7181 かんぽ生命保険 2019-09-30 15:00:00
「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」からの報告について [pdf]

                                            2019 年 9 月 30 日
 各   位




                        会 社 名   株 式 会 社 か ん ぽ 生 命 保 険
                        代表者名    取締役兼代表執行役社長 植 平 光 彦
                                  (コード番号:7181 東証第一部)
                        問合せ先    広報部(TEL.03-3477-2357)



         「かんぽ生命保険契約問題   特別調査委員会」からの報告について



 株式会社かんぽ生命保険(東京都千代田区、取締役兼代表執行役社長 植平光彦)は、日本郵政株式会
社(東京都千代田区、取締役兼代表執行役社長 長門正貢)及び日本郵便株式会社(東京都千代田区、代
表取締役社長兼執行役員社長 横山邦男)とともに、
                       「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会(委員長:
伊藤鉄男弁護士)」から「調査の現状及び今後の方針の概要について」報告書を受領いたしましたので、公
表します。




                                                       以上
日本郵政株式会社 御中

日本郵便株式会社 御中

株式会社かんぽ生命保険 御中




  調査の現状及び今後の方針の概要について




                       2019 年 9 月 30 日

        かんぽ生命保険契約問題特別調査委員会

        委 員 長    弁護士   伊藤 鉄男

         委 員     弁護士   寺    一峰

         委 員     弁護士   早川 真 崇
第 1 編 本調査の現状........................................................... 1
  第 1 本調査の経緯 ........................................................... 1
  第 2 当委員会の構成等 ....................................................... 1
  第 3 当委員会の役割 ......................................................... 1
  第 4 かんぽ生命の沿革及びその保険商品の募集の概要等 .......................... 2
  第 5 乗換契約を含む保険募集に係る法的規制 .................................... 3
   1 保険募集に関して一般的に適用される規制................................... 3
   2 乗換契約特有の規制(不利益事項の不告知の禁止)
                           (平成 7 年保険業法から導入) . 3
  第 6 かんぽ生命における乗換契約の取扱い...................................... 4
  第 7 契約調査の検証について ................................................. 5
   1 概要 ................................................................... 5
   2 全契約調査.............................................................. 5
   3 特定事案調査............................................................ 5
   4 これまでの検証状況 ...................................................... 7
  第 8 独自調査について ....................................................... 7
   1 独自調査の概要.......................................................... 7
   2 独自調査の実施状況 ...................................................... 8
第 2 編 本契約問題の要因となっている可能性が認められる事項 ...................... 9
  第 1 かんぽ生命の保険商品に係る要因.......................................... 9
  第 2 かんぽ生命と日本郵便の関係性に係る要因 .................................. 9
  第 3 社内制度に関連する要因 ................................................. 9
  第 4 組織風土に関する要因 .................................................. 10
  第 5 組織体制及び業務運営態勢に関する要因 ................................... 10
  第 6 保険募集に関するコンプライアンス体制に関する要因 ....................... 10
  第 7 日本郵政グループにおけるガバナンスに係る要因 ........................... 11
  第 8 その他乗換契約に特有の要因 ........................................... 11
第 3 編 かんぽ生命及び日本郵便における本契約問題の再発防止に向けた取組状況 ...... 11
第 4 編 今後の調査方針 ........................................................ 12
第 1 編 本調査の現状
第 1 本調査の経緯
 株式会社かんぽ生命保険(以下「かんぽ生命」という。
                         )及び日本郵便株式会社(以下
「日本郵便」という。
         )は、2019 年 7 月 10 日付け「
                             (開示事項の経過)契約乗換に係る
今後の取り組みについて」において公表したように、かんぽ生命の保険商品に係る乗換
契約等に関し顧客に不利益が生じた契約に係る問題(以下「本契約問題」という。
                                    )に
ついて、両社の持株会社である日本郵政株式会社(以下「日本郵政」という。 と共に、
                                  )
顧客からの信頼回復に向けた対応に取り組んでいたところ、かんぽ生命及び日本郵便に
係る本契約問題に関する事案の徹底解明と原因究明を中立・公正な外部専門家に委ねる
こととし、同月 24 日、日本郵政、日本郵便及びかんぽ生命の各取締役会において、
                                       「か
んぽ生命保険契約問題特別調査委員会」
                 (以下「当委員会」という。
                             )を設置することを
決議し、その旨を公表した。
 当委員会は、同日に設置され、直ちに調査(以下「本調査」という。 を開始し、
                               )      現在、
本調査を継続中である。
 なお、本調査の現状を報告するための基準日は、2019 年 9 月 20 日である。


