7196 Casa 2021-02-26 19:00:00
特別調査委員会の最終調査報告書受領及び公表に関するお知らせ [pdf]
2021 年2月 26 日
各 位
会 社 名 株 式 会 社 C a s a
代表者名 代 表 取 締 役 社 長 宮地 正剛
(コード番号:7196 東証第一部)
問 合 せ 先 取締役経営管理部長 高杉 雄介
(TEL 03-5339-1143)
特別調査委員会の最終調査報告書受領及び公表に関するお知らせ
当社は、2020 年 12 月7日付「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」でお知らせしま
したとおり、当社代表取締役の発言内容及び経緯、同人と反社会的勢力との関係並びにパワ
ーハラスメントについて事実関係を解明するため、当社と利害関係を有しない外部専門家を
中心とした特別調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。
本日、特別調査委員会より最終調査報告書(要約版)(以下「本報告書」という。)を受
領いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。なお、要約版につきましては、関
係者のプライバシーを保護する観点から、匿名化等の処理を行っております。
記
1.特別調査委員会の最終調査結果
特別調査委員会の最終調査結果につきましては、別添の本報告書に記載のとおりですが、
当社代表取締役と反社会的勢力との間には一切関係が認められておりません。また、当社
代表取締役の役職員に対するパワーハラスメントがあったとは認定されておりません。
2.今後の対応方針について
当社は、特別調査委員会からの本報告書の調査結果を真摯に受け止め、2020 年 12 月
25 日付「当社のコンプライアンス体制強化策の策定について」でお知らせいたしました
コンプライアンス体制の強化策を着実に実行し、更なるガバナンスの充実を図り、信頼回
復に向けて取り組んでまいります。
株主の皆様をはじめ関係者の皆様には、多大なるご心配をおかけいたしましたことについ
て改めて深くお詫び申し上げます。
以 上
令和 3 年 2 月 26 日
株式会社 Casa 取締役会 御中
調 査 報 告 書
(最終報告)
要約版
株式会社 Casa 特別調査委員会
弁護士 山岡 通浩
弁護士 鈴木 優吾
弁護士 廣田 聡
【目次】
第1章 特別調査委員会の概要 4頁
第1 特別調査委員会の設置の経緯 4頁
第2 当委員会の目的 4頁
第3 当委員会の構成 4頁
1 当委員会 4頁
2 調査補助者 5頁
第4 当委員会の独立性 5頁
1 独立性の制度的保障 5頁
2 調査協力体制 5頁
3 調査協力者の保護 5頁
4 調査事務局、調査補助者 6頁
5 当社の守秘義務 6頁
第2章 調査の概要 7頁
第1 調査対象とした事実の範囲(調査スコープ)等 7頁
1 調査スコープ 7頁
2 本報告書の趣旨 7頁
第2 調査期間及び調査方法 7頁
1 調査期間 7頁
2 調査方法 7頁
3 当委員会による調査の限界に関する留保 8頁
第3章 当社の概要 9頁
第4章 本件報道において報道された当社元取締役 A 氏に関する事実 10 頁
関係
第1 調査方法 10 頁
1 当社代表取締役を含む役職員及び関係者に対するヒアリング 10 頁
2 関係書類の精査 10 頁
第2 調査により認定した事実関係 10 頁
1 本件報道において報道された令和 2 年 6 月 29 日に至る経緯 10 頁
2 令和 2 年 6 月 29 日の出来事 12 頁
1
3 その後の事情 13 頁
第3 まとめ 14 頁
第5章 当社代表取締役と反社会的勢力との関係の有無 15 頁
第1 反社会的勢力の定義 15 頁
第2 調査方法とその結果 15 頁
1 当社代表取締役に対するヒアリング 15 頁
2 当社役職員及び関係者に対するヒアリング 16 頁
3 当社役職員に対するアンケート 16 頁
4 当委員会のホットライン 17 頁
5 内部通報窓口の調査 18 頁
6 当社代表取締役の過去及び現在におけるバックグラウンド情 18 頁
報調査
7 デジタル・フォレンジック調査 19 頁
8 当社における反社会的勢力排除のための取組み 20 頁
第3 まとめ 21 頁
第6章 その他本件報道において報道された当社代表取締役の発言の 22 頁
趣旨及び経緯
第1 調査方法とその結果 22 頁
1 当社代表取締役に対するヒアリング 22 頁
2 当社役職員及び関係者に対するヒアリング 22 頁
3 関係書類の精査 23 頁
第2 まとめ 23 頁
第7章 当社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントの 24 頁
有無
第1 調査方法とその結果 24 頁
1 当社代表取締役に対するヒアリング 24 頁
2 当社役職員及び関係者に対するヒアリング 24 頁
3 当社役職員に対するアンケート 26 頁
4 アンケート回答者に対する追加ヒアリング 27 頁
5 当委員会のホットライン 28 頁
6 業務用メールのデジタル・フォレンジック調査 28 頁
2
7 内部通報窓口の調査 29 頁
第2 パワーハラスメントの認定基準 29 頁
1 労働施策総合推進法 29 頁
2 厚労省の指針 29 頁
3 調査結果のまとめ(パワーハラスメントの有無) 31 頁
4 改善提案 33 頁
3
第1章 特別調査委員会の概要
第1 特別調査委員会の設置の経緯
某週刊誌に当社代表取締役と反社会的勢力との関係を想起させる記事、及びパワー
ハラスメントに関する記事(令和 2 年 12 月 3 日及び同月 10 日発刊)が掲載された(以
下、二つの記事を併せて「本件報道」という。。
)
株式会社 Casa(以下「当社」という。)は、同月 3 日から、当該事実関係を解明する
ため、社内調査を行った。そして、当社は、同月 7 日、臨時取締役会を招集し、客観性
を高め、より深度のある調査を実施するため、当社と利害関係を有しない外部専門家 2
名及び当社社外監査役 1 名(計 3 名)から構成される特別調査委員会(以下「当委員
会」という。)を設置することを決議した。
第2 当委員会の目的
当委員会は、後述する調査スコープに関連する事実関係を調査して審議するととも
に、当社に対して調査結果を報告し、必要な限りにおいて改善提案をすることを目的と
するものである。
当委員会は、当社からの依頼に応じて調査結果を報告するため、調査報告書を当社取
締役会に提出するとともに、ステークホルダーに対する説明責任を果たす観点から、併
せて調査報告書の要約版を作成することとした。なお、関係者のプライバシーを保護す
る必要があることから、調査報告書の要約版を作成するにあたっては、匿名化等の処理
を行った。
第3 当委員会の構成
1 当委員会
当委員会は、以下の 3 名の委員により構成されている。
委員長 弁護士 山岡 通浩 山岡総合法律事務所
委員 弁護士 鈴木 優吾 山岡総合法律事務所
委員 弁護士 廣田 聡 HCA 法律事務所
なお、委員長の山岡及び委員の鈴木は、これまで当社との間で業務上の契約関係等の
利害関係を有したことはない。
4
また、委員の廣田は、当社の社外監査役であり、株式会社東京証券取引所の定めに基
づく独立役員に指定されている。なお、当社「監査役監査基準」第 26 条第 3 項におい
ては、監査役は、企業不祥事に対して明白な利害関係があると認められる者を除き、第
三者委員会の委員に就任することが望ましいとされている。
2 調査補助者
当委員会は、当社代表取締役と反社会的勢力との関係の存否、及び、当社代表取締役
による役職員に対するパワーハラスメントの有無を調査するため、後述するとおり当
社代表取締役のバックグラウンド情報調査及びデジタル・フォレンジック調査を実施
専門機関である株式会社 JP リサーチ&コンサルティング
することとし、 (以下
「JPR&C」
という。)を調査補助者として当委員会に直属させ、調査の補助を受けた。
