7518 ネットワン 2020-06-05 16:00:00
東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ [pdf]

                                           2020 年6月5日

  各   位
                     会 社 名   ネットワンシステムズ株式会社
                     代表者名    代表取締役 社長執行役員 荒 井 透
                               (コード番号:7518 東証第1部)
                     問合せ先    管理本部 広報・I R 室 村 元 裕 二
                                 (TEL. 03-6256-0615)


          東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ


 当社は、適時開示体制の改善に関して、株式会社東京証券取引所より、2020 年5月8日に有価証券上場
規程第 502 条第1項第1号に基づき、その経緯及び改善措置を記載した「改善報告書」を提出するよう求め
られておりましたが、本日、別添のとおり提出いたしましたので、お知らせいたします。

別添書類:改善報告書
                                            以上
                                                         改善報告書
                                                                                                            2020 年 6 月 5 日
株式会社東京証券取引所
代表取締役社長 宮原 幸一郎 殿
                                                                                     ネットワンシステムズ株式会社
                                                                                     代表取締役 荒井 透


このたびの過年度決算短信及び四半期決算短信、並びに有価証券報告書及び四半期報告書
(以下「過年度決算短信等」といいます。)の訂正の件について、有価証券上場規程第 502
条第 3 項の規定に基づき、その経緯及び改善措置を記載した改善報告書をここに提出いた
します。

                                                          目次
 1.経緯 ...............................................................................................................................2
 (1)過年度決算訂正の内容 ......................................................................................... 2
 (2)過年度決算短信等を訂正するに至った経緯.......................................................... 6
  ア 不適切な会計処理の発覚と過年度決算短信等を訂正するに至った経緯................ 6
  イ 特別調査委員会の設置 ......................................................................................... 6
  ウ 不適切会計処理の内容等...................................................................................... 7
  (ア)関係当事者 ....................................................................................................... 7
  (イ)本不正行為の内容............................................................................................. 7
  (ウ)本不正行為以外の不適切な取引........................................................................ 9
  (エ)A 氏が本不正行為を行った動機・背景 ........................................................... 11
  (オ)A 氏以外の関係者等の本不正行為に関する認識 ............................................. 11
 2.改善措置 .....................................................................................................................12
 (1)原因分析 ..................................................................................................................12
  ア ルール等の形骸化 ...................................................................................................12
  イ リスク管理体制上の問題点.....................................................................................13
  ウ リスク管理活動上の問題点.....................................................................................14
  エ 内部統制に係る問題 ...............................................................................................15
  オ コンプライアンス活動の空回り .............................................................................16
  カ 経営層・幹部層の取組み姿勢の問題 ......................................................................16
  キ 2013 年事案を踏まえた再発防止策の不徹底..........................................................17
  ク 組織風土の問題 .......................................................................................................17
 (2)再発防止策(実施済みのものも含む) ..................................................................17
  ア 営業取引の基本方針 (2.(1)ア及び2.(1)エに対応)..................... 17
  (ア)架空取引リスクの排除.................................................................................... 17
  イ リスク管理体制の強化(2.(1)イ及び2.(1)ウに対応)..................... 18
  (ア)リスク管理活動の抜本的見直し...................................................................... 18
  (イ)部門ごとの重要リスクの識別・評価............................................................... 20
  (ウ)内部監査の強化 .............................................................................................. 20
  ウ 業務統制の強化(2.(1)ア及び2.(1)エに対応) ............................... 21
  (ア)営業部門の権限の見直し ................................................................................ 21
  (イ)購買機能の強化 .............................................................................................. 21
  (ウ)再発防止策の有効性向上 ................................................................................ 22
  (エ)属人化の防止.................................................................................................. 22
  エ コンプライアンス活動の見直し(2.(1)オ~クに対応)............................ 22
  (ア)内部通報制度の運用見直し............................................................................. 22
  (イ)コンプライアンス意識の強化 ......................................................................... 23
  (ウ)新たな企業風土の形成.................................................................................... 24
 (3)改善措置の実施スケジュール .................................................................................26
 3.投資家及び証券市場に与えた影響についての認識 ....................................................28

                                                                1
1.経緯
(1)過年度決算訂正の内容
   当社は、東京国税局による税務調査の過程で、当社の一部取引について納品の事実が
 確認できない疑義があるとの指摘を受けたため、2019 年 12 月 13 日、当該指摘に係る
 事実関係の解明等を目的とした特別調査委員会を設置し調査を行いました。当社は、特
 別調査委員会の 2020 年 2 月 13 日付け中間報告書及び同年3月 12 日付け最終調査報
 告書を受領し、これらの報告書に記載された調査結果から、2015 年 2 月以降、納品実
 体のない取引が繰り返し行われていたことを認識するに至りました。
   この結果、当社は、2020 年3月 12 日付で過年度決算短信等の訂正を行いました。訂
 正した過年度決算短信等及びこれらの訂正が業績に及ぼす影響額については、以下の
 とおりです。


【訂正した過年度決算短信等】
 ・訂正を行った有価証券報告書
  第 28 期 有価証券報告書    (自 平成 26 年 4月 1日 至 平成 27 年 3月 31 日)
  第 29 期 有価証券報告書    (自 平成 27 年 4月 1日 至 平成 28 年 3月 31 日)
  第 30 期 有価証券報告書    (自 平成 28 年 4月 1日 至 平成 29 年 3月 31 日)
  第 31 期 有価証券報告書    (自 平成 29 年 4月 1日 至 平成 30 年 3月 31 日)
  第 32 期 有価証券報告書    (自    2018 年 4月 1日 至       2019 年 3月 31 日)


 ・訂正を行った四半期報告書
  第 31 期 第1四半期報告書 (自 平成 29 年 4月 1日         至 平成 29 年 6月 30 日)
  第 31 期 第2四半期報告書 (自 平成 29 年 7月 1日         至 平成 29 年 9月 30 日)
  第 31 期 第3四半期報告書 (自 平成 29 年 10 月 1日       至 平成 29 年 12 月 31 日)
  第 32 期 第1四半期報告書    (自   2018 年 4月 1日     至    2018 年 6月 30 日)
  第 32 期 第2四半期報告書    (自   2018 年 7月 1日     至    2018 年 9月 30 日)
  第 32 期 第3四半期報告書    (自   2018 年 10 月 1日   至   2018 年 12 月 31 日)
  第 33 期 第1四半期報告書    (自   2019 年 4月 1日     至    2019 年 6月 30 日)
  第 33 期 第2四半期報告書    (自   2019 年 7月 1日     至    2019 年 9月 30 日)


・訂正を行った決算短信
  平成 27 年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
  平成 28 年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
  平成 29 年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
  平成 30 年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)
  2019 年3月期決算短信〔日本基準〕
                    (連結)

                           2
 ・訂正を行った四半期決算短信
  平成 30 年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕
                          (連結)
  平成 30 年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕
                          (連結)
  平成 30 年3月期第3四半期決算短信〔日本基準〕
                          (連結)
  2019 年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
  2019 年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
  2019 年3月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
  2020 年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
  2020 年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕(連結)




【過年度決算短信等の訂正による連結業績への影響額】
過年度決算短信等の訂正による連結財務諸表への影響額の概要は以下のとおりです。
 【連結】                                                 (単位:百万円)
                                                               増減率
      期             項目        訂正前          訂正後       影響額
                                                               (%)
 第28期       売上高                  143,173   141,529   △ 1,644   △ 1.1
 平成27年3月期   営業利益                   4,205     4,121     △ 83    △ 2.0
 通期         経常利益                   4,249     4,115    △ 133    △ 3.1
            当期純利益                  2,457     1,816    △ 641    △ 26.1
            純資産                   57,113    56,472    △ 641    △ 1.1
            総資産                  103,623   103,013    △ 610    △ 0.6
 第29期       売上高                  145,180   140,170   △ 5,010   △ 3.5
 平成28年3月期   営業利益                   2,453     1,927    △ 525    △ 21.4
 通期         経常利益                   2,594     2,068    △ 525    △ 20.3
            親会社株主に帰属する当期純利益        1,508     1,015    △ 493    △ 32.7
            純資産                   55,533    54,398   △ 1,134   △ 2.0
            総資産                  102,613    99,417   △ 3,195   △ 3.1
 第30期       売上高                  157,236   153,124   △ 4,112   △ 2.6
 平成29年3月期   営業利益                   5,747     5,565    △ 181    △ 3.2
 通期         経常利益                   5,701     5,519    △ 181    △ 3.2
            親会社株主に帰属する当期純利益        3,822     3,584    △ 238    △ 6.2
            純資産                   57,328    55,954   △ 1,373   △ 2.4
            総資産                  103,365   102,038   △ 1,327   △ 1.3


