7096 M-ステムセル研究所 2021-06-25 08:00:00
事業計画及び成長可能性に関する事項 [pdf]

事業計画及び成長可能性に関する事項– June 2021

StemCell Institute Inc.        証券コード:7096(東証マザーズ)
1.会社概要
                          会社概要
名称        株式会社ステムセル研究所 (英語名:StemCell Institute Inc.)

代表者       清水 崇文

設立日       1999年8月5日

資本金       7億480万円 ※上場日現在

事業内容      周産期の組織に由来する細胞の処理及び保管を行う「細胞バンク」事業及びそれらの細胞を用いた
          再生医療の研究開発
所在地       本社(営業本部・細胞技術本部及び東京CPC)
             東京都港区新橋5丁目22番10号 松岡田村町ビル
          横浜CPC及び第一・第二細胞保管センター
             神奈川県横浜市緑区白山1丁目18番2号 ジャーマンインダストリーパーク
          事業所 虎ノ門オフィス(管理本部・総合企画本部)/ 名古屋オフィス / 大阪オフィス / 福岡オフィス
社員数       社員 78名(男性:36名 女性:42名)
          非常勤(契約社員・パート) 81名(男性8名 女性73名) ※上場日現在
主要株主      株式会社トリムメディカルホールディングス(72.57%) ※上場日現在
          ※㈱日本トリム(東証一部:6788)が㈱トリムメディカルホールディングスの株式(100%)を保有
主要取引銀行    株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行

主幹事證券会社   野村證券株式会社

監査法人      有限責任あずさ監査法人


                                                                3
                              ガバナンス体制
コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
• 当社の「細胞バンク事業」はその性質上、一般社会、医療界よりの「持続的な信頼を得る事」が最も重要であり、そのためには、企業運営においても高い倫理観が求められます。
  さらに、株主の権利を重視し、持続的に企業価値の最大化を目指すと同時に、健全かつ透明性の高い組織運営を維持していくことが重要であると認識しております。
  その前提のもとで、コーポレート・ガバナンスの充実を重要な経営課題と認識し、経営管理体制の強化に努めております。
親会社からの独立性の確保について
• 当社の親会社である株式会社トリムメディカルホールディングスは、現在当社の議決権の89.5%を有する支配株主であります。また同社は株式会社日本トリムの完全子会社で
  あることから、株式会社日本トリムも当社の親会社であります。かかる状況において、親会社と一般株主との間に利益相反リスクが存在していることに鑑み、親会社等のグループ
  会社との利益相反取引を含む関連当事者取引については、関連当事者取引管理規程に基づき、当該取引の経済合理性等を確認し、取締役会の承認を得ることとしており、
  取引の健全性及び適正性を確保する体制を構築しております。
執行役員制度
• 経営の意思決定・監督機能と業務執行機能との分離により経営効率化を推進し、権限を移譲することで業務執行上の意思決定の迅速化及び業務執行の効率化を図ること
  を目的に執行役員制度を導入しております。

                                取締役会
                                • 取締役4名(うち社外取締役2名)で構成
                                • 経営上の意思決定機関として、法令又は定款に定める事項の他、経営方針に関する重要事項を審議・決定するとともに、各取締役の業務執行の監督を行う
                                監査役会
                                • 常勤監査役1名及び非常勤監査役2名(社外監査役)で構成
                                • 監査計画に基づき重要な書類の閲覧、役職員への質問等を通じて、経営全般に関する監査を行う
                                経営会議
                                • 代表取締役、取締役、執行役員(各部門長)で構成
                                • 組織、運営、その他経営に関する重要な事項の審議を行い、取締役会への付議議案についての意思決定プロセスの明確化及び透明性の確保を行う
                                倫理委員会
                                • 会社委員及び外部委員による7名以内で構成
                                • 細胞バンク事業及び細胞治療研究に関連する倫理的諸事項について審議
                                営業エリア長会議
                                • 各営業拠点のエリア長により構成
                                • 営業目標の共有や営業活動の改善、営業の進捗状況についての情報共有を行う
                                内部監査担当者
                                • 当社は、現在の組織規模を勘案し、独立した内部監査部門を設置しておらず、総合企画本部に所属する内部監査担当者及び管理本部に所属する内部
                                  監査担当者が内部監査を担当しております。




                                                                                                          4
組織及び役員等
  代表取締役社長    清水 崇文

  取締役        乃一 進介(管理本部長)

  取締役(社外)    山田 智男

  取締役(社外)    安藤 公秀(独立役員)

  常勤監査役      坂井 和夫

  監査役(社外)    香山 昭人

  監査役(社外)    藤川 義人

  執行役員       石井 衛    (総合企画本部長)

  執行役員       土山 覚史(営業本部長)

  執行役員       佐藤 英明(細胞技術本部長)
             幸道 秀樹 (東京都立多摩総合医療センター
  医療アドバイザー          血液内科)
             関 博之 (埼玉医科大学 名誉教授)
             徳増 有治(大阪大学 大学院医学系研究科
  経営顧問
                   特任教授)


                                     5
                                                  沿革
  年月                             概要                    年月                                         概要

1999年8月    東京都港区に株式会社ステムセル研究所設立                                 東京大学医科学研究所と「臍帯の臨床応用に向けた技術開発と保管体制構築」に
                                                     2018年9月
                                                                関する共同研究を開始
1999年9月    当社初のさい帯血を保管                               2019年7月    American Association of Blood Banks(AABB)認証取得
           厚生労働省4月1日施行「薬事法施行規制の一部を改正する省令等の施行について」に              日本大学医学部 生体機能医学系生理学分野と「羊膜上皮幹細胞を用いた細胞治療法の
2001年10月                                             2019年10月
           基づき、細胞処理センターを改築                                      開発」に関する共同研究を開始