第4 当委員会の独立性
当委員会は、当社との委任契約において、当社が下記の事項を遵守することを誓約さ
せ、調査における当委員会の独立性を一層高めることとした。
記
1 独立性の制度的保障
⑴ 調査報告書の起案権は当委員会のみに属すること、したがって、当委員会が調査報
告書を正式に当社に提出する前に、その内容を当社に開示し、修正の要望を受けるこ
とがあっても、修正に応じるか否かは専ら当委員会の判断によること。
⑵ 調査対象事項、調査対象とする役職員の範囲、及び、調査手法については、当委員
会に一任すること。また、調査に要する費用(実費)は当社が負担することとし、当
委員会の要請があり次第直ちに支払うこと。
2 調査協力体制
⑴ 当委員会の調査に全面的に協力すること。
⑵ 当社代表取締役から、当社の役職員に対して、ヒアリング、アンケートへの回答、
関係資料の提出など、調査に対する協力を最優先するよう業務命令を出し、これを次
項の内容とともに当社の役職員に周知、徹底すること。
3 調査協力者の保護
5
⑴ 役職員が当委員会の調査に協力して当社又は当社代表取締役に不利な陳述をした
こと、又は不利な関係資料を提出したことを理由として、当該役職員に対して不利益
な取扱いをしないこと。
⑵ 当委員会が収集した関係資料(特に役職員のアンケートの回答結果、役職員と当委
員会とのメールでのやりとり)については,当委員会が当社に提出する義務がなく、
当社は当委員会に提出を求めることができないこと。
4 調査事務局、調査補助者
⑴ 役職員の中から、当委員会の指示に従って調査実務を行う事務局員を選任するこ
と。
⑵ 事務局員に対しては、調査に関連する事項について、厳格な守秘義務を課すこと。
⑶ 当委員会の判断により、当社の費用負担で、調査補助者として必要な数の弁護士そ
の他の専門家を加えうること。
5 当社の守秘義務
当社は、当委員会から提出を受ける資料(但し、調査報告書の要約版を除く)を第三
者に対して開示しないこと。
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第2章 調査の概要
第1 調査対象とした事実の範囲(調査スコープ)等
1 調査スコープ
第1章「第2 当委員会の目的」記載の目的を達成するために、当委員会が当社と協
議したうえで決定した調査スコープは、以下のとおりである。
① 本件報道において報道された当社元取締役 A 氏(以下「A 氏」という。
)に関する
事実関係
② 当社代表取締役と反社会的勢力との関係の有無
③ その他本件報道において報道された当社代表取締役の発言の趣旨及び経緯
④ 当社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントの有無
2 本報告書の趣旨
令和 3 年 2 月 1 日、当委員会は、調査スコープのうち、②当社代表取締役と反社会
的勢力との関係の有無について先行して中間報告書を提出した。本報告書は、②当社代
表取締役と反社会的勢力との関係の有無を含めたすべての調査スコープに関する最終
報告書である。
第2 調査期間及び調査方法
1 調査期間
本報告書作成のための調査期間は、令和 2 年 12 月 7 日から令和 3 年 2 月 15 日であ
る。
2 調査方法
本報告書作成のために当委員会が実施した調査の概要は、以下のとおりである。なお、
各調査の具体的内容は、第4章以下で詳しく説明する。
①当社代表取締役に対するヒアリング
②当社役職員及び関係者に対するヒアリング
③当社役職員に対するアンケート
④アンケート回答者に対する追加ヒアリング
⑤当委員会ホットラインによる調査
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⑥当社代表取締役の過去及び現在におけるバックグラウンド情報調査
⑦当社代表取締役が業務上使用していた電子メールデータ、会社貸与スマートフォン
端末及び個人所有スマートフォン端末のデジタル・フォレンジック調査
⑧内部通報窓口の調査
⑨関係資料の調査
3 当委員会による調査の限界に関する留保
⑴ 当委員会は、第1章「第2 当委員会の目的」を達成するため、本報告書記載の調
査を実施した。しかし、当委員会は、強制的な調査権限を持つ団体ではないこと、ま
た、当委員会が当社に対して開示を求めた資料のすべてが適切に当社から開示され
ていることを前提とせざるを得ないことなどを理由とする、調査の限界が存在する。
⑵ また、当委員会における事実認定は、当社から当委員会に対して開示され、又は当
委員会が独自に収集した資料及び当委員会によるヒアリングで得られた供述につい
て、その信用性を慎重に判断したうえで行ったものである。そのため、当委員会が判
断の基礎とした資料等以外の資料や供述が存在し、又は当委員会が判断の基礎とし
た資料や供述に事実と異なる内容が含まれていることが発覚した場合には、事実認
定が変更されうることを留保しておく。
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第3章 当社の概要
(令和 2 年 1 月 31 日現在)
商 号 株式会社 Casa
上 場 市 場 東証第一部(証券コード:7196)
(業種:その他金融業)
決 算 期 1 月決算
資 本 金 15 億 6128 万 0640 円
代 表 者 宮地正剛
本店所在地 東京都新宿区西新宿二丁目 6 番 1 号
従 業 員 数 294 名(連結)
東京、札幌、仙台、さいたま、千葉、横浜、静岡、名古屋、大阪、
事 業 拠 点
岡山、高松、福岡
信用保証業務、インターネット・その他通信網を利用した情報提供
及び情報処理サービス業務、不動産売買・仲介・斡旋・賃貸及び管
事 業 内 容
理、不動産に関するコンサルティング業務、不動産取引等に関する
融資、保証及び債権買取りを含めた信用供与など
子 会 社 株式会社 COMPASS
会計監査人 あかり監査法人(本報告書作成日現在)
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第4章 本件報道において報道された
当社元取締役 A 氏に関する事実関係
第1 調査方法
1 当社代表取締役を含む役職員及び関係者に対するヒアリング
本件報道において報道された A 氏に関する事実関係を確認することを目的として、
当委員会は、当社代表取締役を含む役職員及び関係者に対するヒアリングを行った。当
社代表取締役以外のヒアリング対象者(以下「ヒアリング対象者」という。
)は、役員
10 名全員(執行役員を含む。ただし、社外監査役である廣田は委員であるためヒアリ
ングの対象から除外した。、及び日常業務で当社代表取締役及び A 氏と接触する機会
)
の多かったという理由で当社が選定した従業員 17 名及び元従業員 1 名を対象として実
施した。
なお、当委員会は、事案の真相解明に資すると考え、A 氏に対しても調査協力を依頼
したが、調査には協力できない旨の回答があった。
2 関係書類の精査
当委員会は、本件報道において報道された A 氏に関する事実関係を確認するため、
当社から、過去の取締役会議事録、経営会議議事録、監査役会議事録、監査役監査調書、
A 氏作成の業務執行確認書、 氏作成の退職時誓約書の開示を受け、
A これらの書類の精
査を行った。
第2 調査により認定した事実関係
当委員会が認定した事実関係は、以下のとおりである。
1 本件報道において報道された令和 2 年 6 月 29 日の出来事に至る経緯
⑴ 当社設立の経緯など
もともと当社は、当社代表取締役が平成 20 年 10 月にレントゴー保証株式会社(旧
株式会社 Casa)を設立したことに始まる。
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A 氏は、当社設立時からのメンバーであって、平成 28 年 4 月 27 日に、当社の営
業部門担当の取締役に就任した。しかしながら、A 氏は、部門トップとしての職責を