                         3
【連結】                                               (単位:百万円)
                                                            増減率
     期            項目          訂正前       訂正後       影響額
                                                            (%)
第31期       売上高                 29,794    28,015   △ 1,778    △ 6.0
平成30年3月期   営業利益                  414      △ 76     △ 491    △ 118.5
第1四半期      経常利益                  400      △ 90     △ 491    △ 122.7
           親会社株主に帰属する四半期純利益      248     △ 227     △ 476    △ 191.3
           純資産                 56,377    54,527   △ 1,849    △ 3.3
           総資産                 97,206    95,279   △ 1,926    △ 2.0
第31期       売上高                 70,696    66,126   △ 4,570    △ 6.5
平成30年3月期   営業利益                 2,311     1,580    △ 730    △ 31.6
第2四半期      経常利益                 2,370     1,639    △ 730    △ 30.8
           親会社株主に帰属する四半期純利益     1,569       863    △ 706    △ 45.0
           純資産                 57,839    55,760   △ 2,079    △ 3.6
           総資産                 98,205    96,078   △ 2,126    △ 2.2
第31期       売上高                107,375   102,791   △ 4,583    △ 4.3
平成30年3月期   営業利益                 3,860     3,123    △ 737    △ 19.1
第3四半期      経常利益                 3,976     3,238    △ 737    △ 18.5
           親会社株主に帰属する四半期純利益     2,640     1,762    △ 877    △ 33.2
           純資産                 57,529    55,278   △ 2,250    △ 3.9
           総資産                 96,618    94,392   △ 2,225    △ 2.3
第31期       売上高                161,107   153,349   △ 7,757     △ 4.8
平成30年3月期   営業利益                 8,241     7,256    △ 985     △ 12.0
通期         経常利益                 8,418     7,433    △ 985     △ 11.7
           親会社株主に帰属する当期純利益      5,682     4,401   △ 1,281    △ 22.6
           純資産                 60,363    57,708   △ 2,654     △ 4.4
           総資産                106,827   102,146   △ 4,681     △ 4.4
第32期       売上高                 33,418    30,278   △ 3,140     △ 9.4
2019年3月期   営業利益                 1,511     1,103    △ 408     △ 27.0
第1四半期      経常利益                 1,533     1,125    △ 408     △ 26.6
           親会社株主に帰属する四半期純利益     1,035   △ 2,203   △ 3,238   △ 312.8
           純資産                 60,247    54,353   △ 5,893     △ 9.8
           総資産                104,161    98,277   △ 5,884     △ 5.6




                       4
【連結】                                               (単位:百万円)
                                                            増減率
     期            項目          訂正前       訂正後       影響額
                                                            (%)
第32期       売上高                 80,598    77,396   △ 3,202   △ 4.0
2019年3月期   営業利益                 4,935     4,541    △ 393    △ 8.0
第2四半期      経常利益                 5,043     4,649    △ 393    △ 7.8
           親会社株主に帰属する四半期純利益     3,309      241    △ 3,068   △ 92.7
           純資産                 62,753    57,030   △ 5,723   △ 9.1
           総資産                109,828   104,097   △ 5,730   △ 5.2
第32期       売上高                122,432   116,102   △ 6,330   △ 5.2
2019年3月期   営業利益                 7,759     7,142    △ 617    △ 8.0
第3四半期      経常利益                 7,956     7,339    △ 617    △ 7.8
           親会社株主に帰属する四半期純利益     5,303      942    △ 4,360   △ 82.2
           純資産                 63,128    56,112   △ 7,015   △ 11.1
           総資産                107,085   100,222   △ 6,863   △ 6.4
第32期       売上高                181,935   174,838   △ 7,097   △ 3.9
2019年3月期   営業利益                13,012    12,166    △ 845    △ 6.5
通期         経常利益                13,258    12,412    △ 845    △ 6.4
           親会社株主に帰属する当期純利益      8,913     4,323   △ 4,589   △ 51.5
           純資産                 66,858    59,614   △ 7,244   △ 10.8
           総資産                125,498   118,313   △ 7,184   △ 5.7
第33期       売上高                 36,038    35,571    △ 467    △ 1.3
2020年3月期   営業利益                 2,107     1,709    △ 398    △ 18.9
第1四半期      経常利益                 2,216     1,817    △ 398    △ 18.0
           親会社株主に帰属する四半期純利益     1,518         2   △ 1,515   △ 99.8
           純資産                 66,565    57,805   △ 8,760   △ 13.2
           総資産                120,406   111,623   △ 8,782   △ 7.3
第33期       売上高                 88,723    82,164   △ 6,559   △ 7.4
2020年3月期   営業利益                 7,096     6,078   △ 1,018   △ 14.4
第2四半期      経常利益                 7,313     6,294   △ 1,018   △ 13.9
           親会社株主に帰属する四半期純利益     5,055     2,901   △ 2,153   △ 42.6
           純資産                 70,358    60,960   △ 9,397   △ 13.4
           総資産                124,275   119,432   △ 4,843   △ 3.9




                       5
(2)過年度決算短信等を訂正するに至った経緯


 ア 不適切な会計処理の発覚と過年度決算短信等を訂正するに至った経緯
   当社は、2019 年 11 月、東京国税局による税務調査の過程で、一部取引について納品
 の事実が確認できない取引がある旨の疑義があるとの指摘を受けました。
   具体的には、公共市場(中央省庁)を担当する東日本第1事業本部第1営業部の案件
 の中に、実在性に疑義のある取引があるというものでした。
   そこで、当社は、社内調査チームを組成し、社内関係者へのヒアリングを行うなどの
 調査を行いました。その結果、実在性のない取引が行われていた可能性が認められるに
 至りましたが、その事実経緯の正確な把握には、取引先を含めたより広範かつ深度ある
 調査が必要な状況にあるとの認識を持つに至り、同年 12 月 13 日、納品の事実が確認
 できない取引及びこれに類似する不正の有無・態様の確認並びに原因究明、当社連結財
 務諸表への影響額の算定及び判明した事実を踏まえた再発防止策の検討(以下「本調査」
 といいます。 のため、 「イ」
       )    後記  の項記載の特別調査委員会を設置することを決定し、
 その旨を公表しました。
   その後、同委員会による本調査が実施され、調査結果として 2020 年 2 月 13 日付に
 て中間報告書、同年 3 月 12 日付にて最終報告書(合わせて、以下「本調査報告書」と
 いいます。
     )を受領しました。本調査報告書を踏まえ、当社において、本件不適切会計
 処理の概要は後記「ウ」の項記載のとおりと判断しており、これにより、前記「(1)」
 の項記載の過年度決算短信等の訂正を行ったものです。


 イ 特別調査委員会の設置
   専門性及び客観性を担保しつつ可及的速やかに調査を行うために、当社の事業内容
 を熟知した調査補助者が外部専門家と協力しながら調査を行うことが最適であると判
 断し、形式的には、日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライ
 ン」に基づく第三者委員会の形態は採用しておりませんが、同ガイドラインの趣旨を最
 大限に尊重し、当社と取引関係になく独立性を有する外部専門家の委員のみで構成さ
 れる特別調査委員会を設置することとしました。
   ・特別調査委員会の構成委員
    委員長     弁護士 濵 邦久氏(濵法律事務所)
    委   員   弁護士 芝 昭彦氏(芝・田中経営法律事務所)
    委   員   弁護士・公認会計士 岩田 知孝氏(株式会社KPMG FAS)
            (注)以下のメンバーが特別調査委員会の調査の支援・補助を行う。
    調査補助者:TMI総合法律事務所、株式会社KPMG FAS
    会社窓口:坂本リスク管理室長、勝村経理部長、種田法務・CSR室長



                       6
ウ 不適切会計処理の内容等
 特別調査委員会の本調査により判明した、以下に述べる本不正行為(中央省庁をエン
ドユーザーとする架空の物品販売を内容とする商流取引(下記(イ)で定義します。)
を順次繰り返す形で実施していた行為をいいます。以下同じです。)により、当社は、
過去 5 年間にわたって、売上高及び売上原価を過大計上していたことを認識しました。
また、本不正行為に関係した当事会社(下記(ア)で定義します。)間では、資金移動
が繰り返し行われていたため、売掛金及び買掛金についても同様に過大計上しており
ました。なお、本調査によって本不正行為以外にも発見された不適切な取引として、費
用の付替えが行われており、費用の付替え元案件と付替え先案件の売上計上時期に差
異が生じているものや、原価性を有しない使途不明の資金流出取引が含まれておりま
した。
 そのため、当社は、売上高及び売上原価を過大計上していた本不正行為に係る取引及
び本不正行為以外の不適切な取引の会計処理は適切ではないと判断し、これらに関連
した取引についてはすべて取消処理をし、適切な仕訳による修正を行っております。な
お、取消処理によって生じた債務は、その他流動負債に含めて表示しております。また、
本不正行為が発覚した時点で当社が保有していた債権については、回収の見通しが立
っていないことから、過年度に遡って特別損失として会計処理を行っております。