2002年1月    近畿地区の拠点として大阪オフィスを開設                       2019年12月   東京都港区に管理本部及び総合企画本部の拠点として虎ノ門オフィスを開設
                                                                東京大学医科学研究所及び東京大学医学部附属病院と自家さい帯由来細胞を用いた
2002年11月   九州地区の拠点として福岡オフィスを開設                       2020年9月    「周産期付属物由来細胞の臨床応用に向けた技術開発とバンキング体制構築」と、「自家
                                                                臍帯由来細胞を用いたティッシュエンジニアリングの研究開発」に関する共同研究契約を締結
2003年6月    東海地区の拠点として名古屋オフィスを開設
                                                                高知大学医学部附属病院が実施する「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血
2004年5月    検体数の増加に伴い本社ならびに細胞処理センターを現在の本社所在地に移転       2020年10月   単核球細胞輸血」および「小児脳性麻痺など脳障害に対する同胞間臍帯血有核細胞輸血」
                                                                の臨床研究において、特定細胞加工物製造委託契約を締結
2007年5月    保管能力の増強を目的に細胞保管センターを神奈川県横浜市へ移設                       大阪大学大学院医学系研究科と他家細胞を用いた「臍帯組織由来幹細胞と半月板修復材
                                                     2020年10月
                                                                を用いた新規半月板再生医療の開発研究」に関する共同研究契約を締結
2008年3月    兵庫県神戸市において当社保管のさい帯血が、白血病の移植治療に利用される
                                                                大阪市立大学を中心とする研究グループによる「低酸素性虚血性脳症(HIE)に対する
                                                     2020年11月   自己臍帯血治療」の第Ⅱ相多施設共同臨床研究において、特定細胞加工物(自己臍帯血
2009年4月    米国デューク大学で当社保管のさい帯血が脳神経疾患への再生医療に利用される                 細胞調整液)の製造業務委託契約を締結
                                                                慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 と「 ヒ ト 羊 水 幹 細 胞 に よ る 周 産 期 脳 障 害 の 細 胞 治 療 」 に 関 す る
2011年4月    東京都港区の細胞処理センターにて、ISO9001を取得               2020年11月
                                                                共同研究契約を締結
2013年9月    株式会社日本トリム(東証一部)が当社株式の50.1%を取得                        同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発 ・事業化を 目指すクオリプ ス株式会社の
                                                     2020年12月
                                                                第三者割当増資引き受け
           東京都港区の細胞処理センターにて「再生医療等安全性確保法」に基く、特定細胞
2016年2月                                              2021年1月    株式会社グレイスグループへの出資及び「選択的卵子凍結保存サービス」に関する業務提携
           加工物製造許可を取得
                                                                「再生医療等安全性確保法」に基づく、特定細胞加工物製造許可を取得し、神奈川県
2016年7月    品質管理向上のため、アメリカさい帯血協会(CBA)に加盟              2021年3月
                                                                横浜市に新細胞処理センター(横浜CPC)を開設
           高知大学医学部附属病院が実施する「小児脳性麻痺等に対する再生医療提供計画」に    2021年4月    日本初となる「さい帯(へその緒)組織保管サービス」の提供を開始
2017年4月
           おいて、特定細胞加工物製造委託契約を締結
                                                     2021年6月    神奈川県横浜市に最新のIoT技術を採用した第二細胞保管センターを新設
2017年9月    厚生労働省健康局へ「臍帯血取扱事業の届出」を提出
                                                     2021年6月    東京証券取引所マザーズ市場へ株式を上場



                                                                                                                                           6
                  企業理念


当社は、コーポレートスローガンでもある、「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」を
実現するために、周産期の組織に由来する幹細胞を中心とした「細胞バンク事業」のノウハウ
の蓄積・技術開発・サービスの向上に努めて参ります。

そして、細胞バンクに保管されている細胞を用いて「新しい医療」を提供しようと日々努力を
重ねられている医師や研究者の方々と協力し、これまで治療法のない病態に苦しむ患者さん
に寄り添い、医療の発展に寄与する事を目標としております。

また、当社事業にご協力頂いている医療機関やそのスタッフを含めた、社会全体に貢献する
ことを経営の基本方針としております。




                                               7
2.事業概要
                     さい帯血について
「さい帯血」とは

•   さい帯血には、生まれたての未熟な幹細胞が含まれており、外部環境による影響(遺伝子変異)が少なく、成人から採取
    する幹細胞に比べ増殖性に優れていることが知られています。
•   母子ともに痛みや危険を伴わずに採取でき(非侵襲性)、さらに凍結保管しておくことで必要時にいつでも使用できます。
•   通常は出産後に医療廃棄物として廃棄されるものである事から、倫理的にも扱いやすいものです。
•   遺伝子を導入して作成するようなものではなく、もともと自分の身体の中にある細胞(体性幹細胞)であるため、がん化の
    リスクも少なく、比較的安全に使用できます。
•   医療応用が容易という観点でも脚光を浴びており、現在十分な治療法のない中枢神経系疾患(低酸素性虚血性脳症、
    脳性麻痺等)、自己免疫疾患、ASD(自閉症スペクトラム障害)などに対する再生医療など、細胞治療での利用の
    可能性が注目されてます。

「さい帯血」を保管する意義

•   お子様やそのご家族の将来のため、脳性麻痺や自閉症などの今まで十分な治療法がなかった疾患に対し、再生医療・
    細胞治療での利用が期待されています。
•   海外ではさい帯血を使用した研究や治療が数多く報告されており、1,199例以上(※1)の利用実績があります。
    日本でも自己さい帯血を使用した臨床研究が開始されており、これまでに16例の利用実績があります。

                                            (※1)参照:参考資料ページ 48~50



                                                                   9
                     公的さい帯血バンク と 民間さい帯血バンク
公的バンクは厚生労働省健康局の「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」に基づき、白血病を含む27種類の難治性血液
疾患を対象に、第三者の治療に役立てるために寄付し、保管されております。民間バンクは厚生労働省 医政局の「再生医療等の安全性の確保等に
関する法律」に基づき、脳性麻痺や自閉症スペクトラム症候群などを対象疾患とし、再生医療を目的に赤ちゃん自身やそのご家族のために保管されます。
両者は違う法律のもと、それぞれが独立しており行き交うことはありません。また民間バンクは許可制ではなく、一方で、厚生労働省へ臍帯血取扱事業の
届出が要請されており、年度ごとに保管検体数および廃棄検体数の報告が求められております(2020年3月31日現在、当社を含め2社)。


                                                                                                               公的バンクでは、第三者の
                                                                                                                治療(白血病など)に
                                                                                                                役立てるために寄付し、
                                                                                                                  保管されます




                                                                                                               民間バンクは赤ちゃん自身
                                                                                                               やそのご家族の将来のため
                                                                                                                  に保管します




   (厚生労働省Websitehttps://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ishoku/saitaiketsu.html より)