充たす能力がなく、部下のマネジメントをしないことによる社員の離脱を招き、当社
代表取締役は、新しく外部から営業部門の責任者を招聘せざるを得なくなった。
⑵ 子会社の設立
当社代表取締役は、新規事業推進のための子会社の代表として、A 氏を指名し、当
社取締役会において承認された。
子会社の代表取締役としての A 氏の業務内容は、不動産業界の問題についてテク
ノロジーを使って解決するサービスによって新たな市場を開拓することであった。
⑶ A 氏による任務懈怠
A 氏は、子会社の代表取締役に就任したものの、当社代表取締役からの再三の要請
にもかかわらず、新規事業に係る事業計画の作成及び提出をせず、作成後も当社取締
役会において十分な議案説明ができない状態であった。また、A 氏は、部下に業務を
すべて任せきりにして、会社のマネジメントをほぼ行っていなかった。会社のロゴも
決められず、自身の代表取締役の名刺さえ 1 年間作成できない状態であり、代表取
締役としての自覚すら感じられなかった。また、A 氏は、当社取締役会や経営会議に
おいて、準備不足が原因で子会社の事業の状況の説明を満足に行うことができない
ことも度々あった。
そのため、当社監査役会が、令和元年 12 月 19 日、A 氏に対して、職責における
説明責任を果たさせるために、ヒアリングを実施することを決めた。そして、当社監
査役会は、令和 2 年 1 月 17 日、A 氏に対するヒアリングを実施したが、その際に、
もっと当事者意識を持って職責に当たることなどを求める指導を行った。
また、A 氏は、監査役会に対し、同年 3 月 6 日、監査役会が法令遵守及び内部統制
システムの整備・充実に関する確認のために行った業務執行確認の中で、
「不正は行
っていないものの、目に見えない実害を与えていると認識しています。」と報告し、
自らの任務懈怠を認めていた。
A 氏は、 3000 万円の費用をかけて開発したシステムのリリースが約 1 か月後に
約
迫ったことから、令和 2 年 6 月 24 日開催の当社取締役会において、その説明を行っ
た。その際、社外取締役からリリース後の展望について質問があったが、自らは内容
を把握していなかったため何も説明することができず、急遽部下が代わりに説明を
行うという始末であった。このような状況が長らく続いたことから、当社代表取締役
11
は、A 氏に対して、任務懈怠を指摘した上で、
「経営者としての責任をどう考えてい
るのですか。
」と質問したところ、A 氏は、
「すべては自分が招いた責任です。年内に
予算を達成します。もし達成できなければ、責任を取って、損害を補填します。もう
一度チャンスをください。
」と述べ、当社代表取締役の了承を得て、その後も引き続
き子会社の代表取締役としての職務を継続することとなった。
⑷ 部下の離反
しかし、上記の宣言後も A 氏の業務態度は変わることなく、見かねた部下達から、
「一緒に仕事をしたいと思えません。」等の申し出があったほか、他の執行役員から
も「これ以上は厳しいです。進退を考え直してください。」との厳しい指摘がなされ
た。
2 令和 2 年 6 月 29 日の出来事
⑴ A 氏による退職届の提出
周囲からの厳しい指摘を受けて、令和 2 年 6 月 29 日、A 氏は、当社代表取締役に
対して、子会社代表取締役及び当社執行役員の辞任を申し出た。
当社代表取締役は、役員を社長室に集め、話し合いがもたれた。
⑵ 社長室での出来事
まず、 A
当社代表取締役が、 氏に対して、辞任の理由を説明するよう求めたところ、
A 氏から、部下が一緒にやりたくないと言っているので、もう継続は難しい旨説明が
あった。なお、本件報道では A 氏が当社代表取締役からのパワーハラスメントに耐
えかねて退職を願い出たと報道されているが、A 氏からそのような話は一切なかっ
た。
当社代表取締役は、A 氏に対し、
「辞めるのは自由です。ただ、先日の取締役会で
決意表明をされたばかりなのに、無責任じゃないんですか。会社に生じた損失を補填
するという話はどうなるのですか。
」という趣旨の話をした。これに対し、A 氏は、
「分からないので兄と弁護士に相談したい。」旨述べた。当社代表取締役が、
「弁護士
と相談するのは結構ですけど、自分自身はどのようにしたいのですか。」と再度尋ね
たものの、A 氏は同じ回答を繰り返すばかりだった。
当社代表取締役と A 氏との間で何度か同様のやりとりがなされた後、突然 A 氏が、
「弁護士に相談するのもいけないのか。
」と声を荒げた。これに対し、当社代表取締
役が、
「なぜ急にそんな大声をだすのですか。居直るのですか。」と応じたところ、A
12
氏は、
「居直ってねえよ。どこがだよ。いい加減にしてくれよ。」などと暴言を吐いた
ので、当社代表取締役は、 」と言い返した。その後 A 氏
「その態度が居直っとろうが。
は、「もううんざりなんだよ。腕力に自信があるんだよ。社長も腕っぷしに自信があ
るんでしょう。やりましょうよ。
」などと言い、いきなり席を立ち、向かいの席に座
っていた当社代表取締役に駆け寄り、座っていた当社代表取締役に暴行を働いたと
ころ、周りの役員に取り押さえられた。 A
当社代表取締役は、 氏の暴力行為に対して、
感情的になり、
「来いよ、腕っぷし俺、自信があるから。来い来い。俺も輩は輩で何
」と発言した。その際、当社代表取締役の着ていた T シャツ
人も付き合っとるから。
が破けた。
当社代表取締役が、A 氏の暴力行為を受けて、警察を呼ぶよう指示した。そして、
A 氏に対して、「上場企業の役員が代表取締役に暴力を振るうなど経営者としてある
まじき行為であり、警察沙汰になれば、最悪会社も倒産し、社員も路頭に迷うおそれ
がある。自分のやったことは絶対に許されることではない。
」旨の発言をし、A 氏に
対する本件報道に記載の発言が行われた。
しかし、最終的には、当社代表取締役は、上記の暴力行為を不問とし、A 氏に反省
を促す中で、悪い人間になるなという趣旨で、本件報道にて報道された一連の発言を
した。
A 氏は、これに対し、
「ありがとうございます。感謝します。
」と述べて社長室から
退室した。
3 その後の事情
⑴ A 氏の退職と転職
A 氏は、上記出来事のあった翌日、令和 2 年 6 月 30 日付けで、子会社代表取締役
を辞任するとともに、当社を退職した。
A 氏が当社を退職した直後から、 A
当社の取引先より、 氏がネガティブキャンペー
ンを行っている旨の連絡を受け、担当者から当社代表取締役に対して報告がなされ
たが、当社代表取締役は、関与しないよう指示をした。
A
その後、 氏が、当社在籍時に責任者として実施していた事業と競合する事業を行
う会社に転職した事実が発覚した。
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A
これを知った一部の当社経営幹部が、 氏による競合先への転職を問題視し、当社
代表取締役に対して報告したが、 A
当社代表取締役は、 氏にはもう関わらないほうが
よいと指示した。
⑵ 被害届の提出等
その後、A 氏が当社在籍時に責任者として実施していた事業のクライアントに対
A
するネガティブキャンペーンが発覚し、 氏の元部下である当社従業員より、当社代
表取締役に対して、
「まだ放っておくのですか。これ以上、A の行動を許すことがで
きない。」旨の申告が多数あった。かかる申告を受けて、当社代表取締役は、もはや
ほかに当社従業員の怒りを収める術がないためやむを得ないと考え、令和 2 年 8 月
中旬に、新宿警察署に対し、A 氏から暴行を受けたことを理由に、被害届を提出する
ことを決めた。その約1か月後、某週刊誌に当社代表取締役と反社会的勢力との関係
を想起させる記事、及びパワーハラスメントに関する記事(令和 2 年 12 月 3 日及び
同月 10 日発刊)が掲載された。
なお、当社の株価終値は、同年 12 月 2 日の時点で 1273 円であったが、本件報道
後、同月 11 日時点で 1020 円まで下落した。他方、A 氏は、本件報道直前の約 1 か
月前の同年 11 月 10 日に、
