 に行 うこともなか っ た。
   この よ うな ジス ク管理 体制 にお ける問題点 は、NOSに お ける リス ク管理活動 の 間隙 を
   生 じさせ る要 因 となるもの とい える。
     取締役 の 中 には 、 上 記 の リス ク管 理体制 にお ける問題 点 につい て少 な くとも拍象
   的 には認識 していた 旨の発言 を行 つてい る者 もい る。したが つ て 、リス ク管 理体制 に
   つい て主 導的 な役割 を果 たす べ き経営 陣 として は 、 リス ク管 理体制 の状況 を積極 的
   に把握 し、そ の不備 を是正す る措置 を講ず べ きであ つ た といえ る。
     しか しなが ら、少 な くとも 2019年 循環取引事案発覚前 に、経営陣 が 、 上記 リス ク
   管 理 体制 上の 問題 点 につい て 、実態 を把 握 し、これ を改善す るための活動 を行 った事
   実 は確認 できなか った。
                                   「
     なお 、2019年 特別調査委員会調査報告書 に よれ ば、 リス ク・ コンプ ライア ンス委
   員会 は、そ の活動状況 を四半期 に 1回 報告 していた ものの、経営委員会 としては、総
    じて 、リス ク コ ンプ ライア ンス委員会 の答 申状況 は諮 問機 関 としては十分 でない と
            ・
   評価 していた もの と認 め られ 、そ の運営方法等 につい て継続 的 に指摘 がな され てい
   た。 との こ とであるが
     」              (同 報告書   51頁 )、 リス ク・ コンプ ライア ンス委員会 の委員
   であつた者 に対す る ヒア リング等 によつて も、実務 を担 当す る リス ク コ ンプ ライア
                                             ・
   ンス委員 会 の委員 に対 してかか る経営委員会 か らの指摘 が伝 達 された との事実 は確
   認 できなかった。また 、仮 に経営委員会 か らリス ク・ コ ンプ ライ ア ンス委員会 に対 し
   て 当該指摘 がな され ていた場合 も、経営委員会 は、リス ク コ ンプ ライア ンス委員会
                                    ・
   の諮 問機 関 として の活動 の不十分性 につい て認識 しなが ら、具体的な改 善策 を含 む
   指摘や指摘 に基 づ く改善策 の運用 につい てのモ ニ タ リング を十 分 に行 つ て い なか つ
   たのであ り、これ につい て も、経営陣 が第 2ラ イ ンの重要性 を十分 に認識 していなか
   つ た こ とに起 因す るもの と考 え られ る。 して 、
                              そ    この よ うな事情 か ら、NOSに お いて、
   本件案件 の発 生 を予防す るこ とができず 、また 、本件案件 の発生 を適時 に正確 に把握
   す るこ とがで きず、そ の発覚 が遅れ る事態 とな った可能性 がある もの と考 え られ る。


(2)第 3ラ イ ンの重要性 につい ての認識 の不十分性


  NOSに お いて 、内部監査室 は、社長直轄 の部署 として、NOSの 業務活動 が経営方針 、社
 内規程等 に沿い 、また 、法令等 に抵触 す るこ とな く行 われて い るか を効率的 に調 査す る こ

                              108
     とに よ り、NOSの 経営管 理 に資す ることが求 め られ てい るか ら      [98]、   経営 トップ をは じめ
     とす る経営陣 にお いて は 、専門的知識 を有 した人材 が内部監査 の重要性 を認識 した上で
     意欲 的 に業務 に取 り む こ とができるよ うに、
                  組              適切 な人材 を配 置す るとともに、内部監査
     室 か らの報告 内容 をもとに 、不備等 の原 因を分析 し、再発 防止 の ため の措置 を検討す る必
     要 が ある。
      しか しなが ら、内部監 査室 につい ては、内部監査 の能力 を十 分 に備 えた者 が在籍 してい
     たわ けではない と認 め られ経営陣はかか る実情 につい て認識 していた。内部監査 室 は、社
     長 直轄 の部 門であ つたに もかかわ らず、吉野氏及び荒井氏 を中心 とす る経営陣は、内部監
     査 部 門 を義務 的 に設置 してい る コス ト 門 としてのみ捉 え、そ の存在意義 を十分 に理 解
                               部
     してお らず、 の結果、内部監査室 の質 を改 善す るための実効的な措置は講 じられて こな
            そ
     か った。
      また 、内部監 査室は 、取締役会又 は経営委員会 に対 し、会計年度 ごとに内部監査報告書
     に よ り内部監査結果 を報告 してお り、同報告書 にお いて 、営業部 門 を被監査部 門 とす る業
     務 監査 の不備・ 注意 につい て報告 を行 ってい る。内部監 査 においては、前記第 5。 1(2)ア
     (ア )の とお り、一 般的 には異例 とも思 える件数 の不備 。注意 が報告 され 、 また このよ うな
     状況 が継続 してお り、経営陣は、取締役会又 は経営委 員会 にお いて 、上記 の結果 につい て
     報告 を受 けて いたに もかかわ らず 、後記      4の とお り社長 メ ンセ ジ や幹部会 の 中で触れ
     る こ とはあ つた ものの 、2020年 度以降に 「不備 ゼ ロ運動」 [99]と して内部監査 にお ける
     不備 。 注意件数 を減 らす取組 が され るまで 、かか る状態 を是正す るための具体的な対応 が
     取 られ るこ とはなか つ た。不備 。注意 として指摘 され た事項 の原 因 を分析 し、対応策 を検
 討、実行 した上で 、対応策 の運用状況 をモ ニ タ リン グす る とい う当然 に行 われ るべ き こと
     を行 っ て こなか っ た経 営陣 の姿勢 か らも、内部監 査室 の存在意義 を十分 に理 解 していな
     か つ た こ とが明 らかである。


3.過 去調査等を踏 まえた会計不正 リスクに対する取組の不十分性

      企業においていかなる不正 リスクが内在 しているかは、自社 の業種、過去 の経緯等 によ
     つても異なるものであるか ら、リスクベース アプ ローチで リス ク管理を行 うに当たって
                          ・
     は、 これ らの観点も踏まえて リスク管理を行 うことが必要 となる。



98    職務分掌規程 3条 。
99    不備 ゼ ロ運動 とは 、2020年 度 か ら東 1を 姑象 として開始 され た活動 で あ り、同本部長 である平川氏
      の指揮 の も と、同本部営業管理室長 の■■■■ 氏 を リー ダー として、内部監査室か ら指摘 され た、営
      業部 門を被 監査部 門 とす る業務 監査 の不備・ 注意 の 内容 について 、原 因 を分析 し、そ の封応策 ご とに
      リー ダー を決 め、 1か 月 ご との進 サ
                           │ノ 会議 の 中でその進 捗状況 を確認 しなが ら、教育 (テ ス ト 実施 を
                                                                 の
      含 む。 チ ェ ック リス ト 作成 、システ ムの改善 といつた対応策 を策 定 し、かか る不備 ・ 注意 の 削減
          )、           の
      を 目指す運動 をい う この運動 の 中では 、そ の対応 策 の 内容 が全 社 的 に応 用可能 な もので ある場合 な
                   。
      ど、他 の部署等 に当該対応 策 を適用す ることも検討 され る。

                                   109
 この点、 般的 に、
     一     情報サー ビス業 につい ては 、①事業封象物 であるソフ トウェアが「無
形」資産である ことか ら、外部 か らそ の開発状況や 内容 を確認す る こ とがその特質 上難 し
く、 ロジェク トご との仕掛 品 の原価 の集 計 に恣意性 が入 り込む危 険性や、
  プ                                         ②仲介取引を
含 めた 商社 的 な取 引 が行 われ る結果 、 一般 に公 正 妥 当 と認 め られ る企業会計 の規準 に照
らして 、収益 が実現 してい るのか 、また、収益 が実現 してい る として も、これ を総額 で表
示す るこ とが取 引 の実態 を表 してい るのか とい う取 引実態把握 の 困難性 が あるな ど、原
価付替や循環 取引 を含 む会計不正 につい て 固有 の リス クがあることが指摘 され てい る と
ころで ある   [100]。


 実際に 2000年 代 にお い ては 、情報サー ビス業界 において複数 の会計不 正 事案 が報 じら
れ てお り、上 記 の 固有 の リス クが頭在化 していた。そ のため、情報サ ー ビス業 関連 の会社
の経 営陣にお い ては 、 この よ うな情報サ ー ビス 業 にお ける固有 の会計不 正 リス クを前提
として 、 リス クベ ー ス・ アプ ロー チでの リス ク管 理 を行 うことが求 め られ る。
 特 に、NOSに お いて は、2013年 事案 にお いて 、NOSの 従業員 が他社社員 と共謀 して架空
取 引 に よる詐 欺 を実行 していた こ とが発覚 していた。 自社 において不正 行為 が発 生 した
場合 、 の不 正行為 の背景 にある組織 的要 因を分析 し、これ を是正す るた めの実効性 ある
    そ
再発 防止 策 を講 じるこ とが必要 となる。NOSの 経営陣 は、2013年 事案調査報告書 による再
発 防止 策 の提言 を踏 ま え、 度 と不正は起 こさない とい う覚悟 の も と、
                  三                          実効的な再発防止
策 を策定 し、 これ が継続的 に運用 され るよ うに適切 なモ ニ タ リング を行 う必要があ つた。
しか しなが ら、前記第      6・   1(3)イ の とお り、経営陣 が策定 した 同再発 防止 策 は、2013年 事

案調 査報告 書 において示 され た再発 防止 策 の提言 に対応す る対策 が抜 け落 ちて い るな ど、
提言 の全 てを適 切 に網羅す るもの とな っていなかった。また 、策定 され た再 発 防止 策 につ
いて も、結果 として形 骸化 して しまった部分 があつたが 、経営陣 が再 発 防止 策 の運用状況
を主体 的か つ継続 的 にモ ニ タ リン グを十分 に行 うこ とを して こなか つ たために、 かか る
再発 防止 策 の形骸化 を止 めることができなかった。
 加 えて NOSで は、2014年 事案 にお いて 、連結子会社 にお ける会計不正行為が発覚 して
お り、NOSに お ける会計不 正 リス クについ て見直す更 なる契機 があつた。 しか しなが ら、
経 営陣 は、同事 案 は当該連 結子会社 が規模 的 に小 さい会社 であるた めに実 行 し得 た事 案
であ るな どとして、同事案 を NOSと は関係 の な い例外的な事案 と整理す るな ど、同事案 を
NOSに 落 とし込んで検討す る姿勢 は認 め られず 、結果 として NOSに 存在す る会計不正 リス
クや 上記再発 防止 策 の運用状況及び実効性 を見直す契機 を失 うこ ととなった。




 日本公認 会計 士協会 IT業 界 にお ける特殊 な取 引検討 プ ロジェク ト ー ム 「
                                          チ     情報 サ ー ビス産業 におけ
 る監査上 の 諸問題 につ いて」 (2005)参 照。