第 2 当委員会の構成等
 当委員会は、下記 3 名の委員で構成されている。
 委員長 伊藤鉄男(西村あさひ法律事務所 弁護士)
 委員   寺 一峰(鈴木諭法律事務所 弁護士)
 委員   早川真崇(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士)
 いずれの委員も日本郵政、日本郵便及びかんぽ生命のいずれとも利害関係を有してい
ない。
 当委員会は、本調査を実施するに当たり、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業に所
属する、いずれも日本郵政、日本郵便及びかんぽ生命と利害関係を有しない弁護士を調
査補助者として従事させている。
 なお、当委員会は、本調査の独立性及び客観性を確保するため、日本弁護士連合会策
定の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の趣旨を踏まえ、本調査を実
施している。


第 3 当委員会の役割
 当委員会の役割は、本契約問題に関して、かんぽ生命及び日本郵便による事実確認の
範囲及び方法等の妥当性を検証するとともに、独自に事実関係及び原因等について徹底
した調査を行い、その結果等を踏まえて、再発防止策の提言等の検討を行い、調査報告
書を作成することである。



                       1
    当委員会は、本調査の実施に当たり、必要に応じて、保険法や保険業法等の学術研究
者及び生命保険の募集等の実務に通じた専門家等の複数の協力者から助言を得ながら調
査を進めており、今後は、調査の進捗状況及び検討すべき内容に対応し、恒常的に助言
を得ることが可能なアドバイザーの選定も視野に入れているところである。


第 4 かんぽ生命の沿革及びその保険商品の募集の概要等
    簡易生命保険事業は、1916 年に逓信省管掌の下で開始され、その後、1949 年の郵政省
設置により、簡易生命保険事業を含めた郵政事業が逓信省から郵政省に引き継がれた。
2001 年 1 月、郵政省が総務省及び同省の外局として設置された郵政事業庁に再編された
ことに伴い、簡易生命保険事業は郵政事業庁に引き継がれ、その後、2003 年 4 月に日本
郵政公社が発足したことに伴い、
              簡易生命保険事業は日本郵政公社に引き継がれた。
                                    2007
年 10 月、郵政民営化(郵政民営化関連 6 法の施行)に伴い、日本郵政公社が解散した後
は1、かんぽ生命が、保険業法に基づく生命保険業を開始した。郵政民営化以前の簡易生
命保険は、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(2019 年 4 月 1 日より「独立
行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構」に名称変更)によ
り承継され、その委託を受けたかんぽ生命により管理業務が行われている。
    保険業法上の生命保険会社であるかんぽ生命が引受けを行う保険商品は、郵政民営化
以前の簡易生命保険と異なり、他の民間の生命保険商品と同様、保険業法に基づく認可
を受けた保険商品であり、政府保証はないが、生命保険契約者保護制度による保護の対
象とされている。そして、かんぽ生命自身は、生命保険会社として保険業法を遵守する
ことに加え、郵政民営化法上の特例として、保険商品の設計について、他の生命保険会
社とは異なる制約が課される等、郵政民営化法上の規制を別途遵守する必要がある。
    かんぽ生命の保険商品については、かんぽ生命により設計され、法人向けの募集はか
んぽ生命の支店で行われているのに対し、
                  個人向けの募集はほぼ全て郵便局
                                (日本郵便)
の保険募集人2により行われている。すなわち、日本郵便は、かんぽ生命から委託を受け
て、かんぽ生命のために保険募集を行っている。他方、かんぽ生命は、保険業法に基づ
き、適切な保険募集管理態勢を確立し、保険募集人である日本郵便に対する適切な教育・
管理・指導を行う義務を負っている。したがって、かんぽ生命は、保険募集人である日