その保有する当社株式のうち 10000 株を市場で売却した。
第3 まとめ
当委員会が認定した令和 2 年 6 月 29 日の出来事を巡る事実関係は、以上のとおりで
ある。
A
某週刊誌の記事は、 氏の言い分に沿って編集され、恣意的に当社代表取締役の発言
の一部だけを取り上げたものであり、事実関係を正確に報道したものとは認められな
い。
14
第5章 当社代表取締役と反社会的勢力との関係の有無
第1 反社会的勢力の定義
当委員会は、
「反社会的勢力」の定義について、当社の反社会的勢力対応マニュアル
が定める「暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動
標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等またはこれらに準ずるもの」との属性要件には一定
の合理性があるものと判断し、本報告書でもこれに従うこととした。
第2 調査方法とその結果
1 当社代表取締役に対するヒアリング
⑴ 調査の目的
当社代表取締役と反社会的勢力との関係の有無を確認すること、並びに本件報道
における当社代表取締役の発言として、反社会的勢力と関係を持っているのではな
いかと問題視された発言(以下「本件発言①」という。
)の趣旨を確認することを目
的として、当委員会は、当社代表取締役に対するヒアリングを行った。
⑵ 調査結果
当社代表取締役は、反社会的勢力との関係は一切ないと述べ、明確に関係を否定し
た。
また、本件発言①の趣旨について当社代表取締役から聴取した内容は、以下のとお
りである。
本件報道で取り上げられていた「輩」とは、反社会的勢力ではなく、素行不
良な人間といった程度の意味であると考えて言った。
報道された令和 2 年 6 月 29 日の出来事の中で、A 氏から暴力行為を受け、
その後に、同人に対して、暴力を働く人間は「輩」と一緒ではないかという
趣旨の発言をした。
長らく不動産関係の仕事をしてきた中で、そのような素行不良な人間とも対
峙してきたという趣旨で言った。
決してそうした人達と付き合っているという趣旨で発言したのではないし、
ましてや反社会的勢力との交流をほのめかして発言したものではない。
15
過去に人生に絶望しかけて、一層のこと悪い道に進もうかという考えが頭
をよぎったこともあったが、
「そうやって逃げて悪い人間になってはいけな
い。周りの人に支えられている。」という話をした。
A 氏の経営者としてのスキルから組織運営が破綻していることに対して素
直に反省し、悪い人間になるなということを A 氏に伝えたのであって、報
道された発言は一部のみが切り取られており、本来の趣旨が正確に伝わっ
ていない。
2 当社役職員及び関係者に対するヒアリング
⑴ 調査方法
当社代表取締役と反社会的勢力との関係の有無を確認することを目的として、ヒ
アリング対象者に対してヒアリングを行った。なお、本件発言①を直接聞いた取締役、
常勤監査役、執行役員合計 6 名については、当社代表取締役に対するヒアリング結
果を伝えることなく事実関係を確認した。
⑵ 調査結果
当社代表取締役と反社会的勢力との関係を示唆する回答は全くなかった。
また、本件発言①の趣旨について、前述の当社代表取締役に対するヒアリング結果
を裏付けるものであった。
なお、本件発言①について、それと同様の発言は、本件報道された出来事以外の場
面でも、当社代表取締役が悪い人間になるなという趣旨で役職員を諭す際に聞いた
ことがある話であり、反社会的勢力との関係を示唆する内容・趣旨ではないとのコメ
ントが複数なされた。
3 当社役職員に対するアンケート
⑴ 調査方法
当社代表取締役と反社会的勢力との関係の有無を確認することを目的として、当
社の役職員に対して、「あなたは、宮地社長が反社会的勢力と付き合っているのを目
撃したことがありますか、あるいは、宮地社長が反社会的勢力と付き合いがあると聞
いたことがありますか。
」という質問に回答を求めるアンケート調査を実施した。
なお、当社役職員が安心して回答ができるようにするため、アンケートへの協力要
請の文面には、
「回答用紙につきましては、特別調査委員会が厳重に保管し、秘密を
16
厳守いたします。また、調査報告書などで内容を引用するなどして使用する場合には、
誰の回答であるのかが分からないように細心の注意を払います。さらに、万一の場合
に備えて、会社には、会社または宮地社長に不利な回答がなされても、回答者に対し
て不利益な取り扱いをしないことを約束してもらっていますので、どうか安心して、
ありのままの事実をご回答ください。」と記載した。
⑵ 調査結果
アンケート調査は、当社役職員 309 名を対象として実施し、274 名から回答を得
た。その結果は、下記のとおりであった。
記
アンケート送付数(母数)
:309 通
回答数:274 通
回答率:89%(小数点以下四捨五入、以下同じ)
記名:269 通、匿名:5 通(うち連絡先の記載もなし:4 通)
記名率:98%
質問に「ある」と答えたもの:1 通
質問に「ない」と答えたもの:269 通(98%)
質問に「分からない」と答えたもの:1 通
質問への回答がなかったもの:3 通
「ある」と回答した 1 通については、回答者が特定されることを避けるため
なお、
具体的な回答内容を記載することは差し控えるが、氏名及び連絡先の記載がなく、そ
の内容も信憑性に欠けていたため、その他の調査結果に鑑みて、当社代表取締役と反
社会的勢力との直接的な関係を示すものとはいえないと判断した。
4 当委員会のホットライン
⑴ 調査方法
当委員会は、当委員会のホットライン(当社のドメインを用いない電子メールアド
レス)を設定し、当社役職員に対して、アンケートを実施する際に、当委員会に匿名
で伝えたい事項があれば連絡するよう促した。
⑵ 調査結果
17
当委員会のホットライン宛てに、当社代表取締役と反社会的勢力の関係に関する
通報はなかった。
5 内部通報窓口の調査
⑴ 調査方法
当社は、コンプライアンス違反行為の内部通報窓口に関する基本事項を定めるこ
とを目的として、ホットライン規程を制定し、内部通報窓口として、当社代表取締役
が選任する社内窓口とは別に、当社顧問弁護士事務所による社外窓口を設置するこ
ととしている。当社は当該業務を第一芙蓉法律事務所の浅井隆弁護士に委託してい
る。
当委員会は、当社代表取締役と反社会的勢力との関係の有無を確認することを目
的として、同弁護士にヒアリングを行い、過去当社代表取締役と反社会的勢力との関
係に関する内部通報があったか否かを確認した。
⑵ 調査結果
当社代表取締役と反社会的勢力との関係について、内部通報は一切なかった。
6 当社代表取締役の過去及び現在におけるバックグラウンド情報調査
⑴ 調査対象の選定
当社代表取締役本人、同人の親族関係者(2 親等内の血族又は姻族)
、これまでに
当社代表取締役が勤務した企業(当社を含む)及びその役員、当社代表取締役と関係
が深いと思われる当社の取引先企業及びその役員、並びに、当社の経理データから、
当社代表取締役との交流関係が確認された個人及びその所属先企業等を調査対象に
定めた。
上記の各情報に着目した背景には、本件報道及び関連する音声データの内容を考
慮した上で、JPR&C との複数回の協議を経て、カバーすべきと判断した当社代表取
締役の人的背景やビジネス履歴上の関係先などを、同人のバックグラウンドとして
設定した経緯がある。
調査対象の選定過程においては、反社会的勢力との関係関与リスクを推し量るう
えで特に注意すべき「利益供与」と「助長取引」の観点(東京都暴力団排除条例を踏
襲)を念頭に、各対象の社会的な信用度、金額・期間、当社代表取締役との関係の深
さなどに鑑みて、重要と判断した個人・法人を調査対象と定めた。
18
その結果、本調査の対象は、個人 146 名、法人 25 社(団体等を含む)の合計 171
対象となった。
⑵ 採用した調査手法
上記⑴のプロセスで選定した合計 171 の調査対象に対し、コンプライアンスの観