(ア)関係当事者
     本報告書においては、下表のとおりの略語を用います。


              正式名称/内容                          略称
当社との間で本不正行為に係る取引が繰り返し行われていた会社           当事会社
本不正行為に係る取引の途中で、案件を分割して架空発注された甲社         関与会社
からさらに架空発注された会社
本不正行為に係る取引の途中で、案件を分割して架空発注された会社         甲社
費用の付替え取引の業務の委託予定先                       乙社
約 5,400 万円の不明金に関する取引で、当社が再受託する形で入る予     丙社
定だった会社
元東日本第 1 事業本部第 1 営業部営業第 1 チームシニアマネージャー   A氏
A氏
同第 1 営業部営業第 1 チーム従業員                    B 氏及び C 氏
中央省庁を総称する表記                             中央省庁


(イ)本不正行為の内容
     当社の東日本第 1 事業本部第1営業部営業第 1 チームが担当する中央省庁をエン
 ドユーザーとする入札案件においては、その性質上、以下の特色が見受けられます
 (なお、東日本第 1 事業本部第1営業部営業第 1 チームは、当社の霞が関オフィス

                         7
にて業務を行っていました。。
            )
 中央省庁向けの入札案件は、基本的にシステム全般の大規模な構築を伴うもので
あったことから、当社の他部署が担当する顧客に対する営業活動とは異なり、当社と
して、自社が得意とする製品を売り込みに行くのではなく、入札案件における前段階
におけるコンサルティング業務(入札の対象とするシステムの仕様の設計や、調達仕
様書の作成の支援等)から関与することも多くあります。中央省庁においてシステム
構築を行う際のコンサルティング業務を落札した業者は、いわゆる設計施工分離の
ルールから、その後の構築請負契約の入札に参加することはできないところ、コンサ
ルティングを担当した業者は、当該入札案件に関する様々な情報を持っていること
から、落札した業者が、コンサルティングを担当した業者に対して、物品の調達につ
きコンサルティング業務を担当した業者を介して行う取引(以下「商流取引」といい
ます。)への参加を打診してくる傾向にあります。この商流取引において、当社は、
他社が落札した案件につき、当該落札業者の下請けとして、物品の仕入れ及び納品を
行い、マージンを得ることになります。
 本不正行為は、2015 年 2 月頃から 2019 年 11 月までの間、中央省庁をエンドユー
ザーとする架空のソフトウェア及びハードウェアの物品販売を内容とする商流取引
を、
 「仕入業者(A 社)→当社→落札業者(B 社)→仕入業者(A 社) 」という流れ
で、順次繰り返す形で行われたものです。当社においては、当社の東日本第 1 事業本
部第 1 営業部営業第 1 チームのシニアマネージャーであった A 氏が、本不正行為に
よる取引の当事会社の担当者らと連絡を取り合い、架空取引に関する外部証憑の発
行という協力を引き出し、 氏の部下らに対して必要書類の一部
            A                (架空の見積明細や
社内向け資料)の作成を命じ、 氏の上長に対して架空の商流取引である事実を秘し
              A
て決裁を受け、当社名義の偽造注文書を発行するなどして、本不正行為に係る取引を
実行していたものであり、本不正行為は、当社において組織的に実行されたものでは
なく、全容を把握して架空の商流取引であることを認識していたのは A 氏のみであ
り、 氏が単独で行っていたものであると、
  A                 特別調査委員会の調査報告書で認定され
ています。
 中央省庁の商流取引における本来の取引の流れは、メーカー
                       「    (→仕入業者 社)
                                  (A )
→当社→落札業者(B 社)→省庁」となります。
 これに対し、本不正行為の場合の取引の流れは、
                      「仕入業者(A 社)→当社→落札
業者(B 社)→仕入業者(A 社)
                」となり、架空の物品販売であるため、製品の実際
の納入はなく、帳票類の受渡しと代金名下での金銭の授受のみが当事会社間で行わ
れていました。
 本不正行為による取引における製品の納入については、各当事会社において自社
の上流にいる会社(自社の販売先又はその先の販売先)が中央省庁から実際に落札し
た案件の商流に入るものであるという取引の外形の下で、取引に係る製品が自社の

                     8
 下流にいる会社(自社の仕入先)により、自社の上流にいる会社(自社の販売先)が
 指定した場所に直接納入されるという仕組みがとられていました。例えば、当社から
 見ると、取引に使われた省庁の案件は、実際に省庁が入札を実施した案件であり、当
 社の上流にいる会社(販売先)は実際に当該案件を落札していましたが、A 氏は、当
 社が当該落札業者から物品の調達・納入を受注する商流取引に入ることができたか
 のように装っていました(実際には、当該落札業者は、当社とは別の業者に発注して
 いたと思われます。。
          ) また、過去に落札された実在の省庁案件又は当社が過去にコン
 サルティング業務を受注して実施し、入札が行われた案件につき、当該案件の追加発
 注という名目で架空の案件を作出していた取引もありました。
  本不正行為により、各当事会社は、下流の仕入先から仕入れた物品に一定の利益
 (当社においては約 5%~10%)を乗せて上流の会社(販売先)に納品していました
 が、これは、当事会社間で帳票類の受渡しと代金名下での金銭の授受が繰り返される、
 実体のない架空取引でした。そのため、各社が代金名下の金額に利益を加算して販売
 し、その次の取引では更に利益を上乗せした金額で再び仕入れ、支払を行うことにな
 るため、取引が重ねられる度に売上高が上がり、かつ金額が加算されていきました。
 また、このようにして繰り返されていた取引の一部は、途中で分割して複数の会社に
 発注され、最終の仕入業者に代金名下に資金が流出していた可能性があると考えて
 います。
  本不正行為は、上記のとおり当社においてはマネージャー職にあった A 氏により
 差配されていました。A 氏が本不正行為を行った動機・背景は後記「(エ)
                                   」の項記載
 のとおりです。また、A 氏以外の関係者の本不正行為に関する認識は後記「(オ)」の
 項記載のとおりで、当社各役員の本不正行為に対する認識もそれらの者と同様です。


(ウ)本不正行為以外の不適切な取引
  ・費用の付替え
    2019 年、案件担当者である B 氏がある中央省庁の入札案件の応札に向けて営
   業活動を行っていたところ、入札直前になり、想定していた入札予定価格が、当
   該中央省庁の予算に見合わないことを認識するに至りました。
    当時、施工管理業務の委託予定先であった乙社からは 5,470 万円の見積りが
   出されていましたが、B 氏は、この見積額で乙社に発注することを前提として、
   当社の利益分を積み上げた金額で入札すれば、当該中央省庁の予算を大幅に上
   回る入札金額となり落札できないことが明らかであると考えました。
    どのように対応すべきかについて B 氏から相談を受けた A 氏は、大要以下の
   方法を考案し、甲社の担当者に協力を依頼して承諾を得るとともに、 氏に対し
                                  B
   て、乙社の了解を得ること及び甲社担当者と実務的な協議を進めることを指示
   しました。

                    9
 ① 乙社に対する発注額を見積額 5,470 万円から減額させて、当社に利益が出
    る入札金額で入札する。
 ② 乙社の見積額 5,470 万円と減額後の金額との差額分は、当社に代わって甲
    社から乙社に発注させることにより、乙社が損失を被らないようにする。
 ③ 当社が甲社に対して、別の案件で、差額分の実体の伴わない業務を発注する
    ことにより、甲社が乙社に肩代わりで発注した分の補填をする。
  B 氏は、乙社に事情を説明し、甲社が発注主体になることにつき了承を得まし
 た。そして、B 氏が甲社担当者と協議した結果、当社から乙社に対する発注額を
 780 万円に減額し、甲社が乙社に差額 4,690 万円の業務を発注することとしまし
 た。また、甲社への 4,690 万円分の補填については、B 氏の担当案件である別の
 中央省庁案件で 1,500 万円分、さらに別の中央省庁案件で 3,190 万円分、それぞ
 れ当社から甲社に対して実体を伴わない発注をすることで行われました。
  なお、上記 1,500 万円については、当社は、甲社から 2019 年 6 月 28 日付け
 作業完了報告書を受領しており、既に甲社に支払済みですが、上記 3,190 万円
 は、未だ甲社に支払っておりません。