                                 110
  経営陣 の 中には、2013年 以降 の会計不 正 リス クに対す る教育・ 周知や運用 の徹底 が必
 ず しも十分 でない こ とを認識 していた者 もいたが           [101]、   このよ うな状況 を改善す るため
 の 更な る具 体的 な措置が講 じられ た形跡 はない。
  上記 の結果、前記第 6の とお り、2013年 事案調査報告書 に よる提 言 の趣 旨を正確 に踏
 ま えた再発 防止 策 が 策 定 されず 、 また策定 され た再発 防止 策 につい て も形骸化 した部分
 が存在す るこ ととな り、本件案件 が発生す る結果 をもた らした とい える。
   この よ うに NOSの 経営陣 の会計不正 リス クに対す る取組 が十分 で あつた とはいい難 い
 が 、 そ の背景 には 、NOSの 経営陣 の会計 リテ ラ シー の低 さがあつ た といわ ざるを得 ない。


4.経 営陣 の コンプ ライア ンス に対す る取組 の不十分性

  役職員 が共 有す る基本的な価値観・理念や行動規 範 、 なわち企業文化 は内部統制 の仕
                               す
 組 み を実効性 あるもの とす るため の屋 台骨 として位 置付 け られ る。そ して 、経営陣 の姿勢、
 特 に経 営 トップ の 姿勢 は この よ うな企 業文化 に大 きな影 響 を与 えるものであ り、不正 リ
 ス ク管 理 の観 点 か らは 、経営 トップが役職 員 に コ ンプ ライア ンスについてのメ ンセ              ジ
 を発 出 し、これ を浸透 させ る ことによ り、あるべ き企業文化 を醸成す ることが極 めて重 要
 となる。
  そ の ため、経 営 トップ をは じめ とす る NOSの 経営陣 は 、コンプ ライア ンスについて 、そ
 の趣 旨 。目的 とともに具体的な 目標 を掲 げ、従業員 に対 し、コ ンプ ライア ンスの重要性や
 具体的 な方法等 につい て メ ッセー ジを発 出 し、 かか るメ ッセー ジを踏 ま えた従業員 の コ
 ンプ ライア ンスの姿勢 を絶 えず モ ニ タ リン グす るこ とが求 め られ る。 この点、NOSの 経営
 トップが従業員 に対 しメ ッセー ジを発 出す る機会 としては、全 社員 向け の社長 ビデオ メ
 ンセ     ジ 、部長 ・ 室長職以上 の従業員 との幹部会及 び全社 ミー テ ィ ング等 が あつた。
   しか しなが ら、 これ らの機 会 において コ ンプ ライア ンスの重要性 につい て の メ ンセ
 ジが発 せ られ る回数 は極 めて少 な く、 メ ンセ        ジ そ の ものの量 も ご く短 時間又 は少量 に
 留 ま るものが ほ とん どで あ っ て 、そ の 内容 は コ ンプ ライア ンスの た めの方 策 の提案等 を
 伴 わない な ど具 体性 に欠 けるもので あ った。また 、ほ とん どの メ ッセー ジは、内部監 査室
 や会計監査人 に よる指摘 、 して特別調査委員会 に よる調 査 結果 な どとい っ た 、
                そ                                特定事案
 に対応す る形 でな され た もので あ って 、対症療法的 に出 され た もの にす ぎなか った (例 え
 ば、2015年 度 か ら 2019年 度 にお いて 、前記 の社長 ビデオメ ッセー ジ等 の 中で コンプ ライ
 ア ンス に関 して発言 を行 つた回数及 び 内容 は別紙 第         7・     4の 1な い し 3の とお りであつ
 た。)。




   例 えば、あ る取締役 は、ある会社 aが 与信 管理 で 引 つかかつた場合 に、他 の会社 bを 直接 の顧 客 とし
   て介在 させ る こ とで 、会社 aと の取 引を実行す る とい う手法 が取 られ てい るな ど、再発 防止 策 の抜 け
   道 が利 用 され てい る こ とを認識 していた 旨述 べ てい る。

                                111
      また 、経営陣 か ら従業員 に対す るメ ンセ         ジ は、ビデォメ ッセー ジ等 の形 のみな らず 、
     人事評価 の指標 に も表れ る。人事評価 の指標 は、経営陣 か ら従業員 に対 して求 める能力や
     行動等 を端的 に表 す もので あるためである。 しか しなが ら、NOSで は、これ まで不正行為
     が繰 り返 し発覚 したに もかかわ らず 、人事 上の評価指標 の基準 とな る指標 に、コンプ ライ
     アンスに 関す る項 目は置かれ ていない        [102]。

      上 記 の よ うに、経営 トップ をは じめ とす る経営陣は 、ビデオ メ ッセー ジや、人事評価 の
     指標 の設 定等 を通 じ、経営陣 が コ ンプ ライア ンス を重視 してい ることについ てのメ ンセ
     ー ジを発 出 し、 コ ンプ ライア ンス を重視す る意識 を社 内に浸透 させ るため の措置 を十分
     に とってい なか ったのであ り、かか る経営陣 の姿勢 が 、NOSの 従業員 において 、コンプ ラ
     イア ンスの重要性 を軽視 させ る結 果 とな り、本件案件 が発生 す る一 因 とな った と考 え ら
     れ る。


5。    経営陣 と現場 の乖離


      不祥事予 防 の観 点か らは、顕在・潜在的 な リス クに迅速 に対処 し、業務改善を行 うこ と
     が必 要 とな るが 、リス クの早期発見 のために は、経営陣 が現場 と双方向 の コ ミュニ ケー シ
     ョン を取 るこ とによ り、経営陣が、現場 の実態 を適時・適切 に把 握す る ことが必 要不可欠
     である。
      本件案件 との 関係 でい えば、前記第 4・ 2(5)イ の とお り、原価付替 の動機 としては、追
     加 原価 申請 に要す る時間及び作 業量 の多 さが指摘 され 、特 に東          1・   第 1営 業部 において原
     価付替 が多 く発生 した理 由 と しては 、公共 案件 にお い ては経 営委員会 での承 認 が必 要 と
     な る ■■■ 円を超 える追加 原価 が発 生 しや す い にもかかわ らず、 この よ うな ビジネ ス上
     の特性 を踏 ま えず に追加 原価 の発 生理 由を厳 し く糾 弾 され る こ と等 に よる追加 原価 申請
     に対す る心理的抵抗 の大 き さが挙 げ られ る。そ の ため、原価付替 を予防す るためには、平
     川 氏及 び他 の経営陣 が 、追 加 原価 申請 に要す る負担や公共案件 において追力 原価 が発 生
                                                  日
     しやす い こ と等 を理 解 した上 で 、追加 原価 の承認 ル ール や追加原価承認 に係 る経営陣 の
     姿勢 が過 度 に厳格 な もの とな っ ていないか等 を検討 し、必要 に応 じて これ らの 見直 し等
     を行 うことが望 ま しか った と考 え られ る。
      なお 、本調 査 にお いて 当委員会 が営業担 当 の従業員 へ の ヒア リングを実施 した ところ、
     東 1を 中心 とす る営業部 門 の多 くの者 が 、
                                前記 の追加原価 申請 に対す る負担 の大 き さや 、




      2018年 11月 付 け 「人事制度ガイ ド ック」参照。人事評価 は、各人 に設 定 され た 3つ の 「目標」 の
                              ブ
      達成度 (0点 ∼ 180点 )と 、 目標外 の加 点減点要素 (-10点 ∼ +10点 )を 組 み合 わせ た 「目標評価 ポ
      イ ン ト (合 計 -10点 ∼ 190点 )を 指標 の一つ としてい るが (同 ガイ ド ック 28頁 )、 コンプ ライ ア
           」                                          ブ
      ンスの状況 を評価す る旨の記載 はない。 さらに、当委 員会 が ヒア リング を実施 した営業部 門・技術 部
      門 の従業員 の 中で 、コ ンプ ライ ア ンスに対す る姿勢が会社 に評 価 され てい る と考 えてい る者 は見 当た
      らなかった。

                                    112
 公 共案件 の特殊性等 を述 べ ていた こ とか らす る と、 )│1氏 において 、こ うした現場 の声 を
                                  平
 把握す る こ とは容易 であつた と考 え られ る。
      しか しなが ら、平川氏 は、前述 の現場 の声 を認識 してお らず 、そ の結果、本件案件等 の
 原価付替 が行 われ得 る状況が改 善 され ることはなか っ た。このよ うに、把握す る ことが容
 易 であ つ た と考 え られ る声す ら認識 していなかった こ とか らすれ ば、経営陣 として 、現場
 の実態 を把握 しよ うとす る意識・ 姿勢 が欠 けてい た といわ ざるを得 ない                [Ю
                                                                 3]。



      また 、 )│1氏 が現場 の実態 を把握 できていなかった こ ととの背景 として、
          平                                      経営陣全体 と
     して 、業務 改善 に役 立て るために現場 の声 を把握す る意識・姿勢 が不 十分 であつた ことが
 指摘 できる。す なわち、経営陣にお いて は、現場 が抱 えてい る課題等 を吸 い上 げる仕組み
 は必 ず しも整 っ てお らず 、現場 との コ ミュニ ケー シ ョン は個 々 の取締役 の意識や力量 に
     よっ ていた 旨の発言や 、全 ての取締役 が十分 に現場 の声 を把 握す る姿勢 で あ っ たか否 か
 は疑間が ある 旨の発言 があつた。また 、吉野 氏 は、当委 員会 の ヒア リン グに対 して 「原価
 付替 を行 う動機 が分 か らない 」旨述 べ てお り、現場 の声 を把 握 しよ うとす る意識 に欠 けて
                                                    「
 い る ことが窺 われ る。 なお 、 この点 に関 しては、管 理職 クラスの従業員 か らも、 吉野氏
 に対 し意見 を述 べ た として も、聞き入れ る姿勢 が示 され な い 」 「
                                         、 吉野氏 には意見 を述 べ る
     こ とは諦 めてい る」といつた声が上が ってい る。また 、営業部 門に限 らず現場 の従業員 か
     「
 らは 、 現場 が 困 つてい る こ とを上 に訴 えて も、経営陣まで届 かず何 ら対応 して も らえな
 い」 「
   、 現場 の意 見 も聞かず に経営陣 の判 断で導入 され たシ ステ ムや制度 が 、現場 の動 き方
     と合 っ てお らず 、業務 の停滞 を招 いてい る」といつた不満 の声 が広 く見受 け られ、従業 員
     として も経営陣 に対 して意見等 を述 べ づ らい実態 があった とい える。
      この よ うに、経営陣 として 、業務 改善 に役 立て るために現場 の声 を把 握す る といつ た意
 識・ 姿勢 が 不十分であ つた こ とが窺 われ 、この よ うな状況 の 中 で、経営 陣 において 、追加
 原価 申請 に対す る負担 の大 き さや 、公 共案件 の特殊性等 の現場 の状況 を十分 に把 握す る
     こ とがで きて い なか っ た こ とが本件案件等 の不 正 行為 の一 因 とな った もの と考 え られ る。