                                                                                                                              10
                            ビジネスモデル
•   当社は顧客(妊婦等)と「さい帯血分離保管委託契約」を締結した上で、国内さい帯血採取協力病院において採取されたさい帯血を回収し、
    自社の細胞処理センターに搬入、さい帯血に含まれる幹細胞を分離・抽出・調製する作業を行った後、自社の細胞保管センターにおいて、
    超低温下にて長期保管いたします。
•   保管確認後、「さい帯血分離保管委託契約」に基づき、顧客よりさい帯血にかかる技術料(分離料、検査料、登録料)及び細胞保管料を
    収受し、将来の使用に備え、保管いたします。(技術的な要因により保管できない場合は料金は発生しません)
•   保管されたさい帯血は、特定認定再生医療等委員会により審査、承認された臨床研究において利用されます。

                                        さい帯血回収

                                                     国内さい帯血
                               当社                    採取協力病院
                 さい帯血からの
                  細胞分離・                          (大学病院、産科クリニック等)
                  保管サービス
                    提供                  採取技術料
                           ➢ 細胞処理センター
     さい帯血保管者                 (細胞の分離)
       (顧客)

                           ➢ 細胞保管センター
                             (分離済細胞の    細胞輸送
                                                    臨床研究実地機関
                  技術料・
                  保管料          保管)                    (大学等)




                                                                   11
                                  取得認証
•   当社の細胞処理センター(東京CPC、横浜CPC)は、特定細胞加工物製造許可(厚生労働省 関東信越厚生局による) (※1)を取得
    しており、さらなる安全性と高い品質を目指して、世界基準のさい帯血バンクに付与されるAABB認証(※2)、およびISO9001認証
    (※3)を取得しております。
•   個人情報の確実な保護を重要な責務と認識して厳格な管理を行っており、一般財団法人 医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)の
    審査を経て、保健医療福祉分野のプライバシーマーク(※4)を取得しております。


(※1)「再生医療等安全性確保法」に基づき、国内で実施される再生医療等に用いる特定細胞加工物を製造しようとする際に、施設ごとに取得が義務付けられております。
(※2)AABB(American Association of Blood Banks)とは、輸血、細胞治療分野で、提供者及び患者の安全を守るため設立された国際非営利団体。
      全世界50カ国に認証施設があり、輸血等に関連する安全性の基準、認証の付与、認証調査、教育プログラムを実施しております。
(※3)ISO9001とは、製品の品質保証と顧客満足及び組織の管理・改善まで踏み込んだ品質マネジメントシステムの国際規格であります。
(※4)プライバシーマーク制度は、日本産業規格JISQ15001に基づいた審査基準によって、事業者の個人情報保護マネジメントシステムの運用を評価しており、
      一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より付与される認証であります。




                                                                                          12
                                収益構造
収益構造
•   1検体あたりの売上は、細胞分離の際に必要となる分離料・検査料・登録料からなる技術料(190,000円)及び保管料(5,000円/年)
    となります。
•   検体数と比例して発生する1検体あたりの売上原価は、変動費として材料費及び主に支払技術料・外注委託費・荷造運送費があり、その他、
    売上原価に含まれる固定費として労務費や賃借料などがあり、原価率は2019年3月期で33.8%、2020年3月期で32.4%となっております。
•   保管料は、「前受保管料(初年度を除く)」に計上し、毎年売上に振りかえます。


                                                         契約年数別の割合(2021年3月期)


キャッシュフローの特徴
•   技術料及び契約期間×保管料を契約時に受領するため、長期契約が増えるほど現預金が増え、
    キャッシュフローが安定します。
•   契約期間は、1年、10年、20年から選択可能です。
•   2021年3月期における契約期間の割合は、1年保管が2.9%、10年保管が48.5%、
    20年保管が48.6%です。




                                                                              13
                              BSの特徴
                                                            (単位:千円)

               2020/3/31      構成比     2021/3/31     構成比      増減

 現金及び預金           3,024,750   84.9%     2,743,484   69.3%   281,266減

 資産合計             3,564,700             3,958,493           393,793増




 前受金             2,058,887    57.8%    2,395,871    60.5%   336,984増

 純資産合計            1,259,838   35.3%     1,322,209   33.4%    62,371増

 負債純資産合計          3,564,700             3,958,493           393,793増

(※)契約時に受領する長期(次年度以降)の保管料を「前受金(初年度を除く)」に計し、毎年売上に振り替えます。

                                                                       14
                          さい帯組織保管サービスについて
2021年4月1日より、「日本初」となるさい帯(へその緒)組織保管サービスを開始
•   さい帯組織由来の間葉系細胞は、免疫調整作用、抗炎症作用や組織修復作用を有し、過剰な免疫や再生医療の分野において国内外で研究が進められ
    ており、その安全性や有用性が確認されつつあります。
•   当社は、出産時のお子さま自身のさい帯(自家さい帯)由来細胞の利点を利用した疾患治療を目指し、さい帯由来間葉系細胞の凍結保管技術ならびに
    培養プロセス、臨床応用に向けたバンキングシステムについて、2018 年より東京大学医科学研究所附属病院臍帯血・臍帯バンクの長村登紀子准教授と
    共同で研究してまいりました。
•   2018年より東京大学が保有する技術とノウハウの開示を受けてその検証を行い、自家さい帯バンキングシステムの構築と開発に取り組んでまいりました。そして
    さい帯組織保管サービスを開始するにあたり、これらの技術とノウハウの使用に関するライセンス契約を2021年3月19日付けで東京大学と締結いたしました。
•   米国では約75%、世界では約65%の民間さい帯血バンクがすでに同サービスを提供(※1)しております。
                                                                               (※1)Global Cord Blood Banking Industry Report, 2021
収益構造
•   1検体あたりの売上は、細胞分離の際に必要となる分離料・検査料・登録料からなる技術料(190,000円)及び保管料(5,000円/年)となります。
•   検体数と比例して発生する1検体あたりの売上原価は、変動費として材料費及び主に支払技術料・外注委託費・荷造運送費があり、その他、売上原価に
    含まれる固定費として労務費や賃借料などがあります。
•   保管料は、「前受保管料(初年度を除く)」に計上し、毎年売上に振りかえます。