1
  日本郵政公社の業務その他の機能並びに権利及び義務は、5 つの承継会社(日本郵政、郵便事
業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及びかんぽ生命)及び独立行政法人郵便貯
金・簡易生命保険管理機構に引き継がれ、これにより 5 つの承継会社から成る日本郵政グループ
が発足した。     2012 年 10 月 1 日に施行された郵政民営化法の改正により、郵便事業株式会社と郵便
局株式会社が合併して日本郵便となり、日本郵政グループは、日本郵政、日本郵便、株式会社ゆ
うちょ銀行及びかんぽ生命から成る 4 社体制に再編された。
2
  2019 年 8 月時点の郵便局数は、合計 2 万 3,932 局であり、このうち、2 万 589 局の郵便局にお
いて、 万 6,586 人の保険募集人が窓口・渉外業務に従事し、
     8                                  かんぽ生命の保険商品の募集活動等
を行っている。



                             2
本郵便職員に対して、保険募集人処分として、その募集業務の廃止等をすることができ
るが、人事上の懲戒処分については、日本郵便が行うこととされている。


第 5 乗換契約を含む保険募集に係る法的規制
    「乗換契約」3とは、一般に、既契約を解約等により消滅させて新規契約の申込みをさ
せ、又は新規契約の申込みをさせて既契約を消滅させる行為をいう。
    当委員会は、乗換契約を含む保険募集に係る法的問題を検討するに当たり、以下のよ
うな法的規制が適用される可能性があると理解している。
    なお、以下の保険業法上の保険募集関連規制については郵政民営化法上の特例(上乗
せ規制)はなく、保険業法上の規制がそのまま適用される。
1 保険募集に関して一般的に適用される規制
    保険会社、保険募集人による保険契約の締結又は保険募集等に関しては、主に以下の
規制が適用される。
(1) 情報提供義務(平成 26 年保険業法改正により導入)
    保険会社、保険募集人は、保険契約の締結又は保険募集等に関し、
                                 「保険契約の内容そ
の他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を行わなければならない」
                                (保険業法 294
条 1 項)
     。
(2) 意向把握義務(平成 26 年保険業法改正により導入)
    保険会社、保険募集人は、保険契約の締結又は保険募集等に関し、
                                 「顧客の意向を把握
し、これに沿った保険契約の締結等(保険契約の締結又は保険契約への加入をいう。以
下この条において同じ。 の提案、
          )     当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際
しての顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提
供を行わなければならない」
            (保険業法 294 条の 2)
                          。
(3) 保険契約者等の保護に欠けるおそれがある行為の禁止(平成 7 年保険業法から導
入)
    保険会社、保険募集人は、保険契約の締結又は保険募集等に関して、重要事項を告げ
ないこと、虚偽のことを告げること、保険契約等に関する重要事項について誤解させる
おそれのあることを告知・表示することその他保険契約者等の保護に欠けるおそれがあ
る行為が禁止される(保険業法 300 条 1 項)
                        。


2 乗換契約特有の規制(不利益事項の不告知の禁止)
                        (平成 7 年保険業法から導入)
    乗換契約は、新たな保険契約の締結により、既契約にはなかった保障内容を得ること

3かんぽ生命では、乗換契約につき、「既契約を解約等(解約、失効、未入金解除、特約解約、特
約失効、保険金額(特約を含む。)の減額変更、保険料払済契約への変更)させて、新規契約の申
し込みをさせる、又は新規契約の申し込みをさせて既契約を解約等させる行為」と定義している。



                       3
が可能となる反面、加齢や予定利率の低下による保険料の上昇など、顧客にとって既契
約にはなかった不利益が生じる可能性があるとされている。そのため、保険業法上、保
険募集に関して一般的に適用される規制に加え、乗換契約特有の規制として、不利益事
項の不告知の禁止が定められている。すなわち、保険会社、保険募集人は、
                                 「保険契約者
又は被保険者に対して、不利益となるべき事実を告げずに、既に成立している保険契約
を消滅させて新たな保険契約の申込みをさせ、又は新たな保険契約の申込みをさせて既
に成立している保険契約を消滅させる行為」をしてはならない(保険業法 300 条 1 項 4
号)
 。