点(特に、反社会的勢力としての属性及び同勢力との関係性)から留意すべき重大な
問題事項や情報がないかを確認するために、各対象の名称(氏名・商号など)をキー
ワードにしてアクセス可能な公開情報(公的機関の記録やメディア報道などを含む)
及び JPR&C 保有データベースを活用した照合調査を実施した。
⑶ 調査結果
上記調査対象のうち、計 9 名について、反社会的勢力としての属性及び同勢力と
の関係性を示唆する同姓同名の該当情報が検出された。
そこで、上記 9 名の氏名をキーワードに検出された各該当情報が本人情報である
かを確認すべく、各対象の年齢や自宅住所地等の情報提供、あるいは各種公開情報の
精査を通じて、同一性の確認を行った。
その結果、いずれの該当情報も別人に関する情報であるとの判断に至った。
このほか過去の違法行為・不正取引及びそれに伴う処分歴(=行為情報)の有無、
あるいは当事者となった訴訟や破産・民事再生歴の有無などについて、複数の該当情
報が検出されたが、これらの情報は、別人に関する情報であるか、又は、反社会的勢
力としての属性や同勢力との関係を示す内容とはいえないと判断した。
7 デジタル・フォレンジック調査
⑴ 調査対象の選定
当委員会は、デジタル・フォレンジック調査として、当社代表取締役が外部との連
絡に使用していた個人所有スマートフォン端末及びその通話履歴並びに会社貸与ス
マートフォン端末の提供を受け、当社代表取締役が業務上使用していた電子メール
についてはアーカイブへのアクセス権の付与を受けた。
スマートフォン端末は、その電子データ及び通話履歴から抽出される個人及び法
人の情報から、反社会的勢力でないことが入社時に確認されている当社役職員(元役
職員含む)を除外して対象を特定した。
電子メールは、データのダウンロード及び変換を行ってレビュー用データを生成
のうえ、本件発言①の 1 年前である 2019 年 6 月以降調査時点までに当社代表取締役
19
とやり取りのあった人物で当社役職員以外の者を特定し、その特定した人物との過
去 3 年分の電子メールのやり取りの詳細を確認した。
以上のプロセスを経て抽出・特定した対象から、上記6において調査対象とされた
者及び公的機関又はそれに準ずる立場にある人物や法人については、調査の目的に
鑑みて除外して、調査対象を選定した。
その結果、本調査の対象は、個人 35 名、法人 6 社(団体等を含む)の合計 41 対
象となった。
⑵ 採用した調査手法
既述のプロセスで選定した合計 41 の調査対象に対し、コンプライアンスの観点
(特に、反社会的勢力としての属性及び同勢力との関係性)から留意すべき重大な問
題事項や情報がないかを確認するために、各対象の名称(氏名・商号など)をキーワ
ードにしてアクセス可能な公開情報(公的機関の記録やメディア報道などを含む)及
び JPR&C 保有データベースを活用した照合調査を実施した。
⑶ 調査結果
上記調査対象のうち、1 名について、反社会的勢力としての属性及び同勢力との関
係性を示唆する同姓同名の該当情報が検出された。
そこで、上記 1 名の氏名をキーワードに検出された各該当情報が、本人情報であ
るか否かを確認すべく、本人の年齢等の情報提供を受けたうえで、各種公開情報の精
査を通じて、同一性の確認を行った。
その結果、検出された同姓同名人物の該当情報が、調査対象とは別人に関する情報
であるとの判断に至った。
このほか過去の違法行為・不正取引及びそれに伴う処分歴(=行為情報)の有無、
あるいは当事者となった訴訟や破産・民事再生歴の有無などについて、複数の該当情
報が検出されたが、これらの情報は、別人に関する情報か、又は、反社会的勢力とし
ての属性や同勢力との関係を示す内容とはいえないと判断した。
8 当社における反社会的勢力排除のための取組み
当社は、
「反社会的勢力に対する基本方針」において、
「反社会的勢力とは断固として
対決し、取引関係を含めた一切の関係を遮断します。」と宣言し、また、
「コンプライア
ンス行動原則」の「2.良識ある企業行動の実践」の⑷において、
「反社会的勢力を排除
20
する方針の下に、毅然たる態度で臨み、組織的な対応ができる態勢を整備し確立する」
という行動原則を定めている。
これらの宣言や行動原則を受けて、当社は、平成 26 年 9 月 1 日、「反社会的勢力排
除基本規程」を制定し、役員及び社員に対し、反社会的勢力と疑われる者との接触を禁
止するだけでなく(第 10 条) 新たな取引先等と新規に取引を開始するとき、
、 及び既存
取引先等の登録情報を更新するときは、当該取引先等及びその役員、主要株主等につい
て、「反社会的勢力調査マニュアル」に基づき、反社会的勢力を認知する努力義務を課
し(第 8 条)
、役員及び社員と反社会的勢力との関わりを排除する仕組みを取り入れて
いる。
また、当社は、社員の入社時においても、反社会的勢力であるか否かのチェックを行
っており、会社内部に反社会的勢力が入り込む危険を未然に排除するための取組みを
行っている。
第3 まとめ
以上の調査の結果、当社代表取締役と反社会的勢力との間には一切関係が認められ
なかった。
21
第6章 その他本件報道において報道された
当社代表取締役の発言の趣旨及び経緯
第1 調査方法とその結果
1 当社代表取締役に対するヒアリング
⑴ 調査の目的
本件報道における当社代表取締役の発言として、内部統制上問題視された発言(以
下において「本件発言②」という。)の経緯及び趣旨を確認することを目的として、
当委員会は、当社代表取締役に対するヒアリングを行った。
⑵ 調査結果
当社代表取締役から聴取した本件発言②の経緯及び趣旨は、以下のとおりである。
内部統制に関する発言は、個人情報流出の事案につき、事案を曖昧にし、隠蔽
と誤解を与える対応方針が出されたため、役員に対して私と同じ判断基準で
対応を求めたものである。結果、個人情報保護委員会にも報告をするように指
示をした。
2 当社役職員及び関係者に対するヒアリング
⑴ 調査方法
本件報道で報道された当社代表取締役による本件発言②の趣旨、及び当社の内部
統制の状況を把握することを目的として、ヒアリングを行った。
⑵ 調査結果
ア 本件発言②の経緯及び趣旨について
本件発言②を直接聞き、当時のことを記憶していた執行役員から聴取した内容
は、以下のとおりである。
役員が集まって個人情報流出事案の対応について検討し、当社代表取締役に
対して対応方針として個人情報保護委員会に報告しない旨を説明したところ、
隠蔽ととられないように、より慎重に考えて判断するよう指示を受けた。
また、記載していた改善内容については、事故原因を調査しておらず、また記
載されている改善対策も実施していないことに、不誠実であると指摘を受け
た。
22
規定に沿い、個人情報保護委員会に対する報告と事故原因の調査及び改善策
の実施を行うよう指示を受けた。
当社代表取締役の判断が最も適切な判断であったことから、他の役員に対し
て、もっと判断基準を適切にせよという趣旨でなされた発言である。
イ 内部統制の状況について
また、社外取締役及び社外監査役に対して、内部統制上の重要な機関である取締
役会での議論の状況を確認したところ、聴取した内容は、以下のとおりである。
何らの議論もなされないような、いわゆる「シャンシャン」の取締役会ではな
く、活発に議論がなされ、社外役員からも時には厳しい意見が述べられ、その
意見により当社代表取締役やその他の取締役が議案の修正や再提出を行うこ
ともあった。
複数の会社の取締役会に出席したことがあるが、当社の取締役会が最も活発
といえる。
取締役会以外にも当社代表取締役と各社外役員が個別に面談して情報交換を
適宜行っている。
3 関係書類の精査
⑴ 調査方法
当社の内部統制の状況を確認するため、取締役会議事録、監査役会議事録、監査役
監査調書及び内部監査に係る監査報告書について、過去 3 年分の開示を受け、その
内容を精査し、内部統制上問題となり得るような記載がないかを確認した。
⑵ 調査結果
特段内部統制上問題となり得るような記載は見られなかった。
第2 まとめ