「さい帯」を保管する意義
•   治療への利用が試みられている病気は、神経性の疾患、呼吸器疾患、細胞治療後への合併症など多岐にわたります。
•   さい帯に含まれている間葉系細胞は幼若で環境の影響をほとんど受けていないため、より良質な細胞治療のソースとして期待されています。
•   さい帯には、さい帯血とは異なる種類の幹細胞が含まれているため、さい帯血・さい帯の両方を保管しておくことで、将来の利用に向けた選択肢が広がります。
•   他家のさい帯組織由来間葉系細胞を用いた臨床研究は数多く報告されており、海外では108例(※1)、国内では6例(※2)あります。
    今後当社は、世界のバンクに先駆けて、さい帯組織由来間葉系細胞の自家での臨床利用を目指してまいります。
                (※1)ClinicalTrials gov:NCT03473301, NCT03635450, NCT03099239   (※2)JRCT(臨床研究実施計画・研究概要公開システム)

                                                                                                                            15
3.当社のコアコンピタンス
             当社のコアコンピタンス


① 日本全国どこからでも一定時間内に生きた細胞を収集できる「ノウハウとインフラ」

② 最先端の処理プロセスを備えた「細胞処理施設」

③ ハイクラスな耐震性とセキュリティーシステムを備えた安全性の高い「細胞保管施設」

④ 強力な「全国の産科施設とのネットワーク」

⑤ 20年を超える「保管実績・運営実績」

⑥ 再生医療のソースとなる細胞の提供を通じた「ネットワーク構築」




                                            17
                       細胞(さい帯血)の回収体制
• 当社は、さい帯血の品質維持のため、日本全国どこでも採取から48時間以内に作業開始ができる
  輸送ネットワークを確立しております。
• 24時間365日で対応する出産コールセンターを開設しており、ご出産情報を着実に把握し、時間内に
  全国の産科施設へさい帯血をお預かりに伺うことが可能です。
• さい帯血のネットワークを通して産科施設と強いつながりを持っており、さい帯など再生医療に有望な組織を
  収集できるのが当社の大きな強みです。

                         ①                      ②
     産科施設                         出産コール・センター        (株)ステムセル研究所

                         ③
                                                             ④

① 妊婦様より「出産コールセンター」に連絡いただきます。
② 関係者へ直ちに展開・共有され、回収手配が開始いたします。
③ 当社社員または委託業者によって、契約者または医療従事者からさい帯血ならびに母体血の
  受け取りが行なわれます。
                                                     細胞処理センター
④ 細胞処理センターへ搬入されます。

※ご出産からラボへの搬入は、基本的に当日中に行われます。
※沖縄や佐渡島などの遠方からの検体も問題なく48時間以内に処理が開始されるインフラを構築。



                                                                  18
                                        細胞処理施設
•   細胞処理センター(CPC)は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」にもとづき調査を受け、厚生労働省厚生局に許可を受けた施設
    です。清浄度を管理する区域はクリーンルームと呼ばれ、ISOクラス6(クラス1000)の清浄度で、さい帯血の細胞分離作業を行うキャビネット内は、
    ISOクラス5(クラス100)であり、さらに高い清浄度となっております。さい帯血の処理については、閉鎖環境のもと、赤血球を沈殿させ必要な細胞
    を分離するHES(ヘス)法を採用し、雑菌混入の可能性を限りなく減らした中で作業を行っております。
•   近年のニーズに対応するため、2021年3月に新たな細胞処理センターを横浜市に建設しました。これによりさい帯血分離のキャパシティはおおよそ倍に
    なります。また、東京と横浜の2施設あることで、万が一どちらかに支障が生じても対応できます。
•   横浜CPCでは、IoTを活用した最先端のデータ管理システムを導入しております。また、さい帯組織を処理する専用のブースを設置したことで、日本で
    初めて、海外ではすでに一般的になっている「民間さい帯バンク」を立ち上げることが可能となりました。米国では約75%、世界では約65%(※1)
    の民間さい帯血バンクがさい帯組織保管サービスを提供をしており、当社も国内における民間さい帯血バンクのパイオニアとして世界に倣い、同サービス
    の提供を開始致しました。
                                                      (※1)Global Cord Blood Banking Industry Report, 2021


          Tokyo CPC (Cell Processing Center)       Yokohama CPC (Cell Processing Center)




    •   都心(港区)で利便性の高いロケーション。全国からの検体を           ・2021年3月完成。新事業、「さい帯」の処理が可能となる。
        タイムリーに処理。
    •   最大750件/月のさい帯血の処理が可能。                   ・最大1,000件/月(さい帯血)の処理を想定した構造設備。


                                                                                                            19
                             細胞保管施設
•   細胞保管センターは、津波や洪水の影響を受けない場所を選定しているだけでなく、建物の耐震強度も最も高い段階の評価を受けております。
•   細胞処理センターで分離・抽出・調製した幹細胞は、同施設内にある液体窒素タンクで保管し、その後、細胞保管センターに移送し長期保管用の
    大型の超低温液体窒素タンクで保管しております。
•   第1保管センター内には、16台の大型細胞保存容器が設置されており、常に数百から数千リットルの予備の液体窒素を保有し管理しております。
    また、指認証システムによる入退室管理をはじめ、赤外線センサーや人感センサーなどを複数設置し、24時間のセキュリティーシステムを導入して
    おります。また、ライブカメラで遠隔的に室内状況を把握することができます。
•   2021年6月に第2保管センターが完成しました。これにより、さい帯血以外(さい帯、卵子など)の様々な細胞も保管できるようになり、
    保管能力は現状の約7万検体から14万検体になります。


                       Cell Cryopreservation Center (第1、第2)




                                                                          20
                    協力産科施設とのネットワーク
•   さい帯血保管事業は、医療機関や医療従事者の方々からのご理解・ご協力よって初めて成り立ちます。私たちは民間さい帯血
    バンクのパイオニアとして、学会の協賛、地方医会の協力など様々な活動を通じて全国の産科施設様によってネットワークを構築して
    参りました。その結果、2021年3月期末における協力産科施設数は940となりました。また、累計ではこれまで全国で2000施設
    以上の採取実績があります。
•   協力産科施設で開催される母親学級(※1)においてさい帯血保管サービスを紹介しており、母親学級でのサービス紹介が売上
    検体数の獲得や認知度向上のための最大チャネルです。母親学級の開催数は順調に伸びてきましたが、新型コロナウイルス感染症
    の広がりに伴い、2020年2月以降、多くの施設において母親学級の開催中止・開催自粛が継続されております。
•   一方、産科施設において、下記の通りの新たな施策を実施する事で、さい帯血保管サービスの認知度向上及び産科施設との関係
    強化を行っております。
     ① 産科施設が、出産にあたっての妊婦の希望をヒアリングする「バース・プラン」にさい帯血保管を希望するかどうかの項目を設ける。
     ② 産科施設のHPへ当社のLPへ誘導するバナー広告を掲載する。
     ③ 産科施設の待合室のモニターに、さい帯血保管の紹介動画を放映する(デジタルサイネージ)。
     ④ 産科施設のHPへ掲載する出産に関する情報や産科施設の紹介動画を当社が制作する事で施設との関係強化を図ると
       同時に、さい帯血に関するPR動画も差し込む。
•   上記の対応策により、2021年1月~3月の新規保管検体数は母親学級以外からの検体数の増加に繋がりました。
    当該状況を踏まえ、2022年3月期においても同水準の検体数は見込めるものと考えております。