・約 5,400 万円の不明金
  ある独立行政法人をエンドユーザーとする 2019 年 2 月入札の案件について、
 丙社が入札し、当社が再受託する形で入る予定でした。但し、丙社から、予算の
 都合で、当社の原価の一部を他の案件に付け替えるように指示があったため、別
 の組織をエンドユーザーとする案件について、当社が同様に丙社から再受託す
 る形で入り、丙社から、同案件について本来の価格から 5,376 万円を上乗せして
 見積書を作成するように指示を受けました。
  当社は当該指示に基づいて、本来の価格より 5,376 万円を上乗せして上記組
 織をエンドユーザーとする案件を受注しましたが、本来の上記独立行政法人を
 エンドユーザーとする案件を丙社が失注したことから、丙社の了承の下、上記
 5,376 万円は上乗せされたままとなりました。この余った予算について、A 氏と
 C 氏が協議し、当社の正規の手続を経ることなく、当社の霞が関オフィスの検証
 機器の購入に使用しました。
  なお、A 氏から、C 氏に対して、検証機器のメーカーに直接依頼するのではな
 く、甲社を通して購入するように示唆があり、C 氏は、甲社担当者に連絡し、甲
 社を通して、検証機器のメーカーに発注しました。上記組織の案件において当社
 が丙社に交付していた見積書は、役務を行うものであったことから、 氏と甲社
                                C
 担当者は協議して、当社から甲社への発注内容は役務提供としましたが、実際は、
 C 氏が検証機器のメーカーに直接連絡し、甲社を通す取引形態にして、当社の霞
 が関オフィスに直接検証機器の納品を受けました。その取引を通じて、甲社は約

                    10
    4,000 万円の利益を得ることとなりました。


(エ)A 氏が本不正行為を行った動機・背景
   本不正行為を行った動機ないし経緯に関し、A 氏は、東日本第 1 事業本部第 1 営
  業部が大規模な赤字を発生させたことなどから縮小傾向にあった中で、中央省庁の
  大型案件を失注したため、これを挽回して同部のプレゼンスを上げるためであり、そ
  の後も予算を達成して同部のプレゼンスを向上させるため、本不正行為を止められ
  なかった旨説明していますが、これを裏付ける証拠はなく、本不正行為により支払わ
  れた金銭の一部が複数の業者に流出していることなども勘案しますと、A 氏の説明
  の信用性には疑問があります。また、A 氏が本不正行為を行った動機については、本
  不正行為により支払われた金銭の一部が流出していることから一定の推測は可能で
  あるものの、本調査の結果をもってしても、その動機を正確に把握し、説明すること
  は難しい状況です。


(オ)A 氏以外の関係者等の本不正行為に関する認識
   関係者へのヒアリング及びデジタルフォレンジック調査の結果を含む関係証拠に
  よれば、当事会社の各担当者が、A 氏と連絡を取り合い、本不正行為のために必要な
  書類をやり取りしていたことは認められますが、各担当者が、本不正行為が架空の商
  流取引であることを認識していた事実や、 氏と共謀していた事実については、
                     A                これ
  までの調査においては判然とせず、現時点でこれらを認定するには至っておりませ
  ん。関与会社の各担当者についても同様に、A 氏と連絡を取り合い、必要な書類をや
  り取りしていたことは認められますが、本不正行為について全容を把握して架空の
  商流取引であることを認識していた事実や、A 氏と共謀していた事実については判
  然とせず、本調査の結果をもってしてもこれらを認定するには至っておりません。
   また、当社における A 氏の部下については、A 氏が各部下に対し、A 氏が指定す
  る金額に合うよう機器の構成を記載した見積内訳明細(顧客向け及び仕入先向け)の
  作成、役員向け説明資料の作成、各種社内申請書の作成をそれぞれ指示していました。
  当該部下らは、疑問を感じて質問をしてはいたものの、 氏から事実関係を明らかに
                           A
  されず、叱責された者もいるなど、指示に従わざるを得なかったものとみられ、本不
  正行為の全容を把握して協力していたとの認定には至っておりません。
   A 氏の上司についても、 氏から、
               A    本不正行為に係る取引における見積書提出時の
  決裁において、実体のある商流取引であるとの説明を受け、これを信じて決裁してお
  り、本不正行為の全容を把握して協力していたとの認定には至っておりません。
   以上から、当社は、本不正行為は、当社内においては組織的に実行されたものでは
  なく、A 氏が単独で行っていたものであると評価しております。



                     11
2.改善措置
(1)原因分析
  本不正行為が発生した原因について、当社は以下のとおり分析しております。


 ア ルール等の形骸化
  当社の元社員が、取引先の社員らと共謀して、当社が取引先から受注した案件で、コ
 ンサルティング等の名目で架空の取引を当社に外注させ、当社に対して請求を行うこ
 とにより、総額 7 億 8910 万 1250 円にのぼる詐欺を実行したという不祥事が 2013
 年に発覚しましたが、その不祥事(以下「2013 年事案」といいます。
                                  )を踏まえ、同種
 事案の発生リスクを相当程度軽減する各種ルールの整備を行い、架空取引ないし循環
 取引に関しても、営業部による見積提出・受注のプロセス、購買部による発注プロセス、
 及び純額取引に関する規律をもって、発見、防止する態勢を構築していました。
  具体的には、営業部による見積提出・受注のプロセスについては、見込原価設定の改
 善(工数積算や営業部門とサービス部門間の社内取引の実施による原価設定ルールの
 適正化)、購買部による発注プロセスについては、当社グループの購買機能の強化(グ
 ループの調達部門の統合) 及び外注取引先管理の整備・改善
            、                (買い先与信機能の強化・
 外注発注管理の厳格化)による改善を行い、そして、純額取引に関する規律については、
 純額取引に関する業務処理標準を定め、各種リスクについての注意喚起を行い、発見、
 防止する態勢を構築していました。
  それにもかかわらず、本不正行為の発生を招いてしまった要因として、中央省庁案件
 及び商流取引の特殊性(ビジネスモデルの問題)
                      、並びに、営業第 1 チーム及び A 氏の
 特異性(組織マネジメントの問題)が存在したと考えています。
  具体的には、中央省庁案件に関しては、その性質上高度の秘匿性が要請される案件が
 多いため、そのような秘匿性を隠れ蓑にした案件説明を上司らに行うことができ、また、
 中央省庁の入札案件は、同業他社が商流に関与する傾向にあり、本不正行為が仮装した
 当事会社による商流を外形上不自然不合理であると認めることが困難な状況となって
 いました。さらに、本不正行為による商流取引における製品の納入については、自社の
 仕入先から自社の販売先が指定した場所に直接納入されるという仕組みがとられてい
 たため、契約関係にないエンドユーザーに対して直接納品の確認を行うことが実務的
 に困難な状況となっていました(ビジネスモデルの問題)。
  そして、2015 年 4 月 1 日付けで行った組織改編の結果、営業第 1 チームが業務を行
 っていた霞が関オフィスには部長は常駐しないこととなり、常駐の管理者・牽制者不在
 の状況となっていました。また、第 1 営業部の部長や副部長は、総じて中央省庁案件
 の経験がなく、各案件についての A 氏の説明における不審点を追及し得るだけの知識
 を有していなかった上、特に霞が関オフィスに常駐しなくなってからは、 氏が関与す
                                  A

                       12
る案件の詳細についての把握がますます不十分となり、霞が関オフィスの管理不全状
況が生まれていました。それに加え、A 氏の入社以来の営業実績は良好で、リーダー
(現在のマネージャー)になる以前のその猛烈な働きぶりとその実績は周囲より高く
評価され、また、A 氏は、上司に対しては、業務に関する意見を言われた場合には、そ
の豊富な経験を背景に強くかつ能弁に反論するなどし、部下に対しては、威圧的な態度
をとる傾向にあった一方、場面によっては部下を守る姿勢を示したり、頻繁に部下を引
き連れて飲み会を行い、その飲食代を個人で全て負担したりするなど面倒見の良い親
分肌を持つ一面も見せていました。このような A 氏の実績や個性により、A 氏は特別
視され、A 氏が手掛ける案件がいわばブラックボックス化していました。また、本不正
行為においては、A氏と連絡を取り合っていた当社の仕入先となる当事会社の担当者
が、A氏及びその指示を受けていた部下が作成した架空の見積明細を見積書頭紙とと
もにA氏らに送付し、A氏がこれを別の架空取引案件のものと差し替えるなどしてい
ましたが、見積書頭紙の多くは品名に「一式」としか記載されておらず、明細内容の確
認が十分に行われていませんでした。(組織マネジメントの問題)
                             。