以上のとおり、内部統制上の問題は特段見られないが、本件発言②のような発言は、
ステークホルダーに対して誤解を生じさせ兼ねない発言であり、今後は留意する必要
がある。
23
第7章 当社代表取締役による役職員に対する
パワーハラスメントの有無
第1 調査方法とその結果
1 当社代表取締役に対するヒアリング
⑴ 調査の目的
当社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントの有無を確認すること
を目的として、当社代表取締役に対するヒアリングを行った。
⑵ 調査結果
当社代表取締役から聴取した内容は、以下のとおりである。
取締役会や経営会議などの会議で、取締役や執行役員などの経営幹部に対し強
い口調で指導することがある。また、社長室に経営幹部を集め、強い口調で指導
することもあるが、感情的になるようなことはない。
週刊誌で報道されたような発言は、A 氏から暴行を受けたため、感情的になり、
あのような言い方になってしまったが、普段はしない。
経営幹部が自分の部下を放置し社員を孤立させていたり、事故やクレームが発
生した際に、誠実な対応を取らずにうやむやに済まそうとするときは厳しく叱
ることがあった。
業績についてはあまり指摘することはない。行動して達成できないのは仕方が
ないが、自分が期限を決めてこれをやると約束したのに、行動しないときは注意
する。
経営幹部には厳しいが社員に同じ対応をすることはない。
強い口調で指導する時は、殆どが嘘をついたり隠蔽などに繋がるときであった
と思う。
厳しく指摘したあとには、必ずすぐに 1 対 1 になってフォローしている。
今回の件では自分に驕りがあったと反省している。
2 当社役職員及び関係者に対するヒアリング
⑴ 調査方法
24
当社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントの有無を確認すること
を目的として、ヒアリング対象者に対して、ヒアリングを行った。
⑴ 調査結果
ア 当社役職員及び関係者から聴取した内容は概ね一致しており、その内容は以下
のとおりである。
取締役会や経営会議などの会議で、社長に強い口調で指導されることがある。
また、社長室に呼ばれて、強い口調で指導されることもある。
社長はいつも冷静である。厳しい言い方をするときも、感情的になるようなこ
とはない。多少乱暴な言葉を使ったり、大声を出したりすることはあるが、言
っていることは正論で、理不尽なことは言わない。
週刊誌で報道された昨年 6 月 29 日のような言い方は、普段はしない。あのと
A
きは、 氏から暴力行為を受けたため、社長も感情的になってしまったのだと
思う。
自分の部下の面倒をきちんと見ていないとき、あるいは、自分からいついつま
でにこれをやると約束したのに、約束を守らず、行動しなかったときには、強
い口調で言われる。
社長は、普段から、実際に行動して数値目標を達成できないのは仕方がないと
言っている。そのため、結果を理由に指摘されることはないが、自身が約束し
たことを守らないときには、厳しく指導される。社長は、できたできないとい
う結果ではなく、プロセスを大事にしている。
立場が上であればあるほど、言い方が厳しくなる。それは責任の重みが違うか
らである。課長よりは部長、部長の中でも執行役員よりは取締役に厳しく言う。
課長職では言われない者もいる。逆に、管理職でもない従業員に厳しい言い方
をすることはない。
社長は、本音で話をするので、経営幹部に対する指導も傍から見ればきついと
思われるかもしれないが、我々に対する叱咤激励であり、パワハラではない。
社長は最終的に方向性を示して、またほとんどの場合、社長が主に手伝ってく
れている。
イ 以上に対して、少数ながら、以下の意見があった。
社長の乱暴な言い方は将来のリスクなので、いずれ改めていただきたいと思
っていた。
25
大きな声は特に直したほうがよい。職場環境を悪くする。社長室のドアが開い
ていて、従業員の執務スペースに聞こえる。
3 当社役職員に対するアンケート
⑴ 調査方法
当社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントの有無を確認すること
を目的として、当社の役職員に対して、
「あなたは、宮地社長からパワハラを受けた
ことがありますか、あるいは、他の役職員が宮地社長からパワハラを受けているのを
見たり、聞いたりしたことがありますか(但し、今回の週刊誌の報道は除外します)
。
ある場合には、日時、場所、発言内容、対象者など、具体的な事実をお答えください。
パワハラに該当しなくても、それに近いと思われる事実があれば、お答えください。」
という質問に回答を求めるアンケート調査を実施した。
なお、当社役職員が安心して回答ができるようにするため、アンケートへの協力要
請の文面には、
「回答用紙につきましては、特別調査委員会が厳重に保管し、秘密を
厳守いたします。また、調査報告書などで内容を引用するなどして使用する場合には、
誰の回答であるのかが分からないように細心の注意を払います。さらに、万一の場合
に備えて、会社には、会社または宮地社長に不利な回答がなされても、回答者に対し
て不利益な取り扱いをしないことを約束してもらっていますので、どうか安心して、
ありのままの事実をご回答ください。」と記載した。
⑵ 調査結果
ア アンケート調査は、当社役職員 309 名を対象として実施し、274 名から回答を
得た。その結果は、下記のとおりであった。
記
アンケート送付数(母数)
:309 通
回答数:274 通
回答率:89%(小数点以下四捨五入、以下同じ)
記名:269 通、匿名:5 通(うち連絡先の記載もなし:4 通)
記名率:98%
①自分がパワハラを受けたことがないと答えたもの:260 通(95%)
①のうち、パワハラを見聞きしたことがあると答えたもの:36 通(13%)
26
①のうち、
「ない」と答えたもの:224 通(82%)
②自分がパワハラを受けたことがあると答えたもの:11 通(4%)
③「分からない」
「回答拒否」
「無回答」 通(1%)
:3
イ 自分がパワハラを受けたことがあると答えたものは、回答者が容易に特定でき
てしまい、内容をそのまま引用するのが困難であるため、要約版においては引用を
差し控える。
ウ パワハラを見聞きしたことがあると答えたものは、回答者が容易に特定されて
しまうおそれがあるため、また、後述第2の当委員会の認定にかかわらず表現のみ
公表することは不適切な場合がありうるため、要約版においては引用を差し控え
る。
4 アンケート回答者に対する追加ヒアリング
⑴ 調査方法
上記3の当社役職員に対するアンケート実施時に、協力要請の文面に「回答の内容
によっては、今後、調査委員会から連絡をとって、詳しい事情をお聞きすることがあ
るかもしれません。アンケートの連絡先には、会社のメールアドレスではなく、個人
のメールアドレスを記載してください。
」と記載し、回答者の個人のメールアドレス
を取得した。
回収したアンケートの中で、パワハラに該当すると考えられる具体的な事実関係
の記載があり、さらに詳細な事実関係を聞く必要があると判断した 10 名に対して、
個人のメールアドレス宛てにメールを送り、追加ヒアリングの協力を要請した。
その結果、7 名の協力を得ることができ、うち 5 名は電話によりヒアリングを実施
し、残りの 2 名は zoom によりヒアリングを実施した。
なお、誰の追加ヒアリングを実施したのかを当社に把握されるのを防ぐために、追
加ヒアリングは委員長の法律事務所で実施した。
⑵ 調査結果
追加ヒアリングにより得られた内容は、いずれも対象者本人が特定できてしまう
内容であるため、要約版においては引用を差し控える。
5 当委員会のホットライン
⑴ 調査方法
27
当委員会は、当委員会のホットライン(当社のドメインを用いない電子メールアド
レス)を設定し、当社役職員に対して、上記3の当社役職員に対するアンケートを実
施する際に、当委員会に匿名で伝えたい事項があれば連絡するよう促した。