6.社 外取締役 の指摘 に対す る経営 陣 の感度 の低 さ

      経営陣 としては、社外取締役 の最 も重要な役割が、株主の付託を受けて、会社 の持続的
 な成長 と中長期的な企業価値 の向上を図る観点か ら経営を監督す る点にある [104]こ とを
 踏 まえ、 正 リスクに関する社外取締役 の指摘については真摯に対応す る必要がある。し
      不
 か しなが ら、 この点についての NOSの 経営陣の姿勢 は必ず しも十分であるとはいい難 い
     ものであった。




Ю3    平川 氏 自身 も、現場 の声 の吸 い上 げは行 つていない 旨述 べ ていた。
Ю4    経済産業省「  社外取締役 の在 り方 に関す る実務指針 (社 外取締役 ガイ ドライ ン)」 (2020年 7月 31日 )14
      頁以 下。

                                    113
                      「
     例 えば、今井 氏 に よれ ば、 管理畑 が弱 い」 とい う話 は取締役会や経営委員会 で も出て
 お り、今井 氏 自身 も、経理部が弱 い こ とや 2019年 6月 13日 以降管理部 門出身 の役員 が
 不在 とな つ てい るこ とにつ い て問題 視 し、従前 か ら経 営陣 に指摘 してきた との こ とであ
 るが 、2019年 循環取 引事案発覚前 においては、管 理 部 門 の強化 につい て経営陣 による積
 極 的な改善姿勢 は認 め られ なか っ た。また、本件案件 と直接 関連す るや り取 りではな いが 、
 後記第       9・   2(1)の とお り、2019年 7月 11日 の経営委員会 にお い て 、河 上氏か ら、己 1案
 件   (当 該取 引は      2019年 特別調査委員会調査報告書 において循環取引 として指摘 され た取
 引 である。         「
       )に つい て 、 これ は循環取 引ではないのか」との質 問がな された ところ、平)││
 氏 は 、 かか る質問 に対 して 、十分 な確認 を行 うこ とな くそ の場 で 問題 な い 旨即答 した。
     この よ うに、社外 取締役 か らは、経営陣 に対 して 、不 正 リス クに関す る指摘が複数 な さ
 れ ていたに もかかわ らず 、経営陣 にお い て これ を踏 ま えた十分 な改 善や事実確認 等 の対
 応 が行 われ ていない 面 があつた こ とは否定 できない。この よ うな経営陣 の姿勢 は 、社外取
 締役 の監督機 能 を尊重 しなが ら業務 の執行 を行 うべ き立場 にい る者 の姿勢 と しては必 ず
 しも十分 ではな く、本件案件 を防止 できなかった遠 因 の一つ とな つた と考 え られ る。


7.内 部統制 システム構築・運用に係 る責任

(1)総 論


     本調査 の結果、NOSの 取締役 が本件案件 を具体的 に認識 し得 た ことを窺 わせ る事 情 は見
 当た らなか っ た。 もつ とも、前記第 4及 び第 5の とお り、NOSの 内部統制 システムの構
 築。運用 に必ず しも十分ではな い 点があ った ことは否 定できな い ため、以下 では、本件案
 件 に関 し、NOSの 取締役 に内部統制 システム構築・ 運用 に係 る法的義務 の違反 が あるかを
 検討す る。
     大会社 で ある取締役会設置会社 にお いて、取締役会 は、取締役及び従業員 の不 正行為 を
 防止 す るため、内部統制 システムの大綱 を決定す る こ とを要 し (会 社法 362条 4項 6号 、
 5項   )、   代表取締役 以下 の業務執行取締役 は、 そ の大綱 を踏 まえ、内部統制 システム を具
 体的 に構 築す べ き義務 を負 う。
     もつ とも、構築す べ き内部統制 システ ムの 内容 につい ては、当該会社 の規模 、事業 内容
 そ の他 の事情 に よっ て左 右 され るた め、業務執行 取締役 に広 い裁量 が与 え られ てい る と
 い える。 したが つて 、業務執行取締役 は、同種 の不 正 行為 が行 われ ていたな ど、本件案件
 の発 生 を予見す べ きで あ つ た とい う特別 な事 情 がない 限 り、通 常想 定 され る不正行為 を
 防 止 し得 る程度         (「                       )の
                         完全 に排 除 できる」程度 ではない。 管 理 体制 を整 えていれ ば、不 正
 行為 を防止す るため の リス ク管 理 体制 を構築す べ き義務 に違 反 した とはい えない (最 高
 裁判 所平成 21年 7月 9日 第 1小 法廷判決・ 集 民 231号 241頁 参照)。 この点に関 し、NOS
 では、前記第 6・ 1(1)及 び同・ 2(1)の とお り、甲事 案 の うち甲-2案 件等 と同様 の架空取

                                      114
 引 の手法 での不 正 (2013年 事案及 び 2014年 事案 )や 、 乙事案、丁事案等 と同様 の取引先
 にお けるプール金 に関連す る不正 (2014年 案件 )が 発 生 してい るため、上記 「    特別 な事
 情」が存在 した ともいい得 る。そ こで 、NOSの 業務執行 取締役 において 、本件案件 に 関 し
 内部統制 システ ム構築義務 を果 た していた とい えるかについ ては、2013年 事案及 び 2014
 年 事案 が特別 な事情 といい得 る場合、 これ らを踏 まえた                 NOSの 再発 防止策等 を踏 まえて
 検討 され る必要がある。
  また 、取締役 は、 築 された内部統 制 シ ステ ム が有効 に運用 され てい るか を継続的 に監
            構
 視・ 監督す る義務 も負 つてい る。もつ とも、各取締役 は、他 の取締役や従業員 がそれぞれ
 分担 された職務 を適正 に遂 行 してい ることを信 頼 して よい とされてい るこ と (い わゆる
 信頼 の原則 )か らすれ ば、内部統制 シス >ム の運用 にお いて 、取締役や従業員 が職務 を適
 正 に遂行 していない こ とを疑 うべ き特段 の事情 が認 め られ たに もかかわ らず 、適切 な調
 査や 対応策等 を実施 しなかった場合 に初 めて 、内部統制 システムの運用 に関す る監視・監
 督義務違反 があつた とい うべ きである。


(2)NOSの 内部統制 システ ム


  ア。 内部統制 システムの構 築


        当時、NOSに お いて は 、営業部 門による架空取引、水増 し取 引及 び原価付替 並び に
    従業員 による         NOS資 金 の領得行為 を防止す るために、概要以下 のよ うな内部統制 シ
    ス テ ムが構築 され ていた。
    ① 職務分掌規程な どを定めて、本件案件 を行 つた営業部門である東        第 1営 業部        1・


         とこれに対応す る技術部門 (た だ し、ここではポス トセールスを行 う ンジニア
                                              エ
         リング本部・ システム技術部等を含む。)及 び購買部門 を分離 していた。
    ②    前記第 4・ 2(1)の とお り、見積 り、顧客か らの受注、仕入先又は外注先へ の発注、
         検収 の手続 の中で営業部門以外 の部門のチェ ックを経 る体制 となっていた。
    ③    前記第   4・   3(1)の とお り、CRO、   RCC、   法務・CSR室 、TQM推 進部を中心 とした一
         定 の リスク管理体制 が整備 されていた。
    ④    内部監査室による一定のモニ タリング体制 が整備 されていた。
    ⑤    内部通報窓 口を設 け、 コンプ ライア ンスに関す る通報 も行 えることなどを社内
         に周知 していた (本 件案件に関 して通報 。相談 が行われなかった理由は、関与者
         において通報等に至 る強い動機 が生 じなかったためであ り、必ず しも制度 の周
         知が不十分であつたわけではない。)。


    ⑥ 就業規則 上、従業員 が他 の会社 の役員に就任す る場合には、事前に NOSの 許可が
         必要 とされていた。



                                      115
  これ らの事情 か らすれ ば、当時 の NOSの 体制 は、同業他社 にお ける体制 に大 き く見
 劣 りす るよ うな内容 ではな く、 な くとも、通常想 定 され る架空取引 、水増 し取 引及
                    少
 び原価付替 並び に従業員 によるプ ライ ベ ー ト ンパ ニー を通 じた
                            カ                 NOS資 金 の領得行
 為 とい う不 正 行為 を防止 し得 る程度 の管 理体制 を構築 していた もの とい える。
  また 、NOSに お いて は、甲事案 の うち甲 2案 件等 と同様 の架空取 引 の手法 によつて
 2013年 事案 が発 生 してい るものの 、 れ に対 しては、
                         こ         前記第 6・ 1で 詳述 した とお り、
 2013年 事案調査委員会 に よる調査 を経 て、見込原価設定 の改善、案件収支管理 の改
 善、外注取 引先管 理 の整備及 び 改善 並び に購 買部 門 による牽制等 を中心 とした一 定
 の再発防止 策 が講 じられ てい る。
  なお、NOSに お いて は、2014年 事案 が発 生 してい るところ、当該事案 は、甲事案 の
 うち甲   2案 件等 と同様 の架 空取引 の手法 に よるもので あ り、 また 、 乙事案 、丁事案
 等 と同様 、取引先 にお けるプール 金 に関連す る不正である。 しか しなが ら、2014年
 事案 は 、手法 こそ本件案件 の一 部 と共通 し、か つ 、前記第   6・   2(2)の とお り自社 を含
 んだ IT業 界全体 に関係す る問題 と して認識 ・ 活用す べ き事案 であった とはい え、 コ
 ンプ ライ ア ンス体制 の構 築 に関す る規程 類 が整 備 され ていない子会社 にお いて全て
 の決裁権 限 を有す る代表取締 役 が起 こ した不 正 との側 面 が 強 く、 一 定 の 内部統制 シ
 ステ ム が構築 され てい る   NOSに お ける従業員 による不正で ある本件案件 の発生 を予
 見す べ き特別 な事情 とまでは断 じ難 い。
  したがつて 、2013年 事案 との 関連 では、本件案件 の発 生 を予見す べ き特別 な事情
 が あ つた とはいい得 るものの 、NOSに お い て、2013年 事案 を踏 ま えて何 らそ の再発 を
 防止 し得 るよ うな体制 を構 築 しなかった もので はな い た め 、過 去 に同様 の手法 に よ
 る不正事 案 が発 生 していた こ との み を もつて 、内部統制 シス >ム 構築義務 を果 た し
 ていなかった とまでは認 め られ な い と考 える。


イ .内 部統制 シス テ ムの運用 の監視 。監督


  前記第 4及 び 第 5で も詳述 した とお り、NOS内 の 内部統制 システ ム には、営業部 門
 内 のチ ェ ック機 能 の欠如 、技術部 門及 び購 買部 門に よるチ ェ ック機能 の欠如、RCC、
 法務・ CSR室 、TQM推 進部及 び リス ク管 理室 による リス ク管理活動 の不十分性並びに
 内部監査室 にお ける不 正 リス クに対す る意識 の希薄性等 の 問題 が あ り、外形的・形式
 的 には整理 は され て い た として も、 部 の運用 にお い て、
                         一             実体 を伴 って い な い状態 に
 な っ ていた といわ ざるを得 な い。
   しか しなが ら、当委員会 の行 つた 関係 資料 の精査、関係者 に対す る ヒア リン グ及び
 メー ルデー タ の レビュー 等 の調 査 にお い て も、 かか る内部統制 シ ステ ムの運用 にお
 いて 、取締役や従業員 が職務 を適 正 に遂行 していな い こ とを疑 うべ き特段 の事情 を
 取締役 が 具体的 に認識 していた とい う事情 は認 め られ なか った。