イ リスク管理体制上の問題点
 当社は、経営委員会(代表取締役社長のもとに設置され、主に、取締役会の決議を要
さない事項の決裁権限を委任されており、会社経営上基本的又は重要な事項につき審
議・決定する機関)の諮問機関として、取締役執行役員が委員長を務め、取締役や執行
役員を中心に委員が構成されたリスク・コンプライアンス委員会を設置し、同委員会を
月 1 回開催し、リスク管理活動及びコンプライアンス活動に係る重要事項を審議及び
答申していました(但し、2019 年度からは、同委員会は、リスク管理室長が委員長を
務め、部長職を中心に委員が構成され、開催頻度も 2 ヶ月に 1 回に変更となっていま
す)。
 当社は、リスク・コンプライアンス委員会を中心とする管理体制を敷いていましたが、
リスク・コンプライアンス委員会においては、その活動方針・内容に関し、当社が抱え
ている様々なリスクのうちどのようなリスクをその主たる取扱対象とすべきか、どの
ような仕組みで対象リスクを管理していくのかなどについて議論が錯綜し、焦点や軸
が今一つ定まらないまま運営をしている状況が、少なくとも本不正行為の開始された
2015 年頃から継続し、経営委員会としては、総じて、リスク・コンプライアンス委員
会の答申状況は諮問機関としては十分ではないとの評価を行っていました。また、リス
ク管理活動の統括管理者としてリスクマネジメント統括責任者(CRO)を置いていま
したが、2019 年度より CRO はリスク コンプライアンス委員会のメンバーから外れ、
                      ・
リスク管理活動全般に関する必要十分な実態把握や適時適切な指示を行い、その職責
を十分に果たし得る体制とはなっておりませんでした。
 そして、当社の規程上、法務・CSR 室とリスク管理室のリスク管理活動における職

                   13
責にかなり重複する部分が存在していたにもかかわらず、その責任範囲の明確化や役
割分担がなされていなかった上、法務・CSR 室とリスク管理室のいずれが当社におけ
るリスク管理活動の責任部門となるのかについても明確ではない状況が、 2019 年度か
ら発生していました。
 さらに、
    (2018 年度までの)リスク・コンプライアンス委員会においては、同委員会
の管理対象リスクとして 15~20 程度のリスクを選定し、それらをリスク・コンプラ
イアンス委員会管理のリスクと主管部門管理のリスクに分類した上で、主管部門管理
のリスクについては各リスク主管部門が関係部門との緊密な連携によりリスク管理活
動を実行推進することとしていました。リスク・コンプライアンス委員会の管理対象で
あった不正リスクに関しては、法務・CSR 室主管のものと TQM 推進部(主として全
社的な業務プロセス改善の推進を職責とする部門)主管のものが、役職者による「不正」
を対象としており関連性を有していましたが、それぞれの部門が取り扱う不正リスク
の内容が明確化されていない上、両部門の連携体制や役割分担についても検討・整理さ
れていませんでした。
         (なお、TQM 推進部は 2018 年度末をもって廃止され、同部が担
っていた当該役割は、リスク管理室に引き継がれています。また、リスク・コンプライ
アンス委員会の体制を大きく変更し、当社のリスク管理活動のあり方を見直した 2019
年度からは、「オペレーショナルリスク」の中の「社員による不正行為(架空発注・詐
欺等)
  」については、所管部は「社内各部」
                  、関連部門は「法務・CSR 室」と整理し、
本不正行為は当該リスクに包含されています。)
 以上のとおり、リスク・コンプライアンス委員会を中心としたリスク管理体制の機能
不全、リスク管理の責任部門の不明確性、及び、不正リスク主管部門の不明確性という
当社のリスク管理における組織体制上の問題点が、当社のリスク管理活動における盲
点ないし弱点を作出してしまった要因となったと考えられ、結果的に本不正行為の発
生を招いた一因となったと考えています。


ウ リスク管理活動上の問題点
 潜在的なリスクの洗い出しや組織横断的な連携に基づく不正リスクへの対応の不十
分性(リスクの洗い出しの不十分性の問題)
                   、営業現場におけるリスク対応活動の不備
(営業現場のリスク対応活動の不備の問題)という当社のリスク管理活動の問題も本
不正行為の発生を招いた一因と考えています。
 具体的には、役員・従業員の不正リスクの主管部門たる法務・CSR 室においては、
営業部門や購買部等の管理部門における不正リスクに関する潜在的なリスクの洗い出
しの検討・検証や営業部門・購買部等の管理部門との連携が不十分であり、
                                 「業務手続
の遵守」リスクの主管部門たる TQM 推進部においては、本不正行為のような架空取引
リスクについて、純額取引に関する業務処理標準を定め、各種リスクについての注意喚
起を行っていたほか、「循環取引は禁止されています。循環取引は商流取引に含まれま

                   14
す。」といった説明を行うことで一定の対応がなされていたものの、いかなる不正をど
のように防止しようとしているのかが必要十分に啓蒙されていなかったこと、及び不
正リスクについての役職員の感度が低かったことがルールの形骸化につながり、また、
営業部門の決裁権者らや営業部門の各職員が不正リスクを的確に理解・意識した上で
業務遂行していたとは認められなかったことなどからも、リスク主管部門(TQM 推進
部)によるリスク管理実行部門(各営業部)への指示・指導・モニタリングは不十分な
状況でした(リスクの洗い出しの不十分性の問題)
                      。
 また、営業部門全体において、それぞれの業務に関わる不正リスクの識別・評価を行
う仕組みが確立されておらず、その結果、不正リスクの識別・評価、及びこれらへの対
応やモニタリング活動が実質的に行われていなかったに等しい状態となっておりまし
た(営業現場のリスク対応活動の不備の問題)。
 内部監査室による監査については、特別調査委員会において一定程度の評価は頂き
つつも、不正行為のモニタリング態勢としては弱体化しているとの指摘を受けており
ます。当該指摘を受け、当社として振り返ったところ、会計監査人が監査対象としてい
た純額取引を専ら会計監査人による監査に委ね、内部監査室による監査対象外として
いたことについては、リスクベースアプローチの観点から効果的かつ効率的な監査の
実施に傾倒してしまい、より業務に近接した内部監査ならではの視点で確認すること
の有用性を置き去りにしていたことによると考えております。また、購買部門を内部監
査室による監査対象外としたことについては、営業業務監査を中心とした内部監査に
重きを置いてきたことで購買業務全体を個別の監査対象として捉えないという結論に
至ってしまったものと考えております。さらに、内部監査室として外注先への納品実体
の確認までは実施していなかったことについては、証憑類が外形的に整っていること
を重要視し、さらに踏み込んだ検証や監査が実践できていなかったことによるものと
考えております。


エ 内部統制に係る問題
 顧客からの受注の前提となる仕入れについては、発注権限を購買部に帰属させてい
たにもかかわらず、業界慣行として当社の得意先から当社の仕入先を指定されること
もあり、営業担当者が仕入先の選定や条件交渉を行い、見積書をはじめとする営業関係
書類を仕入先から受領するなど、事実上の仕入先選定権限や発注権限が営業担当者に
あると認められる案件も存在し、購買部が営業担当者に対して完全に独立の仕入先選
定権限や発注権限を有しているとまでは言えない状況であったことや、購買部が表面
上の確認作業に追われ、不正リスクの視点からの検討に必要な環境を整えることがで
きなかったことなどの背景事情があり、A 氏が当事会社に連絡を取って架空取引に関
する外部証憑の発行という協力を引き出したこと、この外部からの協力が得られれば、
A 氏(及びその指示に従う部下)限りで架空の見積明細の作成と差替えにより、当社内

                  15
における業務フローに沿って本不正行為を実行し得たことが、本不正行為の発生の原
因及びその早期発見に至らなかった原因の一つと考えています。
 また、購買部による外注先支払いのチェックが厳格化され、実体を伴わない架空の支
払を行うことが困難となっていたことから、当事会社を経由して甲社及び関与会社に
迂回的な支払がなされたことや、直送取引における検収確認の困難性・不十分性も、本
不正行為の発生の原因及びその早期発見を妨げる原因の一つであったと考えています。