⑵ 調査結果
当委員会のホットライン宛てに、当社代表取締役による役職員に対するパワーハ
ラスメントに関する通報はなかった。
6 業務用メールのデジタル・フォレンジック調査
⑴ 調査方法
当社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントの有無を確認すること
を目的として、デジタル・フォレンジック調査として、当社代表取締役が業務上使用
していた電子メールについて、アーカイブへのアクセス権の付与を受けた。
電子メールデータのダウンロード及び変換を行ってレビュー用データを生成のう
え、当該電子メールのうち 2017 年 12 月 1 日から 2020 年 12 月 21 日までの 3 年間
に当社代表取締役から送信がなされたものから、パワーハラスメントに関して通常
用いられることが想定されるキーワード(本件報道で問題になった文言を含み、
「バ
カ、馬鹿、アホ、阿呆、ボケ、やめろ」等、当委員会にて設定したもの)を検索する
ことにより抽出された電子メールについて、その詳細を確認した。
⑵ 調査結果
対象メール数:15,307 通
抽出された電子メール数:73 通
なお、上記の文言が含まれる電子メールであっても、特定の役職員に対して向けら
れたものではない場合(例えば「私が馬鹿だ。」と当社代表取締役が自身のことを述
べるような場合)には、調査目的に鑑みて、当該メールを抽出対象から除外した。
上記の 73 通の電子メールは、すべて課長職以上の役職員に対して、その業務上の
ミス等に関する指導・指摘として送信されたものであり、叱責の文言については、か
かる指導・指摘の一環として記載されたものであった。
7 内部通報窓口の調査
⑴ 調査方法
28
当委員会は、内部通報窓口である前述の浅井隆弁護士にヒアリングを行い、過去当
社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントに関する内部通報があった
か否かを確認した。
⑵ 調査結果
当社代表取締役による役職員に対するパワーハラスメントについて、内部通報は
一切なかった。
第2 パワーハラスメントの認定基準
1 労働施策総合推進法
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する
法律(昭和 41 年法律第 132 号。最終改正令和 2 年法律第 4 号)(いわゆるパワハラ防
止法)第 30 条の 2 第 1 項は「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景と
した言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働
者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応す
るために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」
と定めている。
2 厚労省の指針
「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇
用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和 2 年 1 月 15 日厚告 5 号)が、労働施
策総合推進法の規定を受けて、職場におけるパワーハラスメントの内容を詳細に定め
ている。
以下、本件に関係のある部分を引用する(特に関係のある部分には下線を付す)
。
⑴ 職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背
景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者
の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導
については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
⑵ 「労働者」とは、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約
社員等いわゆる非正規雇用労働者を含む事業主が雇用する労働者の全てをいう。
29
⑶ 「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が
明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、
例えば、以下のもの等が含まれる。
・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される
範囲を超える言動
この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の
問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業
務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為
者との関係性等)を総合的に考慮することが適当である。また、その際には、個別の
事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導
の態様等の相対的な関係性が重要な要素となることについても留意が必要である。
⑷ 「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的
に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大
な影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
を指す。
この判断に当たっては、
「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該
言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が
生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。
⑸ 職場におけるパワーハラスメントは、⑴の①から③までの要素を全て満たすもの
をいい(客観的に、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導につ
いては、職場におけるパワーハラスメントに該当しない)、個別の事案についてその
該当性を判断するに当たっては、⑶で総合的に考慮することとした事項のほか、当該
言動により労働者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判
断することが必要である。
職場におけるパワーハラスメントの状況は多様であるが、代表的な言動の類型と
しては、以下のものがあり、当該言動の類型ごとに、典型的に職場におけるパワーハ
ラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例としては、次のようなものがあ
る。
30
イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)
(イ) 該当すると考えられる例
① 殴打、足蹴りを行うこと。
② 相手に物を投げつけること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 誤ってぶつかること。
ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ) 該当すると考えられる例
① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮
辱的な言動を行うことを含む。
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