(※1)妊娠、出産、赤ちゃんのお世話などについて基本的な知識や情報を教えるもので、妊娠中の体のことや、体調管理、栄養
    指導、安産体操、出産の流れや呼吸法、新生児のお世話などについて学ぶものです。多くの産科施設で実施されています。


                                                                 21
                              保管実績・運営実績
•   2019/03月期及び2020/03月期において、新規
    保管検体数は約2倍となっております。実績が大幅に
    伸長した要因につきましては、保管者を増加させるた
    めに最も重要なコンテンツである、「母親学級スピーチ」
    を行う施設との提携獲得に向けたプロセスの強化及び
    スピーチのクオリティの改善並びに国内外の臨床研究
    に関する資料の配布などを行ったことが大きく寄与して
    います。また、2018年7月には、それまで営業担当者
    が担っていた、顧客応対を分業させるべく、営業本部
    に顧客応対を専門に行う、カスタマーサポートグループ
    を新設しました。これにより顧客に対して、よりタイム
    リーかつ質の高い説明が行なえるようになり、成約率が
    向上いたしました。

•   2021/03期における新規保管検体数は減少しまし
    た。その主な要因は、新型コロナウイルス感染症の
    広がりに伴い、検体数獲得の最大チャネルである協力
    産科施設における母親学級の開催中止・開催自粛
    にあります。コロナの影響は一時的なものだと考えてい
    ますが、更なるデジタル・マーケティングの強化を図ると
    共に、対面営業との両輪で相乗効果を生み出してい
    き、新規保管検体数の増加に努めてまいります。


                                          22
              研究機関とのネットワークと臨床研究成果
•    当社で保管しているさい帯血が用いられた臨床研究が進んでおります。このことは、検体数の獲得にポジティブな効果をもたらしております。

                                                              2021年3月時点


      対象疫患                         実地施設        フェーズ   症例数     ステータス


                 高知大学医学部附属病院(自家単核球細胞投与)          Ⅰ     6例   被験者募集終了

    脳性麻痺等
                 高知大学医学部附属病院(同胞間単核球細胞投与)         Ⅰ     3例   被験者募集中
    (※1)

                 高知大学医学部附属病院(同胞間有核細胞投与)          Ⅰ     5例   被験者募集中


                                                 Ⅰ     6例   終了(論文発表済)
    低酸素性虚血性脳症
                 大阪市立大学医学部附属病院他
    (※2)
                                                 Ⅱ    15例   被験者募集開始前

•   フェーズⅠでは、少数の被験者が参加し、安全性についての評価が行われております。
•   フェーズⅡでは、臨床探索的研究として実施される見込みで、さい帯血の処理及び供給体制などを検討し、有効性と実施可能性を
    検証することを目的として行われる予定であります。
(※1)参照:参考資料ページ43(※2)参照:参考資料ページ44



                                                                          23
             研究機関とのネットワークと臨床研究成果
•   さい帯血が再生医療や臨床研究に使用されることは、当社サービスの利用を検討している顧客のモチベーションの向上に繋がります。
    さらに現在は、さい帯血に加えて、様々な周産期由来の組織や細胞のバンキングおよび臨床応用への道を模索しております。
•   また、当社は再生医療に係る進展を図る事を目的に、研究機関とのネットワーク構築に取り組んで参りました。現時点では、以下の図が
    示すように、多くの研究機関に対して再生医療にかかる支援を行っております。
•   その結果、様々な研究成果が現れており、当社細胞バンクの検体数獲得にもポジティブな影響をもたらしております。


                                      「さい帯」
                                    大阪大学大学院
              「さい帯血」                医学系研究科           「さい帯」
             高知大学医学部                 スポーツ医学          東京大学
               附属病院                                 医科学研究所



         「さい帯血」                                           「さい帯」
        大阪市立大学                                          東京大学附属病院
          附属病院                                            東京大学
                                                         医科学研究所
                       「羊水」                     「羊膜」
                     慶應義塾大学                   日本大学医学部
                       医学部                    生体機能医学系
                     産婦人科学教室                   生理学分野

    (※)ピンク枠:臨床研究段階、緑色枠:研究段階(前臨床研究(基礎)段階)


                                                                    24
4.市場概要と競合環境
               細胞バンク市場の規模(さい帯血及びさい帯)
•   近年の再生医療分野の発展は目覚しく、さい帯血についても米国を中心に臨床研究が進展しております。その結果、米国における民間さい帯血
    バンク社の数は27社となり、2017年の時点では、約400万人(年間)の出生児の内、約2.9%の方々がさい帯血の採取・保管を行っています。
•   一方、日本では民間さい帯血バンクが2社で、採取率は他国に比べて低く、約0.9%です。しかしながら、日本国内でも、2014年に再生医療等
    安全性確保法が施行され、当社のような事業会社が臨床研究に参加する仕組みが整えられた事から、さい帯血等を利用した臨床研究が開始され、
    さい帯血等の体性幹細胞の医療応用のニーズは高まってきております。このような背景もあり、今後は日本におけるさい帯血の採取率も、他国並み
    のレベルに達すると思われます。
•   「さい帯血」だけではなく「さい帯(へその緒)」を用いた臨床研究も進展してきており、当社は日本において初となる「さい帯(へその緒)」のバンク
    事業を立ち上げました。尚、米国のCBR社によれば、「さい帯血」の保管を行う顧客の内、約50%は「さい帯(へその緒)」の保管も行っています
    ( Complete 2017-18 Cord Blood Banking Industry Report)。
               各国の出生数及びさい帯血の採取率                                          さい帯血及びさい帯の市場規模の可能性
                                                                 現在の、日本の民間さい帯血バンク市場規模は7,755検体(年間)(※1)ですが、
                                                                 採取率が他国並みのレベルに達した場合の市場規模は以下の様になります。 (※2)
                                                                                                       (検体/年間)