                          116
        したが って 、取締役 において内部統 制 システムの運用 に関す る監視 。監督義務違反
   があつた とまでは認 め られな い と考 え られ る。


  ウ。 そ の他


        なお、前記 第   5。   1(3)工 の とお り、NOSの 」 SOXに 係 る内部統制評価業務 において
   は 、運用評価 業務 にお ける不適切 なサ ンプ リング等 の 問題 点が存在 した こ とが明 ら
   かになった ものの 、」 SOXに 係 る内部統制評価 は、あ くまで金融商品取引法 に基 づ く
   情報 開示 の適 正 を確保す る観 J点 で 実施 され る もので あ り、仮 にそ の手続 に不備 があ
   つ た として も、 ちに、
             直   会社法 上の内部統制 システム構築義務違反 が ある ことになる
   もので はない と考 え られ る。そ して 、NOSは 、前記 アの とお りの 内部統制 シス テ ム を
   構築 してお り、内部 監査 において指摘 され た不備 の 内容等 を踏 まえて も、 記 内部統
                                               上
   制 システ ム構 築や そ の運用 が 直 ちに否 定 され るもので はな く、それ を もつて 内部統
   制 シス テ ム構 築及 び運用 に関す る監 視 ・ 監督義務違反 があつた とはい えな い との上
   記結論 を覆す には至 らない。


  工 .小 括


        以 上 よ り、本件案件 に関 し、NOSの 取締役 に内部統制 システム構築 。運用 に係 る法
   的義務 の違反 が あ つ た とまでは認 め られ な い と考 え られ る。


8.小 括

        以 上 の とお り、本件案件 が発 生 した こ とに関 し、経営陣に内部統制 システ ム構築義
   務違反 がある とまでは認 め られな い ものの 、本件案件 の発生 につい ては、経営 トップ
   を中心 とす る経営陣に経営責任 がある といわ ぎるを得 ない。




                                  117
第8「 目安箱」 の結果


1.目 安箱設置 の経緯

  当委員会 は、NOSに お いて不適切 な事案 が繰 り返 され る原 因につい ての役職員 の意見 を
 確認す るため、また、役職員 の 声 も踏 ま えた上で実効 的な再発 防 止 策 を提言す るため 、
 2021年 1月 4日 か ら同月 25日 までの間 に 「目安箱」を開設 した (た だ し、期 間経過後 に
 投稿 され た意見 も受 け付 けた。 目安箱 は、NOSグ ループの役職員 を対象 として 、選択式
                    )。


 ではな く、自由回答 の方式で、かつ 匿名 に よる回答 も可 とした上で 、NOSに お いて繰 り返
 され る不適切 な事案 につい ての根本原 因及 び改 善策 につい て意 見 を募集す る とともに、
 そ の他 のカテ ゴ リー を設 け広 く役職員 か らの意見 を募集 した。
  目安箱 には、 171件 の意見 が寄せ られ た (根 本原 因 に 関す る意見が 65件 、再発 防止 策
 に 関す る意 見 が 57件 、 の他 が 49件 である。 目安箱 に投 稿 され た意見 のサ マ リー は、
                  そ             )。


 別紙第 8の とお りである。
  目安箱 の結果 のサ マ リー につい ては 、投稿 した役職員 を特定 で きな い よ う必要 に応 じ
 て処 置 を施 した上 で 、経営陣 に対 して共 有 した。


2.投稿意見の紹介

  目安箱には種 々の意見が寄せ られたが、その多 くが、   ①内部統制 に関す る声、②経営陣
 の体質 (ガ バナ ンス)に 関す る声、③企業文化 に関する声及び④人事評価 。 人事制度に関
 す る声であつた。




                            118
※複数 の項 目に関す る意見は該 当す る項 目にそれぞれ計 上 した。


                                      の  を募集 したも
 前記 の とお り目安箱 は選択式 ではな く、自由回答 の形式で役職員 意見
                               「             が本件
のであ り、目安箱 に投稿 された意見は、全 て役職員 の 生 の声」 として、当委員会
案件 の原因分析及び再発防止策 の検討 を行 うに当た り、  大変貴重な検討材料 となつた。以
                                    して紹介する。なお、 投
下では、前記 の視点 ごとに、目安箱 に投稿 された意見 を適宜抜粋
                              してい る。
 稿 された意見は、一部、趣 旨を変えない範囲で加筆、修正


(1)内 部統制 に関す る声

                                    ことをやれと
  内部統制と う J点 から 「 が一置 く ツクオZ五 スは言われた
       い 観     は、 営業 健 バ
 ヤ`               の   め                          として営業部門
                          べ き部署 が積極 的に牽制機能 を働 かせていない
 が優位 な立場 にあ り、牽制機能 を果たす
                     「      ま
                            イ、   シ ス テ ムや 手順 に    してお   ず、
 と指摘す る声 が 目立った。 さらに
   者 説明のみで
 担当 の     承認を 2て いること ミ 多数」「 J聾 遂理速歪皿主2【 Ln盛 4
             行      ぃ 人
                     辺     、送
   ぃ土 理   こ部が先決」 堕遡韮湿賀∠壕数辺盤雄整盪迎典吐Knh適 辺▲上長
 いこと を 鰹する と    、

                          119
                                         ェ     を果
が管理す るべ きJと い うよ うに案件 を審査す る上席 の役職員 が適切なチ ック機能
たしていないのではないかとい う    声も寄せ られた。
 また、業務処理のルール、システムとい う     観点からは、 業務システムに関 して操佐が
                                 「
                                つていない」 との声も多 く、
異重L握雄 」 との声、 社 内業務ルールが複雑かつ実態 に沿
            「
                           ペレーションを踏まえていない可能
業務ルールやシステムが現場におけるビジネスのオ
                                            「
                            ール、シスケムの弊害 として、 現
性が窺 える結果 となつた。 さらに、 このような業務ル
                                                   日        ど       ヤ`
      の

  して           つ         て                  こ
                                            イ          1こ       つ    と例外処 理 の常態化 を指
          「                         ァレー ル                                つ    こと     し
摘す る意 見や 、                の

                                                                             白 i暫 子う者 が 出 て
 処理             が必 要 とな り、それ を回避す るため に新 しい処理 方 法 を
                                    つた。
 負ね建瑳滋芝述立釦 と現状の業務手続の潜脱のおそれを指摘す る意見があ


(2)経 営陣 の体質        (ガ バ ナ ンス)に 関す る声


                                            いて繰 り される
                                                 返
  NOSの 経営陣の体質 (ガ バナ ンス)に 関す る意見 としては、NOSに お
                                           る風潮がある」「、彼
 不適切な事案への対応 について、性懸査"を 問題 にすることで解迭す
                                       ヤ` ヽ「
    の      が べ     己の

 生 した際に堕隠ぺいが基本」等、 NOSの 経営陣の責任回避の姿勢に対 して疑義を呈す る意
                                  べき」等、具体的な責任
 見が寄せ ら 「 営者Q貢 任 は重く、報酬の返還及び退陣をす
       れ、 経
 追及の方法に言及する意見も 少なから せら 。
                   ず寄  れた
  また、 経営 が長く 団色也【壼盪ェ震堪耀歴区渡生選制饉Y邁 藝4燿観理卿動 と I
     「 層    集                            コ〔                                           Ltこ   it生


                               「           がある人やア
 翔     」等 と 経営陣のなれ合いを指摘す る意見や、 声が大きく 饗力影
 ピール が    上                    イこ つ 彰`   等、そのよ うな経
                                     した。
 営陣の姿勢 が役職員 にも波及 していることを指摘す る意見も存在
                                            配 を懸念す
  さらに、 (吉 野氏は)会 社 を私物色 していないか」等、吉野氏による経営支
       「

 る意見も投稿 され ていた。
                                           の
      こ うした現状を改 めるために、 経 営陣の入れ査 え」 (外 部 か ら 人材登用を含む。
                      「                             )を
 求める声 も多数見 られた。


(3)企 業文化 に関す る声

          意見としては、 数字至上主義」 「 具Q競 争意識を房り 嵯ェ
                 「      、社             続 無理                                    lナ



  企業文化に関する
                                    k「 と 娘
                                       期
 型 噛 穀 画 厳 皿 錮 越 逮 堂 鋤 幽 鐘区 羞
  の       レ    シ                せ       ヽ
                                             とい うよ うに 日標数字 の達成 に過度 に重 きが置

              ひ いては 「                                       ヤ`
                                            々 で        い                 カ
  か   れ   、
                     プ        ル が   の




                                             120
 い の           ヽ         つ   い       等 、ノル マの達成以外 に統 一 的な経営 理念 が十分 に浸透
していなか つた と分析 した意 見 が寄せ られ た。
                 「                                                                           い
 また、営業部門 内にお いて も フ ロ ン
                                                                            べ
                   ロ ン           ヤ`            で の

  コ    ユ   ー
                   ― シ           し    い   と担 当者 間 で 、あるいは、 当者 と上席 の間 で 、
                                                          担
                                                                 した。
案件 の把握 が十分 にで きて いない 旨指摘 す る声 も存在
                   「
 さらに、人間関係 に関 して、
          「                       等、上意下達の社風、及
謀ム雲基と立h」 、 先輩生後輩Q回 歪Qェ 恒極閲堡盛五里An」
びそれによる上司と  都下の信頼関係の欠如を指摘する意見が見ら   れた。
                      「                                                                 至    ロ
  この よ うな原 因分析 に対 して 、                                                 の
                                                 ゴ   ー   …
                                                             ル




                                                 えてい こ うとす る姿勢                  支 え られ る
セ ス        ャ レンジ、 敗 ヰ含 め て 、前 向 き に
                 失   ゝ
                           もあつた。
基佐上上とn」 等、組織文化の改善方法に言及する意見
    「`                           ってい
 なお、 ヤ い   コ ン    ン ス

                        が り し 生するのは東 1・ 第 1営 業
   適風上丞p咀 と述璽塾仰 等、不適切な事案 繰
                           返 発
重園立
                               の   せられた。
部であるとして、他部署の負担が増えていることに対する不満 声も寄


(4)人 事評価 。人事制度 に関す る声

                                「     の    制」で ある とい
  人事評価 に関す る意 見 としては、営業 部 にお いては 数字 だけ 評価体
                                    いて過度 に重視 され る雷指摘
 うよ うに、営業実績 や ノル マ の達成度合 いが 人事評価 にお
                  「                                              か              レ   シ        正
 す る声が数多 く見受け られた。                    ヤ

                                                                                        」 「
                                                                                         ヽ 現場 は
 な行為童助長 した」 「
           、
  (原   付 替 に よ り) 黒字 をア ピ ー レし、
                           フ                         益 率 を高 めてイ ンセ ンテ ィブ を多 く                け取