オ コンプライアンス活動の空回り
 当社のコンプライアンス活動における各種取組みについては、特別調査委員会より、
その内容やレベルは他の上場企業と比較しても特段見劣りのしないものとの評価を受
けております。ただし、特別調査委員会が行った調査の結果、コンプライアンスに関す
るeラーニングの受講率は高いものの、おざなりな姿勢で受講している者が少なくな
いこと、及びコンプライアンス・マニュアルを受領したことさえ記憶にない者や受領し
たコンプライアンス・マニュアルが今どこにあるのか不明であると答えた者が存在し
たことから、個々の役職員におけるコンプライアンスの実践度合いに関しては十分で
あるとは認め難く、それら各種取組みが空回りないし形骸化しているとの指摘を特別
調査委員会から受けています。このことは、2013 年事案に基づく教訓につき、個々の
役職員が自分事化した上で、同種事案の再発防止を含むコンプライアンス活動の実践
に真剣に取り組む姿勢が不十分であったことや内部通報制度に対する理解の不十分さ
から、当社がコンプライアンス・マニュアルで提唱している当社役職員のあり方ないし
コンプライアンスの意識が周知徹底されていなかったために生じたものと考えられ、
本不正行為の発生を招いた一因と考えております。


カ 経営層・幹部層の取組み姿勢の問題
 組織の倫理観(コンプライアンスの意識)はその上に立つものの言動で決まるため、
コンプライアンスの実践に際しては、経営層 幹部層の取組み姿勢
                    ・         (“Tone at the Top”)
が極めて重要であると考えていますが、特別調査委員会が実施したアンケートにおい
て、役職者のコンプライアンス意識や姿勢に対する厳しい指摘が散見されたことや、前
記「イ」の項に記載のような営業部門の現場レベルでのコンプライアンス活動の実践状
況に鑑みれば、営業部門の経営層・幹部層が、コンプライアンス・マニュアルで提唱し
ている行動規範や行動基準を十分に率先垂範できていたとは考え難く、そのような取
組み姿勢が営業部門全体の倫理観の低下を招き、本不正行為の発生の背景事情として
影響した可能性があると考えております。また、経営層・幹部層の取組み姿勢の問題は、
営業部門に限られた話ではないとも考えております。




                      16
 キ 2013 年事案を踏まえた再発防止策の不徹底
   2013 年事案に基づく教訓につき、個々の役職員が自分事として捉えていなかったこ
  とから、当社役職員のリスク感度やコンプライアンスの意識は低下してしまっていた
  と言わざるを得ず、少なくとも第 1 営業部において、2013 年事案に関する調査報告書
  の提言内容を十分に実践していたとは考えられません。また、2013 年事案に基づく教
  訓につき、個々の役職員が自分事化した上で、同種事案の再発防止を含むコンプライア
  ンス活動の実践に真剣に取り組む姿勢が不十分であったと考えます。そのような状態
  が本不正行為の発生の背景事情として影響した可能性があると考えております。


 ク 組織風土の問題
   関係者からのアンケート回答の中には、当社の組織風土について、風通しの悪さ、上
  長や同僚に対する不信感、協調性不足、営業インセンティブなどの様々な問題を指摘す
  るものが存在するとの報告を特別調査委員会から受けております。これは、当社のビジ
  ョンや経営理念が個々の役職員レベルまで十分に浸透していなかったことが原因と考
  えていますが、このような問題も本不正行為の発生の背景事情として影響した可能性
  があると考えております。


(2)再発防止策(実施済みのものも含む)
   当社は、上記の原因分析に基づき、以下のとおり再発防止策を実施します。


ア 営業取引の基本方針 (2.(1)ア及び2.
                      (1)エに対応)
(ア)架空取引リスクの排除
    ・当社グループの付加価値の提供の確認
      2020 年 2 月 13 日より、取引においては当社グループの付加価値(主として、
     独自のサービスやソリューションの提供)が認められる案件のみ対応すること
     を基本原則とし、架空取引リスクを招来するビジネスモデルである商流取引や
     手数料取引は、経営政策上必要な場合を除き、行わないこととしています。なお、
     経営政策上商流取引や手数料取引を行う場合は、営業統轄室及び経理部の精査
     を経て、申請部門の本部長の承認を要することとしています。


    ・明細を伴わない一式表記案件の禁止(実在性確認の強化)
      2020 年 2 月 13 日より、取引内容の明確化を図ることを目的に、取引関連書
     類の中で明細を伴わない場合に「一式」という表記を用いることを禁止していま
     す。また、明細を伴う場合であっても明細内容の確認を徹底しています。




                      17
   ・直接取引案件のみ対応
      2020 年5月より、営業統轄室は、Compliance Regulation List(CR リスト)
     を導入し、商流の全体像のほか、直接の契約先だけではなくエンドユーザーへの
     訪問を実施していることを営業部門へのヒアリングとそれを証明するエビデン
     ス(提案書や注文書、顧客への訪問記録)を通して確認することで物品や役務、
     仕入先の実在性の確認を行っています。


   ・霞が関オフィスの閉鎖
      2020 年 3 月 26 日の経営委員会において、組織マネジメントとして管理不全
     の状況にあった、中央省庁案件のみを担当する「霞が関オフィス」の閉鎖を決定
     し、4 月 1 日付けで、一部保守技術者を除き本社へ吸収しました。2020 年 7 月
     1 日までに対象オフィスの全社員の移動を完了させ、霞が関オフィスをクローズ
     する予定です。


   ・PMS による案件審査体制の強化
      2020 年 5 月より、Process Management System (PMS)の運用を一部見直し、
     営業部において、取引開始前に取引に必要な証憑類が揃っていることを確認す
     るためのチェックリストを導入しております。また、営業統轄室による前述の
     CR リストに基づくモニタリングと改善指導を通して案件審査体制の強化を図
     っています。
     ※PMS とは、過去に赤字案件が発生したことを踏まえ、案件着手の可否の段階
      から、現場判断ではなく、事業本部長の承認のもと、当社が提供するシステム・
      サービスの案件獲得・収益向上・品質管理・リスク管理を行うことを目的とし
      て導入された案件対応プロセスをいいます。


      経理部、営業統轄室及びリスク管理室は、これらの基本方針を受けて新たに定
     めたルールについては四半期ごとに検証を行い、基本方針の踏襲は前提としつ
     つも、経営の実態に沿わなくなった規定があればその後の経営状況に即したも
     のへと見直し、社内に適切に周知していくこととし、ルールの形骸化を起こすこ
     とのないよう取り組んでまいります。


イ リスク管理体制の強化(2.(1)イ及び2.
                      (1)ウに対応)
(ア)リスク管理活動の抜本的見直し
   ・CRO(最高リスク管理責任者)の役割の明確化
      2020 年 3 月 27 日の取締役会において、取締役執行役員を新たな CRO(Chief
     Risk Officer)に選定するとともに、その役割の明確化(リスクの識別、リスク

                           18
 対応、リスク管理活動の有効性評価、継続的改善、その他のリスク管理プロセス
 を統括する)を行いました。


・リスク・コンプライアンス委員会の分離
  2020 年 4 月 22 日の経営委員会において、従来のリスク・コンプライアンス
 委員会をリスク管理委員会とコンプライアンス委員会に分離し、それぞれの役
 割の明確化(リスク管理委員会は主としてリスク管理活動の評価と統制の責任
 を担い、コンプライアンス委員会は主としてコンプライアンス活動の評価と統
 制の責任を担い、本不正行為を始めとする不正リスクの主管はリスク管理委員
 会とする)と、各活動の取組み強化を進めています。なお、両委員会は経営委員
 会の諮問機関であり、CRO が管掌するとともに、両委員会には社外取締役も参
 加することとし、客観的な視点での意見・評価を得ることとしています。また、
 両委員会の構成及び開催頻度は以下のとおりです。
  【リスク管理委員会】
   管掌役員:取締役執行役員(CRO)
   委員長:リスク管理室長
   委員:当社営業統轄室長、管理本部 経営企画部長、管理本部 法務・CSR 室
      長、管理本部 経理部長、東日本第 1 事業本部 第 2 技術部長、東日
      本第 2 事業本部 営業管理室長、ビジネス開発本部 プロダクトマー
      ケティング部長、カスタマーサービス本部 エキスパートオペレーシ
      ョン部長、及びネットワンパートナーズ株式会社 グループ購買部長、
      エクストリーク株式会社 代表取締役(計 10 名)
   オブザーバー:当社取締役、社外取締役、常勤監査役(計 3 名)
   開催頻度:月 1 回


  【コンプライアンス委員会】
   管掌役員:取締役執行役員(CRO)
   委員長:管理本部 法務・CSR 室長
   委員:当社管理本部 人事部長、東日本第 1 事業本部 第 4 営業部長、東日
      本第 2 事業本部 第 2 営業部長、中部事業本部 第 2 営業部長、西日
      本事業本部 営業管理室長、ビジネス開発本部 ビジネスマネージメ
      ント部長、カスタマーサービス本部 カスタマーサクセス部長、及び
      ネットワンパートナーズ株式会社 第 3 営業部長、エクストリーク株
      式会社 代表取締役(計 9 名)
   オブザーバー:当社社外取締役、常勤監査役、リスク管理室長(計 3 名)
   開催頻度:月 1 回