                                                                                                  さい帯血及び
                                                                     対象国         さい帯血(※2)
                                                      27 社                                       さい帯(※2)
                                                                 アメリカと同レベルの採
                                                                                        25,230         37,845
                                                                 取率(2.9%)
                                                                 韓国と同レベルの採
                                                                                       139,200        208,800
                                                                 取率(16%)
                                                                  (※1)2019年度の採取実績数
                                                                  (※2)さい帯血:2019年の出生数87万人×各国の採取率にて算出
      出所: Complete 2017-18 Cord Blood Banking Industry Report」        さい帯血及びさい帯:さい帯血+さい帯血×50%(さい帯血の保管を行う顧客の内、
         ※日本のみ2019年の出生数・採取率に更新しております。                                 さい帯の保管も行う割合)にて算出


                                                                                                                 26
                      マーケットシェア(国内)
•   民間さい帯血バンクは、公的さい帯血バンクと違い許可制ではありませんが、厚生労働省(健康局)へ「臍帯血取扱事業の届出」の
    提出を要請されており、同届出を行っている民間さい帯血バンクは2020年3月31日現在、当社を含めて2社です。
•   当該2社のさい帯血保管総数は58,796件、当社の保管総数は58,069件(約99.9%のシェア)となっており、国内における民間
    さい帯血バンク会社としては「No.1」と言えます。
•   民間さい帯バンクは、当社が「国内初」となり、競合はありません。


                                                 新規保管数
          会社名        設立      累計保管数      シェア(%)              シェア(%)
                                                 (2019年度)



      ステムセル研究所      1999年    58,069      98.8    7,745      99.9

          A 社        2004年    727         1.2       10        0.1


                     合計      58,796      100.0    7,755     100.0

                                      (2020年3月31日時点 厚生労働省さい帯血取扱事業届出より)


                                                                         27
5. 事業計画
                  事業拡大イメージ
当社は、以下の事業ラインナップの構築を目指しております。
1. 日本No.1のさい帯血の保管会社から、さい帯、羊水、羊膜、胎盤等、再生医療に利用できる可能性のある
   様々な細胞(組織)バンク事業
2. 海外における細胞バンク事業
3. 収集した組織、細胞を利用した新規細胞治療・幹細胞医薬品(再生医療等製品)に関わる開発事業展開



                    ①中期事業計画における成長戦略(中期的目標)

                                 ②調査・戦略策定ステージ(中長期的目標)
                    ♦国内における「さい帯血
                     バンク事業」の拡大   ♦細胞バンク事業の   ③チャレンジ
                    ♦国内における「さい帯   「アジアへの進出」  (中長期的目標)
                     バンク事業」の構築   ♦「新規細胞治療・     ♦国内における「他の細胞
                                  幹細胞医薬品の開発」   (羊水など)事業」の構築

                                               ♦新規事業展開




                                                              29
              経営目標

当社は、以下の経営目標を重視しております。
1. さい帯血バンク事業(既存事業)及びさい帯バンク事業(新規事業)の
   新規保管検体数
2. 売上高営業利益率
3. ESG及びSDGsへの取組


将来の成長への布石として、以下の取組を行います。
1. 新規細胞治療・幹細胞医薬品(再生医療等製品)の開発
2. 「細胞バンク事業」のアジア進出
3. 再生医療・細胞治療に取り組む医療機関に対する更なる臨床研究支援
4. パートナー企業の開拓及び連携強化



                                      30
                                 経営戦略
1. さい帯血バンク事業(既存事業)及びさい帯バンク事業(新規事業)の新規保管検体数の拡大
  新規保管検体数の拡大を図るために、「デジタルマーケティング(オンライン)」、「産科施設向け営業(オフライン)」及び「研究機関向け臨床研究支援」
  の強化に取り組みます。デジタルマーケティングを強化することにより、今後はデジタルマーケティングと従来の産科施設営業の相乗効果が期待できます。
  また、臨床研究支援を更に強化することにより再生医療に対する展望が開け、新規検体数の増加に繋がると考えております。2021年4月より開始した
  日本初となる「さい帯保管サービス」に関しましても、さい帯血と併せてこれらの施策を行うことで、新規保管検体数の拡大に繋がると考えております。
  2022年3月期の新規保管検体数は、さい帯血で7,120検体、さい帯で1,000検体を見込んでおります。
  ① デジタルマーケティングの強化(2021/03期Q1~)
     • WEB広告・SEO・PRの3つの柱の相乗効果で、資料請求獲得を行います。
     • 「WEB広告:様々なメディアや媒体でリスティング広告やディスプレイ広告の運用を行ない、また妊婦向けアプリを中心に純広告を掲載し、それら
       のバナーにリンクしたランディングページ(LP)に誘導」 、「SEO:ユーザーの視点に立った、分かりやすく信頼していただけるようなコンテンツを自社
       の専用サイトに掲載し検索エンジンからのサイトへの誘導」、「PR:妊婦が感心・共感を示すコンテンツ・記事をWEB上に流通させることでサイトへ
       の流入や認知度の向上」などにより資料請求獲得を行います。
  ② 産科施設向け営業の強化(2021/03期Q2~)
     • 産科施設のオンライン用の紹介動画を当社が制作することで産科施設との新たな関係構築を行い、母親学級スピーチの新規獲得を行います。
     • 「どのように出産がしたいかを計画する『バースプラン』のアンケートにさい帯血の項目を設ける」、「産科施設のHPへ当社バナーを掲載し病院HP
       からの資料請求獲得」、「産科施設の待合室で当社の動画を放映し、潜在層の育成」などのご提案を行います。
  ③ 研究機関向け臨床研究支援の強化(2021/03期Q1~)
     • 有望な萌芽的研究において、研究用検体の提供や資金面のサポートを積極的に行います。
     • 研究者に対して、人的・技術的側面での育成活動を行います。
2. 売上高営業利益率
  ① DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進(2021/03期Q1~)
     • 社内コミュニケーションツールとしての「LINE WORKS」の活用、稟議書や勤怠、経費精算の完全オンライン化など、DX(デジタルトランスフォー
       メーション)を推進し、コミュニケーションのスピードアップ及び業務の効率化を図り、売上高営業利益率の向上を目指します。