                                              なノ
 っている」等、NOSに おいて繰 り され る不適切 な事案 の遠囚が数字絶対主義や過度
                   返
 ルマの存在 にあつた と分析す る意見も少 なか らず存在 した。
                    「                           に ロ              ― シ                ロ    し
  人事制度 に関す る意見 としては、
                                           当間、部 門間 の連携不足
 等、長期 にわた つて異動 が な く部署や職 務 が 固定 され た結果、担
                                       営 業 マ ン の 中で悪 い 思 が 生
 や、 長 期 に顧 客担 当す るこ とで、今回の事案 の よ う1こ 担
   「
                                                                           が多 くみ られた。このよ
 まれ て しまったのかもしれません」といつた問題点を指摘す る声
           「                         は人事異動2裁 象上立
 うな問題 に対 して 複数螢 同一の顧客 との取引のある営業担当者
                                   の   を防止す ることを
 れば よい」等役職員 の異動 を積極的 に行 うことで特定の顧客 と 癒着
                                              「
                      点に関 し、現在 の人事制度運営 については、 自分
 解決策 として挙げ る声 もあつた。 このサ
 の                   い のが      上     し      つ




                     キ       プ   ン        立て                      ま

               `
 ゴh上遭立⊇姓疸二量切理軽穀 」とい うように、役職員の希望に基づ く異動が困難である



                                               121
                   「                      て ロー   ― シ    ン
 こ とを指摘す る意 見 もあ り、
                                         け られた。
 等会社 主導 の人事 ロー テ ー シ ヨン制度 を望む声 も見受


3.社 内意識調 査 との整 合

                                                       役職員 の意思 を把握
  NOSは 、2014年 度 か ら 2020年 度 まで の期間 (2018年 度 は除 く。)、


                                      ル ープの役職員 を対象 として、意識調
 し、自社 施策 に関す る課題 を検討す るた め、NOSグ
                                         まで の各調 査 を、それ ぞれ N14調
                                                           「
 査 を実施 して いた (以 下、2014年 度 か ら 2020年 度
                                   、 FY19調 査」及 び 「
                         、 FY17調 査」 「             FY20調 査」とい う )。
                                                              。
 査」「           、 FY16調 査」 「
    、 FY15調 査」 「
                                        「        識調 査」 として実施 され
 FY14調 査 か ら FY17調 査までは、NOS人 事部 に よる 人事制 度意
                                           に対す る役職員 の評価 等 に重点 が
 てお り、  人事制 度 一 般や 、当時新 たに導入 した人事制度
 置 かれ た調査 であ つたが、FY19調 査 と
                               FY20調 査 は経営企画部 が 「 内意識調 査」 として
                                                   社
                               の           、業務 負荷 、職場 、上司、 トップ
 実施 し、質問 のカテ ゴ リー も人事制 度 み な らず、仕事
                                                    的 な意識調 査 であ つ
 マ ネ ジメ ン ト お客様 志 向及 び コ ンプ ライ ア ンスが含 まれ る等総合
            、
 た。
                                         い そ の結果 を と りま とめる
   いずれ の調 査 も、各項 目に対 して役職員 が 5段 階評 価 を行 、
                                      査及 び FY20調 査 にお いては、各
  こ とで問題 点及 び改善点 を分析 して い る。なお、FY19調
                        「                   「
                            、3.5以 上 4.0未 満 は 及第」 3.0以 上
                                                 、      3.5未
  項 目の平均値 について 、4.0以 上 は 良好」
                  「             いた。
  満は 「注意」 3.0未 満 は 問題」 と整理 され て
          、


 (1)内 部統制 に関す る意識

                                                                 「
                                      FY19調 査及 び FY20調 査 にお ける Q68
   業務 にお ける コ ンプライア ンス意識 に関 して、
                                   ール を充分 に理解 し、      意識 した行動 を して
  あなた は、自分 の業務 に関連す る法令や社 内ル
                                         内ル ール を守 つて 、仕 事 が進 め られ
      、 Q69 あなた の職場 では、関連す る法令や社
  い る」 「
  て い る」 との質問 は、いずれ も 4.0を 超 える平均値 〔      良好〕で あ り、 コンプ ライ ア ンス意
                                        に FY19調 査 にお ける Q69の 平均値 を
  識 の高 さが窺 える結果 であ つた。 もつ とも、職位 別
                                            が 4.43、 マ ネ ー ジヤー 職 が 4.24
  見 る と、本部長 /副 本部長 以 上が 4.76、 部長 /室 長 /副 部長
                                       一 般社員 は 3.90と 、職位 が下がる ごと
  とス コアが高 い一方で、エ キ スパー ト は 4.09、
                             職
                       へ           つてい く結果 とな り、現場 と上位 層 との間
  に職場 で の 関連 法令等 の遵守 の評価 が下が
                                         め られた。 また、FY19調 査及 び FY20
  で コ ンプ ライ ア ンスヘ の感 覚 に差異 が ある ことが認
                               「 コ ンプ ライ ア ンス 】 目については得 点 が高
                                                   項
  調 査 に係 る結果報告書 にも記載 の とお り、 【
                                    して も注意す る必要 が ある」ことに留意す
  くな る傾 向が あるた め、 定害 の大 き さに対
                   否   1合

   る必要 が ある。


 (2)経 営陣 の体質   (ガ バ ナ ンス)に 関す る意識


                                  122
  経営陣 につい ての役職員 の評価 を問 う「 トップ マネ ジメン ト の項 目につい て 、
                                       」           FY19調
                「
 査 にお いて は、 えば 、 Q61 経営 トップは 、当社 をよ りよい会社 にす るために リー ダー
           例
 シ ップを発揮 してい る」 の設 間は、平均値 2.94〔 問題〕 とい う い結果 であ り、他 にも
                                        低
 「Q56 当社 では、第 一線 (現 場)の 情報 が会社施策 に活か され てい る」 「
                                             、 Q60 当社 は、
 社員 を大切 に しよ うとす る風 土が ある」の設 間につい て、平均値 が 3,0〔 問題〕を下回 る
 等 、他社平均 (3.5を 上 回 る)と 比 べ て [105]低 調 な結果 であ り、経営陣 のマ ネ ジメン ト
 能力 につい て疑間 が呈 され る結果 であ つた。なお、 ネ ー ジ ャー職 が トップ マ ネ ジメン ト
                               マ
 を評価 していない ことも、課題 として指摘 され ていた。
  FY20調 査 にお い ては、 かか る 「 トップマネ ジメン ト に関す る設 問 の平均値 にそれぞ
                                     」
 れ上昇 が見 られ、改善傾 向 が確認 できるが 、前記 の各設問          (Q56、   Q60及 び Q61)の 平均値
 は 3.5未 満 〔
          注意〕で あ り、 〔
                    及第〕評価 はな され ていない。
                   「
  また 、同年 の調 査 にお ける Q74:あ なたが さらに活 き活 き と働 き、能力 を発揮 できる会
 社 、職場 にす るた めに、当社 に必要だ と思われ る こ とは何 ですか 、また意識 して行動 して
 い るこ とがあれ ば記入 して くだ さい」 の設 問        (自       「
                              由回答形式 )に 対 しては 、 不 正 やで っ
 ちあげが横行 して 、 かあれ ばす べ て個人 の責任 」 「この会社 は 自己保身 の役員 が多す ぎ
            何                  、
 る」等 の 回答 が存在 した。
  FY19調 査及 び FY20調 査 のいずれ も一般的 な意識 調 査 であ り、 連 の不適切 な事案 との
                                            一
 関係 で募集 され た 目安箱 へ の投稿意 見 とは 目的 を異 にす るもので はあるが、経 営陣 の ト
 ップ マネ ジメン トに関す る不信感 を      NOS役 職員 が有 してい る とい う点、及 び経 営陣 の責
 任 回避 の姿勢 を問題 視 してい る点で 目安箱 へ の投稿意 見 との整合性 が確認 で きる。


(3)企 業文化 に関す る意識

                                            「
  数字・業績 を過度 に重 視す る価値観 につい ては 、FY14調 査 の時点で、 評価対象外 の業
 務 は全 く考慮 されず数字が全 て」 「
                    、 数字 しか価値 がない と会社 が思 つてい る」等 、 査 の
                                                  調
 自由回答欄 にお い て不 満 の声 が寄せ られて い る ところ、FY15調 査及び FY17調 査 で も同様
 の コメ ン ト 複数確認 できた。
         が         また、                         「
                      FY19調 査及 び FY20調 査 において も、 Q59 当社 は、
 利益追求 のみ に走 らず 、 実 な経営 を行 っ てい る」の設 間 に対す る回答 の平均値 はそれぞ
                誠
 れ 2.71〔 問題 〕 3.20〔 注意〕 と低 い水準で あ つ た。NOSの 役職員 が 、NOSに お いて数字・
             、
 業績 が評価 項 目と して過 度 に重視 され て い るので はな いか との 問題意識 を持 ってい る こ
 とは、 目安箱 に投 稿 された意見か らも確認 できたが 、社 内意識調査 にお いて も 2014年 度
 か ら継続 して確認 できるこ とであ つた。
  また 、FY19調 査及 び FY20調 査 にお ける 「Q17 職場 では、誰 かが仕事 で 困 つていれ ば
 見逃す ことな く、サポー トした り声 をかけた りして い る」 「   、 Q30 職場 では、他 の職場 と


  FY19調 査及 び FY20調 査 に係 る結果報告書 には、他社 比較 レー ダー チ ャー ト 載 つて お り、他社 の平
                                                    が
  均値 との比較 がな され ていた。

                               123
                                                   「
 の情報交換 が活発 に行 われ てい る」 の設 問にお ける平均値 は他社平均 に比べ て低 く、 Q8
 仕事 を進 める上で 、必要 以 上 に報告 を求 め られ る こ とはない 」の設 問にお ける平均値 が他
 社平均 に比 べ て高 い こ とを もつて 、FY19調 査及び FY20調 査 に係 る結果報告書では、 個
                                                       「

 人主義 の傾 向 が強 く表れて い る」と分析 され てい る。FY14調 査 か ら FY17調 査 では同趣 旨
 の設問はないが 、 自由回答欄 には、営業 が 「個人商店」 である 旨の コメン ト 毎年 10件
                                            が
 余 り寄せ られ ていた。 これ らは、営業 にお ける業務 の属人化 、個人商店化 の傾 向を示す 目
 安箱 の投稿意見 と整 合す るもの である。
  なお、目安箱 では上 司 との信 頼関係 の欠如 を挙 げる意見が寄せ られ ていた一 方、 内意
                                                社
        「
 識調査 では、 Q42 上 司には、悪 い情報 で も相談・報告 しやす い 」の設 問につ き、FY19調
                                             「
 査 では平均値 3.82〔 及第〕 FY20調 査 では 3.98〔 及第〕で あ り、 Q45 あなたは、 上 司
                  、
 を信 頼 してい る」 の設 間につ き、FY19調 査 の平均値 は 3,78〔 及第〕 FY20調 査 の平均値
                                              、
 は 3,94〔 及第〕である等、役職員 の満足度 が 高 い結果 であつた。