第 6 かんぽ生命における乗換契約の取扱い
 かんぽ生命では、新規の契約の募集を行った保険募集人について、販売実績が計上さ
れ、手当も支給されているところ、保険募集人が販売実績や営業手当欲しさを動機とし
て、顧客の意向に沿わない形態での乗換契約の募集が行われることを予防するため、保
険契約者に明確な解約意思や新たな保険に加入するニーズがない場合に乗換契約を勧め
ることを禁止している。そして、適法なものとして許容される乗換契約を募集した場合
にも、原則として、保険募集人には、販売実績の計上を認めず、手当も支給しないこと
としている。
 他方で、かんぽ生命では、2010 年 3 月下旬以降、下記の 3 条件を全て満たす乗換契約
に限り、
   「乗換契約(転換類似)
             」として、通常の新規契約受理時に比して割合を減じた
販売実績及び手当を保険募集人に付与する取扱いとしている。すなわち、①乗換契約と
判定される期間(以下「乗換判定期間」という。
                     )の範囲内における乗換契約であるこ
と、②既契約と新規契約について、保険契約者と被保険者の双方が同一の者であること
(2010 年 3 月下旬時点)
               、③既契約と新規契約の内容を比較する書面(新旧比較表)を
用いて、新旧契約の比較説明をすることである。
 このうち①の乗換判定期間については、その判定期間外に乗換を行い、新規の契約で
あるかのように装う、いわゆる乗換判定の潜脱を防止する観点から、上記の乗換契約(転
換類似)の導入以降、判定期間が逐次拡大されてきた。すなわち、既契約の解約等が新
規契約の契約日より前 1 か月から当該新規契約の契約日の後 6 か月の間に行われるもの
とされていたが、2015 年 4 月以降は、既契約の解約等が新規契約の契約日より前 3 か月
から当該新規契約の契約日の後 6 か月の間に行われるものというように拡大されている。
 また、②については、同様に乗換判定の潜脱を防止する観点から、2019 年 4 月以降、
保険契約者又は被保険者のいずれが同一であっても(双方が同一であっても、いずれか
一方が同一であっても)乗換契約と判定する取扱い(ただし、個人契約のみを対象とし、
法人契約を除く。
       )に拡大されている。




                      4
第 7 契約調査の検証について
1 概要
    かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政は、2019 年 7 月 31 日付けで、
                                        「日本郵政グループ
                        4
におけるご契約調査及び改善に向けた取組について」を公表し、全てのかんぽ生命の保
険契約(過去 5 年間分の消滅契約を含む約 3 千万件、契約者数で約 1.9 千万人)につい
て、顧客の意向に沿わず不利益を生じさせたものがないかを検証することとし、顧客の
意向に沿っていないことにより生じさせた不利益については、可能な限り早期に解消し
て、顧客からの信頼回復に全力で取り組む旨を表明し、下記の「全契約調査」及び「特
定事案調査」
     (以下これらを併せて「契約調査」という。
                        )を実施している。


2 全契約調査
    かんぽ生命では、過去 5 年間分の消滅契約を含む、全てのかんぽ生命の保険商品の契
約者(特定事案を除く約 1.9 千万人)について、
                        「全契約調査」として、顧客の意向に
沿わず不利益を生じさせたものがないかを検証し、可能な限り早期に当該不利益を解消
するため、対象となる契約者に対し、2019 年 8 月下旬からかんぽ生命及び日本郵便の連
名で、返信用はがきを同封した書面の発送を開始し、基準日までに発送を完了した。
    この調査に際し、かんぽ生命では、返信されたはがきや、コールセンターで受け付け
た相談内容をもとに、顧客の意向に沿わず不利益が生じたことが疑われる場合、かんぽ
生命が直接調査を実施し、顧客の疑問に応えるほか、郵便局に連絡をした顧客に対して
は、郵便局の社員が訪問や電話により、疑問に応えることとしている。


3 特定事案調査
    かんぽ生命においては、全契約調査と並行し、顧客の意向に沿わず不利益が発生した
可能性がある事案のうち、特定の類型に分類が可能な事案を「特定事案」として、過去
の契約データから、乗換後の契約状況が特定事案に合致する 2019 年 3 月以前の過去 5
年分で約 18 万 3 千件の契約について、顧客に生じた不利益を解消するとともに、顧客の
回答及び契約状況を基に、乗換契約の際の募集に係る法令違反等の疑いがある事象を発
見するための調査につなげている。
    この特定事案調査の類型、調査対象事案と調査対象件数は以下のとおりである。
    なお、調査対象件数は、かんぽ生命から報告を受けた最新の数字である。