                  19
   ・リスク管理の責任部門の明確化
     2020 年 4 月 9 日の経営委員会において、不正リスクを含めたリスク管理活動
    全般の責任部門をリスク管理室とすることを決定し、リスク管理の責任部門の
    明確化を図っています。


(イ)部門ごとの重要リスクの識別・評価
   ・リスク管理実行計画の策定
     2020 年 4 月 22 日の経営委員会において、前述のリスク管理委員会の活動計
    画の承認とともに、全部門を対象としたオペレーショナルリスクの評価・改善施
    策及び不正リスクの評価・改善施策並びにこれらの活動スケジュールを内容と
    するリスク管理実行計画が承認されました。


   ・リスク調査シートによるリスク管理強化
     2020 年 5 月 27 日に各部門にリスク調査シートを配布し、自部門業務におけ
    るオペレーショナルリスク及び不正リスクを、四半期ごとにリスク調査シート
    により洗い出し、それらリスクに対する認識・取組状況を報告する仕組みをスタ
    ートさせました。リスク管理室は、上記リスク調査シートを基に各部門の業務に
    おけるリスク管理活動を検証し、客観的な視点から評価を行った上でリスク管
    理委員会に報告します。リスク管理委員会は評価結果に基づき各部門に対し必
    要な指導を行います。また、2021 年 3 月末までに当事業年度における活動状況
    の振り返りを実施した上で、翌事業年度における活動計画を策定します。


(ウ)内部監査の強化
   ・監査手法の追加
     今年度より、内部監査室は、従来のシステム、証憑類を中心とした監査に加え
    て、営業担当者やその上司へのヒアリングの結果、疑義(不信感、違和感など)
    が認められる案件については、関連部門や仕入先への確認も実施し、監査の実効
    性の確保に努めます。


   ・監査対象の拡大
     今年度より、会計監査人が監査対象とした取引であるかどうかにかかわらず、
    当社の基準に則って内部監査の対象を決定することとします。また、内部監査室
    は、直送取引に関する牽制状況や実在性の確認状況を監査するため、従来実施し
    ていなかった購買業務監査を今年度より実施します。さらに、各種再発防止策の
    運用状況を内部監査計画の重点監査項目として定め、モニタリングを行います。



                      20
      上記(ア)リスク管理活動の抜本的見直し、
                         (イ)部門ごとの重要リスクの識
     別・評価、及び(ウ)内部監査の強化によるリスク管理体制の見直しを図ること
     により、組織としてのリスク管理体制及びリスク管理意識を強化し、組織体制上
     の課題の克服に取り組んでまいります。


ウ 業務統制の強化(2.
           (1)ア及び2.(1)エに対応)
(ア)営業部門の権限の見直し
   ・発注権限と検収権限の営業部門からの分離
      仕入先や外注先との癒着の防止と牽制機能を強化するための検討を 2020 年 4
     月から開始しており、購買部門が指定する仕入先を優先する体制を、2020 年 10
     月末までに構築します。


   ・業務規程の改訂(業務ルール及びプロセスの刷新)
      2020 年 6 月より、見積承認から受注、手配、納品、検収、売上、回収に至る
     一連の業務プロセスの検証を開始し、業務遂行上の権限や役割を整理した上で、
     架空取引や不正行為を生じさせないルールを 2020 年 7 月までに整備します。


   ・業務規程改訂に合わせたシステム改修
      上記の権限の見直し、業務ルール及びプロセスの刷新に合わせたシステム改
     修を 2020 年7月から順次取り組みます。


(イ)購買機能の強化
   ・購買部門の独立
      2020 年 4 月 1 日の組織変更で、旧グループ購買・物流部から購買機能を「グ
     ループ購買部」として独立させました。統制強化の観点からの購買業務の見直し
     が必須であることから、統制責任者であるグループ購買部長を購買業務専従と
     し、上記の購買業務の見直しに注力させることで、その企画・立案・実行すべて
     の面において購買業務による統制の強化を図っております。あわせて、購買部門
     のリソースの補充もすすめ、これら強化策による実効性を確保していきます。


   ・仕入・検収に関する購買プロセスや機能の再定義・強化
      架空取引リスクに対応するために、2020 年 4 月からリスク管理室において業
     務プロセス上の問題点の検討に着手しており、2020 年 6 月からは関連するグル
     ープ購買部、経理部及び営業統轄室と合同で直送扱いに対する牽制強化策の検
     討、納品事実の把握方法の検討、仕入先に対する残高確認の実施を検討し、2020
     年 10 月までに順次実行可能な強化策を導入していきます。

                      21
(ウ)再発防止策の有効性向上
   ・営業統轄室の設置
     4 月 1 日付けで社長直轄組織として、取締役常務執行役員が管掌する営業統轄
    室(合計 6 名)を新設しました。営業統轄室は、営業取引の管理・統制、営業業
    務プロセスに関する周知・統制及び社用印章の管理を基本的な職責とするほか、
    再発防止策の実行に関する業務ルールの変更やモニタリングを全社統一的に推
    進する役割を担っています。


(エ)属人化の防止
   ・人事ローテーションの実行
     業務の属人化や特定社員による業務プロセスのブラックボックス化を避ける
    ため、2020 年 4 月 1 日付けの人事異動において特に人財の固定化傾向が強かっ
    た A 氏と同じマネージャー職の人事ローテーションを優先的に推進しました。
    全社の平均ローテーション率が 6.3%であるのに対し、マネージャー職のローテ
    ーション率は 9.3%となりました。今後も、人材の固定化傾向を踏まえながら、
    業務経験年数が 5 年以上で一定以上の評価を受けた社員のローテーションを優
    先的に推進するとともに、特に、お客様を直接担当する営業職については、同一
    顧客の担当期間が 5 年以上経過する場合は、必ず異動又は担当顧客の変更を実
    施します。
     また、これまでに経験のない市場やビジネスを担当する組織に異動する上司
    に対しては、前任者による引継ぎの徹底やさらに上位の役職者による教育、指導
    を通して、管理不全を防止します。


     上記(ア)営業部門の権限の見直し、
                     (イ)購買機能の強化、
                               (ウ)再発防止策
    の有効性向上、及び(エ)属人化の防止による業務統制強化に係る取組みを推進
    し、本不正行為と同様又は類似する取引が当社においてなされることがなくな
    るよう、内部統制の見直し・強化を推進してまいります。


 エ コンプライアンス活動の見直し(2.
                   (1)オ~クに対応)
(ア)内部通報制度の運用見直し
   ・通報制度の再整備
     内部通報制度の有効性を一層高めるため、2020 年6月末までにハラスメント
    に関する通報窓口と不正に関する通報窓口を分離し、それぞれの責任部門が通
    報相談に対応する体制の構築・強化を進め、より安心して利用しやすい内部通報
    制度の運用を目指してまいります。また、内部通報制度の利用者の保護や通報制
    度の目的、必要性に関する教育、啓蒙を継続的に実施してまいります。

                     22
(イ)コンプライアンス意識の強化
   ・コンプライアンス活動計画の策定
     2020 年 5 月末日時点までに、各部門において、本調査報告書や自部門の状況
    を踏まえて、職場環境やハラスメントといった自部門で取り組むべきコンプラ
    イアンスに関する活動を「コンプライアンスの活動計画」として作成しました。
    各部門は、四半期ごとに「コンプライアンス活動計画」の実施状況のレビューを
    行い、CRO 及び法務・CSR 室が内容を確認の上、コンプライアンス委員会で実
    施状況の共有と必要な指導を行います。また、2021 年 3 月末までに当事業年度
    における活動状況の振り返りを実施した上で、翌事業年度における活動計画を
    策定します。


   ・コンプライアンス活動宣言
     すべての役職員を対象に、自部門のコンプライアンス活動計画も踏まえて、自
    身が取り組むコンプライアンスに関する活動を宣言してもらい社内に公開する
    ことを予定しています。特に、役員や幹部層については、コンプライアンス・マ
    ニュアルにおいて提唱している行動規範や行動基準の範を示すべく、自身のコ
    ンプライアンス活動宣言を、役職や職位に応じて取締役会又は経営委員会で自
    部門のコンプライアンス活動計画とともに、四半期ごとにレビューを受けるこ
    ととします。