(4)人 事評価・ 人事制度 に関す る意識


  人事制度 に 関す る一 般的な評価 を問 う 「Q52 当社 の人事制度 は、社員 の成長 と意欲 の
 向上に役 立 っ てい る」 の設 間につい て 、FY19調 査では平均 値 2.63〔 問題〕 FY20調 査で
                                                  、
 は平均値 2.85〔 問題〕と、どち らもそ の年度 の調 査項 目中最低 の平均値 であった。ま た、
 FY15調 査 にお ける 「 問 H
                設      貴社 では、適切 な人財 が 、適切 な階層や ポジシ ョンに配置
 されて い る と思います か」 との設 問に対 して 、5段 階評価 にす ると平均値 2.77と い う低
 い結果 とな っ た。かか る結果 は、NOSの 役職員 が 、人事制度 一般 につい て数年来不満 を持
 つてい るこ とを示す もので ある とい える。
  人事評価 につい ては 、前記 の とお り、NOSの 役職員 が 、数字・ 業績 が評価項 目として過
 度 に重 視 され てい るので はな いか との問題 意識 を数年来持 ってい た ことが確認 で きた。
 なお、FY14調 査 、FY15調 査 、FY16調 査及び FY17調 査 にお ける 自由回答欄 においては「部
                                     「
 長 以 上は下 を数字 で しか見 ていない (FY14調 査 )」 、 数字 の 出るお客 を担 当 させ てほ しい
  (FY15調 査 )」 等 、数字 を出 さなけれ ば評価 され な い とす る意見が多数存在 した。
                     「
   人事異動制度 に関 して 、 Q50 当社 では、   人事異動 において本人 の育成 が考慮 され てい
 る」の設 問につ き、FY19調 査 では平均値 2.84〔 問題 〕と低 い結果 で あ つた。この点、   FY14
 調査 か ら FY17調 査 において も 「あなたはジ ョブ ロー テ ー シ ョン を希望 します か」 とい う
                                         「
 設 間 がある ところ、FY15調 査 を例 にす る と、そ の結果 は、 とて もそ う思 う」 と答 えた割
 合 が 11%、 「 う思 う」と答 えた割 合 が 21%、 「どち らともい えない 」と答 えた割合が 34%、
           そ
 「そ う思わな いJと 答 えた割合 が 20%、 「 くそ う思 わない 」 と答 えた割合 が 14%で あ り、
                            全
 様 々 な意見 はあるものの、 一 定数 の役職員 が ロー テ ー シ ョン を希望 していた こ とが確認
 で きる。



                             124
  この よ うに、FY14調 査か ら FY20調 査 を通 じて NOSの 役職員 が人事制度 一般 について問
 題 あ りとの意識 を持 つてい た こ とが明 らか となる結果 で あ つた。特 に数字 を過度 に重 視
 す る業 績評価 の弊害、人事異動制度 の機能不全 を指摘す る声 は、本件案件 の発 生 当時、あ
 るい はそれ以前 か ら存在 していた もので あ り、 これ らの事項 が本件案件 の遠 因 とな つ た
 旨指摘す る 目安箱 の意見 と整 合す るもので ある。


4.小 括

  このよ うに、 目安箱に投稿 された NOSの 役職員 の声は、①内部統制、②経営陣の体質
  (ガ バ ナ ンス)、   ③企業文化及 び④人事評価・ 人事制度 の問題点を指摘す るものであつた
 が、そのいずれについても前記第        4で 当委員会が認定 した本件案件 の原因 と主要な部分
 で重な り うもの といえる。
      合
  また、目安箱 に投稿 された意見の内容は、N(lSが 数年来実施 してきた役職員 の意識調査
 の結果 とも整合 し、本調査において当委員会が指摘する NOSの 問題点について NOSの 役
 職員 が長年声をあげていたことがわか る。
   2013年 事案調査委員会 も指摘するとお り (2013年 事案調査報告書 [開 示版]43頁 )、
 NOSの 役職員 の大多数は 「 真面 目な社員」なのであ り、現 に、 自社 の問題J点 を肌で感 じ、
 声をあげていたのである。NOSの 経営陣が今後、再発防止策を策定す るに当たつては、こ
 うした役職員 の意見を踏まえることが肝要である。




                            125
第9   2019         引事案 関連


1.再 発 防止 策 につい て

(1)原 因分析、再発防止策及び進行中の改善策 の内容


     ア.原 因分析


           NOSは 、2019年 ■ 月、東京 国税局 による税務調 査 の過程 で、一部取引につい て納
          品 の事実が確認 で きな い 取引 がある 雷の疑義 が ある との指摘 を受 け、 査 し、
                                                     調    2019年
          特別調査委員会調査報告書 において 、納 品 の事実 が確認 で きな い 取 引及 び これ に類
          似 す る不正 の有無及 び態 様 の確認 並び に原 因究明等 、NOS連 結財務諸表 へ の影響額 の
          算 定及び判 明 した 事実 を踏 まえた再発 防止 策 の検討 の提言 を受 けて い る。
           当該報告書 にお いて は 、ルール 等 の形骸化 、リス ク管 理体制上 の問題 、リス ク管 理
          活動上 の 問題 、内部統制 に係 る問題 、コンプ ライア ンス活動 に関す る問題 、経営層及
          び 幹部層 の取組 の姿勢 の 問題 、2013年 事案 を踏 まえた再発 防止 策 の不徹底並び に組
          織 風土 の 問題 とい つた原 因分析 がな されて い る。


     イ .再 発 防止 策


           NOSは 、上記 の原因分析を踏 まえ、下記 の とお り組織体制等 の変更及びルールの変
                                                           9][110][111]。
          更に関す る再発防止策を策定 し、現在 も実施中である [106][107][108][Ю


     (ア   )組 織 体制等 の変更




     2020年 6月 5日 付 け 「改善報告書」。
     2020年 12月 16日 付 け 「改善状況報告書」
                               。
     2020年 12月 2日 、社内ポータルで公 開 された 「 更新】 >【 重要】 再発防止に関す るルール変更に
                                   【
     ついて」並びに添付資料 「 添付 I】 再発防止に関す るルール変更
                       【                      vl.3」   及び 「 添付 Ⅱ】再発防止
                                                          【
     に関するル ール変更サマ リーvl,3」 。
     2021年 1月 14日 変更 「営業業務 ガイ ドライン」
                                  。
     別紙第 6の 3。
     2020年 4月 1日 付け 「機構改革及び幹部人事異動」  。
                                  126
     図表第 9。 1の 1:組 織体制等の変更の
     【                     概要】
N0       分類            項 目                      百糸
                                                羊田
1     リス ク管理    リス ク・ コ ンプ ライア ン 従前 の リス ク・ コ ンプ ライ ア ンス委員
                ス委員会 の分離            会 を リス ク管理活動 の評価 と統 制 の責
                                    任 を担 うリス ク管 理委 員会 とコ ンプ ラ
                                    イ ア ンス活動 の評価 と統制 を担 うコ ン
                                    プ ライア ンス委員会 に分離 し、各活動
                                    の取組 み を強化す る。
2     リス ク管理    リス ク管 理 の責任 部門明     不 正 リス クを含 めた リス ク管 理活動全
                確化                  般 の 責任 部 門 を リス ク 管 理 室 と定 め
                                    る。
3     リス ク管 理   CROの 役害 明確化
                       1の           リス クの識別 、 リス ク対応 、 リス ク管
                                    理活動 の有効性評価 、継続 的改善、そ
                                    の 他 の ジス ク管 理 プ ロセ ス とい っ た
                                    CROの 役割 を明確化す る。
4     リス ク管 理   リス ク管 理実 行計画 の策     全 部 門 を対象 としたオペ レー シ ョナル
                定                   リス クの評 価及 び 改善施策 、不 正 リス
                                    クの評価及 び 改善策 並び に活動 ス ケ ジ
                                    ュール を内容 とす る ジス ク管 理実行計
                                    画 を策定す る。
5.    リス ク管 理   リス ク調 査 シー ト 運用
                            の       各部門が 自部門業務におけるオペ レー
                                    シ ョナル リス ク及び不正 ジス クを四半
                                    期 ごとに リス ク管理室で作成 した調査
                                    シー トによ り洗い出 し、 リス ク管理及
                                    び リス ク管理委員会に対 し、 リス クに
                                    対す る認識及び取組状況を報告す る仕
                                    組みを運用す る。
6.    業務統制      購 買部 門 の独 立         組織 変更 に よ り、購 買・ 物流部 か ら購
                                    買機 能 を 「グル ー プ購 買部」 として独
                                    立 させ 、購 買業務 の見直 しを行 い 、統
                                    制 の 強化 を行 う。
7     業務統制      営業統轄室 の設置           営業取 引 の管理及 び統制 並び に営業業
                                    務 プ ロセ ス に関す る周知及 び 統制等 を
                                    職 責 と し、再発 防止 策 の実行 に 関す る
                                    業務 ル ール の変更や モ ニ タ リング を推



                              127
NO.      分類                項 目                      百糸
                                                    羊田
                                        進す るため、新 た に社長 直轄組織 とし
                                        て営業統轄室 を設置す る。
8.    業務統制         営業統轄室 との連 携          従前、営業 のサポー ト業務 を行 ってい
                                        た営業支援室の業務内容 に営業統轄室
                                        と連携 して業務統制を行 うこ とを追加
                                        し、名称を営業管理室に変更す る。
9.    内部監査         監 査 手法 の 追加          従来 の 監査手法 に加 え、営業担 当者や
                                        そ の上 司 へ の ヒア リン グ 等 を取 り入
                                        れ、監査実効性 を確保す る。
10    内部監査         監査対象 の拡大             会計監査人 の監査対象 となっているか
                                        否 かにかかわ らず 、NOSの 基準に則 つ
                                        て、 よ り く内部監査 の対象を決定す
                                              広
                                        る。
11    人事制度         人 事 ロー テ ー シ ョンの 導   人材 の 固定化傾 向 を避 けるため、同一
                   入                    顧 客 の担 当期 間 が   5年 以上 の営業職 に
                                        つい ては 、異動又 は担 当顧 客 の変更 を
                                        実施す る。
12.   コ ン プ ライ ア   内部通報制度 の見直 し         ハ ラス メン ト 関す る通報窓 口と不 正
                                                 に
      ンス活動                              に 関す る通報窓 口を分離 し、それぞれ
                                        の窓 口を責任部 門      (リ   ス ク管 理室 、法
                                        務。CSR室 及び常勤監査役 )が 務 め、通
                                        報 内容 に応 じて適切 な担 当者 が対応 で
                                        きる体制 を整 える。
13    コ ン プ ライ ア   コ ンプ ライア ンス活動計       各部 門 で職場環境や ハ ラス メン ト 止
                                                             防
      ンス活動         画 の策定                等 の コ ンプ ライア ンス活動 に関す る計
                                        画 を策定 し、CRO及 び 法務・CSR室 によ
                                        り定期 的な レビュー 並び に コンプ ライ
                                        ア ンス 委 員 会 で の 共 有 及 び 指 導 を行
                                        う。
14.   コ ンプ ライ ア    コンプ ライア ンス教育の 参加者が主体的に参力 できるワー クシ
                                           日
      ンス活動         実施                   ョップ形式での意見交換会等 の取組み
                                        や上司 と部下の個別面談 におけるコン
                                        プ ライア ンス活動宣言 (社 内に公表 し
                                        ている 自身が取 り組む コンプライア ン
                                        スに関す る活動)の 実践状況に対す る