4
    https://www.japanpost.jp/pressrelease/jpn/2019/20190731148117.html




                                             5
類型                調査対象事案               調査対象件数
A    乗換契約に際し、乗換前の契約は解約されたものの、乗換後       約 1.8 万件
     の契約が引受謝絶となった事案
     例:保険契約を解約して、新規に保険契約の申込みを受けた
     が、この新規保険契約が顧客の病歴等で成立しなかったため、
     保険契約(保障)がない状態となった場合
B    乗換契約後、告知義務違反により乗換後の契約が解除となり、      約 0.3 万件
     保険金が支払謝絶等となった事案
     例:保険契約を解約した後に、顧客が新規に加入した保険契
     約において、その加入時に正しく告知がなされていなかった
     として、保険契約が解除となり、保険金の支払いがなされな
     かった場合
C    特約切替や保険金額の減額により、より合理的な提案が可能       約 2.6 万件
     であった事案
     例:顧客の医療保障を充実したいとの意向に対し、当該顧客
     が保険契約の基本契約と特約の双方を解約し、新規に保険契
     約に加入したものの、基本契約を解約せずに、特約の見直し
     のみで当該顧客の意向に沿えた可能性がある場合
D    乗換契約前後で予定利率が低下しており、保障の内容・保障       約 1.5 万件
     期間の変動がない等の事案
     例:顧客が保険契約を解約した後、予定利率が低下し、かつ、
     保障の内容及び保障期間が同じ新規の保険契約に加入してい
     る場合
E    乗換契約の判定期間後(乗換後の契約の契約日の後 7 か月か     約 7.5 万件
     ら後 9 か月)の解約により、保障の重複が生じた事案
     例:顧客が新規に保険契約を契約した後に、乗換契約の判定
     期間後(乗換後の契約の契約日の後 7 か月から後 9 か月)に
     解約したため、保障の重複が生じた場合
F    乗換契約の判定期間外(乗換後の契約の契約日の前 4 か月か     約 4.6 万件
     ら前 6 か月)の解約により、保障の空白が生じた事案
     例:顧客が保険契約を解約した後に新規に保険契約に加入し
     たもののうち、乗換契約の判定期間外(乗換後の契約の契約
     日の前 4 か月から前 6 か月)に解約を行っており、保障がな
     い期間が存在する場合




                      6
 特定事案調査においては、
            対象となる顧客への書面の発送を 2019 年 8 月上旬から開始
して同月下旬までにこれを完了し、同年 9 月上旬以降、かんぽ生命の専用コールセンタ
ーからの電話又はかんぽ生命社員による訪問等を通じて、契約時の状況や契約復元等の
意向を確認し、手続を進めているところである。


4 これまでの検証状況
 当委員会は、主に特定事案調査に関し、定期的にかんぽ生命の担当者から進捗状況に
ついての報告を受け、適宜、意見を述べるなどにより、顧客の意向確認及び顧客に不利
益が生じた事案の調査が迅速かつ適正に実施されるよう努めている。また、契約調査の
過程で、顧客に対して実際に不利益を生じさせたもので、募集態様に照らしてコンプラ
イアンス違反の疑いがある事案が発覚した際には、本契約問題の背景事情及び原因の解
明に資する限度で、その調査内容等を検証し、必要な範囲で独自に調査を行うこととし
ている。
 当委員会は、特定事案調査の進捗状況について、基準日までの定量的な情報について
報告を受け、その傾向の分析方法等について意見を述べているものの、上記のようなコ
ンプライアンス違反の疑いがある事案の内容等も含め、その分析結果の詳細については
検証できていない。
 今後、当委員会としては、特定事案調査等の進捗を踏まえ、その内容を詳細に分析・
検討することとしている。
 なお、当委員会は、これまでかんぽ生命に対し、契約調査に当たり、顧客が特殊詐欺
による二次被害等を受けないように警察との連携を図ることを指摘するなどした。