   ・コンプライアンス教育の実施
     コンプライアンス委員会は、2020 年 7 月から 2021 年 3 月にかけて、役職員
    のコンプライアンスに関する理解度を向上させるため、各部門のコンプライア
    ンス活動計画や個人のコンプライアンス活動宣言の実施状況について評価し、
    意見交換を行う活動を各部門につき 1 回以上実施します。実施にあたっては、
    「コンプライアンス活動の空回り」を防ぐべく、参加者が主体的な姿勢で参加で
    きるワークショップ形式での取組みを検討してまいります。
     また、上司と部下との定期的な個別面談(1on1)や部下による上司評価の中
    で、相互にコンプライアンス活動宣言の実践状況に対するフィードバックを行
    うことで、自身の行動を客観的に振り返る活動を行います。
     なお、e ラーニングに関しても「おざなりな受講」を防ぐべく、設問や回答の
    内容を工夫することで、役職員が自ら考えて理解するコンテンツに変更してい
    きます。
     上記のコンプラ教育についても、2021 年 3 月末までに当事業年度における活
    動状況の振り返りを実施した上で、翌事業年度における活動計画を策定します。



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(ウ)新たな企業風土の形成
   ・ビジョン浸透委員会の再設置
     ネットワングループのビジョンブック「~アドマイヤード・カンパニーと呼ば
    れるために~」は、2009 年に制作され、私たちのゴールを「アドマイヤード・
    カンパニーになること~すべてのステークホルダーから信頼され支持される企
    業~」と定め、そのために必要な 7 つのミッションと 8 つの行動指針を策定し
    ました。2009 年から、ビジョン浸透委員会を設置し、社員への浸透活動を実施
    していましたが、2015 年、幅広くビジョンの理解と浸透が深まったと判断し同
    委員会は解散しました。しかし、ビジョンブックの内容に照らし合わせた、より
    良い風土づくりのための行動宣言、レビュー、面談活動の率先垂範が役職者の意
    識の差により十分に継続されておらず、このことが今般の不正行為を招く背景
    となったと考えております。
     そこで、企業風土の改善に取り組むことを目的として、2020 年 4 月 22 日に
    社外取締役を含む、全本部及びグループ会社の社員からなる、「ビジョン浸透委
    員会」を改めて発足させました。同委員会は「ネットワングループの社員として
    どう行動すべきか」をテーマに、全社員参加を目標に対話を重視した活動を継続
    的に推進していきます。


   ・ビジョンブックの再編集
     ビジョンブックの制定から 10 年以上が経過しており、当社を取り巻く現在の
    状況に合わせた見直しを行うこと、また本不正行為の教訓を風化させず、これか
    ら先も役職員が自分事とし継続して行動していくことを目的として、2020 年 9
    月末までに「ビジョンブック」の再編集を行います。再編集にあたっては、ネッ
    トワングループとして「あるべき姿」を明確にした上で、
                             「企業として社会への
    貢献につながる行動とは?」の視点でネットワングループの 7 つのミッション
    と、当社の事業、SDGs を紐づけた企業行動宣言を新たに作成するとともに、
                                        「社
    員としてとるべき行動とは?」の視点で行動指針の見直しを行います。


   ・浸透活動
     新たなビジョンブックを企業風土改善のためのツールとして位置づけ、すべ
    ての役職員を対象に新たなビジョンブックに基づいたビジョン行動宣言の開示
    と、実施状況に関する定期的な 1on1 でのフィードバックや、特に役員や幹部層
    については取締役会又は経営委員会で四半期ごとにレビューを行い、その浸透
    を図ります。また、ビジョン浸透委員会は、経営層と一般社員又は異なる部門の
    社員同士の対話型のワークショップを 2021 年 3 月までに実施し、当社の組織風
    土の改善に全社を挙げて取り組みます。また、従来から実施している社員の意識

                     24
 調査や顧客満足度調査の結果も参考にビジョン浸透活動の評価を行い、社員意
 識や組織の変化を客観的に把握しながら改善に向けた取り組みを継続していき
 ます。


・報酬制度の検証と対策
  当社では、2018 年度より新人事制度に移行し、営業職のインセンティブ制度
 の平準化を図っております。当該インセンティブ制度の運用状況を客観的に評
 価し、その一層の浸透を図ることを目的に、過去の営業インセンティブ制度の推
 移や職位別総合評価、年収比較及び、インセンティブ支給額などを改めて整理し、
 改善の必要性について評価を行います。評価の結果、改善の必要性が認められた
 場合は、2020 年 7 月末までに改善計画を策定し、組織での行動や成果をより重
 視する企業風土への変革を進めてまいります。


  これらのコンプライアンス活動の見直し、ビジョンの新たな浸透活動、報酬制
 度の再評価を行うことにより、役職員のコンプライアンス意識を高め、コンプラ
 イアンスの「自分事化」を推進することを通じて、当社のコンプライアンス意識・
 企業風土の問題の改善を進めてまいります。




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         (3)改善措置の実施スケジュール


                                              2020 年                                  2021 年
        再発防止策の項目
                        4月   5月    6月    7月    8月      9月   10 月   11 月   12 月   1月    2月      3月

ア   営業取引の基本方針           四半期ごとにルールの運用状況を検討

(ア)架空取引リスクの排除

 ・付加価値の提供の確認            2/13 に指示。※ルール化についてはウ(ア)
                                              ・業務規程の改訂                      にて実施

 ・明細を伴わない一式表記の禁止        2/13 に指示。※ルール化についてはウ(ア)
                                              ・業務規程の改訂                      にて実施

 ・直接取引案件のみ対応                 CR リストによるモニタリングの実施

                        一部               完全
 ・霞が関オフィスの閉鎖
                        撤退               撤退

 ・PMS による案件審査の強化             実施

イ   リスク管理体制の強化

(ア)リスク管理活動の抜本的見直し

 ・CRO の役割の明確化           3/27 取締役会で決定

 ・リスク・コンプライアンス委員会の分離    4/22 経営委員会にてリスク管理委員会・コンプライアンス委員会の設置を決定

 ・リスク管理の責任部門の明確化        4/9 経営委員会で決定

(イ)部門ごとの重要リスクの識別・評価

 ・リスク管理実行計画の策定          4/22 経営委員会にてリスク管理活動計画を決定
                             シート
 ・リスク調査シートによるリスク管理強化               運用開始(四半期ごとにレビュー)
                             の配布

(ウ)内部監査の強化

 ・監査手法の追加               今年度の内部監査より実施

 ・監査対象の拡大               今年度の内部監査より実施

ウ   業務統制の強化

(ア)営業部門の権限の見直し

 ・発注・検収権限の営業部門からの分離     検討                             実施   運用開始

・業務規程の改訂(業務ルール及びプロセス)              検討    実施    運用開始

 ・システム改修                           検討    順次実施

(イ)購買機能の強化

 ・購買部門の独立               4/1 付組織変更にて実施。リソースの拡充を推進中。

・仕入・検収に関する購買プロセスや機能の
                                   検討                       実施     運用開始
    再定義・強化

(ウ)再発防止先の有効性向上

 ・営業統轄室の設置              4/1 付組織変更にて営業統轄室を新設

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                                                2020 年                                  2021 年
        再発防止策の項目
                     4月    5月    6月       7月    8月       9月   10 月   11 月   12 月   1月    2月      3月

(エ)属人化の防止

 ・人事ローテーションの実行       4/1 付人事異動にて実施

エ   コンプライアンス活動の見直し

(ア)内部通報制度の運用見直し

 ・通報制度の再整備                検討     実施       運用開始

(イ)コンプライアンス意識の強化

                                          (四半期ごとにレビュー)
 ・コンプライアンス活動計画の策定    検討    実施    運用
                                          (役員、経営幹部は取締役会又は経営委員会でレビュー)

 ・コンプライアンス活動宣言             検討    実施       運用(役員、経営幹部は取締役会又は経営委員会でレビュー)

・コンプライアンス教育の実施                  検討        実施

(ウ)新たな企業風土の形成

 ・ビジョン浸透委員会の再設置      4/22 に発足

 ・ビジョンブックの再編集・浸透活動         ビジョンブック更新                          ビジョン浸透活動の実施

                                          策定

 ・報酬制度の検証と対策                    検討        ※必要   実施
                                          な場合




                                     27
3.投資家及び証券市場に与えた影響についての認識
 この度の不適切な会計処理により過年度決算を訂正することとなり、株主・投資家の皆様
及びお取引先をはじめ関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしましたこと
深くお詫び申し上げます。
 特別調査委員会からのご指摘、ご意見を真摯に受け止め、当社グループ一丸となってリス
ク管理体制の強化、業務体制の改善に取り組み、信頼の回復と企業価値の向上に努めてまい
ります。


                                      以上




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