                                 128
N0            分類              項 目                          両糸
                                                           羊田
                                             フィー ド ック等を コンプ ライアンス
                                                  バ
                                             教育の一環 として実施する。
15.        企 業風 土形 成   ビジ ョン浸透委員会    [112]   社外取締役 を含 んだ 、企業風 土 改善 へ
                       の再設置                  の取組 み を 目的 と した ビジ ョン浸透委
                                             員会 を再設 置す る。
16.        企 業風土形成     ビジ ョンブ ックの 再編集        10年 以 上 見直 され ていなかった NOSの
                       と浸透活動                 企 業理念 を示す ビジ ョンブ ックの再編
                                             集 を行 い 、社員 の行動指針 の 見直 しを
                                             実施す る とともに、社員意識 の 改善 に
                                             向けた取組み を行 う。
17         企 業風土形成     報酬制度 の検証              2018年 度 よ り運用 され てい る新人事制
                                             度   (イ   ンセ ン>ィ ブ制度 の変更等 )の
                                             運用状況 を検証 し、改善 の必 要性 につ
                                             いて評価す る。
18.        そ の他        霞 が 関オ フ ィスの 閉鎖       2019年 循環取引事案 が生 じ、組織 マネ
                                             ジメン トとして管 理不全 の状況 にあっ
                                             た霞 が 関オ フ ィス を閉鎖す る。


      (イ   )業 務 ルール の変更等

     図表第 9・ 1の 2:業 務ルールの変更等の概要】
     【

NO.           分類              項 目                          内容
1          見積提案        付加価値 [H3]案 件 のみ対      案件登録時や見積 時 にお いて 、案件 の
                       応                     付加価値 を担 当者 に記 載 させ 、承認者
                                             にその内容 を確認 させ るこ ととし、原
                                             則付加価値 を明確 化 で きな い案件 を承
                                             認 させ ない こととす る。営業統 轄 室 に
                                             よ り 査 を行 う
                                                審      。




      ビジ ョン浸透 委員会 は、    2009年 か ら、同年 に作成 され た NOSグ ループの ビジ ョンブ ック及 び ビジ ョン
      達成 のため に策 定 され た必要 な 7つ の ミッシ ョン及 び 8つ の行動指針 を、 内で浸透 させ るための活
                                                         社
      動 を行 ってい たが、2015年 に解散 した。
      「付加価値 」 とは、NOSが 統合 サ ー ビス事業 として提供す るサ ー ビス を指 し、具体的 には、品質検査 、
      役務 、 コ ンサル テ ィ ン グ、プ ロジェク ト ネ ジメ ン ト
                                   マ        、設計・建 築、保 守・ 運用 、モ ニ タ リング、教
      育、 クラ ウ ド の各 サ ー ビス をい う
               等                 。
                                    129
NO.       分類              項 目                           内容

2      見積提案        全 案件 の実在性等確認       見積承認 につい て 、 マ ネ ー ジ ャー及び
                                      部長 に よ り、案件 の実在性 、発注 の妥
                                      当性及 び 見積 の妥 当性 を確認 の上 、承
                                      認 の適否 につい て 、エ ビデ ンス をもつ
                                      て判断す る。営業管理室及び営業統轄
                                      室 によ り実行状況 のモ ニ タ リング を行
                                      い 、内部監査 に よ リサ ンプル の 内容監
                                      査 を行 う。
3.     見積提案        商流 の 明確化 と実在性 の    商流 を明 らかにす るため、 一 定 の仕入
                   確認                 先及 び 売 上先 を除 き、仕入先及 び販売
                                      先 を原 則   1階 層 の み に限 る こ ととす
                                      る。営業統轄 室では 、一 定 の規模 以 上
                                      の案件 全 件 につい て 、商流 の全体像 を
                                      把握 し、営業部 門に よるエ ン ド ー ザ
                                                         ユ
                                      ー ヘ の訪 問実施状況 の ヒア リン グ及び
                                      エ ビデ ンスの確認 を行 う 商流 が一 階
                                                     。
                                      層 を超 える場 合 には 、 マ ネ ー ジ ャー に
                                      申請 させ 、営業部長及 び 営業管理 室長
                                      の承認 を得 るもの とす る。
4.     見積提案        一 式表記 の禁 止         受注時 にお いて 、根拠 とな る内訳記載
                                      や 明細 の添付 を必須 とし、取 引関連書
                                      類 にお ける 「 式」 とい う
                                               一       表記及 び所
                                      定外書式 の使用 を禁 止 す る。 NOS所 定
                                      外 書 式 の 見積 書 等 を使 用 す る場 合 に
                                      は、マ ネ ー ジ ャー に申請 に させ 、営業
                                      部長及 び 営業管理 室長 の承認 を得 るも
                                      の とす る   [lμ ]。

5      注文及び受注      支払条件 の徹底           原則 、NOSの 基準 に従 わせ る こ ととす
                                      る。 NOSの 基準 と異 な る支払サイ トで
                                      契約 を締結す る場合 には、 マネ ー ジ ャ
                                      ー に申請 に させ 、営業部長及 び営 業管
                                      理室長 の承認 を得 て 、 マス タ登録 情報




      拒否権 を有す る営業本部長 ヘ メール に よる通知 も行 う。

                                130
NO.        分類              項 目                        内容

                                          システム担 当に よる処理 を必要 とす る
                                           [H5]。

6      注文及び受注      仮注文   [1硲   ]の 運用禁 止   仮注文 の運用 を原則禁 止 とす る。仮注
                                          文 による受注が必要 な場合 には 、顧 客
                                          との 間 の基本合意 書 を提 出 させ 、 マ ネ
                                          ー ジ ャー に 申請 に させ 、営業部長及 び
                                          営業管理 室 長 の承認 を得 て 、事後的な
                                          正式 注文書 の取得 と確認 を必要 とす る
                                           [117]。

7      注文及び受注                  レ
                   先行手配 [118]の ア ール 強     先行手配 が必要な場合には 1か 月以内
                   化                      に正式な注文書を受領することを条件
                                          に、マネージャー に申請にさせ 、営業
                                          部長及 び 管 理本 部本部長 の承認 を得
                                          て、グルー プ購買部担当者 による発注
                                          の登録及びマネージャー による受注 の
                                          登録 を必要 とする    [119]。

8.     注文及び受注      受注 の処理方法明確化            案件登録 時 に、営業担 当者 に取引先及
                                          び仕入先等 を記 載 させ 、営業 マ ネ ー ジ
                                          ャー に案件 登録 時 の情報 と顧 客 か らの
                                          注文内容 につい て確認 の上 、承認 させ
                                          る。
9.     注文及 び 受注    受注変更 のル ール 確 立         受注 を変更す る場合 には、営業 マ ネ ー
                                          ジ ャー に申請 させ 、営業部長及 び 営業
                                          管 理室 長 の承認 を得 て 、情報 システム
                                          担 当 に よ る伝 票 の 修 正 を必 要 とす る
                                           [120]。

10     手酉己         仕入 の妥 当性担保             グル ー プ購 買部 が定 める仕入先 か らの
                                          手配 を基 本 とす る。 グル ー プ購 買部 が
                                          定 める仕入先以外 か ら手配す る場合 に



      拒否権 を有す る営業本部長 ヘ メール に よる通知 も行 う。
      顧 客 との契約締結及び顧 客 か らの注文書 の受領 (正 式 な受注)が 遅れ る場 合 に、正式 な受注 な しに仮
      注文書等 にお いて受注 の処理 を行 うこ とを指す 。
      拒否権 を有す る営業本部長 ヘ メール に よる通知 も行 う。
      顧客 か ら正式 な注文書等 の書類 を受領 す る前 に、案件 に係 る商品等 の手配 を行 うこ とを指す。
      拒否権 を有す る営業本部長 、営業管理 室長及 び グル ー プ購 買部長 ヘ メール に よる通知 も行 う。
      拒否権 を有す る営業本部長 ヘ メール に よる通知 も行 う。

                                    131
NO              分類           項 目                        内容

                                             は、‐    円以上 の発注 の場合 にはグ
                                             ループ購 買部 へ 見積 申請 を行 い 、■■

                                             ■ 円未満 の発 注 の場合 には 、営業部 が
                                             2社 以上 の見積徴収 を行 う。
11.        手配         顧 客 へ の直送 の禁 止         品質管理 セ ンター ヘ の入荷 を原則 とす
                                             る。顧 客 へ の 直送 がやむ を得 な い場合
                                             には、 マ ネ ー ジ ャー に申請 させ 、営業
                                             部長及 び グル ー プ購 買部長 の承認 を得
                                             て 、営業管 理担 当及び グル ー プ購 買担
                                             当による処理 を必要 とす る   [121]。

12.        売上         売 上の計 上                必要 な証 憑及 び 作業完 了又 は仕入完 了
                                             を確認後 、売 上 申請 を行 い 、営業 マ ネ
                                             ー ジ ャー が承認す る。
13.        売上         売 上 の取消処理 ル ール の       売上を取 り消す場合には、営業部長 に
                      確立                     より申請 させ、営業管理室長及 び経理
                                             部長 の承認 を得 て、情報 システム担当
                                                                             2]。
                                             による伝票の修正を必要 とす る           [姥




(2)評 価


      ア.再 発 防止 策 に対す る評価


            NOSは 、上記 の とお り、原 因分析 を踏 まえた再発 防止 策 を策定 してお り、現在、再
           発 防 止 策推進会議 [123]を 中心 に、よ り実効 的な再発 防止 策 を検討 しなが ら進 めてい
           る。そ のた め、今後 、上 記再発 防止 策 が糸 続 されれ ば、一 定 の効果 が期待 で きる と思
                                    睦
           われ る。
            もつ とも、再発 防止 策 は現在 実施 の途上で あるため、 の最終的 な評価 は困難 では
                                           そ
           あ るが 、本調 査 にお いて、 一 部 、既 に以下 の よ うな問題 が認 め られ る。


      (ア   )例 外 ルール の周知方法 に関す る問題


      拒否権 を有す る営業本部長 ヘ メール に よる通知 も行 う  。
      拒否権 を有す る営業本部長 ヘ メール に よる通知 も行 う  。
      再発 防止 策推進会議 は、2020年 6月 、再発 防止 策 を全社 的かつ 総括 的 に取 り む こ とを 目的 として
                                                       組
      設置 され た。 営業統轄室及 び法務 ・ CSR室 を主管部 門 とし、有 効性 あ る再発 防止 策 の方針 、実行方法
      の検討 及 び進 捗状況 の確認 を行 つて い る。