第 8 独自調査について
1 独自調査の概要
 当委員会は、本契約問題、すなわち、顧客に不利益が生じた乗換契約等に係る問題に
ついて、その背景事情及び原因を究明することを役割としているところ、本契約問題の
背景事情及び原因を正確に把握するためには、 7 で述べた契約調査が相当程度進捗し、
                    第
その結果を十分に分析・検討することが不可欠と考えている。そのため、当面の間、以
下のような方針により、調査を進めている。
 すなわち、本契約問題の背景事情及び原因を解明するために、乗換契約の対象である
かんぽ生命の保険商品の特性及びその募集活動を取り巻く環境、当該保険商品の募集活
動をめぐるかんぽ生命及び日本郵便等の関係性等も踏まえ、不適正な乗換契約に係る問
題を中心としつつも、高齢者を対象とした、意向把握・確認等が不十分な形態による募
集活動(以下「高齢者募集」という。
                )や、同一人に対し、経済合理性の乏しい多数の
保険契約を締結させる形態の募集活動(以下「多数契約募集」という。
                               )などの不適正



                     7
とされる募集活動(以下「不適正募集」という。
                     )も対象に含め調査を実施している。
 このように、当委員会としては、複雑に交錯している本契約問題に対し、様々な角度
から光を当てて、多角的かつ複眼的な分析を行い、慎重かつ徹底した調査を実施するこ
とが必要であると考えている。
 本契約問題は、全国に所在している郵便局で販売されているかんぽ生命の保険商品の
募集に関わる事柄であり、この事業規模の大きさや販売に従事している人員が極めて多
数に及ぶことを考慮した場合、各郵便局で生じた個別の事案を限定された期間に網羅的
に調査・検証することは不可能である。しかしながら、本契約問題の背景事情及び原因
を究明するためには、契約調査の検証と並行し、可能なところから独自に調査を行うこ
とが必要と考え、後述のような調査を行っているところである。この過程で、本契約問
題に関して、可能な限り、関係者の「生の声」を幅広く聴取するよう努めている。


2 独自調査の実施状況
(1) 関係資料の精査
 当委員会は、かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政の関係部署及びその他関係者から、
関連する書面及び電子データの提出を受け、各資料の精査を進めている。
(2) ヒアリングの実施
 当委員会は、基準日までに、かんぽ生命(本社及びエリア本部)
                             、日本郵便(本社及び
13 支社)及び日本郵政の役職員(主に本社の担当部署の社員であり、これ以外に郵便局
に勤務する保険募集人等も含む。、生命保険会社での実務経験を有する外部協力者、保
               )
険法、保険業法等の学術研究者等、総勢 360 人のヒアリングを実施した(調査補助者に
よるものも含む。。
        )
(3) 顧客及び現職の郵便局員等からの情報提供
 当委員会は、(1)及び(2)以外に、かんぽ生命の保険商品の募集等に関して、顧客及び
現職の郵便局員等の関係者等からも情報提供を受け、本調査の参考としている。
(4) 情報提供窓口の設置
 当委員会は、本契約問題に係る情報を広く募ることを目的として、ウェブサイト上
(https://chousa-info.jp/)に、かんぽ生命の保険商品の顧客等関係者向け及び日本郵政
グループ 3 社(かんぽ生命、日本郵便及び日本郵政)の役職員等関係者向けの 2 種類の
情報提供窓口を設置し、寄せられた情報を分析するなどして、本調査に活用している。
(5) デジタル・フォレンジック
 デジタル・フォレンジックとは、一般に、不正や不祥事等の調査を行う際、全容解明
や類似事案の有無の確認等を目的として、コンピュータ本体やサーバ内部に保存された
データ及び関係者間で送受信されたメールを対象として実施される電磁的記録の調査・
分析に関する一連の調査手法・技術である。当委員会は、本契約問題の背景事情及び原



                         8
因を明らかにするため、デジタル・フォレンジックを実施して、その調査結果を活用し
ている。


第 2 編 本契約問題の要因となっている可能性が認められる事項
    当委員会のこれまでの調査により、本契約問題、すなわち乗換契約等に係る募集活動
により顧客に不利益を生じさせた事象の要因となっている可能性があると思われる事項
は以下のとおりである。
    なお、本契約問題の要因については、現時点で蓋然性が高いと認められるものへの言
及にとどめており、今後の契約調査の検証及び独自調査により実態解明を進める過程で
変更が生じる可能性が高いことに留意されたい。