                                                                            31
                                          経営戦略
3. ESG及びSDGsへの取組
   中期的な目標として今後、下記の取り組みを行います。
   ① 当社の事業に影響を及ぼすESG課題を特定し、SDGsの実現に貢献し得るガバナンス体制の構築に向けた検討を行います。

4. 将来の成長への布石
   中長期的な目標として今後、下記の取り組みを強化して参ります。
   ① 新規細胞治療・幹細胞医薬品(再生医療等製品)の開発に取り組んで参ります。
   ② アジアを中心とした、まだ「細胞バンク事業」が発達していない国々への事業展開を企図して、市場調査や現地の医療機関等との提携などを進めます。
   ③ さい帯や羊水などの細胞を使用して、再生医療・細胞治療に取り組む医療機関に対して、臨床研究がスムーズに進展するようご支援することで、
     当社の「細胞バンク事業」の領域を拡大して参ります。

     細胞                  研究機関                                 臨床研究内容
                                               自家さい帯由来間葉系幹細胞のバンキング体制構築について(※1)
            東京大学医科学研究所
    さい帯                                        小児形態異常に対する自家さい帯幹細胞による治療法開発(※2)
            大阪大学大学院医学系研究科 スポーツ医学               新たな半月板治療法の開発(※3)
            慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室                  ヒト羊水幹細胞による周産期脳障害の細胞治療(※4)
    羊水など
            日本大学医学部 生体機能医学系生理学分野               羊膜上皮幹細胞を用いた細胞治療法の開発

    (※1)参照:参考資料ページ45、(※2)参照:参考資料ページ46、(※3)参照:参考資料ページ47、 (※4)参照:参考資料ページ48
    (注記)前記4.①~③に関してはアーリーステージであるため、中期損益計画などには含まれておりません


                                                                                 32
                        経営戦略


④ 事業の発展を目的に、シナジー効果のあるパートナー企業の開拓及び連携強化を図って参ります。
  「出資・業務提携先」
  • クオリプス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:草薙 尊之)
     ✓ 大阪大学大学院医学系研究科の名誉教授で日本再生医療学会 前理事長の澤教授の研究成果をベースに、
       同種由来iPS細胞由来心筋細胞シートの開発・事業化を目的に設立された大阪大学発のベンチャー企業です。
       主な株主は、第一三共株式会社、京大イノベーションキャピタル株式会社、テルモ株式会社、三菱商事株式会社
       です。
     ✓ 当社は、細胞医薬品(再生医療等製品)事業の構築に係るシナジー効果を目的としてクオリプス社に出資して
       おります。
  • 株式会社グレイスグループ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:花田 秀則)
     ✓ 「選択的卵子凍結保存サービス」を提供している企業です。主な株主は、インキュベイトファンド株式会社です。
     ✓ 日本が抱える「少子化」と「女性の社会進出」の課題の一助となるサービスの「核」となる保管業務の展開を目的と
       しております。




                                                              33
                      経営指標


        (単位:千円)   2018/03期   2019/03期    2020/03期    2021/03期    2022/03期
                                                                  (予想値)



売上高(さい帯血バンク事業)     861,531   1,149,857   1,676,456   1,409,515   1,706,333



営業利益               110,129    215,885     382,327     86,879      200,019



経常利益               111,203    216,252     382,533     92,407      196,819



当期純利益              69,548     142,835     277,485     62,371      136,553




                                                                             34
                                   主な設備投資
                                                                           (2021年3月31日現在)

                             投資予定金額
  事業所名                                                                             完成後の
               設備の内容        総額     既支払額     資金調達方法       着手年月        完成予定日
 (所在地)                                                                             増加能力
                          (百万円)    (百万円)
細胞処理・細胞
                                                                                細胞保管能力:
 保管センター                                                              2024年3月
              細胞保管設備        160      ―       増資資金       2021年3月                  約6.4万検体
 (神奈川県                                                                (※1)
                                                                                  (※2)
横浜市緑区)
                                                                                 業務効率と
   本社         顧客管理IT
                            235      ―       増資資金       2020年6月     2024年3月     顧客管理能力の
(東京都港区)        システム
                                                                                  向上等
              土地、建物、                                                            細胞処理能力:
                                             自己資金、
細胞処理・細胞       細胞処理設備                                                            年間約1万検体
                           1,100     ―       借入金及び      2023年3月      2025年3月
 保管センター       及び細胞保管                                                            細胞保管能力:
                                             増資資金
                設備                                                               約10万検体


(※1)保管検体数は徐々に増えるので、それに合わせて順次タンクや機械を導入していきます。それらが全て揃うのが2024年3月を見込んでおり、2021年4月の時点で施設自体は完成しております。
(※2) 「さい帯血」のみ保管した場合は14万検体可能ですが、処理能力同様に、実際は「さい帯」も保管するので、届出書では「さい帯」の検体数を引いた実数を記載しております。




                                                                                                 35
    2021年3月期の状況及び2022年3月期の業績の見通しについて

•   2020/03期Q4~2021/03期Q1(2020年1月から2020年
    6月)にかけて、新型コロナウイルスの感染症拡大に伴う活動
    自粛等の影響により、さい帯血採取協力産科施設で開催される           2022年3月期は
                                             予想値です
    母親学級が開催中止・開催自粛となり、2021/03期の新規
    保管検体数は減少しました。
•   しかしながら2020年6月より、Web広告をはじめとするインター
    ネットを通じたマーケティング活動を深耕し、新たなチャネルとして
    立ち上げました。また、産科施設へはパンフレットの配布等の協力
    をいただき、当社サービスの紹介、認知度向上に努めるなど、
    「細胞バンク事業」の拡大に注力して参りました。
•   2022年3月期の母親学級スピーチの開催数も保守的にみて
    緊急事態宣言下であった2021年1月~3月と同様に大幅な
    回復を想定しておりませんが、さい帯血採取協力産科施設への
    対応策や、Webを通じたマーケティング活動の強化による
    認知度向上により、2021年1月~3月の新規保管検体数は
    母親学級以外からの検体数の増加に繋がりました。
•   引き続きWebを通じたマーケティング活動を強化し、認知度の
    向上、新規保管検体数獲得に注力して参ります。またコロナが
    沈静化した後は、デジタルマーケティングと従来の産科施設向け
    営業の相乗効果が生まれると考えております。