                                       132
        まず 、再発 防止 策 に 関す るル ール 変更 に関す る研修及びその資料 においては、例外
     的 な処理 を原則的 な処理 と同等 のルール として容認す るか の よ うに見受 け られ る部
     分 があ る。例 えば 、2019年 循環取引事案 にお い ては、循環取引である こ とが発 覚 さ
     れ に くい よ う多段階 の 商流 を用 い られ ていた こ とに鑑 み、各取引の 商流 を明 らかに
     す るため、
          仕入先及 び販売先 を原貝11階 層 のみ に限 る再発 防止策 を策定 してい るが、
                       「
     当該研修資料 においては、 仕入先及び販 売先 のいずれ も、商流が 1階 層 を超 える場
     合 は次 ペ ー ジの対応 を して くだ さい」 と一 定 の手続 を踏 めば 当然 のよ うに 1階 層 を
     超 える取引 が認 め られ てい るよ うに窺 える (図 表第 9・ 1の 2、 NO。 3)。 また 、循環取
     引等 の実態 の ない 取 引は、 品事実 を欠 くため、 品事実 の確認 が類似 の不正防止 の
                      納           納
     た めに有用 で ある と して 、納 品事実 の確認 の た めに直送 の禁 上 が謳 われ てい るが 、
      「顧客 へ の直送 がやむ を得 な い場合」には、所定 の承認 さえ取得 できれ ば直送 も可能
     であると示 されてい る    (図 表第 9・   1の     2、   NO,11)。    さらに、担 当者等 による恣意的
     な操作 による会計不正 を避 け るため、一 度確 定 した受注及 び 売上 につい て取消 し又
     は変更 しない こ とを再発 防止 策 の原則 としてい るに もかかわ らず 、当該研修 資料 に
            「
     お いて は、 受注 の変更」 「
                    や 売上 げの 取消」が正面か ら認 め られてい るか の よ うに、
     そ の手続方法 が説 明 され てい る   (図 表第 9。        1の   2、   NO,9及 び NO.13)。 これ らの再発
     防止 策 に関す る研修 資料 においては、 の他 にも、
                           そ      原則 ルール よ りも例外ル ール の説
     明 に紙 面 が割 かれ てい る部 分 が あ り、原則 ル ール が重要 で あるこ とや そ の理 由が十
     分 に説 明 され ていない上 、例外 ル ール が通常避 けるべ き取 扱 いで ある 旨が従業員 に
     伝 わ りに くい記載 となっていた。 この よ うな周知方法 か らは、従業員 に対 して 、再発
     防止 策 において策定 され た原則 ルール を周知 し、やむ を得 な い場面 を除 き原則ル ー
     ル を徹底 させ よ うとす る姿勢 が強 くは感 じられ な い。


(イ   )実 行性 に疑義 があ る再発 防止策       (エ ン ド ー ザ ー ヘ の全 件訪 問)
                                      ユ


       上記再発防止策の 中には、現場 のオペ レー シ ョンや実行性 に考慮 した上でルール
     が策定 されているか疑問が残 るルール もある。    一
                             例えば、 定規模以上の案件 について
     は、営業部門がエ ン ド ーザーヘ訪問するこ ととされているが (図 表第 9・ 1の 2、
                 ユ
     NO.3)、   再販案件において現実的でない場面があること及び直接取引を行 う顧客 との
     関係 において もビジネ ス上難 しいことな ど実行性 が乏 しく、現状実行できているの
     かを疑問視す る意見が現場 か ら多 く挙がっている。再発防止策 の策定及び実行 の場
     面において、現場 の実態 が十分に考慮 されていない可能性がある。


(ウ   )営 業統轄室及び営業管理室 の役割 の不明確 さ




                                 133
      上 記再発 防止 策 の とお り、組織体制 も変更 されて い るが、各部署 が与 え られ た役割
     を遂行で きる態勢 とな っていない よ うに見受 け られ る部 分 がある。 えば 、
                                             例    営業取引
     の管理及 び 統制等 を主 た る業 務 とす る営業統轄室及 び 営業管理室 を設 置 した こ とか
     ら   (図 表第 9・   1の   1、   NO,7及 び NO.8)、 NOSの 営業業務 に対す る統制体制 は、形式上
     は整 った よ うに見 える。 しか しなが ら、実際 には、職務分掌規程 によれ ば、営業統轄
     室 は営業 管 理室 と連 携 し営業取 引等 の管 理及 び 統制 を行 うこ ととされ てお り、営業
     管理室 は営業統轄室 と連 携 して 業務統制 を行 うことと され てい るが 、他 の規定類 に
     おいて も、具体的な両部 門間 の役割や 関係性 が明確化 され てい る定 めは 見受 け られ
     ない。ま た 、営業管 理室 は、従前営業 のサポー ト業務 を行 つてきた営業支援 室か ら名
     称 が変更 され た もので あるが、室 内 の メ ンバ ー に大 き く人事異動 が あ っ た もので は
     な く、実際 の業務 と して も従前 のサポー ト 業務 を継続 してい る部分があ り、 目上は、
                                                     名
     サポー ト業務 か ら管理業務  へ と業 務 内容 が大 き く変更 され てい るに もかかわ らず 、

     役割 を遂行す るための 内実が伴 っ ていない側 面 がある。さらに、営業統轄室 において
     は、 もそ も 5名 の み のメンバー で幅広 い 業務 を担 当 してい る ところ、
       そ                                          営業管 理室か
     ら個別事案 につ いての相談 を受 ける場面が多 い こ とか ら、営業管理室 か らの相談対
     応 に追われてい る とい う実態 も確認 されてお り、両部 門 において、 の役害 達成 で
                                            そ   1を

     きる人員 と体制 が整 え られ てい るか疑 問 が残 る。


イ .再 発 防止 策 に対す る社 内 の意 見


      また 、本調査 にお ける従業員 へ の ヒア リングにお いて 、現在掲 げ られ て い る再発 防
     止 策 に関 しては、妥 当 と評価す る声が ある一 方 で 、以下 に挙 げ る とお り、問題意識 を
     含 む意見が存在 してい る (一 部 、 旨を変 えない範 囲 で加 筆 してい る。 そ の ため、
                          趣                      )。


     今後 、 当該再発 防止 策 の有効性 等 を再検証す る際 の有益 な資料 とす るこ とも企 図 し
     て 、以下 でその概要 を列挙す る。


(ア   )再 発 防止 策      (新 ル ール )が 既 に形 骸化 してい る/す るおそれ がある との意見


      γ    「再発 防止 に伴 い 、                 とい うシステムで案件 の申請を上げるよ うに
           な っ たが 、 リス クがない もの とあ るもの との区別 をせず に一 律 に承 認 してい
                                                      」「
           るよ うな形 にな り、 申請 を上げる ことが 目的 とな って しま ってい る。 、 営業
           マネージャーが                     にお ける申請作業 に追 われてお り、上 司による
           承認 、判断す る機能 が失われ てい る。 」
      γ    「商流案件 を 1個 ず つ 申請す る とい うルール だ つたはず が 、複数 ま とめて申
           請 できるよ うに変更 され てお り、ルール が緩和 されて い る。緩和 の 隙間をつい
           て何 か しらの不正 が行 われ るよ うに思 う 」
                                    。

                                       134
         γ   「 システム上 はルール に反 したこともできる』 とい うことはある。 システム
             『
             が追いついていない と思 う 」
                            。


   (イ   )再 発 防止 策   (新 ルール )に 基 づ く手続 の負荷 が大 きす ぎる、改善 を求 める等 の意見


         γ   「再発 防止 に伴 い何度 もシス テ ム 改修 が あ り、結果 シ ス テ ム が連 携 していな
             い 点が不便 で ある。」
         γ   「多様 な契約 が あ り、 一 律 のシステ ム ではそ ぐわない もの を手動 で処理 す る
             必要 がある。」
         γ   「 理側 も現場 を分 かつていない ままシ ステ ム を作 つ てい る。 現場 に無理 が
              管
             かか つてい る と思 う 」
                          。
         γ   「
             『再販案件については、企ての商流 を報告する』とい うルール との関係で、
             営業のマネージャーは再販案件 を承認する作業に忙殺 されている。」


   (ウ   )再 発 防止 策   (新 ルール )の 内容 が不明確/分 か らない との意見


         γ   「 正事案を受けて、現場 としての注意すべ き事項等が分か らない と じる。
              不                                 感
             また、会社 か ら指示や説明もない。2020年 10月 の業務ルールに関す る規程変
             更についても突然 のこ とであ り、内容 の説明がないまま、対応 している状態で
             ある。」
         γ   「 えば部長 レベルの承認 を必要 とす る場合に副部長 の承認で足 りるのか、
              例
           部長 の承認まで必要なのかが明確でない点があ り   、現場 は混乱 している。」
         γ 「(新 ルール に対する)理 解 は完全には追いついていない。不明点は都度確認
                         」「
             す るように している。 、 ルールは毎年変わるため、追いついていない。」


(3)小 括


  上 記 (1)の とお り、NOSは 、2019年 循環 取引事案 に対す る再発 防止 策 を策定 し、現在
 も実効性 を検討 しつつ 、継続 して実施 してい ることか ら、今後 も一 定 の効果 が得 られ るこ
 とが予想 され る。 一 方 で 、 上記 (2)の とお り、そ の 内容 には一 部 問題 が認 め られ 、 また
 従業員 か らも、 ルール が形骸化す るおそれ があるこ と、
          新                      現場 の負荷 が 大 きす ぎる こと及
 び 現場 が新 ル ー ル の 内容 を十分 に理 解 できていない こ と等 の 問題意識 を含 んだ意見及び
 不満 が一 部 で挙 がってい る。当委員会 としては 、必ず しも これ らの意見等 に沿 って再 発防
 止 策 を直 ちに変更 す べ きである旨を ここで述 べ るもので はないが 、NOSに お いて は、過 去
 に も現場 の 声 を十分 に聞かず にル ール の策 定 を行 い 、 これ が奏功 しなか っ た こ とがある
 とい う反省 を踏 まえれ ば、今後 の社 内 のルール 作 り の際 には、現場 の声 に十分 に耳 を傾 け

                                  135
 る姿勢 を期待 したい。 かか る趣 旨で 、本報告書 にお い て 、上 記 (2)の とお り、従業員 の
 声 を紹介す るもので ある。


2.経 営陣、第 1ラ イ ン・ 第 2ラ イ ン、三様監査等 の認識可能性

(1)経 営陣の認識可能性及 び経営陣の対応


  ア.概 要


        本調査において、取締役 が、2019年 循環取引事案について具体的に認識 していた
       ことは認められなかった。しか し、後記イない しオのとお り、各取締役において、2019
       年循環取引事案を認識する契機 とな り る事情
                          得              (以   下「端緒情報」 とい う )が あっ
                                                          。
       たことが認 められたため、  本調査では、各取締役が、 端緒情報を踏まえて深堀調査を
       行 うことにより、2019年 循