第 1 かんぽ生命の保険商品に係る要因
    かんぽ生命では、従前から養老保険、年金保険等の貯蓄性の高い商品を主力に据えて
きたものの、青壮年層に必ずしも人気が高いとはいえず、また、保険商品の開発に際し
て、郵政民営化法上の特例としての認可が必要とされていたことなどもあり、多様な保
険商品の開発がなされていない中で、その保険商品に係る募集形態が、高齢者を主な対
象とし、上記の貯蓄性の高い保険商品の既契約について満期を迎える顧客に対して、新
たに貯蓄性の高い上記商品への加入を勧めるというものに偏っていた。


第 2 かんぽ生命と日本郵便の関係性に係る要因
    個人を対象とする保険商品募集のほぼ全てについて、郵便局での販売に販路を依存し
ていることに起因して、単一の保険代理店に依存しない他の生命保険会社の場合とは異
なり、
  代理店委託契約の解約等の方法で不適正募集を抑止する手段を有していなかった。


第 3 社内制度に関連する要因
1 条件付解約制度、既契約の解約を伴わない転換制度等のような、引受謝絶や支払謝絶
    等の乗換契約に伴い顧客に不利益が生じる要因を解消する制度が導入されていなかっ
    た。5
2 新規契約の獲得に偏った営業目標の設定、手当及び人事評価等の体系となっていた。




5 転換制度が導入されている他の生命保険会社においては、転換契約の際には既契約の被保険者
のために積み立てられている額が新規契約に引き継がれるため、かんぽ生命のように既契約と新
規契約に断絶が生じることに起因した乗換契約に特有の問題が生じない。かんぽ生命では、2021
年 4 月以降に転換制度を導入することを検討しているとのことであるが、当委員会としては、こ
れまでに転換制度が導入されなかった経緯等について、今後の調査により解明する予定である。



                      9
第 4 組織風土に関する要因
1 「顧客本位の業務運営」という理念及び意識が、郵便局における生命保険募集の現場
 にまで十分に浸透していなかった。
2 不適正な乗換契約その他の不適正募集又はその疑いの発生等に際して、
                                 リスク感度の
 低さに起因し、伏在していた乗換契約その他の保険募集に係る問題点及び原因等が把
 握・認識されなかった。
3 業務の縦割りの意識から部門間の連携が不十分であったことに加え、
                                前例踏襲となり
 がちな業務慣行に起因し、乗換契約により顧客に不利益を生じさせるような事案その
 他の不適正募集の根本的解決を図るという意識が希薄であった。


第 5 組織体制及び業務運営態勢に関する要因
1 営業目標の設定及び配算の過程において、
                    現場の営業の実力に見合わない目標金額が
 課されていた。
2 営業目標の達成を過度に重視した営業推進・管理がなされていた。
3 営業推進を目的とする指導の際に、一部の保険募集人に対し、具体策を欠いた、
                                     「恫
 喝指導」と称する不適切な指導が行われていた。
4 顧客に不利益を生じさせるおそれのある乗換契約その他の不適正募集につき、
                                    郵便局
 における申込審査及びかんぽ生命における引受審査のプロセスにおいて、これらをチ
 ェックする手続及び仕組みに不備があった。
5 4 の前提として、不適正な乗換契約その他の不適正募集により顧客に不利益を生じさ
 せるおそれのある事案を予防するための契約者情報等の管理システムに不備があった。


第 6 保険募集に関するコンプライアンス体制に関する要因
1 不適正な乗換契約その他の不適正募集に係る調査及び事実認定等の手続において、
                                      保
 険募集人が不適正募集の事実を否定した場合には、不適正な募集であるとの事実認定
 をしていなかったことなどから、不適正募集に係る問題が矮小化され、原因分析や再
 発防止策の検討が不十分となっていた。
2 不適正な乗換契約その他の不適正募集に関する苦情の処理や契約の無効 合意解約等
                                  ・
 の検討過程で、原因分析と改善策を検討する仕組みが備わっていなかった。
3 乗換契約その他の保険募集に係る法令及びルールの遵守等に関する研修や教育の実
 効性が十分ではなく、その結果として、保険募集の現場まで法令遵守の意識が浸透し
 ていなかった。
4 かんぽ生命及び日本郵便において、乗換契約その他の保険募集に関し、営業部門に対
 する保険募集に係るコンプライアンス部門による牽制、内部監査部門による内部監査
 等、保険募集に係るコンプライアンスの遵守のための相互牽制の仕組みが適切に機能