                                                36
                   進捗状況

1. 経営指標に対する主要なKPIの進捗


 •   2020年3月期の目標新規保管検体数は6,761検体、実績は7,232検体であり、
     目標達成率106.9%となっております。
 •   2021年3月期の目標新規保管検体数は5,847検体、実績は5,695検体であり、
     目標達成率97.4%となっております。
 •   2022年3月期の目標新規保管検体数は7,120検体となっております。


2. 「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示を行うことを予定している時期


 •   次回の開示は、2022年3月期の決算発表時を予定しております。
 •   その後は、四半期決算毎の開示を予定しております。




                                                 37
6. 事業リスク
                                事業リスク
                              顕在化の
                                       顕在化した
          主要なリスク              可能性/                        リスク対応策
                                      場合の影響度
                               時期
「さい帯血」の再生医療分野での研究成果が想定通り進捗
                                               治療法が確立されていない疾患及び研究段階のものはまだ
しない場合やその他の新たな治療法が出現した場合などは、
                              低/長期      大      多数あり、それらを開発目標に設定し、アカデミアパートナーとと
当社の経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼし、事
                                               もに臨床応用を目指します。
業継続が困難になる可能性があります。
細胞バンク事業に係る法規制の改正・強化、新たな法規制                     関係官庁や学会の情報を注視し、また全社的な内部監査、
が制定された場合、あるいはこれらの法規制を遵守できない                    細胞技術本部を対象としたISO9001に係る内部監査、プラ
                              低/不明      大
場合、追加的な対応や事業への何らかの制約が生じることに                    イバシーマーク制度に係る内部監査を実施し、法的規制への
より、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。                    適合性を定期的に確認しております。
細胞培養加工施設における「特定細胞加工物製造許可」                      構造設備基準への適合状況に関して、内部監査ISO9001
の取消等があった場合には、主要な事業活動に支障をきた                     に係る内部監査及びAABB査察(2年に1回)により、再生
                              低/中長期     大
すとともに当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性                     医療等安全確保法やAABBで求められる基準への不適合事
があります。                                         項が無いか定期的に確認しております。
細胞の分離・処理作業に必要な試薬や長期保管用タンクの                     2021年3月に新たな細胞処理センターを横浜市に建設し、
冷却用液体窒素の供給が滞ったり、必要な設備が正常に稼                     東京と横浜の2施設あることで、万が一どちらかに支障が生じ
動しないなど細胞の輸送、分離、保管の品質維持に支障を    低/中長期     大      ても対応できます。またグローバル品質規格であるAABBや
来した場合には、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性                     ISO9001といった第三者の認証機関より査察を受け、品質
があります。                                         や設備運用の維持向上に努めております。



                                                                          39
6. 参考資料
メディア掲載情報(新CPC、さい帯事業開始)




                   日本経済新聞 2021年4月1日



                                  41
メディア掲載情報(高知大学医学部附属病院)




  高知新聞 2020年10月1日   毎日新聞 2020年10月16日 高知版


                                           42
プレスリリース(大阪市立大学附属病院)




                      43
プレスリリース及び掲載情報(東京大学医科学研究所)
  日本初のさい帯保管新事業を
    2021年に開始予定




              プレスリリース   日経産業新聞 2018年9月13日

                                            44
メディア掲載情報(東京大学医科学研究所)




                日本経済新聞   2020年9月21日



                                      45
プレスリリース(大阪大学大学院医学系研究科 スポーツ医学)




                                46
                         学術論文報告
  慶應義塾大学と当社の共同研究による成果として、羊水由来幹細胞が新生児の敗血症による神経
  学的な脳障害を改善することを論文報告致しました。

 新生児敗血症は死亡率が高く、生存しても重い神経学的
な後遺症をきたす疾患です。現在のところ抗生物質の投与
や支持療法の他に十分な効果を期待できる治療法はありま
せん。これまでに、慶應義塾大学のグループは、新生児敗血
症モデルラットを用いた研究で、ヒト羊水幹細胞(hAFSC)の
予防的投与によって免疫機能を調節し、新生児敗血症の
生存率を改善することを報告しています。
 そこで、本研究では、hAFSC投与により新生児敗血症を
克服し長期に生存したラットの神経学的な解析を行い、海
馬領域での急性炎症の抑制と空間記憶能の改善を観察し
ました。これは、hAFSCの投与が新生児敗血症といった危
機的状況に対して、単に生存率を上昇させるだけでなく、長
期生存例の認知機能障害を改善することを示した最初の報
告となります。


                                  Int. J. Mol. Sci. 2020, 21(24), 9590


                                                                         47
               海外のさい帯血による治療症例数
                           世界各国における2017年までの実績




2017年にカナダのグループが、世界各国における再生医療
目的のさい帯血投与数を集計した報告を出しています。
発表済みの論文57報を引用し814名が投与を受けたと
報告しています。その中で、516名において有効性が示唆
されました。
         Biol Blood Marrow Transplant 2017, 23, 1607–1613



                                                            48
              海外のさい帯血による治療症例数
                                                       米国における2017年から2020年までの実績
                                                       試験名:デューク大学 拡大アクセス制度

                                                       期間:2017年11月から2020年7月
                                                       投与被験者数:385名
                                                       自閉症スペクトラム障害 235名
                                                       脳性麻痺           104名
                                                       他の関連した脳神経障害 46名

Stem Cells Transl Med. 2019 8(Suppl Suppl 1): S4–S5.   投与臍帯血数(自家219件、同胞166件)

                                                       副反応は38件(9.9%) 認められたが、軽微であった。

                                                       前出の2017年の世界での症例数 814名と、
                                                       本報告の症例数 385名の合計は1199名です。
   Stem Cells Transl Med. 2020 9(Suppl 1): S11–S12.


                                                                                  49
          海外のさい帯血による治療症例数
         対象疾患                        症例数※
          自閉症スペクトラム障害          235

          脳性麻痺                 380

神経障害      他の関連した脳神経障害          191          861
          脳梗塞                  14
                                                     2022年1月には米国において、
          脊髄損傷                 41
                                                        さい帯血EAPに向けた
糖尿病                                   149              初の民間投与クリニックが
                                                        創設される予定です。
心血管                                   24
肝/消化器                                 106
筋/軟骨疾患                                21
その他                                   38
         合計                          1,199
                        ※期間:2020年7月まで   ※48-49Pの合計


                                                                        50