こと。
③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含
む複数の労働者宛てに送信すること。
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善
されない労働者に対して一定程度強く注意すること。
② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者
に対して、一定程度強く注意をすること。
3 調査結果のまとめ(パワーハラスメントの有無)
⑴ 当調査委員会としては、当社代表取締役の役職員に対するパワーハラスメントが
あるとは認定できなかった。
上記2⑴のとおり、職場におけるパワーハラスメントとは、①優越的な関係を背景
とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の
就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たす必要があるが、本
件では、必ずしも②及び③の要素を満たすとは認められなかった。
以下、理由を述べる。
ア 「③ 労働者の就業環境が害されるもの」との要素について
31
まず大前提として、パワーハラスメントがあるといえるためには、対象者が「労
働者」でなければならない。上記2⑵のとおり、
「労働者」とは、事業主が雇用す
る労働者の全てをいい、いわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、
契約社員等いわゆる非正規雇用労働者を含むが、会社と委任関係にある取締役、監
査役及び執行役員を含まない。当社においては、部長職以上の経営幹部は、全て取
締役又は執行役員である。したがって、当社代表取締役の経営幹部に対する強い口
調による指導はパワーハラスメントには該当しない。但し、社会的な受忍限度を超
えた場合には、不法行為に該当する可能性があるため、限度なく許されるものでは
ない。
また、上記2⑷のとおり、
「就業環境が害される」とは、当該言動により労働者
が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなった
ため、能力の発揮に重大な影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できな
い程度の支障が生じることを指す。アンケートの中には、当社代表取締役の大きな
声での指導が聞こえることにより、精神的苦痛を感じる、不愉快・不快であるとい
う回答が複数あったが、いまだ「能力の発揮に重大な影響が生じる等当該労働者が
就業する上で看過できない程度の支障」が生じているとは認めることができない。
したがって、本件でパワーハラスメントに該当する余地があるのは、対象者が当該
言動を直接受けた場合に限定される。
イ 「② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」との要素について
本件においては、当社代表取締役による強い口調による指導の多くは、業務上の
指示の一環として行われているので、最大の問題は「相当な範囲を超えた」言動で
あるか否かである。
上記2⑶のとおり、
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動であるか否かの
判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた労働者の問題
行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務
の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、労働者の属性や心身の状況、行為
者との関係性等)を総合的に考慮する必要がある。
まず、本件報道における令和 2 年 6 月 29 日の出来事にあるような当社代表取締
役の言動と同様の言動が他の従業員になされていた場合には、パワーハラスメン
トの疑いが強まるところ、かかる言動は、前述のとおり A 氏からの暴力行為を受
けた際の特殊事情によるものであり、他の役職員に対して類似の言動がなされた
32
ことは認められなかった。よって、問題となるのは、従業員に対する指導時の強い
口調等の言動である。
アンケート回答者に対する追加ヒアリングの中には、上記様々な要素を総合的
に考慮した結果、「相当な範囲を超えた」言動であると思われるものが存在した。
しかし、調査の結果、当委員会は追加ヒアリングの対象者が供述した具体的な事
実関係を認定することはできなかった。
⑵ 以上のとおり、当委員会としては、当社代表取締役の役職員に対するパワーハラ
スメントがあるとは認定できなかった。
当社代表取締役の言動も、具体的な状況如何によって、パワーハラスメントに該
当する可能性があるため、当社代表取締役は、これまでの認識を改めることを要す
る。
4 改善提案
⑴ 当社代表取締役が認識を改めること
本件の再発防止策は、とにかく当社代表取締役がこれまでの認識を改めることに
尽きる。
前述のとおり、もともと当社は、経営手腕に優れた当社代表取締役が、多少乱暴な
言動を用いながら、強いリーダーシップを発揮したことにより、当社は急成長を遂げ
た。これまでは多少乱暴な言動も必要であり、当社が上場するまでは、それも世間的
に許されていた面もあるが、いまや当社は東京証券取引所市場第一部に上場する企
業である。
一部の従業員については、当社代表取締役による経営幹部らに対する強い口調に
よる指導を好意的に受け止めているが、他方、不快に感じている従業員も存在してい
る。指導の内容がいくら合理的でも、その伝達手段(声の大きさや発言状況など)に
よっては、パワーハラスメントや不法行為と疑われることもあるということを認識
しなければならない。
この度の週刊誌の報道によって、これまで自分の家族と同じように大切にしてき
た当社役職員に多大な心配と迷惑をかけたことを最も反省しているのは、当社代表
取締役であり、今後二度と今回のようなことを起こさないよう細心の注意を払うこ
とを誓っている。今後、当社代表取締役が自らこれまでの認識を改め、言動を慎むこ
とを期待したい。
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⑵ 当社経営幹部が適切に任務を果たすこと
これまで、当社代表取締役は、主に経営幹部が約束の期限を守らなかったり、部下
のマネジメントを怠ったりした場合に、経営幹部に対して強い口調による指導を行
っていた。
当社経営幹部が抱える問題は、一部上場企業の経営幹部としての基本的なスキル
が十分に備わっていないことである。一部上場企業の経営を担う者として、約束の期
限を守ることや部下を適切にマネジメントすることは当然備えるべきスキルである
にもかかわらず、それが備わっておらず、当社代表取締役のフラストレーションが蓄
積していったという側面があることは否めない。ステークホルダーは、当社経営幹部
が、本調査を期に襟を正し、当社の持続的な発展のために研鑽を積むことを求めてい
る。
⑶ 社外役員が必要に応じて適切な進言をすること
取締役会議事録を見る限り、当社の社外役員は取締役会で積極的に発言し、その役
割を十分に果たしているが、もっと非公式の場でも、当社代表取締役と忌憚のない意
見交換をし、必要な時期に適切な進言をすることが望まれる。例えば、四半期ごとに
当社代表取締役と社外役員とで意見交換会を実施するなど、工夫をされたい。
また、社外役員が必要な時期に適切な進言をするためには、社外役員が当社役職員
から不祥事等に関する情報の提供を受ける必要がある。そのためには内部通報制度
を改正し、通報窓口に社外監査役を加えるとともに、当社役職員に対しいま一度内部
通報制度の存在を周知徹底すべきである。
以上
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