                      10
    していなかった。
5 担当部署等において、
           不適正な乗換契約その他の不適正募集の実態が正確に把握され
    ていなかったことに加えて、経営層への報告等の過程で当該問題に関する情報が希薄
    化・矮小化されていた。


第 7 日本郵政グループにおけるガバナンスに係る要因
    第 2 記載の関係性に係る要因に起因し、かんぽ生命の日本郵便に対する適正募集の確
保に向けた管理・指導が困難な状況下で、両社の持株会社である日本郵政において、こ
れを補完するための適切な統制が行われていなかった。


第 8 その他乗換契約に特有の要因
1 不適正募集のうち、
          高齢者募集や多数契約募集などの問題性が高い態様の事案の抑止
    に重点が置かれた結果、乗換契約により顧客に不利益を生じさせる事案への問題意識
    が希薄化し、抜本的な対策への着手が遅れた。
2 乗換契約の募集に係る社内ルールが必ずしも明確化されていなかったため、
                                   その形骸
    化や潜脱を招いた。


第 3 編 かんぽ生命及び日本郵便における本契約問題の再発防止に向けた取組状況
    当委員会は、かんぽ生命及び日本郵便から、本契約問題の発覚を契機として、両社に
おいて、本契約問題の再発防止に向け、主に①新規の保険契約の引受審査時における保
険契約申込書等の全件チェック(2019 年 8 月から)6、②新規の保険契約の申込み審査
時における保険契約申込書等の全件チェック(2019 年 9 月から)7、③募集事前チェッ
ク機能の拡大(2019 年 9 月 24 日から)8などの取組を行っている旨の説明を受けた。
    当委員会としては、上記のような新たな取組について、その運用状況や効果等を慎重
に検証し、それらの取組も念頭に置いた上で、今後、本調査により解明される根本原因
に対応した、
     より総合的 抜本的な対策を最終報告書において提示したいと考えている。
          ・


6
  かんぽ生命では、 年8 月から、
           2019            サービスセンターにおいて契約申込書等を全件チェックし、
以前に解約等があるなど、募集品質に何らかの懸念がある顧客からの申込みの場合は、かんぽ生
命から直接顧客の意向を確認している。
7
  郵便局では、2019 年 9 月から、管理者が契約申込書等を全件チェックし、募集品質に何らかの
懸念がある場合は郵便局管理者が顧客の意向を確認し、かんぽ生命のサービスセンターに送付す
る仕組みとしている。
8
  募集事前チェック機能とは、所定の条件に該当する契約者からの新規の保険契約の申込みがさ
れた場合は、保障設計書・申込書の作成等の申込手続をシステム上ロックした上、メニュー画面
上でアラート表示を出し、郵便局の管理者又はかんぽ生命本社の確認・承認を求めるという仕組
みを備えた機能である。     2019 年 9 月 24 日からは、乗換契約の申込みについても、システム上のア
ラート表示を出し、  郵便局管理者の承認がなければ保障設計書を作成できない仕組みとしている。



                           11
第 4 編 今後の調査方針
 当委員会としては、慎重かつ徹底した調査を実施するため、今後の契約調査の進捗状
況を踏まえながら、その結果を分析・検討するとともに、独自調査として、今後も引き
続き、関係者の「生の声」を可能な限り幅広く聴取することが必要と考えている。
 さらに、今後は、本契約問題の背景事情及び原因の分析に当たり、必要な範囲で、高
齢者募集や多数契約募集を含む不適正募集全般に対する施策やその経緯、実効性等の検
証をも行いながら、深度ある調査を進める予定である。
 このような観点から、乗換契約等により顧客に不利益を生じさせる事案が生じる動機
や原因等を多角的に分析する目的で、①保険募集人の業務に従事する日本郵便職員を対
象にしたアンケート形式による意識調査、
                  ②全国 13 か所に所在するかんぽ生命のエリア
本部及び日本郵便の支社、並びに郵便局における業務の実態調査、③保険募集人及び顧
客等のヒアリング、④過去の本契約問題に係る事例分析、⑤かんぽ生命、日本郵便及び
日本郵政の役員等のヒアリング等を順次行い、年内を目途に調査結果を取りまとめるこ
ととしている。


                                     以 上




                   12